JP3639875B2 - 活性酸素群で処理した植物生育調節剤、その製造方法及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、植物生育調節剤、その製造方法及びその使用方法に関するものであり、詳しくは植物体からの植物ホルモンであるエチレン、一般にフィトンチッド(フィトアレキシン・ジャスモン酸)と呼ばれる揮発性物質の発生を調節し、さらに植物中の酵素を活性化することによる成長促進作用、また特定酵素に選択的に働く事による成長制御作用、酵素阻害物質による成長抑制作用、酸素失活の防止作用、阻害物質の除去ないし阻害物質の解離または置換などによる成長促進作用など、植物の生理活性機構の向上を促すことが可能な植物生育調節剤、その製造方法及び使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来農地では、病害・害虫に対し様々な薬剤が使用されてきた。最近、農薬の低毒化と毒性に対する理解度が向上してきてはいるが、平成元年度の生産量でみると、劇物33.3%、毒物1%と取扱いにかなりの注意を要するものも多く、農薬使用にともなう事故の発生は相変わらず続いている。そのなかでも殺菌剤、殺虫剤の占める割合は大変大きく、問題となっている。
【0003】
またそれらの薬剤を使用することで、本来植物が持っている抗菌性物質[エチレン、エチレンオキサイド、クチン、俗に緑の香りと呼ばれる青葉アルコール(cis−3−ヘキセン−1−オール)、フィトアレキシン]を調整させる能力を低下させ、植物自体の免疫力をなくしてしまっているだけではなく、成長が著しく阻害されていた。
【0004】
さらに農地では、植物の生育促進のため、植物内の反応速度や平衡を変化させて酵素活性を高める目的で、カルシウム等の硅酸系強アルカリ酸化物を配合している化学肥料を使用している場合が多く、その強アルカリの性質上農作物を枯らしてしまう、土壌の安定に必要な土壌菌を死滅させるなど、金属イオンによる生体内酵素賦活作用よりもその欠点が優先する事があった。
【0005】
また植物性及び動物性の堆肥を利用する場合も、その作用の多面性によって一定の方向性がないために、ある作用は有益であっても別の作用は有害な場合もあり、実用的には用途が限定されていた。
【0006】
それ以外にも植物の伸長成長、成長抑制、肥大成長、細胞分裂、気孔の開閉、花芽形成、屈性、老化、発芽、発根などの生理活性を促す植物ホルモンを利用するものに、動植物中に広く分布するオーキシン、サイトカイニン、高等植物とカビに主として分布するジベレリン、高等植物に広く分布するアブシジン酸、エチレン、ステロイド型のブラシノライド等があるが、その作用はある種の特異性と多面性とが共存し、系全体としての生理活性を促すには選択性に乏しく、また何よりも高価であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物体からの植物ホルモンであるエチレン、一般にフィトンチッドと呼ばれる揮発性物質の発生を調節すると同時に、植物中の酵素を活性化することによる成長促進作用、また特定の酵素に選択的に働く事による成長制御作用、酵素阻害物質による成長抑制作用、酵素失活の防止作用、阻害物質の除去ないし阻害物質の解離または置換などによる成長促進作用など、植物の生理活性機構の向上を促すことができる植物成長調節剤、その製造方法及びその使用方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまで知られていた各種の植物生理活性物質を、活性酸素群で処理することによりその活性を高め、さらに不飽和有機化合物の過酸化物を与えてやることにより、植物体自身が抗菌性物質を発生し、また植物生育促進物質と活性酸素群のバランスを変えてやることにより植物成長を調節できることを見いだし、本発明を成すに到った。
【0009】
本発明の請求項1の発明は、不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物、不飽和脂肪酸を含む酵母抽出エキス、不飽和脂肪酸を含む植物抽出エキスからなる群から選択される少なくとも一種を、純水を電解して得られた活性酸素群を含む酸性水と混合して反応させて生成した過酸化物を含む生成物から成ることを特徴とする植物生育調節剤である。
【0011】
本発明の請求項2の発明は、3槽式電解槽を使用して、純水を電解することにより活性酸素群を発生させた酸性水に、不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物、不飽和脂肪酸を含む酵母抽出エキス、不飽和脂肪酸を含む植物抽出エキスからなる群から選択される少なくとも一種を混合して反応させて過酸化物を含む生成物を得ることを特徴とする請求項1記載の植物生育調節剤の製造方法である。
