JP7318890B2 - 光硬化性組成物調製用キット - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化性組成物調製用キットに関する。更に詳しくは、光重合タイプの義歯床用裏装材として好適に使用することができる光硬化性組成物を調製するためのキットに関する。
患者の口腔粘膜と適合が悪くなった義歯を補修する材料として義歯床用裏装材があり、当該義歯床用裏装材としては、樹脂粒子を主成分とする粉材と、重合性単量体を主成分とする液材と、からなる粉液型が広く知られている。このような粉液型義歯床用裏装材では、粉材と液材を混ぜてペーストを得、これを義歯上に盛りつけ、口腔粘膜との適合を図った後に最終硬化させて使用されるが、使用する硬化触媒の種類に応じて、化学重合タイプと光重合タイプの2つのタイプがある。
すなわち、化学重合タイプは、化学重合開始剤と重合性単量体とが共存することによりラジカルが発生し、重合硬化が起こるものであり、通常、粉材と液材とを混和するだけで重合硬化が起こる。これに対し、光重合タイプでは、光重合開始剤を励起する光(以下、単に「活性光」ともいう。)を照射することによりラジカルを発生させて重合硬化を行うものであり、通常、粉材と液材を混和した後に得られたペーストを義歯に盛上げ、口腔内との適合を図った後、口腔外で専用の光照射器を用いた光照射により最終硬化が行われる。
高活性な光重合開始剤として、(1)α-ジケトン、(2)オルトリン酸、縮合リン酸、又はそれらの非重合性酸性エステル、及び(3)特定のカルボニル置換芳香族アミンを含む光重合開始剤を使用した光重合タイプの義歯床用裏装材が知られており(特許文献1参照)、このような義歯床用裏装材の最終硬化は、通常、活性光として360~500nm程度の波長域(α-ジケトン化合物の主たる吸収域である)を含む光を、当該波長領域における光強度が100~6000mW/cm程度となるような出力で照射できる光源を用いた専用光照射器を使用して行われている。
光重合タイプでは、最終硬化を行う前の、ゴム弾性が発現した状態の義歯床用裏装材を口腔内から撤去するため、アンダーカットのある様な症例でも痛みを伴うことなく患者への処置を行うことが可能となる。
光重合タイプは、このような利点がある半面、口腔外に取り外し最終硬化を行うため、光硬化の際に空気中の酸素により重合阻害が生じ、硬化体の表面に未重合層が形成されやすいという問題がある。義歯床用裏装材の表面に未重合層が存在すると、食渣が付着し易くなったり、残留モノマーによる口腔内の炎症につながったりする場合がある。さらに、このような問題の発生を抑えるために、研磨・削合により未重合層を除去しようとする場合には、未重合層が研磨バーに絡みつきやすくなるため研磨性が低下する他、未重合層除去により口腔内との適合性が悪化することがある。
光重合タイプにおける表面未重合層形成を防止する方法としては、光硬化する前の(ゴム弾性が発現した状態の)義歯床用裏装材にポリビニルアルコール水溶液を塗布して重合阻害となる空気中の酸素を遮断することによって表面未重合層の形成を抑制する方法(特許文献2参照)や、前記義歯床用裏装材を水又は温水に沈めた状態で重合を行う方法(特許文献3参照)が知られている。
特開2009-51925号公報 特開昭58-201628号公報 特開昭62-68452号公報
前記特許文献2及び3に記載された方法等のように、空気中の酸素との接触を遮断するような所謂エアーバリア剤を塗布したり、水等に浸漬したりする方法によれば、表面未重合層形成の抑制はできるものの、口腔内での適合を得た後にこれら操作を行わなければならず、術者の操作が煩雑になってしまうことが避けられない。また、これら操作を行うこと自体を忘れてしまった場合には、まったく効果を得ることができない。
一方、前記引用文献1に開示されているような非常に高活性の光重合開始剤を使用すれば表面未重合層の形成を抑制することが可能と考えられる。しかし、特許文献1において、表面未重合層の形成は特に問題として認識されておらず、前記光重合開始剤が表面未重合層の形成抑制に対してどの程度の効果を有するかは不明であった。
そこで、本発明者らが、その効果について検討を行ったところ、ある程度の表面未重合層形成抑制効果は認められたものの、その効果は必ずしも十分ではなく、更に改善の余地があることが判明した。
本発明は、光硬化型の義歯床用裏装材等に使用される光硬化性組成物において、硬化体の表面未重合を低減し、更に高い光硬化深さを達成することを目的とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、重合性単量体からなる(a)成分、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が3~200万である樹脂粒子からなる(b)成分、α-ジケトン化合物からなる(c)成分、第三級アミン化合物からなる(d)成分、及び水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸からなる(e)成分を含んでなる光硬化性組成物を調製するためのキットであって、前記(a)成分及び前記(e)成分を含む液材と、前記(b)成分を含む粉材と、から成り、前記(c)成分及び前記(d)成分は、夫々前記液材又は前記粉材の何れか一方に含まれ、前記(a)成分は、有機スルホン酸を用いてアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られた、不純物として前記有機スルホン酸を含む重合性単量体を含み、前記液材中に不純物として含まれる前記有機スルホン酸の含有量が、当該液材の質量基準で300ppm以下である、ことを特徴とする光硬化性組成物調製用キットである。
上記本発明の光硬化性組成物調製用キットにおいては、前記(c)成分が粉材に含まれ、前記(d)成分が液材に含まれることが好ましい。また、前記(a)成分:重合性単量体100質量部に対する前記(b)成分:樹脂粒子、前記(c)成分:α-ジケトン化合物、前記(d)成分:第三級アミン化合物、及び前記(e)成分:α-ヒドロキシカルボン酸の配合量が夫々、前記(b)成分:100~260質量部、前記(c)成分:0.1~1.0質量部、前記(d)成分:0.1~2.0質量部、及び前記(e)成分:0.005~0.1質量部である前記光硬化性組成物を調製するためのキットであることが好ましい。さらに、前記(e)成分:α-ヒドロキシカルボン酸としてリンゴ酸を含むことが好まし
本発明の光硬化性組成物調製用キットは、義歯床用裏装材用の光硬化性組成物を調製するためのキットとして好適である。
本発明の光硬化性組成物調製用キットにより調製される光硬化性組成物は、従来の光重合開始剤組成を用いた光硬化性組成物と比べて硬化性が高く、硬化体の表面未重合層の低減と高い光硬化深さを達成することができる。このため、歯科用の義歯床用裏装材として、特に好適に使用できる。そして、上記光硬化性組成物からなる義歯床用裏装材は、煩雑な操作を伴うエアーバリア剤を使用しなくても表面未重合層の形成を低減できるため、場合によっては、このような操作を省略することも可能となる。したがって、エアーバリア剤の使用を前提として使用する場合においても、錯誤等により使用し忘れた場合であっても表面未重合層の少ない硬化体を得ることができる。さらに、特殊な薬液や(水に浸漬するための)専用の光重合槽を用いることなく、たとえば雰囲気を加湿したりミスト状の水を吹き付けて被硬化体の表面に水を付着させたりするという簡単な操作を付加することにより、より一層高い表面未重合層形成抑制効果を得ることもできる。
