JP3637430B2 - ボールペン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペンに関する。詳細には、先端にボールを回転可能に保持するボールホルダーのインキ通路内に、金属細線よりなる弾発体を配置し、前記ボールを前方へ付勢してなるボールペンに関する。さらに詳細には、ボールホルダーのインキ通路内にインキ誘導部材を配置させずに、ボールホルダー内を直接、インキ通路とするタイプのボールペン(例えば、水性ゲルインキボールペン、低粘度油性インキボールペン、又は修正ペンなどの高粘度塗布液用ボールペン)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のボールペンにおいて、インキの逆流、インキの過剰漏出、及びインキの蒸発等を防止する目的で、ボールホルダー内のインキ通路にスプリングを収容させ、該スプリングでボールを前方へ付勢して、ボールをボールホルダーの口元内周面に圧接させ、該口元をボールでシールしてなる構成が知られている。
【0003】
例えば、特開平7−290874号公報には、先端がボールに当接するストレート部と、弾発性(バネ性)を有する圧縮コイルスプリング部とが一体に形成されたスプリングが開示されている。又、実開平7−12280号公報には、先端が縮径されたコイルスプリングによって、ボールを前方へ付勢してなる構成が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のボールペンは、製造工程において、弾発体の複数個を、パーツフィーダ内や保管用袋内で集合状態にさせると、弾発体は互いの圧縮コイルスプリング部の間で絡まりやすい。一旦、圧縮コイルスプリング部同士が絡まると、それを解くのは容易ではなく、製造工程の作業効率を低下させることになる。
【0005】
また、前記従来のボールペンは、インキ通路内に存在する弾発体の圧縮コイルスプリング部が、円滑なインキ流通の妨げになり、インキ追従性を低下させ、筆跡途切れや筆跡カスレを生じさせやすい。これは、インキ通路が、比較的小さい(具体的には、インキ通路の内径が1mm以下の小さい内径を有する)場合に発生しがちである。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、弾発体同士が絡み合うことを防止して製造工程の作業効率を向上させると共に、ボールホルダーのインキ通路内でインキをスムーズに流通させ、筆跡のかすれや途切れのないボールペンを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(概要)
本発明は、先端にボール21を回転可能に保持するボールホルダー2のインキ通路3内に金属細線よりなる弾発体4を配置し、前記ボール21を前方へ付勢してなるボールペン1であって、前記弾発体4が、可撓性のロッド部5と、該ロッド部5と屈曲により一体的に設けられた非弾発性の座部6とからなり、前記ロッド部5の先端をボール21後面に当接させると共に、前記座部6の後端をインキ通路3内壁に係止させたことを要件とする。
【0008】
前記構成により、弾発体4が、従来のような圧縮コイルスプリング部を備えず、非弾発性(非バネ性)の座部6を備えるため、製造工程中、弾発体4は、パーツフィーダ内や保管用袋内で、集合状態にされても、互いに絡み合うことがなく、製造工程の作業効率を低下させるおそれがない。また、座部6が非弾発性であって従来のようなコイルスプリング部ではないため、インキ通路3内のインキ流通抵抗が小さくなり、スムーズなインキ流通が可能となる。その結果、インキの追従性が向上し、筆跡途切れや筆跡かすれを生じさせることがない。
【0009】
(ロッド部)
前記ボールペン1において、前記ロッド部5をボールホルダー2のインキ通路3内で湾曲状態に保持させ、ボール21を前方へ付勢してなることが有効である。それにより、ロッド部5に座屈方向の弾発力が発生し、該弾発力によりボール21を前方へ付勢し、非筆記時、ボールホルダー2の口元部23がシールされる。そのため、本来の弾発体4としての機能(即ち、インキ逆流防止機能、インキボタ落ち防止機能、及びインキ蒸発防止機能)が十分に発揮される。
【0010】
(座部)
前記ボールペン1において、前記座部6は、非弾発性、即ち、非コイルスプリング状であればよく、その形状は、例えば、リング状(図3,図4,図5参照)、直線状(図7参照)等、いずれであってもよいが、その中でも、リング状が、インキ通路3内壁の係止部72と安定した係止状態をなす点で好ましい。
【0011】
また、前記リング状の座部6は、例えば、1重リング状(図3参照)、又は複数回巻いたリング状、例えば2重リング状(図5参照)が挙げられる。前記座部6が1重リング状の場合は、端部が閉じた完全なリング状(図3参照)の他、例えば、3/4周のリング(図4参照)、即ち、半周以上の座巻きリング状でもよい。また、前記座部6が複数巻きリング状の場合は、絡みを防止するために、密着コイル状(図5参照)にすることが有効である。また、この他にも、前記座部6の形状は、単純に、ロッド部5の一箇所を屈曲させた構成(図6参照)でもよい。
