JP3654348B2 - ポリオレフィン系樹脂高強度膜材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリオレフィン系樹脂高強度膜材に関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、特に高強度、高引裂強度が要求される、フレキシブルコンテナ、オイルフェンス、大型テント、土木用シート、遮音シートなどの用途に好適であって、かつ高周波融着可能なポリオレフィン系樹脂高強度膜材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、長繊維平織基布を用い、その表裏両面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂層を積層複合して製造されたターポリンは、建築養生シート、フレキシブルコンテナ、オイルフェンス、軒出しテント、遮音シートなどの用途に広く普及している産業資材である。特にこれらの産業資材用途において、ターポリンに十分な破壊強度と、十分な耐引裂強度が要求される場合には、基布に用いる長繊維織物に用いられる糸条の繊度(dtex)を大きくしたり、あるいは織組織の経・緯糸打込み本数を増やして、より高密度化するなどの手段によって上記要求を満すターポリンを得ることが可能である。また、通常、ターポリンは糸条間に空隙のある繊維織物(目抜け平織りなど)を基布として用い、その両面上に軟質ポリ塩化ビニル樹脂層を被覆し、基布の糸条間空隙部で表裏樹脂層同士を部分的に熱融合接着することによって、屈曲耐久性、縫製部強度により優れたターポリンを得ることができる。すなわちターポリンの性能と耐久性とは、適度の糸条間空隙を有し、適度な繊度(dtex)の糸条を用い、かつ適切な織組織の糸打込み密度を有する繊維織物を基布に用いることによって向上させることができるのである。
【0003】
従来よりも高強度・高引裂き強度により優れたターポリンを得るには、それに用いる基布として、(繊度の高い糸条による)高密度織物を使用する必要があるが、しかし、このようにすると、基布の糸条間空隙部が過少となり、その両面に被覆形成される軟質ポリ塩化ビニル樹脂表裏面両層の、基布の糸条間空隙に露出している部分を互に十分に接着することができず、その結果、得られるターポリンの屈曲耐久性、及び縫製部強度が不十分となるという欠点があった。このため、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を表裏両面被覆層の生成分として含む高強度・高引裂強度ターポリンにおいては、高密度織物を、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対し接着性の高い樹脂組成物で被覆処理、または含浸処理して接着剤層を設けることによって、軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層と高密度織物との間に十分な接着効果を得るという手段が行われている。例えば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対し接着性の高い樹脂組成物として、軟質ポリ塩化ビニル樹ペースト、及び有機溶剤に溶かした軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液、あるいは有機溶剤に溶かしたポリウレタン系樹脂溶液、ポリエステル系樹脂溶液、及びこれらにイソシアネート化合物、又はカルボジイミド化合物などの架橋剤を添加したものなどが知られている。
【0004】
最近環境問題に関連して、廃棄、またはリサイクルが容易で、しかも、ホルモン攪乱性の疑いのある指定物質を一切含まず、さらに燃焼時に毒性物質を発生させる可能性の低い樹脂製品の開発が広く社会的に要求されるようになっている。元来、軟質ポリ塩化ビニル樹脂は、柔軟かつ強靱で、透明性、加工性、コスト性及び安全性に優れた合成樹脂材料として広く使用されているが、最近、軟質ポリ塩化ビニル樹脂は、その中に可塑剤として含むフタル酸エステル類に対してそれがホルモン攪乱物質ではないかという疑いがあり、さらに焼却時にダイオキシン(誘導体)発生の危惧がある。これら不安に対し、それを完全に払拭し得る新材料の開発研究が続けられている。
【0005】
特に、ポリ塩化ビニル樹脂製品は、その分子構造中に塩素原子を高い割合で含有し、焼却処理時に熱分解して塩化水素ガスを発生し易いため、最近では塩素原子、さらには臭素原子などのハロゲンの含有率を極力削減した構成の製品が望まれる様になり、このため、ポリオレフィン系の樹脂製品が日用雑貨分野に広く普及し始めている。また廃棄が困難な大型合成樹脂製品については全般的に、リサイクルが考慮された製品設計が望まれている。
このような社会的要望に対して、従来の軟質ポリ塩化ビニル樹脂製ターポリンについても、これを、ハロゲン非含有の製品により代替しようという要望が高まっている。すなわち、軟質ポリ塩化ビニル樹脂の代替樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリプロピレン系樹脂アロイなどの樹脂を用いて、基布表面上に被膜層を設けたポリオレフィン系樹脂製のターポリンが普及し始めており、特にフレキシブルコンテナ分野において、その転換率を伸ばしている。上述のようなポリオレフィン樹脂に転換することによるメリットには、従来の軟質ポリ塩化ビニル樹脂製ターポリンに較べて軽量であること、及びポリオレフィン系樹脂原料として、ポリオレフィン衛生協議会の自主規制基準に番号登録品、厚生省告示第434号の食品衛生試験規格に適合品、又は米国F.D.A.(§121、2570)認可品を使用することにより、食品原材料輸送に好適な高い安全性が得られることが挙げられる。
