JP3636570B2 - フェノ−ル類のエ−テル化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機合成反応であるフェノール類のエーテル化方法、即ち、フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテルの新規製造方法に関するものである。
本発明により生成されたフェノール類のヒドロキシアルキレンエーテルは、医薬や農薬及び染料等の合成原料として、またはポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等の重合成分として、有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテルの製造方法は、その生成物の産業上の高い有用性のために、広く研究され、多くの方法が開示されている。
フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテルの製造方法の基本的なものは、フェノール類の水酸基にエチレンオキサイドを付加させる方法(特開平8-208550号公報) であるが、その他の方法として、エチレンカーボネートを付加する方法(特開平8-295646号公報) 、フェノール類とヒドロキシエチルハロゲン化物とを反応させる方法 (特開昭48-4434 号公報) 、フェノール類とエチレングリコールをビスマスジアセテート触媒により反応させる方法(Tetrahedoron Lett. Vol.22No.50p 5063-6, 1981)等が開示されている。
しかし、上記の従来方法には種々の欠点があり、エチレンオキサイドを付加させる方法においては、危険物のために法規制もなされているエチレンオキサイドの取り扱いが困難で特殊な設備を必要とし、また、エチレンオキサイドの付加が1段階で止まり難く、連鎖反応が生じてしまう。一方、触媒を使用する方法では、残存触媒の除去が困難で、残存触媒によるポリマーの着色や劣化の問題をもたらしがちである。その他の従来方法においても、ヒドロキシアルキレンエーテル化の反応が1段階で止まり難く、さらに後処理が困難で反応生成物の純度と収量が低い等の問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来方法においては、ヒドロキシアルキレンエーテル化反応が1段階で止まり難く、連鎖反応を起こしてしまい、医薬や農薬等の原料もしくはポリマーの重合成分として有用な1段階付加物の生成が困難であるので、アルキレンオキサイドの付加を効率良く選択的に1段階で行う方法が求められており、また、簡易に安全な方法で、純度と収量の高いヒドロキシアルキレンエーテル化物を製造することも課題となっている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、従来技術の問題点に鑑み、フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテル化反応を種々検討し、炭酸ガス(二酸化炭素)の存在下にこの反応を行うことにより、上記課題を解決するに到った。
本発明の基本構成は、フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテルの製造を、ヒドロキシアルキレンエーテル化反応により行なうもので、フェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコールを炭酸ガスの存在下に反応させる合成反応を特徴とするものである。しかも、本発明の方法は従来法に比して、反応操作が安全、簡便であり、生成物の純度や収量もきわめて高いことも大きな特徴である。
【0005】
本発明の方法は、具体的には▲1▼フェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコール又はアルキレングリコールのアルキル置換体を炭酸ガスの存在下に反応させることによる、フェノール類のエーテル化方法、▲2▼フェノール類のアルカリ金属塩と、エチレングリコール又はエチレングリコールのアルキル置換体を炭酸ガスの存在下に反応させることによる、フェノール類のエーテル化方法、▲3▼フェノール類のアルカリ金属塩と、プロピレングリコール又はプロピレングリコールのアルキル置換体を炭酸ガスの存在下に反応させることによる、フェノール類のエーテル化方法、▲4▼フェノール類が、フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノールF及びそれらの誘導体から選ばれる一種である、フェノール類のエーテル化方法、▲5▼アルカリ金属塩が、ナトリウム塩またはカリウム塩である、フェノール類のエーテル化方法である。
【0006】
【作用】
本発明の合成反応の代表例として、ビフェノールのエチレングリコールによるエーテル化反応の反応式を次に示す。
【化1】
【0007】
フェノール類のアルカリ金属塩にアルコール溶媒中で炭酸ガスを作用させると、オキシカルボン酸金属塩が生成する反応はコルベーシュミットの反応として周知の合成反応であるが、本発明は本発明者等によるフェノール類のアルカリ金属塩と、エチレングリコール又はプロピレングリコールを炭酸ガスの存在下で反応させると、驚くべきことにフェノール類のヒドロキシアルキレンエーテル化反応が効率良く行なわれ、しかもエーテル化反応が選択的に1段階で止まり、連鎖的なエーテル化はほとんど起らない。
また、2環フェノール類の場合においても、両方の水酸基でエーテル化が行われ、エーテル化が選択的に1段階で止まり、さらに3環フェノール類の場合も同様である。
【0008】
本発明で使用されるフェノール類のアルカリ金属塩のフェノール類としては、種々のものが使用でき、単環化合物として、1価のフェノール、クレゾ−ル、キシレノ−ル、トリメチルフェノ−ル、ブチルフェノ−ル等、2価のカテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等、多環式化合物として、1価のナフトール、クミルフェノ−ル、シクロヘキシルフェノ−ル等、2価のビフェノール、ビスフェノールF、4,4'- フェニルメチレンビスフェノ−ル等、3価の4,4',4"-メチリデントリスフェノ−ル等が例示できるが、これらの置換体も使用し得る。また、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩又はカリウム塩が好適である。
