JP3637415B2 - 道床面などの洗浄車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主として軌道用車両が走行する軌道面内道床を、また必要に応じて道路のトンネルや地下鉄などの側壁面や天井面などを高圧水ジェットなどで洗浄、清掃する洗浄車両の技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、軌道用車両が走行する軌道面内の道床は、軌道用車両が走行中に落とす油脂分など、およびブレーキをかけたりした際に車輪とブレーキシュー、或いは車輪とレールがこすれて発生する金属粉の酸化などによって黒く汚れてくることが関係者の悩みの種である。
【0003】
そのため、前記軌道用車両が走行する軌道面内の道床を清掃、洗浄する種々の清掃(洗浄)車両が開発されている。例えば、特開平7−127027号公報に記載された「道床清掃装置」の発明、或いは特開平8−338012号公報に記載された「鉄道線路清掃用機械装置」の発明等が公知である。
【0004】
前記公知の清掃車両は、いずれも軌道上を走行する形式であり、清掃用ブラシを回転させて、或いはブラシの回転に洗浄水の噴射を組み合わせて清掃、洗浄する構成である。
【0005】
なお、しつこい汚れの洗浄、清掃の手段として、水溶性の重炭酸ナトリウムを硬い微粒状粉末として噴射することにより、所謂ショットブラスト効果で洗浄、清掃の効果を上げる技術も、例えば特公平6−69668号(特許第1943329号)公報或いは特開平8−168729号公報などに開示されて公知に属する。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
従来公知の上述した清掃車両は、主に清掃用ブラシを回転させて清掃する構成であるから、清掃作業時には猛烈にほこりや水しぶきを巻き上げ、或いは小石などを跳ね飛ばす等して作業場周辺の環境を悪化させる。したがって、人が多い駅の近くでは使用できないし、現場の作業員の安全性と健康上に甚だ宜しくない。そして、巻き上げたほこりが完全に沈静化し、或いは跳ね上げた小石などを元に戻す処理を終えるまでの間は、再使用の原状復帰ができないという問題もあり、その分だけ清掃の所要時間が長引くという問題点も大きい。また、ブラシを回転させる関係上、道床が粒径が小さい採石などを敷き詰めて構成されている場合には使用が難しい。主にコンクリート製の道床(コンクリート直結軌道、スラブ軌道)にしか適用できないという問題点もある。
【0007】
その上、道路のトンネルや地下鉄のようにトンネル構造となっている場合に、トンネル内壁面が煤けて汚れても、上記の清掃車両の構成と機能では、前記トンネル内壁面まで清掃、洗浄することができない。
【0008】
本発明の目的は、回転ブラシなどは一切使用せず、基本的に高圧水ジェットによる洗浄を行う構成であり、特に油脂分や金属粉などの酸化によって黒く汚れた道床面は、その洗浄、剥離を促進して事後は水に溶けて後処理を必要とせず、人体に安全で無公害である水溶性の洗浄剤又は剥離剤を高圧水ジェットに混入してしつこい汚れを効率よく綺麗に清掃、洗浄する、洗浄車両を提供することである。
【0009】
本発明の次の目的は、道床面のみならず、道路や地下鉄におけるトンネル内の壁面等の清掃、洗浄も並行して行うことができる洗浄車両を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明に係る道床面などの洗浄車両は、
レール等の軌道上を自装備の走行駆動手段により自力走行する軌道式車両として構成された洗浄車両のシャシーから下向きにYの字形状に二股に分かれた形態で突き出す道床面洗浄用のラストノズルが垂直なジャッキを支持手段として上下動可能に設置され、前記ブラストノズルを所定大きさの半径で旋回又は往復回転させる駆動手段が設置されており、前記二股に分かれたブラストノズルの先端部は回転中心からの半径に大小差が設けられ、噴射する高圧水は一部重複して洗浄面を形成すること、
前記シャシーの上には、少なくともブラストノズルによる洗浄に必要な水を収容するタンクと、硬い微粒状の重炭酸ナトリウムを収容するホッパーと、上記ブラストノズルに高圧水を供給する手段、並びに前記高圧水に重炭酸ナトリウムを混入させる手段、及び発電機その他の動力装置が設置されており、
