JP3637474B2 - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に関し、詳しくは、写真感度に優れ、且つ階調特性、特に露光後の経時保存による階調の安定性を改良したハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀写真感光材料の感度をあげる手段として、平板状ハロゲン化銀粒子(以下、単に平板粒子ともいう)に転位線を導入することが有効であることが知られている(特開平63−220238号)。転位線の導入形態として転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤や転位線を主として主平面上に導入した平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤などがしられているが、特にアスペクト比が2以上であり、粒子の頂点近傍に転位が集中している平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤が特に有効であることが知られている(特公平3−175440号)。
【0003】
一方、ハロゲン化銀写真感光材料の重要な特性として、経時安定性、中でも露光されてから現像されるまでの間の安定性、即ち潜像安定性は重要な項目である。ハロゲン化銀の露光により形成される潜像は不安定であり、時間の経過と共に、または熱、湿度などにより退行したり補力されたりし、写真性能的な変動となって現れる。
【0004】
この潜像安定性はハロゲン化銀の製造方法や構造、表面処理、化学増感や分光増感の方法、ゼラチン等のバインダー特性、硬膜剤の種類、塗布液のpHや銀イオン濃度などにより大きく影響される。潜像安定性を高めるために種々の方法が提案されている。例えば特開平1−291250号に記載されているベンゾチアゾリウム、特開昭58−17431号に記載されるピロガロール誘導体、特開昭58−152235号に記載されるテトラザインデン類などを用いる方法、および特開平1−257947号には平板粒子と膜面pHをコントロールする方法などが開示されている。しかし、これらの技術を用いても潜像安定性の改良は不十分であった。すなわち、これらの技術を用いても、露光後全く変動しないというレベルまで改良されるわけではなくある程度の変動が残る。特に、青感光性層、緑感光性層、赤感光性層をゆうするハロゲン化銀写真感光材料では、数多くある感光性層の一つの層の変動がカラーバランス即ち色の変動となって現れるため、微小な変動でも色の変化として強調され品質上の問題となる。また、上述の転位線の導入されたハロゲン化銀粒子は、感光効率をあげているためその潜像は、不安定であり、カラーバランスのくずれをおこしやすいものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、感度に優れ且つ潜像安定性すなわち露光後の経時保存によるカラーバランスのくずれの少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0007】
1.支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(B)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(B)の球換算平均粒径値(B′)である。
【0008】
2.支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を主として主平面上に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(C)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(C)の球換算平均粒径値(C′)である。
【0009】
3.支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を全く導入していない平板状ハロゲン化銀粒子(D)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(D)の球換算平均粒径値(D′)である。
【0011】
以下、本発明について詳細に述べる。
【0012】
本発明の感光材料に含まれるハロゲン化銀粒子は平板粒子である。平板粒子とは、結晶学的には双晶に分類される。
【0013】
双晶とは、一つの粒子内に一つ以上の双晶面を有するハロゲン化銀結晶であるが、双晶の形態の分類はクラインとモイザーによる報文「フォトグラフィッシェ・コレスポンデンツ(Photographishe Korrespondenz)」99巻,100頁、同100巻,57頁に詳しく述べられている。
【0014】
本発明における平板粒子は、主平面に平行な双晶面を2枚有する。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができる。具体的な方法は次の通りである。
【0015】
まず、含有される平板粒子が、支持体上に略主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し、試料を作成する。これをダイヤモンド・カッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を得る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。
【0016】
本発明の平板粒子は、平均アスペクト比(個々のハロゲン化銀粒子の粒径/粒子厚さの平均値)が1.5以上のものを言うが、好ましくは3以上であり、更に好ましくは5以上である。