また、アルキレングリコール又はアルキレングリコールのアルキル置換体のアルキレングリコールのアルキル基は、炭素数2〜4の脂肪族が好ましく、より好ましくは炭素数2又は3のエチレングリコール又はプロピレングリコールであり、1,5-ペンタンジオールやそれ以上アルキレン鎖の長いグリコールではこの反応は起こり難い。さらに、上記アルキル置換体としては、アルキル基がエチレン鎖又はプロピレン鎖において枝分かれ置換した置換体も使用できる。
【0009】
本発明の方法における反応操作は、フラスコやオートクレーブ等の容器にフェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコールを装填し、炭酸ガスで置換した後、高温下で炭酸ガス加圧下攪拌しながら反応させる。反応終了後、アルコールを加えて粗結晶を濾別し、精製すればよい。フェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコールの仕込みモル比は、アルキレングリコールを大量に用いるが、フェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコールのモル比は、1/2 〜1/50、好ましくは1/3 〜1/40、より好ましくは1/5 〜1/30の範囲である。
また、反応は温度は180 〜250 ℃、好ましくは200 〜220 ℃、炭酸ガス圧は、1〜30、好ましくは10〜20kg/cm2、反応時間は、2〜10時間、好ましくは3〜6時間である。
【0010】
【実施例】
実施の態様として、代表的な実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
〔ビフェノールのエチレングリコールによるエーテル化]
a. ビフェノールNa塩の調整;
ビフェノール18.6g とメタノール60.0g を500ml のフラスコ容器に仕込み、窒素雰囲気中で攪拌しながら30%ナトリウムメチラート36.0g を滴下した。フラスコ内のメタノールを蒸留して除去し、ビフェノールNa塩23.0g を得た。
b. ビフェノールNa塩のエーテル化;
得られたビフェノールNa塩23grとエチレングリコール100gr を200ml オ−トクレーブに仕込み、炭酸ガスで置換した後、220 ℃まで昇温し、炭酸ガス圧15kg/cm2まで加圧して3時間反応させた。化合物の確認のため反応終了液にメタノールを加え、HPLC(高速液体クロマト)分析したところ、そのビフェノール成分組成はジエーテル化ビフェノール78.4%、モノエーテル化ビフェノール13.6%、未反応ビフェノール0.8 %、その他7.8 %であることが確認できた。
次に上記反応終了液にメタノール110gr を加えて、不溶物を濾別し、濾別した不溶物を水100gr で水洗し、塩酸水溶液でpHを7に調整した後、濾過、乾燥し、白色粉末19grを得た。この白色粉末のエーテル化物純度は、HPLC分析により94.9%であることがわかった。
さらに精製のため、上記白色粉末にTHFを加え、リフラックスさせた後、冷却、濾別し、HPLC分析による純度が98%の白色粉末を得た。
得られた、白色粉末のDI−MS(ダイレクト・インサート・マススペクトル)での分子量は274 で、H−NMRでのプロトンNMRスペクトルは表1の通りであった。
【0011】
【表1】
【0012】
上記H−NMR分析及びDI−MSの結果、白色粉末は4,4'- ジ(2- シドロキシ・エトキシ) ビフェニルであることが確認された。
【0013】
【実施例2】
〔ビフェノールのプロピレングリコールによるエーテル化〕
a. ビフェノールNa塩の調整;
ビフェノール18.6g とメタノール60.0g を500ml のフラスコ容器に仕込み、窒素雰囲気中で攪拌しながら30%ナトリウムメチラート36.0g を滴下した。フラスコ内のメタノールを蒸留して除去し、ビフェノールNa塩23.0g を得た。
b. ビフェノールNa塩のエーテル化;
200mlオートクレーブにビフェノールNa塩23grとプロピレングリコール100gr を仕込み、炭酸ガスで置換した後、220 ℃まで昇温し、炭酸ガス圧15kg/cm2まで加圧して、3時間反応させた。
化合物確認のため上記反応終了液にメタノールを加え、HPLC(高速液体クロマト)分析した所、そのビフェノール成分組成物はジエーテル化ビフェノール38.8%、モノエーテル化ビフェノール42.6%、未反応ビフェノール13.1%、その他5.5 %であることを確認した。
次いで上記反応終了液にメタノール67grを加えて不要物を濾別した次いで、濾別した不溶物を水100gr で水洗し、塩酸水溶液でpHを7に調整した後、濾過、乾燥し、白色粉末8gr を得た。
この白色粉末は、HPLC分析よりエーテル化物純度は76.6%であった。
次いでこの白色粉末の精製のために、上記白色粉末にTHFを加え、リフラックスさせた後、冷却、濾別し、HPLC分析により純度98%の白色粉末を得た。
上記白色粉末のDSCでの融点は、191 ℃であって、DI−MSでの分子量は302 であり、NMR分析の結果は表2のとおりであった。
分析の結果、最終的に得られた白色粉末は、4,4'- ジ(2- ヒドロキシ・プロポキシ) ビフェニールであることが確認された。
【0014】
【表2】
【0015】
【発明の効果】
以上のように、本発明はエーテル化剤として、炭酸数2〜4のアルキレングリコール、例えばエチレングリコール又はプロピレングリコールを使用することにより、フェノール類のヒドロキシアルキレンエーテル化反応を1段階で完了するよう制御が可能で、医薬や農薬や染料等の原料もしくはポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂の重合成分として有用な1段階付加物を効率よく製造できる。また、本発明の方法は、簡易、且つ、安全な方法で、純度の高いヒドロキシアルキレンエーテル化物の合成を行なうことができる顕著な効果を発揮する。
Claims (2)
- フェノール類のアルカリ金属塩と、アルキレングリコール及び/又はそのアルキル置換体を炭酸ガスの存在下に反応させることを特徴とするフェノール類のエーテル化方法。
- アルキレングリコールが、エチレングリコール又はプロピレングリコ−ルであることを特徴とする請求項1のフェノール類のエーテル化方法。
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