JP5019084B2 - 歯科・口腔用組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、光触媒性酸化チタンを含有する歯科・口腔用組成物、および光触媒性酸化チタンを含む被膜を口腔外で歯科材料の表面に形成する方法に関する。より詳細には、本発明は、歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピースなどの歯科材料、歯、歯肉、口腔粘膜、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などの表面に塗布して被膜を形成させて、口腔内で形成される多数の細菌を含むバイオフィルム、すなわちデンタルプラーク(歯垢)の生成を抑制し、齲蝕や歯周病の発生を予防したり進行を抑制し、さらにタバコのヤニや食物の付着等による歯や歯科材料の変着色を防止または低減し、変色歯を漂白し、また口臭の予防を行うための光触媒性酸化チタンを含有する歯科・口腔用組成物、および光触媒性酸化チタンを含む被膜を口腔外で歯科材料の表面に形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
口腔内疾患としては、齲蝕症、歯周炎、歯周疾患(歯槽膿漏等)、口内炎などが挙げられる。これらのうちでも、齲蝕症は、歯牙の代表的な疾患であり、口腔内の微生物によって産生される酸により歯のエナメル質が溶解されることで発症する。なかでも、ストレプトコッカス・ミュータンス菌(Streptococcus mutans)は、齲蝕の重要な病原菌であるとされている。また、歯周組織の疾患である歯周炎も、口腔内細菌が原因となって発症すると言われている。これらの疾患の予防および治療に当たっては、口腔内細菌によって歯質表面に付着したデンタルプラークの速やかな除去が重要とされている。
【0003】
上記した口腔内疾患に対しては、従来、各疾患毎に対症療法が施されてきた。例えば、齲蝕症の予防のためにはフッ素化合物による予防処置、歯科材料への抗菌剤の配合などが行われてきたが、未だ臨床的に充分な効果があると言えないのが現状である。また、齲蝕部分の修復や齲蝕による歯質欠損部の処置法としては、歯科用金属(メタルインレー)、レジン材料(セメント)、ポーセレン(陶材インレー)、コンポジットレジン(複合プラスチック)などの歯科材料を用いて齲蝕部分の修復や欠損部の補綴処置を行うことが行われているが、これらの材料の表面は細菌の付着に基づくデンタルプラークが特に形成され易いと言われている。さらに、歯周疾患に対しては、デンタルプラークを除去するための歯ブラシ清掃、機械的な歯石除去、薬剤の局部的な塗布などが行われてきたが、いずれも時間および労力を要し、その予防および治療の効果が充分であるとは言い難い。
【0004】
また、歯や歯科材料の表面へのタバコのヤニや食物などの付着によって変着色が生ずるが、そのような変着色を抑制したり除去するための十分に有効な手段がなく、その解決策が求められている。さらに、齲蝕症、歯周炎、歯周疾患(歯槽膿漏等)などの口腔内疾患は、口臭の原因の一つであり、口臭の予防や除去に有効な手段が求められている。
【0005】
一方、近年、光触媒性酸化チタンを含むコーティング材を装置類や、タイル、ガラスなどの基材表面に塗布して、酸化チタンの光触媒活性によって、抗菌、防曇、防汚、脱臭などを行うことが提案されている。
光触媒性酸化チタンの歯科材料への利用技術としては、光触媒作用を示す酸化チタンをメチルα−シアノアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの樹脂成分と混合した歯牙用液状被覆物質が知られており(特開平9−175923号公報)、この公報には、該被覆物質により歯牙を被覆することによって、齲蝕予防が行われることが記載されている。しかしながら、この被覆物質で用いられているメチルα−シアノアクリレートは、空気中の湿分や口腔内の水分によって極めて急速に重合硬化するため、歯牙への被覆操作を極めて短い時間内に行う必要があり、取り扱い性に劣っている。また、メチルα−シアノアクリレートを含むこの歯牙用被覆物質は、口腔内で用いる材料として安全性の点でも十分であるとは言えず、さらに歯質に対する接着耐久性が低く、使用中に容易に剥がれるという欠点を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、歯の表面、口腔内の歯科材料の表面、歯肉の表面へのデンタルプラークが付着するのを抑制し、またそれらの表面に付着したデンタルプラークの破壊や除去を促進して、齲蝕症、歯周炎、歯周疾患(歯槽膿漏等)、口内炎などの口腔内疾患や歯科疾患を効果的に予防および/または治療することができ、しかも取り扱い性、安全性などの点にも優れる、歯科・口腔用組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、歯や歯科材料の表面へのタバコのヤニや食物などの付着により生ずる変着色を防止および/または抑制したり、変色歯の漂白に有効で、且つ取り扱い性および安全性に優れる歯科・口腔用組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、口臭の予防や除去に有効で且つ取り扱い性および安全性に優れる歯科・口腔用組成物を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した歯科疾患の予防や治療、歯科材料の変着色の防止や抑制、変色歯の漂白、口臭の予防に有効な被膜を、口腔外で、歯科材料の表面に形成する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光触媒性酸化チタンの歯科への利用について研究を続けてきた。そして、光触媒活性を示すアナターゼ型二酸化チタン、(メタ)アクリル酸エステル系単量体および重合開始剤を含有する樹脂組成物が、歯科用材料として好適であり、この樹脂組成物を義歯、義歯床リベーズ材、矯正床、義歯補修材、マウスピースなどの歯科材料の製造時に用いるかまたは前記した歯科材料の表面に被覆した後に光照射すると、口腔内で歯科材料に吸着または付着した有臭成分が分解されて無臭化できることを見出して先に出願した(特開平10−273412号公報)。
