JP3638975B2 - 便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤 - Google Patents

便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビール粕由来の画分を含む便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
TrowellやBurkitt(Am. J. Clin. Nutr. 29: 417,(1976))らの疫学的な研究調査から、近年、食生活が変化し過剰栄養摂取が問題となり、さらに、肥満、高血圧症などを始めとした成人病(心疾患、糖尿病、大腸憩室)が増加していることが明かとなってきている。食物センイはこれらの疾病予防に有効ではないかと推定されている。桐山らは、食物センイは摂取した食物の胃内滞留時間と小腸通過時間の延長と大腸滞留時間の短縮を引き起こす作用を有すると報告している(食物繊維 印南敏、桐山 修八 編 第一出版 1989)。
【0003】
食物センイは、その物性から、水溶性のもの(アラビアガム、プランタゴオバタ、ヘミセルロース、アガーなど)と不溶性のもの(セルロース、リグニン、キチンなど)に分別でき、便通改善に有効なのは不溶性食物センイといわれている。不溶性センイは、消化管内を通過する際に小腸に物理的刺激を与え、消化物の体積(糞便のかさ)を増して腸の蠕動運動を高めたり、消化管酵素分泌を促すなどの作用と、大腸においては腸内細菌の栄養源となり活動を活発にするなどの作用を有し、これにより便通改善機能が生じるとされている。
【0004】
しかし、一方ではその物理的な刺激により小腸粘膜の損傷が生じ、腸粘膜酵素活性が低下したり、腸内での発酵が進むことにより生じるエンテロトキシン(腸内細菌の代謝産物の一種である)などが損傷した腸粘膜を通して体内に流入し、生体に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。事実、食物センイの摂取により、特に女性では便秘の改善が見られるものの、下痢や腹部膨満感等の副作用もかなり生じると報告されている(基礎と臨床 22, No.8, 293-299、臨床栄養 77 No.6 777-785 (1990))。これらの副作用を防止することが可能で有効な食物センイは今まで実用化されていない。
【0005】
食物センイが腸粘膜に与える物理的刺激により生じる粘膜損傷をなんらかの方法で低減させることができれば、これらの食物センイの副作用を回避することが可能で、さらに食物センイの糞便排泄促進効果も増すと考えられるので、腸粘膜を物理的刺激に耐えうるように厚くすることによって粘膜損傷を低減させることが可能な物質が望まれていた。この様な物質として例えばグルタミンが挙げられる。グルタミンは腸粘膜細胞にとって良い栄養源となり、効率よくエネルギーを産生することにより、腸粘膜の増殖を促すとされている。さらに、このグルタミンの腸粘膜増強効果に着目して生体侵襲時(消化管等の外科手術)における経腸栄養剤としての利用も考えられる(参考文献;JJPEN, Vol.14 No.6, 929-932 (1992)南部ら)。但し、グルタミンはpHや熱に対する安定性が悪いことから、食品中にアミノ酸という形で添加しても、その製造時の加熱や加工工程で環化したり、グルタミン酸になってしまい、グルタミンの上記効果は発現しにくい。
【0006】
従来それを解決する方法として、グルタミンをいくつかのアミノ酸とともにペプチドの形態にして安定化したり(JJPEN.14, 915-919 (1992))、グルタミンを比較的多く含む小麦グルテンを酵素等を用いてグルタミンの多いペプチドにするなどの手法(特開平5-236909)が報告されていた。
【0007】
しかしながら、合成したグルタミンペプチドは安全性が懸念され、病態栄養の一部に使われているに過ぎない。加えて、このようなグルタミンペプチドは、食品加工工程で生じる熱やpH変化の影響を受けにくい十分に安定な形態であるとは言えなかった。また、小麦グルテンペプチドはその独特なえぐ味から未だ十分食用に耐えうるものはなかった。従って、熱やpH変化に対してより安定で、かつ、食用に耐える味を呈するグルタミン高含有物質が要望されていた。このようなグルタミン高含有物質は、便通改善剤および腸粘膜増殖増強剤として使用できる他、栄養補給や各種疾患の栄養療法における栄養剤、特に経腸栄養剤としても使用できることが期待される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、前記の従来技術の有する欠点を有しない便通改善剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、腸粘膜増殖増強剤を提供することも目的とする。