【0006】
ポリオレフィン系樹脂製ターポリンにおいて、被膜層の形成にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹、またはエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などのエチレン系共重合体樹脂を使用して得られたものは、特に高周波融着が可能であるため縫製が容易である。ところが、これらのエチレン系共重合体樹脂は、酢酸ビニル成分及び、(メタ)アクリル酸(エステル)成分などの極性成分の含有率が高くなる程高周波融着性が向上するが、その反面、樹脂強度と耐磨耗強度が低下するため、産業資材としての実用性が低下する。このため、これらのエチレン系共重合体樹脂に、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、又はポリプロピレン樹脂などをブレンドすることによって樹脂強度と耐摩耗強度の改善が行われている。しかし、このようにすると、確かに樹脂強度と摩耗強度は改善できるが、今度は高周波融着性が不十分となって縫製作業が困難になったり、得られるターポリンの風合いが硬くなり、折りたたみが困難になり、かつ嵩高になるなど問題が避けられない。またこの時、無理な折りたたみによって折り曲げ部に樹脂疲労劣化の原因となる皺痕を残すなどの問題を生じている。従って、高度の柔軟性と耐久性が要求されるターポリンに対する上記樹脂ブレンド法の実用的適用範囲が、きわめて狭いという問題点が生じている。
【0007】
フレキシブルコンテナ(ターポリン)は、その耐用荷重が大きい程、物流用途により有用である。従って、高強度・高引裂き強度において従来よりも優れたポリオレフィン系樹脂製フレキシブルコンテナを得るには、ターポリンに用いる基布に、(糸条繊度の大きい)高密度織物を使用する必要があるが、高密度織物を基材として、その両面にポリオレフィン系樹脂被覆層を積層するには、接着剤が必要である。しかし、一般にポリオレフィン樹脂は難接着性のため、これにコロナ放電処理や特殊なプライマー処理などの処理工程を追加することが必要となるという問題がある。一般にプライマーとして塩素化ポリプロピレン、変性クロロプレンゴム、イソシアネート化合物、ポリヒドロキシポリオレフィンとイソシアネート化合物との付加体、並びに水素基末端ポリブタジエングリコールとポリイソシアネートとの反応生成物などが知られている。
【0008】
しかしこれらのプライマーのうち塩素化ポリプロピレンはハロゲン含有化合物であり、しかもその効果は粘接着効果に限られていて、耐熱性、及び耐熱劣化性において極めて劣るため、高温度雰囲気下での剥離破壊、または酸化劣化破壊を起こす原因となるため、フレキシブルコンテナに対して用いるには、その実用性に問題がある。また、ポリヒドロキシポリオレフィンとイソシアネート化合物との付加体、又は水酸基末端ポリブタジエングリコールとポリイソシアネートとの反応生成物をプライマーとして使用した場合、接着層の耐熱性は比較的良好となるが、基布とポリオレフィン樹脂層との接着性については大きな改良効果が得られない。またイソシアネート化合物の理論量を正確に設計しないと、却ってポリオレフィン樹脂との接着性を低下させることがある。また、上記プライマーに架橋性湿気硬化型ウレタンプレポリマーを併用させる方法では、プライマーの硬化に時間がかかり、次工程に支障を生ずる。また、2液硬化型(主剤/硬化剤)の反応型プライマーを用いると、硬化反応を短時間で完結させるために高温加熱を必要とし、熱処理時に、ポリオレフィン系樹脂基材が熱溶融したり、変形するなどのトラブルを引き起こすという問題があり、エチレン系共重合体樹脂などの融点の低いポリオレフィン系樹脂に対して必ずしも有効な手段と言えるものではない。また、反応硬化性プライマーで高密度織物を含浸被覆して、ポリオレフィン系樹脂被覆層との接着性を改善させる方法においては、得られるターポリンの引裂強度が著しく低下するという問題がある。
【0009】
ポリオレフィン樹脂の主鎖に、ジメチルアミノ酸、水酸基、カルボキシル基、及び/又はスルホン酸基などの極性官能基を有するモノマー、例えばメタクリル酸、あるいは、アクリル酸エステルなどを共重合、あるいはグラフト重合して得られた変性ポリオレフィン系樹脂を接着剤として用いる方法では、確かにポリオレフィン系樹脂に対して、ある程度の接着性を得ることができるが、これら接着性オレフィン樹脂の融点の低さに起因して得られる製品は耐熱性に劣り、また加熱時に、接着性オレフィン樹脂層に剪断力又は剥離方向の外力が負荷された場合には、製品がその接着面において、剪断破壊又は剥離破壊を容易に起こすなど、耐熱用途に適さないという欠点がある。さらに、例えば、上記接着剤、及び上記プライマー剤を高密度織物に塗布する工程を含んで製造されたターポリンでは、高周波融着部が破壊し易いため、高温輸送に使用することができない。すなわち、この高周波縫製部の破壊は高密度織物とポリオレフィン系樹脂フィルム層との間に設けた接着剤層、またはプライマー層が、常温使用で十分な接着力を発現可能であっても、高温雰囲気下では極度に軟化して接着効果を失うことにより、却って接合部の糸抜け破壊、または剥離破壊を発生する原因となり、従って高温輸送用の高強度フレキシブルコンテナとして使用することができない。この問題の対策として、ポリオレフィン系樹脂中に、硬化型接着剤を適量ブレンド使用することにより、耐熱性と引裂強度とをある程度満足させたフレキシブルコンテナも提案されている。かつ、実用上十分な高強度・高引裂強度を有するポリオレフィン樹脂製フレキシブルコンテナ(ターポリン)はまだ得られていない。
【0010】
