JP3636294B2 - 高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布 - Google Patents

高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫などの用途に用いられる軟質ポリオレフィン系樹脂製帆布に関する。より詳しくは、短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に特定のポリオレフィン系樹脂層を形成して得られる柔軟性と動的耐久性を有する高周波融着可能なポリオレフィン系樹脂製帆布に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫などの産業資材用途では軟質のポリ塩化ビニル樹脂製の帆布を高周波融着機で縫製して立体化したものが使用されている。中でも特に短繊維紡績糸条からなる繊維布帛(スパン布)に軟質ポリ塩化ビニル樹脂を被覆して製造された帆布は、繰返し屈曲性と柔軟性、及び耐摩耗性を有しているため、トラック幌やトラック荷台シートとして走行中の風圧による(幌)シートのはたらき、荷台フレームとの擦れ、突起物に対する耐貫通性などに優れ、また(幌)シートの取外し時の折畳み収納とシート掛け実装との繰返し性にも優れている。これらの帆布は短繊維紡績糸条からなる繊維布帛(スパン布)をペースト状に調製された軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物(オルガノ)ゾル中に浸漬し、それを引き上げると同時に2本のゴムロールで圧搾し、ペースト塩ビゾルを繊維布帛の繊維組織内に含浸させたものを熱処理してゲル化させて樹脂被膜化させたもの、または繊維布帛(スパン布)の両面に対して片面ずつ、又は両面同時にペースト塩ビゾルをコーティングし、熱処理してゲル化させて樹脂被膜化させたものなどが知られている。
【0003】
ポリ塩化ビニル樹脂は柔軟かつ強靭で、加工性とコスト性に優れた合成樹脂材料として、多くの分野に広く使用されている。最近、ポリ塩化ビニル樹脂製品の廃棄時、特に焼却処理に対してはダイオキシン発生抑制の観点からポリ塩化ビニル樹脂製品を含めた全ての合成樹脂製品を無闇に焼却する行為が考え直され、また埋立て廃棄の場合にはポリ塩化ビニル樹脂製品に配合された可塑剤や金属系安定剤の地下水系混入が危惧されている。こうした環境負荷に対する問題意識から最近では、廃棄までのライフサイクルが特に短いポリ塩化ビニル樹脂製品に対しては極力他の合成樹脂に置き換える動きが活発化し、更に、リサイクルが容易な耕造の合成樹脂製品が望まれるようになっている。
【0004】
現在、ハロゲン原子や、可塑剤を含有しない合成樹脂としてポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が注目され、日用雑貨類に広く普及しているが、トラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫などの産業資材用途においても軽量化と環境負荷因子軽減の観点から原反シートの被覆樹脂系をポリ塩化ビニル樹脂からポリオレフィン系樹脂に置き換えた帆布が要望されている。そこで例えば、これらの原反シートの被覆樹脂をポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂による仕様に変える試みが検討されているが、ポリオレフィン系樹脂製の帆布を軟質ポリ塩化ビニル樹脂製の帆布と同様の製造機で加工することは樹脂原料自体の形態がペレット状であることと、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂が有機系溶剤に不溶性であることの問題から事実上不可能である。このため従来の帆布製造機で加工可能なポリオレフィン系樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のエマルジョンを使用した帆布製造が検討されたが、酢酸ビニル成分高含有による樹脂被膜強度不足、エマルジョンに使用されている乳化剤及び分散剤の影響による耐水性能不良など問題が大きく実用性に乏しいものであった。また加工液の大半が水分であるが故にエマルジョン塗布回数が増えるなど製造効率も悪いものであった。
【0005】
そこでポリオレフィン系樹脂から成型されたフィルムを繊維布帛に積層して得られる帆布が検討されたが、ポリオレフィン系樹脂フィルムでは軟質ポリ塩化ビニル樹脂の様に可塑剤を配合することによって風合いをコントロールすることが出来ないため、樹脂材料特性に由来する樹脂硬度がそのまま成型品に反映される。即ちポリオレフィン樹脂特有の高結晶性の影響により原反シートにした時の風合いが極度に硬いものとなり、また折り曲げ時の反発力を増すことで縫製品が嵩張り、縫製作業と施工作業が非効率で困難となる。さらに縫製品の折りたたみにおいても原反シートが嵩張り、梱包作業に困難を要する上に、無理な折りたたみによってポリオレフィン系樹脂の持つ降伏限界を越えてしまい、その結果、折り曲げ部に皺痕を残し、使用時の外観を悪くする欠点があった。またこれらのポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂は無極性であることから誘電損率が低く、このためポリ塩化ビニル樹脂製品の接合方法として極めて有効で効率的であった高周波ウエルダー融着が全く困難で、2次加工性の悪い産業資材の原反シートであった。
【0006】
そこでポリオレフィン樹脂の柔軟化の試みとして、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−共役ジエン系ゴム(EPDM)などの非結晶ゴム成分をブレンドする方法、又はこれらのポリマーブレンド樹脂に更にパラフィン系オイルなどの軟化剤を添加する方法など行われているが、非結晶ゴム成分をブレンドする方法では結晶部と非結晶部との相溶性が悪く、ブレンドフィルムの機械的強度、特に引裂強度を極端に低下させたり、またパラフィン系オイル添加系では添加量が多すぎると製品表面にパラフィン系オイルが経時的に滲み出してベタつきと汚れの原因となることがある。
【0007】
そこでまた結晶性の低いポリオレフィン系樹脂が着目され、例えばエチレンとα−オレフィンとをチーグラー・ナッタ系触媒存在下でイオン重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を用いた場合には、α−オレフィン分岐耕造が嵩高成分となり低結晶化することによって柔軟性が向上する。しかしこのエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は分子量分布が広く、高分子量に成長した高密度成分と重合が途中で停止した低分子量成分を含んでいて、成型物の表面に低分子量成分をブリードさせる欠点がある。この低分子量成分はベタつき感があり、また製品外観に曇りを生じたり印刷性を阻害するため好ましいものではない。さらにまたメタロセン系均一触媒によって重合されたメタロセン系触媒重合エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の場合においては、分子量分布が狭く、従って低分子量成分のブリードの欠点は有さないが、結晶ラメラが薄い均質な構造のため従来のエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂に比べて融点が5〜10℃程度低い特徴を有している。しかしこの低融点シフトは、縫製部の耐熱強度が要求される用途においては好ましいことではない。
【0008】
そこで一方、結晶性の低いポリオレフィン系樹脂として、例えばエチレンと極性の酢酸ビニルとをラジカル重合して得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、酢酸ビニル成分含有量の増大により柔軟性を増すが、共重合の規則性が無秩序となるため樹脂強度と耐摩耗性が低くなる。従って耐久性を必要とする産業資材用途には不適切なものとなる。また、例えばエチレンと極性のアクリル酸(エステル)とをラジカル重合して得られるエチレン−アクリル酸系共重合体樹脂は、アクリル酸(エステル)成分含有量の増大により軟質ポリ塩化ビニル樹脂レベルの柔軟フィルムを得ることができるが、更に樹脂強度と耐摩耗性が乏しく、従って耐久性が必要とされる産業資材用途には不適切なものであった。
【0009】
このためエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、エチレン−アクリル酸系共重合体樹脂として特に酢酸ビニル成分、またはアクリル酸成分の含有率が10重量%程度に重合された共重合体樹脂を選んで使用すること、また或いはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、エチレン−アクリル酸系共重合体樹脂にポリエチレン樹脂やエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を適量ブレンドして樹脂強度の改善を図ったり、更に或いはポリエチレン樹脂やエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂に高周波ウエルダー融着性を付与する目的で極性成分を有する酢酸ビニル成分含有樹脂または、アクリル酸エステル成分含有樹脂などを適量ブレンドすることが汎用的に行われている。これらの全ての場合において、樹脂強度と耐摩耗性とを維持しながら高周波ウエルダー融着性も持ち合わせることが可能となるが、しかしながら風合い面では柔軟性向上効果に乏しく軟質ポリ塩化ビニル樹脂の風合いレベルに及ぶものではない。そしてまた、ポリエチレン樹脂または、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂ブレンド系ではエチレン系重合体の低分子量成分が経時的に成型品の表面にブリードして、ベタつきと曝露汚れを誘引することがあり好ましくない。
【0010】
また一方で、極性成分を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、エチレン−アクリル系共重合体樹脂を中間層として、その表裏にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂などからなる薄肉の耐摩耗オレフィン系樹脂層を有する多層構造のフィルムが提案されている。確かにこれらの多層構造のオレフィン系樹脂フィルムは耐摩耗性と柔軟性に優れているが、共押出しT−ダイ法、あるいは共押出しインフレーション法により各層樹脂の吐出比と、延伸技術によって製造されるため、各層の厚み制御が困難であり、従って中間層の厚みにバラツキを生じ易く、高周波ウエルダー融着条件が安定しない欠点と、フィルムの最外層に無極性のポリオレフィン層を有することで高周波ウエルダー融着性を困難とする欠点がある。また、これらの多層構造フィルムは製造時の制約が大きく、例えば着色種、添加剤種の異なる小ロット多品種の対応には樹脂替えのコンパウンドロスを大量に要すなど製造的い不向きである。
【0011】
また上記ポリオレフィン系樹脂から成型されたフィルムを繊維布帛に積層して得られる帆布形態において、繊維布帛(スパン布)とフィルムとの接着性が不十分であると繰返し屈曲を伴う部分にフィルム剥がれ、フィルム浮きなどを発生し、防水布としての機能を失う原因となる。またラップ接合して縫製された縫製部分が経時的に剥離して、シート構造体が局部的に壊れる原因となることがある。特に経糸及び、緯糸の打込み本数密度が多くなる程、繊維布帛とフィルムとの接着技術がより困難となる。この繊維布帛とフィルムとの接着性の改善には、繊維布帛に接着下処理と、ポリオレフィン系樹脂フィルムの貼着面に特殊プライマー及び、接着剤の2層塗布する工程設計を必要とするが、しかしこの様な方法では原反シートの風合いが硬くなると同時に、引裂強度が低下するなど悪影響が多く、工程の煩雑さからも現実性に乏しい方法であった。
【0012】
従って従来のポリ塩化ビニル樹脂製のトラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫の代替えとして、十分な柔軟な風合いと繰返し屈曲疲労耐久性及び耐摩耗性を有し、かつ高周波ウエルダー融着が容易に可能であるポリオレフィン系樹脂製帆布は今だ存在していなかったのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の課題であった、トラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫などの用途に適した、十分な柔軟な風合いと優れた繰返し屈曲疲労耐久性及び、耐摩耗性を有し、しかも高周波ウエルダー融着可能であるポリオレフィン系樹脂製帆布を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく研究、検討を重ねた結果、メタロセン系触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とし、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂との併用物をブレンド成分として含み、かつ、酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5〜30重量%であり、密度が0.910〜0.938g/cm3 のポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなる特定の配合のフィルム層を合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物シリコーン系化合物、及び/又はパラフィン系化合物を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理が施されている基布の両面に積層して得られる帆布及び、上記繊維布帛の表面に上記ポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなる特定の配合のフィルム層が形成され、その裏面に熱可塑性樹脂を含有する溶液を塗布し、乾燥して形成された裏面被覆層を形成して得られる帆布が、十分な柔軟な風合いと優れた繰返し屈曲疲労耐久性及び、耐洗濯性を有し、かつ高周波ウエルダー融着可能であることを見いだして本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)は、基布と、その両面に積層されており、かつポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物からなるフィルム層とを含み、
前記基布が、合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物から選ばれた1種以上を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理を施して調製されたものであり、
前記フィルム層用ポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物が、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含み、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂の併用物をブレンド成分として含み、前記組成物中の酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分との合計含有量が、前記主樹脂成分と前記ブレンド成分との合計重量に対し5〜30重量%であり、かつ前記組成物の密度が0.910〜0.938g/cm3である
ことを特徴とするものである。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(2)は、基布と、その表面に積層されており、かつポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物からなる表面フィルム層と、前記基布の裏面上に形成された裏面被覆層とを含み、