【0017】
平板粒子の粒径は、該ハロゲン化銀粒子の球換算粒径(該ハロゲン化銀粒子と同じ体積を有する球の直径)で示されるが、0.2μm以上が好ましく、更に好ましくは0.3〜3.0μmである。
【0018】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、球換算平均粒径が0.2μm以上である平板粒子を2種以上混合してなることを特徴としている。混合する平板粒子の粒径差としては、球換算平均粒径で0.07μm以上離れていることが好ましく、0.15μm以上が更に好ましい。
【0019】
請求項1の発明はハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(B)を含有するハロゲン化銀乳剤を含有しており、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(B)の球換算平均粒径値(B′)であることを特徴している。
【0020】
請求項2の発明はハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を主として主平面上に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(C)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有し、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(C)の球換算平均粒径値(C′)であることを特徴としている。
【0021】
請求項3の発明はハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を全く導入していない平板状ハロゲン化銀粒子(D)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有し、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(D)の球換算平均粒径値(D′)であることを特徴としている。
【0023】
粒径は、例えば該粒子を電子顕微鏡で1万倍〜7万倍に拡大して撮影し、そのプリント上の粒子径又は投影時の面積を実測することによって得ることができる(測定粒子個数は無差別に1000個以上あることとする)。
【0024】
ここに、平均粒径rは、粒径riを有する粒子の頻度niとri3との積ni×ri3が最大となる時の粒径riと定義する(有効数字3桁、最小桁数字は4捨5入する)。
【0025】
本発明の平板粒子の球換算平均粒径の変動係数は、
(標準偏差/球換算平均粒径)×100=球換算平均粒径の変動係数(%)
によって分布の広さを定義した時30%以下のものであり、好ましくは20%以下のものである。ここに球換算平均粒径及び標準偏差は、前に定義した粒径riから求めるものとする。
【0026】
本発明の平板粒子の平均沃化銀含有率は1モル%以上であるが、好ましくは1〜10モル%であり、更に好ましくは2〜7モル%である。
【0027】
本発明の平板粒子は、上記のように沃臭化銀を主として含有する乳剤であるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の組成のハロゲン化銀、例えば塩化銀を含有させることができる。
【0028】
ハロゲン化銀粒子における沃化銀の分布状態は、各種の物理的測定法によって検知することができ、例えば日本写真学会・1981年度年次大会講演要旨集に記載されているような、低温でのルミネッセンスの測定やEPMA法、X線回折法によって調べることができる。
【0029】
本発明において、個々のハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率及び平均沃化銀含有率は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)法を用いることにより求めることが可能である。この方法は、乳剤粒子を互いに接触しないように良く分散したサンプルを作製し、電子ビームを照射する電子線励起によるX線分析より極微小な部分の元素分析が行える。この方法により、各粒子から放射される銀及び沃度の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも50個の粒子についてEPMA法により沃化銀含有率を求めれば、それらの平均から平均沃化銀含有率が求められる。
【0030】
本発明の平板粒子は、粒子間の沃化銀含有率がより均一になっていることが好ましい。EPMA法により粒子間の沃化銀含有率の分布を測定した時に、相対標準偏差が30%以下、更に20%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明の平板粒子の表面の沃化銀含有率は1モル%以上であることが好ましく、2〜20モル%であることが更に好ましい。
【0032】
平板粒子の表面とは、ハロゲン化銀粒子の最表面を含む粒子の最外層であって、粒子の最表面から50Å迄の深さをいう。平板粒子の表面のハロゲン組成はXPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)によって次のように求められる。
【0033】
即ち、試料を1×10E-8torr以下の超高真空中で−110℃以下まで冷却し、プローブ用X線としてMgKαをX線源電圧15kV、X線源電流40mAで照射し、Ag 3d5/2、Br 3d、I 3d3/2の電子について測定する。測定されたピークの積分強度を感度因子(Sensitivity Factor)で補正し、これらの強度比からハロゲン化銀表面のハライド組成を求める。