【0008】
上記出願に基づいて本発明者らが更に検討を重ねた結果、光触媒性酸化チタンまたはその前駆体と、アルキルシリケートなどのケイ素化合物またはその加水分解縮合物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体および/またはシリカ並びに液体媒体を含む組成物が、前記した特開平10−273412号公報記載の歯科用樹脂組成物と同様に、取り扱い性および安全性に優れ、歯の表面や歯科材料表面への被膜形成性に優れていること、そしてその組成物を歯、歯科材料、歯肉の表面などに塗布し被膜を形成して、光を照射すると、それらの表面へのデンタルプラークの付着が抑制され、またそれらの表面に付着したデンタルプラークの破壊や除去が促進されて、齲蝕症、歯周炎、歯周疾患(歯槽膿漏等)、口内炎などの口腔内疾患や歯科疾患を効果的に予防および治療できることを見出した。
また、本発明者らは、光触媒性酸化チタンと液体媒体を含む組成物も、前記と同様の口腔内疾患や歯科疾患の予防や治療に有効であり、また該光照射して該予防や治療を行った後に、それを施した箇所から容易に水洗で除去できることを見出した。さらに、本発明者らは、光触媒性酸化チタン前駆体と液体媒体を含む組成物も、同様に有効であることを見出した。
また、本発明者らは、前記組成物は、歯や歯科材料の表面へのタバコのヤニや食物などの付着による変着色の防止や抑制、変色歯の漂白、口臭の予防や除去にも有効であることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記組成物を、口腔外で、歯科材料の表面に塗布するか或いは光触媒性酸化チタンゾルまたは光触媒性酸化チタンの前駆体を塗布した後に、乾燥および/または焼成すると、該歯科材料の表面に上記した種々の効果を有する光触媒性酸化チタンを含む被膜を円滑に形成し得ることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(a)光触媒性酸化チタンまたは光触媒性酸化チタン前駆体、(b)下記の一般式(I);
【0010】
【化2】
Figure 0005019084
(式中、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立してアルコキシ基またはハロゲンを示す。)
で表されるケイ素化合物(I)、前記ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種、並びに(c)液体媒体を含有することを特徴とする歯科・口腔用組成物である。
【0011】
そして、本発明は、
(2) 光触媒性酸化チタンまたは光触媒性酸化チタン前駆体と、前記ケイ素化合物(I)、該ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種との割合が、チタン原子:ケイ素原子のモル比に換算して、20:1〜1:100である前記(1)の歯科・口腔用組成物;
(3) 光触媒性酸化チタン前駆体がチタンアルコキシドであり、シリコーン樹脂前駆体がシラン系化合物および/またはシラザンである前記(1)または(2)の歯科・口腔用組成物;
(4) 光触媒性酸化チタンまたは光触媒性酸化チタン前駆体、および液体媒体を含有することを特徴とする歯科・口腔用組成物;
(5) 液体媒体が水であるか、または水とアルコールの混合物である前記(1)〜(4)のいずれかの歯科・口腔用組成物;
(6) 増粘剤を含有する前記(1)〜(5)のいずれかの歯科・口腔用組成物;
(7) 銀、銅および亜鉛から選ばれる金属の微粒子並びに前記金属塩の少なくとも1種を含有する前記(1)〜(6)のいずれかの歯科・口腔用組成物;および、
(8) 歯、歯肉、口腔内に装着した歯科材料および/または口腔粘膜の表面に被膜を形成するか、或いは口腔外で歯科材料の表面に被膜を形成するための組成物である前記(1)〜(7)のいずれかの歯科・口腔用組成物;
である。
【0012】
そして、本発明は、
(9) 口腔外で、歯科材料の表面に、前記(1)〜(8)のいずれかの歯科・口腔用組成物を塗布した後に、乾燥および/または焼成して、歯科材料の表面に光触媒性酸化チタンを含む被膜を形成する方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明における「歯科・口腔用組成物」とは、歯;歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピースなどの歯科材料;歯肉;口腔粘膜;コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などに施して用いられる組成物を言い、本発明の歯科・口腔用組成物は、前記したものの表面に被覆して用いられる。
【0014】
本発明の歯科・口腔用組成物で用いる光触媒性酸化チタンは、光照射されたときに、有機物や窒素酸化物などの分解を促進する触媒活性を示す酸化チタンであり、一般的にはアナターゼ型二酸化チタンがこれに相当する。
【0015】
本発明の歯科・口腔用組成物は、光触媒性酸化チタンの形態に応じて、下記の組成物(A)と組成物(B)に大別される。
組成物(A)
成分(a)としてそれ自体で光触媒活性を示す固体状の光触媒性酸化チタンを用いる歯科・口腔用組成物。
