JP3638751B2 - 消臭性歯科用樹脂組成物 - Google Patents
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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は歯科用樹脂組成物に関するものである。より詳しくは義歯、義歯床リベース材、矯正床、義歯補修材、マウスピース、あるいはこれらの表面を被覆するコーティング材等に適した組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の歯科治療では、例えば義歯床、矯正床などの可撤性補綴物を使用することが一般的である。これら補綴物は口腔内での装着により徐々にプラークが付着し汚染されていく。このため患者は何らかの手段により補綴物の清掃を日常的に行い、清潔感を保とうとする。可撤性補綴物は他人の目に触れることがあるという心理的な要因も手伝って、患者の可撤性補綴物の清掃に対する意識は非常に高い。例えば、義歯床の清掃には従来から主にブラッシングといった機械的清掃法、義歯洗浄剤を用いた化学的清掃法及びこれらの組み合わせ等による方法が採られている。しかしながら、義歯表面の汚れは除去できるが、義歯床に強固に吸着した悪臭成分の除去には従来の方法では不十分であるという問題があった。
【0003】
一方、近年、アナターゼ型TiO2を装置類、タイル、ガラスなどに配合し、光照射することで殺菌及び脱臭する方法が開示されている。しかしながら、歯科用材料についてはアナターゼ型TiO2を配合して、消臭機能を付与したものは知られていない。
【0004】
また、従来から歯科用樹脂組成物の中でもコンポジットレジンやオペーカー等にはTiO2を配合することが知られている。しかし、TiO2は調色あるいは下地の色を遮蔽するための白色顔料として配合されており、光触媒として配合されているものではない。むしろ逆に、顔料として用いる場合には、光触媒活性は低い方が良く、TiO2の結晶型はアナターゼ型よりもルチル型が好んで用いられる。更にTiO2の光触媒活性を低下させるために表面処理が施されていることもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
コンポジットレジンやオペーカー等に用いられるTiO2を含んだ歯科用樹脂組成物に光を照射しても、その材料には消臭性は発現されない。更にこのような組成物の外観は白濁し、透明感が損なわれ、ほとんどの目的にとって審美性が大きく低下するといった問題もある。なぜなら白色顔料として用いられるTiO2は光触媒活性が低く、光を散乱する能力が非常に高いためである。
【0006】
一方、装置類、タイル、ガラス等にアナターゼ型TiO2を配合した抗菌あるいは脱臭技術が幾つか特許出願されている。例えば、特開平8−131524号公報では、熱可塑性基材表面への光触媒層の形成に際し、光触媒粒子のゾルまたは前駆体をスプレーコーティングし、熱可塑性基材を加熱して軟化させることにより光触媒層の下層の一部を基材に埋没し、次いで固化させる方法及び基材が開示されている。しかしながら、この方法を樹脂からなる歯科用材料に適用すると、焼けコゲや、割れや変形を引き起こすため、歯科材料表面に消臭機能を付与する方法としては適していなかった。かかる現状に鑑み、本発明は歯科用組成物において、口腔内で有臭成分を吸着した歯科材料を光照射して、有臭成分を分解無臭化できる組成物を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(a)(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(b)アナターゼ型TiO2及び(c)重合開始剤とを含有してなることを特徴とする消臭性歯科用樹脂組成物である。
【0008】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物に関して、配合されるTiO2の結晶型はアナターゼ型がルチル型よりも消臭性に関して光触媒活性が優れているため、アナターゼ型TiO2であることが必要である。
【0009】
消臭性歯科用樹脂組成物に配合されるアナターゼ型TiO2の平均粒径は、光の散乱に影響し、材料の透明性を左右する。従って、光の散乱を少なくし歯科用材料の透明性を維持し、審美性を損なわないため、0.1μm未満であることが必要であり、更に好ましくは0.05μm未満である。
【0010】
また、消臭性歯科用樹脂組成物に配合されるアナターゼ型TiO2の比表面積は光触媒活性を高め、優れた消臭性を得るために、20m2/g以上であることが必要であり、更に好ましくは40m2/g以上である。
【0011】
従って、材料の審美性を損なわず、優れた消臭性を得るにはアナターゼ型TiO2の平均粒径が0.1μm未満、更に好ましくは0.05μm未満であることと、比表面積が20m2/g以上、更に好ましくは40m2/g以上であることの両方を満足することが必要である。
【0012】
従来から歯科用樹脂組成物の中でも、コンポジットレジンやオペーカー等に用いられているTiO2は調色あるいは下地の色を遮蔽するための白色顔料として配合されている。このような用途では、TiO2の光触媒活性は低い方が良く、その結晶型は99%以上がルチル型からなる。
本組成物に用いられるTiO2は光触媒活性が高いアナターゼ型であり、その結晶型はアナターゼ型純品またはアナターゼ/ルチルの混合型でも良く、組成物中に必要量のアナターゼ型TiO2が含有されればよい。
【0013】
歯科用材料へアナターゼ型TiO2を配合する具体的な方法としては次のような手段を挙げることが出来る。しかし、以下のものに限定されるものではない。
(1)アナターゼ型TiO2を練り混んだ歯科用樹脂組成物を重合硬化させて、歯科用補綴物を得る。(2)重合硬化後の歯科用補綴物にアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を薄く塗布し、重合硬化させる。(3)重合硬化前の歯科用補綴物にアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を薄く塗布し、共に重合硬化させる。