【0012】
本発明の請求項3の発明は、前記混合後さらに、熱処理あるいは超音波処理することを特徴とする請求項2記載の植物生育調節剤の製造方法である。
【0013】
本発明の請求項4の発明は、さらにpH調整してpH5〜7にすることを特徴とする請求項2あるいは請求項3記載の植物生育調製剤の製造方法である。
【0014】
本発明の請求項5の発明は、請求項1記載の植物生育調節剤を、1〜2000倍に水で希釈して植物に適用することを特徴とする植物生育調節剤の使用方法である。
【0015】
本発明の不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物とは、二重結合にはさまれた活性メチレン基を有する脂肪酸とそのエステル化合物であり、例えばリノール酸、リノレン酸などを例示することができる。
【0016】
本発明の不飽和脂肪酸を含む微生物抽出液または植物抽出液とは、微生物または植物の酸、アルカリ、アルコールあるいはエーテルなどによる抽出液であり、例えばイーストエキスなどを例示することができる。
【0017】
本発明の有機質肥料とは、堆肥(わら堆肥、バーク堆肥など)、牛糞尿、鶏糞、緑肥などの通常用いられているものでよく、特に限定されるものではない。
【0018】
本発明で用いる有害物質を除いた活性汚泥とは、人ぷん尿などの活性汚泥処理に用いられた活性汚泥から重金属などの有害物質を除いたもので、通常は廃棄物となるものであり、具体的な例としては活性汚泥肥料[三菱油化(株)製]、人ぷん尿処理物(多摩川衛生組合製)などの汚泥肥料や、乾燥菌体肥料などを挙げることができる。
【0019】
本発明のビタミンとは、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、Kなど)や水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンP、ビタミンU、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、PQQ、リポ酸、イノシトール、ビタミンCなど)である。
【0020】
本発明のユビキノンとは、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの総称であり、例えば、オウランチオグリオクラデイン、フミガチン、プラストキノンA、ロードキノン、ユビクロメノール−nなどを例示することができる。
【0021】
本発明のおいては、上記の群から選択される一種あるいは二種以上を組み合わせて使用する。組み合わせの種類、配合比などは任意であり、適宜使用目的などに応じて選定して決めることができる。
【0022】
本発明の活性酸素群は広義の活性酸素群であり、 3O2 の一電子還元種であるスーパーオキシド(O2 -)、励起状態の酸素分子である励起三重項酸素( 3O2 *)、一重項酸素( 1O2 )、ヒドロキシラジカル(・OH)、オゾン(O3 )、金属オキソ種を含む金属−酸素錯体、過酸化水素(H2 O2 )、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、ペルオキシラジカル(LOO・)、アルコキシラジカル(LO・)、ヒドロペルオキシド(LOOH)の群から選択される一種あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。組み合わせの種類、配合比などは任意であり、適宜使用目的などに応じて選定して決めることができる。
【0023】
本発明において両者を反応して本発明の植物生育調節剤を生成する反応条件は特に限定されず、適宜使用目的などに応じて選定して決めることができるが、電解処理、超音波処理、紫外線照射処理、化学的処理(薬剤添加)などの方法で純水を処理して上記の活性酸素群を発生させ、不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物、不飽和脂肪酸を含む酵母抽出エキス、不飽和脂肪酸を含む植物抽出エキス、有機質肥料、有害物質を除いた活性汚泥、ビタミン、ユビキノンなどと反応させて植物生育調節剤を製造することが好ましい。反応は好ましくは二価鉄などの触媒の存在下に行うことがよい。
【0024】