さらにまた、本発明は、経腸栄養剤を提供することも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、湿体状態のビール粕を圧ぺん粉砕処理し、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在条件下でふるい分けして得られるふるいを通過した画分が、糞便排泄促進効果および粘膜増殖促進効果を奏することを見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、ビール粕に由来し、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を含む便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤を提供するものである。また、本発明は、ビール粕に由来する画分であって、乾燥重量基準で、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を40〜60%、食物センイを10〜50%含有する前記画分を含む便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤を提供するものである。さらに、本発明は、湿体状態のビール粕を圧ペン粉砕処理し、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在下においてふるい分け処理して得られるふるいを通過した画分を含む便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤を提供するものである。また、本発明は、上記の便通改善剤または腸粘膜増殖増強剤を含有する飲食品組成物も提供する。
【0010】
特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明においては、ビール粕に由来し、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が高いタンパク質を利用することにより、該タンパク質に含まれるグルタミンが腸粘膜細胞にとって良い栄養源となり、効率良くエネルギーを産生し、腸粘膜の増殖が促されると考えられる。その結果、食物センイの摂取により生じうる腸粘膜の損傷が低減し、腸粘膜の損傷による腸粘膜酵素活性の低下が抑制される。これにより、食物センイの有する副作用が回避され、さらに、食物センイの有する糞便排泄促進効果が増強されると考えられる。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ビール粕とは、ビール製造における麦汁製造工程で副生するビール麦芽(副原料として、米、コーングリッツ、コーンスターチ等を含む場合がある。)の未糖化物をいうものとする。
【0012】
本発明において使用可能なビール粕由来の画分は以下のようにして製造することできる。まず、湿体状態のビール粕を圧ペン粉砕処理する。ビール粕の圧ぺん処理には被処理原料に圧縮力を与える構造の粉砕機であればいかなる物でも使用可能であるが、特にロールミルの使用が望ましい。ロール間の間隙は0.05〜2mm、好ましくは 0.1〜0.3mmである。ビール粕を圧ぺん処理する際に、ビール粕中の水分を65%以上に調製することが望ましい。
【0013】
次に、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在下においてふるい分け処理する。このふるい分け処理により、穀皮画分がふるい上に残り、タンパク質−食物センイ含有画分がふるいを通過する。ふるい目の寸法は5〜50メッシュ、好ましくは20〜50メッシュとする。タンパク質−食物センイ含有画分を効率よく得るために、前記の圧ぺん処理とこのふるい分けを2〜5回繰り返して行うのがよい。
【0014】
上記のようにして得られるふるいを通過した画分は、通常、乾燥させてから用いられる。乾燥は、50〜100℃の温度での温風乾燥または凍結乾燥等により行うことができる。また、場合によっては、湿体状態で用いることもできる。その場合の含水率は、通常、10〜90%程度に調製するとよい。
【0015】
上記のようにして得られるビール粕由来の画分は、乾燥重量基準で、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を40〜60%、食物センイを10〜50%含むものである。その他に、脂質を5〜15%、灰分を1〜5%含みうる。但し、グルタミンは化学的に不安定で定量が困難なため、上記のグルタミンおよびグルタミン酸の含量はグルタミン酸換算で定量された値である。この画分は、腸粘膜増殖増強作用と糞便排泄回数及び量を増やす作用を有し、特に小腸機能の弱い人にとって良好な便通改善作用を有する食物センイ源として有効である。従って、上記の画分を便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤、または経腸栄養剤として使用することできる。