また、本発明の光硬化性組成物調製用キットを用いて光硬化性組成物を調製した場合には、20秒程度の比較的短時間で操作し易いペースト性状とし、且つ上記の優れた重合特性を発揮させることができる。
さらに、本発明の光硬化性組成物調製用キットは、液材の成分である重合性単量体として、有機スルホン酸を用いたアルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られた重合性単量体を用いる場合でも、一般に入手可能な当該重合性に不可避的に含まれ、且つ着色の原因となることが明らかとなった不純物である有機スルホン酸の量を低減する精製を行ってから配合する等の方法により、液材中濃度が300ppm以下に制御されているため、長期保管時の液材の着色が高度に抑制される。その結果、長期(例えば3年間)保管された本発明の光硬化性組成物調製用キットを用いて(光硬化性組成物である)義歯床用裏装材を調製し、これを用いて義歯床の裏装を行った場合であっても、義歯床との色の差が生じにくく、審美的に優れた義歯の補修が可能となる。
本発明は、重合性単量体、樹脂粒子、及び光重合開始剤を含む光硬化性組成物において、光重合開始剤として前記特許文献1に開示されるのと同様な、α-ジケトン、第三級アミン化合物及び非重合性酸性化合物の組み合わせからなる高活性光重合開始剤を用いた系について、表面未重合層形成抑制効果の高い成分の組み合わせの検討を行った結果、得られた知見に基づき成されたものである。すなわち、(1)非重合性酸性化合物として水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸を用いた場合には、表面未重合の低減と光硬化深さの向上が同時に図ることができると言う知見、(2)当該α-ヒドロキシカルボン酸を用いた前記高活性光重合開始剤を用いた光硬化性組成物を粉液型のキットとし、更に当該α-ヒドロキシカルボン酸を液材に配合した場合には、20秒程度の比較的短時間で操作し易いペースト性状とし、且つ上記の優れた重合特性を発揮できると言う知見、及び(3)前記液材中に不純物として含まれ得る有機スルホン酸の量が一定の値を越えると長期保管中に液材が着色すると言うことを見出し完成されたものである。
本発明の光硬化性組成物調製用キットにおいて、前記したような優れた効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次の様に推測している。すなわち、水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸は、電子吸引性のカルボン酸基のα位の水素が引き抜かれやすく、組成物中でプロトン供与体として作用できるばかりでなく、酸性度が低いことから第三級アミン化合物との塩形成による失活が起こり難いため、高活性化が図られたものと推定している。更に、前記α-ヒドロキシカルボン酸が、光硬化性組成物の気相界面に配列して水分子膜を形成することで酸素遮断膜として機能したことも表面未重合層の形成抑制に寄与していると推定している。
また、液材の着色抑制効果が得られる理由に関しては、長期保管中における液材の着色機構は、不純物として含まれる有機スルホン酸が重合性単量体と反応し、スルホン酸エステルのような誘導体を生じることによると考えられ、有機スルホン酸の量を300ppm以下にすることにより、スルホン酸エステルの生成量が低減され、着色が生じ難くなったものと推定している。
本発明の光硬化性組成物調製用キットは、重合性単量体からなる(a)成分、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が3~200万である樹脂粒子からなる(b)成分、α-ジケトン化合物からなる(c)成分、第三級アミン化合物からなる(d)成分、及び水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸からなる(e)成分を含んでなる光硬化性組成物を調製するためのキットであって、前記(a)成分及び前記(e)成分を含む液材と、前記(b)成分を含む粉材と、から成り、前記(c)成分及び前記(d)成分は、夫々前記液材又は前記粉材の何れか一方に含まれ、前記液材中に不純物として含まれ得る有機スルホン酸の含有量が、当該液材の質量基準で300ppm以下である、
ことを特徴とする。ここで、成分(a)及び成分(b)は硬化後における硬化体本体を構成するものであり、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の組み合わせは、光重合開始剤を構成するものである。
そして、前記したように、本発明の光硬化性組成物調製用キットは、その調製目的物である光硬化性組成物(以下、「目的光硬化性組成物」とも言う。)の組成に大きな特徴を有する。すなわち、重合性単量体、樹脂粒子、及び高い活性を示すことが知られていた(c)成分、(d)成分及び非重合性酸性化合物からなる高活性光重合開始剤を含む光硬化性組成物において、非重合性酸性化合物として前記(e)成分を用いている点に大きな特徴を有する。また、本発明の光硬化性組成物調製用キットは、前記(e)成分が液材に含まれるようにキット化した点にも特徴を有し、さらに、前記液材中に不純物として含まれ得る有機スルホン酸の含有量が、当該液材の質量基準で300ppm以下に制御されている点にも特徴を有する。そして、これら特徴点以外については、前記高活性光重合開始剤を用いた従来の光硬化性組成物或いは歯科用光硬化性組成物で使用されるものと特に変わる点はない。以下、従来と変わらない点を含めて、発明の光硬化性組成物調製用キットについて詳しく説明する。
1.目的光硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物調製用キットの調製目的物である光硬化性組成物(目的光硬化性組成物)は、前記成分(a)~(e)を含む。以下、これら成分について説明する。
(a)成分:重合性単量体
(a)成分の重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を好適に使用することができる。ラジカル重合性単量体としては、公知のラジカル重合性単量体が何ら制限なく挙げられる。中でも、得られる硬化体の機械的強度、および硬化体内における(b)成分:樹脂粒子の分散性の観点から(メタ)アクリレート系(メタクリレート系、またはアクリレート系)の重合性単量体が好適に用いられる。特に本発明の光硬化性組成物が歯科用の光硬化性組成物である場合には、歯科用に使用される、単官能乃至4官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に使用できる。すなわち、1分子内に1つの(メタ)アクリレート基を有する単官能重合性単量体、1分子中に2つの(メタ)アクリレート基を有する2官能重合性単量体、1分子中に3つの(メタ)アクリレート基を有する3官能重合性単量体、1分子中に4つの(メタ)アクリレート基を有する4官能重合性単量体が好適に使用できる。好適に使用できるこれら重合性単量体を上記分類に従って、以下に具体的に例示する。なお、例示される重合性単量体は、単独で、又は複数種類のものを組み合わせて使用することができる。
