JP2724307B2 - 歯科用微小充填剤 - Google Patents

歯科用微小充填剤

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は歯エナメル質の小窩裂溝或は微小な表面脱灰
創にハイドロキシアパタイト及び補助剤を含む粉末、顆
粒、溶液(懸濁液)又はペーストをすり込み、或はすり
込んだあとポリマー又はフッ化物で該部を被覆すること
により、小窩裂溝或は微小な表面脱灰創を、保護、修復
する歯科用微小充填方法に使用するハイドロキシアパタ
イトに石灰化促進蛋白、或はこれらにコーティング剤を
配合させた歯科微小充填剤に関するものである。
〔従来の技術〕
歯エナメル質の表面に歯垢が沈澱し、その中で微生物
の産生する酸が徐々にエナメル質を溶解しエナメル質に
微小な創を発生させる(以下脱灰と記す。脱灰創は唾液
により再石灰化され修復されることが認められてい
る)。一旦エナメル質が脱灰されると、その後歯磨き操
作などで歯垢が除去されても、すぐに脱灰創に歯垢が再
付着し、再び酸による脱灰が繰り返えされる。このよう
に脱灰、歯垢除去、歯垢再付着、脱灰の繰返しにより脱
灰が進行し遂には肉眼的に検知しえる虫歯へと進行す
る。従来歯の治療は肉眼的に検知される虫歯の硬組織を
周辺の健全な部分を含めて削り、欠損部分の代替品とし
て、各種のプラスチック、セメント又は金属を充填して
欠損部分を補うものであった。この方法は高度の技術を
必要とする上、充填が完全でないと充填物の辺縁から再
び虫歯が進行する。近年虫歯の発生し易い歯小窩裂溝、
或は初期の脱灰による脱灰創をシアノアクリレート、ポ
リウレタン、その他のポリマーであるシーラント剤を填
塞し、それら口腔環境から隔絶することにより、虫歯の
発生を予防するシーラント法が開発されている。シーラ
ント法は小窩裂溝、或は脱灰創を、シーラント剤によっ
て酸処理したのち、シーラント剤を填塞し、その部位で
の歯垢の形成と、その作用を阻止することで虫歯の発生
を抑制するものである。然しながら、この方法は酸処理
の不充分、やりすぎ、酸処理面への唾液の付着などがシ
ーラント剤の小窩裂溝、或は脱灰創への接着力を低下さ
せ、又多すぎるシーラント剤の填塞は咀嚼、咬合により
破損を生じる。このようにシーラント方法はシーラント
剤の材質及び処理時の手技の良否によりシーラント剤の
脱落を生じる可能性があり、その効果が手技により大き
く左右されるともに、微小な脱灰創を被覆しにくく、又
被覆された脱灰創は唾液に触れないため唾液による再石
灰化を生じがたい。又歯質を強化あるいはこれを保護す
ることによって虫歯に対する抵抗性を高める方法として
フッ素イオンの歯表面への塗布、飲料水、食品への添加
などが行われている。然しながらこの方法もフッ素化合
物の取扱いに特殊な技術を必要としている。特開昭47−
1567号公報は歯表面に歯エナメル質組成を沈澱させる方
法として、口腔内に損傷を与えない程度の毒性と最終pH
を有するように調製されたゼラチン様物質を媒体とし
て、歯表面にブルシャイトを形成させブルシャイトをハ
イドロキシアパタイトに転移させる方法を提案してい
る。然しながらこの方法は、ブルシャイトのハイドロキ
シアパタイトへの転移に長時間を必要とする上、ブルシ
ャイトの歯表面への結合を助けるため、ゼラチン様物質
の媒体の併用を必要としている。
〔発明が解決しようとする課題〕
歯表面の強化法としてフッ素塗布、小窩裂溝の保護及
び脱灰創の修復法としてシーラント法、或は特開昭47−
1567号公報の方法が存在するが、いずれも特殊な手技が
要求され、前記のような難点を有している。本発明は特
殊な手技を必要とせず、簡単短時間に実施できる安全な
小窩裂溝保護及び脱灰創修復のための歯科用微小充填法
に使用する歯科用微小充填剤を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
放射性カルシウムを含むハイドロキシアパタイト及び
ブルシャイトの微粉末懸濁液を調製し、ハイドロキシア
パタイトを焼結して調製した人工歯牙に夫々の懸濁液を
加えて人工歯牙を浸し、ゴム膜を介して人工歯牙の上面
を回転研磨する。一定時間後人工歯牙を取出し、直に大