【0016】
ビール仕込粕に含まれる大麦の構成タンパク質のアミノ酸配列はcDNA配列から明らかになっており(Barley Chemistry and Technology published by the American Association of Cereal Chemists, Inc. 1993)、グルタミンとグルタミン酸の総和のうちほとんどがグルタミンとされている。従って、上記の画分に含まれるタンパク質についてもそのグルタミンとグルタミン酸の総和のうちほとんどがグルタミンであると推定される。
【0017】
さらに、本発明においては、上記のビール粕由来の画分から、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を分離して使用してもよい。このタンパク質のアミノ酸組成はビール粕由来の画分のアミノ酸組成とほぼ同様な組成であった。例えば、上記のビール粕穀皮由来の画分を次に示す抽出試薬で数時間加熱還流し、ろ過してタンパク質を高濃度に含有した溶液を得ることができる。これを常法により透析、限外ろ過などの処理を行い凍結乾燥などによりタンパク質画分を得ることができる。これはさらに硫安沈殿処理等を行い精製することも可能である。
【0018】
タンパク質抽出試薬の組成
30 g ラウリル硫酸ナトリウム
18.6g EDTA 2ナトリウム塩
6.18g Na247
4.56g NaHPO4
10ml エチレングリコールモノエチルエーテル
を1 L に蒸留水を用いて定量し、pHを6.9〜7.1に合わせる。
これを試料1gに対して100ml添加して使用する。
【0019】
また、このタンパク質は必要に応じて市販のプロテアーゼを用いてペプチド態に低分子化することも可能である。分離したタンパク質は、単独で、あるいは、ビール粕由来の食物センイやその他の食物センイと組み合わせて、便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤または経腸栄養剤として使用することができる。
【0020】
本発明の便通改善剤または腸粘膜増殖増強剤を食品に添加して使用することができる。本発明の便通改善剤または腸粘膜増殖増強剤を添加することのできる飲食品としては、天然物およびその加工品を含む飲食物等を挙げることができる。飲食品1gに対し、上記のビール粕由来のタンパク質−食物センイ含有画分またはそれから分離されるグルタミンおよびグルタミン酸高含有タンパク質を5〜500mg添加することができる。また、本発明の便通改善剤または腸粘膜増殖増強剤を、溶液、懸濁液、粉末、顆粒、カプセル剤などの形態に製剤化して、食品に添加してもよい。
【0021】
本発明の便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤を医薬として製剤化して使用することもできる。この場合、製剤の投与形態は特に限定されないが、例えば投与経路として、経口投与、経腸投与等を挙げることができる。経口投与または経腸投与の場合、上記のビール粕由来のタンパク質−食物センイ含有画分またはそれから分離されるグルタミンおよびグルタミン酸高含有タンパク質をそのまま投与してもよいが、医薬的に許容できる腑形剤とともに、溶液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの形態で投与してもよい。その場合、製剤中の上記のビール粕由来のタンパク質−食物センイ含有画分またはそれから分離されるグルタミンおよびグルタミン酸高含有タンパク質の含有量は、1〜50%が適当であり、1〜40%が好ましい。腑形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の無機物、結晶セルロース、蒸留水、精製水、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油等の一般に使用されているものを例示することができる。製剤化する際には、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤などの添加剤を使用することができる。また、輸液としては、適当な緩衝剤、等張剤等を添加し、植物油等の油に溶解したものを用いることができる。また、他の医薬品と混合、あるいは併用することも可能である。なお、上記の製剤は殺菌処理を行なってもよい。
【0022】
本発明の便通改善剤、腸粘膜増殖増強剤および経腸栄養剤の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型などによって異なるが、一般に便通改善剤または腸粘膜増殖増強剤を経口投与する場合には、成人では1日当り30〜1000mg/kg体重の範囲が適当であり、経腸栄養剤を経腸投与する場合には、成人では1日当り30〜1000mg/kg体重の範囲が適当である。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0023】
