JP3637926B2 - ダイアモンド単結晶膜の製造方法 - Google Patents

ダイアモンド単結晶膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、大面積のダイアモンド単結晶膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイアモンド単結晶膜は、バンドギャップおよび電子とホールの移動速度がSi、SiC単結晶より大きく、熱伝導度が各種材料の中で最大であり、また、各種波長の光の透過率が大きい点においても優れており、これらの特性を活かして半導体基板、発光素子、レンズ、窓材、反射鏡、ヒートシンク、メモリー材、磁気ヘッド等の広い用途への利用が期待されている。
【0003】
このダイアモンド単結晶膜の製造法としては、従来から多く開示されている。
【0004】
例えば、特開昭63−252997号公報には、Si単結晶基板上にマイクロ波プラズマCVD法等によって、ダイアモンド単結晶膜を得ることが記載されているが、マイクロ波プラズマCVD法だけではダイアモンド結晶膜の単結晶化、多結晶化を決定する要因である核の方位、発生密度のコントロールができず、実際には多結晶ダイアモンド膜しか得られない。
【0005】
また、「NIKKEI NEW MATERIALS 1990年11月12日号」、「NIKKEI NEW MATERIALS 1991年4月8日号」には、C−BNあるいはNi単結晶基板上に、マイクロ液プラズマCVD法を適用したエピタキシャル成長を利用して単結晶のダイアモンド膜を得たとの報告があるが、適用できる基板自体は、精々数100μm径程度の小面積であって具体的な用途への利用には程遠い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広い基板上に均質なダイアモンド単結晶の厚膜を形成した基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ダイアモンド(格子定数が3.567Å)の結晶構造に近い大面積の製造が可能なβ−SiC(格子定数が4.360Å)単結晶を基板としてエピタキシャル成長を利用するもので、単結晶成長のための被膜として結晶化容易なアモルファス炭素膜を用い、これに、ダイアモンド単結晶化に必要なエネルギーを与えることを特徴とする。
【0008】
アモルファス炭素膜はSiC単結晶基板界面上ではごく薄い層厚で単結晶膜化しており、熱エネルギーを与えることで単結晶膜が全層厚にわたり成長する。
【0009】
さらに、得られたダイアモンド単結晶膜上に炭素含有ガスを導入してダイアモンド単結晶膜をエピタキシャル成長させることができるので、厚膜のダイアモンド単結晶膜とすることができる。また、析出時間を十分にとれば、ダイアモンドの単結晶のブロックも形成できる。
【0010】
ダイアモンドの結晶構造に近いSiCの単結晶の基板としては、例えば、昇華法やCVD法を用いてSi単結晶基板上にエピタキシャル成長させることによって得たものが好適に利用できる。
【0011】
また、単結晶成長のための被膜としてのアモルファス炭素膜は、高周波プラズマCVD法によって得た炭素の結合手に水素が結合しているものが好ましい。
【0012】
その理由は、グラファイト的な構造の核が成長したものが存在すると、エネルギーを与えると水素の存在により炭化水素の形でアモルファス炭素膜から抜けて行き、ダイアモンド核の成長、再配列、単結晶化のみが促進されるためである。
【0013】
また、グラファイトの膜又はグラファイトの構造が主体の膜を用いても、グラファイトは熱的に安定なためダイアモンド膜は形成されない。結晶化が容易なアモルファス炭素膜を用いる必要がある。
【0014】
さらに、このアモルファス炭素膜へ与えられるエネルギーとして、炭素結合の再構築を図るために加熱による方法が適用できるが、水素が結合している炭素骨格を選択的に切り、ダイアモンドの骨格である炭素のSP3 混成軌道による炭素の結合である核を選択的に再配列可能なイオン衝撃、イオン注入のエネルギーを利用することが、半導体形成のための各種元素のドーピングができることからも有利である。なお、現在大面積の基板が得られていないが、C−BN、Ni、Cu、Ge、Au、Pd、Pt、Au、V、Rhの単結晶基板上でも本発明の方法でダイアモンドの単結晶膜を得ることができる。
【0015】
例えば、C−BN単結晶の場合を例にとると、ダイアモンド単結晶の高圧合成法と同様な方法で合成したC−BN単結晶塊の直径約1000μmの(111)面が現れている結晶面上に、上記と同様なアモルファス炭素膜を成膜して、加熱又は各種イオンの注入により単結晶化のためのエネルギーを与えることにより、ダイアモンドの単結晶膜を得ることができた。他の結晶面上でも同様にして合成できる。格子定数がダイアモンドに近いGe、Au、Pd、Pt、Au、V、Rhの単結晶面上でも、本発明の方法により同様にしてダイアモンドの単結晶膜を得ることができる。
【0016】
【作用】
本発明は基板としてダイアモンドの結晶構造に近いSiCの単結晶を基板と結晶化容易な水素化したアモルファス炭素膜を用いるので、エピタキシャル成長に必要な要素である基板の格子点並みの数の核発生を実現でき、また、核の成長方位を制御できる。
【0017】
【実施例】
実施例1