【0014】
アナターゼ型TiO2を歯科用補綴物に配合する方法において、(1)に示したアナターゼ型TiO2を補綴物中に練り込む方法では、補綴物表面にTiO2粒子を露出させるために、表面研磨することが好ましい。
【0015】
前記の研磨方法は特に限定されるものではないが、一般に歯科用ポイント類による研磨、バフ研磨、レーズ研磨、サンドペーパー研磨、エメリーペーパー研磨、バレル研磨等が用いられる。
【0016】
アナターゼ型TiO2を歯科用補綴物に配合する方法において(2)あるいは(3)に示したアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を歯科用補綴物に薄く塗布する方法では、硬化塗膜は非常に薄いため研磨はしてもしなくてもよい。もし研磨する場合には前記同様の研磨方法が用いられる。
【0017】
アナターゼ型TiO2を配合した消臭性歯科用樹脂組成物を歯科用補綴物に塗布する方法は特に限定されるものではないが、一般的に筆、刷毛、スプレー等を用いることができる。
【0018】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル、多官能性の(メタ)アクリル酸エステルのいずれも使用することができるが、歯科用補綴物に薄く塗布された薄膜が素早く重合硬化するためには多官能性のものを配合するのが好ましく、特に3官能以上のものが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0019】
単官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数1以上20以下)やその他の(メタ)アクリレートが使用できる。具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数1〜25)、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度2〜10)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
また、多官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数1以上20以下)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数2〜4、かつ重合度2〜200)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2、2’−ビス〔p−(γ−メタクリオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、ビスフェーノールAジメタクリレート、2,2’−ジ(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(一分子中にエトキシ基2〜10)、1,2−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤、常温重合開始剤があげられる。
【0022】
光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、ベンジル、アセナフテンキノンおよびフェナントラキノンなどのα−ジケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、2−エチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0023】
これらの光重合開始剤は、第3級アミン、アルデヒド、メルカプタンなどの還元剤と適宜組み合わせた光重合開始剤系触媒として使用される。
【0024】
かかる第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミンメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート等の分子内に重合性基を有する脂肪族第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−(N−メチル−N−(2−メタクリロイルオキシ)エチル)アミノ安息香酸エチル等の分子内に重合性基を有する芳香族第3級アミン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N−フェニルグリシン、N−(p−シアノ)フェニル−N−メチルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体、モルホリノメタクリレート、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどを挙げることができる。
【0025】
アルデヒドとしては、例えば、シトロネラール、ラウリルアルデヒド、o−フタルジアルデヒド、p−オクチルオキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。
【0026】
メルカプタンとしては、例えば、1−デカンチオール、チオサリチル酸、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メルカプトアセトフェノン、4−t−ブチルチオフェノールなどを挙げることができる。
【0027】
さらに、該光重合開始剤に過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物を添加した系も好適に用いられる。
【0028】
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびクメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの開始剤が使用される。
【0029】
さらに常温重合開始剤としては、有機過酸化物/芳香族第3級アミン系、有機過酸化物/芳香族第3級アミン/芳香族スルフィン酸系などのレドックス系開始剤が使用される。