量の蒸留水を滴下して洗浄し、PCSカクテルを加え、液
体シンチレーションカウンターにて人工歯牙に結合した
放射能を測定することにより、人工歯牙に結合したハイ
ドロキシアパタイト及びブルシャイトの量を測定した。
その結果結合量は懸濁液のpHに依存するが、いかなるpH
でもハイドロキシアパタイトの結合量がブルシャイトに
比し著しく高いことを認めた。又人工う蝕を形成させた
抜去第3大臼歯をハイドロキシアパタイトペーストに37
℃で5時間浸漬撹拌した後偏光顕微鏡で歯エナメル質表
層を観察した結果、対照群では広範な脱灰創が認められ
たのに対し、ハイドロキシアパタイト処理群は表層が再
石灰され、脱灰創は対照群に比し薄くなっていることを
認めた。これらのことはハイドロキシアパタイトが歯の
表面に効率よく結合し、脱灰創を被覆し、その修復に寄
与することを示している。本願はこのようにハイドロキ
シアパタイトの歯表面の脱灰創に選択的に結合する性質
を利用し、ハイドロキシアパタイトを用いて歯小窩裂溝
を保護又は脱灰創を修復する方法に使用する微小充填剤
を提供するものである。
使用するハイドロキシアパタイトはできるだけ微粒子
であることが望まれ、一般に0.02〜10μ程度に微粉砕し
たものを使用する。微粉砕したハイドロキシアパタイト
粉末は顆粒、或は水またはコーテング剤と混合してハイ
ドロキシアパタイト含量約5〜約95%の溶液(懸濁液)
又はペースト状とする。これらは歯垢を除去したあとの
歯に、指先、ブラシ、ステック、布その他を使用して1
分以上、好ましくは3分以上すり込まれる。この操作で
ハイドロキシアパタイトは更に微細化され歯エナメル質
の小窩裂溝又は微小脱灰創に結合される。ハイドロキシ
アパタイトは栄養材として最高のカルシウム剤であるの
で、口腔に残った余分のハイドロキシアパタイトはその
まゝ飲み込んでもかまわない。水による洗口は軽く1回
位にとどめるのが好ましい。歯面に結合したハイドロキ
シアパタイトは唾液の存在で再石灰化が促進される。
ハイドロキシアパタイトにホスビチン、ヒスチジンリ
ッチ蛋白[The Journal of Biological Chemistry Vol.
263 No.16,Issue of June 5,pp.7472−7477,1988(ヒス
タチン)]などの石灰化促進蛋白(これらの蛋白はハイ
ドロキシアパタイトの石灰化触媒及び促進剤として作用
することが認められた)或はこれらの混合物を補助剤と
して適量混合させた粉末、顆粒、溶液(懸濁液)又はペ
ーストを使用することは再石灰化を促進し、被覆層を強
化することが好ましい。これら補助剤の添加量は補助剤
の種類に応じて任意に選択するが、一般的にハイドロキ
シアパタイトに対し、石灰化促進蛋白約1%以下であ
る。ペーストに使用されるコーテング剤は酢酸ビニル、
にかわ、ポリアクリル酸、アラビアガムなどである。
このようにハイドロキシアパタイトを含有するペース
トを歯表面にすり込むだけで、ハイドロキシアパタイト
が歯表面に結合され、唾液で再石灰化し、補助剤の存在
は再石灰化、歯強度を増進させる。本願方法は従来のシ
ーラント処理のように酸処理、防湿、重合などの処理を
必要とせず、加えてハイドロキシアパタイト、補助剤及
びコーティング剤は生体に悪影響を及ぼさずに特殊な手
技なしで容易に実施できる。又ハイドロキシアパタイト
は歯と同一成分で、従来のシーラント剤のように歯に対
し異物でないので小窩裂溝、脱灰創に強く結合し脱離す
る心配がなく、完全に修復された歯が再現される。更に
ハイドロキシアパタイト、石灰化促進蛋白及びコーテイ
ング剤よりなる粉末、顆粒、溶液(懸濁液)又はペース
トに歯表面に塗布しやすい適度の粘性をもち、膜厚が均
一になりやすいように可塑剤、溶媒、希釈剤などを適度
に加えたものを歯表面に塗布させることは歯表面を強化
させるとともに歯の美観に寄与する利点も有している。
更にハイドロキシアパタイトを含有する粉末、顆粒、
溶液(懸濁液)又はペーストを歯表面にすり込んだあと
フッ素塗布をすることにより歯を強化させることも可能
である。ハイドロキシアパタイト及び石灰化促進蛋白配
合ペーストを歯表面にすり込んだあと常法によりフッ素
塗布をすることは特に好ましいと伝える。又ペーストを
歯表面にすり込んだあと、ポリマーでその部分を被覆し