【0034】
ハロゲン化銀粒子が有する転位線は、例えばJ.F.Hamilton;Photo.Sci.Eng.11(1967)57や、T.Shiozawa;J.Soc.Phot.Sci.Japan,35(1972)213等に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察できる。即ち、乳剤から粒子に転位が発生する程の圧力を掛けないように注意して取り出したハロゲン化銀粒子を、電子顕微鏡用のメッシュに乗せ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐよう試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時、粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しに難くなるので、高圧型の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。
【0035】
このような方法によって得られた粒子写真から、個々の粒子における転位線の位置及び数を求めることができる。
【0036】
1粒子中に存在する転位線の本数の測定は次のようにして行う。入射電子に対して傾斜角度を変えた一連の粒子写真を各粒子について撮影し、転位線の存在を確認する。この時、転位線の本数を数えられるものについてはその本数を数える。転位線が密集して存在したり、又は転位線が互いに交わっている時など、1粒子当たりの転位線の本数を数えられない場合は、多数の転位線が存在すると数える。
【0037】
平板粒子中の転位線については、J.F.Hamilton:Phot.Sci.Eng.,11,57(1967)や、T.Shiozawa:J.Soc.Phot.Sci.Japan,35,213(1972)等に記載されている。
【0038】
本発明のハロゲン化銀乳剤のうち最も主要なものは、平板状ハロゲン化銀粒子の頂点近傍に転位線を集中させて導入したものである。該平板状ハロゲン化銀粒子の頂点近傍とは、三角形状、四角形状又は六角形状の外表面を有している場合、平板粒子の中心と各頂点を結ぶ直線において、該中心からx%の位置の点から平板粒子の該頂点を挟む二つの辺にそれぞれ垂線をおろし、その二つの垂線と二つの辺に囲まれた領域を言い、平板粒子の厚さ方向を含めた3次元的領域である。ここで、xの値は通常50以上100未満、好ましくは75以上100未満である。
【0039】
平板粒子が3角形状の外表面を有している場合は頂点は3個存在し、平板粒子が4角形状の外表面を有している場合は頂点は4個存在し、平板粒子が6角形状の外表面を有している場合は頂点は6個存在するが、それぞれ全ての頂点の近傍に転位線が集中していることが好ましいが、それぞれ最低1個の頂点の近傍に転位線が集中していても本発明の効果が得られる。
【0040】
頂点近傍へ転位線を集中して導入するには、基体の平板粒子の頂点に、基体の平板粒子のハロゲン組成と異なるハロゲン化銀を一旦接合し、その後再び平板粒子を成長させることによって得られる。例えば、基体の平板粒子が沃臭化銀の場合、更に高沃度の沃臭化銀、又は沃化銀、あるいは塩化銀、塩臭化銀を接合させればよい。あるいは、特開平6−11781号に記載されているような沃化物イオン放出剤を用いる方法がある。特に、p−ヨードアセトアミドベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ヨードエタノール、2−ヨードアセトアミド等が好ましい。
【0041】
又、平板粒子の頂点近傍に転位線を集中させる技術については、特開平3−175440号、同4−166926号,同4−149541号,同4−156448号,同4−195035号等に開示がある。
【0042】
本発明の平板粒子は、分散媒の存在下に、即ち分散媒を含む溶液中で製造される。ここで分散媒を含む水溶液とは、ゼラチンその他の親水性コロイドを構成し得る物質(バインダーとなり得る物質など)により保護コロイドが水溶液中に形成されているものを言い、好ましくはコロイド状の保護ゼラチンを含有する水溶液である。
【0043】
保護コロイドとしてゼラチンを用いる場合は、ゼラチンは石灰処理されたものでも、酸を使用して処理されたものでも何れでもよい。ゼラチンの製法の詳細は、アーサー・グアイス著「ザ・マクロモレキュラー・ケミストリー・オブ・ゼラチン(アカデミック・プレス,1964年発行)」に記載がある。
【0044】
保護コロイドとして用いることができるゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体;アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一又は共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質がある。
【0045】
ゼラチンの場合は、パギー法によるゼリー強度200以上のものを用いることが好ましい。
【0046】
本発明の平板粒子は、粒子を形成する過程及び/又は成長させる過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩、ロジウム塩、イリジウム塩、インジウム塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオンを添加し、粒子内部及び/又は粒子表面にこれらの金属元素を含有させることができる。
【0047】