従って、ポリ塩化ビニル樹脂製ターポリンが使用されている用途、特に、フレキシブルコンテナ用ターポリンにおいて、ポリ塩化ビニル樹脂製ターポリンの代替えとして、高強度・高引裂強度を有し、かつ高周波融着が可能であるポリオレフィン系樹脂製ターポリン、および、上記特性に加えて、高周波融着部の破壊強度が高く、しかも耐熱クリープ性にも優れた高強度ポリオレフィン系樹脂ターポリンの開発が強く要求されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、十分な柔軟な風合いと優れた耐摩耗性を有し、かつ高周波融着可能であるポリオレフィン系樹脂膜材、特に高周波融着部の破壊強度と耐熱クリープ性に優れた高強度ポリオレフィン系樹脂膜材を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材は、それぞれ糸条間空隙を有する繊維布帛からなる少なくとも2層の布帛層と、この布帛層の間に形成され、かつポリオレフィン系樹脂を含む少なくとも1層の中間層とを有する基材層、及び前記基材層の表裏両面上に形成され、それぞれポリオレフィン系樹脂からなる表裏両外面層を含み、
前記基材層の中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂を含み、かつ前記ポリオレフィン系樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が10〜35重量%であり、
前記ポリオレフィン系樹脂からなる表裏両外面層及び前記ポリオレフィン系樹脂中間層の、前記布帛層の糸条間空隙に露出している部分が、互いに接合して連続している、
ことを特徴とするものである。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層のそれぞれが、互いに独立に、
(イ)炭素原子数3〜18のα−オレフィンを含む直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、及び
(ロ)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなり、その全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜30重量%であるエチレン系共重合体樹脂、から選ばれた少なくとも1員により形成されていることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)により形成されていてもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)により形成されていてもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)と、前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)とのブレンド樹脂により形成されており、このブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれている酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%であってもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂のみからなり、このエチレン系共重合体樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、10〜35重量%であってもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、(a)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂と、(b)エチレンと、炭素原子数3〜18のα−オレフィンとの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂と、のブレンド樹脂からなり、このブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%であってもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記中間層及び表裏両外面層の少なくとも1層中に、その重量の1〜10重量%の合成非晶質シリカ粒子がさらに含まれていることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記中間層の厚さが、0.08mm〜1.0mmであり、前記表外面層と、前記中間層との厚さの比が、2:1〜1:4であり、前記表外面層と、裏外面層との厚さの比が、2:1〜1:2であることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記布帛層を形成する繊維布帛の糸条間空隙率が、5〜35%であることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記布帛層を形成する繊維布帛が、有機合成繊維及び無機繊維より選ばれ、かつ250〜2500dtexの繊度を有するマルチフィラメント糸条により構成された編織物から選ばれることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記布帛用繊維布帛が合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を含むケイ素化合物処理剤により前処理されたものであることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、そのJIS L 1096に規定された引張強度が1,000〜10,000N/3cmであることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記表裏両外面層用直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)は、エチレンと炭素原子数3〜18のα−オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下に共重合して得られたものから選ばれることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記中間層用直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(b)は、エチレンと炭素原子数3〜18のα−オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下に共重合して得られたものから選ばれることが好ましい。