前記基布が、合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物から選ばれた1種以上を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理を施して調製されたものであり、
前記表面フィルム層用ポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物が、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含み、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂との併用物をブレンド成分として含み、前記組成物中の酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分との合計含有量が、前記主樹脂成分と前記ブレンド成分との合計重量に対し5〜30重量%であり、かつ前記組成物の密度が0.910〜0.938g/cm3であり、
前記裏面被覆層が、熱可塑性樹脂を含有する溶液を前記基布の裏面に塗布し、乾燥して形成され、かつキャンバス地状外観を有する、
ことを特徴とするものである。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(2)において、前記裏面被覆層を形成する熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂及び、これらの変成体樹脂から選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記熱可塑性樹脂を含有する溶液が、有機系溶剤または水を媒体とすることが好ましい。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記ポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなるフィルム層が、合成非晶質シリカを3〜20重量%含有することが好ましい。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記裏面被覆層が、合成非晶質シリカを3〜20重量%含有することが好ましい。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛の織組織空隙率が2〜12%であることが好ましい。
本発明の高周波波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記基布に含まれる下処理用熱可塑性樹脂バインダーの前記繊維布帛重量に対する乾燥付着率が0.05〜3.0重量%であることが好ましい。
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、前記メタロセン系触媒がシクロペンタジエニル誘導体または、インデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンとを含むことが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、ポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物は、メタロセン系触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含み、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂との併用物をブレンド成分として含むものであって、前記組成物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に含有される酢酸ビニル成分と、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合樹脂に含有される(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量が、前記主成分と前記ブレンド成分との合計重量に対し、5〜30重量%の割合をなしており、前記組成物の密度が0.910〜0.938g/cm3 の範囲内にある。このポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層は、合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物及び/又はパラフィン系化合物を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理を施して調製された基布の両面に積層して構成されるか(帆布(1))、また前記繊維布帛の表面のみに積層され、基布の裏面には熱可塑性樹脂を含有する溶液を塗布して乾燥された裏面被覆層が形成される(帆布(2))。また前記ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層には合成非晶質シリカを3〜20重量%含有されていてもよい。また前記裏面被覆層には合成非晶質シリカが3〜20重量%含有されていてもよい。さらに前記繊維布帛に下処理により含浸されている熱可塑性樹脂バインダーの乾燥付着率は、基布重量に対して0.2〜3.0重量%である。本発明において(メタ)アクリル酸(エステル)成分とは、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタアクリル酸エステルを包含するものである。
【0017】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1),(2)のポリオレフィン系樹脂ブレンド層に使用されるポリオレフィン系共重合体樹脂としては、メタロセン系触媒の存在下でエチレンと、炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂が好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は、エチレンモノマーと炭素数3〜18のα−オレフィンモノマーをメタロセン系均一触媒の存在下、気相法、スラリー液相法、または高圧法によって重合することにより得られ、α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1などが用いられるが、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。また、これらのα−オレフィンを1種または2種以上用いてエチレンモノマーと共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を使用してもよい。
【0018】
これらのエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は、1種のみならず、2種以上のエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂をブレンドして併用することもでき、これらのエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂及び、ブレンド併用組成物は、そのメルトインデックスが、0.3〜20g/10min であることが好ましい。メルトインデックスが、0.3g/10min 未満であると、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の成形加工が極めて困難になり、またそれが、20g/10min よりも高いと、高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の強度及び耐熱性が劣るだけでなく、粘着性を増してブロッキングを生ずることがある。
【0019】
本発明に使用するエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の重合に使用できるメタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル誘導体、またはインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物が好ましく使用できる。シクロペンタジエニル誘導体、またはインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の遷移金属としては、原子周期律表第IVB族から選ばれる。例えばジルコニウム、チタニウム、ハフニウムであることが好ましい。シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の具体例としては、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1−メチル−3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1−メチル−1エチリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライドなどが例示できる。インデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の具体例としてはエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、1,2−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、などが例示できる。前者のシクロペンタジエニル誘導体を含有するメタロセン系触媒はシンジオタクシティが高く、また後者のインデニル誘導体を含有するメタロセン系触媒はアイソタクシティが高く、これらのメタロセン系触媒を使い分けることによってエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の立体規則性をコントロールして得ることができる。
【0020】
また本発明に使用するエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の重合にはメタロセン系触媒の助触媒としてアルキルアルミノキサンを併用することが重合の活性効率の観点で好ましい。上記アルキルアルミノキサンとしてはメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンなどが例示でき、例えば、アルキルアルミノキサンはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウムと水との縮合によって得られる−(Al(CH3 )−O−)n −縮合物が使用できる。アルキルアルミノキサンはメタロセン系触媒に対して金属原子数比(アルミニウム原子/メタロセン系触媒の遷移金属原子)が100〜1000であることが好ましく、また重合系内に使用されるメタロセン系触媒量としては重合容積1リットルに対して1×10-8〜1×10-3グラム原子の量で使用されることが好ましい。また、必要に応じて重合活性を高める目的で、従来公知のプロトン酸、ルイス酸、ルイス酸性化合物を併用しても良い。プロトン酸、ルイス酸、ルイス酸性化合物に特に限定はないが、ホウ素系化合物が好ましく使用できる。
【0021】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンド層に、ブレンド成分として使用できるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、ラジカル重合法により製造された共重合体樹脂が使用できる。エチレンモノマーとラジカル重合し得るモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸などの不飽和カルボン酸、及びそのエステル化物や酸無水物が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステル化物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種のみならず2種以上用いることができる。また具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとの重合によって得られるもの、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーとの重合によって得られるエチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレンモノマーとアクリル酸エステルモノマーとの重合によって得られるエチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレンモノマーとメタアクリル酸モノマーとの重合によって得られるエチレン−メタアクリル酸共重合体樹脂、エチレンモノマーとメタアクリル酸エステルモノマーとの重合によって得られるエチレン−メタアクリル酸エステル共重合体樹脂など、及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0022】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンド層に使用されるポリオレフィン系共重合体樹脂として、好ましくは、酢酸ビニル成分含有量が5〜60重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、もしくは前記エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、(メタ)アクリル酸(エステル)成分含有量が5〜60重量%の(メタ)アクリル酸(エステル)共重合樹脂との重量比100:1〜1:100の併用物が用いられ、酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量として5〜60重量%を含有するポリオレフィン系樹脂共重合体組成物であることが好ましい。これらのポリオレフィン系共重合体樹脂のメルトインデックスは、0.3〜20g/10min であることが好ましい。メルトインデックスが、0.3g/10min 未満であると、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の成形加工が極めて困難になり望ましくなく、またそれが20g/10min よりも高いと、高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の強度及び耐熱性が劣るだけでなく、粘着性を増してブロッキングを生ずることがある。
【0023】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンド層は、前記エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂成分と、上記ポリオレフィン系共重合体樹脂ブレンド成分とを、重量比100:10〜100:100で含むポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物により形成されたものであって、このポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物には、その重量に対して、酢酸ビニル成分と、(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量が5〜30重量%の割合をなすことが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂とポリオレフィン系共重合体樹脂のブレンドにおいて、これらの重量比が100:10未満、すなわちポリオレフィン系共重合体樹脂ブレンド比が10未満であると、得られるポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)の高周波融着性が不十分となり好ましくなく、また100:100を越えるブレンド重量比、すなわちポリオレフィン系共重合体樹脂ブレンド比が100を越えると、得られるポリオレフィン系樹脂帆布の強度が不十分となることがある。また、ポリオレフィン系樹脂ブレンド層に含まれる酢酸ビニル成分と、(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量がブレンド層の重量に対して5重量%未満であると、得られるポリオレフィン系樹脂帆布の高周波ウエルダー融着性が不十分となることがある。またそれが30重量%を越えると、得られるポリオレフィン系樹脂帆布の強度及び耐熱クリープ性が不十分となることがある。