平板粒子の形成手段としては、当該分野でよく知られている種々の方法を用いることができる。即ち、シングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法、コントロールド・トリプルジェット法等を任意に組み合わせて使用することができるが、高度な単分散粒子を得るには、ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAgをハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが重要である。pAg値としては7.0〜12の領域を使用し、好ましくは7.5〜11の領域を使用することができる。
【0048】
添加速度の決定に当たっては、特開昭54−48521号、同58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0049】
平板粒子の調製工程は、核形成工程、熟成工程(核の熟成工程)と、それに続く成長工程に大別される。又、予め造り置いた核乳剤(又は種乳剤)を別途成長させることも可能である。該成長工程は、第1成長工程、第2成長工程というように、幾つかの段階を含む場合もある。本発明の平板粒子の成長過程とは、核(又は種)形成後から粒子成長終了迄の全ての成長工程を意味し、成長開始時とは成長工程の開始時点を言う。
【0050】
平板粒子の製造時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶剤を使用しなくてもよい。
【0051】
本発明の平板粒子において、粒子のフリンジ部(外周領域)に選択的に転位線を形成させるためには、成長工程において、フリンジ部に転位線を導入するための沃素イオン源(沃化銀微粒子、沃素イオン放出剤など)を基盤粒子に添加した後の粒子成長におけるpAgを高めることが重要であるが、pAgを高くしすぎると粒子成長と同時に所謂オストワルド熟成が進行し、平板粒子の単分散性が劣化してしまう。従って、成長工程において平板粒子のフリンジ部を形成させる時のpAgは8〜12が好ましく、9.5〜11が更に好ましい。又、沃素イオン源として沃素イオン放出剤を使用する場合は、その添加量を増加させることによってもフリンジ部に有効に転位線を形成させることができる。沃素イオン放出剤の添加量としては、ハロゲン化銀1モル当たり0.5モル以上が好ましく、2〜5モルが更に好ましい。
【0052】
平板粒子は、ハロゲン化銀粒子の成長終了後に不要な可溶性塩類を除去したものでもよいし、又は含有させたままのものでもよい。
【0053】
又、特開昭60−138538号記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行うことも可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure、以下RDと略す)17643号II項に記載の方法に基づいて行うことができる。更に詳しくは、沈澱形成後、又は物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するには、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いてもよく、又、無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(ポリスチレンスルホン酸など)、あるいはゼラチン誘導体(アシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチン等)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を用いてもよい。具体的な例としては、特開平5−72658号に記載の方法を好ましく使用できる。
【0054】
本発明の平板乳剤は、球換算平均粒径の異なる2種類以上の平板乳剤の混合物から成るが、その混合比率は任意の範囲を選ぶことができる。例えば、2種類の平板乳剤を混合する場合、銀に換算して90:10〜10:90の比率で混合することが好ましく、80:20〜20:80の比率が更に好ましい。
【0055】
ハロゲン化銀乳剤は、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤は、RD17643,23頁III項〜24頁VI−M項、RD18716,648〜649頁及びRD308119,996頁III−A項〜1000頁VI−M項に記載されている。
【0056】
本発明に使用できる公知の写真用添加剤も、同じくRD17643,25頁VIII−A項〜27頁XIII項、RD18716,650〜651頁、RD308119,1003頁VIII−A項〜1012頁XXI−E項に記載のものを用いることができる。
【0057】
本発明には種々のカプラーを使用することができ、その具体例は、RD17643,25頁VII−C〜G項、RD308119,1001頁VII−C〜G項に記載されている。
【0058】
本発明に使用する添加剤は、RD308119,1007頁XIV項に記載されている分散法などにより添加することができる。
【0059】
本発明においては、前述RD17643,28頁XVII項、RD18716,647〜8頁及びRD308119,1009頁XVII項に記載される支持体を使用することができる。
【0060】
感光材料には、前述RD308119,1002頁VII−K項に記載されるフィルター層や中間層等の補助層を設けることができる。
【0061】
感光材料は、前述RD308119,VII−K項に記載の順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成を採ることができる。
