JP2008195636A - 再石灰化促進剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤。
【選択図】なし
Description
したがって、初期齲蝕状態の対象に対して、より効率的に歯質に作用して表層下脱灰したエナメル質の再石灰化を促進し得る歯科用フッ素歯面塗布剤などの適用態様が望まれていた。
[1]適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤;
[2]フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤であって、歯面を乾燥させる前および/または歯面を乾燥させた後に適用することを特徴とする該再石灰化促進剤;
[3]再石灰化有効量のフッ素化合物を含み、乾燥させた歯面および/または適用後に乾燥させる歯面に適用する再石灰化促進剤;
[4]適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[5]適用する前および適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[6]0.4〜3重量%のフッ素化合物を含むことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1記載の再石灰化促進剤;
[7]さらに界面活性剤を含む[1]−[5]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[8]泡状の形態で適用する[7]記載の再石灰化促進剤;
[9]歯列に適合するトレーに載せ、該トレーを患者の口腔内に挿入して咬合させることにより適用する[1]−[8]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤
を提供する。
また、本願の請求項4および5に係る発明によれば、請求項1−3に係る発明と比較してさらに再石灰化を促進することができるため、より効率的に脱灰部位を再石灰化して健全な状態に戻すことができる。
また、本願の請求項6に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して有効な再石灰化促進効果が示された所定量のフッ素化合物のみを含むため、フッ素の急性毒性の危険性をより低く抑えることができる。
また、本願の請求項7に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して界面活性剤を含むため、剤の性状をより安定化し、より広い範囲の剤型に処方化することができる。
また、本願の請求項8に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して泡状の形態を有するため、適用後短時間のうちに剤と接触し得る歯面の面積を大きくすることができ、また、垂れ落ちにくくなり、より効率的に歯面に適用することができ、より効率的に脱灰部位を健全な状態に戻すことができる。
さらに、本願の請求項9に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して剤をトレーに載せて一時に集中的に歯面全体に適用することができるため、より簡便かつ安全に、脱灰部位の再石灰化を促進して健全な状態に戻すことができる。
で表される色差変化量ΔE*abが通常3以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上増加、ΔL*が通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上増加、またはΔb*が通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上減少のいずれか1つ以上の条件が満たされる場合は、確実に歯面が乾燥したと判断することができる。一般的には、ΔE*ab値が1以上変化すると、色の相違が目視で十分認識し得るといわれている。
本発明の再石灰化促進剤に用いることができる界面活性剤としては、フッ化物イオンの再石灰化促進効果を有効に発揮させる観点から、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が好ましい。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸系界面活性剤が挙げられ、中でも、ラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸カリウムが特に好ましい。また、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシントリエタノールアミンなどのアシルサルコシンおよびその塩、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチル−β−アラニンナトリウムなどのN−アシル−N−メチル−β−アラニンおよびその塩、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチルタウリンなどのN−アシル−N−メチルタウリンおよびその塩、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ココイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールなどのN−アシル−L−グルタミン酸およびその塩などのアミノ酸系界面活性剤が挙げられ、中でも、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩が特に好ましい。これらアニオン性界面活性剤は、単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
