JP2008195636A - 再石灰化促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】表層下脱灰したエナメル質の再石灰化をより効率的に促進し得る態様で適用する再石灰化促進剤を提供すること。
【解決手段】適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、フッ素化合物を含む再石灰化促進剤に関する。詳細には、本発明は塗布前および/または塗布後に歯面を乾燥させて適用することを特徴とする表層下脱灰したエナメル質の再石灰化を促進する剤に関する。
齲蝕の発生を予防する1つの方法としてフッ素化合物を歯面に適用することが行われている。フッ素化合物から遊離するフッ化物イオンは、エナメル質の主構成成分であるハイドロキシアパタイトの結晶格子に取り込まれて結晶性を高める。その結果、歯質は強化されて齲蝕原因菌が産生する有機酸に対する抵抗性が高まり、脱灰されにくくなる。このように歯質が脱灰されにくくなることにより、脱灰が進行した状態である齲蝕が有効に予防される。
一方、フッ化物イオンは、歯質を強化して脱灰しにくくするほかに、脱灰が進行した初期齲蝕状態(表層下脱灰)にあるエナメル質に作用して再石灰化を促進する効果を有することも知られている(特許文献1)。
上述したようにフッ素化合物は健全な歯質に作用して脱灰を抑制し、また表層下脱灰したエナメル質に作用して再石灰化を促進して健全な状態に回復させる効果を有する化合物であり、それを多量に歯に適用すればより大きな効果が奏されることが考えられる。しかし、フッ素は急性中毒を引き起こす危険性があるため、口腔内へのその適用量は制限されている。
したがって、初期齲蝕状態の対象に対して、より効率的に歯質に作用して表層下脱灰したエナメル質の再石灰化を促進し得る歯科用フッ素歯面塗布剤などの適用態様が望まれていた。
特開2000−247852公報
本発明の目的は、表層下脱灰したエナメル質の再石灰化をより効率的に促進し得る態様で適用する再石灰化促進剤を提供することにある。
本発明者らは、上述したような状況に鑑みて鋭意検討した結果、フッ素化合物を含有する剤を適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させることにより、より効率的に表層下脱灰したエナメル質の再石灰化を促進し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤;
[2]フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤であって、歯面を乾燥させる前および/または歯面を乾燥させた後に適用することを特徴とする該再石灰化促進剤;
[3]再石灰化有効量のフッ素化合物を含み、乾燥させた歯面および/または適用後に乾燥させる歯面に適用する再石灰化促進剤;
[4]適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[5]適用する前および適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[6]0.4〜3重量%のフッ素化合物を含むことを特徴とする[1]−[3]のいずれか1記載の再石灰化促進剤;
[7]さらに界面活性剤を含む[1]−[5]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤;
[8]泡状の形態で適用する[7]記載の再石灰化促進剤;
[9]歯列に適合するトレーに載せ、該トレーを患者の口腔内に挿入して咬合させることにより適用する[1]−[8]のいずれか1に記載の再石灰化促進剤
を提供する。
本願の請求項1−3に係る発明によれば、適用する前後に歯面を乾燥させない従来の態様で適用する剤と比較して歯質の再石灰化をより効率的に促進することができるため、フッ素の急性毒性の危険性を低く抑えつつ、脱灰部位を再石灰化して健全な状態に戻すことができる。
また、本願の請求項4および5に係る発明によれば、請求項1−3に係る発明と比較してさらに再石灰化を促進することができるため、より効率的に脱灰部位を再石灰化して健全な状態に戻すことができる。
また、本願の請求項6に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して有効な再石灰化促進効果が示された所定量のフッ素化合物のみを含むため、フッ素の急性毒性の危険性をより低く抑えることができる。
また、本願の請求項7に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して界面活性剤を含むため、剤の性状をより安定化し、より広い範囲の剤型に処方化することができる。