【0062】
本発明は、一般用又は映画用のカラーネガフィルム、スライド用又はテレビ用のカラー反転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルム、カラー反転ペーパーに代表される種々のカラー感光材料に適用することができる。
【0063】
本発明の感光材料は、前述のRD17643の28〜29頁、RD18716の647頁及びRD308119のXVII項に記載された通常の方法によって現像処理することができる。
【0064】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(1)乳剤の調製
A.基盤乳剤の調製
A−1:特開平3−175440号の実施例−1に記載されるA−1乳剤の調製と同様の方法によって平均アスペクト比6.5、円相当径1.0μmである平板状AgBr乳剤A−1を調製した。
【0066】
A−2:特開平3−175440号の実施例−1に記載されるA−2乳剤の調製と同様の方法によって中心領域、中央環状領域および周環領域のAg比16.7/67.3/16;同3領域の沃化銀含有率0/7.5/0、平均アスペクト比6.5、円相当径1.0μmである平板状AgBrI(AgI=5.1モル)乳剤A−2を調製した。得られた高アスペクト比平板状沃臭化銀粒子は表面沃化銀濃度2.6モル%、平均沃化銀濃度5.1モル%を示し、周環領域と比較して中央環状領域は高い沃化銀濃度であることを示していた。
【0067】
A−3:特開平3−175440号の実施例−1に記載されるA−3乳剤の調製と同様の方法によって中心領域、中央環状領域および周環領域のAg比16.7/67.3/16;同3領域の沃化銀含有率0/4.6/12、平均アスペクト比6.5、円相当径1.0μmである平板状AgBrI(AgI=4.9モル)乳剤A−3を調製した。得られた高アスペクト比平板状沃臭化銀粒子は表面沃化銀濃度10.8モル%、平均沃化銀濃度4.9モル%を示し、中央環状領域と比較して周環領域には高い沃化銀濃度であることを示していた。
【0068】
B.頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀乳剤の調製
特開平3−175440号の実施例−1に記載されるB−1,B−2,B−3乳剤の調製と同様の方法によって頂点近傍に集中した転位線を有する乳剤B−1(A−1を基盤乳剤),B−2(A−2を基盤乳剤),B−3(A−3を基盤乳剤)を調製した。いずれの乳剤も平均アスペクト比6.5、円相当直径1.3μmであった。
【0069】
C.転位線を主として主平面上に導入した平板状ハロゲン化銀乳剤;局在化しない転位を有する乳剤の調製
特開平3−175440号の実施例−1に記載されるC−1,C−2,C−3乳剤の調製と同様の方法によって局在化しない転位線を有する乳剤C−1(A−1を基盤乳剤),C−2(A−2を基盤乳剤),C−3(A−3を基盤乳剤)を調製した。いずれの乳剤も平均アスペクト比6.5、円相当直径1.3μmであった。
【0070】
D.転位線の存在しない粒子の調製
特開平3−175440号の実施例−1に記載されるD−1,D−2,D−3乳剤の調製と同様の方法によって転位線の存在しない乳剤D−1(A−1を基盤乳剤),D−2(A−2を基盤乳剤),D−3(A−3を基盤乳剤)を調製した。いずれの乳剤も平均アスペクト比6.5、円相当直径1.3μmであった。
【0071】
E.転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した粒子の調製
特開平3−189642号の実施例に記載されるのと同様の方法によって、転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した乳剤E−1(A−1を基盤乳剤),E−2(A−2を基盤乳剤),E−3(A−3を基盤乳剤)を調製した。いずれの乳剤も平均アスペクト比6.5、円相当直径1.3μmであった。
【0072】
(2)粒子の転位線の観察
乳剤B−1、C−1、D−1について透過型電子顕微鏡を用い、加速電圧200kV、温度−120℃で転位線の直接観察を行った。
【0073】
B−1は転位線が六角形平板の頂点の近傍のみに集中している事が観察された
C−1は転位線は集中せず、粒子の辺に均一に導入されている事が観察された
D−1は転位線は一本も観察されなかった
E−1は転位線がフリンジ部にのみ均一に導入されている事が観察された。
【0074】
(3)化学増感および分光増感
化学増感を施したB−1,B−2,B−3,C−1,C−2,C−3,D−1,D−2,D−3それぞれの乳剤について、増感色素SD−7、SD−8、SD−9を添加、熟成した後、トリホスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン化カリウムを添加し、常法に従いカブリ−感度関係が最適になるように最適に化学増感および分光増感を施した。
【0075】
(4)ハロゲン化銀写真感光材料試料の作製
(支持体の作製)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部、エチレングリコール60部にエステル交換触媒として酢酸カルシウム水和物0.1部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05部、燐酸トリメチルエステル0.03部を添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、290℃、0.05mmHgの条件で重合を行い、固有粘度0.60のポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。
