JP5362557B2 - 植物生長促進剤 - Google Patents
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Description
また、農地に施肥することが行われるが、その場合、植物の生長のために過剰量の肥料を施すとかえって濃度障害や根やけを起こしたり、また環境中に流出したり、土壌中に長期間滞留して環境汚染を起こしたりする。それらの不都合さを回避するために土壌の適度の深部に予め所定量の肥料を施しておき、該深部に根が到達するに従い肥料が利用されるような施肥の形態も行われている。また、適量の硝酸系窒素などの施肥の工夫も行われている。しかし、そのような工夫をしても土壌のpH、土壌微生物の分布など土壌の性状が大きく変化し、連作障害を起こすことがしばしばある。連作障害が生じた場合には、一定期間植物の栽培を停止して土壌環境の回復をはかるか、或いは他の植物への転作を行なう必要がある
そこで、それら問題点が解決された植物生長促進剤の開発が求められている。特に、植物の初期成育に効果が高く、濃度障害も起こしにくく、簡便に利用可能で、かつ安全性が高い植物生長促進剤の開発が求められている。また、低温下あるいは高温下などの植物の生長にとって過酷な条件下でも有効な植物生長促進剤の開発が求められている。
本発明の請求項1の発明は、コエンザイムQ10を有効成分として含有することを特徴とする植物生長促進剤である。
請求項2の発明は、請求項1記載のコエンザイムQ10を水溶化コエンザイムQ10とする発明である。
請求項3の発明は、請求項2記載の植物生長促進剤において、水溶化コエンザイムQ10を、植物生長促進剤を基準として0.00001〜100質量%含有することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか記載の植物生長促進剤を含有することを特徴とする肥料の発明である。
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか記載の植物生長促進剤を含有することを特徴とする発芽促進剤の発明である。
本発明の植物生長促進剤は、ユビキノンを有効成分として含有する。
前記ユビキノンとは、コエンザイムQ6、コエンザイムQ7、コエンザイムQ8、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10、コエンザイムQ11およびコエンザイムQ12を包含する。また、これらの還元体、別名ユビキノール、すなわち還元型コエンザイムQ6、還元型コエンザイムQ7、還元型コエンザイムQ8、還元型コエンザイムQ9、還元型コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ11および還元型コエンザイムQ12をも包含する。これらの中でも、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ9および還元型コエンザイムQ10が好ましく、とくに所謂発酵法で製造される物質ではなく、所謂合成法で製造されるコエンザイムQ9、コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ9および還元型コエンザイムQ10が好ましい。さらには、コエンザイムQ10および還元型コエンザイムQ10が好ましく、所謂合成法で製造されるコエンザイムQ10および還元型コエンザイムQ10が好ましい。
前記コエンザイムQ10および還元型コエンザイムQ10は高い安全性を有することが確認されており、環境中において濃縮、蓄積、滞留による害をなすことがないし、食品としても使用が認められていることから使用者にとっても安全なものである。
ユビキノンは融点の低い親油性固体であり、エーテルなどにはやや溶解するが水に難溶性である。このため、ユビキノンは大きな塊状の形態では植物に利用されにくいという問題がある。そのうえ、ユビキノンは水に浮くため、冠水では液面に浮遊し、また土壌表層に撒いても降雨などによってたやすく流出しやすく、また、土壌中に施すと、そのまま利用されずに蓄積するという問題がある。ユビキノンを微細な粒子の形態にすると、担体等と結びつくため、上記の様な問題を起こりにくくすることができる。
上記ユビキノンの微細な粒子は、他の肥料などと混合して安定して保管したり、そのまま施肥したりすることができるため有利である。
(1)特開2004−196781号公報記載の組成物
(A)コエンザイムQ10 5〜40質量% 、(B)平均重合度10のポリグリセリンとステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸のモノエステル5〜30質量% 、(C)平均重合度3〜6のポリグリセリンとステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸のモノ、ジ、トリまたはペンタエステル1〜18質量% 、および、(D)水からなるコエンザイムQ10含有水性液体組成物を高圧ホモジナイザーによって用いて分散・乳化させたものであり、コエンザイムQ10が乳化・分散あるいは懸濁された形態である。