【0024】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)のポリオレフィン系樹脂ブレンド層に使用され、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂と、ポリオレフィン系共重合体樹脂とのブレンド組成物の密度は、0.910〜0.938g/cm3 であり、特に0.916〜0.933g/cm3 の範囲であることが好ましい。上記密度が0.938g/cm3 を越えると、得られる組成物の結晶化度が大きくなると同時に風合いが硬くなり、またフィルムが乳濁化して良好な着色発色性が得られなくなる。また密度が0.910g/cm3 未満では、得られる組成物の柔軟性は良好に得られるが、フィルム強度と耐熱性が低下して十分な摩耗強度が得られなくなり、また高周波ウエルダー融着性を悪くするため好ましくない。
【0025】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)のポリオレフィン系樹脂ブレンド層には、その他のメタロセン系触媒ポリオレフィン系樹脂として、メタロセン触媒の存在下、プロピレンモノマーの自己重合によって得られるアイソタクティックポリプロピレン樹脂、あるいはシンジオタクティックポリプロピレン樹脂が耐衝撃強度改善及び樹脂摩耗強度の改善などを目的として、5〜10重量%程度の割合で含まれていてもよい。
【0026】
また、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンド層には、合成非晶質シリカが3〜20重量%の割合で含まれていてもよい。合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)としては、ケイ酸ソーダと鉱酸(硫酸)及び塩類を、水溶液中で反応させる湿式法によって得られる合成非晶質シリカを使用することが好ましい。この合成非晶質シリカは、シリカ表面のシラノール基(Si−OH基)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分を結合水分として有するため、含水シリカとして、シリカの他の乾式合成法やエアロゲル合成法によって得られる水分含有率の極めて少ない無水シリカと区別されるものである。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)において、ポリオレフィン系樹脂ブレンド層形成用コンパウンドに配合して用いられる合成非晶質シリカの平均凝集粒径には、特に制約はないが、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは2〜10μmの合成非晶質シリカを用いることができる。また、合成非晶質シリカの含水率としては、3〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜10重量%の合成非晶質含水シリカを用いることができる。合成非晶質シリカの配合量が3重量%より少ないと、得られるポリオレフィン系樹脂帆布の融着接合体の耐熱破壊強度が不十分となることがあり、また合成非晶質シリカの配合量が20重量%を超えると、ポリオレフィン系樹脂ブレンド層フィルムの成型流動性を悪くして加工が困難となり、また、得られるポリオレフィン系樹脂帆布のフィルム強度を著しく低下させ、十分な接合部強度が得られなくなることがある。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンド層は、それに上記合成非晶質シリカ3〜20重量%を含ませることによって、より高周波融着性を向上させ、さらに融着接合体の耐熱クリープ性を向上させることができる。
【0027】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層は、有機系顔料及び/又は無機系顔料によって着色されたものが使用できる。有機系顔料としては従来公知のものが使用でき、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付けレーキ顔料、アントラキノン系顔料類、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料など、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などが例示できる。また無機系顔料としては例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、スピネル型(XY2 4 )構造酸化物、ルチル型〔Ti(XY)O2 〕構造酸化物などの金属酸化物、硫化亜鉛と硫酸バリウムの複合物(リトポン)、硫化カルシウム、硫化亜鉛などの金属硫化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛などの金属硫酸化物、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸鉛と水酸化鉛の複合物(鉛白)などの金属炭酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム(アルミナホワイト)、水酸化アルミニウムと硫酸カルシウムの複合物(サチン白)、水酸化アルミニウムと硫酸バリウムの複合物(グロスホワイト)などの金属水酸化物、クロム酸鉛(黄鉛)、クロム酸バリウムなどのクロム酸金属塩、その他カーボンブラック、チタンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ホワイトカーボン、ケイ藻土、タルク、クレー、アルミニウム粉末、着色アルミニウム粉末、金属蒸着フィルムの粉砕体、銀白色雲母チタン、着色雲母チタン、二色性干渉雲母チタンなどが例示できる。これらの顔料は2種以上を組み合わせて使用でき、添加量に制限はない。また、表裏のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層の着色が異なった組み合わせであってもよい。
【0028】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層には必要に応じて添加剤を配合して用いることができる。特にポリオレフィン系樹脂の耐久性を向上させる目的で紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加することが好ましい。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系及び、アニリド系の紫外線吸収剤が挙げられ、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、アミン系、及びフォスファイト系の酸化防止剤が挙げられる。また光安定剤としてはヒンダードアミン系の光安定剤が挙げられる。その他フィルム成型時の加工性を向上させる目的でリン酸エステル系、脂肪族アミド系、モンタン酸系の滑剤を添加することが好ましい。
【0029】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムは、従来公知の成型加工方法、例えばT−ダイス押出法、インフレーション法、カレンダー法などによって加工することができる。ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムのコンパウンドは、公知の方法、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、二軸混練機などを用いて溶融混練後、単軸押出機、二軸押出機などで溶融混練造粒する方法、さらには、この造粒コンパウンドに単軸押出機、二軸押出機などで有機系顔料、無機系顔料、光輝性顔料などの着色剤、及び各種添加剤を溶融混合造粒した高濃度のマスターバッチを作製しておき、タンブラーブレンダー、タンブルミキサー、ヘンシェルミキサーのような混合機を用いてドライブレンドし、混合後、更に単軸押出機、二軸押出機などで溶融混練造粒する方法を採用する事ができる。
【0030】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)に用いられるポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムは、上記コンパウンドを用いてT−ダイ押出法、インフレーション法、カレンダー法などの加工技術によって製造することができるが、特に有機系顔料、無機系顔料などによって着色されたフィルムの製造、あるいは色替え作業の多い加工には、カレンダー法がコンパウンドロスが少なく簡便で適している。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムは、カレンダー法によって100〜200℃の温度範囲でフィルムの成型加工を行うのが好ましい。カレンダー加工するポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの厚さは、80〜500μmであることが好ましく、より好ましくは130〜500μmである。厚さがこの範囲よりも薄いと、成型加工が困難な上に、繊維布帛にラミネートした時に繊維布帛の織交点部でフィルムの頭切れを起こし、防水性を損なうだけでなく、帆布の耐久性を悪くする。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)の厚さに制限はないが、80〜500μmのポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを1〜4枚用いて繊維布帛とラミネートすることが好ましい。特に130〜300μmのフィルムを2枚用いて繊維布帛の両面にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層が形成されるものが好ましい。
【0031】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1),(2)の基布を構成する繊維布帛としては、合成短繊維紡績糸条からなる織布または編布のいずれでもよく、織布としては平織、綾織、繻子織などが挙げられるが、特に平織織布が得られるポリオレフィン系樹脂帆布の経・緯物性バランスに優れるため好ましい。繊維布帛の経糸・緯糸の短繊維紡績糸条は合成繊維から成るものであって、加工性と汎用性を考慮すると、具体的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維などの合成短繊維紡績糸条が好ましく使用でき、中でも特にポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維から選ばれた短繊維紡績糸条が最も好ましい。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)又は(2)に使用される繊維布帛としては、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維から選ばれた合成短繊維紡績糸条及びこれらの混用繊維からなる合成短繊維紡績糸条を経糸、及び緯糸とする平織織布であることが好ましい。
【0032】
合成短繊維紡績糸条は、例えば、上記ポリプロピレン、ビニロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を溶融温度(融点)以上の温度に加熱して流動性の粘重な溶融液化し、これを特定の口径(0.2〜0.6mmφ程度)の細孔を多数有する紡糸口金を通過させて空気、窒素、水などの不活性冷却媒体中に押出して1000〜10000m/min 、特に2000〜6000m/min の速度で紡糸し、得られた長繊維紡糸束(トウ)を2〜6cmの長さに切断し、得られるステーブルを開繊し、ダブリングドラフトを掛けながら200〜700m/min の速度で練条し、得られたスライバを引き伸ばして繊維平行度を一定に揃えてロービング(粗糸)を作製し、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績されたものが好ましく使用できる。撚糸は、例えば、単糸または2本以上の単糸を引き揃えてS(右)撚もしくはZ(左)撚によって可撚された片撚糸、単糸または2本以上の単糸を引き揃えて下撚りされた可撚糸を2本以上引き揃えて上撚りを掛けた諸撚糸、その他強撚糸などを包含する。これらの撚糸の撚り回数は片撚糸、諸撚糸の普通撚糸で500〜2000回/m、強撚糸で2000回以上/mであることが好ましい。また、糸の番手と撚数との関係を表す比例定数の撚係数の範囲として、撚係数1.3〜3.0程度の甘撚り糸、撚係数3.0〜4.5程度の普通撚り糸、撚係数4.5〜5.5程度の強撚糸が挙げられ、特に撚り係数3.0〜4.5の範囲の普通撚り糸であることが好ましい。これらの短繊維紡績糸条は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウオータージェット方式、エアジェット方式)など、従来公知の紡績法及び設備を用いて製造することができる。
【0033】
本発明の基布用繊維布帛に使用される合成短繊維紡績糸条の番手としては10番手(591dtex)、20番手(295dtex)、30番手(197dtex)、40番手(148dtex)、60番手(97dtex)の範囲のもの、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)などの範囲の短繊維紡績糸条が好ましく使用できる。(これらの番手数は10の倍数に限定されるものではない。)短繊維紡績糸条が60番手(97dtex)より小さいと得られる帆布の引裂強力に劣り、また10番手(591dtex)より大きいと破断強力及び引裂強力は向上するが、糸の径が太くなりそれに伴って、帆布が厚くなると同時に、繊維布帛の織交点の凹凸が大きくなり平滑性に劣り好ましくない。これらの合成短繊維紡績糸条は単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの糸条を、経糸及び緯糸として用い、これを1インチ当り30〜160本の織密度で打込んで得られるスパン平織織布が好ましい。特に好ましくは20番手(295dtex)単糸、または20番手双糸を用いて1インチ当り経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で糸を打込んで得られるスパン平織織布が適して用いることができる。その他マルチフィラメント糸条を内層(芯)として外層(鞘)に短繊維糸条を巻き付けて紡績したコアスパン糸条から得られるスパン平織織布を使用することも好ましい。
【0034】
また、これらの繊維布帛の空隙率(目抜け)は、2〜12%であることが好ましい。空隙率が2%未満では打込み密度が緊密となり屈曲の遊びの自由度が極小化して得られる、帆布のフレキシブル性が不十分になることがあり、また基布の表裏面に形成されるポリオレフィン系樹脂層相互の融着性を低下させ、耐屈曲性、耐洗濯性などの動的耐久性を悪くすることがあるため好ましくない。また、空隙率が12%を越えるとフレキシブル性とポリオレフィン系樹脂相互の融着性は向上するが、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなりすぎて、得られる帆布の寸法安定性が不十分になることがあり、また帆布の引裂き強度と突起物に対する耐貫通性が低下するため実用的に問題となることがある。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることが好ましい。
【0035】