直径2インチ、厚さ100μmの(110)面配向をしたSi単結晶ウェハーを準備し、このSi単結晶ウェハーの(110)面上にCVD法または昇華法によって10μm厚のSiC単結晶膜をエピタキシャル成長させSiC単結晶基板を製作した。このSiC単結晶基板を1.01×104 Paに維持した周波数13.56MHzの高周波プラズマCVD装置の反応容器内に配置した。基板の温度を200〜900℃の温度に保持し、この反応室内にCH4 を2ml/minとH2 を40ml/minとを導入し、50〜800Wの出力で2μmの層厚を有するアモルファス炭素膜を形成した。つぎに、このようにしてアモルファス炭素膜を形成した基板をH2 雰囲気中で500〜1100℃の温度で3〜12時間保持した。加熱は、カーボン基板上に試料を置いて誘導加熱、レーザー光の照射による加熱、赤外線の照射による加熱方法、電子ビーム照射による方法を採ったが、同様な加熱効果を得ることができた。これによって、基板を観察すると無色で透明度のある表面の膜を形成した。その基板表面はSiC単結晶基板並みの平滑性を有するものであった。この試料を入射角0.5°でX線回折のパターンを観察したが、(110)配向のダイアモンドの回折角の位置だけにピークが現れており、他の面のピークは現れていなかった。他の炭素の同素体のピークは現れておらず、ダイアモンド膜が単結晶であることが判明した。また、ラマンスペクトルによって同膜を観察したが、ダイアモンド特有の波数1332cm-1にシャープなピークが観察されたが、他の位置には観察されなかった。そしてこの試料表面の低速電子線回折パターンを見るとダイアモンド単結晶独特の回折パターンを示すものであった。
【0018】
実施例2
実施例1は、アモルファス炭素膜のダイアモンド膜単結晶化のための結晶化エネルギーを外部からの加熱により得たものであるが、イオンの注入によっても上記アモルファス炭素膜を結晶化して単結晶ダイアモンド膜に変化できる例を示す。
【0019】
実施例1によって得たアモルファス炭素膜を形成した試料を、イオン注入装置のチャンバーに冷却水によって冷却された試料セット台上にセットして、N2 + を0.1−2MeVの加速電圧で、1×1012−1×1818+ /cm2 注入した。この時ファラデーカップで測定した電流値は10-3μA/cm2 であった。得られた試料の表面は黄色味を帯びた透明度の優れたものであった。また、表面の平滑性についてもSiCの単結晶膜と同程度のものであった。この試料を入射角0.5°でX線回折のパターンを観察したが、(110)配向のダイアモンドの回折角の位置だけにピークが現れており、他の面のピークは現れていなかった。他の炭素の同素体のピークは現れておらず、ダイアモンド膜が単結晶であることが判明した。また、ラマンスペクトルによって同膜を観察したが、ダイアモンド特有の波数1332cm-1にシャープなピークが観察されたが、他の位置にはピークは現れなかった。そしてこれも上記と同様にして低電子線回折装置で分析してみるとダイアモンド単結晶(110)面特有の回折パターンを有していた。
【0020】
このダイモンド単結晶膜についてRBS(ラザフォード後方散乱スペクトル)法で観察すると、実施例2のイオン注入で形成したダイアモンド単結晶膜については内部に格子欠陥が1×1010個/cm3 程度あることがわかったが、これらについては、H2 雰囲気中で700〜800℃の温度で6〜24時間アニールすると欠陥が回復して1×107 個/cm3 以下にすることができた。
【0021】
上記実施例1と2によってダイアモンド単結晶膜を形成した後に、この膜の上にマイクロ波プラズマCVD装置において、1.01×105 Pa、2.45GHzの条件の下で、CH4 1ml/minと、H2 100ml/minとを石英チャンバー内に導入して2.66×104 Pa、基板温度200〜900℃の条件で10時間コーティングしてダイアモンド単結晶膜を1.5μmエピタキシャル成長させた。これについても得られた試料は平滑で透光性、無色透明度の優れたものであった。低電子線回折装置で回折線のパターンを観察したが、(110)面配向のダイアモンド単結晶で見られる特有の回折パターンをしていた。
【0022】
このようにして得られたダイアモンド単結晶膜試料を小角入射X線〜回折装置で調べたが(110)配向のダイアモンド膜であることがわかった。破面について観察を行ったが、ダイアモンド単結晶特有のへき解面を有するものであった。上記の実施例においては、(110)面のSiC単結晶基板上にダイアモンド単結晶膜を成長させる方法を示したが、(111)面、(100)面上でも同様にして、(111)面、(100)面配向を有するダイアモンド単結晶膜を製造することができた。その他の結晶配向のSiC単結晶基板においても同様にしてダイアモンド単結晶膜をエピタキシャル成長させることができた。
【0023】
【発明の効果】
本発明によって以下の効果を奏する。
【0024】
(1)均質な単結晶ダイアモンド厚膜が得られる。
【0025】
(2)半導体用基板、発光素子、紫外光のレンズ材、窓材、反射鏡、磁気ヘッド、メモリー材、ヒートシンクへの適用が実現できる。
【0026】
(3)ダイアモンドのブロックの形成が可能となり、宝飾品が低コストで供給できる。

Claims (2)

  1. SiCの単結晶の基板上にアモルファス炭素膜を設け、アモルファス炭素膜にエネルギーを付与し、ダイアモンド単結晶膜を形成することを特徴とするダイアモンド単結晶膜の製造方法。
  2. ダイアモンド単結晶膜を形成したのち、このダイアモンド単結晶膜に炭素含有ガスを導入してダイアモンド単結晶膜をエピタキシャル成長させることを特徴とするダイアモンド単結晶膜の製造方法。
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