本発明の植物生育調節剤は、上記の反応によって生成するものであり、その化学的成分は有機物としては、11−ホルミルウンデセン酸などのカルボン酸、ヘキセノールなどのアルコール、ヘキセナールなどのアルデヒドなど、鉄−酸素錯体、ポルフィリン錯体などの錯化合物、無機物としてはN、P、Kなどがあり、有機物、無機物、錯化合物を含む酸性あるいはアルカリ性水性溶液である。これらの含有量は原料の種類、量、反応条件などの要因により異なり、限定することはできないが、使用目的によりこれらの要因を制御することにより一定の品質の生成物を得ることができる。
これらの化学的成分はそれぞれの効果を発揮するとともに、互いの相乗効果により、植物体からの植物ホルモンの発生を調節すると同時に、植物中の酵素を活性化することによる成長促進作用、また特定の酵素に選択的に働く事による成長制御作用、酵素阻害物質による成長抑制作用、酵素失活の防止作用、阻害物質の除去ないし阻害物質の解離または置換などによる成長促進作用など、植物の生理活性機構の向上を促す。
【0025】
本発明において3槽式電解槽を使用して、純水または電解質溶液を電解して活性酸素群を発生させることが好ましい。カソード槽1、中間槽2、アノード槽3からなる3槽式電解槽を用い、純水8を、中間槽2にイオン交換樹脂4(DUPONT社製NAFION Superacid Catalysts Type NR50)を満たし、カーボン電極6、白金電極7、イオオン交換膜5を用いて電解して、活性酸素群を含む陰極水12(酸性水、pH3.5)を得る場合の電解条件の一例を表1に示し、3槽式電解槽の断面構造の略図を図1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【実施例】
以下本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示した3槽式電解槽を使用し、表1の電解条件で純水8をカソード電解して陰極水12(酸性水、pH3.5)を得た。1はカソード槽、2は中間槽、3はアノード槽、4はイオン交換槽、5はイオン交換膜、6はカーボン電極(陰極)、7は白金電極(陽極)、8は純水、11は中性水、10は陽極水(アルカリ水)を表す。
次に、以下に示すようにして酵母抽出エキスを得た。
前培養として、培養液[ Yeast Nitrogen Base (Difco)+1%(W/v) Glucose ]50mlに、供試菌 Saccharomyces cerevisiae 1FO-0234 1白金耳を接菌して、27℃ overnight振とう培養した。この菌液を同上の培養液950mlに植菌し、同条件で本培養した。
培養後の菌液を遠心分離機にて2000rpm,5min遠沈した。上清除去後の沈殿物(菌体)に滅菌蒸留水を加えよく懸濁し、同条件で遠沈した。この操作を3回繰り返し沈殿物に培養液が残らないように洗浄した。
湿菌体(Wet weight :20g)を、50%(v/v)エタノール50mlに懸濁し、30〜40℃ overnight振とうさせながら自己融解させた。
上記反応後の懸濁液は、0.45μmのメンブランフィルターにてろ過した。ろ液はエバポレーターにて60℃減圧乾固し、その粉末 Yeast extract(成分組成を表2に示す)とした。
表2中の脂質の脂肪酸組成を分析(キャピラリーカラムを使用したガスクロマトグラフ法)した結果、炭素数14;0が5.7%、炭素数16;0が27.1%、炭素数16;1(n−7)が15.5%、炭素数18;0が12.7%、炭素数18;1(n−9)が29.3%、炭素数18;2(n−6)が9.7%であった。
【0028】
【表2】
【0029】
前記の酸性水500mlに上記 Yeast extractを5g加え、超音波破砕機(島津製作所製 USP-300,300W/20KHz )を使用して15分間超音波を与え本発明の植物生育調節剤AR1を作った。
【0030】
(実施例2)
図2に示した3槽式電解槽を使用し、アノード槽およびカソード槽に純水8、中間槽2に8.0×10-4%(w/v)NaC1水溶液9を通水した。電圧15V、流量:アノード槽1000ml/min、中間槽500ml/min、カソード槽1000ml/min、電極7は陰極、陽極いずれも白金を用いた以外は表1の電解条件で電解して陽極に陽極水10(酸性水、pH2.7)(塩素イオン濃度210mg/l)を得た。
1はカソード槽、2は中間槽、3はアノード槽、4はイオン交換槽、5はイオン交換膜、7は白金電極、8は純水、11は中性水、12は陰極水(アルカリ水)を表す。
この酸性水1000mlに対し市販の植物抽出エキス(熊笹抽出エキス)10mlを加え15分間攪拌する。
この液を室温から加熱し、100℃で約5分間の熱処理を行って室温に戻し、0.45μmのメンブランフィルターにてろ過し、本発明の植物生育調節剤AR2を作った。