また、洗浄車両のシャシー上には、車両の走行方向とほぼ直角な面に沿って横向きに配置され上下方向へ一定の角度で往復回転してトンネル側壁面などを洗浄する側壁用ブラストノズル、及び同車両の走行方向とほぼ垂直な面に沿って上向きに配置され左右方向へ一定の角度で往復回転してトンネル天井面などを洗浄する天井用ブラストノズルが設置されており、
更に洗浄車両には、道床面の障害物、トンネル側壁や天井の障害物等を検出するセンサーが装備されており、前記道床面洗浄用ブラストノズル、側壁用ブラストノズル、天井用ブラストノズルはそれぞれ前記検出センサーの検出信号に基づいて洗浄動作が制御されること、を特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1に記載した発明に係る道床面などの洗浄車両において、
重炭酸ナトリウムは、粒径が200マイクロメートル程度、モース硬度が2.5程度とされ、コンプレッサの高圧空気によりブラストノズルの近傍位置にて高圧水へ混入させることを特徴とする。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項1に記載した発明に係る道床面などの洗浄車両において、
洗浄車両の左右側面の少なくとも一側から下向きに突き出す配置で、道床面洗浄用ブラストノズルの洗浄幅を拡幅する道床面洗浄拡幅用ブラストノズルが設置され、前記道床面洗浄拡幅用ブラストノズルを一定の角度まで往復回転させる支持及び駆動手段が設置されており、道床面の幅に応じて道床面洗浄拡幅用ブラストノズルを併用して前記道床面洗浄用ブラストノズルの洗浄幅を拡幅すること、
更に洗浄車両には、同車両の底面から下向きに軌道下部洗浄用ブラストノズル、および架線洗浄用ブラストノズル、並びに道床の中央溝および側溝洗浄用ブラストノズルが設置されていることを特徴とする。
【0017】
【本発明の実施形態及び実施例】
以下に、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図5は、本発明に係る道床面などの洗浄車両を、レール1の軌道上を自装備の走行駆動手段により自力走行する軌道式車両として構成した実施形態を示している。そのため、前記洗浄車両の車輪は、軌道用車輪2として構成されている。なお、前記軌道用車輪2と共通の車軸には、図4等に示したように、軌道用車輪2の外側に広軌道用軌道車輪2’が設けられている。狭軌道のみならず、広軌道にもそのまま適用可能とするためである。
【0019】
この洗浄車両は、作業現場までは図示を省略したモーターカー等により高速で牽引される。作業現場到着後は、前記走行駆動手段により自力走行して洗浄、清掃の作業をする。そのため、前記洗浄車両の特定の車輪2は、走行駆動手段である走行モータ20と連結されている。この走行モータ20には、後述するディーゼルエンジンで駆動される発電機から電源が供給され自力走行する構成とされている。なお、図示例の洗浄車両は、作業員の遠隔操作により無人走行する構成とされている。即ち、図示を省略したが、作業現場から少し離れた作業員が遠隔操作する操縦装置から制御信号が送信され、同制御信号を車両側のコントローラが受信して、走行モータ20の走行制御、及び洗浄車両の下記する各洗浄機構を制御する構成とされている。もっとも、洗浄車両に運転席を設けて有人走行する構成で実施することもできる。
【0020】
前記洗浄車両には、シャシー3から下向きに突き出す配置で2基のブラストノズル12、12が道床面洗浄用として横並びに設置されている。各ブラストノズル12は、下向きにYの字形状に二股に分かれた形態である。その中央上部の回転軸部12aが、洗浄車両のシャシー3の前端部分において、垂直方向へ上下動可能に支持されたスイベルジョイント機構部14に支持されている。
【0021】
具体的には、前記シャシー3上の前端部に、垂直方向へ上下動する2基のジャッキ21、21が横並びに設けられている。各ジャッキ21を支持手段としてスイベルジョイント機構部14が上下動可能に支持され、ジャッキ21の作動により各ブラストノズル12が、垂直方向に昇降する構成とされている。そして、図示することを省略したセンサーが、道床面に前記ブラストノズル12の進行及び作動状態に支障をきたす障害物の有無を検出するように設置されている。前記センサーが障害物などを検出すると、直ちに検出信号が駆動制御部13のジャッキ用コントローラに送信され、同ジャッキ用コントローラがジャッキ21を駆動制御して、ブラストノズル12を急速に引き上げて障害物を避ける。したがって、前記ブラストノズル12が障害物に接触し、損傷することを防ぐことができる。