本発明の再石灰化促進剤に有効成分として用いることができる糖アルコールとしては、パラチニット、キシリトール、エリスリトールなどが挙げられる。これら糖アルコールは単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0.1〜10重量%である。
本発明の液状の再石灰化促進剤は、綿棒などに適量をとって歯面に塗布することにより直接適用することができる。
また、別の態様において、本発明の再石灰化促進剤は、多孔質膜を有するフォーマー容器に充填して泡沫形態で吐出することができる。再石灰化促進剤を充填するフォーマー容器は、容器に加圧して組成物を空気と混合し、多孔質膜を通過させることにより、泡沫状として吐出するものであればいずれのタイプのものでもよい。例えば、加圧する方法が軟質容器の胴部を手指で押圧するタイプのスクイーズフォーマーや、ポンプ機構を備えたキャップの頭部を手指で押圧するタイプのポンプフォーマーなどが挙げられる。
さらに、このトレーは、2つのトレーがヒンジを介して対照的に結合した形態のものを使用することができ、その場合、2つのトレーに剤を出し、口腔内に挿入する直前に折り重ねて上下の歯列に同時に剤を適用することができる(図4b)。
本発明の再石灰化促進剤は、初期齲蝕、表層下脱灰、エナメル質表層下脱灰、白斑病変を呈する歯質に適用することにより、脱灰部位の再石灰化を促進して健全な状態に戻すことができる。
また、本発明の再石灰化促進剤は、歯科医により適用もしくは処方されまたは薬局・薬店で販売される、再石灰化用歯科用組成物、フッ素塗布剤もしくは薬用口腔用組成物として、または通常の消費剤として販売される口腔用組成物として提供することができる。
(1)表層下脱灰エナメル質の調製
冷蔵庫保存の牛歯より直径約6mmのエナメル質を切り出し、歯科用レジン(Orthofast, GC)にて包埋した。つぎに、表面を耐水性研磨紙(Beuhler, #600)にて研磨して表面出しを行い、脱灰液(White, D.J., Caries Res., Vol.21, pp.228 (1987); pH5.0)にエナメル質ブロックを1個ずつ37℃にて浸漬した。脱灰条件は、40mL/個、脱灰時間192時間とした。脱灰後、ブロックは蒸留水で充分に洗浄し、湿雰囲気下にて冷蔵保存した。
前記のようにして調製した表層下脱灰エナメル質ブロックを以下の処理に付した。
(A)対照群1(pHサイクリング処理のみ)
(B)乾燥処理
(C)乾燥処理⇒フッ素化合物適用処理
(D)乾燥処理⇒フッ素化合物適用処理⇒乾燥処理
(E)フッ素化合物適用処理⇒乾燥処理
(F)フッ素化合物適用処理
(G)対照群2(非処理)
・乾燥処理:スリーウェイシリンジ(モリタポータケア社製)により、ドライエアーを3分間吹き付けて乾燥(目視および色差により前記定義の乾燥を確認)
・フッ素化合物適用処理:2重量%フッ化ナトリウム水溶液に3分間浸漬
調製した表層下脱灰エナメル質ブロックは、1ブロックずつ、37℃の脱灰液(1.5mM CaCl2;1.5mM KH2PO4;0.9mM酢酸;pH5.0に調整)(ten Cate JM, et al., Eur. J. Oral Sci., Vol.103, pp.362-367 (1995))2.5mLに2時間浸漬した(脱灰処理)後、37℃の再石灰化液(1.5mM CaCl2;0.9mM KH2PO4;130mM KCl;20mM HEPES;pH7.0に調整)2.5mLに22時間浸漬した(再石灰化処理)。これは、ヒト口腔内の1日のpHサイクルを模擬的に表す試験モデルであり、「pHサイクリング処理」という。
上記の(A)〜(F)の処理は、ブロックを、脱灰処理から再石灰化処理に移行した2時間後に再石灰化液から取り出し、蒸留水で洗浄した後に行った。処理後、ブロックは再石灰化液に再度浸漬して再石灰化処理を続けた。なお、(C)〜(F)の処理においては、フッ素化合物適用処理後にブロックを蒸留水で十分に洗浄し、次の処理に移行した。この1日周期の一連の処理は、各処理区につき10ブロックを使用して10日間行った。
それぞれ処理したブロックを、常法により表面の保護、薄切片化、横断マイクロラジオグラフィー(TMR)の順に操作した。ハイリソリューションプレートに圧着し、X線照射器にて10分間照射した。プレートは常法に従って現像後、定着処理を行った。得られたプレートのコンピュータ画像処理によりミネラル分布を得た。オリジナルプログラムによりミネラル分布から各指標値、脱灰ミネラル量(Vol%・μm)、脱灰病巣深さ(μm)およびミネラル極大部ミネラル値(Vol%)を算出した。再石灰化を促進する効果の評価に使用した指標を図1に概略的に説明する。ここに、「脱灰ミネラル量」とは脱灰によって失われたミネラル量で、図1の健全エナメル質と再石灰化した後のエナメル質とによって囲まれる面積の割合を表す。また、「脱灰病巣深さ」とは病巣部の深さを表す。さらに、「ミネラル極大部ミネラル値」とは脱灰病巣内のミネラル量が極大値を示す部位におけるミネラル量を表す。
また、測定結果を表1および図2に示す。数値は10ブロックについて測定した平均値である。
詳細には、再石灰化を促進する効果を総合的に示す指標である「脱灰ミネラル量」について見ると、フッ素化合物適用処理の前および後に歯面を乾燥させた場合(処理区(D)に再石灰化が最も促進され(処理区(A)と比較して減少している脱灰ミネラル量の差異が再石灰化が促進された部分)、順次、フッ素化合物適用処理後に乾燥処理した場合(処理区(E))およびフッ素化合物適用処理のみした場合(処理区(F))に再石灰化を促進する程度が大きいことが明らかとなった。
また、「脱灰病巣深さ」について見ると、フッ素化合物適用処理の前後に乾燥処理を行った場合(処理区(D)および(E))に再石灰化が最も促進されて病巣の深さが浅くなることが明らかとなった。
さらに、「ミネラル極大部ミネラル値」について見ると、フッ素化合物を適用した場合(処理区(C)−(F))は表層付近の極大部分のミネラル量が多くなることが明らかとなった。この現象による効果はつぎのように考えることができる。表層下脱灰では歯の表層付近よりもむしろ表層下(歯内部)で脱灰が進行し、歯が脆くなって欠損を生じるおそれがある。そして、通常、欠損を生じた部分は再石灰化されない。しかし、表層下で脱灰が進行している場合でも表層付近のミネラル量が多くて歯の強度が高ければ、欠損が防止されて歯の形状を保つことができるため、脱灰が生じた歯の内部を充填するように進行する再石灰化を引き起こすことができる。