<単官能(メタ)アクリレート系重合性単量体>
好適に使用できる単官能(メタ)アクリレート系重合性単量体を具体的例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
<二官能(メタ)アクリレート系重合性単量体>
好適に使用できる二官能(メタ)アクリレート系重合性単量体を具体的例示すると、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウンデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ドデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ステアリルジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシフェニル)]プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
<三官能(メタ)アクリレート系重合性単量体>
好適に使用できる三官能(メタ)アクリレート系重合性単量体を例示すると、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
<四官能(メタ)アクリレート系重合性単量体>
好適に使用できる四官能(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
目的光硬化性組成物を、歯科用光硬化性組成物、特に義歯床用裏装材用の光硬化性組成物として使用する場合には、重合活性が高く、機械的強度に優れた硬化体を得ることができ、しかも低刺激性となるという理由から、前記(a)重合性単量体は、その全量を100質量部としたとき、分子量が150以上1000以下のラジカル重合性単量体を、50質量部以上、特に70質量部以上含有することが好ましく、分子量が180以上500以下のラジカル重合性単量体を50質量部以上、特に70質量部以上含有することが特に好ましい。
なお、(a)重合性単量体、特に歯科用に用いられる重合性単量体に関しては、有機スルホン酸を用いたエステル化反応により合成した重合性単量体を用いる場合がある。ここで、上記有機スルホン酸は、エステル化反応において酸触媒としての効果を持つものであり、通常は、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等が使用されるが、副反応の起こり難さ観点から、パラトルエンスルホン酸が用いられることが多い。
たとえば、2-(メタ)アクリロキシエチルプロピオネートは、一般に次のような製造方法で製造されることが多い。すなわち、先ず、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)にパラトルエンスルホン酸と重合禁止剤を添加し、攪拌しながら60~90度程度に加熱した後にプロピオン酸を投入し、エステル化反応を行う。そして反応終了後、反応液を冷却してから水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を投入し中和し、さらにヘキサンを投入してから水槽と有機層とを分離して水層を除去し、更に有機層を水洗し、必要に応じて活性アルミナを用いた吸着処理を行ってから減圧によるヘキサンの留去及び残存水分の除去を行うことにより、目的物を単離・精製するのが一般的である。ところが、反応条件や精製条件の違いにより、製造ロットによって不純物として含まれる有機スルホン酸の量が異なることがあり、このような方法で製造された重合性単量体を用いる場合には、当該重合性単量体に不純物として含まれる有機スルホン酸が混入し、液材中における有機スルホン酸濃度が300ppmを越えてしまうことがある。
後に詳述するように、本発明では、液材に含まれる有機スルホン酸濃度が300ppm以下とする必要があるので、このような製法によらない製法によって製造されていることが明らかであるか、又は確認されている重合性単量体以外の重合性単量体、別言すれば前記製法で製造された可能性がある重合性単量体、を使用する場合には、重合性単量体に含まれる有機スルホン酸の含有量を、例えば高速液体カラムクロマトグラフィーを用いた分析により確認し、必要に応じて精製を行って、有機スルホン酸を除去する必要がある。
(b)成分:樹脂粒子
(b)成分としては、液材への溶解性や膨潤性や得られる硬化体の機械的強度の点から、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が3~200万の範囲、好ましくは5~100万の範囲である樹脂粒子を使用する。本発明で好適に使用される(b)成分の樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸アミル、ポリメタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体等からなる樹脂粒子を挙げることができる。これら樹脂粒子は、単独で使用しても良いし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
前記(b)樹脂粒子の形状は特に制限されず、球状、不定形のいずれであってもよい。また、その粒径も特に限定されず、平均粒径の異なる複数の樹脂粒子を併用してもよい。
ただし、目的光硬化性組成物が歯科用、特に義歯床用裏装材である場合には、レーザー回折法で測定した平均粒子径(50%体積平均粒子径)が1~300μmである樹脂粒子を使用することが好ましい。さらに、粉材と液材とを混合した時になじみ良く、適度な粘度上昇を示すという観点から上記平均粒子径が5~100μmである樹脂粒子を使用することがより好ましい。
目的光硬化性組成物において、(b)樹脂粒子の配合割合は、得られる硬化体の曲げ強度の点から、(a)重合性単量体100質量部に対して、100~260質量部とすることが好ましい。特に、義歯床用裏装材調製用として使用する場合には、(a)重合性単量体100質量部に対して、150~210質量部とすることが好ましい。
(c)成分:α-ジケトン化合物
(c)成分のα-ジケトン化合物は、最大吸収波長を350~700nmに有し、活性光によりラジカルのような重合に有効な活性種を成長させる機能を有する化合物である。活性種は通常、重合性単量体または他の物質との間でエネルギー移動あるいは電子移動の結果生じる。