本発明の膜材において、(メタ)アクリル酸(エステル)とはアクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを包含するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の高強度ポリオレフィン系樹脂膜材は、基材層と、この基材層の表裏両面上に形成されたポリオレフィン樹脂表裏両外面層とを有するものであり、前記基材層はそれぞれ糸条間空隙(目合い空隙)を有する繊維布帛からなる少なくとも2層の布帛層と、この2層の布帛層の間に形成され、かつポリオレフィン系樹脂を含む少なくとも1層の中間層とからなるものである。前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層及びポリオレフィン系樹脂含有中間層の、前記布帛層の糸条間空隙に露出している部分が、互いに接合して連続している。
【0014】
本発明の高強度ポリオレフィン系樹脂膜材は、例えば、図1に示されている断面積層構造を有している図1において、ポリオレフィン樹脂高強度膜材1において糸条間空隙8を有する繊維布帛からなる2層の布帛層2,3と、この布帛層2,3の間に配置された1層のポリオレフィン樹脂含有中間層との積層体により基材層5が形成されており、基材層5の表面上に、ポリオレフィン系樹脂表外面層6が形成され、基材層5の裏面上に、ポリオレフィン系樹脂裏外面層7が形成されている。布帛層2,3の糸条間空隙8内には、中間層4のポリオレフィン系樹脂の一部分が進入しており、かつ、表裏両外面層の各々のポリオレフィン系樹脂の一部が進入して互いに接合し、この接合部において、ポリオレフィン系樹脂表外面層6と、ポリオレフィン系樹脂含有中間層4とが、部分的に連続し、またポリオレフィン系樹脂裏外面層7と、ポリオレフィン系樹脂含有中間層4とが部分的に連続している。上記のように、中間層と、表裏両外面層とが布帛層の糸条間空隙において部分的に接合して連続することにより、これら表裏両外面層及び中間層と布帛層とが、強固に一体化され、層間剥離の発生を防止し、膜材の機械的強度及び寸法、形状の安定性を著く向上させることができる。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材において、前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層は、それぞれ、互に独立して、
(イ)炭素原子数3〜18のα−オレフィンを含む直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、及び
(ロ)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなり、その全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜30重量%であるエチレン系共重合体樹脂、から選ばれた少なくとも1員により形成されていることが好ましい。
【0016】
すなわち、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)により形成されていてもよく、或は前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)により形成されていてもよく、或は前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)と、前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)とのブレンド樹脂により形成されていてもよく、このとき、このブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれている酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%であることが好ましい。
【0017】
前記基材層の中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂を含むものであり、かつ前記ポリオレフィン系樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が10〜35重量%である。
【0018】
すなわち、前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂のみからなるものであってもよく、このとき、このエチレン系共重合体樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、10〜35重量%である。
【0019】