【0030】
なお、重合開始剤として酸化剤−還元剤の組み合わせを含有する場合は、保存安定性の観点から、これらが混合しないように分割包装形態とし、使用直前に混合する形態とする必要がある。
【0031】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物には、必要に応じて有機フィラー(例えばポリメチルメタクリレート等)、無機フィラー(例えばシリカ粉末等)、有機複合フィラー等を、重合後の硬度や耐摩耗性等を向上させるために加えることも出来る。さらに重合禁止剤(例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシルトルエン等)、酸化安定剤、紫外線吸収剤(例えばベンゾフェノン等)、顔料、染料、溶媒(例えばアセトン、塩化メチレン等)、分散剤(例えばトリエタノールアミンの有機酸塩等)、擬態血管のための繊維を添加することもできる。
【0032】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル単量体、アナターゼ型TiO2及び重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、(メタ)アクリル酸エステル単量体が10−99.945重量%、アナターゼ型TiO2が0.005−20重量%、重合開始剤が0.05−5重量%である。アナターゼ型TiO2の配合量が0.005重量%以下では光照射による消臭性が不十分となり、20重量%以上では重合硬化物の脆さが増し、強度が不足する。また白濁感が増し透明性がなくなる。
【0033】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物は、例えばこれを用いて作製した義歯等を義歯洗浄剤を用いて洗浄する際に、蛍光灯あるいは太陽光線等を当てることにより、洗浄剤では除去しきれなかった悪臭を除去することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(1)消臭性の評価方法
アナターゼ型TiO2を練り込む場合:アナターゼ型TiO2を含んだ消臭性歯科用樹脂組成物を直径2cm、厚さ1mmの円盤状金型に充填し、重合することによりサンプルを得た。
アナターゼ型TiO2をコーティングする場合:直径2cm,厚さ1mmのPMMA板にアナターゼ型TiO2を含んだ消臭性歯科用樹脂組成物を塗布した後に重合することによりサンプルを得た。このサンプルを口臭の主原因物質である揮発性硫化物の水溶液100cc(0.4%メチルメルカプタン水溶液)に37℃、24時間浸漬させた後、水洗または義歯洗浄剤(ポリデント、小林製薬製)にて洗浄後、蛍光灯(2500ルクス)を照射した(30分毎にサンプルを裏返す)。臭気濃度を測定する1時間前に50ccガラス瓶にサンプルを入れ密栓し、光照射時間に伴うサンプルの悪臭物質の放出濃度(ppm)を検知管(ガステック製)で測定した(室温25℃)。義歯床用アクリリックレジンであるアクロン(GC製)を水洗したものを1時間光照射した後の悪臭物質の放出濃度を100として消臭性を評価した(表1に示す)。すなわち数値が0に近い程、消臭性に優れる。
【0036】
(2)透明性の評価方法
上記と同様にしてサンプルを作製し、その色調を色差計(日本電色製)を用いて測定した。サンプルの透明性を△L*で評価した(表2に示す)。すなわち△L*の値が大きい程、透明性に優れる。
【0037】
(3)抗菌性の評価方法
上記と同様にサンプルを作製した。このサンプルを唾液1ccに37℃、24時間浸漬させた後に水洗した。サンプルに蛍光灯を照射させた後、光照射した面をシャーレ中の寒天培地に万遍なく軽く押しつけた。37℃、24時間培養させ、寒天上の細菌の繁殖の程度を評価した。
【0038】
【実施例】
実施例1
ポリメチルメタクリレート(根上工業製、以下PMMAと略称する)7.0g、メチルメタクリレート3.0g(和光純薬製、以下MMAと略称する)、アナターゼ型TiO2としてP−25(日本アエロジル製、以下P−25と示す。平均粒径は0.021μm、比表面積は50m2/gである)0.1g、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂製、以下BPOと略称する)0.1gからなる組成物を調製した(TiO2練り混み型)。組成物を前述の金型に填入し、100℃、1時間加熱重合した。得られたサンプルの表面を#1500耐水研磨紙で研磨した。その消臭性と透明性を上記の方法で評価し、その結果を表1および表2に示した。
【0039】
実施例2
ポリ(メチルメタクリレート+スチレン+トリメチロールプロパントリメタクリレート)(積水化成品工業製、MS5XT−15)4.0g、シリカ粉末であるアエロジル380(日本アエロジル製)1.0g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学製)2.0g、2、2’−ビス〔p−(γ−メタクリオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(共栄社油脂化学工業製)3.0g、P−25を0.2g、BPO0.1gからなる組成物を調製した(TiO2練り混み型)。前記同様に加熱重合、研磨を行いサンプルを得た。
【0040】
実施例3
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、以下DPE−6Aと略称する)6.0g、MMA4.0g、P−25を0.1g、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製、以下TMDPOと略称する)0.1gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。直径2cm,厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライト(モリタ製)で3分間光重合した。
【0041】
実施例4
トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社油脂化学工業製、以下TMPTMと略称する)8.0g、ブチルメタクリレート(和光純薬製、以下BMAと略称する)2.0g、アエロジル380を0.2g、P−25を0.1g、BPO0.3gからなる組成物A液を調製した。TMPTMを8.0g、BMA2.0g、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(和光純薬製)0.3gからなる組成物B液を調製した。このA,B液を1gずつ混合し(TiO2コーティング型)、前述のPMMA板に薄く塗布し、5分間放置し化学重合させた。
【0042】
実施例5
DPE−6Aを5.0g、MMA5.0g、ポリエチルメタクリレート(根上工業製)2.0g、P−25を0.6g、TMDPOを0.3gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。前述のPMMA板に薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0043】
比較例1
義歯床用アクリリックレジンであるアクロン(GC製、クリア)の粉7.0g、アクロンの液3.0gを混合し、金型に填入し、100℃、1時間加熱重合した。
【0044】
比較例2
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、白色顔料用のTiO2(和光純薬製、平均粒径は0.315μm,比表面積は10m2/gである)を0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。直径2cm,厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0045】
比較例3
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、市販のアナターゼ型TiO2(平均粒径0.089μm、比表面積15m2/g、アナターゼ型90%)0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した。この組成物を直径2cm、厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0046】
比較例4
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、市販のアナターゼ型TiO2(平均粒径0.131μm、比表面積22m2/g、アナターゼ型90%)0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した。この組成物を直径2cm、厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、口腔内で有臭成分を吸着した歯科材料を光照射して、有臭成分を分解無臭化できる組成物を提供することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は歯科用樹脂組成物に関するものである。より詳しくは義歯、義歯床リベース材、矯正床、義歯補修材、マウスピース、あるいはこれらの表面を被覆するコーティング材等に適した組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の歯科治療では、例えば義歯床、矯正床などの可撤性補綴物を使用することが一般的である。これら補綴物は口腔内での装着により徐々にプラークが付着し汚染されていく。このため患者は何らかの手段により補綴物の清掃を日常的に行い、清潔感を保とうとする。可撤性補綴物は他人の目に触れることがあるという心理的な要因も手伝って、患者の可撤性補綴物の清掃に対する意識は非常に高い。例えば、義歯床の清掃には従来から主にブラッシングといった機械的清掃法、義歯洗浄剤を用いた化学的清掃法及びこれらの組み合わせ等による方法が採られている。しかしながら、義歯表面の汚れは除去できるが、義歯床に強固に吸着した悪臭成分の除去には従来の方法では不十分であるという問題があった。
【0003】
一方、近年、アナターゼ型TiO2を装置類、タイル、ガラスなどに配合し、光照射することで殺菌及び脱臭する方法が開示されている。しかしながら、歯科用材料についてはアナターゼ型TiO2を配合して、消臭機能を付与したものは知られていない。
【0004】
また、従来から歯科用樹脂組成物の中でもコンポジットレジンやオペーカー等にはTiO2を配合することが知られている。しかし、TiO2は調色あるいは下地の色を遮蔽するための白色顔料として配合されており、光触媒として配合されているものではない。むしろ逆に、顔料として用いる場合には、光触媒活性は低い方が良く、TiO2の結晶型はアナターゼ型よりもルチル型が好んで用いられる。更にTiO2の光触媒活性を低下させるために表面処理が施されていることもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
コンポジットレジンやオペーカー等に用いられるTiO2を含んだ歯科用樹脂組成物に光を照射しても、その材料には消臭性は発現されない。更にこのような組成物の外観は白濁し、透明感が損なわれ、ほとんどの目的にとって審美性が大きく低下するといった問題もある。なぜなら白色顔料として用いられるTiO2は光触媒活性が低く、光を散乱する能力が非常に高いためである。
【0006】
一方、装置類、タイル、ガラス等にアナターゼ型TiO2を配合した抗菌あるいは脱臭技術が幾つか特許出願されている。例えば、特開平8−131524号公報では、熱可塑性基材表面への光触媒層の形成に際し、光触媒粒子のゾルまたは前駆体をスプレーコーティングし、熱可塑性基材を加熱して軟化させることにより光触媒層の下層の一部を基材に埋没し、次いで固化させる方法及び基材が開示されている。しかしながら、この方法を樹脂からなる歯科用材料に適用すると、焼けコゲや、割れや変形を引き起こすため、歯科材料表面に消臭機能を付与する方法としては適していなかった。かかる現状に鑑み、本発明は歯科用組成物において、口腔内で有臭成分を吸着した歯科材料を光照射して、有臭成分を分解無臭化できる組成物を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(a)(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(b)アナターゼ型TiO2及び(c)重合開始剤とを含有してなることを特徴とする消臭性歯科用樹脂組成物である。