保護することも可能である。使用されるポリマーは、エ
ポキシライト9070、ヌバシール、エポキシライト9075、
エナメライト、デルトン、ホワイトシーラント、ピーア
ンドエフシーラント、フィズアシール、ティースマター
エヌ、プリスマシールド、ペリオシールなどの従来シー
ラントとして使用されているポリマー、或いはセラッ
ク、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラル、エチ
ルセルローズ、セルローズアセテートフタレート、ポリ
ビニルアルコールフタレート、スチレン・アクリル酸共
重合体、メチルアクリレート・メタクリル酸共重合体、
ビニルピリジン又はアルキルピリジンその他のビニルモ
ノマーとの共重合体、セルローズアテートジエチルアミ
ノアセテート、ポリビニルアセテートジエチルアミノア
セテート、ポリビニルアミノアセタール、ポリビニルア
ルコール誘導体、アミノセルローズ誘導体、ジメチルア
ミノエチルメタクリレート・メチルメタクリレート共重
合体、ビニルピリジン又はアルキルビニルピリジンとア
クリル酸の共重合体など医薬々剤用徐放製剤に使用され
るポリマーより任意に選択し、常法により被覆する。こ
の被覆によりすり込まれたハイドロキシアパタイト及び
補助剤は脱離しないので長時間歯表面に保持され効率よ
く再石灰化される。ハイドロキシアパタイトと石灰化促
進蛋白を含むペーストに、例えば炭酸カルシウム、リン
酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、
その他の研磨材;グリセリン、ソルビット、プロピレン
グリコールなどの保湿材;ウラリル硫酸ナトリウム、石
ケン水などの発泡材;カルボキシメチルセルローズ、カ
ラギーナンなどの粘結材;香料;甘味料;保存料;及び
口臭除去、歯牙着色除去材などの薬効成分を添加し、歯
磨きのように使用することは歯垢の除去とハイドロキシ
アパタイト及び石灰化促進蛋白の歯表面へのすり込みが
同時に実施できる使用し易い方法と伝える。
〔作用〕
歯と同じ成分であるハイドロキシアパタイト、或はハ
イドロキシアパタイトと補助剤が歯小窩裂溝、或は脱灰
創に選択的に強く結合する性質を利用し、ハイドロキシ
アパタイト或はハイドロキシアパタイトと補助剤を歯表
面にすり込むことにより歯表面を保護し、或は脱灰創を
皮膚し、唾液による再石灰化という自然の治癒力を利用
して虫歯の初期段階である脱灰を治療する本発明の方法
及びそれに使用する充填剤は、従来存在しなかった歯強
化法、虫歯予防法及び充填剤であり、従来のフッ素塗布
法、シーラント法に比し完全で特殊な手技を必要とせず
著しい利点を有している。
以下実施例をあげて具体的に本発明を説明する。
例1. 10μ以下に粉砕したハイドロキシアパタイト50gに0.0
1mgのカゼインを含む水50mlを添加して擂潰機でペース
ト状とし、歯研きの終わったあと、このペーストを指先
につけて歯面にたんねんに3分間すり込んだ。この操作
を歯磨きのあと毎回実施した。
例2. 10μ以下に粉砕したハイドロキシアパタイト50gに微
粉砕したカゼイン10mgを加え、乳鉢中で粉砕混合した粉
末を歯磨きの終わったあと歯ブラシで歯表面にブラッシ
ングにより塗布し、その後軽くうがいをした。歯磨きの
あとこのブラッシングを常に行った。
例3. 例2に使用した粉末をアルコール水溶液を用いて常法
により顆粒とし、歯磨きのあと歯面に指先ですり込ん
だ。この操作を歯磨きのあと毎回実施した。
例4. 例1と全く同様にペーストを歯面にすり込んだあと、
うがいで口中の余分のペーストを洗浄したのち、歯を乾
燥しヌバシール液を歯表面にうすく塗り紫外線ランプで
硬化させシールした。
例5. 例1と全く同様にペーストを歯面にすり込んだあと、
うがいして口中の余分のペーストを洗浄し、常法により
フッ化ジアンミン銀を塗布した。
例6. 酢酸ビニル100mlに10μ以下に粉砕したハイドロキシ
アパタイト4g、カゼイン0.04mgを添加し、充分混合して
均一な分散液とした、歯を磨いた後温風で歯を乾燥し、
ハケで分散液を均一に歯表面に塗布し、乾燥させて、つ
やのある白色の美しく被覆された歯表面をえた。
参考例 ハイドロキシアパタイトの歯表面への結合量を測定す