前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、前記エチレン系共重合体樹脂に他のポリオレフィン系樹脂が、ブレンドされていてもよい。この場合、前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、(a)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂と、(b)エチレンと、炭素原子数3〜18のα−オレフィンとの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂と、のブレンド樹脂からなるものであることが好ましく、このとき、ブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%である、ことが好ましい。
【0020】
直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる。このエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の製造において、エチレンモノマーと炭素数3〜18のα−オレフィンモノマーをチーグラー・ナッタ系触媒、あるいはメタロセン系触媒の存在下、気相法、スラリー液相法、または高圧法によって重合する方法が知られている。α−オレフィンモノマーとしては、例えばプロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1、へキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1などが用いられるが、炭素数4〜10のα−オレフィンモノマーを用いることが特に好ましい。また、これらのα−オレフィンモノマーは1種のみを用いてもよく、或は2種以上を用いてもよい。これらの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は、共重合体1種のみならず、2種以上のブレンドからなるものであってもよい。
【0021】
エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の製造に用いられるチーグラー・ナッタ系触媒は、周期律表第IV〜VI族の遷移金属の化合物と、周期律表第I〜III 族の金属の化合物とから構成される金属−炭素結合を有する遷移金属化合物触媒で、通常ハロゲン化遷移金属塩と金属アルキル化合物から構成されているものである。ハロゲン化遷移金属塩としては、例えばMgCl2 ,AlCl3 ,TiCl3 ,TiCl4 などが用いられ、金属アルキル化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが用いられる。
【0022】
また、メタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル誘導体、またはインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物を好ましく使用できる。シクロペンタジエニル誘導体、またはインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の遷移金属としては、原子周期律表第IVB族から選ばれる。例えばジルコニウム、チタニウム、ハフニウムであることが好ましい。シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の具体例としては、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1−メチル−3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1−メチル−1エチリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライドなどがある。インデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の具体例としてはエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、1,2−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、などがある。前者のシクロペンタジエニル誘導体を含有するメタロセン系触媒はシンジオタクシティが高く、また後者のインデニル誘導体を含有するメタロセン系触媒はアイソタクシティが高く、これらのメタロセン系触媒を使い分けることによってエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の立体規則性をコントロールして得ることができる。
【0023】
また本発明に使用する直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の重合において、メタロセン系触媒の助触媒としてアルキルアルミノキサンを併用することにより重合の活性効率を向上させることができる。上記アルキルアルミノキサンとしてはメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンなどが例示できる。アルキルアルミノキサンとして、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウムと水との縮合によって得られる−(Al(CH3 )−O−)n −縮合物を使用できる。アルキルアルミノキサンはメタロセン系触媒に対して金属原子数比(アルミニウム原子/メタロセン系触媒の遷移金属原子)が100〜1000であることが好ましく、また重合系内に使用されるメタロセン系触媒量としては重合容積1リットルに対して1×10-8〜1×10-3グラム原子の量で使用されることが好ましい。