【0012】
また、前記座部6の位置は、ロッドの後端部(図1,図2,図5,図6参照)が好ましいが、この他にも、図示はしないが、座部6の前方及び後方にロッド部5を延設させた構成、即ち、座部6をロッド部5の中間部に配設した構成にすることも可能である。
【0013】
尚、前記弾発体4は、少なくともロッド部5の一部がボールホルダー2内のインキ通路3に収容され、ボール21を前方へ付勢する構成であればよく、残りのロッド部5又は座部6を、ボールホルダー2の後方のインキ通路3(例えばチップホルダー内)に位置させてもよい。
【0014】
(係止部)
インキ通路3内壁には、座部6が係止可能な係止部72(即ち内方突起)が設けられる。前記係止部72を配設する位置は、インキ通路3の内壁であるなら、ボールホルダー2内壁や、ボールホルダー後方のインキ通路3内壁のいずれでもよい。また、前記係止部3は、ボールホルダー2に別部材(例えば、チップホルダー等)の取り付けにより形成する構成、又はボールホルダー2の周壁を内方変形させることにより、一体的に形成する構成等のいずれでもよい。また、前記係止部72箇所のインキ通路3の内径(正確には最大内径)は、座部6の外径(正確には最大外径)よりも小さく設定される。それにより、座部6が係止部72に確実に係止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面に従って説明する。
【0016】
図1,図2,及び図3に第1実施例を示す。
【0017】
(ボールホルダー)
ボールホルダー2は、外径0.3mmの超硬合金製のボール21を、先端に回転可能に抱持した金属製(例えばステンレス鋼製)の薄肉パイプからなる。前記ボールホルダー2の先端は、ボール21のサイズに対応して縮径され、その外周面の3カ所が等間隔に外方から内方に押圧変形されて複数の内方突起が形成され、それにより、ボール受け座22が形成される。さらに、前記ボールホルダー2の先端には、内方へ押圧変形されて内向きの口元部23が形成される。即ち、前記ボール受け座22の前面と前記口元部23の後面の間に、ボール21が収容され、前記ボール21が、前記ボール受け座22及び前記口元部23によって回転可能に抱持される。
【0018】
(チップホルダー)
合成樹脂製のチップホルダー7に、前記ボールホルダー2が取り付けられる。前記チップホルダー7は、その先端に取付孔71を備え、且つ該取付孔71の内壁に環状の係止部72を備えている。そして、前記取付孔71にボールホルダー2が圧入固着されると同時に、前記係止部72にボールホルダー2の後端が当接される。
【0019】
(弾発体)
前記ボールホルダー2内には、インキ通路3(内径0.32mm〜0.5mm)が形成され、ボール21後面と係止部72との間の前記インキ通路3内に、弾発体4が収容配置される。前記弾発体4は、ステンレス鋼製の線材(外径0.08mm)よりなり、直線状のロッド部5(長さ6mm)と、該ロッド部5の後端部に屈曲によって一体的に形成したリング状の座部6(外径0.45mm)とから構成される。
【0020】
前記ロッド部5は、インキ通路3内において、湾曲して撓んだ状態(即ち弾発状態・このとき弾発力は2グラム〜20グラム)にあり、その先端がボール21後面を前方へ押圧し、非筆記時、ボール21を口元部23内周面に圧接させている。一方、筆記時、ボール21は、前記ロッド部5の前方付勢に抗して、紙面によって後方へ押圧される。それにより、ボール21と口元部23との密接が解除され、ボール21の回転に伴ってインキが紙面に導出される。
【0021】
また、前記座部6は、その後面がチップホルダー7の係止部72に当接係止されている。前記座部6は、リング形状を有するため、係止部72と安定した係止状態が維持され、特に、本実施例では、端部が閉鎖された完全なリング形状であるため、製造過程で、座部6同士が互いに絡み合うこともない。また、前記座部6は、リング状であり、係止部72でのインキ通路3を塞ぐことがなく、さらに、圧縮コイルスプリング形状ではないため、インキ通路3内のインキ流通抵抗を減少させる。その結果、インキ通路3内のインキの追従性が向上し、筆跡途切れや筆跡かすれの発生を抑制できる。
【0022】
尚、本実施例では、前記ロッド部5と前記座部6の連接部分は、リング状座部6の中心に位置し、インキ通路3内の軸線方向に前記ロッド部5を配設させることが可能となり、ボール21を軸線方向に真っ直ぐに前方付勢させることができ、ボール21の回転ムラを防ぐ。この他にも図示はしないが、リング状座部6の周上に、ロッド部5と座部6の連接部分を位置させる構成でもよい。
【0023】
図4に、弾発体4の変形例を示す(図2のA−A線断面に対応)。これは、第1実施例の変形例であり、座部6の形状が、3/4周のリング状である。前記座部6は、第1実施例(図3参照)と異なり、リング状座部6のリングが開口しているが、非コイル状(即ち非弾発性)であるため、もし、座部6同士が絡み合っても、容易にその絡みを解くことが可能であり、製造工程の作業効率を低下させるものではない。他の構成は第1実施例と同様である。
