JP3638962B2 - 車両用冷却ファン - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ファン騒音を改善した車両用冷却ファンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ラジエータやコンデンサに風を送って冷却する車両用冷却ファンは、通常、羽根が5枚(図3の左側部分参照)で、その騒音は、180〜200Hz近傍(ファン回転数で約2200rpm)に音圧レベルの最大ピークを有し、この最大ピークのグランドレベルからの突出量は約25dBである。
車両用冷却ファンの騒音を改善するために、従来、(i)騒音レベルを下げたり、(ii)ファンの羽根を不等ピッチ化して、最大音圧レベルを低減させたり、または(iii )特開平4−91398号公報に開示されているように、各羽根の固有振動数を所定の比に設定し、耳に心地よく聞える音にする等の、種々の工夫がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、騒音レベルを下げたり、不等ピッチ化によって最大音圧レベルを下げても、音圧レベルのピークが低周波数域にあると不快に感じ、音圧レベルの低減だけでは、騒音の官能評価の改善上十分でない。
また、各羽根の固有振動数を所定の比に設定する場合は、羽根の形状を1枚1枚変えなければならず、設計、製造に手間がかかり、容易でない。
本発明の目的は、ファン騒音の官能評価が向上された車両用冷却ファンを提供することにあり、また容易に官能評価を向上できる車両用冷却ファンを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する、本発明の車両用冷却ファンは、次の(1)のファンから成る。
羽根枚数を11または13枚に設定し、ファン発生音の最大音圧レベル音の周波数を320Hz以上に設定するとともに、その最大音圧レベルのグランドレベルからの突出量を15dB以下に設定し、ファン回転数約2200rpmに設定したことを特徴とする車両用冷却ファン。
【0005】
【作用】
上記()の冷却ファンでは、音色と音の大きさの両方からファン構造が規制される。音色は、最大音圧レベル音の周波数を320Hz以上の高周波数域に設定したので、耳に心地よく聞える音となる。また、最大ピーク音のグランドレベルからの突出量を15dB以下に抑えたので、最大ピーク音は官能上小さな音となる。これらにより、ファン騒音の官能評価が向上する。
また、ファンの羽根を11または13枚に多枚化したので、羽根を1枚1枚異ならせて作製する必要がなく、多枚化するだけなので、設計、製造は容易である。
【0006】
【実施例】
以下に、本発明の望ましい実施例を図面を参照して説明する。
車両のラジエータ、コンデンサ等の冷却用の、押し込み式電動冷却ファンの騒音の各要因の、5段階官能評価への影響の割合は、発明者による試験研究の結果によれば、図1、図2に示す通りであり、最大音圧レベル音の周波数(音色に関連する)が約20%、最大ピークのグランドレベルからの突出量(ピーク音の大きさと関連する)が約20%、OA値(オーバオール値のことで、周波数微小域△fとそのときの音圧レベルとの積を1KHz以下の領域で総和したもの)が約30%、その他の要因が約30%である。
【0007】
従来は、専らOA値の低減によって冷却用ファンの騒音低減を対策してきたが、本発明では、最大ピーク音の周波数と最大ピークのグランドレベルからの突出量を規制することによって騒音対策するものである。具体的には、ファン回転数が約2200rpmで、ファン騒音の最大ピーク音の周波数を320Hz以上に、さらに望ましくは400Hz以上に設定し、最大ピークのグランドレベルからの突出量を15dB以下に設定する。
その理由は、音圧の最大ピークが現われる周波数を高周波域にずらすことにより、その最大ピーク音が耳に心地よく聞えるようになるからであり、また、その最大ピークのグランドレベルからの突出量を小さくすることにより、その最大ピーク音の大きさが小さくなるからである。従来のファンは、これらの領域に設定されていない。
【0008】
図3は、上記の領域に設定された冷却ファン1を示している。この冷却ファン1の羽根2の枚数は、従来の5枚から増加されており、具体的には11または13枚の枚数に設定される。図示例は羽根枚数が11枚の場合を示している。
この羽根の多枚化によって、ファンが発生する騒音の周波数が高周波数側にずれる他、音圧レベルのグランドレベルからの突出量が低下することが判明した。ただし、羽根の多枚化によってファンからエアに与えられるエネルギは増加するので音圧レベルは若干増加する。