【0022】
前記スイベルジョイント機構部14には、ブラストノズル12を所定大きさの半径で旋回させる回転モータ(図示省略)が設置されており、この回転モータの駆動によってブラストノズル12が回転又は旋回する構成とされている。
【0023】
前記二股に分かれたブラストノズル12の先端部12d、12dは、図3に示すように、その回転中心Oからの半径RとLとに大小差があり、内外二重の同心円を描いて回転する。したがって、ブラストノズル12の先端部12d、12dが噴射する高圧水ジェットは一部重複して洗浄面を形成し、確実に強力な洗浄、清掃の効果を実現するように構成されている。一例として、前記半径Rは650mm、Lは500mmであり、差寸の約150mm幅で高圧水ジェットが洗浄面へ重複して噴射するように構成され、1基のブラストノズル12が一回転する間に、洗浄車両が150mm前進(又は後進)する条件で運転されると、道床面は洗浄車両の走行方向に最大1300mmの洗浄幅で洗浄、清掃を前後2回にわたり重複して確実に行うことになる。また、図2に示したように横並びに設置した2基の二股状ブラストノズル12、12によれば、最大2600mmの洗浄幅(横幅)で道床面の洗浄、清掃作業を連続的に行うことができるのである。
【0024】
シャシー3上には、洗浄に必要な量の水(例えば、2時間の作業を目安として17.5キロリットル程度)を収容する前後2基のタンク4、4と、粒径が200マイクロメートル程度、モース硬度が2.5程度とされた硬い微粒状の重炭酸ナトリウムを収容するホッパー5と、上記ブラストノズル12に高圧水を供給する手段としてのプランジャポンプ8、並びに前記高圧水に重炭酸ナトリウムを混入させる手段としてのコンプレッサ9、及び前記コンプレッサ9等に電源を供給する発電機6、そして、前記発電機6及びプランジャポンプ8を駆動する動力装置としてのディーゼルエンジン7などが、防塵、防水用並びに静音化のカバーケース10に覆われて設置されている。シャシー3上の前後2基のタンク4、4は、各々に収容した水を共通に使用できるように、複数本の連通管11…で相互に接続されている。
【0025】
図3に基づいてブラストノズル12の働きを更に詳細に説明する。先ずディーゼルエンジン7で駆動されたプランジャポンプ8が、タンク4から洗浄用の水を吸い込み、コントローラ15で設定した圧力(17〜20Mpa程度)と流量(40〜45L/min程度)で吐き出し、スイベルジョイント機構部14を通じてブラストノズル12の先端部(ノズル)12dから噴射させる。一方、発電機6の発電力で駆動されるコンプレッサ9で発生した高圧空気は、やはりコントローラ16で設定した圧力(8〜10Mpa程度)と流量(80L/min程度)で送り出され、途中の重炭酸ナトリウムを収容したホッパー5の出口に設けられた分配器17を通過させることにより、同分配器17で設定した量(0.5〜1kg/min程度)の重炭酸ナトリウムを吸い込んで搬送し、やはりスイベルジョイント機構部14を通じてブラストノズル12のエアーホース12eで、ブラストノズル12の先端部(ノズル)12dの近傍に設けられた混合器12cへ供給し、重炭酸ナトリウムは高圧空気と共に強制的に高圧水の中へ混入され、ブラストノズル12の先端部(ノズル)12dから道床面に噴射される。
【0026】
上記2基のブラストノズル12、12が設置された洗浄車両は、上述の走行モータ20で軌道上を自力走行しながら、2基のブラストノズル12、12を回転させて、硬い微粒状の重炭酸ナトリウムを混入させた高圧水ジェットを道床面に噴射し、道床面をショットブラスト効果を伴って洗浄、清掃する。一例として、前記洗浄車両は100m/hで走行させ、上記構成の2基のブラストノズル12、12を10〜30rpmで回転させた場合、洗浄能力は毎分当たり3.6mに及ぶ。もちろん、道床面の汚れ具合等により、前記洗浄車両の走行速度、及び2基のブラストノズル12、12から噴射される高圧水ジェットの圧力、重炭酸ナトリウムの混合量等が制御される。
【0027】