【0008】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物に関して、配合されるTiO2の結晶型はアナターゼ型がルチル型よりも消臭性に関して光触媒活性が優れているため、アナターゼ型TiO2であることが必要である。
【0009】
消臭性歯科用樹脂組成物に配合されるアナターゼ型TiO2の平均粒径は、光の散乱に影響し、材料の透明性を左右する。従って、光の散乱を少なくし歯科用材料の透明性を維持し、審美性を損なわないため、0.1μm未満であることが必要であり、更に好ましくは0.05μm未満である。
【0010】
また、消臭性歯科用樹脂組成物に配合されるアナターゼ型TiO2の比表面積は光触媒活性を高め、優れた消臭性を得るために、20m2/g以上であることが必要であり、更に好ましくは40m2/g以上である。
【0011】
従って、材料の審美性を損なわず、優れた消臭性を得るにはアナターゼ型TiO2の平均粒径が0.1μm未満、更に好ましくは0.05μm未満であることと、比表面積が20m2/g以上、更に好ましくは40m2/g以上であることの両方を満足することが必要である。
【0012】
従来から歯科用樹脂組成物の中でも、コンポジットレジンやオペーカー等に用いられているTiO2は調色あるいは下地の色を遮蔽するための白色顔料として配合されている。このような用途では、TiO2の光触媒活性は低い方が良く、その結晶型は99%以上がルチル型からなる。
本組成物に用いられるTiO2は光触媒活性が高いアナターゼ型であり、その結晶型はアナターゼ型純品またはアナターゼ/ルチルの混合型でも良く、組成物中に必要量のアナターゼ型TiO2が含有されればよい。
【0013】
歯科用材料へアナターゼ型TiO2を配合する具体的な方法としては次のような手段を挙げることが出来る。しかし、以下のものに限定されるものではない。
(1)アナターゼ型TiO2を練り混んだ歯科用樹脂組成物を重合硬化させて、歯科用補綴物を得る。(2)重合硬化後の歯科用補綴物にアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を薄く塗布し、重合硬化させる。(3)重合硬化前の歯科用補綴物にアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を薄く塗布し、共に重合硬化させる。
【0014】
アナターゼ型TiO2を歯科用補綴物に配合する方法において、(1)に示したアナターゼ型TiO2を補綴物中に練り込む方法では、補綴物表面にTiO2粒子を露出させるために、表面研磨することが好ましい。
【0015】
前記の研磨方法は特に限定されるものではないが、一般に歯科用ポイント類による研磨、バフ研磨、レーズ研磨、サンドペーパー研磨、エメリーペーパー研磨、バレル研磨等が用いられる。
【0016】
アナターゼ型TiO2を歯科用補綴物に配合する方法において(2)あるいは(3)に示したアナターゼ型TiO2を配合した歯科用樹脂組成物を歯科用補綴物に薄く塗布する方法では、硬化塗膜は非常に薄いため研磨はしてもしなくてもよい。もし研磨する場合には前記同様の研磨方法が用いられる。
【0017】
アナターゼ型TiO2を配合した消臭性歯科用樹脂組成物を歯科用補綴物に塗布する方法は特に限定されるものではないが、一般的に筆、刷毛、スプレー等を用いることができる。
【0018】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル、多官能性の(メタ)アクリル酸エステルのいずれも使用することができるが、歯科用補綴物に薄く塗布された薄膜が素早く重合硬化するためには多官能性のものを配合するのが好ましく、特に3官能以上のものが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0019】
単官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数1以上20以下)やその他の(メタ)アクリレートが使用できる。具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数1〜25)、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度2〜10)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
また、多官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数1以上20以下)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数2〜4、かつ重合度2〜200)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2、2’−ビス〔p−(γ−メタクリオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、ビスフェーノールAジメタクリレート、2,2’−ジ(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(一分子中にエトキシ基2〜10)、1,2−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤、常温重合開始剤があげられる。
【0022】