本発明で好適に使用される(c)α-ジケトン化合物としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、シクロブテンジオン、カンファーキノンスルホン酸、o-ベンゾキノン、1,2-シクロヘキサンジオン、1,2-シクロペンタンジオン、2,3-ペンタジオン、p,p’-ジメトキシベンジル、p,p’-ジクロロベンジル、アセナフテンキノン、1,2-ナフトキノン、2,3-ナフトキノン、1,2-アントラキノン、2,3-アントラキノン、1,2-フェナントレンキノン、2,3-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン等を挙げることができる。これらの中でも、重合活性の高さ、生体への安全性の高さ等からカンファーキノンが特に好適に使用される。
目的光硬化性組成物における(c)α-ジケトン化合物の配合量は、特に制限されないが、多すぎる場合は硬化体が軟らかくなる傾向にあり、少なすぎると重合が不十分となり機械的強度が得られなくなる傾向にある。そのため、(a)重合性単量体100質量部に対して0.1~1.0質量部であることが好ましく、0.15~0.8質量部であることが特に好ましい。
(d)成分:第三級アミン化合物
本発明において使用される(d)成分の第三級アミン化合物は、所謂還元剤(或いは電子供与体)であり、重合促進機能を有する。該第三級アミン化合物は、このような機能を有するものであれば、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。具体的には、分子中に芳香族環を有する芳香族第三級アミン化合物や、分子中に芳香族環を有していない脂肪族第三級アミン化合物の何れも使用できる。中でも、臭気等の点から芳香族第三級アミン化合物を使用することが好ましい。
代表的な(d)芳香族第三級アミン化合物を例示すると、下記一般式(1)で示される芳香族第三級アミン化合物が挙げられる。
式中、R、及びRは、各々独立に、アルキル基であり、Rはアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、又はアルキルオキシカルボニル基である。
上記一般式(1)で示される芳香族第三級アミン化合物として好適に使用できる化合物を例示すれば、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジエチルアミノ安息香酸エチル、p-ジエチルアミノ安息香酸プロピル等を挙げることができる。
また、(d)成分としては、上記一般式(1)で示される芳香族第三級アミン化合物以外の「他の芳香族第三級アミン化合物」を使用することもできる。このような「他の芳香族第三級アミン化合物」としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン等を挙げることができる。
更に、(d)成分の第三級アミン化合物として、脂肪族第三級アミン化合物を使用することもできる。好適に使用できる脂肪族第三級アミン化合物を具体的に例示すると、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート等を挙げることができる。
(d)成分としては、臭気が少なく、高い重合活性を示し、照射光による短時間での重合硬化性を維持し、尚且つ高い硬化体物性を発現させることができるという理由から、芳香族第三級アミン化合物、すなわち、前記一般式(1)で示される芳香族第三級アミン化合物及び/又は「他の芳香族第三級アミン化合物」を使用することが好ましく、前記一般式(1)で示される芳香族第三級アミン化合物のみを使用することが特に好ましい。
本発明において、(d)成分の配合量は、(a)成分の重合性単量体100質量部に対して0.1~2質量部が好ましく、0.25~1質量部となる量がより好ましい。また、光硬化深さの点からは、(c)成分のα-ジケトン化合物100質量部に対して、30~330質量部であることが好ましく、50~250質量部であることがより好ましい。
(e)成分:水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸
目的光硬化性組成物においては、硬化体における表面未重合層の形成を抑制するために、前記(c)成分及び(d)成分と共に高活性光重合開始剤系を構成する非重合性酸性化合物として、(e)成分である水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸を使用する必要がある。当該(e)成分は、従来の非重合性酸性化合物と同様に、還元剤(或いは電子供与体)として機能して重合を促進するだけでなく、恐らく水酸基によって空気中に含まれる水分子が表面に配列し、酸素遮断膜として機能するような水分子膜が形成されることにより、表面未重合層の形成を抑制する。同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸であっても前記酸解離定数が3.0未満である場合には、第三級アミン化合物との塩形成による失活が起こり、表面未重合層の形成を抑制する効果が得られない。
本発明で好適に使用される(e)成分のα-ヒドロキシカルボン酸としては、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等を挙げることができる。これらの中でも重合性単量体への溶解性等の点からリンゴ酸を使用することが好ましい。
目的光硬化性組成物における(e)成分の配合量は特に制限されないが、多すぎる場合は重合性単量体に溶解し難くなる傾向にある。そのため、(a)成分の重合性単量体100質量部に対して0.005~0.1質量部であることが好ましく、0.008~0.08質量部であることがより好ましい。
目的光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、以下に示すような、「他の開始剤成分」、「その他充填材」、水、有機溶媒や増粘剤等の、前記(a)乃至(e)の成分以外の成分を配合することもできる。
<他の開始剤成分>
上記他の開始剤成分としては、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類; 酸化バナジウム(IV)アセチルアセトナート、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)等の+IV価又は+V価のバナジウム化合物類; テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル-p-トルイジン塩、テトラキス(p-フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム、ブチルトリ(p-フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム等のアリールボレート化合物類; ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンソイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類; ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類; 2,4-ジエトキシチオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体; ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’-ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類等を挙げることができる。