また、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂シート(1),(2)に使用される基布は、合成短繊維紡績糸からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、パラフィン系化合物から選ばれた1種以上を含有する熱可塑性樹脂バインダーの溶液によって乾燥付着率0.05〜3.0重量%で下処理されたものである。これらの化合物の乾燥付着率が0.05重量%未満であると得られる帆布の耐洗濯耐久性が不十分となることがあり、また乾燥付着率が3.0重量%を越えると繊維布帛とポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムとの密着性が悪くなり、得られる帆布の動的耐久性及び、耐洗濯性が不十分となることがある。
【0036】
前記下処理用熱可塑性樹脂バインダーに含まれるフッ素系化合物としては、炭素数が4〜20、好ましくは6〜12のパーフルオロアルキル基(Cn2n+1)と親水性基とを有する化合物で、水溶液中での表面張力が10〜15dyn /cmであるものが好ましい。これらのフッ素系化合物としては例えば、フルオロアルキル(C4 〜C10)カルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−〔フルオロアルキル(C6 〜C11)オキシ〕−1−アルキル(C3 〜C4 )スルホン酸ナトリウム、3−〔ω−フルオロアルカノイル(C6 〜C8 )−N−エチルアミノ〕−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−〔3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル〕−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸、パーフルオロアルキル(C7 〜C13)カルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4 〜C12)スルホン酸塩(Li,K,Na)、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6 〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6 〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩(K)、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6 〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。これらのフッ素系化合物はエマルジョン化されたものであっても良い。これらの繊維布帛に処理されたフッ素系化合物は100℃前後の予備乾燥が行われた後、150〜180℃で熱処理されることがパーフルオロ基の配向が整列され好ましい。
【0037】
またシリコーン系化合物としては、メチルクロロシラン、メチルポリシロキサン樹脂、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルケイ酸ソーダなどが挙げられるが、メチルハイドロジエンポリシロキサン及び、メチルハイドロジエンポリシロキサンと水酸基両末端ジメチルポリシロキサンとの併用物のエマルジョンが好ましく使用できる。またメチルハイドロジエンポリシロキサン分子間にシロキサン(Si−O−Si)架橋生成を促進させる触媒として2−エチルヘキシル酸または酢酸などの有機酸の金属塩を使用しても良く、繊維布帛に対する固着性を高めるためにアミノプラスト系樹脂を併用しても良い。繊維布帛に処理されたシリコーン系化合物は100℃前後の予備乾燥が行われた後、150〜180℃で熱処理されることがシロキサン架橋生成が促進され好ましい。
【0038】
さらにパラフィン系化合物としてはパラフィン系潤滑油留分をフィルタープレス脱ロウ化して、あるいは溶剤による脱ロウ化で抽出された炭素数20〜48であり、かつ融点が50〜70℃のn−パラフィンワックスが挙げられ、これらのパラフィン系化合物はトルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、アルコールなどの有機溶剤中に1〜10重量%濃度で溶解させて、あるいはトリエタノールアミン石鹸、脂肪酸石鹸、非イオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤などの乳化剤と、必要に応じてニカワ、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの保護コロイドを用いてエマルジョン化させたものが使用できる。これらのパラフィン系化合物はアルミニウム塩、ジルコニウム塩、4級アンモニウム塩、エチレン−尿素、N−メチロール脂肪酸アミド、尿素−ホルムアミド樹脂の長鎖アルキル基誘導体、メラミン−ホルムアミド樹脂の長鎖アルキル基誘導体などと併用しても良い。
【0039】
上記フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物には、熱可塑性樹脂バインダーとして、熱可塑性樹脂のエマルジョン、ディスパージョンなどの水分散体の形態、または有機系溶剤中に可溶化させた形態のものを使用することもでき、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びこれらの変性体樹脂などと併用しても良い。特にメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、無水イタコン酸、無水マレイン酸、N−メチルマレイミドなどによって変性されたエチレン系共重合体樹脂、及びアクリル系共重合体樹脂であることがポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層との密着性が向上するため好ましく使用できる。これら熱可塑性樹脂バインダーの添加率に特に制限はないが、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及び/又はパラフィン系化合物の添加量に対して等量〜10倍量であることが好ましい。添加量が等量未満だと熱可塑性樹脂バインダーの効果が十分に得られないことがあり、また10倍量を超えるとフッ素系化合物、シリコーン系化合物、パラフィン系化合物の疎水性効果が半減することがあり好ましくない。
【0040】
また、繊維布帛の下処理剤には上記フッ素系化合物、上記シリコーン系化合物、上記パラフィン系化合物以外に防黴剤を含有していることが好ましい。防黴剤としては、シリカゲル銀、銀ゼオライト、リン酸ジルコニウム銀塩などの銀系化合物、10,10′−オキシビスフェノキシアルシンに代表される有機ヒ素系化合物、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメートに代表される有機ヨード系化合物、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミック酸メチルなどのベンズイミダゾール系化合物、2−n−オクチル−4−イソチアゾリル−3−オンに代表されるイソチアゾリン系化合物、ビス(ピリジン−2−チオール−1−オキシド)亜鉛塩、2−ペリジチオール−1−オキサイドナトリウム塩などのピリチオン系化合物、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルに代表されるニトリル系化合物、2,3,5,6−テロラクロル−4−(メチルスルホニル)ピリジンに代表されるピリジン系化合物、N,N′,N″−トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ−S−トリアジンに代表されるトリアジン系化合物、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミドなどのN−ハロアルキルチオ系化合物などが例示できる。
【0041】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1)は上記基布の両面にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムが積層されている。積層の方法としては、ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムと基布との間に接着剤層を設けても良いし、接着剤なしで積層しても良い。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1),(2)に用いる積層方法は、ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの成型加工と同時に繊維布帛の片面ずつに熱ラミネートするカレンダートッピング法またはT−ダイ押出ラミネート法、あるいはカレンダー法、T−ダイ押出法、インフレーション法などによりポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを一担成型加工した後に、ラミネーターを使用して2枚のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを基布の両面に一度に熱圧着して繊維布帛との積層を行う方法などが挙げられるが、本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1),(2)の製造には、カレンダー法によって成型加工されたポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムと繊維布帛との熱圧着による製造方法が、効率的かつ経済的であり好ましい。このとき、帆布(1)においては基布の面積の2〜16%を占める目抜け空隙部を介して、表と裏の2枚のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムが熱溶融ブリッジするために、特別な接着剤の塗布及び余分な工程を必要とせずに良好な密着性と耐久性が得られる。
【0042】
また本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(2)は、上記基布の表面にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムが積層されていて、裏面に熱可塑性樹脂からなる裏面被覆層が形成されているものである。この裏面被覆層に使用される熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂及び、これらの変成体樹脂から選ばれた1種以上が挙げられる。裏面被覆層の形成は上記熱可塑性樹脂の有機溶剤中に可溶化、または分散された樹脂含有溶液、または水中に微粒子乳化分散されたエマルジョン及び強制分散されたディスパージョンなどを塗布して乾燥することによって行うことができる。
【0043】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとの乳化重合によって得られる60〜90重量%の酢酸ビニル成分を含有するものが挙げられる。また酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマー及び、バーサチック酸ビニルモノマーとの乳化重合によって得られる60〜90重量%の酢酸ヒニル及び、バーサチック酸ビニル成分を含有するものが挙げられる。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂エマルジョンとしては、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーとの乳化重合によって得られるもの、エチレンモノマーとアクリル酸エステルモノマーとの乳化重合によって得られるもの、エチレンモノマーとメタアクリル酸モノマーとの乳化重合によって得られるもの、エチレンモノマーとメタアクリル酸エステルモノマーとの乳化重合によって得られるものなど、(メタ)アクリル酸(エステル)成分含有量が60〜90重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂エマルジョンが挙げられる。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂の変性体樹脂としては、オレフィン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体をベース樹脂として、そのカルボキシル基の5〜90%を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂ディスパージョンが好ましく、アイオノマー樹脂を中和する金属イオンとしては、Zn++、Na+ の金属イオンであることが特に好ましい。またディスパージョンとしては酢酸ビニル成分含有量が10〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、(メタ)アクリル酸(エステル)成分含有量が10〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などの共重合体を水中に強制分散させたもの、あるいは上記共重合体樹脂のモノマーを水中で懸濁重合して得られるものなどが挙げられる。これらのエマルジョン及び、ディスパージョンの樹脂固形分含有量に限定はないが、樹脂固形分含有率20〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0044】
有機系溶剤に可溶化または分散させて使用できる裏面被覆層用エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと共重合成分とのラジカル重合法により製造された共重合体成分含有率が18〜38重量%、メルトインデックスが1.0〜10g/10min の共重合体樹脂が好ましく使用できる。共重合体成分含有率が18未満でメルトインデックスが1.0未満だと有機系溶剤に可溶化が困難となり、共重合体成分含有率が38を越え、またメルトインデックスが10を越えると有機系溶剤に可溶ではあるが、形成された樹脂被膜の樹脂強度が大幅に低下すると同時に、樹脂被膜にベタつきを生じて帆布の重ね合わせ時ブロッキングを起こし易くなるため好ましくない。これらの熱可塑性樹脂の有機系溶剤に対する固形分含有率としては特に制限はないが、上記熱可塑性樹脂の1種以上を10〜50重量%含有することが好ましい。
【0045】
また裏面被覆層用スチレン−アクリル酸共重合体樹脂としてはスチレンモノマーと(メタ)アクリル酸(エステル)とのラジカル重合によって得られるスチレン樹脂が挙げられる。例えばスチレンモノマーとアルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタアクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレートの他、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル、これらは単独、あるいは2種以上を併用してスチレンモノマーと共重合されるものが挙げられる。このスチレン−アクリル酸共重合体樹脂を、有機系溶剤中に10〜40重量%の固形分濃度で溶解させたものが使用できる。またスチレンモノマーと(メタ)アクリル酸(エステル)との乳化重合によって得られるスチレン−アクリル酸共重合体樹脂エマルジョン及びディスパージョンを使用することもできる。これらの樹脂液の樹脂固形分含有率は20〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0046】