るため、以下の生体外試験を行った。
(A).ハイドロキシアパタイト及びブルシャイトの合
成 0.1M Na2HPO4溶液100〜200mlに0.1M CaCl2(Ameroham
45CaCl2を含む)溶液100mgを撹拌しつつ徐々に滴下
し、常法によりハイドロキシアパタイトを合成した。一
方0.1M NaH2PO4溶液100〜200mlに同様に0.1M45CaCl2
液を滴下しブルシャイトを調製した。調製後のハイドロ
キシアパタイトとブルシャイトは夫々、0.1M Na2HPO4
び0.1M NaH2PO4溶液に保存し、使用時各pHの0.1Mリン酸
緩衝液中に再懸濁して使用した。
(B).人工歯牙の作成 ハイドロキシアパタイトを直径1cm、厚さ3mmの円板状
に成形し焼結してハイドロキシアパタイトタブレットを
作成した。その表面を600番のサンドペーパーにて均一
な表面になるよう研磨し、その後蒸留水を流しながら、
ブラッシングにより粉末を注意深く除去し、人工歯牙と
して使用した。
(C).長さ12cm、巾4cm、深さ10mmのアクリル槽の低
部に直径1cm、深さ2mmのハイドロキシアパタイトタブレ
ット固定用の盲孔5個を設け、この盲孔に5個のハイド
ロキシアパタイトタブレットを固定し、ハイドロキシア
パタイト又はブルシャイト懸濁液5mlを加えてタブレッ
トを浸し、ゴム膜を介して、タブレット上面を一秒間に
1回の速度で回転研磨した。一定時間後タブレットを取
り出し、直に大量の蒸留水を滴下しつつ洗浄し、PCSカ
クテル2mlを加えて、液体シンチレーションカウンター
でタブレットに結合した放射能を測定した。
(D).結果 ハイドロキシアパタイト及びブルシャイトの安定なp
H、夫々pH9.0及びpH5.0で行った結果は、使用したハイ
ドロキシアパタイトの比放射能5.4×105CPM/mg、ブルシ
ャイト8.9×105CPM/mgから計算するとタブレットへのハ
イドロキシアパタイト結合量は5分後5μgであり、そ
の後しだいに増加して40分後には164μgに達した。こ
の結合量はブルシャイトの場合によりはるかに多く、5
分後で20倍、40分後で109倍であった。
尚すり込み時のpHを同一にしてpH5.5、6.8、7.4及び
8.5の条件下で行った結果もハイドロキシアパタイトの
タブレットの結合力が著しく大きいことを示した。それ
らの結果を下表にす。
これらの結果はハイドロキシアパタイトが選択的に歯
表面に結合されることを示している。
〔発明の効果〕
歯表面の小窩裂溝或は微小な脱灰創に強く結合する生
体物質ハイドロキシアパタイトと補助剤を含む微小充填
材を歯表面にすり込む、或はすり込んだ後ポリマーで被
覆することにより充填剤が小窩裂溝或は脱灰創を被覆
し、唾液或は補助材の作用により自然の治癒力が増進さ
れて脱灰創の修復を生じさせるという本法は、単に微小
充填材を歯表面にすり込むだけで充分に作用し、ハイド
ロキシアパタイトがカルシウム剤として最良であるので
飲み込んでも害がなく、使用する充填剤の薬害を考慮す
る必要がない。又実施に特殊な手技を必要としない。従
って本人自身が簡単に実施できる利点を有している。
唾液による再石灰化という自然の治癒力を利用し、し
かもこれを増強させて虫歯を最初の段階で停止させると
いう本法及びそれに使用する微小充填剤は従来に存在し
ない虫歯予防の最も効果的な手段と伝える。又本発明は
知覚過敏症或は歯槽膿漏の治癒にも利用可能である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】歯表面にすり込むことにより歯の微小窩裂
    溝及び脱灰創を修復させることを特徴とするハイドロキ
    シアパタイトと補助剤とよりなる粉末、顆粒、溶液(懸
    濁液)又はペースト状の歯科用微小充填剤であって、該
    補助剤が、ホスビチン及びヒスチジンリッチ蛋白から選
    ばれた石灰化促進蛋白の少なくとも1つである歯科用微
    小充填剤。
  2. 【請求項2】請求項(1)の歯科用微小充填剤に更にコ
    ーティング剤を配合させた歯科用微小充填剤。
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