<その他充填材>
前記その他充填材としては、無機粒子(無機フィラー)、有機-無機複合粒子(有機-無機複合フィラー)が使用できる。無機粒子として好適に使用できるものを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等を挙げることができる。また、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物;又は酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物;からなるカチオン溶出性無機粒子も好適に使用することができる。前記有機-無機複合粒子としては、これら無機粒子に(a)重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機-無機複合粒子が好適に使用できる。
これらその他充填材の粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm~100μmの平均粒子径の粒子が目的に応じて適宜使用できる。また、粒子の屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用粒子が有する1.4~1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
なお、目的光硬化性組成物を歯科用修復材料に用いる場合には、その他充填材として球状の無機粒子を用いることが好ましい。球状無機粒子を用いることにより、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得る。
上記した無機粒子(無機フィラー)は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
また、目的光硬化性組成物には、目的に応じその性能を低下させない範囲で水、有機溶媒や増粘剤及びを添加することも可能である。当該有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、酢酸エチル等があり、増粘剤としてはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物や高分散性シリカが例示される。
目的光硬化性組成物は、光、具体的には、α-ジケトン系の光増感用化合物に対する活性光を照射することにより重合・硬化させることができる。このような光照射による硬化方法は、従来のα-ジケトン、第三級アミン化合物及び非重合性酸性化合物を用いた高活性光重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化方法と特に変わる点はなく、光源についても、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、LED、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の可視光線の光源が何ら制限なく使用される。照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよい。
目的光硬化性組成物は、前記(e)成分の効果により、光重合時に表面未重合層を形成し難いものとなっているため、上記したような通常の方法で光照射して光重合を行った場合でも前記したような本発明の効果を得ることができる。本発明の効果の中でも表面未重合層形成抑制(或いは低減)効果は、雰囲気湿度が高いほど高くなる傾向があり、たとえば、雰囲気を加湿したり、ミスト状の水を吹き付けて被硬化体の表面に水を付着させたりする、という簡単な操作を付加することにより、より一層高い効果、具体的には、エアーバリア剤を塗布した場合や水に浸漬して光重合を行った場合の効果と同等の効果を得ることができるようになる。このような加湿や表面に水を付着させる操作は、操作自体が簡便であるばかりでなく、特殊な薬液や(水に浸漬するための)専用の光重合槽を用いる必要がない点で、実用的に有用である。ただし、本発明は、エアーバリア剤の使用や水中での光重合を排除するものではなく、このような方法を併用することも勿論可能である。
目的光硬化性組成物は、光照射によって重合・硬化させる際の硬化深さが深く、表面未重合層を形成し難く、かつ着色し難いという特長を有し、様々な分野で使用できるが、このような特徴が求められる、歯科用、特に光重合型の義歯床用裏装材として好適に使用することができる。
2.本発明の光硬化性組成物調製用キット
前記したように、光重合型の義歯床用裏装材は、樹脂粒子を主成分とする粉材と、重合性単量体を主成分とする液材と、に2分包された粉液型のキットとして提供され、使用時に粉材と液材を混ぜてペーストを得、これを義歯上に盛りつけ、口腔粘膜と適合を図った後に最終硬化するのが一般的である。このような粉液型の義歯床用裏装材では、粉材と液材を混合した際に、粉材の主成分である樹脂粒子に液材の主成分である重合性単量体が徐々に浸透して樹脂粒子を膨潤させると共に溶解し、レジン泥となる。このとき、混和直後は樹脂粒子の膨潤・溶解が少なく高流動性を有するが、膨潤・溶解が進むにつれて徐々に粘度が上昇し、塑性変形する程度の状態を経て、塑性変形しない状態となる。したがって、歯科医師等の使用者は、混和時間を調整して作業し易いペースト性状にしてから上記盛り付け及び口腔粘膜との適合を図るが、実際の使用を想定すると、所望のペースト性状になるまでの混和時間は20秒程になるように設計されることが多い。
目的光硬化性組成物を義歯床用裏装材として使用する場合にも、粉材と、液材とからなる本発明の光硬化性組成物調製用キットとすることが好ましい。本発明の光硬化性組成物調製用キットでは、20秒程度の混和時間で所望のペースト性状になるように設計するために、2分包のキットとする場合において、前記(a)成分、前記(e)成分を含んでなる液材と、前記(b)成分含んでなる粉材と、から成り、前記(c)成分及び前記(d)成分は、夫々前記液材又は前記粉材の何れか一方に含まれるようにしている。前記(e)成分を液材に配合した理由は、前記(e)成分は、常温で固体であることが多く、粉材に配合した場合には、溶解に時間がかかり混和時間によるペースト性状の調整が難しくなるからである。なお、三級アミン/酸系高活性光重合開始剤の残りの成分である(c)成分及び(d)成分については、細かく言えば(c)成分は粉材に、(d)成分は液剤に夫々配合することが好ましいものの、原則的には、どちらの材に配合してもよい。