これらを総合的に考察すると、フッ素化合物の適用前後に乾燥処理を行うことにより、歯の欠損をより効果的に防止したうえで、表層下の脱灰部分の再石灰化を促進して健全な歯を回復し得ることが明らかとなった。
フッ素化合物適用処理の前後に行う乾燥処理は、単に歯面および歯質に残存するフッ素化合物濃度を高め、そのようなフッ素化合物の濃度効果によって再石灰化が促進していることが考えられる。そこで、前記実験で示された再石灰化を促進する効果が歯面および歯質に残存するフッ素化合物濃度の差異によるものなのか否かを検討した。
前記実験において使用した処理液の量は処理の前後において変化していないことから、ある処理区において残存するフッ化物イオン濃度が特異的に高まっている場合には、他の処理区と比較して処理後のフッ化ナトリウム水溶液および洗浄液に含まれるフッ化物イオン濃度が低下すると考えられる。また、歯面および歯質に残存したが簡単に洗浄で遊離してくる部分のフッ化物イオンは、洗浄液に含まれるフッ化物イオン濃度で測定することができる。
前記の(C)−(F)の処理をした後、処理に使用した2重量%フッ化ナトリウム水溶液2.5mLおよび洗浄液(蒸留水)2.0mLに含まれるフッ化物イオンを定量した。なお、処理に使用する前の2重量%フッ化ナトリウム水溶液に含まれるフッ化物イオンの初期濃度は9,200ppm(平均値)であった。
その結果を図3に示す。
図3の結果からも明らかなように、各処理区間におけるフッ化物イオン濃度に有意差は認められなかった。
したがって、歯面および歯質に残存するフッ化物イオンの量はフッ素化合物適用処理の前後に行う乾燥処理によって影響されないことが確認され、前記実験で示された再石灰化促進効果が歯面および歯質のフッ化物イオン量の増加に起因するものでないことが示された。
すなわち、本発明による再石灰化促進効果は、単に薬剤のフッ素濃度を増加させたり、フッ素化合物の適用回数を増やしたりするなどして、歯に残存するフッ素量を増加させるものとは異なる機構によって奏されるということができ、乾燥処理によって、乾燥しないものと同じフッ素の残存量であっても再石灰化が促進されることが明らかとなった。
フッ素歯面塗布剤
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.4
リン酸 0.1
リン酸水素二ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
パラベン 0.1
ポリエチレングリコール(平均分子量400) 1.0
エタノール 0.5
グリセリン 5.0
香料 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
フッ素歯面塗布剤
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 2.0
精製水 残 部
合計 100.0
再石灰化洗口液
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 1.0
還元パラチノース 2.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.2
無水クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.07
塩化セチルピリジニウム 0.01
パラベン 0.1
プロピレングリコール 3.0
グリセリン 3.0
香料 0.02
精製水 残 部
合計 100.0
泡状フッ素剤
実施例1のフッ素歯面塗布剤を市販のフォーマーポンプ容器に充填した。ポンプ容器から吐出される泡状フッ素剤は綿棒などで塗布することも、図4に示すトレーを用いて直接歯面に塗布することもできた。剤を泡状の形態とすることにより同量の液状の形態を有する剤よりも体積を大きくすることができ、また、垂れ落ちにくいので、簡便かつ均一に剤を適用することができた。
Claims (9)
- 適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤。
- フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤であって、歯面を乾燥させる前および/または歯面を乾燥させた後に適用することを特徴とする該再石灰化促進剤。
- 再石灰化有効量のフッ素化合物を含み、乾燥させた歯面および/または適用後に乾燥させる歯面に適用する再石灰化促進剤。
- 適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
- 適用する前および適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
- 0.4〜3重量%のフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
- さらに界面活性剤を含む請求項1−5のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
- 泡状の形態で適用する請求項7記載の再石灰化促進剤。
- 歯列に適合するトレーに載せ、該トレーを患者の口腔内に挿入して咬合させることにより適用する請求項1−8のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
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2007
- 2007-02-09 JP JP2007030640A patent/JP2008195636A/ja active Pending
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