【0076】
これを、150℃で8時間真空乾燥した後、300℃でTダイから層状に溶融押出し、50℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、135℃で縦方向に3.3倍延伸した。
【0077】
得られた1軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、第1延伸ゾーン145℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に第2延伸ゾーン155℃で総横延伸倍率3.3倍となるように延伸した。次いで、100℃で2秒間熱処理し、更に第1熱固定ゾーン200℃で5秒間熱固定し、第2熱固定ゾーン240℃で15秒間熱固定した。次いで、横方向に5%弛緩処理しながら室温まで30秒かけて徐冷して、厚さ85μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)を得た。
【0078】
これをステンレス製のコアに巻き付け、110℃で48時間熱処理(アニール処理)して支持体を作製した。
【0079】
(下引層の塗設)
この支持体の両面に12W/m2/minのコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液U−1を乾燥膜厚0.4μmになるように塗布し、その上に12W/m2/minのコロナ放電処理を施し、下記下引塗布液U−2を乾燥膜厚0.06μmになるように塗布した。
【0080】
12W/m2/minのコロナ放電処理を施した他方の面には、下記下引塗布液B−3を乾燥膜厚0.2μmになるように塗布し、その上に12W/m2/minのコロナ放電処理を施し、下記下引塗布液B−4を乾燥膜厚0.2μmになるように塗布した。
【0081】
各層はそれぞれ塗布後90℃で10秒間乾燥し、4層塗布後、引き続いて110℃で2分間熱処理を行った後、50℃で30秒間冷却処理を行った。
【0082】
*ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル60モル%、イソフタル酸ジメチル30モル%、5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩10モル%、グリコール成分としてエチレングリコール50モル%、ジエチレングリコール50モル%を常法により共重合した。この共重合体を95℃の熱水中で3時間撹拌し、15重量%の水分散液Aとした。
【0083】
組成物(A)をサンドミルを用いて40時間分散後、平均孔径10μmのフィルターで濾過し、磁性塗料を得た。
【0084】
組成物(B)
硬膜剤(日本ポリウレタン社製:C−L,固形分75%) 20部
シクロヘキサノン 45部
組成物(B)をディスパーを用いて空気を巻き込まないように混合した。上記組成物(B)を磁性塗料に連続的に添加・混合して磁性塗布液1を得た。
【0085】
得られた磁性塗布液1を、前記した下引層と帯電防止層が塗設されたPEN支持体上に乾燥膜厚0.8μmになるように塗布・乾燥した。
【0086】
(写真乳剤の塗設)
前記磁気記録媒体の磁気記録層側とは反対側に、前記下引塗布液U−1及びU−2を同一条件で塗設した下引層を設けてある上に、以下に示す組成の写真構成層を設けて、試料101〜123を得た。添加量は1m2当たりのグラム数で表す。ただし、ハロゲン化銀とコロイド銀は銀の量に換算し、増感色素は銀1モル当たりのモル数で示した。
【0087】
第1層(ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 0.16
紫外線吸収剤 UV−1 0.3
カラードマゼンタカプラー CM−1 0.044
高沸点溶媒 OIL−1 0.044
ゼラチン 1.33
第2層(中間層)
汚染防止剤 AS−1 0.16
高沸点溶媒 OIL−1 0.20
ゼラチン 1.40
第3層(低感度赤感色性層)
沃臭化銀a 0.12
沃臭化銀b 0.50
増感色素 SD−1 3.0×10-5
増感色素 SD−4 1.5×10-4
増感色素 SD−3 3.0×10-4
増感色素 SD−6 3.0×10-6
シアンカプラー C−1 0.51
カラードシアンカプラー CC−1 0.047
高沸点溶媒 OIL−2 0.45
汚染防止剤 AS−2 0.005
ゼラチン 1.40
第4層(中感度赤感色性層)
沃臭化銀c 0.64
増感色素 SD−1 3.0×10-5
増感色素 SD−2 1.5×10-4
増感色素 SD−3 3.0×10-4
シアンカプラー C−2 0.22
カラードシアンカプラー CC−1 0.028
DIR化合物 DI−1 0.002
高沸点溶媒 OIL−2 0.21
汚染防止剤 AS−3 0.006
ゼラチン 0.87
第5層(高感度赤感色性層)
沃臭化銀c 0.13
沃臭化銀d 1.14
増感色素 SD−1 3.0×10-5
増感色素 SD−2 1.5×10-4
増感色素 SD−3 3.0×10-4
シアンカプラー C−2 0.085
シアンカプラー C−3 0.084
カラードシアンカプラー CC−1 0.029
DIR化合物 DI−1 0.027
高沸点溶媒 OIL−2 0.23
汚染防止剤 AS−3 0.013
ゼラチン 1.23
第6層(中間層)
高沸点溶媒 OIL−1 0.29
汚染防止剤 AS−1 0.23
ゼラチン 1.00
第7層(低感度緑感色性層)
沃臭化銀a 0.245
沃臭化銀b 0.105
増感色素 SD−6 5.0×10-4
増感色素 SD−5 5.0×10-4
マゼンタカプラー M−1 0.21