また、必要に応じて重合活性を高める目的で、従来公知のプロトン酸、ルイス酸、ルイス酸性化合物をメタロセン触媒と併用しても良い。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層に使用する直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂は、チーグラー・ナッタ系触媒、またはメタロセン系触媒を用いて重合された何れの共重合体樹脂であっても良いが、本発明においては、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を用いることが好ましい。また、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合した直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂から選ばれた1種以上と、メタロセン系触媒を用いて重合した直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂から選ばれた1種以上とをブレンドして使用することもできる。上記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂及び、上記ブレンド樹脂のメルトインデックスは、0.3〜20g/10min であることが本発明の膜材にとって好ましい。メルトインデックスが、0.3g/10min 未満であると得られるポリオレフィン系樹脂膜材の成形加工が極めて困難になり好ましくなく、また、それが20g/10min を越えて高いと得られるポリオレフィン系樹脂膜材の耐摩耗強度、及び耐熱クリープ性が不十分になり、さらに粘着性を増して膜材がブロッキングすることがある。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層に使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとをラジカル共重合して製造されるもので、酢酸ビニル成分を6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%含有するエチレン系共重合体樹脂が使用できる。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと(メタ)アクリル酸(エステル)モノマーとのラジカル共重合によって製造された、(メタ)アクリル酸(エステル)成分を6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂が用いられる。(メタ)アクリル酸エステルとは、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが用いられる。また、エチレン系共重合体樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂とのブレンド、さらにはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂と直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂とのブレンドなどであり、このブレンドに含有される、酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量はブレンド重量に対して、6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%である。上記酢酸ビニル成分と、(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量が6重量部未満であると、得られるポリオレフィン系樹脂膜材の高周波融着性が不十分になることがあり、また前記合計量が35重量%を越えると、得られるポリオレフィン系樹脂膜材の耐熱クリープ性が不十分となることがある。
【0026】
上記表裏両外面層及び中間層用ポリオレフィン系共重合体樹脂、及びポリオレフィン系共重合体樹脂ブレンドのメルトインデックスは、0.3〜20g/10min であることが好ましい。メルトインデックスが、0.3g/10min 未満であると得られるポリオレフィン系樹脂シートの成形加工が困難となり、また、それが20g/10min よりも高いと得られるポリオレフィン系樹脂膜材の耐摩耗強度と耐熱クリープ性に劣るだけでなく、粘着性を増してブロッキングを生じるため好ましくない。また同時にポリオレフィン系樹脂表裏両外面層に使用されるポリオレフィン系共重合体樹脂、及びポリオレフィン系共重合体樹脂ブレンドの引張降伏値(JIS K 7113)は、500N/cm2 (51kgf /cm2 )以上であることが好ましく、500〜900N/cm2 (91.8kgf /cm2 )であることがより好ましい。引張降伏値が500N/cm2 未満であると得られるポリオレフィン系樹脂膜材の耐摩耗強度が不十分となり好ましくなく、またそれが900N/cm2 を越えると得られるポリオレフィン系樹脂膜材の耐摩耗強度は十分となり、風合いを硬くすると同時に、高周波融着性が不十分となることがある。また本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層には、表面摩耗強度及び、耐熱クリープ性の改善などの目的で、メタロセン系触媒またはチーグラー・ナッタ系触媒の存在下、プロピレンモノマーの自己重合によって得られるアイソタクティックポリプロピレン樹脂、あるいはシンジオタクティックポリプロピレン樹脂などを、上記酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計量、上記メルトインデックス、及び上記引張降伏値の範囲内において、5〜20重量%程度ブレンド使用することもできる。