上記のショットブラスト効果については、建機車両の泥落としやグリース落とし、頑固な油汚れの厨房機器や厨房床の洗浄、或いはコンクリート壁面のペイント落としや落書き落とし、車両のエンジンルームの油落としなどに優れた効果のあることが既に実証されている。よって、本発明が目的とする軌道車両が落とした油脂分や金属粉などの酸化によって黒く汚れた道床面の洗浄、清掃に効果のあることは明白である。
【0028】
したがって、従来のように回転ブラシなどを一切使用することなく、道床面の油脂分や金属粉などの酸化で黒く汚れたしつこい汚れを、高圧水ジェットのみで確実に洗浄、清掃することができる。そのため、洗浄作業中に猛烈なほこりを巻き上げたり、道床面に敷き詰めた小石等を跳ね飛ばすことが無く、作業場環境の健全化を図ることができる。
【0029】
また、小石等を跳ね飛ばすことがないので、洗浄後の後処理の必要性はない。しかも、前記重炭酸ナトリウムは、水溶性のため、使用後には時間の経過と共に水に溶けて消失する。その水はPHが8.0〜8.5程度の弱アルカリ性であるから廃水基準をクリアしており、やはり後処理の必要性はなく、公害問題が生じる懸念もないのである。
【0030】
洗浄車両には、2基のブラストノズル12、12より少し後方位置に、同車両の左側面から下向きに突き出す配置で、前記2基のブラストノズル12、12の洗浄幅を拡幅する道床面洗浄拡幅用ブラストノズル22(以下、拡幅用ブラストノズル22という。)が設置されている。図示した拡幅用ブラストノズル22は、形状こそクランク形の片腕式であるが、構造原理は図3のブラストノズル12と略同様である。即ち、重炭酸ナトリウムが、コンプレッサ9の高圧空気により拡幅用ブラストノズル22の近傍位置にて高圧水へ混入され、同重炭酸ナトリウムが混入された高圧水ジェットを道床面に噴射して、道床面をショットブラスト効果を伴って洗浄、清掃する構成とされている。
【0031】
前記クランク形状の拡幅用ブラストノズル22の上端部は、ジャッキ24で上下動可能に支持されたスイベルジョイント機構部23に一定の角度まで往復回転できるように支持されている。
【0032】
具体的には、前記シャシー3上の左前方部に、垂直方向へ上下動するジャッキ24が設けられている。このジャッキ24を支持手段としてスイベルジョイント機構部23が支持され、ジャッキ24の作動によりスイベルジョイント機構部23に支持された拡幅用ブラストノズル22が、垂直方向へ昇降する構成とされている。もちろん、前記ジャッキ24は、上述のジャッキ21と同様に、洗浄車両に設けられたセンサーの障害物の検出信号に基づいて制御される。そのため、前記拡幅用ブラストノズル22が障害物と接触し、損傷することを防ぐことができる。
【0033】
前記スイベルジョイント機構部23には、拡幅用ブラストノズル22を所定大きさの半径で旋回させる回転モータ(図示省略)が設けられている。この回転モータの駆動によって、拡幅用ブラストノズル22は、道床面の幅に応じて回転し、道床面の洗浄幅を拡幅する(請求項6記載の発明)。一例として、旋回半径が約500mmの拡幅用ブラストノズル22が、上記2基のブラストノズル12、12と共に併用されると、最大約3100mmの幅で道床面を洗浄、清掃することができる。
【0034】
洗浄車両におけるシャシー3の中央部位、更に詳しくは上記発電機6やディーゼルエンジン7その他を収納した防塵、防水用のカバーケース10の前面位置に、図5に概略構成を示したように、前記洗浄車両の走行方向とほぼ直角な面に沿って横向きに配置され上下方向へ一定の角度α(約110°)で往復回転してトンネル30の側壁面30aを洗浄する側壁用ブラストノズル31、31が設置されている。前記ブラストノズル31、31は、カバーケース10の中に設けられた駆動部34、34から前方へ水平に突き出されたスイベルジョイント機構部32、32にそれぞれ支持され、まるで車両のワイパーの如く往復回転する構成で左右に2基設置されている。
【0035】
また、洗浄車両におけるシャシー3の後端位置にも、図6に概略構成を示したように、前記洗浄車両の走行方向とほぼ垂直な面に沿って上向きに配置され左右方向へ一定の角度β(約105°)で往復回転してトンネル30の天井面30bを洗浄する天井用ブラストノズル42が設置されている。前記ブラストノズル42は、シャシー3上に設けられた駆動部40から後方へ水平に突き出されたスイベルジョイント機構部41に連結され、やはり車両のワイパーの如く往復回転する構成で設置されている。
【0036】