カラードマゼンタカプラー CM−2 0.039
高沸点溶媒 OIL−1 0.25
汚染防止剤 AS−2 0.003
汚染防止剤 AS−4 0.063
ゼラチン 0.98
第8層(中感度緑感色性層)
沃臭化銀e(表1に記載) 0.87
増感色素 SD−7 3.0×10-4
増感色素 SD−8 6.0×10-5
増感色素 SD−9 4.0×10-5
マゼンタカプラー M−1 0.17
カラードマゼンタカプラー CM−2 0.048
カラードマゼンタカプラー CM−3 0.059
DIR化合物 DI−2 0.012
高沸点溶媒 OIL−1 0.29
汚染防止剤 AS−4 0.05
汚染防止剤 AS−2 0.005
ゼラチン 1.43
第9層(高感度緑感色性層)
沃臭化銀f 1.19
増感色素 SD−7 4.0×10-4
増感色素 SD−8 8.0×10-5
増感色素 SD−9 5.0×10-5
マゼンタカプラー M−1 0.09
カラードマゼンタカプラー CM−3 0.020
DIR化合物 DI−3 0.005
高沸点溶媒 OIL−1 0.11
汚染防止剤 AS−4 0.026
汚染防止剤 AS−5 0.014
汚染防止剤 AS−6 0.006
ゼラチン 0.78
第10層(イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 0.05
高沸点溶媒 OIL−1 0.18
汚染防止剤 AS−7 0.16
ゼラチン 1.00
第11層(低感度青感色性層)
沃臭化銀g 0.29
沃臭化銀h 0.19
増感色素 SD−10 8.0×10-4
増感色素 SD−11 3.1×10-4
イエローカプラー Y−1 0.91
DIR化合物 DI−4 0.022
高沸点溶媒 OIL−1 0.37
汚染防止剤 AS−2 0.002
ゼラチン 1.29
第12層(高感度青感色性層)
沃臭化銀h 0.13
沃臭化銀i 1.00
増感色素 SD−10 4.4×10-4
増感色素 SD−11 1.5×10-4
イエローカプラー Y−1 0.48
DIR化合物 DI−4 0.019
高沸点溶媒 OIL−1 0.21
汚染防止剤 AS−2 0.004
ゼラチン 1.55
第13層(第1保護層)
沃臭化銀j 0.30
紫外線吸収剤 UV−1 0.055
紫外線吸収剤 UV−2 0.110
高沸点溶媒 OIL−2 0.63
ゼラチン 1.32
第14層(第2保護層)
ポリマー PM−1 0.15
ポリマー PM−2 0.04
滑り剤 WAX−1 0.02
染料D−1 0.001
ゼラチン 0.55
尚、上記組成物の他に、塗布助剤SU−1,SU−2,SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、安定剤ST−1,ST−2、カブリ防止剤AF−1(ポリビニルピロリドン,重量平均分子量:10,000),AF−2(ポリビニルピロリドン,重量平均分子量:1,100,000)、抑制剤AF−3,AF−4,AF−5、硬膜剤H−1,H−2,H−3,H−4及び防腐剤Ase−1を添加した。
【0088】
上記試料に用いた化合物の構造を以下に示す。
【0089】
SU−1:C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
SU−2:C8F17SO2NH(CH2)3N+(CH3)3Br-
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム
SU−4:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
ST−1:4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
ST−2:アデニン
AF−3:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
AF−4:1−(4−カルボキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
AF−5:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
H−1:〔(CH2=CHSO2CH2)3CCH2SO2CH2CH2〕2NCH2CH2SO3K
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
H−3:CH2=CHSO2CH2CH(OH)CH2SO2CH=CH2
H−4:(CH2=CHSO2CH2CONHCH2)2
OIL−1:トリクレジルホスフェート
OIL−2:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート
AS−1:2,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカノボニルブチル)ハイドロキノン
AS−2:没食子酸ドデシル
AS−3:没食子酸ドコシル
AS−4:2−オクチルオキシ−5−t−オクチル−N,N−ジブチルアニリン
AS−5:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
AS−6:2,5−ジ−t−オクチル−1,4−キノン
【0090】
【化1】
【0091】
【化2】
【0092】
【化3】
【0093】
【化4】
【0094】
【化5】
【0095】
【化6】
【0096】
【化7】
【0097】
上記沃臭化銀の特徴を以下に示す。
【0098】
乳剤No. 平均粒径*(μm) 平均AgI量(mol%) 直径/厚み比
沃臭化銀a 0.30 2.0 1.0
沃臭化銀b 0.40 8.0 1.4