また、本願の請求項8に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して泡状の形態を有するため、適用後短時間のうちに剤と接触し得る歯面の面積を大きくすることができ、また、垂れ落ちにくくなり、より効率的に歯面に適用することができ、より効率的に脱灰部位を健全な状態に戻すことができる。
さらに、本願の請求項9に係る発明によれば、前記請求項に係る発明と比較して剤をトレーに載せて一時に集中的に歯面全体に適用することができるため、より簡便かつ安全に、脱灰部位の再石灰化を促進して健全な状態に戻すことができる。
本発明の再石灰化促進剤に用いるフッ素化合物としては、フッ化物イオンを遊離し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ジルコニウム、フッ化スズ、フッ化水素酸、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、フルオロシラン、フッ化ジアンミン銀などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、フッ化ナトリウム、フッ化スズおよびフッ化水素酸は再石灰化を促進する効果が大きいので特に好ましい。
これらフッ素化合物の配合量は、フッ化物イオン濃度で換算して1,800〜14,000ppmであり、フッ素化合物の配合量としては剤の全量に対して0.4〜3重量%であり、好ましくは1〜2.5重量%である。フッ素化合物の量が0.4重量%未満の場合は再石灰化を促進する効果が低くなり、一方3重量%を超えると安全性の観点から好ましくない。
本発明の再石灰化促進剤は、歯面に適用する前および/または後に歯面を乾燥させることにより、特に顕著な再石灰化促進効果を奏し得るものである。ここに「歯面を乾燥させる」手段としては、自然乾燥、加温による乾燥、または空気などの気体を吹き付けて機械的に蒸発させるなど、歯面に付着した唾液、水などを除去し得るものであれば特に限定されないが、コンプレッサーにより圧縮した空気を歯科用のスリーウェイシリンジを使用することが好ましい。その際、コンプレッサーにより圧縮した空気をシリカゲルなどの乾燥剤を通して乾燥させた後に吹き付けることもできる。コンプレッサーの圧力は通常5〜14kgf/cmが好ましい。歯科用のスリーウェイシリンジを用いて乾燥する場合は、口腔内全体(各歯牙に対する吹き付けの合計)で3秒以上、好ましくは5秒以上吹き付けることにより歯面を乾燥することができる。歯面が乾燥したか否かは、通常の実施では歯面の色の変化から目視で判断することができ、具体的には表層下脱灰病変が白斑として目視できる程度として判断することができる。また、客観的な判断指標としては、色彩計を用いて処理前後の歯面を測定した場合に、ハンター色差式:
Figure 2008195636
[式中、L*値は明るさを表わし、ΔL*の正の値は白色度の増加、負の値は黒色度の増加を意味し、a*値は赤−緑の軸を表わし、Δa*の正の値は赤色度の増加、負の値は緑色度の増加を意味し、b*は黄−青の軸を表わし、Δb*の正の値は青色度の増加、負の値は黄色度の増加を意味する]
で表される色差変化量ΔE*abが通常3以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上増加、ΔL*が通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上増加、またはΔb*が通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上減少のいずれか1つ以上の条件が満たされる場合は、確実に歯面が乾燥したと判断することができる。一般的には、ΔE*ab値が1以上変化すると、色の相違が目視で十分認識し得るといわれている。
本発明の再石灰化促進剤は、適用する前または適用した後のいずれかに歯面を乾燥させれば顕著な効果が奏されるが、適用する前および適用した後の両方に乾燥させることにより最も顕著な効果が奏され、ついで適用した後に乾燥させることにより顕著な効果が奏される。
また、別の態様において、本発明の再石灰化促進剤の性状を安定化させ、また、適用に適した形態に剤を処方化するために界面活性剤を配合することができる。
本発明の再石灰化促進剤に用いることができる界面活性剤としては、フッ化物イオンの再石灰化促進効果を有効に発揮させる観点から、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が好ましい。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸系界面活性剤が挙げられ、中でも、ラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸カリウムが特に好ましい。