【0027】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及びポリオレフィン系樹脂含有中間層の少なくとも何れか1層は、合成非晶質シリカを1〜10重量%含有することが好ましい。合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)としては、ケイ酸ソーダと鉱酸(硫酸)及び塩類を、水溶液中で反応させる湿式法によって得られる合成非晶質シリカを使用することが好ましい。この合成非晶質シリカは、シリカ表面のシラノール基(Si−OH基)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分とを結合水分として含有する、含水シリカである。この含水シリカは、他の乾式合成法やエアロゲル合成法によって得られる水分含有率の極めて少ない無水シリカと区別されるものである。
【0028】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層に配合して用いられる合成非晶質シリカの平均凝集粒径には、特に制約はないが、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、好ましくは2〜10μmの合成非晶質シリカを用いることが好ましい。また、合成非晶質シリカの含水率としては、3〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。
【0029】
合成非晶質シリカの配合量が1重量%より少ないと、得られるポリオレフィン系樹脂膜材の高周波融着性、及び融着接合体の耐熱クリープ強度が不十分となることがあり、また合成非晶質シリカの配合量が10重量%を超えると、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層の成型に支障を生じたり、その成型自体が困難となるばかりでなく、十分な耐久強度が得られなくなることがある。本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層には、上記合成非晶質シリカを、その質量の1〜10重量%配合することによって、より高周波融着性を向上させ、同時に融着接合体の耐熱クリープ性も向上させることができる。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層は、有機系顔料及び/又は無機系顔料によって着色(白色を含む)されていてもよい。有機系顔料としては例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付けレーキ顔料、アントラキノン系顔料類、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料など、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などが使用できる。また無機系顔料としては例えば、酸化亜鉛、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、硫化カルシウム、硫化亜鉛などの金属硫化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛などの金属硫酸化物、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、クロム酸鉛、クロム酸バリウムなどのクロム酸金属塩、その他カーボンブラック、ホワイトカーボン、ケイ藻土、タルク、クレー、アルミニウム粉末、着色アルミニウム粉末、金属蒸着フィルムの破砕体、銀白色雲母チタン、着色雲母チタン、二色性干渉雲母チタンなどが例示できる。これらの顔料は2種以上を組み合わせて使用できる。添加量に制限はない。また、ポリオレフィン系樹脂含有中間層、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の着色が相互に異なる組合わせであってもよい。
【0031】
また、これらポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層には必要に応じて、他の添加剤を配合してもよい。特にポリオレフィン系樹脂の耐久性を向上させる目的で紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などを適量添加することが好ましい。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物及び、アニリド系化合物の紫外線吸収剤が挙げられ、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、アミン系化合物、及びフォスファイト系化合物の酸化防止剤が挙げられる。また光安定剤としてはヒンダードアミン系化合物の光安定剤が挙げられる。その他フィルム成型時の加工性を向上させる目的でリン酸エステル系化合物、脂肪族アミド系化合物、モンタン酸系化合物などの滑剤を添加することが好ましい。