【0031】
(実施例3)
過酸化水素(H2 O2 )濃度1.0×10-4%の水溶液500mlに、亜塩素酸ナトリウム0.5mg、塩素酸カリウム0.3mg、実施例1で用いた Yeast extract5gを溶解し、紫外線(260nm)を40分間照射し、本発明の植物生育調節剤AR3を作った。
【0032】
(実施例4)
(試験1)
本発明の植物生育調節剤AR1〜3を用いて、トマトの不定根伸長に及ぼす影響を調べた。
(材料及び試験方法)
供試品種は、タキイ種苗(株)の「強力米寿2号」を用い、1992年8月17日に種子を3日間催芽処理し東京農業大学熱帯園芸研究室のガラス室で栽培した。8月20日黒色ポリポット(直径9cm、高さ8cm)に播種、22日に出芽した。ポリポットには、腐葉土と赤土深土を1:2の割合で混合し、石灰1.6gを加えた。赤土深土は風乾状態にして、1cm四方の篩を通して使用した。9月10日に、約10cmになった幼苗を地上1.5cmの所で切取り、容量70mlの試験管全体を黒ビニールで巻きアルミホイルで覆った後、それぞれ水道水、本発明の植物生育調節剤AR1〜3の250倍希釈液、500倍希釈液、計7区を60mlずつ入れ、トマトの幼苗を切り口から約1.5cmの深さまで浸漬した。各区10反復とし、20℃、2500luxの人工気象室内に静置して、7日後に不定根の最大根長、根数を測定した。
【0033】
AR1〜3を水で250倍および500倍に希釈した特殊活性水溶液を用いて栽培を行った場合、トマトの不定根伸長に及ぼす影響を試験し、図3に根長に及ぼす影響を棒グラフで、図5にAR1〜3を水で250倍に希釈して栽培を行った場合の不定根最根長に及ぼす影響をグラフで、図6にAR1〜3を水で500倍に希釈して栽培を行った場合の不定根最根長に及ぼす影響をグラフで、図9に根数に及ぼす影響を棒グラフで、図10に根重に及ぼす影響を棒グラフで示す。各区10個体の平均値で表し、棒グラフで示した図中の縦棒は標準偏差を、カッコ内の数字は対照区に対する%を示す。対照区はAR1〜3を使用しない場合である。
【0034】
不定根長については、AR250倍区>500倍区>対照区の順に影響が大きく、根数、根重については、AR区の方が対照区より優れているが250倍区、500倍区にほとんど差はなかった。
また、図7にAR1〜3を水で250倍に希釈した特殊活性水溶液の根重/全体重に及ぼす影響を、図8にAR1〜3を水で500倍に希釈した特殊活性水溶液の根重/全体重に及ぼす影響を示したが、AR2は地下部の、AR3は地上部の成長が促進される事がわかった。
【0035】
一般に植物では、切断する事により切り口付近で細胞分裂が始まることが知られている。上記の結果から、切断するという刺激、AR1〜3特殊活性水溶液中に含まれるラジカルによる刺激、発根を促進するフェノール物質の作用とが、細胞分裂を誘導していると考えられる。
AR1〜3特殊活性水溶液を植物に与えることにより上記のような優れた結果が得られた理由は種々考えられ、限定できないが、エチレン生成が促進され、PAL酵素(Phenylalanine Ammino Lylase )が活性化し、発根を促進させるフェノール物質が生成されることによるものと考えられる。
【0036】
(試験2)
本発明の植物生育調節剤AR1〜3の葉面散布がトマト幼苗のエチレン生成に及ぼす影響について試験を行った。
(材料及び試験方法)
供試品種および栽培方法は試験1と同様で、1992年10月17日に種子を催芽処理し、10月20日に播種、23日に出芽し、11月17日に処理を開始した。AR1〜3の500倍希釈液をトマト幼苗に葉面散布し、対照区には水道水を葉面散布してエチレンの生成量を毎日測定した。
測定方法は、葉面散布1時間後に、第3葉を切り取り、直径1cmのコルクボーラーで葉を打ち抜き、50mlの三角フラスコ内に湿潤したろ紙を敷き、葉切片10枚を入れた後、シリコ栓をし三角フラスコの全体を黒ビニールで巻いた。さらにアルミホイルで覆い、25℃で6時間インキュベートし測定に供した。
エチレン生成量については、ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14A)を用い、カラムはサンパックA、キャリヤガスはN2 (6kg/cm2 )、ディテクターはFIDで150℃、インジェクターを120℃、カラムは80℃で対照区、AR処理区とも3反復にて測定を行い、平均値で表した。
【0037】
AR1〜3の500倍希釈液の葉面散布がトマトのエチレン生成に及ぼす影響について図4に結果を示した。AR1〜3の500倍希釈液で処理すると7時間後にエチレン生成量が増大し、2〜3日目にピークを迎えた。