また裏面被覆層用ポリウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート化合物とヒドロキシル基を分子構造内に2個以上有するポリオール化合物の中から選ばれた1種以上とイソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物との付加重合反応によって得られるものが使用できる。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物が用いられ、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物としては、分子量300〜10000、好ましくは、500〜5000であり、ジイソシアネート化合物と反応する量を含有するものが用いられる。ポリウレタン系樹脂は、用いるポリオールの種類に応じてポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂が使用でき、これらは有機系溶剤中に10〜40重量%の固形分濃度で溶解させたものが好ましい。
【0047】
またこれらには必要に応じてジイソシアネートまたは、イソシアネート基を分子内に3個以上含有するポリイソシアネート化合物を添加して、その被膜強度及び、耐熱性などを向上、改善させることができる。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(2)の裏面被覆層に用いられるポリウレタン樹脂としては、上記ジイソシアネート化合物の中から特に脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)ジイソシアネートとポリオール化合物から得られるポリウレタン系樹脂が耐光性に優れ好ましい。またポリウレタン系樹脂エマルジョンとしては、上記ジイソシアネートと上記ポリオール化合物との乳化重合によって得られるポリウレタン系樹脂が使用できる。これらの樹脂固形分含有率は20〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0048】
また本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(2)の裏面被覆層が上記熱可塑性樹脂から選ばれた2種以上のブレンド体によって構成される場合において、その構成種として少なくともポリウレタン系樹脂を10〜60重量%含有することが裏面被覆層の耐摩耗性、及び耐屈曲性の観点で好ましい。
【0049】
これらのエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂及び、これらの変成体樹脂には有機系顔料、無機系顔料の着色剤を添加して裏面被覆層を着色することができる。有機系顔料及び無機系顔料としては従来公知のもの、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジコ系、ベンチジン系、チオインジコ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、酸化チタン、カドミウム系、酸化鉄系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。これらの顔料はフラッシュドカラー、水性液状カラー、油性液状カラー、ペーストカラー(ビニルトーナーカラー)、ドライカラー、潤性カラー、マスターバッチ、カラードペレットなどの形態に調整された加工顔料を使用することが作業性、発色安定性、の面で特に好ましい。
【0050】
裏面被覆層を形成する上記熱可塑性樹脂の有機系溶剤可溶化溶液または分散液及び、エマルジョンまたはディスパージョンの塗布の方法としては、特別に限定される物ではないが、これらの溶剤系または水系の塗工液を繊維布帛に均一、かつ均質に塗布できる様なコーティング方式であれば良く、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の裏面被覆層の厚みに特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせなどによって、固形分付着量で50〜350g/m2 、好ましくは、100〜250g/m2 に形成されるのが良い。固形分付着量が50g/m2 よりも少ないと、裏面被覆層の摩耗耐久性が十分に得られなく、また、350g/m2 を超えるとコーティング処理の回数が増えるだけでなく本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布の質量が重くなるため好ましくない。
【0051】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布において裏面被覆層は、短繊維紡績糸条からなる繊維布帛の片面にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層が積層して設けられた中間体基材のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層非形成面に対して上記コーティング方法の何れかによって裏面被覆層が形成されても良く、また短繊維紡績糸条かなる繊維布帛の片面に裏面被覆層を上記コーティング方法の何れかによって形成してから、その反対面にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層を形成していてもよい。また裏面被覆層は短繊維紡績糸条からなる繊維布帛の両面に形成されていて、そのどちらか一方の面上にポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム層を積層して設け、その反対面を裏面被覆層として残した形態のものであっても良い。繊維布帛の両面に裏面被覆層を形成する方法に関しては上記コーティング方法の何れかによって繊維布帛の片面ずつに裏面被覆層を設けても良く、あるいは繊維布帛を熱可塑性樹脂含有の塗工液浴中に浸漬して、これを引き上げ2本のゴムロールで圧搾して、繊維布帛に塗工液を含浸させると同時に余分な塗工液を除去したものを熱風乾燥して樹脂被膜化させたものであってもよい。
【0052】
本発明の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布(1),(2)の接合は、高周波ウエルダーによる融着によって接合を容易に行うことができる。高周波ウエルダー接合法としては、具体的には、2枚以上の本発明のポリオレフィン系樹脂帆布または、本発明のポリオレフィン系樹脂帆布と熱融着しうる他の熱可塑性樹脂成型物の一部とを重ね合わせ、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間に置き、接合する部分にウエルドバーを加圧しながら電極に高周波(1〜200MHz )で発振する電位差を印加し、ウエルドバーで加圧、印加した部分に発生する熱可塑性樹脂の分子摩擦熱により、これらの重ね合わせ部分を熱融着して接着、シールするもので、この場合熱可塑性樹脂の誘電損率すなわち、誘電率(ε)と誘電正接(tanδ)との積量(ε.tanδ)が高周波で発振する内部分子摩擦熱の大きさに関係している。誘電正接は、熱可塑性樹脂により吸収された高周波電磁放射線エネルギーが熱に変換される部分の関数であり、誘電損率は少なくとも0.01以上であることが好ましい。高周波ウエルダー融着機としては市販の機種、例えば、山本ビニター(株)のYC−7000FT、YF−7000など、精電舎電子工業(株)のKM−5000TA、KA−7000TEなど、クインライト電子精工(株)のLW−4000W、LW−4060Sなどが使用できる。
【0053】
【実施例】
次ぎに実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記実施例、及び比較例において本発明のポリオレフィン系樹脂帆布の柔軟性、繰返し屈曲疲労耐久性及び耐摩耗性の評価、防汚性の評価、及び高周波ウエルダー融着性の評価など試験方法は以下の通りである。
【0054】
(I)ポリオレフィン系樹脂帆布の柔軟性の評価
70mm幅×30mm長に採取した小片をまるめて直径20mm×30mmサイズの円筒を作製し(のりしろはシアノアクリレート系瞬間接着剤で固定)JIS規格K−6382の圧縮試験を行い、50%圧縮時の応力(20℃で円筒の直径が10mmまで潰した状態)を求めて比較し、その数値が少ない程帆布の柔軟性が優れていると判断した。柔軟性を評価する試験機にはループ・ステフネス・テスター((株)東洋精機製作所製)を使用した。
○:柔軟性良好(130g以下)
△:やや柔軟性に劣る(130〜149g)
×:柔軟性に劣る(150g以上)
【0055】
(II)ポリオレフィン系樹脂帆布の繰返し屈曲疲労耐久性の評価
JIS規格K−6301に規定の屈曲試験30000回を行い、試料の表面状態を観察し下記判定基準に従って帆布の屈曲疲労強さを評価した。繰返し屈曲疲労強さを評価する試験機にはデマッチャ・フレキシング・テスター((株)安田精機製作所製)を使用した。また試験機に装着する試料の形態は、帆布の折曲げと折畳みに対する耐久性が評価できる様に、50mm幅×150mm長のサイズとし、幅の中心25mmから左右2つ折りに重ね合わせた25mm幅×150mm長のサイズとした。
○:フィルム及び、帆布本体に異常がない状態。
△:フィルム表面に屈曲疲労による軽度の亀裂の発生を認めるか、
またはフィルムがスパン布から部分的に剥がれて浮き上がっている状態。
×:フィルム表面に屈曲疲労による重度の亀裂(穴あき)の発生を認める状態。
またはフィルムがスパン布から剥がれて浮き上がっている状態。
【0056】
(III )ポリオレフィン系樹脂帆布の耐摩耗性の評価
JIS規格L−1096に規定の摩耗強さ試験C法(テーバ形法)により帆布表面の摩耗性を評価した。摩耗強さを評価する試験機にはロータリー・アブレージョン・テスター((株)東洋精機製作所製)を使用し、摩耗論(H−18)、摩耗荷重1kg、摩耗回数1000回の条件で摩耗試験を行い、試験前後の試料の質量差(摩耗減量)を求めて比較し、その数値が少ない程帆布の耐摩耗性が優れていると判断した。
【0057】
(IV)ポリオレフィン系樹脂帆布の防汚性の評価
ポリオレフィン系樹脂帆布を4月〜7月の3ヶ月間屋外で南向き30°に曝露し、その汚れ度合いをブランクとのΔE値(JIS規格Z−8729)で評価した。色差はJUKI(株)製の光学色差計(JP7200F)を用いた。
【0058】
(V)高周波ウエルダー融着性の評価
2枚のポリオレフィン系樹脂帆布の端末を4cm幅で直線状に重ね合わせ、4cm×30cmのウエルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凸部高さ0.5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凹部深さ0.5mm)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用いてポリオレフィン系樹脂帆布の高周波融着接合を行った。また融着接合部を含む3cm幅の試料を採取し、融着接合部の剪断試験(JIS規格I−1096)を行い、接合部の破壊状態を以下の判定基準によって評価した。
〈高周波融着性〉
○:融着が容易である。
※ウエルダー融着条件:融着時間5秒、冷却時間5秒陽極電流0.8A、ウエルドバー温度40〜50℃
△:融着条件を強く、かつ長くすることで融着可能である。
※ウエルダー融着条件:融着時間10秒、冷却時間5秒陽極電流1.0A、ウエルドバー温度40〜60℃
×:融着条件を強く、かつ長く設定しても融着しない。
※ウエルダー融着条件:融着時間10秒、冷却時間5秒陽極電流1.3A、ウエルドバー温度40〜60℃
【0059】
〔実施例1〕
メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.5:密度0.898:日本ポリケム(株))60重量部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))40重量部とからなるポリオレフィン系樹脂ブレンド100重量部に、リン酸エステル系滑剤(商標:LTP−2:川研ファインケミカル(株))1.0重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商標:バイオソープ510:共同薬品(株))0.3重量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(商標:チヌビン770:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))0.2重量部と、着色顔料3重量部〔(有機系顔料カラードペレット:商標:HCM1617ブルー:シアニンブルー(α)含有率20重量%:大日精化工業(株))1重量部+無機系顔料カラードペレット:商標:HCM2060ホワイト:二酸化チタン(R)60重量%:大日精化工業(株))2重量部〕とを配合し得られたコンパウンドをバンバリーミキサーで溶融混練し、この混練されたコンパウンドを150℃に設定された熱ロール(2本ロール)で5分間、さらに均一に混練した後、この混練組成物を、150℃の条件下におけるカレンダー圧延成型に供して、0.16mm厚の、密度:0.919であり、かつ、酢酸ビニル成分含有率:10重量%の青色のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを形成した。ポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなり、別に、下記シリコーン系化合物による下処理を施された平織スパン布〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/2.54cm:空隙率4.2%:質量228g/m2 〕を作製し、これを基布として、その両面に上記青色フィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.56mm、質量518g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布(1)を得た。
【0060】
Figure 0003636294
上記シリコーン系化合物による下処理組成物浴中に、上記ポリエステル平織スパン布を浸漬し、スパン布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量110g/m2 )次いで100℃の熱風炉中2分間の乾燥と160℃での熱処理を2分間行った。下処理によって得られたポリエステル平織スパン布含有基布の質量は229.8g/m2 であった。(シリコーン系化合物乾燥付着量1.8g/m2 )試験結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例2〕
実施例1で使用したシリコーン系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布を、下記パラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm:空隙率3.8%:質量205g/m2 〕に置き換えた以外は実施例1と同一のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム配合及び、製造手順に従って厚さ0.57mm、質量495g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。但しラミネーターの温度設定は130℃とした。
【0062】
Figure 0003636294