【0024】
図5に、弾発体4の変形例を示す。これは、第1実施例(図2)の変形例であり、座部6の形状が、2重の座巻きリングが密着されたもの(即ち密着コイル状)である。前記座部6が、密着コイル状(即ち非弾発性)であるため、それにより、座部6と座部6が互いに絡み合うことが回避される。
【0025】
図6及び図7に第2実施例を示す。
ボールホルダー2は、金属材料(例えば、ステンレス鋼、真鍮等)を切削加工によって、ボール受け座22、及びインキ通路3を形成したものである。前記ボールホルダー2の先端には、外径0.4mmの超硬合金製のボール21が、内向きの口元部23とボール受け座22とにより、回転自在に抱持されている。そして、前記ボールホルダー2は、合成樹脂製のチップホルダー7の取付孔71に圧入固着され、第1実施例同様、その後端が、環状の係止部72に当接係止されている。
【0026】
前記インキ通路3は、ボール受け座22から後方に向かうに従い階段状に拡径されており、そこに、弾発体4が収容されている。前記弾発体4は、金属線材(ステンレス鋼製,線径0.08mm)がL字状に屈曲され、直線状のロッド部5(長さ5mm)と、直線状の座部6(長さ1.0mm)とが一体に連接された構成である。そして、前記ロッド部5が、先端をボール21後面に当接させ湾曲付勢状態にあり、ボール21を前方へ押圧すると同時に、前記座部6が、環状の係止部72にインキ流通可能に係止されている。
【0027】
図8に本発明の第1実施例(図1〜図3)のボールペン1の全体を示す。これは、軸筒内に交換可能に収容されるボールペンレフィルである。前記レフィルは、主に、先端にボール21を回転自在に抱持する金属製のボールホルダー2と、前記ボールホルダー2を先端に固着させた合成樹脂製のチップホルダー7と、前記チップホルダー7を先端に固着させたインキ収容管8と、前記インキ収容管8後端に取り付けた通気孔付き尾栓9とからなる。
【0028】
前記インキ収容管8は、半透明の合成樹脂からなり、その内部には、油性インキ81(粘度1000〜10000mPa・s)が直接充填され、さらに、前記インキ81の後端には、インキ消費に伴ってペン先方向へ移動するグリス状の逆流防止剤82が充填されている。
【0029】
【発明の効果】
本発明ボールペンは、請求項1の構成(即ち、弾発体が、可撓性のロッド部と、該ロッド部と屈曲により一体的に設けられた非弾発性の座部とからなる構成)により、弾発体同士が絡み合うことが抑制され、製造工程が円滑なものになると共に、ボールホルダーのインキ通路のインキ流通抵抗が減少し、インキ追従性が向上する。
【0030】
また、請求項2の構成(即ち、ロッド部をインキ通路内で湾曲状態にさせてなる構成)により、本来の弾発体としての機能(即ち、インキ逆流防止機能、インキボタ落ち防止機能、及びインキ蒸発防止機能)が十分に発揮される。
【0031】
また、請求項3の構成(即ち、座部がリング状である構成)により、座部がインキ通路内壁と安定した係止状態をなす。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ボールペンの第1実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図2】図1の弾発体の縦断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のA−A線断面図(図3の変形例)である。
【図5】弾発体の他の例(図2の変形例)を示す縦断面図である。
【図6】本発明ボールペンの第2実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図1の本発明ボールペンの縦断面図である。
【符号の説明】
1 ボールペン
2 ボールホルダー
21 ボール
22 ボール受け座
23 口元部
3 インキ通路
4 弾発体
5 ロッド部
6 座部
7 チップホルダー
71 取付孔
72 係止部
8 インキ収容管
81 インキ
82 逆流防止剤
9 尾栓
Claims (3)
- 先端にボール(21)を回転可能に保持するボールホルダー(2)のインキ通路(3)内に、前記ボール(21)を前方へ付勢する金属細線よりなる弾発体(4)を配置させたボールペンであって、前記弾発体(4)が、可撓性のロッド部(5)と、該ロッド部(5)と屈曲により一体的に設けられた非弾発性の座部(6)とからなり、前記ロッド部(5)の先端をボール(21)後面に当接させると共に、前記座部(6)の後端をインキ通路(3)内壁に係止させたことを特徴とするボールペン。
- 前記ロッド部(5)をインキ通路(3)内で湾曲状態にさせてなる請求項1のボールペン。
- 前記座部(6)がリング状である請求項1又は2のボールペン。
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