一般に、エチレンは植物の地上部の生育を抑制して、根の生育を促進すること、またIignification を促進し、クチクラ(cuticle )蒸散を減少させて耐乾性を高めたり、菌の侵入を防いで耐病性を高めたりすることが知られている。本試験2によりAR1〜3の500倍希釈液の葉面散布がトマトの健苗育成に利用できることを示唆するものである。
【0038】
試験2に準じて農家で行ったトマトの栽培の結果、本発明の植物生育調節剤ARを使用すると、トマトの節間伸長が抑制され、ずんぐり苗になり、発根、殺菌力が増大することが観察されている。
これらの結果から、本発明の植物生育調節剤AR処理によりエチレン生成が高まったためであると考えられる。このような本発明の植物生育調節剤ARの作用は農薬使用量の減少などに役立つものであり、また健苗育成に利用できることを示唆するものである。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、植物生育調節剤、その製造方法及びその使用方法に関するものであり、本発明の植物生育促進剤をそのままであるいは水で1〜2000倍に希釈して植物に適用することにより、植物体からの植物ホルモンであるエチレン、一般にフィトンチッド(フィトアレキシン)と呼ばれる揮発性物質の発生を調節すると同時に、植物中の酵素を活性化することによる成長促進作用、また特定の酵素に選択的に働く事による成長制御作用、酵素阻害物質による成長抑制作用、酵素失活の防止作用、阻害物質の除去ないし阻害物質の解離または置換などによる成長促進作用などを調節して、植物の生理活性機構の向上を促すことができる。
純水を用いて電解処理により活性酸素群を含む酸性水を連続的に作り、これと従来公知の各種の植物生理活性物質を温和な条件下で反応させる簡単な方法により本発明の植物生育調節剤を経済的に製造することができる。
従来農地で病害・害虫に対し様々な農薬などの薬剤が使用されてきたが、本発明の植物生育調節剤を使用することにより、それらの使用をなくするか、使用量を減少させることができると共に、健苗育成にも利用できるので産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる3槽電解槽の断面を示す説明図である。
【図2】 本発明で用いる他の3槽電解槽の断面を示す説明図である。
【図3】 トマトの根長に及ぼす影響を示す棒グラフである。
【図4】 トマトのエチレン生成量に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】 トマトの不定根最根長に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】 トマトの不定根最根長に及ぼす影響を示すグラフである。
【図7】 トマトの(根重/全体重)に及ぼす影響を示すグラフである。
【図8】 トマトの(根重/全体重)に及ぼす影響を示すグラフである。
【図9】 トマトの根数に及ぼす影響を示す棒グラフである。
【図10】 トマトの根重に及ぼす影響を示す棒グラフである。
【符号の説明】
1 カソード槽
2 中間槽
3 アノード槽
4 イオン交換樹脂
5 イオン交換膜
6 カーボン電極
7 白金電極
8 純水
9 食塩水
10 陽極水
11 中性水
12 陰極水
Claims (5)
- 不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物、不飽和脂肪酸を含む酵母抽出エキス、不飽和脂肪酸を含む植物抽出エキスからなる群から選択される少なくとも一種を、純水を電解して得られた活性酸素群を含む酸性水と混合して反応させて生成した過酸化物を含む生成物から成ることを特徴とする植物生育調節剤。
- 3槽式電解槽を使用して、純水を電解することにより活性酸素群を発生させた酸性水に、不飽和脂肪酸とそのエステル化合物、およびその重合物、不飽和脂肪酸を含む酵母抽出エキス、不飽和脂肪酸を含む植物抽出エキスからなる群から選択される少なくとも一種を混合して反応させて過酸化物を含む生成物を得ることを特徴とする請求項1記載の植物生育調節剤の製造方法。
- 前記混合後さらに、熱処理あるいは超音波処理することを特徴とする請求項2記載の植物生育調節剤の製造方法。
- さらにpH調整してpH5〜7にすることを特徴とする請求項2あるいは請求項3記載の植物生育調製剤の製造方法。
- 請求項1記載の植物生育調節剤を、1〜2000倍に水で希釈して植物に適用することを特徴とする植物生育調節剤の使用方法。
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