また、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシントリエタノールアミンなどのアシルサルコシンおよびその塩、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチル−β−アラニンナトリウムなどのN−アシル−N−メチル−β−アラニンおよびその塩、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチルタウリンなどのN−アシル−N−メチルタウリンおよびその塩、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ココイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールなどのN−アシル−L−グルタミン酸およびその塩などのアミノ酸系界面活性剤が挙げられ、中でも、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩が特に好ましい。これらアニオン性界面活性剤は、単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
また、非イオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体および脂肪酸ジアルカノールアミドが挙げられ、具体的には、米国BASFコーポレーション社製のPluronic(登録商標)シリーズの非イオン性界面活性剤であるPluronic P65、Pluronic P85、Pluronic P105、Pluronic L44、Pluronic L64、Pluronic F88などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体や、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジアルカノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。これら非イオン性界面活性剤は、単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
本発明の再石灰化促進剤に界面活性剤を配合する場合は、剤の全量に対して0.1〜4重量%、好ましくは0.2〜2重量%配合するのが好ましい。界面活性剤の量が0.1重量%未満では良好な物性を有する泡状の形態にすることができず、また、剤の保存安定性が損なわれるため好ましくない。一方、4重量%を超えて配合すると、口腔粘膜に対する刺激性が高くなるため好ましくない。
また、別の態様において、本発明の再石灰化促進剤には、有効成分としてフッ素化合物と組み合わせて糖アルコール、リン化合物、カルシウム化合物などを配合することにより、エナメル質表層下脱灰の再石灰化をさらに促進することができる。
本発明の再石灰化促進剤に有効成分として用いることができる糖アルコールとしては、パラチニット、キシリトール、エリスリトールなどが挙げられる。これら糖アルコールは単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0.1〜10重量%である。
また、リン化合物としては、例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムなどが挙げられる。
また、カルシウム化合物としては、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ピロリン酸水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
さらに、本発明の再石灰化促進剤には、前記の成分の他、通常の口腔内に適用する組成物に使用される成分、例えば湿潤剤、アルコール類、増粘剤、香味剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、色素、香料などを、本発明による再石灰化促進効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
そのうち湿潤剤としては、例えばグリセリン、ソルビット、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングール、キシリット、マルチット、ラクチットなどの多価アルコールが挙げられる。これらの多価アルコールは単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0〜40重量%である。
また、アルコール類としては、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、特にエタノールが好ましい。これらのアルコール類は単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0〜3重量%である。