【実施例】
〔実施例1〕
ビール粕の大麦に由来する画分であって、グルタミンおよびグルタミン酸高含有タンパク質と食物センイとを含む前記画分の調製
湿体状態のビール粕(水分:77.6%重量%)をロールミルで圧ぺんした(ロール回転数:100rpm,ロール間隙:0.1mm)後、水中で50メッシュふるいを用いてふるい分けし、ふるいを通過した画分を乾燥粉砕して、当該画分を得た。その画分の分析値は表1から3に示す通りである。なお分析法については以下に記載したとおりである。
【0024】
表1に示した粗タンパク質はケルダール法を用いて測定し(窒素のタンパク質換算係数は6.25とした。)、粗脂肪はジエチルエーテルを抽出溶媒としたソックスレー抽出法を用いて測定し、粗灰分は当該試料をるつぼに入れて直接灰化法で測定し、食物センイは表2で得られたヘミセルロース、セルロース、リグニンの合計量として算出した。
【0025】
表2に示したヘミセルロース、セルロース、リグニンの分析法は、印南、桐山編集の食物繊維(pp38-pp40 第一出版 1982)に示されている方法に基づいて行った。
表3に示されたアミノ酸組成は、当該試料を常法に従い塩酸加水分解後、アミノ酸自動分析法で定量し、トリプトファンについては高速液体クロマトグラフィーにて定量した。
【0026】
【表1】
Figure 0003638975
【0027】
【表2】
Figure 0003638975
【0028】
【表3】
Figure 0003638975
【0029】
〔実施例2〕
実施例1で調製したビール粕由来の画分の糞便排泄促進効果及び小腸機能に及ぼす効果
材料及び方法
供試動物として、SD系雄ラット(3週令、70g前後)を1週間固形飼料(CE−2、日本クレア製)で予備飼育して実験環境に順化したものを各群10匹ずつに区分けして使用した。実施例2で用いた飼料の組成は表4に示すとおりである。但し、実験群4の小麦グルテンのタンパク量はケルダール法でNを測定して算出した。また、実験群2〜4の飼料は、タンパク含量14.6%,食物センイ含量3%に統一した。
【0030】
飼料の投与法は混餌とし、自由摂取とした。2週間飼育後、3日間採糞し、糞の個数を排便回数の目安として測定し、糞乾燥重量を排泄量の目安として測定した。また実験最終日に小腸を摘出し、内容物を生理的食塩水10mlで3回洗浄し、空気で過剰な生理的食塩水を除去後、小腸の長さを幽門側から測定して15cmから30cmの15cm分を空腸とした。小腸機能に及ぼす効果のうち、粘膜増殖増強効果の指標として粘膜のタンパク含量を、粘膜酵素の活性の指標としてシュークラーゼ活性を測定した。これらの測定のために、前記の空腸部の粘膜をスライドガラスで剥離して、ポッターホモジネーターを用いて15mlのホモジネート液を作り験液とした。この験液のタンパク量とシュークラーゼの活性を測定した。実験の詳細な方法については葛西らの報告に従った(J. Nutr. Sci. Vitaminol., 39, 399-403,(1993))。
【0031】
【表4】
Figure 0003638975
【0032】
結果
結果を図1〜4に示す。図1〜4に示されるように、当該画分を摂取したときにのみ糞便個数(糞便回数)の特異的な上昇が見られ、さらに糞乾燥重量の増加も著しかった。また小腸の粘膜中のタンパク含量の上昇も当該画分摂取時にのみ上昇し、またシュークラーゼ活性についても同様な結果であった。また、当該画分のタンパク質のアミノ酸組成と極めて類似している小麦グルテンを当該画分のタンパク質の量と同量で投与しても、これらの現象は見られなかった。つまり、投与飼料中のグルタミン含量を当該画分以外のタンパク質で上げても、腸粘膜の増殖効果は見られず、食物センイ含量を当該画分以外のもの(例としてセルロース)で引き上げても糞量糞便回数の増加は見られないことから、当該画分の上記のような効果は、当該画分にはグルタミン含量の高いタンパク質と食物センイとが豊富にあることと、これらが複合された形で存在することよる相互作用などが影響して生じる特異的な効果であると考えられる。
【0033】
〔実施例3〕
種々の投与量における実施例1で調製したビール粕由来の画分の糞便排泄促進効果及び小腸機能に及ぼす効果
材料及び方法
実施例2に準じて行った。
但し、実施例3で用いた飼料の組成は表5に示すとおりであり、実験群6〜9の飼料における実施例1で調製したビール粕由来の画分の添加量はそれぞれ10、5、3および1重量%であった。また、実験群5〜9の飼料は、タンパク質含量14.6%、食物センイ含量3%に統一した。
【0034】
【表5】
Figure 0003638975
【0035】
結果
結果を図5〜8に示す。図5〜8に示されるように、当該画分がその効果を発揮するためには、少なくとも1%レベルでの添加が必要と思われる。