上記パラフィン系化合物による下処理組成物の浴中に上記ポリプロピレン平織スパン布を浸漬し、スパン布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量103g/m2 )次いで100℃の熱風炉中2分間の乾燥させた。この下処理によって得られたポリプロピレン平織スパン布の質量は206.2g/m2 であった。(シリコーン系化合物付着量1.2g/m2 )試験結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例3〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成を、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))60重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))40重量部の合計量100重量部とし、合成非晶質シリカ(商標:ニップシールE200:日本シリカ工業(株):含水率6重量%:平均粒子径3μm)を5.4重量部配合した以外は実施例1と同一のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成とした。このフィルムの密度は0.926であり、かつ、酢酸ビニル成分を7.6重量%含有していた。また繊維布帛を下記フッ素系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)48本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)44本/2.54cm:空隙率7.3%:質量173g/m2 〕とした以外は実施例1に同様の製造手順に従って厚さ0.54mm、質量464g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0064】
Figure 0003636294
上記フッ素系化合物による下処理組成物の浴中に上記ポリエステル平織スパン布を浸漬し、スパン布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量104g/m2 )次いで100℃の熱風炉中2分間の乾燥と160℃での熱処理を2分間行った。下処理によって得られたポリエステル平織スパン布の質量は174g/m2 であった。(フッ素系化合物付着量1.0g/m2 )試験結果を表1に示す。
【0065】
〔実施例4〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成を、実施例3と同一とした。また繊維布帛を実施例2と同一のパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)44本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)38本/2.54cm:空隙率8.6%:質量194g/m2 〕とした以外は実施例1及び実施例2に同様の製造手順に従って厚さ0.56mm、質量484g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例5〕
実施例1のメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.8:密度0.898:日本ポリケム(株))60重量部を70重量部に変更し、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))40重量部を20重量部に減量し、新たにエチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206:MFR2.0:MMA含有量20重量%:住友化学工業(株))10重量部を追加した合計量100重量部とし、合成非晶質シリカ(商標:ニップシールE200:日本シリカ工業(株):含水率6重量%:平均粒子径3μm)を11.7重量部配合したこと以外は実施例1と同様の配合を行い0.16mm厚の密度が0.913であり、かつ、酢酸ビニル成分とメチルメタアクリレート成分の合計含有量が7重量%である青に着色したポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを得た。これ以外は実施例1で使用したシリコーン系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/2.54cm:空隙率4.2%:質量228g/m2 〕の両面に上記組成のフィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.56mm、質量518g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表1に示す。
【0067】
〔実施例6〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成を、実施例5と同一とした。また繊維布帛を実施例2と同一のパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm:空隙率3.8%:質量205g/m2 〕とした以外は実施例1及び実施例2に同様の製造手順に従って厚さ0.57mm、質量496g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例7〕
実施例3のポリオレフィン系樹脂ブレンド100重量部の組成を、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))60重量部を40重量部に変更し、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))40重量部をそのままとし、新たにエチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206:MFR2.0:MMA含有量20重量%:住友化学工業(株))20重量部を追加した組成とした以外は実施例1と同一の配合を行い0.16mm厚の密度が0.931であり、かつ、酢酸ビニル成分とメチルメタアクリレート成分の合計含有量が11重量%である青に着色したポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムを得た。また繊維布帛を実施例3と同一のフッ素系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)48本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)44本/2.54cm:空隙率7.3%:質量173g/m2 〕を使用した以外は実施例1及び実施例3に同様の製造手順に従って厚さ0.54mm、質量464g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例8〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成を、実施例7と同一とした。また繊維布帛を実施例4と同一のパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)44本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)38本/2.54cm:空隙率8.6%:質量194g/m2 〕とした以外は実施例1及び実施例4に同様の製造手順に従って厚さ0.56mm、質量485g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
Figure 0003636294
【0071】
〔実施例1〜実施例8の効果〕
実施例1〜実施例8のメタロセン系触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られた直鎖状低密度ポリエチレンを主体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とをブレンドして含み、かつ、酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5〜30重量%の範囲内(実施例は7〜11重量%)であり、また密度が0.910〜0.938g/m2 の範囲内(実施例は0.919〜0.931g/m2 )であるポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなるフィルム層をスパン布の両面に積層して得られたポリオレフィン系樹脂帆布は何れも柔軟性に優れると同時に繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性にも優れていた。また実施例1〜実施例8のポリオレフィン系樹脂帆布は高周波ウエルダー性(融着性)が良好で、陽極電流値が0.8A、融着時間5秒、冷却時間5秒、ウエルドバー温度40〜50℃の条件で容易に融着接合を行うことが可能であった。これら接合部の剪断破壊の状態は全て本体破壊に至る程良く接合されていた。またこれら実施例のポリオレフィン系樹脂帆布を屋外曝露したところ、目立った汚れの付着がなく水色に着色された表面外観を美麗に維持していて、帆布の表面に付着した曝露汚れは水洗いによって簡単に清拭可能であった。またさらに本発明のポリオレフィン系樹脂帆布は降雨によって雨水が積層体内部のスパン布にまで染み込むことがなく、長期間使用に伴う黴の生育及び発生は全く認められなかった。
【0072】
〔実施例9〕
実施例1で使用したシリコーン系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/2.54cm:空隙率4.2%:質量228g/m2 〕の片面に実施例1と同一のフィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、次に上記片面積層体のフィルム非積層面に下記EVA▲1▼組成からなる裏面被覆層を形成して厚さ0.50mm、質量495g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0073】
Figure 0003636294
上記片面積層体のフィルム非積層面に上記EVA▲1▼組成からなる熱可塑性樹脂エマルジョン組成物(固形分58.6重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は126g/m2 であった。試験結果を表2に示す。
【0074】
〔実施例10〕
実施例2で使用したパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm:空隙率3.8%:質量205g/m2 〕の片面に実施例2と同一のフィルムを130℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、次に上記片面積層体のフィルム非積層面に下記EVA▲2▼組成からなる裏面被覆層を形成して厚さ0.52mm、質量464g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0075】
Figure 0003636294
上記片面積層体のフィルム非積層面に上記EVA▲2▼組成からなる熱可塑性樹脂エマルジョン組成物(固形分58.6重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は134g/m2 であった。試験結果を表2に示す。
【0076】
〔実施例11〕
実施例3で使用したフッ素系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)48本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)44本/2.54cm:空隙率7.3%:質量173g/m2 〕を下記EVA▲1▼/ウレタン組成からなる水系樹脂溶液(固形分54.2重量%)浴中に浸漬し、スパン布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量121g/m2 )次いで100℃の熱風炉中3分間の乾燥を行った。2回の浸漬処理によって得られた樹脂被覆ポリエステル平織スパン布の質量は268g/m2 であった。次に樹脂被覆ポリエステル平織スパン布の片面に実施例3と同一のフィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.49mm、質量433g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0077】
Figure 0003636294
試験結果を表2に示す。
【0078】
〔実施例12〕
実施例4で使用したパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)44本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)38本/2.54cm:空隙率8.6%:質量194g/m2 〕の片面に下記EVA▲2▼/ウレタン組成からなる水系樹脂溶液(固形分54.2重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は115g/m2 であった。次に裏面被覆層形成ポリプロピレン平織スパン布のもう一方の片面に下記組成からなる接着層を形成し、この接着層に実施例4と同一のフィルムを130℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.50mm、質量446g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0079】
Figure 0003636294
上記裏面被覆層が形成されたポリプロピレン平織スパン基布の反対面に上記組成からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン組成物(固形分33.3重量%)を80メッシュスクリーン線のグラビアロールを装着したコーターを用いて乾燥付着重量8g/m2 となるように塗布し、100℃の熱風乾燥炉で2分間乾燥させて接着剤層を形成した。試験結果を表2に示す。
【0080】
〔実施例13〕
実施例1で使用したシリコーン系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/2.54cm:空隙率4.2%:質量228g/m2 〕の片面に実施例5と同一のフィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、次に上記片面積層体のフィルム非積層面に下記アクリル/ウレタン組成からなる裏面被覆層を形成して厚さ0.50mm、質量476g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0081】
Figure 0003636294
上記片面積層体のフィルム非積層面に上記アクリル/ウレタン組成からなる熱可塑性樹脂エマルジョン組成物(固形分43.9重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は103g/m2 であった。試験結果を表2に示す。
【0082】
〔実施例14〕
実施例2で使用したパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)36本/2.54cm:空隙率3.8%:質量205g/m2 〕の片面に実施例6と同一のフィルムを130℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、次に上記片面積層体のフィルム非積層面に下記スチレン−アクリル/ウレタン組成からなる裏面被覆層を形成して厚さ0.52mm、質量464g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0083】
Figure 0003636294
上記片面積層体のフィルム非積層面に上記スチレン−アクリル/ウレタン組成からなる熱可塑性樹脂エマルジョン組成物(固形分49.6重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は112g/m2 であった。試験結果を表2に示す。
【0084】
〔実施例15〕
実施例3で使用したフッ素系化合物による下処理を施したポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)48本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)44本/2.54cm:空隙率7.3%:質量173g/m2 〕を下記アクリル変性体からなる水系樹脂溶液(固形分38.9重量%)浴中に浸漬し、スパン布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量107g/m2 )次いで100℃の熱風炉中3分間の乾燥を行った。2回の浸漬処理によって得られた樹脂被覆ポリエステル平織スパン布の質量は254g/m2 であった。次に樹脂被覆ポリエステル平織スパン布の片面に実施例7と同一のフィルムを140℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.49mm、質量427g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0085】