すなわち、光触媒性酸化チタンと、上記の一般式(I)で表されるケイ素化合物(I)、前記ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種、並びに(c)液体媒体を含有する歯科・口腔用組成物、または光触媒性酸化チタンと液体媒体を含有する歯科・口腔用組成物。
組成物(B)
成分(a)として光触媒性酸化チタン前駆体を用いる歯科・口腔用組成物。
すなわち、光触媒性酸化チタン前駆体と、上記の一般式(I)で表されるケイ素化合物(I)、前記ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種、並びに(c)液体媒体を含有する歯科・口腔用組成物、または光触媒性酸化チタン前駆体と液体媒体を含有する歯科・口腔用組成物。
(以下組成物Aおよび組成物Bを総称して、「本発明の組成物」または単に「組成物」ということがある)。
【0016】
組成物Aにおける光触媒性酸化チタンとしては、分散性が良好で保存や移送時に沈降が生じず且つ光触媒活性が高い点から、平均粒径が0.001〜0.5μm、特に0.005〜0.1μmの光触媒性酸化チタン粒子(微粉末)が好ましく用いられる。光触媒性酸化チタン粒子の粒径が小さいほど光触媒活性が高く、そのため、組成物Aを口腔内の所定部位に直接施して口腔内で光照射を行う場合には、強い紫外線を使用することなく、人体にとって安全性が確保され得る程度の弱い紫外線を含む光線を照射して酸化チタンの触媒活性を発現させることができる。また、低温プラズマ法などにより製造された特に光触媒活性の高い酸化チタンは、400nm以上の可視光線に対しても触媒活性を示し、この様に口腔内で使用される場合には、本発明の組成物において特に好ましく用いられる。
また、組成物A中における光触媒性酸化チタンの含有量は、分散安定性、光触媒活性、組成物の基体への塗布のし易さ、塗布後に形成される被膜の強度等が良好になる点から、0.05〜40重量%、特に0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0017】
組成物Bに用いる光触媒性酸化チタン前駆体としては、チタンのアルコキシド、キレート、アセテート、ハロゲン化物、これらの加水分解物の1種または2種が用いられる。そのうちでも、チタンのアルコキシドおよび/またはその加水分解物が好ましく用いられる。チタンのアルコキシドの具体例としては、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。テトラエトキシチタンなどの酸化チタン前駆体は、酸化チタンゾルとして販売されているので、それを用いてもよい。
【0018】
本発明の歯科・口腔用組成物で成分(b)として用いる上記の一般式(I)で表されるケイ素化合物(I)において、基X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルコキシ基であるかまたは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンであることが好ましい。ケイ素化合物(I)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシランを挙げることができる。またケイ素化合物(I)の加水分解物としては、前記テトラアルコキシシランから得られるシラノール類やその縮合物(アルキルシリケート)などを挙げることができる。
【0019】
また、成分(b)として用いられるシリコーン樹脂としては、ジオルガノシロキサン単位のみからなるもの、モノオルガノシロキサン単位のみからなるもの、ジオルガノシロキサン単位とモノオルガノシロキサン単位からなるもの、ジオルガノシロキサン単位とモノオルガノシロキサン単位とトリオルガノシロキサン単位からなるもの、ジオルガノシロキサン単位とトリオルガノシロキサン単位からなるもの、モノオルガノシロキサン単位とトリオルガノシロキサン単位からなるものなどのいずれもが使用できる。前記した各シロキサン単位におけるケイ素に結合した有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基、アルリル基などのアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、アラルキル基などの置換基を有する前記した基などを挙げることができる。
【0020】
また、成分(b)として用いられるシリコーン樹脂前駆体としては、有機シラン系化合物、有機シラザン化合物、それらの低分子量加水分解縮合物などを挙げることができる。有機シランとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性のモノオルガノシラン;ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性のジオルガノシラン;トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリオクタデシルクロロシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシランなどの単官能性のトリオルガノシランなどを挙げることができる。また、有機シラザン化合物の例としては、ヘキサメチルジシランザンなどを挙げることができる。
また、成分(b)として用いられるシリカの種類は特に制限されず、いずれも使用できる。
【0021】
本発明の歯科・口腔用組成物は、成分(b)として、前記したケイ素化合物(I)、その加水分解物、シリコーン樹脂、その前駆体およびシリカの1種または2種以上を含有することができ、したがって本発明の歯科・口腔用組成物の形態の具体例としては、限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。