沃臭化銀c 0.60 7.0 3.1
沃臭化銀d 0.75 7.0 5.0
沃臭化銀e 表1に記載
沃臭化銀f 0.65 9.0 6.5
沃臭化銀g 0.40 2.0 4.0
沃臭化銀h 0.65 8.0 1.4
沃臭化銀i 1.00 8.0 2.0
沃臭化銀j 0.05 2.0 1.0
*平均粒径:同一体積を有する立方体の一辺長に換算
沃臭化銀e以外の上記乳剤についても前述の増感色素を添加、熟成した後、トリホスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン化カリウムを添加し、常法に従いカブリ−感度関係が最適になるように最適に化学増感および分光増感を施した。
【0099】
【表1】
【0100】
このようにして得られた感光材料試料101〜123に対して階調安定性の評価として特性曲線D−LogEを試料作成後直ちに露光現像処理した場合と、露光後、試料を40℃、80%RH(相対湿度)条件化で7日間放置した後で同様に露光現像処理した場合のそれぞれについて作成し、それより得られた感度およびマゼンタ画像の階調安定性J値の結果を表2に示した。
【0101】
特性曲線D−LogEより階調安定性Jの算出:
即日処理の特性曲線について、
最小濃度Dmin+0.5の濃度d0を与える露光量logE0より更にΔlogE=−1.2にあるlogE4までの範囲において、ΔlogE=−0.3毎にとった露光量logEi(i=0,1,2,3,4)および各logEiのあたえる濃度di(i=0,1,2,3,4)において、
gi=(di−di−1)/(logEi−1−logEi)
G=(d4−d0)/(logE0−logE4)
同様に、露光後40℃、80%RHで一週間放置後現像処理の特性曲線について、
hi=(di−di−1)/(logEi−1−logEi)
H=(d4−d0)/(logE0−logE4)
を求め、これより露光後保存による階調の変動viを求める。
【0102】
vi=(hi/gi)/(H/G)
J=[(v0−1)2+(v1−1)2+(v2−1)2+(v3−1)2+(v4−1)2]/5
Jは露光後保存による特性曲線全体の平均的な傾きの変化と異なる階調の部分的な変動量を表し、保存による階調のうねり易さすなわちプリント時に補正されないカラーバランスのくずれやすさを表す指標である。
【0103】
階調安定性Sを以下のように定義する。
【0104】
S=−10×logJ
Sは階調の変動の量(分散)が1/2になると3.0増大する。
【0105】
現像処理条件を以下に示す。
【0106】
【0107】
発色現像液、漂白液、定着液、安定液及びその補充液は、以下のものを使用した。
【0108】
水を加えて1リットルとし、水酸化カリウム又は20%硫酸を用いて発色現像液はpH10.06に、補充液はpH10.18に調整する。
【0109】
水を加えて1リットルとし、アンモニア水又は氷酢酸を用いて漂白液はpH4.4に、補充液はpH4.0に調整する。
【0110】
アンモニア水又は氷酢酸を用いて定着液はpH6.2に、補充液はpH6.5に調整後、水を加えて1リットルとする。
【0111】
安定液及び安定補充液
水を加えて1リットルとした後、アンモニア水又は50%硫酸を用いてpH8.5に調整する。
【0112】
結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2から明らかなように、乳剤B−1、B−2、B−3は、単独使用では、即日処理の感度は高いが、露光後の保存によって、感度が低下するばかりでなく、カラー感光材料としては致命的な欠点となる階調の変動が大きい。しかし、同一層に、C−1〜E−3の乳剤を混ぜて使用することにより、高い感度を保持しつつ、転位線を導入しないD−1〜D−3乳剤を単独に用いたよりも高い階調安定性を有することがわかる。
【0115】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明によるハロゲン化銀写真感光材料は、感度に優れ且つ潜像安定性すなわち露光後の経時保存によるカラーバランスのくずれが少なく優れた効果を有する。
Claims (3)
- 支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線をフリンジ部にのみ均一に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(B)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(B)の球換算平均粒径値(B′)である。
- 支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を主として主平面上に導入した平板状ハロゲン化銀粒子(C)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(C)の球換算平均粒径値(C′)である。
- 支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に、頂点近傍に転位線を集中させて導入した平板状ハロゲン化銀粒子(A)を含有するハロゲン化銀乳剤と、転位線を全く導入していない平板状ハロゲン化銀粒子(D)を含有するハロゲン化銀乳剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。ただし、平板状ハロゲン化銀粒子(A)の球換算平均粒径値(A′)≧平板状ハロゲン化銀粒子(D)の球換算平均粒径値(D′)である。
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