(2)コエンザイムQ10、中鎖トリグリセリド、界面活性剤、多価アルコールおよび水を含有し、コエンザイムQ10の10重量部に対する中鎖トリグリセリドの割合が1〜10重量部、組成物100重量%に含まれる水の割合が、10〜40重量%である乳化組成物であり、コエンザイムQ10が水に分散あるいは可溶化された形態である。
有機酸の存在下、アラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、デンプン、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、デキストリン、カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドンからなる群から選択される1つ以上の水溶性物質にコエンザイムQ10を分散・乳化させたものであり、コエンザイムQ10が乳化・分散あるいは懸濁された形態である。
コエンザイムQ10、デキストリン、脂肪酸エステルおよび水を含有し、コエンザイムQ10の1重量部に対して、脂肪酸エステルを0.4重量部以上の割合で含有される、ペースト状あるいは液状のコエンザイムQ10が可溶化された形態である。
コエンザイムQ10をあらかじめ溶融し、これをオクテニルコハク酸澱粉とデキストリンからなる水溶性物質、およびグリセリンからなる水性溶液に加え、これを高圧ホモジナイザーによって分散・乳化させたものであり、コエンザイムQ10が乳化・分散あるいは懸濁された形態である。
上記水溶化ユビキノンの形状は特に制限されないのであって、例えば、スラリー状、ゾル状、ペースト状、液状、乳化液状等を例示することができる。これらの形状とするためには、公知の技術を適宜採用することによって、調製することができる。水溶化ユビキノンが水性媒体中に乳化・分散している状態では、ユビキノン粒子の平均粒径は0.01〜1000μm、好ましくは0.01〜100μmである。
前記固体状の形態の水溶化ユビキノンは、水性媒体中に乳化・分散した形態のユビキノンから常法を利用して調製できる。
前記固体状の形態の水溶化ユビキノンをそのまま植物生長促進剤として使用することも出来るが、その固体状の形態の水溶化ユビキノンに増量剤などを配合して、ユビキノンの含有量を調整することが好ましい。水溶化ユビキノンから調製した植物生長促進剤は、容易に水性媒体へ溶解・乳化・分散されるという特徴を有する。前記水性媒体は、水が好適であるが、それに限定されない。上記粉末状や粒状の植物生長促進剤は、そのまま施肥することができるし、また他の肥料と混合して、安定して保管することができるので有利である。
本発明の植物生長促進剤は植物全般に適用することができる。その中でも、いわゆる種子植物、例えば、水田、畑、山野で生息する種子植物に適用すると、優れた生長促進効果を示す。好ましい種子植物の例としては、リンゴ、サクランボなどのバラ科、ネギ、ニラなどのユリ科、ブナ科、ナタネ、ワサビ、セイヨウワサビ、カリフラワー、キャベツ、チンゲンサイ、ハクサイ、コマツナ、カブ、ダイコンなどのアブラナ科、オクラなどのアオイ科、キブシ科、カタバミ科、ユキノシタ科、ジャガイモ、トマト、トウガラシなどのナス科、エゴマ、ハッカなどのシソ科、キュウリなどのウリ科、リンドウ科、ヒマワリ、レタス、シュンギク、ゴボウなどのキク科、ニンジン、パセリ、セロリなどのセリ科、モチノキ科、ミズキ科、ツツジ科、ビャクダン科、ソバなどのタデ科、ホウレンソウなどのアカザ科、ナデシコ科、ツゲ科、バニラなどのラン科、ダイズ、エンドウ、ソラマメ、キヌサヤなどのマメ科、イネ、コムギ、トウモロコシなどのイネ科、コーヒーなどのアカネ科、トウゴマ、キャッサバなどのトウダイグサ科、ノボタン科、フトモモ科、キョウチクトウ科、パピルスなどのカヤツリグサ科、タロイモなどのサトイモ科、イワタバコ科、キツネノマゴ科、ムラサキ科、イラクサ科、キンポウゲ科、アボカドなどのクスノキ科などが挙げられるが、これらに制限されない。なお、本発明の植物生長促進剤はシダ植物やコケ植物などの植物、さらにはキノコ類にも適用することができる。
また、本発明の植物生長促進剤は植物生長初期の生長促進効果に優れることから、ブロッコリー、マスタード、クレス、芽キャベツ、レッドキャベツ、かいわれダイコン、ダイコン、大豆モヤシ、緑豆モヤシ、豆苗、そば、アルファルファ、発芽玄米などのスプラウトなどにも好適に用いることができる。
(実施例1)生長促進剤の調製
水溶化コエンザイムQ10(アクアQ10−P40;コエンザイムQ10を40質量%含有する 日清ファルマ製)の1.25gを市水500mLを用いて希釈し、コエンザイムQ10の1000ppm溶液を調製し、これを市水で希釈し、コエンザイムQ10(以下、CoQ10と記載することがある)を10ppm、100ppm含有する水溶化された形態の生長促進剤を調製した。