【0022】
《組成物Aの形態の具体例》
(A−1):光触媒性酸化チタン粒子と、テトラアルコキシシランまたはその加水分解物を液体媒体中に含む組成物。
(A−2):光触媒性酸化チタン粒子と、シリコーン樹脂を液体媒体中に含む組成物。
(A−3):光触媒性酸化チタン粒子と、有機シラン、その加水分解物、有機シラザンなどのシリコーン樹脂前駆体を液体媒体中に含む組成物。
(A−4):光触媒性酸化チタン粒子と、シリカを液体媒体中に含有する組成物(懸濁液)。
(A−5):光触媒性酸化チタンを液体媒体中に含有する組成物。
【0023】
《組成物Bの形態の具体例》
(B−1):テトラアルコキシチタンなどの光触媒性酸化チタン前駆体と、テトラアルコキシシランまたはその加水分解物を液体媒体中に含む組成物。
(B−2):テトラアルコキシチタンなどの光触媒性酸化チタン前駆体と、シリコーン樹脂を液体媒体中に含む組成物。
(B−3):テトラアルコキシチタンなどの光触媒性酸化チタン前駆体と、有機シラン、その加水分解物、有機シラザンなどのシリコーン樹脂前駆体を液体媒体中に含む組成物。
(B−4):テトラアルコキシチタンなどの光触媒性酸化チタン前駆体と、シリカを液体媒体中に含有する組成物。
(B−5):テトラアルコキシチタンなどの光触媒性酸化チタン前駆体を液体媒体中に含有する組成物。
【0024】
本発明の歯科・口腔用組成物から形成される被膜の機械的強度を確保して、耐久性に優れる実用的な被膜を口腔内または口腔外で形成でき、かつ歯科・口腔用組成物が施される基体との接着性が高くなることから、架橋性のシランまたはその加水分解物(3官能以上のシランまたはシラン加水分解物)を成分(b)中に20モル%以上、特に50モル%以上含有させることが好ましい。
そのため、本発明の歯科・口腔用組成物では、被膜形成性、取り扱い性などに優れ、しかも光触媒活性、機械的強度、基体との接着性に優れる被膜を歯、歯肉、歯科材料、口腔粘膜などに形成できる点から、成分(b)として、テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解物を用いた組成物[例えば上記(A−1)および(B−1)の組成物]が好ましく用いられる。
【0025】
その上、成分(b)としてテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解物を用いた組成物[特に上記(A−1)の組成物]は、それから形成される被膜が、紫外線によって触媒活性を発現するだけではなく、人体にとって安全性の高い可視光線の照射によっても高い触媒活性を発現するので、口腔内の所定部位に直接施すための組成物として適している。
特に、テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解物のうちでもテトラエトキシシランおよび/またはその加水分解物を用いた組成物は、上記した特性に加えて、テトラエトキシシランの加水分解・縮重合によって生成する副生物がエチルアルコールであり、安全性の点でより優れている点から好ましい。
【0026】
本発明の歯科・口腔用組成物では、光触媒性酸化チタンまたは光触媒性酸化チタン前駆体と、ケイ素化合物(I)、前記ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種との割合が、チタン原子:ケイ素原子のモル比に換算して、20:1〜1:100であることが、デンタルプラークの分解作用および形成抑制効果が高い点から好ましく、10:1〜1:20であることがより好ましい。
【0027】
本発明の歯科・口腔用組成物では、液体媒体として、人体に対して安全であるものであればいずれも使用できるが、一般には、水、または水とアルコール、特にエチルアルコールの混合物が好ましく用いられる。水とアルコールの混合物を用いる場合は、水1容量とアルコール0.1〜100容量の混合物が、塗工性が良好で、歯、歯肉、口腔粘膜、歯科材料などに本発明の歯科・口腔用組成物を施した後の液体媒体の除去が容易であることから好ましく用いられる。しかしながら、本発明の歯科・口腔用組成物を口腔内に直接施さずに、口腔外にある歯科材料に施して口腔外で液体媒体を完全に除去して歯科材料上に被膜を形成してから口腔内に装着する場合は、水およびアルコール以外の有機溶媒を液体媒体として用いることもでき、そのような液体媒体としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、ヘキサンなどを挙げることができる。
【0028】
本発明の歯科・口腔用組成物は、組成物中に含まれる光触媒性酸化チタンまたは光触媒性酸化チタン前駆体、ケイ素化合物(I)、前記ケイ素化合物(I)の加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体およびシリカから選ばれる少なくとも1種の種類や含有量などを調節することによって、希薄な溶液、希薄な分散液、粘度の高い溶液、粘度の高い分散液、ペースト状物、付形性のあるゲル状物などの形態にして用いることができる。
本発明の歯科・口腔用組成物を希薄な溶液や希薄な分散液の形態にすると、本発明の組成物を所定の部位に薄く塗布して、薄くて均一な被膜を形成させることができ、しかも光照射を行ってデンタルプラークを分解した後に、その水洗除去が容易であるというメリットがある。
一方、本発明の歯科・口腔用組成物を粘度の高い溶液や分散液、ペースト状物またはゲル状物の形態にする場合は、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、コロイドシリカ(シリカエアロジル等)などの増粘剤の1種または2種以上を配合すると、増粘を容易に行うことができる。本発明の歯科・口腔用組成物を粘度の高い溶液や分散液、ペースト状またはゲル状の形態、特にペースト状またはゲル状の形態にすると、口腔内に所望の部位に塗布した後に乾燥せずにそのままで光照射を行っても、光照射中に組成物が垂れることなく、塗布した部位にそのまま留まるため、操作性に優れている。