なお、この実施例2および3において、全実験群の体重増加量に変化はなく全群とも良好な成長を示した。このことから、当該画分の毒性は極めて低いことがわかる。
【0036】
〔実施例4〕
実施例1で調製したビール粕由来の画分の味の官能評価
グルタミン自体はほぼ無味、無臭なアミノ酸であるが、上市されているグルタミンを豊富に含むペプチドはかなりの苦みを伴い、食味の点であまり好ましくない。ビール粕からは、グルタミンを高濃度で含んでいるにも関わらずほぼ無味なタンパク質を含む画分が得られる。そこで市販のグルタミンペプチドと当該画分を官能評価に供した。
【0037】
材料及び方法
供試試料として、実施例1で調製したビール粕由来の画分とDMV社のグルタミンペプチドを用いた。試験は10人のボランティアにそれぞれの試料を少量与え、苦みと渋みについて、1;かなり強い,2;やや強い,3;どちらともいえない,4;やや弱い,5;かなり弱いという5段階で点数をつけてもらうことにより行い、その平均値を評価した。
結果
表6に示されるように、当該画分は市販されているグルタミンリッチなタンパクペプチド素材に比べて、苦み、渋み、酸味が著しく少ない食味に優れた素材であった。
【0038】
【表6】
Figure 0003638975
【0039】
〔実施例5〕
実施例1で調製したビール粕由来の画分を含有する飲食品の試作
表7に示す組成で、実施例1で調製したビール粕由来の画分を含有するピーチ果汁飲料を試作した。
【0040】
【表7】
Figure 0003638975
【0041】
〔実施例6〕
実施例1で調製したビール粕由来の画分を含有する飲食品の試作
表8に示す組成で、実施例1で調製したビール粕由来の画分入りのクッキーを試作した。
【0042】
【表8】
Figure 0003638975
【0043】
【発明の効果】
本発明の便通改善剤は、腸粘膜を増殖・増強させつつ、糞便排泄を促進させることができ、かつ、食用に耐える味を呈するので有用である。また、本発明の腸粘膜増殖増強剤は、腸粘膜を増殖・増強させることができ、かつ、食用に耐える味を呈するので有用である。さらに、本発明により、新規な経腸栄養剤も提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実験群1〜4の糞の個数を示すグラフである。
【図2】図2は、実験群1〜4の糞乾燥重量を示すグラフである。
【図3】図3は、実験群1〜4の空腸粘膜タンパク含量を示すグラフである。
【図4】図4は、実験群1〜4の空腸粘膜シュークラーゼ活性を示すグラフである。
【図5】図5は、実験群5〜9の糞の個数を示すグラフである。
【図6】図6は、実験群5〜9の糞乾燥重量を示すグラフである。
【図7】図7は、実験群5〜9の空腸粘膜タンパク含量を示すグラフである。
【図8】図8は、実験群5〜9の空腸粘膜シュークラーゼ活性を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 乾燥重量基準で、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を40〜60%、不溶性食物センイを10〜50%含有するビール粕に由来する画分を含む便通改善剤。
  2. 上記画分が、湿体状態のビール粕を圧ペン粉砕処理し、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在下においてふるい分け処理して得られるふるいを通過した画分であることを特徴とする、請求項1に記載の便通改善剤。
  3. 請求項1又は2に記載の便通改善剤を含有する便通改善用飲食品組成物。
  4. 乾燥重量基準で、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を40〜60%、不溶性食物センイを10〜50%含有するビール粕に由来する画分を含む腸粘膜増殖増強剤。
  5. 上記画分が、湿体状態のビール粕を圧ペン粉砕処理し、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在下においてふるい分け処理して得られるふるいを通過した画分であることを特徴とする、請求項4に記載の腸粘膜増殖増強剤。
  6. 請求項4又は5に記載の腸粘膜増殖増強剤を含有する腸粘膜増殖増強用飲食品組成物。
  7. 乾燥重量基準で、グルタミンおよびグルタミン酸の含量が構成アミノ酸の10〜40%であるタンパク質を40〜60%、不溶性食物センイを10〜50%含有するビール粕に由来する画分を含む経腸栄養剤。
  8. 上記画分が、湿体状態のビール粕を圧ペン粉砕処理し、得られた圧ペン粉砕処理物を水の存在下においてふるい分け処理して得られるふるいを通過した画分であることを特徴とする、請求項7に記載の経腸栄養剤。
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