光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、ベンジル、アセナフテンキノンおよびフェナントラキノンなどのα−ジケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、2−エチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0023】
これらの光重合開始剤は、第3級アミン、アルデヒド、メルカプタンなどの還元剤と適宜組み合わせた光重合開始剤系触媒として使用される。
【0024】
かかる第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミンメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート等の分子内に重合性基を有する脂肪族第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−(N−メチル−N−(2−メタクリロイルオキシ)エチル)アミノ安息香酸エチル等の分子内に重合性基を有する芳香族第3級アミン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N−フェニルグリシン、N−(p−シアノ)フェニル−N−メチルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体、モルホリノメタクリレート、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどを挙げることができる。
【0025】
アルデヒドとしては、例えば、シトロネラール、ラウリルアルデヒド、o−フタルジアルデヒド、p−オクチルオキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。
【0026】
メルカプタンとしては、例えば、1−デカンチオール、チオサリチル酸、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メルカプトアセトフェノン、4−t−ブチルチオフェノールなどを挙げることができる。
【0027】
さらに、該光重合開始剤に過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物を添加した系も好適に用いられる。
【0028】
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびクメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの開始剤が使用される。
【0029】
さらに常温重合開始剤としては、有機過酸化物/芳香族第3級アミン系、有機過酸化物/芳香族第3級アミン/芳香族スルフィン酸系などのレドックス系開始剤が使用される。
【0030】
なお、重合開始剤として酸化剤−還元剤の組み合わせを含有する場合は、保存安定性の観点から、これらが混合しないように分割包装形態とし、使用直前に混合する形態とする必要がある。
【0031】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物には、必要に応じて有機フィラー(例えばポリメチルメタクリレート等)、無機フィラー(例えばシリカ粉末等)、有機複合フィラー等を、重合後の硬度や耐摩耗性等を向上させるために加えることも出来る。さらに重合禁止剤(例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシルトルエン等)、酸化安定剤、紫外線吸収剤(例えばベンゾフェノン等)、顔料、染料、溶媒(例えばアセトン、塩化メチレン等)、分散剤(例えばトリエタノールアミンの有機酸塩等)、擬態血管のための繊維を添加することもできる。
【0032】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル単量体、アナターゼ型TiO2及び重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、(メタ)アクリル酸エステル単量体が10−99.945重量%、アナターゼ型TiO2が0.005−20重量%、重合開始剤が0.05−5重量%である。アナターゼ型TiO2の配合量が0.005重量%以下では光照射による消臭性が不十分となり、20重量%以上では重合硬化物の脆さが増し、強度が不足する。また白濁感が増し透明性がなくなる。
【0033】
本発明の消臭性歯科用樹脂組成物は、例えばこれを用いて作製した義歯等を義歯洗浄剤を用いて洗浄する際に、蛍光灯あるいは太陽光線等を当てることにより、洗浄剤では除去しきれなかった悪臭を除去することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(1)消臭性の評価方法
アナターゼ型TiO2を練り込む場合:アナターゼ型TiO2を含んだ消臭性歯科用樹脂組成物を直径2cm、厚さ1mmの円盤状金型に充填し、重合することによりサンプルを得た。
アナターゼ型TiO2をコーティングする場合:直径2cm,厚さ1mmのPMMA板にアナターゼ型TiO2を含んだ消臭性歯科用樹脂組成物を塗布した後に重合することによりサンプルを得た。このサンプルを口臭の主原因物質である揮発性硫化物の水溶液100cc(0.4%メチルメルカプタン水溶液)に37℃、24時間浸漬させた後、水洗または義歯洗浄剤(ポリデント、小林製薬製)にて洗浄後、蛍光灯(2500ルクス)を照射した(30分毎にサンプルを裏返す)。臭気濃度を測定する1時間前に50ccガラス瓶にサンプルを入れ密栓し、光照射時間に伴うサンプルの悪臭物質の放出濃度(ppm)を検知管(ガステック製)で測定した(室温25℃)。義歯床用アクリリックレジンであるアクロン(GC製)を水洗したものを1時間光照射した後の悪臭物質の放出濃度を100として消臭性を評価した(表1に示す)。すなわち数値が0に近い程、消臭性に優れる。
【0036】
(2)透明性の評価方法
上記と同様にしてサンプルを作製し、その色調を色差計(日本電色製)を用いて測定した。サンプルの透明性を△L*で評価した(表2に示す)。すなわち△L*の値が大きい程、透明性に優れる。
【0037】
(3)抗菌性の評価方法