【0029】
本発明の歯科・口腔用組成物は、銀、銅および亜鉛から選ばれる殺菌作用を有する金属成分の少なくとも1種を更に含有することができる。かかる金属成分としては、前記した金属の微粒子または金属塩のいずれであってもよい。この様な金属成分を本発明の歯科・口腔用組成物中に含有させると、基体表面上での細菌の繁殖を抑制するため、デンタルプラークの蓄積付着を一層効果的に抑制でき、しかもデンタルプラーク分解物の水洗除去が一層容易になる。これらの金属成分を含有させる場合は、その含有量を組成物の全重量に基づいて約0.1〜10重量%とすることが、歯科・口腔用組成物の取り扱い性、制菌および殺菌作用、被膜の耐久性などが良好になる点から好ましい。
【0030】
また、本発明の歯科・口腔用組成物は、必要に応じて、ケイ素化合物(I)やシリコーン樹脂前駆体の加水分解触媒、縮重合触媒、pH調節剤、安定剤、着色剤、フッ素イオン徐放性フィラー、抗菌剤などを含有することができる。
【0031】
本発明の歯科・口腔用組成物を歯、歯肉、口腔粘膜、歯科材料に適用するに当たっては、一般に以下の方法が採用される。
まず、光触媒性酸化チタン粒子を含有する組成物Aの適用法としては、
(1)歯、歯肉、口腔粘膜、口腔内に装着した歯科材料(歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピース等)、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などの基体に組成物Aを塗布し、必要に応じて口腔に損傷を与えない温度でガスなどを吹き付けて乾燥して、光触媒性酸化チタンを含む被膜を前記基体上に形成させ、その被膜に光を照射して光触媒性酸化チタンの触媒活性を発現させる方法;および、
(2)口腔外にある歯科材料(歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピースなど)に組成物Aを塗布し、必要に応じて乾燥および/または加熱して、光触媒性酸化チタンを含む被膜を歯科材料表面に形成させ、それに光を照射して光触媒性酸化チタンの触媒活性を発現させた後、該歯科材料を口腔内に装着する方法;
が挙げられる。
【0032】
前記(2)の方法では、歯科・口腔用組成物の塗布、乾燥、加熱、光照射などの一連の処理を口腔外で行うことから、組成物Aを歯科材料に塗布した後に、その乾燥処理や乾燥後の縮重合処理などを例えば100℃を超えるような高温で行うことも可能であり、加熱によって歯科材料の表面上に光触媒性酸化チタンとシリカを含む耐摩耗性に優れる被膜を強固に形成させることができる。
上記(1)および(2)の方法における光照射は、光照射装置を用いて行っても、太陽光により行っても、室内に設置された蛍光灯などの光により行ってもよい。
【0033】
チタンアルコキシドなどの光触媒性酸化チタン前駆体を光触媒活性を有する光触媒性酸化チタン(アナターゼ型二酸化チタン)に変えるには、一般に400〜500℃の温度で焼成する必要がある。そのため、組成物Bを用いて光触媒活性を有する被膜を基体上に形成するに当たっては、前記焼成温度に耐え得る歯科材料、例えばキャスタブルセラミックス、陶材、金属などからなる歯科材料を用いて行う。より具体的には、口腔外で、組成物Bを、キャスタブルセラミックス、陶材、金属などの耐熱性材料からなる歯科材料(例えばクラウン、インレー、ブリッジ、義歯、金属床、ワイヤー、クラスプ、ブラケットなど)に塗布し、必要に応じて乾燥などを行った後、400〜500℃で焼成して光触媒性酸化チタン前駆体を光触媒性酸化チタンに変えて光触媒性酸化チタンを含有する被膜を歯科材料上に形成させ、該被膜に光を照射して光触媒性酸化チタンの触媒活性を発現させた後、それを歯科材料を口腔内に取り付ける方法が一般に採用される。
【0034】
また、光触媒性酸化チタン前駆体と共に成分(b)[ケイ素化合物(I)、その加水分解物、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂前駆体および/またはシリカ]を含有する組成物Bを用いる代わりに、成分(b)を含有せずに光触媒性酸化チタン前駆体を含有する溶液や分散液(酸化チタンゾルなど)を用いて、それを口腔外で耐熱性の歯科材料に塗布し、上記と同様に400〜500℃で焼成した後に光照射を行った場合にも、光触媒活性を有し、デンタルプラークの分解除去や付着防止、着色防止、口臭除去などの効果を有する被膜を歯科材料上に形成することもでき、したがって本発明はこの方法をも包含する。
【0035】
歯、歯肉、口腔粘膜、歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピースなどの歯科材料、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などからなる基体上に形成された光触媒性酸化チタンを含有する被膜の触媒活性は、通常の環境光でもある程度維持されるが、短時間で高い触媒活性を発現させるためには、光照射装置を用いて積極的に光を照射することが好ましい。また、時間が経過して被膜の触媒活性が低下したときに、被膜に光照射を行うことによって触媒活性を回復させることができる。特に、被膜への光照射を一定期間毎に繰り返して行うと、被膜の触媒活性が維持されて、上記基体表面へのデンタルプラークの付着の抑制や、変着色の防止、口臭予防などに著しい効果を示す。この方法は、可撤式の補填物、義歯、義歯床、コーヌスブリッジ、インプラント体上部構造、マウスピースなどに対して特に有効であり、これらのものを口腔から取り出して口腔外で光照射を行うことができる。