シャーレにキムタオルを敷き実施例1の生長促進剤を100mL浸し、その上にかいわれ大根の種子(野口種苗研究所製)20粒をのせた。そのシャーレを室温・遮光条件に保管し、7日後に採取してかいわれ大根の全長及び根の長さを測定した。
その結果を表1に示す。 なお、コントロールは、生長促進剤のかわりに市水を用い、それ以外は上記と同様に操作したときの植物の全長を測定した結果である(以下、同様)。
表中の数字は、特に説明がないときには、測定値の平均値である(以下、同様)。
増加率は下記式に基づき算出した(以下、同様)。
[(A−B)/B]×100
式中、AはCoQ10含有生長促進剤での植物の全長の実測値であり、Bはコントロールでの植物の全長の実測値である。
水溶化コエンザイムQ10(アクアQ10−L10;コエンザイムQ10を10質量%含有する 日清ファルマ製)の5gを市水500mLを用いて希釈し、コエンザイムQ10の1000ppm溶液を調製し、これを市水で希釈し、コエンザイムQ10を1ppm含有する水溶化された形態の生長促進剤を調製した。
シャーレにキムタオルを敷き実施例2の生長促進剤を100mL浸し、その上にかいわれ大根の種子(野口種苗研究所製)20粒をのせた。そのシャーレを35℃・遮光条件に保管し、8日後に採取してかいわれ大根の全長及び根の長さを測定し、また、発芽した種子の数を数えた。
その結果を表2に示す。
生長促進剤のかわりに、実施例2の生長促進剤からコエンザイムQ10のみを除外した比較生長促進剤を用い、それ以外は上記と同様に操作した。8日後に採取したかいわれ大根の全長及び根の長さを測定し、また、発芽した種子の数を数えた。
その結果を表2に示す。
実施例1と同様に操作し、コエンザイムQ10を1ppm含有する水溶化された形態の生長促進剤を調製した。
(低温条件下での生長促進効果試験III)
シャーレにキムタオルを敷き実施例3の生長促進剤を100mL浸し、その上にかいわれ大根の種子(野口種苗研究所製)20粒をのせた。そのシャーレを室温・遮光条件に3日間保管して発芽させた後、15℃・遮光条件に保管し、4日後に採取してかいわれ大根の全長及び根の長さを測定した。
その結果を表3に示す。
生長促進剤のかわりに、実施例3の生長促進剤からコエンザイムQ10のみを除外した比較生長促進剤を用い、それ以外は上記と同様に操作した。採取したかいわれ大根の全長及び根の長さを測定した。その結果を表3に示す。
(水溶化コエンザイムQ10の生長促進効果試験IV)
必要な数のシャーレを用意し、それぞれのシャーレにキムタオルを敷き実施例3の生長促進剤を100mL浸し、その上に表4記載の植物の種子(野口種苗研究所製)40粒それぞれをのせた。それらのシャーレを室温・遮光条件に保管し、7日後に採取して表4記載の植物の全長を測定した。
その結果を表4に示す。
(水溶化コエンザイムQ10の生長促進効果試験V)
必要な数のシャーレを用意し、水溶化コエンザイムQ10の生長促進効果試験IVと同様な方法にて、表5記載の植物の種子(野口種苗研究所製)の生長促進効果を試験した。それぞれの植物の全長の測定結果を表5に示す。
なお、小麦は30粒を用いて試験した。また、そば及びきぬさやは室温・遮光条件に保管し、8日後に採取し、ほうれんそうは室温・遮光条件に保管し、9日後に採取した。
淡色黒ボク土を450g、硫安および塩安を窒素成分として100mg相当分、過リン酸石灰を0.5g及び塩化カリウムを0.2gを混合し、これに水溶化ユビキノンとして水溶化コエンザイムQ10(アクアQ10−P40;粉末状の形態 日清ファルマ製)を1.2g添加し、さらに混合した。この混合物は通常の黒ボク土と同様の取扱が可能で、鉢にて植物を生育可能であった。
(1)ユビキノンを生長促進剤として含有することを特徴とする植物栽培用担体。
(2)ユビキノンを含有する液体を植物体に噴霧・散布することを特徴とする植物育成方法。
(3)ユビキノンを含有する液体に植物種子、植物の苗体の根を少なくとも含む苗を浸すことを特徴とする植物育成方法。
(4)ユビキノンを含有する液体の植物の生長促進剤としての使用。
Claims (5)
- コエンザイムQ10を有効成分として含有することを特徴とする植物生長促進剤。
- コエンザイムQ10が水溶化コエンザイムQ10である、請求項1に記載の植物生長促進剤。
- 水溶化コエンザイムQ10を、植物生長促進剤を基準として0.00001〜100質量%含有することを特徴とする請求項2記載の植物生長促進剤。
- 請求項1〜3のいずれか記載の植物生長促進剤を含有することを特徴とする肥料。
- 請求項1〜3のいずれか記載の植物生長促進剤を含有することを特徴とする発芽促進剤。
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