また、増粘剤としては、例えばカラゲナン、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガム等などのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガムなどの無機粘結剤などが挙げられる。これらの増粘剤は単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0〜3重量%である。
また、香味剤としては、例えばメントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油などが挙げられる。これらの香味剤は単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0〜1重量%である。
さらに、甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒドなどが挙げられる。これらの甘味剤は単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、剤の全量に対して0〜0.1重量%である。
本発明の再石灰化促進剤は、これらの成分を水と混合し、通常の方法に従って製造することができ、通常は液状の形態を有する。
本発明の液状の再石灰化促進剤は、綿棒などに適量をとって歯面に塗布することにより直接適用することができる。
また、別の態様において、本発明の再石灰化促進剤は、多孔質膜を有するフォーマー容器に充填して泡沫形態で吐出することができる。再石灰化促進剤を充填するフォーマー容器は、容器に加圧して組成物を空気と混合し、多孔質膜を通過させることにより、泡沫状として吐出するものであればいずれのタイプのものでもよい。例えば、加圧する方法が軟質容器の胴部を手指で押圧するタイプのスクイーズフォーマーや、ポンプ機構を備えたキャップの頭部を手指で押圧するタイプのポンプフォーマーなどが挙げられる。
さらに、本発明の再石灰化促進剤は、図4に示すように、トレーを用いて適用することができる。具体的には、本発明の液状またはフォーマー容器を介した泡沫状の剤をトレーに適量出し、そのトレーを適用対象の歯列に合わせて口腔内に挿入し、トレーと歯牙とを重ね合わせて1分から5分程度軽く噛ませることによって、簡便に適用することができる(図4a)。また、歯に局所的に剤を適用できることにより、体内に吸収されるフッ素の量を最小限に留めることができ、本発明の再石灰化促進剤の安全性を高めることができる。
さらに、このトレーは、2つのトレーがヒンジを介して対照的に結合した形態のものを使用することができ、その場合、2つのトレーに剤を出し、口腔内に挿入する直前に折り重ねて上下の歯列に同時に剤を適用することができる(図4b)。
本発明の再石灰化促進剤は、初期齲蝕、表層下脱灰、エナメル質表層下脱灰、白斑病変を呈する歯質に適用することにより、脱灰部位の再石灰化を促進して健全な状態に戻すことができる。
また、本発明の再石灰化促進剤は、歯科医により適用もしくは処方されまたは薬局・薬店で販売される、再石灰化用歯科用組成物、フッ素塗布剤もしくは薬用口腔用組成物として、または通常の消費剤として販売される口腔用組成物として提供することができる。
つぎに実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これは説明することを目的とするものであって、本発明をこれらに限定することを意図するものではない。
1.歯面乾燥およびフッ素化合物適用処理
(1)表層下脱灰エナメル質の調製
冷蔵庫保存の牛歯より直径約6mmのエナメル質を切り出し、歯科用レジン(Orthofast, GC)にて包埋した。つぎに、表面を耐水性研磨紙(Beuhler, #600)にて研磨して表面出しを行い、脱灰液(White, D.J., Caries Res., Vol.21, pp.228 (1987); pH5.0)にエナメル質ブロックを1個ずつ37℃にて浸漬した。脱灰条件は、40mL/個、脱灰時間192時間とした。脱灰後、ブロックは蒸留水で充分に洗浄し、湿雰囲気下にて冷蔵保存した。
(2)処理方法
前記のようにして調製した表層下脱灰エナメル質ブロックを以下の処理に付した。

(A)対照群1(pHサイクリング処理のみ)
(B)乾燥処理
(C)乾燥処理⇒フッ素化合物適用処理
(D)乾燥処理⇒フッ素化合物適用処理⇒乾燥処理
(E)フッ素化合物適用処理⇒乾燥処理
(F)フッ素化合物適用処理
(G)対照群2(非処理)

・乾燥処理:スリーウェイシリンジ(モリタポータケア社製)により、ドライエアーを3分間吹き付けて乾燥(目視および色差により前記定義の乾燥を確認)
・フッ素化合物適用処理:2重量%フッ化ナトリウム水溶液に3分間浸漬