【0036】
光触媒性酸化チタンを含有する被膜への光照射用の光源としては、汎用の歯科用可視光線照射器であるデンタルライトや技工用光照射器、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀灯、太陽光などを挙げることができ、光照射形態や、光照射が行われる場所などに応じて適当な光源を選択して使用するのがよい。
【0037】
歯、歯肉、口腔粘膜、歯冠修復材料、義歯、義歯床、義歯床リベース材、矯正床、ワイヤー、ブリッジ、マウスピースなどの歯科材料、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などからなる基体上に光触媒性酸化チタンを含有する被膜を形成し、それに光を照射して光触媒性酸化チタンの触媒活性を発現させることによって、前記した基体上に形成されているデンタルプラークが分解され、また前記基体上へのデンタルプラークの形成が抑制されて、歯周病(歯槽膿漏など)や口腔内疾患などの歯科・口腔疾患の治癒や予防、歯や歯科材料の変着色の予防や抑制、口臭の除去などが効果的に行われる。また、変色歯に同様の手法で本発明の歯科・口腔用組成物を適用することで、着色成分を分解して歯の漂白を行うことも可能である。
また、デンタルプラークを除去した後のきれいになった口腔粘膜、歯、歯肉、歯科材料、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯などの基体に本発明の組成物を再度塗布して光触媒性酸化チタンを含有する被膜を形成させると、それらの基体へのデンタルプラークの再付着を防止することができる。光触媒性酸化チタンを含有する被膜の口腔内での耐久性はその適用部位により異なるが、一般に数日〜数週間程度にわたって光触媒活性が維持される。また、触媒活性が低下したときに上記のように再度光照射すると、触媒活性を再び高めることができる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明について実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
【0039】
《実施例1》
(1)歯科・口腔用組成物の調製:
テトラエトキシシラン2重量部、水55重量部およびエタノール35重量部を混合して撹拌し、pHを1.5〜2に調整して、テトラエトキシシランを加水分解して均一な溶液を調製した。ここに、光触媒性酸化チタン粒子(石原産業製「ST−01」、平均粒径0.007μm)8重量部を加え均一に分散させて、希薄な分散液状の歯科・口腔用組成物を調製した(組成物中でのチタン原子:ケイ素原子のモル比=10:1)。
(2)軟質リベース材を有する義歯床の製造:
(i) スチレン−イソプレン系エラストマー(株式会社クラレ製「ハイプラーVSI」)60重量部、ラウリルメタクリレート38重量部、デカンジオールジメタクリレート2重量部、カンファーキノン0.2重量部およびN,N−ジメチルアミノブトキシエチル安息香酸0.3重量部を混合して、均一なペースト状の軟質リベース材用組成物を調製した。
(ii) ポリメチルメタクリレート製の義歯床の粘膜面を一層分研削し、上記(i)で得られた軟質リベース剤用組成物を研削面に築盛した。軟質リベース剤用組成物を築盛した義歯床を口腔内に装着し、印象を取得し、印象の取得後に義歯床を口腔外に取り出し、はみ出した不要部の軟質リベース剤用組成物を除去した。その義歯床をそのまま25℃の水中に浸し、空気に接しない状態で歯科用光照射器(モリタ社製「αライト」)を用いて10分間光照射して軟質リベース材用組成物を重合硬化させた。
【0040】
(3)義歯床への歯科・口腔用組成物の塗布および被膜の形成:
上記(2)の(ii)で重合硬化の終了した義歯床を水中から取り出し、室温で1日放置した後、その軟質リベース材の表面に、上記(1)で調製した歯科・口腔用組成物を塗布し、液体媒体(水およびエタノール)を蒸散させた後、90〜100℃で、1時間加熱乾燥して、光触媒性酸化チタンを含有する被膜を形成させた。次いで、歯科用光照射器(モリタ社製「αライト」)を用いて該被膜に20分間光を照射して、触媒活性を発現させた。
(4)義歯床の口腔内への装着および光照射:
上記(3)で得られた光触媒性酸化チタン含有被膜を有する義歯床を患者の口腔内にセットし、1週間経過後に口腔より取り出して、義歯床におけるリベース材表面へのプラークの付着状態および着色の有無を目視により観察した。その結果、義歯床のリベース材表面には、プラークが極めて僅かに付着しているだけであり、またリベース材に着色が生じておらず、しかもリベース材表面におけるルプラークは水洗により容易に取り除くことができた。
【0041】
《比較例1》
上記(2)の(ii)と同様にして製造した軟質リベース材を有する義歯床(光触媒性酸化チタンを含有する被膜を形成していない義歯床)を、同じ患者の口腔内にセットし、1週間経過後に口腔より取り出して、義歯床のリベース材表面へのプラークの付着状態および着色の有無を目視により観察した。
その結果、義歯床のリベース材表面へのプラークの付着量が、実施例1に比べて大幅に多くなっており、しかもリベース材が黄色に着色していた。
【0042】
《実施例2および比較例2》
(1)歯科・口腔用組成物の調製:
テトラエトキシシラン2重量部、水55重量部およびエタノール35重量部を混合して撹拌し、pHを1〜2に調整して、テトラエトキシシランを加水分解して均一な溶液を調製した。ここに、光触媒性酸化チタン粒子(石原産業製「ST−01」、平均粒径0.007μm)0.8重量部を加えて均一に分散させて、希薄な分散液状の歯科・口腔用組成物を調製した(組成物中での光触媒性酸化チタン含量0.9重量%、テトラエトキシシランの加水分解物含量2.1重量%、チタン原子:ケイ素原子のモル比=1:1)。