なお、前記スイベルジョイント機構部32、41には、それぞれ制御モータ(図示省略)が設置されている。即ち、前記制御モータの駆動により側壁用ブラストノズル31、及び天井用ブラストノズル42が往復回転する構成とされている。
【0037】
よって、この洗浄車両は、道床面を洗浄、清掃するだけでなく、トンネル30の側壁面30a、天井面30bも同時に並行して洗浄、清掃することができる。したがって、作業効率に優れ、作業時間を短縮することができる。なお、前記側壁用ブラストノズル31、及び天井用ブラストノズル42は、トンネル内面のあまり汚れていない汚れ落としを考慮して、原則として高圧水ジェットのみを噴射する構成とされている。
【0038】
前記側壁用ブラストノズル31、及び天井用ブラストノズル42の洗浄動作も、当然のことながら、洗浄車両に装備された側壁、天井を検出する各種のセンサー(図示省略)の検出信号に基づいて制御される。したがって、側壁面の切れ目、例えば駅のホーム等に洗浄車両が差し掛かっても、確実にトンネル30の側壁面30aを洗浄する高圧水ジェットを止めることができ、駅のホーム等が水に浸されることはない。
【0039】
前記洗浄車両には、上記した各ノズルの他に、図4及び図6に示したように、同車両の底面から下向きの軌道(レール)下部洗浄用ブラストノズル50、架線洗浄用ブラストノズル51、道床の中央溝60及び側溝61の洗浄用ブラストノズル52、53なども設置されている(請求項記載の発明)。
【0040】
よって、この洗浄車両は、道床面の外、軌道下部、架線部分、あるいは道床の中央溝60および側溝61等も同時に並行して洗浄、清掃することができる。なお、前記軌道下部洗浄用ブラストノズル50等も、上記の側壁用ブラストノズル31等と同様に、高圧水ジェットのみを噴射する。
【0041】
上記構成の洗浄車両は、硬い微粒状の重炭酸ナトリウムが混入された高圧水ジェットを道床面に噴射して、同道床面の油脂分や金属粉などの酸化によるしつこい汚れを所謂ショットブラスト効果を伴って確実に洗浄、清掃することができるし、また、作業場環境の健全化を図ることができる。
【0042】
また、道床面のみならず、トンネル内面、及び軌道(レール)の下部や架線の下部、さらには道床の中央溝、側溝なども同時に並行して洗浄、清掃することができるので、作業効率に優れ、作業時間を短縮することができる。
【0043】
なお、前記洗浄車両には、前方及び後方を照らす照明装置70が設けられている。
【0044】
高圧水ジェットの圧力は、道床面の汚れ具合などに応じて適宜変更される。また、道床面の幅に応じて異なる半径R及びLのブラストノズルが用いられる。
【0045】
洗浄車両におけるブラストノズル12に高圧水を供給する手段としてのプランジャポンプ8、並びに前記高圧水に重炭酸ナトリウムを混入させる手段としてのコンプレッサ9、及び前記コンプレッサ9等に電源を供給する発電機6、そして、前記発電機6及びプランジャポンプ8を駆動する動力装置としてのディーゼルエンジン7などは、上記の構成に限らない。即ち、各ブラストノズルに高圧水を供給することができ、特に道床面を洗浄するブラストノズル12、22には、重炭酸ナトリウムを混入した高圧水を供給することができる構成であれば良い。
【0046】
上記実施形態では、道床面洗浄用ブラストノズル12と拡幅用ブラストノズル22との高圧水にのみ重炭酸ナトリウムを混入するが、この限りではない。前記側壁用ブラストノズル31や天井用ブラストノズル42その他のブラストノズル50等の高圧水に重炭酸ナトリウムを混入しても良い。
【0047】
上記実施形態では、洗浄車両が軌道式車両として構成されているが、これに限らない。即ち、路面(一般道及び高速道など)を走行するタイヤ式洗浄車両として構成し実施することもできる。
【0048】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜に記載した発明に係る道床面などの洗浄車両は、硬い微粒状の重炭酸ナトリウムが混入された高圧水ジェットを道床面に噴射して、同道床面の油脂分や金属粉などの酸化によるしつこい汚れを所謂ショットブラスト効果を伴って確実に洗浄、清掃することができ、作業場環境の健全化を図ることができる。
【0049】
また、洗浄後の後処理の必要もない。即ち、前記重炭酸ナトリウムは、水溶性のため使用後には時間の経過と共に水に溶けて消失するからである。その水はPHが8.0〜8.5程度の弱アルカリ性であるから廃水基準をクリアしており、公害問題が生じる懸念もないのである。