調製した表層下脱灰エナメル質ブロックは、1ブロックずつ、37℃の脱灰液(1.5mM CaCl;1.5mM KHPO;0.9mM酢酸;pH5.0に調整)(ten Cate JM, et al., Eur. J. Oral Sci., Vol.103, pp.362-367 (1995))2.5mLに2時間浸漬した(脱灰処理)後、37℃の再石灰化液(1.5mM CaCl;0.9mM KHPO;130mM KCl;20mM HEPES;pH7.0に調整)2.5mLに22時間浸漬した(再石灰化処理)。これは、ヒト口腔内の1日のpHサイクルを模擬的に表す試験モデルであり、「pHサイクリング処理」という。
上記の(A)〜(F)の処理は、ブロックを、脱灰処理から再石灰化処理に移行した2時間後に再石灰化液から取り出し、蒸留水で洗浄した後に行った。処理後、ブロックは再石灰化液に再度浸漬して再石灰化処理を続けた。なお、(C)〜(F)の処理においては、フッ素化合物適用処理後にブロックを蒸留水で十分に洗浄し、次の処理に移行した。この1日周期の一連の処理は、各処理区につき10ブロックを使用して10日間行った。
(3)結果
それぞれ処理したブロックを、常法により表面の保護、薄切片化、横断マイクロラジオグラフィー(TMR)の順に操作した。ハイリソリューションプレートに圧着し、X線照射器にて10分間照射した。プレートは常法に従って現像後、定着処理を行った。得られたプレートのコンピュータ画像処理によりミネラル分布を得た。オリジナルプログラムによりミネラル分布から各指標値、脱灰ミネラル量(Vol%・μm)、脱灰病巣深さ(μm)およびミネラル極大部ミネラル値(Vol%)を算出した。再石灰化を促進する効果の評価に使用した指標を図1に概略的に説明する。ここに、「脱灰ミネラル量」とは脱灰によって失われたミネラル量で、図1の健全エナメル質と再石灰化した後のエナメル質とによって囲まれる面積の割合を表す。また、「脱灰病巣深さ」とは病巣部の深さを表す。さらに、「ミネラル極大部ミネラル値」とは脱灰病巣内のミネラル量が極大値を示す部位におけるミネラル量を表す。
また、測定結果を表1および図2に示す。数値は10ブロックについて測定した平均値である。
Figure 2008195636
表1および図2の結果からも明らかなように、フッ素化合物適用処理の前後に乾燥処理を行った場合(処理区(D)および(E))に、再石灰化が促進されることが示された。
詳細には、再石灰化を促進する効果を総合的に示す指標である「脱灰ミネラル量」について見ると、フッ素化合物適用処理の前および後に歯面を乾燥させた場合(処理区(D)に再石灰化が最も促進され(処理区(A)と比較して減少している脱灰ミネラル量の差異が再石灰化が促進された部分)、順次、フッ素化合物適用処理後に乾燥処理した場合(処理区(E))およびフッ素化合物適用処理のみした場合(処理区(F))に再石灰化を促進する程度が大きいことが明らかとなった。
また、「脱灰病巣深さ」について見ると、フッ素化合物適用処理の前後に乾燥処理を行った場合(処理区(D)および(E))に再石灰化が最も促進されて病巣の深さが浅くなることが明らかとなった。
さらに、「ミネラル極大部ミネラル値」について見ると、フッ素化合物を適用した場合(処理区(C)−(F))は表層付近の極大部分のミネラル量が多くなることが明らかとなった。この現象による効果はつぎのように考えることができる。表層下脱灰では歯の表層付近よりもむしろ表層下(歯内部)で脱灰が進行し、歯が脆くなって欠損を生じるおそれがある。そして、通常、欠損を生じた部分は再石灰化されない。しかし、表層下で脱灰が進行している場合でも表層付近のミネラル量が多くて歯の強度が高ければ、欠損が防止されて歯の形状を保つことができるため、脱灰が生じた歯の内部を充填するように進行する再石灰化を引き起こすことができる。
これらを総合的に考察すると、フッ素化合物の適用前後に乾燥処理を行うことにより、歯の欠損をより効果的に防止したうえで、表層下の脱灰部分の再石灰化を促進して健全な歯を回復し得ることが明らかとなった。
2.歯質のフッ化物イオンの定量
フッ素化合物適用処理の前後に行う乾燥処理は、単に歯面および歯質に残存するフッ素化合物濃度を高め、そのようなフッ素化合物の濃度効果によって再石灰化が促進していることが考えられる。そこで、前記実験で示された再石灰化を促進する効果が歯面および歯質に残存するフッ素化合物濃度の差異によるものなのか否かを検討した。
前記実験において使用した処理液の量は処理の前後において変化していないことから、ある処理区において残存するフッ化物イオン濃度が特異的に高まっている場合には、他の処理区と比較して処理後のフッ化ナトリウム水溶液および洗浄液に含まれるフッ化物イオン濃度が低下すると考えられる。また、歯面および歯質に残存したが簡単に洗浄で遊離してくる部分のフッ化物イオンは、洗浄液に含まれるフッ化物イオン濃度で測定することができる。
(1)定量方法
前記の(C)−(F)の処理をした後、処理に使用した2重量%フッ化ナトリウム水溶液2.5mLおよび洗浄液(蒸留水)2.0mLに含まれるフッ化物イオンを定量した。なお、処理に使用する前の2重量%フッ化ナトリウム水溶液に含まれるフッ化物イオンの初期濃度は9,200ppm(平均値)であった。