(2)光触媒性酸化チタンを含有する被膜の形成:
(i) 光重合型歯冠用硬質レジン(株式会社クラレ製「エステニア」)を用いて、メーカー指定の方法により、前歯上顎右側の中切歯のジャケット冠を作製した。
(ii) 上記(i)で作製したジャケット冠の表面に、上記(1)で調製した歯科・口腔用組成物を筆で薄く塗布し、溶剤を蒸散させた後、150℃で1時間加熱して、光触媒性酸化チタンを含有する被膜をジャケット冠の表面に形成した(実施例2)。
(iii) また、比較のため、上記(i)と同様にして前歯上顎左側の中切歯のジャケット冠を作製し、表面に前記被膜を形成せずにそのまま用いた(比較例2)。
【0043】
(3)ジャケット冠の口腔内への装着およびプラークの付着状況:
(i) 患者の前歯上顎右側の中切歯に、上記(2)の(ii)で作製した光触媒性酸化チタン含有被膜の形成されたジャケット冠を歯科用レジンセメント(株式会社クラレ製「パナピア」)を用いて合着した。さらに、同じ患者の前歯上顎左側の中切歯に、上記(2)の(iii)で作製した光触媒性酸化チタン含有被膜のないジャケット冠を同じ歯科用レジンセメントを用いて合着した。
(ii) 3カ月後に患者をリコールして、歯垢染色液(ライオン株式会社製「プラークテスター」)を用いて前歯を染色し、ジャケット冠表面へのプラークの付着状態を目視により観察した。その結果、光触媒性酸化チタン含有被膜を形成した前歯上顎右側の中切歯のジャケット冠にはプラークの付着が殆ど認められなかったのに対して、光触媒性酸化チタン含有被膜を形成しなかった前歯上顎左側の中切歯のジャケット冠には、その歯頸部から歯肉辺縁部付近にかなりのプラークの付着が認められた。
【0044】
《実施例3》
(1) テトラエトキシシラン1重量部、チタニアゾル(石原産業製「STS−01」、平均粒径0.007μmの酸化チタン30重量%を含有する水性ゾル)2重量部、エタノール70重量部および水2重量部を混合して希薄な液状の歯科・口腔用組成物を調製した(組成物中での光触媒性酸化チタン含量0.8重量%、テトラエトキシシラン含量1.3重量%、チタン原子:ケイ素原子のモル比=5:3)。
(2) 患者の前歯上顎中切歯とその歯肉縁下に、上記(1)で調製した歯科・口腔用組成物を筆で塗布し、軽くエアーブローして液体媒体(水およびアルコール)を蒸散させた。歯科用光照射器(ウシオ電機株式会社製「ライテル」)を用いて、歯科・口腔用組成物を塗布した部分に光を2分間まんべんなく照射した後に水洗した。この歯科・口腔用組成物の塗布、エアーブロー、光照射および水洗工程を引き続いて更に2回繰り返した。
(3) 上記(2)の施術後3日後に、該処置部を歯垢染色液(ライオン株式会社製「プラークテスター」)を用いて染色して、表面のプラークの付着度合いを目視により観察したところ、歯科・口腔用組成物を塗布した部位は、塗布しなかった部位に比べてプラーク形成が大幅に少なかった。この結果から、上記(1)の歯科・口腔用組成物は、プラークの除去および再付着の抑制に効果があることが確認された。
【0045】
《実施例4》
(1) 実施例3の(1)と同様にして製造した歯科・口腔用組成物に、歯科・口腔用組成物の重量に基づいて0.1重量%の割合でポリビニルアルコールを添加し溶解させて、ペースト状の歯科・口腔用組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られたペースト状の歯科・口腔用組成物を、患者の上顎および下顎の中切歯の歯肉縁上と歯頸部に塗布し、歯科用光照射器(ウシオ電機株式会社製「ライテル」)を用いて3分間光を照射した。
(3) 上記(2)の施術後3日後に、該処置部を歯垢染色液(ライオン株式会社製「プラークテスター」)を用いて染色して、表面のプラークの付着度合いを目視により観察したところ、歯科・口腔用組成物を塗布した部位では、塗布しなかった部位に比べてプラーク形成が大幅に少なかった。この結果から、上記(1)の歯科・口腔用組成物は、プラークの除去および再付着の抑制に効果があることが確認された。
【0046】
《実施例5》
(1) 実施例4の(1)で得られたペースト状の歯科・口腔用組成物に、更に銀微粒子(平均粒径2μm)を歯科・口腔用組成物の重量に基づいて2重量%の割合で添加して、銀微粒子を含有するペースト状の歯科・口腔用組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた歯科・口腔用組成物を、患者の上顎および下顎の中切歯の歯頸部、歯肉縁および歯肉縁下のポケットに塗布し、歯科用光照射器(ウシオ電機株式会社製「ライテル」)を用いて3分間光を照射した。
(3) 上記(2)の施術後3週間後に、該処置部を歯垢染色液(ライオン株式会社製「プラークテスター」)を用いて染色して、表面のプラークの付着度合いを目視により観察したところ、歯科・口腔用組成物を塗布した部位では、塗布しなかった部位に比べてプラークの形成が大幅に少ないことが観察された。さらに、上記(1)の歯科・口腔用組成物の塗布部位の組織を少量採取してストレプトコッカス・ミュータンス菌(Streptococcus mutans)、カンジダ・アルビカンス菌(Candida alubicans)などの細菌の付着の有無を調べたところ、これらの細菌の付着が殆ど認められなかった。これらの結果から、光触媒性酸化チタン、ケイ素化合物(I)と共に銀微粒子を含有する歯科・口腔用組成物は、デンタルプラークの形成防止や抑制効果および殺菌効果に一層優れていることが確認された。
【0047】
《実施例6》
(1) メタルフレームとして金銀パラジウム合金(GC社製「キャストウエルMC」)を使用し、陶材として歯科用ポーセレン(松風社製「ユニボンドビンテージ」)を使用して、上顎用のメタルボンドセーレンブリッジを作製した。