上記と同様にサンプルを作製した。このサンプルを唾液1ccに37℃、24時間浸漬させた後に水洗した。サンプルに蛍光灯を照射させた後、光照射した面をシャーレ中の寒天培地に万遍なく軽く押しつけた。37℃、24時間培養させ、寒天上の細菌の繁殖の程度を評価した。
【0038】
【実施例】
実施例1
ポリメチルメタクリレート(根上工業製、以下PMMAと略称する)7.0g、メチルメタクリレート3.0g(和光純薬製、以下MMAと略称する)、アナターゼ型TiO2としてP−25(日本アエロジル製、以下P−25と示す。平均粒径は0.021μm、比表面積は50m2/gである)0.1g、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂製、以下BPOと略称する)0.1gからなる組成物を調製した(TiO2練り混み型)。組成物を前述の金型に填入し、100℃、1時間加熱重合した。得られたサンプルの表面を#1500耐水研磨紙で研磨した。その消臭性と透明性を上記の方法で評価し、その結果を表1および表2に示した。
【0039】
実施例2
ポリ(メチルメタクリレート+スチレン+トリメチロールプロパントリメタクリレート)(積水化成品工業製、MS5XT−15)4.0g、シリカ粉末であるアエロジル380(日本アエロジル製)1.0g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学製)2.0g、2、2’−ビス〔p−(γ−メタクリオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(共栄社油脂化学工業製)3.0g、P−25を0.2g、BPO0.1gからなる組成物を調製した(TiO2練り混み型)。前記同様に加熱重合、研磨を行いサンプルを得た。
【0040】
実施例3
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、以下DPE−6Aと略称する)6.0g、MMA4.0g、P−25を0.1g、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製、以下TMDPOと略称する)0.1gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。直径2cm,厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライト(モリタ製)で3分間光重合した。
【0041】
実施例4
トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社油脂化学工業製、以下TMPTMと略称する)8.0g、ブチルメタクリレート(和光純薬製、以下BMAと略称する)2.0g、アエロジル380を0.2g、P−25を0.1g、BPO0.3gからなる組成物A液を調製した。TMPTMを8.0g、BMA2.0g、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(和光純薬製)0.3gからなる組成物B液を調製した。このA,B液を1gずつ混合し(TiO2コーティング型)、前述のPMMA板に薄く塗布し、5分間放置し化学重合させた。
【0042】
実施例5
DPE−6Aを5.0g、MMA5.0g、ポリエチルメタクリレート(根上工業製)2.0g、P−25を0.6g、TMDPOを0.3gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。前述のPMMA板に薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0043】
比較例1
義歯床用アクリリックレジンであるアクロン(GC製、クリア)の粉7.0g、アクロンの液3.0gを混合し、金型に填入し、100℃、1時間加熱重合した。
【0044】
比較例2
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、白色顔料用のTiO2(和光純薬製、平均粒径は0.315μm,比表面積は10m2/gである)を0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した(TiO2コーティング型)。直径2cm,厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0045】
比較例3
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、市販のアナターゼ型TiO2(平均粒径0.089μm、比表面積15m2/g、アナターゼ型90%)0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した。この組成物を直径2cm、厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0046】
比較例4
DPE−6A6.0g、MMA4.0g、市販のアナターゼ型TiO2(平均粒径0.131μm、比表面積22m2/g、アナターゼ型90%)0.050g、TMDPO0.1gからなる組成物を調製した。この組成物を直径2cm、厚さ1mmのPMMA板に刷毛で薄く塗布し、α−ライトで3分間光重合した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、口腔内で有臭成分を吸着した歯科材料を光照射して、有臭成分を分解無臭化できる組成物を提供することができる。
Claims (2)
- (a)(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(b)アナターゼ型TiO2及び(c)重合開始剤とを含有してなることを特徴とする消臭性歯科用樹脂組成物。
- 該アナターゼ型TiO2が、0.1μm未満の平均粒径と20m2/g以上の比表面積を有することを特徴とする請求項1記載の消臭性歯科用樹脂組成物。
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