【0050】
更に、道床面のみならず、トンネル内面、及び軌道(レール)の下部や架線の下部、さらには道床の中央溝、側溝なども同時に並行して洗浄、清掃することができるので、軌道や道路の洗浄、清掃に威力を発揮し、作業効率に優れ、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る道床面などの洗浄車両を示した側面図である。
【図2】同洗浄車両の平面図である。
【図3】重炭酸ナトリウムが混入された高圧水ジェットを噴射するブラストノズルの構成説明図である。
【図4】図1の左側面図(洗浄車両の前面図)である。
【図5】図1のV−V線矢視図である。
【図6】図1の右側面図(洗浄車両の後面図)である。
【符号の説明】
1 軌道(レール)
2 軌道車輪
3 シャシー
4 タンク
5 ホッパー
6 発電機
7 ディーゼルエンジン
8 プランジャポンプ
9 コンプレッサ
12 ブラストノズル
14、23、32、41 スイベルジョイント機構部
22 道床面洗浄拡幅用ブラストノズル
30 トンネル
30a トンネル側壁面
30b トンネル天井面
31 側壁用ブラストノズル
42 天井用ブラストノズル
50 軌道下部洗浄用ブラストノズル
51 架線洗浄用ブラストノズル
52 道床の中央溝洗浄用ブラストノズル
53 道床の側溝洗浄用ブラストノズル
60 道床の中央溝
61 道床の側溝

Claims (3)

  1. レール等の軌道上を自装備の走行駆動手段により自力走行する軌道式車両として構成された洗浄車両のシャシーから下向きにYの字形状に二股に分かれた形態で突き出す道床面洗浄用のブラストノズルが垂直なジャッキを支持手段として上下動可能に設置され、前記ブラストノズルを所定大きさの半径で旋回又は往復回転させる駆動手段が設置されており、前記二股に分かれたブラストノズルの先端部は回転中心からの半径に大小差が設けられ、噴射する高圧水は一部重複して洗浄面を形成すること、
    前記シャシーの上には、少なくともブラストノズルによる洗浄に必要な水を収容するタンクと、硬い微粒状の重炭酸ナトリウムを収容するホッパーと、上記ブラストノズルに高圧水を供給する手段、並びに前記高圧水に重炭酸ナトリウムを混入させる手段、及び発電機その他の動力装置が設置されており、
    また、洗浄車両のシャシー上には、車両の走行方向とほぼ直角な面に沿って横向きに配置され上下方向へ一定の角度で往復回転してトンネル側壁面などを洗浄する側壁用ブラストノズル、及び同車両の走行方向とほぼ垂直な面に沿って上向きに配置され左右方向へ一定の角度で往復回転してトンネル天井面などを洗浄する天井用ブラストノズルが設置されており、
    更に洗浄車両には、道床面の障害物、トンネル側壁や天井の障害物等を検出するセンサーが装備されており、前記道床面洗浄用ブラストノズル、側壁用ブラストノズル、天井用ブラストノズルはそれぞれ前記検出センサーの検出信号に基づいて洗浄動作が制御されること、
    前記ブラストノズルから重炭酸ナトリウムを混入させた高圧水ジェットを道床面に噴射して、道床面をショットブラスト効果を伴って洗浄、清掃することを特徴とする、道床面などの洗浄車両。
  2. 重炭酸ナトリウムは、粒径が200マイクロメートル程度、モース硬度が2.5程度とされ、コンプレッサの高圧空気によりブラストノズルの近傍位置にて高圧水へ混入させることを特徴とする、請求項1に記載した道床面などの洗浄車両。
  3. 洗浄車両の左右側面の少なくとも一側から下向きに突き出す配置で、道床面洗浄用ブラストノズルの洗浄幅を拡幅する道床面洗浄拡幅用ブラストノズルが設置され、前記道床面洗浄拡幅用ブラストノズルを一定の角度まで往復回転させる支持及び駆動手段が設置されており、道床面の幅に応じて道床面洗浄拡幅用ブラストノズルを併用して前記道床面洗浄用ブラストノズルの洗浄幅を拡幅すること、
    更に洗浄車両には、同車両の底面から下向きに軌道下部洗浄用ブラストノズル、および架線洗浄用ブラストノズル、並びに道床の中央溝および側溝洗浄用ブラストノズルが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載した道床面などの洗浄車両。
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