(2) 上記(1)で作製したメタルボンドセーレンブリッジに、酸化チタンゾル(酸化チタン含有量30重量%、石原産業株式会社製「STS−01」)を薄くスプレーコートし、乾燥後、500℃で加熱焼成して表面が光触媒性酸化チタン(アナターゼ型二酸化チタン)で覆われたメタルボンドセーレンブリッジを製造した。
(3) 上記(2)で製造したメタルボンドセーレンブリッジを患者の口腔内に装着し、半年後にプラークの付着状況を目視により観察したところ、プラークの付着が殆ど認められなかった。
【0048】
《実施例7》
(1) 実施例1で用いた光触媒性酸化チタン粒子(石原産業製「ST−01」)2重量部、エタノール30重量部およびグリセリン40重量部を混合して分散液を調製した。この分散液にさらに増粘剤として平均分子量約400のポリオキシエチレングリコール15重量部と平均分子量約4000のポリオキシエチレングリコール15重量部を加え、均一に分散させて、付形性の良いペースト状の歯科・口腔用組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られたペースト状の歯科・口腔用組成物を、患者の上顎右側小臼歯から中切歯に至る全ての歯の歯肉縁上の歯面と歯茎の表面に塗布し、歯科用光照射器(ウシオ電機株式会社製「ライテル」)を使用して10分間光照射した。
(3) 口腔内をまんべんなく水洗してペースト状の歯科・口腔用組成物を除去し、歯と歯茎の表面をエアブローで乾燥させた。歯科・口腔用組成物を塗布して光照射した部分と、歯科・口腔用組成物を塗布しなかった部分(上顎左側小臼歯から中切歯に至る部分)のプラークの付着の度合いを、歯垢染色液(ライオン株式会社製「プラークテスター」)を用いて染色して目視により観察したところ、歯科・口腔用組成物を塗布した部分の方が、塗布しなかった部分に比べて、プラークの付着の度合いが明らかに少なかった。
細菌検査の結果、プラークに含まれていたP.gingivalis、St.mutansなどが殺菌されていたことが確認された。
【0049】
《比較例3》
(1) 実施例7の(1)において、光触媒性酸化チタン粒子を使用せずに、エタノール30重量部、グリセリン40重量部、平均分子量約400のポリオキシエチレングリコール15重量部および平均分子量約4000のポリオキシエチレングリコール15重量部のみを混合してペースト状組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られたペースト状組成物を用いて、実施例7と同様の手法で、患者の口腔内に塗布して光照射を行い、水洗後、プラークテスターにより染色してプラークの付着の度合いを目視により観察したところ、ペースト状組成物を塗布した部分と、塗布しなかった部分とで、プラークの付着の度合いに大きな差が生じていなかった。
【0050】
《実施例8》
(1) 水20重量部、グリセリン40重量部、実施例1で用いたものと同じ光触媒性酸化チタン粉末10重量部およびシリカ微粉末(アエロジル130)10重量部を混合し、均一に分散させて粘性のある歯科・口腔用組成物を調製した。
(2) 抜去した変色歯牙(上顎中切歯で、歯冠全体が薄い褐色を帯びている)の右半分に、上記(1)で調製した歯科・口腔用組成物を筆で薄く塗布した。左半分は比較のために該組成物を塗布せずにそのままの状態にしておいた。この状態で、歯科用光照射器(Kulzer社製「UniXS II」)で5分間光照射を行った後、歯牙を水洗して塗布した組成物を除去した。
(3) 上記(2)と同じ操作をさらに3回繰り返した後、歯科・口腔用組成物を塗布した部分と塗布しなかった部分の変色歯牙の表面の色調を目視で比較した。その結果、塗布した部分は、もとの薄い褐色が薄れて淡い黄色〜白色になっていたが、塗布しなかった部分の色調はもとの褐色のままであった。このように、本発明の歯科・口腔用組成物は変色歯の漂白の目的にも有効であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明の歯科・口腔用組成物は、歯や歯肉の表面、口腔内の歯科材料、コンポジットレジンで修復されたり歯科用マニキュアなどで表面がコーティングされた歯の表面などにデンタルプラークが付着するのを抑制し、さらにそれらの表面に付着したデンタルプラークの破壊や除去を促進して、齲蝕症、歯周炎、歯周疾患(歯槽膿漏等)、口内炎などの口腔内疾患や歯科疾患を効果的に予防および治療することができる。
さらに、本発明の歯科・口腔用組成物は、歯や歯科材料の表面へのタバコのヤニや食物などの付着により生ずる変着色を効果的に防止および抑制することができる。
また、本発明の歯科・口腔用組成物は、変色歯の漂白の目的で有効に使用することができる。
また、本発明の歯科・口腔用組成物は、口臭の予防や除去に有効である。
そして、本発明の歯科・口腔用組成物は、取り扱い性および安全性に優れている。
さらに、本発明の方法により、前記した歯科疾患の予防や治療、歯科材料の変着色の防止や抑制、変色歯の漂白、口臭の予防に有効な被膜を、口腔外で、歯科材料の表面に容易に形成することができる。

Claims (3)

  1. 歯、歯科材料および/または口腔に施して光を照射した後に施した箇所から洗い流して除去するための歯科・口腔用組成物であって、光触媒性酸化チタン、増粘剤および液体媒体を含有しペースト状またはゲル状であることを特徴とする光を照射した後に洗い流して除去するための歯科・口腔用組成物。
  2. 液体媒体が水、または水とアルコールの混合物である請求項1に記載の歯科・口腔用組成物。
  3. 銀、銅および亜鉛から選ばれる金属の微粒子並びに前記金属塩の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の歯科・口腔用組成物。
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