Figure 0003636294
試験結果を表2に示す。
【0086】
〔実施例16〕
実施例4で使用したパラフィン系化合物による下処理を施したポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)44本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)38本/2.54cm:空隙率8.6%:質量194g/m2 〕の片面に下記EVA▲1▼/アクリル変性体組成からなる水系樹脂溶液(固形分42.6重量%)を3mm厚のドクターナイフを用いて塗布し、100℃の熱風乾燥炉で3分間乾燥させて、青に着色した帆布外観を有する裏面被覆層を形成した。2回の塗工によって形成された裏面被覆層の形成質量は100g/m2 であった。次に裏面被覆層形成ポリプロピレン平織スパン布のもう一方の片面に下記組成からなる接着層を形成し、この接着層に実施例8と同一のフィルムを130℃に設定したラミネーターで熱圧着して貼り合わせ、厚さ0.49mm、質量439g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。
【0087】
Figure 0003636294
上記裏面被覆層が形成されたポリプロピレン平織スパン基布の反対面に上記組成からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン組成物(固形分33.3重量%)を80メッシュスクリーン線のグラビアロールを装着したコーターを用いて乾燥付着重量8g/m2 となるように塗布し、100℃の熱風乾燥炉で2分間乾燥させて接着剤層を形成した。試験結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
Figure 0003636294
【0089】
〔実施例9〜実施例16の効果〕
実施例9〜実施例16のメタロセン系触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られた直鎖状低密度ポリエチレンを主体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とをブレンドして含み、かつ、酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5〜30重量%の範囲内(実施例は7〜11重量%)であり、また密度が0.910〜0.938g/m2 の範囲内(実施例は0.919〜0.931g/m2 )であるポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなるフィルム層をスパン布の片面に積層し、もう一方の片面に熱可塑性樹脂からなる裏面被覆層を形成して得られたポリオレフィン系樹脂帆布は何れも柔軟性に優れると同時に繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性にも優れていた。また実施例9〜実施例16のポリオレフィン系樹脂帆布は高周波ウエルダー性(融着性)が良好で、陽極電流値が0.8A、融着時間5秒、冷却時間5秒、ウエルドバー温度40〜50℃の条件で容易に融着接合を行うことが可能であった。これら接合部の剪断破壊の状態は全て本体破壊に至る程良く接合されていた。またこれら実施例のポリオレフィン系樹脂帆布を屋外曝露したところ、目立った汚れの付着がなく水色に着色された表面外観を美麗に維持していて、帆布の表面に付着した曝露汚れは水洗いによって簡単に清拭可能であった。またさらに本発明のポリオレフィン系樹脂帆布は降雨によって雨水が積層体内部のスパン布にまで染み込むことがなく、長期間使用に伴う黴の生育及び発生は全く認められなかった。
【0090】
〔比較例1〕
実施例1のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.5:密度0.898:日本ポリケム(株))を全量省き、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))100重量部からなる単位組成とした以外は実施例1と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.56mm、質量532g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0091】
〔比較例2〕
実施例2のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))を全量省き、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.8:密度0.898:日本ポリケム(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例2と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.57mm、質量472g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0092】
〔比較例3〕
実施例3のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))を全量省き、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例3と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.54mm、質量444g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0093】
〔比較例4〕
実施例4のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))を全量省き、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例4と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.56mm、質量498g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0094】
〔比較例5〕
実施例5のメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:カーネルKF360:MFR3.8:密度0.898:日本ポリケム(株))70重量部をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたポリエチレン樹脂(商標:ジェイレクスHD5008−2:MFR0.85:密度0.950:日本ポリオレフィン(株))70重量部と置き換えた以外は実施例5と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.62mm、質量537g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0095】
〔比較例6〕
実施例6のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたポリエチレン樹脂(商標:ジェイレクスHD5008−2:MFR0.85:密度0.950:日本ポリオレフィン(株))20重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))70重量部及び、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206:MFR2.0:MMA含有量20重量部:住友化学工業(株))10重量部とした以外は実施例6と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.57mm、質量511g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0096】
〔比較例7〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂(商標:スミカセンα FZ202−0:MFR2.0:密度0.921:住友化学工業(株))100重量部の単体とした以外は実施例7と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.54mm、質量470g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0097】
〔比較例8〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂(商標:スミカセンα FZ202−0:MFR2.0:密度0.921:住友化学工業(株))80重量部のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))20重量部とした以外は実施例8と同一の配合、及び手順に沿って厚さ0.56mm、質量466g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
Figure 0003636294
【0099】
〔比較例1〜比較例8の評価〕
比較例1、比較例4、比較例8のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性が良好で、高周波融着性も可能であったが繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が不十分で実用性に問題があった。また比較例2、比較例3、比較例7のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性と繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が良好であったが高周波融着が不能(比較例7は極めて困難)であり実用性に欠けるものであった。また比較例5、比較例6のポリオレフィン系樹脂帆布は高周波融着性が可能で、しかも繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性にも優れているものであったが風合いの硬い帆布であった。これらの比較例のポリオレフィン系樹脂帆布は何れもメタロセン系触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンと、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とをブレンドして含まないものであるか、または含んでいても酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5重量%に満たないもの、あるいは密度が0.938g/m2 を越えるものであった。結果を表3の比較例1〜比較例8に示した。
【0100】
〔比較例9〕
実施例1のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.5:密度0.898:日本ポリケム(株))を全量省き、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))100重量部からなる単位組成とした以外は実施例1と同一の配合とした。但しポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)52本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)46本/2.54cm:空隙率0.8%:質量238g/m2 〕またはシリコーン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.56mm、質量526g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0101】
〔比較例10〕
実施例2のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))を全量省き、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.5:密度0.898:日本ポリケム(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例2と同一の配合とした。但しポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)40本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)40本/2.54cm:空隙率0.6%:質量224g/m2 〕またパラフィン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.57mm、質量500g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0102】
〔比較例11〕
実施例3のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))を全量省き、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例3と同一の配合とした。但しポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)38本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)36本/2.54cm:空隙率22%:質量148g/m2 〕またフッ素系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.54mm、質量438g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0103】
〔比較例12〕
実施例4のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成からメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(2)(商標:エボリューSP2020:MFR1.7:密度0.917:三井化学(株))を全量省き、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))100重量部からなる単体組成とした以外は実施例4と同一の配合とした。但しポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)36本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)30本/2.54cm:空隙率20%:質量166g/m2 〕またパラフィン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.57mm、質量456g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0104】
〔比較例13〕