また、本発明の光硬化性組成物調製用キットでは、前記液材中に不純物として含まれ得る有機スルホン酸の含有量を、当該液材の総質量基準で300ppm以下とする必要がある。前記したように有機スルホン酸は、(a)成分:重合性単量体の不純物として混入するものであり、液材中における有機スルホン酸の上記含有量が300ppmを越える場合には、本発明の光硬化性組成物調製用キットを長期間保管した場合に着色することがある。たとえば、液材中の有機スルホン酸量が300ppmを越える場合は、液材を50℃で1カ月保管(室温で3年保管に相当する)した場合に、液材の色、具体的にはハーゼン色数(APHA)が350度よりも高くなり、その液材を用いて調製した義歯床用裏装材(歯肉色の調色されたもの)の色調に明らかな着色が認められる。なお、歯肉色の調色された義歯床用裏装材への着色の影響の観点から、長期保管後の液材のハーゼン色数は、350度以下が好ましく、200度以下がより好ましく、100度以下が特に好ましい。なお、ハーゼン色数による液材の色評価はJIS K0071-1(1998)に準拠して、比色管に入れた標準液と比較して測定することができる。試薬としては、たとえば色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学)を使用することができる。着色防止効果の観点から。液材中における有機スルホン酸の上記含有量は、200ppm以下、特に100ppm以下であることが好ましい。
液材中における有機スルホン酸の上記含有量を300ppm以下とするためには、(a)成分として使用する重合性単量体(モノマー)に含まれる有機スルホン酸の量を管理すればよい。例えば、重合性単量体100質量部からなる液材を仮定した場合において、有機スルホン酸を用いたエステル化反応により合成した重合性単量体を50質量部、その他の合成方法で得られ、有機スルホン酸を含まないことが明らかな重合性単量体を50質量部で配合する場合、[液材中の有機スルホン酸量300ppm]/[有機スルホン酸を用いたエステル化反応により合成した重合性単量体の配合比]の計算から、有機スルホン酸を用いたエステル化反応により合成した重合性単量体に含まれる有機スルホン酸の量は、600ppm以下にすることで、液材中の有機スルホン酸量を300ppm以下にすることができる。
使用する各モノマー中に含まれる有機スルホン酸の量は、高速液体カラムクロマトグラフィーを用いた分析などにより定量することができるので、(a)成分全体として液材中における有機スルホン酸の上記含有量が300ppmを越える場合には、有機スルホン酸濃度の高いモノマーの使用を止め、より低い有機スルホン酸濃度の製造ロットのモノマーを使用するか、精製により有機スルホン酸濃度を問題とならないレベルまで低減させてから使用すればよい。
なお、有機スルホン酸の定量は、たとえば高速液体カラムクロマトグラフィーを用い、カラム:ODS-II(GLサイエンス社製 イナートシル ODS-2)、カラム温度:30℃、流速:1ml/min.、打込量:5μl、検出波長:210nm(日本分光社製 MD-2010)、展開溶媒:アセトニトリル:水=80:20の条件で測定を行い、保持時間10分付近のピークをパラトルエンスルホン酸のピークとして分離し、別途作成した検量線に基づき定量することにより行うことができる。また、精製は、水洗や活性アルミナを用いた吸着処理により行うことができる。
粉材と液材との混合割合は、特に制限されるものではなく、各部材に含まれる前記成分の含有量と、前記説明した粉材と液材の混合時のペースト性状を踏まえ、適宜決定すれば良いが、一般的には粉材(g)/液材(ml)=1/1~3/1の割合が好ましく、粉材(g)/液材(ml)=1.5/1~2.5/1の割合がより好ましい。なお、(a)~(e)の各成分は、粉材と液材とを上記割合で混合したときに、前記したような好適な配合量となるように粉材または液材に配合されていればよい。
また、口腔粘膜の色調に合わせるために、上述した各成分に加え、顔料、染料、紫外線に対する変色防止のために紫外線吸収剤を配合することもできる。更に必要に応じて、義歯床用裏装材として配合される公知の添加材を、本発明の効果に影響のない範囲で、配合することもできる。
前記粉材及び液材を製造する方法については、特に制限なく、公知の製造方法に準じて製造すればよい。具体的には、各々所定の配合成分を量り取り、均一の性状になるまで混合すればよい。混合に用いることのできる装置に関しても特に制限なく、公知のものが使用できる。例えば、粉材は揺動ミキサー、液材は撹拌羽根により、それぞれ均一に混合することで製造できる。また、製造した粉材、液材は各々容器に保存しておけばよく、任意の量に小分けして保存してよい。
以上のようにして得られる粉材と液材とからなる、粉液型の義歯床用裏装材の使用方法は、各形態に合わせて適宜粉材と液材を混和し使用すればよい。その一例として、使用直前にラバーカップ等に所望の量の液材と粉材とを量り取り、練和棒あるいはヘラ等を用いて均一なペーストになるまで練和される。練和により適度な性状となったペーストは、適合が悪くなった義歯に盛付けられ、口腔内との適合が図られた上で、専用の光照射器を用いて活性光を照射して重合硬化させて義歯床用裏装材が作製される。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。
まず、各実施例および比較例のサンプルの作製に用いた物質等の名称、特性、略号(略号を用いた場合)等について成分ごとに説明する。
(a)成分:重合性単量体
・HPr:2-メタクリロキシエチルプルピオネート(単官能重合性単量体、分子量186)
・ND:1,9-ノナメチレンジオールジメタクリレート(二官能重合性単量体、分子量296)
・TT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(三官能重合性単量体、分子量338)
・PT:ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(四官能重合性単量体、分子量367)。
(b)成分:樹脂粒子
・PEMA:球状ポリエチルメタクリレート粒子(平均粒径35μm、重量平均分子量50万)
・PS:球状ポリスチレン粒子(非架橋型、平均粒径30μm、重量平均分子量40万)
なお、本実施例及び比較例で使用した上記HPrは、有機スルホン酸としてパラトルエンスルホン酸を用い、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とプロピオン酸とを反応させてエステル化することにより合成した重合性単量体である。そして上記HPrとしては、パラトルエンスルホン酸の量が異なる、2種類の製造ロットのものを準備した。具体的にはHPr全体の質量に占めるパラトルエンスルホン酸の濃度が170質量ppmのものと、660質量ppmのものを準備し、実施例及び比較例1~6では前者を、比較例7では後者を使用した。ここで、パラトルエンスルホン酸の濃度は、高速液体カラムクロマトグラフィーを用い、カラム:ODS-II(GLサイエンス社製 イナートシル ODS-2)、カラム温度:30℃、流速:1ml/min.、打込量:5μl、検出波長:210nm(日本分光社製 MD-2010)、展開溶媒:アセトニトリル:水=80:20の条件で測定を行い、保持時間10分付近のピークをパラトルエンスルホン酸のピークとして分離し、別途作成した検量線に基づき定量することにより決定した。