その結果を図3に示す。
(2)結果
図3の結果からも明らかなように、各処理区間におけるフッ化物イオン濃度に有意差は認められなかった。
したがって、歯面および歯質に残存するフッ化物イオンの量はフッ素化合物適用処理の前後に行う乾燥処理によって影響されないことが確認され、前記実験で示された再石灰化促進効果が歯面および歯質のフッ化物イオン量の増加に起因するものでないことが示された。
すなわち、本発明による再石灰化促進効果は、単に薬剤のフッ素濃度を増加させたり、フッ素化合物の適用回数を増やしたりするなどして、歯に残存するフッ素量を増加させるものとは異なる機構によって奏されるということができ、乾燥処理によって、乾燥しないものと同じフッ素の残存量であっても再石灰化が促進されることが明らかとなった。
実施例1
フッ素歯面塗布剤
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.4
リン酸 0.1
リン酸水素二ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
パラベン 0.1
ポリエチレングリコール(平均分子量400) 1.0
エタノール 0.5
グリセリン 5.0
香料 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
実施例2
フッ素歯面塗布剤
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 2.0
精製水 残 部
合計 100.0
実施例3
再石灰化洗口液
成分 配合量(重量%)
フッ化ナトリウム 1.0
還元パラチノース 2.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.2
無水クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.07
塩化セチルピリジニウム 0.01
パラベン 0.1
プロピレングリコール 3.0
グリセリン 3.0
香料 0.02
精製水 残 部
合計 100.0
実施例4
泡状フッ素剤
実施例1のフッ素歯面塗布剤を市販のフォーマーポンプ容器に充填した。ポンプ容器から吐出される泡状フッ素剤は綿棒などで塗布することも、図4に示すトレーを用いて直接歯面に塗布することもできた。剤を泡状の形態とすることにより同量の液状の形態を有する剤よりも体積を大きくすることができ、また、垂れ落ちにくいので、簡便かつ均一に剤を適用することができた。
本発明は、表層下脱灰エナメル質の再石灰化を効率的に促進するための口腔用組成物、特に歯科用のフッ素歯面塗布剤として利用することができる。
再石灰化促進効果の各評価指標を説明する概略図である。縦軸は単位体積当たりに占めるミネラル量のパーセントを示し、横軸は歯の内部方向への深さを示す。 各処理後の各評価指標の値を示すグラフである。 各処理後のフッ素化合物水溶液および洗浄液に含まれるフッ化物イオン濃度を示すグラフである。 本発明の再石灰化促進剤を適用する1の形態を示す模式図である。

Claims (9)

  1. 適用する前および/または適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする、フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤。
  2. フッ素化合物を含有する再石灰化促進剤であって、歯面を乾燥させる前および/または歯面を乾燥させた後に適用することを特徴とする該再石灰化促進剤。
  3. 再石灰化有効量のフッ素化合物を含み、乾燥させた歯面および/または適用後に乾燥させる歯面に適用する再石灰化促進剤。
  4. 適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
  5. 適用する前および適用した後に歯面を乾燥させたことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
  6. 0.4〜3重量%のフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
  7. さらに界面活性剤を含む請求項1−5のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
  8. 泡状の形態で適用する請求項7記載の再石灰化促進剤。
  9. 歯列に適合するトレーに載せ、該トレーを患者の口腔内に挿入して咬合させることにより適用する請求項1−8のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
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