実施例5のメタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(1)(商標:カーネルKF360:MFR3.8:密度0.898:日本ポリケム(株))70重量部をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたポリエチレン樹脂(商標:ジェイレクスHD5008−2:MFR0.85:密度0.950:日本ポリオレフィン(株))70重量部と置き換えた以外は実施例5と同一の配合とした。但しポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)34本/2.54cm×緯糸20番手双糸(590dtex)31本/2.54cm:空隙率22%:質量196g/m2 〕またシリコーン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.56mm、質量486g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0105】
〔比較例14〕
実施例6のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたポリエチレン樹脂(商標:ジェイレクスHD5008−2:MFR0.85:密度0.950:日本ポリオレフィン(株))20重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))70重量部及び、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206:MFR2.0:MMA含有量20重量部:住友化学工業(株))10重量部とした以外は実施例6と同一の配合とした。但しポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸24番手双糸(492dtex)30本/2.54cm×緯糸24番手双糸(492dtex)30本/2.54cm:空隙率20%:質量185g/m2 〕またパラフィン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.57mm、質量478g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0106】
〔比較例15〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂(商標:スミカセンα FZ202−0:MFR2.0:密度0.921:住友化学工業(株))100重量部の単体とした以外は実施例7と同一の配合とした。但しポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸14番手単糸(422dtex)54本/2.54cm×緯糸14番手単糸(422dtex)48本/2.54cm:空隙率0.6%:質量182g/m2 〕またフッ素系化合物による平織スパン布への下処理は省略し厚さ0.54mm、質量477g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0107】
〔比較例16〕
ポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルムの組成をチーグラー・ナッタ触媒(Z−N触媒)の存在下で重合されたエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂(商標:スミカセンα FZ202−0:MFR2.0:密度0.921:住友化学工業(株))80重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバフレックスP1905:MFR2.5:VA含有量19重量%:三井デュポンポリケミカル(株))20重量部とした以外は実施例8と同一の配合とした。但しポリプロピレン(PP)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布の糸の打込み本数を次の様に変更した繊維布帛を使用した。〔糸密度:経糸24番手単糸(246dtex)52本/2.54cm×緯糸24番手単糸(246dtex)46本/2.54cm:空隙率0.4%:質量210g/m2 〕またパラフィン系化合物による平織スパン布への下処理は省略し、厚さ0.56mm、質量500g/m2 のポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
Figure 0003636294
【0109】
〔比較例9〜比較例16の評価〕
比較例9、比較例12、比較例16のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性が良好で、高周波融着性も可能であったが繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が不十分で実用性に問題があった。また比較例10、比較例11、比較例15のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性と繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が良好であったが高周波融着が不能(比較例15は極めて困難)であり実用性に欠けるものであった。また比較例13、比較例14のポリオレフィン系樹脂帆布は高周波融着性が可能で、しかも繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性にも優れているものであったが風合いの硬い帆布であった。これらの比較例のポリオレフィン系樹脂帆布は何れもメタロセン系触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンと、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とをブレンドして含まないものであるか、または含んでいても酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5重量%に満たないもの、あるいは密度が0.938g/m2 を越えるものであった。またさらに比較例9〜比較例16のポリオレフィン系樹脂帆布はスパン布の下処理(パラフィン系化合物、シリコーン系化合物、フッ素系化合物)を省いたことによって長期の屋外使用時に雨水が積層体内部のスパン布にまで染み込んで、黴の生育及び発生の問題を引き起こした。またスパン布の目合い空隙率を2%に満たないものとすることによって繰返し屈曲疲労耐久性が悪くなり実用性がないものとなった。(比較例9、比較例10、比較例15、比較例16)またスパン布の目合い空隙率を12%を越えるものとすることによって柔軟性は増したが、突起物による耐突き刺し性が悪くなり帆布として実用性がないものとなった。(比較例11、比較例12、比較例13、比較例14)
【0110】
〔比較例17〕
実施例9のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例1の組成とした以外は実施例9と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0111】
〔比較例18〕
実施例10のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例2の組成とした以外は実施例10と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0112】
〔比較例19〕
実施例11のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例3の組成とした以外は実施例11と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0113】
〔比較例20〕
実施例12のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例4の組成とした以外は実施例12と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0114】
〔比較例21〕
実施例13のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例5の組成とした以外は実施例13と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0115】
〔比較例22〕
実施例14のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例6の組成とした以外は実施例14と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0116】
〔比較例23〕
実施例15のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例7の組成とした以外は実施例15と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0117】
〔比較例24〕
実施例16のポリオレフィン系樹脂ブレンドフィルム組成を比較例8の組成とした以外は実施例16と同様の手段によってポリオレフィン系樹脂帆布を得た。試験結果を表5に示す。
【0118】
【表5】
Figure 0003636294
【0119】
〔比較例17〜比較例24の評価〕
比較例17、比較例20、比較例24のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性が良好で、高周波融着性も可能であったが繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が不十分で実用性に問題があった。また比較例18、比較例19、比較例23のポリオレフィン系樹脂帆布は柔軟性と繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性が良好であったが高周波融着が不能(比較例23は極めて困難)であり実用性に欠けるものであった。また比較例21、比較例22のポリオレフィン系樹脂帆布は高周波融着性が可能で、しかも繰返し屈曲疲労耐久性、及び耐摩耗性にも優れているものであったが風合いの硬い帆布であった。これらの比較例のポリオレフィン系樹脂帆布は何れもメタロセン系触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンと、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とをブレンドして含まないものであるか、または含んでいても酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計含有量が5重量%に満たないもの、あるいは密度が0.938g/m2 を越えるものであった。
【0120】
【発明の効果】
本発明は従来のポリオレフィン系樹脂シートでは不可能とされていた柔軟な風合いと優れた繰返し屈曲疲労耐久性と耐摩耗性を有し、かつ高周波融着可能なポリオレフィン系樹脂製帆布を容易に得ることを可能にする。従って本発明により得られるポリオレフィン系樹脂製帆布は、トラック幌、野積みシート、屋形テント、テント倉庫など、従来軟質ポリ塩化ビニル樹脂製品が使用されてきた用途に適して用いることができ、また軽量の防水性シートとして広い分野において利用可能な極めて有用な帆布である。

Claims (9)

  1. 基布と、その両面に積層されており、かつポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物からなるフィルム層とを含み、
    前記基布が、合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物から選ばれた1種以上を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理を施して調製されたものであり、
    前記フィルム層用ポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物が、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含み、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂との併用物をブレンド成分として含み、前記組成物中の酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分との合計含有量が、前記主樹脂成分と前記ブレンド成分との合計重量に対し5〜30重量%であり、かつ前記組成物の密度が0.910〜0.938g/cm3である
    ことを特徴とする高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  2. 基布と、その表面に積層されており、かつポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物からなる表面フィルム層と、前記基布の裏面上に形成された裏面被覆層とを含み、
    前記基布が、合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛に、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びパラフィン系化合物から選ばれた1種以上を含む熱可塑性樹脂バインダーによる下処理を施して調製されたものであり、
    前記表面フィルム層用ポリオレフィン系樹脂ブレンド組成物が、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含み、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂の併用物をブレンド成分として含み、前記組成物中の酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分との合計含有量が、前記主樹脂成分と前記ブレンド成分との合計重量に対し5〜30重量%であり、かつ前記組成物の密度が0.910〜0.938g/cm3であり、
    前記裏面被覆層が、熱可塑性樹脂を含有する溶液を前記基布の裏面に塗布し、乾燥して形成され、かつキャンバス地状外観を有する、
    ことを特徴とする高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  3. 前記裏面被覆層を形成する熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂及び、これらの変成体樹脂から選ばれた1種以上である、請求項2に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  4. 前記熱可塑性樹脂を含有する溶液が、有機系溶剤または水を媒体とする、請求項2又は3に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂ブレンド系組成物からなるフィルム層が、合成非晶質シリカを3〜20重量%含有する、請求項1又は2に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  6. 前記裏面被覆層が、合成非晶質シリカを3〜20重量%含有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  7. 前記合成短繊維紡績糸条からなる繊維布帛の織組織空隙率が2〜12%である、請求項1又は2に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  8. 前記基布に含まれる下処理用熱可塑性樹脂バインダーの、前記繊維布帛重量に対する乾燥付着率が0.05〜3.0重量%である、請求項1又は2に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布。
  9. 前記メタロセン系触媒が、シクロペンタジエニル誘導体またはインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを含む触媒系である、請求項1又は2に記載の高周波融着性ポリオレフィン系樹脂帆布
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