【0009】
図4〜図6は、ファンの羽根の多枚化による最大ピーク音の高周波化と、官能評価点の向上の傾向を示す。図4に示すように、ファンの羽根枚数を増大させるとそれに比例してファン騒音の最大ピークの周波数が増す。従来の5枚羽根ファンで、ファン回転数が2200rpmのとき最大ピークが180Hzで表われるとすると、11枚羽根とすることによりファン回転数が2200rpmのときの最大ピークの現われる周波数は、180Hz×11/5となり、約400Hzになる。同様に、13枚羽根ファンでは約470Hzとなる。羽根の枚数が多い程、最大ピークの周波数は高周波数域に移り、音色が軽くなって音色上はよいが、羽根からエアに与えられるエネルギが大となってOA値が悪化するので、上限は13枚とする。下限は、羽根枚数を少なくすると、従来に近づき、音色が悪化するので、上記の11枚程度とする。図5は、羽根の枚数が増加されたときに、最大ピークが高周波化することを示し、図6は最大ピークの周波数が増大されると官能評価点が平方根の関数で上ることを示している。
【0010】
図7〜図9は、ファンの羽根の多枚化による最大ピークのグランドレベルからの突出量の減少と、ピーク突出量の減少による官能評価点の向上の傾向を示す。図7に示すように、ファンの枚数が増加すると、音圧レベルの最大ピークのグランドレベルからの突出量が双曲線的に減少する。これを図で示せば図8のようになる。たとえば、従来の5枚羽根で最大ピークのグランドレベルからの突出量が約25dBであったものが、11枚羽根にすることによって12〜13dBに減少する。したがって、15dB以下を満足する。25dBから12〜13dBへの低減は、デシベルが対数関数で変化するので、1/2ではなく、桁が変わる減少で、耳に聞える音は大幅な騒音低下になる。
ただし、羽根枚数の増加によってOA値が増加するので、羽根枚数の上限は13枚とし、下限は上記の11枚程度とする。図9は、ピーク突出量が低下すると官能評価点が上る(5に近づく)ことを示す。
【0011】
本発明の、ファンの羽根の多枚化と、従来の羽根の不等ピッチ化を組み合わせれば、図10に示すように、さらに騒音低減性能を向上できるが、市場の要求レベルを考慮した場合、多枚化のみで十分である。そのため、同じく図10に示すように、不等ピッチ化のみよりも、多枚化のみの方が、コスト低減、開発期間短縮、製造のし易さにつながる。図10からもわかるように、多枚化は、不等ピッチ化に比べて、容易に低コストに騒音対策を市場要求レベルで達成できる。
なお、上記は、押し込み式冷却ファンのみならず、ラジエータの後方に設けられるファンにも適用でき、全ての車両用ファンに一般的に適用できる。
【0012】
【発明の効果】
請求項の発明によれば、ファンの発生音の最大音圧レベルの周波数を320Hz以上、その最大音圧レベルの突出量を15dB以下に設定したので、騒音の音色を改善できるとともに、大きさを低減でき、官能評価を向上できる。
また、ファンの羽根の枚数を11または13枚に設定したので、容易に騒音対策できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る車両用冷却ファンの設定域を示す音圧レベル対周波数特性図である。
【図2】 各要因のファン騒音に与える影響の割合を示す図である。
【図3】 本発明の一実施例に係る車両用冷却ファン(右側)と従来品(左側)の正面図である。
【図4】 最大ピーク音周波数対ファン羽根枚数特性図である。
【図5】 音圧レベル対周波数特性図である。
【図6】 官能評価点対ピーク周波数特性図である。
【図7】 最大ピーク突出量対ファン羽根枚数特性図である。
【図8】 音圧レベル対周波数特性図である。
【図9】 官能評価点対ピーク突出量特性図である。
【図10】 多枚化、不等ピッチ化と、騒音低減性能およびコストとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 車両用冷却ファン
2 羽根

Claims (1)

  1. 羽根枚数を11または13枚に設定し、ファン発生音の最大音圧レベル音の周波数を320Hz以上に設定するとともに、その最大音圧レベルのグランドレベルからの突出量を15dB以下に設定し、ファン回転数約2200rpmに設定したことを特徴とする車両用冷却ファン。
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