また、ND、TT及びPTについて同様にして高速液体カラムクロマトグラフィーを用いた分析を行ったところ、パラトルエンスルホン酸及び他の有機スルホン酸に由来するピークは検出されなかった。
(c)成分:α-ジケトン化合物
・カンファーキノン
・ベンジル。
(d)成分:第三級アミン化合物
・DMBE:p-ジメチルアミノ安息香酸エチル
・MDEOA:N-メチルジエタノールアミン。
(e)成分:非重合性酸性化合物(括弧内の数値は、25℃における水中での酸解離定数を示す。)
・リンゴ酸(3.4)
・酒石酸(3.0)。
(e´)成分:前記(e)成分に該当しない非重合性酸性化合物(括弧内の数値は、25℃における水中での酸解離定数を示す。)
・オルトリン酸(2.1)。
(f)成分:その他成分
・ジブチルヒドロキシトルエン
・有機顔料
・10%ポリビニルアルコール水溶液。
次に、各実施例及び比較例におけるサンプル作成方法及び当該サンプルについての各評価項目の測定方法について説明する。
(1)硬化体の表面未重合量(未重合層)の測定方法
粉材と液材とを、粉材(g)/液材(ml)=1.8/1の割合でラバーカップ内に入れ、20秒間混和した。20×20×1mmのポリテトラフルオロエチレン製のモールドに、混和した光硬化性組成物(粉材と液材とを混合してなる光硬化性組成物)を流し込み、片面を大気中に曝した状態で歯科技工用光重合装置αライトV(MORITA社製)を用いて波長465~475nmの活性光(光出力密度100mW/cm)を5分間照射し、硬化体を作製した。得られた硬化体の厚みを5点測定後、エタノールに1分間浸漬し、未重合層を金属スパチュラで削合した。表面未重合層を除去した硬化体の厚みを測定し、エタノールに浸漬させる前の硬化体厚みの平均と金属スパチュラで除去した後の硬化体の厚みの平均との差を表面未重合層の厚さとした。なお、実施例39および比較例5については、歯科技工用光重合装置αライトVで光照射を行う前に光硬化性組成物をイオン交換水中に一度浸漬して表面に水を付着させた後に、気相中に取り出して光硬化を行った。それ以外の操作は上記の方法にて試験を行った。また、比較例6においては、歯科技工用光重合装置αライトVで光照射を行う前に10%ポリビニルアルコール水溶液を光硬化性組成物に塗布してから硬化体を作製した。それ以外の操作は上記の方法にて試験を行った。
(2)硬化体の光硬化深さの測定
粉材と液材とを、粉材(g)/液材(ml)=1.8/1の割合でラバーカップ内に入れ、20秒間混和した。内径4mmφの黒色ゴム管内に練和した光硬化性組成物(粉材と液材とを混合してなる光硬化性組成物)を充填して両面をポリプロピレンフィルムで圧接した。その後、直ちに歯科用光照射器トクソーパワーライト(トクヤマデンタル社製)を用いて波長400~520nmの活性光(光出力密度700mW/cm)を60秒間照射し硬化させた。サンプルを黒色ゴム管から取り出し、未硬化部分を取り除いてから、硬化した部分の長さをノギスで測定し光硬化深さとした。なお、実施例39および比較例5は、ポリプロピレンフィルムで圧接を行う前に光硬化性組成物をイオン交換水中に一度浸漬した後、気相中に取り出して光硬化を行った。また、比較例6においては、ポリプロピレンフィルムで圧接を行う前に10%ポリビニルアルコール水溶液を光硬化性組成物に塗布してから硬化させた。それ以外の操作は上記の方法にて試験を行った。
(3)硬化体の3点曲げ強度の測定
粉材と液材とを、粉材(g)/液材(ml)=1.8/1の割合でラバーカップ内に入れ、20秒間混和した。30×30×2mmのポリテトラフルオロエチレン製のモールドに、混和した光硬化性組成物(粉材と液材とを混合してなる光硬化性組成物)を流し込み、両面をポリプロピレンフィルムで圧接した状態で歯科技工用光重合装置αライトV(MORITA社製)を用いて波長465~475nmの活性光(光出力密度100mW/cm)を5分間照射し、硬化体を作製した。次いで、#800および#1500の耐水研磨紙にて硬化体を研磨後、4×30×2mmの角柱状の試験片に切断した。この試験片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ強度を測定した。なお、実施例39および比較例5は、ポリプロピレンフィルムで圧接を行う前に光硬化性組成物をイオン交換水中に一度浸漬した後、気相中に取り出して光硬化を行った。また、比較例6においては、ポリプロピレンフィルムで圧接を行う前に10%ポリビニルアルコール水溶液を光硬化性組成物に塗布してから硬化させた。それ以外の操作は上記の方法にて試験を行った。
実施例1
粉材として、(b)樹脂粒子:PEMA(180質量部)、及び(c)α-ジケトン化合物:カンファーキノン(0.3質量部)を混合した。一方、液材として、(a)単官能重合性単量体:HPr(60質量部)、二官能重合性単量体:ND(40質量部)、(d)第三級アミン化合物:DMBE(0.5質量部)、及び(e)水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸:リンゴ酸を混合した。得られた粉材と液材とを前記評価方法(1)~(3)に記載した方法に従い硬化体を作製し、得られた硬化体の表面未重合量、光硬化深さ、及び3点曲げ強度を評価した。
粉材と液材との組成を表1に示した。また、評価結果を表4に示した。
実施例2~38
粉材と液材との組成を表1および表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により粉液型の光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)を作製し、得られた光硬化性組成物を実施例1と同様の方法により硬化体を作製し、得られた硬化体を実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表4に示した。
実施例39
粉材と液材との組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により粉液型の光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)を作製した。得られた粉材と液材とを前記評価方法(1)~(3)に記載した方法に従い硬化体を作製し、得られた硬化体を実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を評価結果に表4に示した。
比較例1~4
粉材と液材との組成を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により粉液型の光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)を作製し、得られた光硬化性組成物を実施例1と同様の方法により硬化体を作製し、得られた硬化体を実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表4に示した。
比較例5~6
粉材と液材との組成を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により粉液型の光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)を作製した。得られた粉材と液材とを前記評価方法(1)~(3)に記載した方法に従い硬化体を作製し、得られた硬化体を実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表4に示した。


























実施例40
粉材に顔料として、チバガイギー株式会社製のピグメントレッド144を80ppm、ピグメントイエロー95を10ppm、ピグメントブルー60を3ppm、石原産業株式会社製の二酸化チタンを220ppm添加し、義歯床用裏装材として使用可能なピンク色に調色した以外は実施例1と同様にして粉材及び液材を調製した。調製後50℃で1カ月保管した液材(保管後液材)のハーゼン色数を測定したところ、120度であった。なお、ハーゼン色数の測定は、ハーゼン色数が500度である標準液を希釈してハーゼン色数が10度刻みとなるように、ハーゼン色数が50度~500度までの溶液を調整し、目視にて比較をすることで液材のハーゼン色数を判断することにより行った。
また、上記保管後の液材を粉材と混合して光硬化性組成物を調製し、得られた光硬化性組成物を用いて30mm×30mm×2mmの硬化体を作製すると共に、別途同様に調製した、調製直後の液材及び粉材を用いて同様の硬化体を作成した。両硬化体を並べて黒背景及び白背景に置き、目視にて比較を行ったところ、黒背景白背景共に両者間で全く差が見られず、評価は◎であった。なお、当該目視評価における評価基準は、以下のとおりである。
◎:黒背景白背景共に差が全く見られない
○:黒背景では差が見られず、白背景で僅かに差が見られる
△:白背景では差が見られるものの黒背景でわずかに差が見られる
×:黒背景白背景ともに差が見られる
液材総質量を基準とする液材中のパラトルエンスルホン酸質量(ppm)、上記保管を行った後の液材のハーゼン色数及び上記硬化体目視評価結果を表5に示す。




比較例7
実施例40において、パラトルエンスルホン酸濃度が660ppmであるHPrを用いる他は実施例40と同様にして液材及び粉材を調製し、実施例40と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
実施例41、42及び比較例8
実施例40において、液材中のパラトルエンスルホン酸濃度が表5に示す量になるように液材にパラトルエンスルホン酸を添加したした他は実施例40と同様にして液材及び粉材を調製し、実施例40と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
実施例1~39は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、いずれの場合においても、表面未重合量が少なく、高い光硬化深さが得られた。また、実施例39は、光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)の表面に水を付着させてから光硬化させた場合であり、さらに表面未重合量を少なくすることができた。
これに対し、比較例1は、(E)非重合性酸性化合物として、(e)成分以外の非重合性酸性化合物を配合した場合であり、(e)成分を配合したものよりも表面未重合量が多く、光硬化深さも劣る結果となった。
比較例2は(e)成分を配合しない場合であり、表面未重合量が増加し、深い光硬化深さも得ることができなかった。比較例3は(c)α-ジケトン化合物をしない場合であり、硬化しない。また、比較例4は(d)第三級アミン化合物を配合しない場合であり、表面未重合量が増加し、深い光硬化深さも得ることができなかった。
比較例5は、(e)成分を配合していない光硬化性組成物(義歯床用裏装材組成物)の表面が湿潤な条件で光硬化させた場合であるが、比較例2と同様に表面未重合量は増加し、深い光硬化深さも得ることができなかった。このことから、(e)成分を配合しないと、表面に水を付着させても表面未重合量を低減させることはできないことが分かる。
比較例6は、(e)成分を配合せずに、硬化体作製の際にエアーバリア剤として10%ポリビニルアルコール水溶液を塗布した場合であり、表面未重合量を減少させることは可能であるが、深い光硬化深さを得ることができなかった。
一方、液材中の有機スルホン酸の含有量が300ppm以下である実施例40、41及び41については長期間保管後の悪影響は全く或いは殆ど見られなかったのに対し、液材中の有機スルホン酸の含有量が300ppmを越える比較例7及び8では、保管後に液剤が着色し、硬化体の色調にも悪影響が見られた。

Claims (5)

  1. 重合性単量体からなる(a)成分、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が3~200万である樹脂粒子からなる(b)成分、α-ジケトン化合物からなる(c)成分、第三級アミン化合物からなる(d)成分、及び水中(25℃)での酸解離定数が3.0以上で同一分子内にカルボニル基を2つ以上有するα-ヒドロキシカルボン酸からなる(e)成分を含んでなる光硬化性組成物を調製するためのキットであって、
    前記(a)成分及び前記(e)成分を含む液材と、前記(b)成分を含む粉材と、から成り、
    前記(c)成分及び前記(d)成分は、夫々前記液材又は前記粉材の何れか一方に含まれ、
    前記(a)成分は、有機スルホン酸を用いてアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られた、不純物として前記有機スルホン酸を含む重合性単量体を含み、
    前記液材中に不純物として含まれる前記有機スルホン酸の含有量が、当該液材の質量基準で300ppm以下である、
    ことを特徴とする光硬化性組成物調製用キット。
  2. 前記(c)成分が粉材に含まれ、前記(d)成分が液材に含まれる請求項1に記載の光硬化性組成物調製用キット。
  3. 前記(a)成分:重合性単量体100質量部に対する前記(b)成分:樹脂粒子、前記(c)成分:α-ジケトン化合物、前記(d)成分:第三級アミン化合物、及び前記(e)成分:α-ヒドロキシカルボン酸の配合量が夫々、前記(b)成分:100~260質量部、前記(c)成分:0.1~1.0質量部、前記(d)成分:0.1~2.0質量部、及び前記(e)成分:0.005~0.1質量部である前記光硬化性組成物を調製するためのキットである、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物調製用キット。
  4. 前記(e)成分:α-ヒドロキシカルボン酸としてリンゴ酸を含む請求項1乃至3の何れかに記載の光硬化性組成物調製用キット。
  5. 義歯床用裏装材用の光硬化性組成物を調製するためのキットである、請求項1乃至の何れかに記載の光硬化性組成物調製用キット。
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