【0032】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層は、従来公知の成型加工方法、例えばT−ダイス押出法、インフレーション法、カレンダー法などによって加工することができる。ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層を形成するための樹脂コンパウンドは、公知の方法、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、二軸混練機などを用いて、素練り混練を施してコンパウンド化する方法、及び溶融混練後、単軸押出ペレタイザー、二軸押出ペレタイザーなどで造粒ペレット化する方法によって得ることができる。本発明のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層は、上記コンパウンドを用いてT−ダイ押出法、インフレーション法、カレンダー法などの加工技術によって形成することができるが、特に有機系顔料、無機系顔料などによって着色されたフィルムの製造、あるいは色替え作業の多い加工には、カレンダー法が簡便でロスが少なく好適である。本発明のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層用フィルムはカレンダー法によって100〜200℃の温度範囲でフィルムの成型加工により形成することが好ましい。カレンダー加工により得られるポリオレフィン系樹脂表裏両外面層、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層の厚さは、0.08〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.35mmであることがより好ましい。厚さが0.08mmよりも薄いと、成型加工が困難な上に繊維布帛に積層した時に繊維布帛の糸条の織目交点部でフィルムの頭切れを起こし、防水性を損なうだけでなく、膜材の耐久性を悪くする。本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の厚さに制限はないが、少なくとも2枚以上の繊維布帛を用いて、厚さ0.08〜0.5mmのポリオレフィン系樹脂表裏両外面層用フィルム、及び/又はポリオレフィン系樹脂含有中間層用フィルムを合計3枚以上用いて繊維布帛と積層させることが好ましい。特に2枚の繊維布帛を用いた、ポリオレフィン系樹脂表外面層フィルム/繊維布帛/ポリオレフィン系樹脂中間層フィルム/繊維布帛/ポリオレフィン系樹脂裏外面層フィルムの積層構造において、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の各々が、ポリオレフィン系樹脂含有中間層に、布帛層の糸条間空隙において、互いに接合して、部分的に連続し、このような5層構造のポリオレフィン系樹脂膜材が本発明の最も好ましい態様である。
【0033】
2枚の繊維布帛の間にポリオレフィン系樹脂含有中間層を配置し、かつ、得られた基材の表裏にポリオレフィン系樹脂外面層を配置して得られる本発明のポリオレフィン系樹脂膜材において、ポリオレフィン系樹脂表外面層と、ポリオレフィン系樹脂含有中間層との厚さの比が、2:1〜1:4、であることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:3である。また、これらの層の最小厚さは0.08mmであり、最大厚さが1.0mmであることが好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂表外面層と、ポリオレフィン系樹脂含有中間層との厚さ(mm)比は、それらが最も薄い場合には、0.16mm:0.08mmであり、最も厚い場合は、1.0mm:4.0mmである。上記厚さ比において、ポリオレフィン系樹脂含有中間層の厚さ比が、例えば3:1となり、従って、2:1よりも大きくなると、中間層の相対的厚さが過度に薄くなり、従って、2枚の繊維布帛間の積層間隔が小さくなり、得られる膜材の高周波融着性と屈曲性とが不十分なものとなり、また折り曲げによって、層間剥離を発生しやすいという不具合がある。また、上記厚さ比において、例えば1:5のように1:4より小さくなり、従って、ポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムの厚さが、過度に厚くなると、得られる膜材の曲げ反発弾性が大きくなり、取り扱いが不自由になるだけでなく、膜材の摩耗耐久性を低下させることがある。
【0034】
また本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材のポリオレフィン系樹脂表外面層と、ポリオレフィン系樹脂裏外面層との厚さの比が、2:1〜1:2であることが好ましく、より好ましくは3:2〜2:3である。また、これらの層の最小厚さは0.08mmであり、最大厚さは1.0mmであることが好ましく、例えばポリオレフィン系樹脂表外面層と、ポリオレフィン系樹脂裏外面層との厚さ(mm)の比において最も薄い場合、0.16mm:0.08mm、または0.08mm:0.16mmであり、最も厚い場合は、2.0mm:1.0mm、または1.0mm:2.0mmである。上記厚さの比において、それが例えば1:3のようになり、1:2よりも小さくなると、ポリオレフィン系樹脂表外面層の厚さが薄くなり、得られる膜材の摩耗耐久性が低くなり、また、上記厚さ比において、それが3:1のように、2:1よりも大きくなると、ポリオレフィン系樹脂裏外面層の厚さが薄くなり、得られる膜材の裏面摩耗耐久性が不十分となることがある。また、本発明は、繊維布帛を3枚以上使用した多層構造のポリオレフィン系樹脂高強度膜材であってもよく、この場合、多層構造体に含まれる2層以上のポリオレフィン系樹脂含有中間層の各々の厚さは0.08〜1.0mmの範囲内にあり、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の各々と、ポリオレフィン系樹脂含有中間層の各々との厚さ比は、上記と同様の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の基材の布帛層に使用できる繊維布帛としては、織布、編布のいずれでもよく、織布の組織としては平織、綾織、朱子織などが挙げられるが、これらの中でも平織織布が得られるポリオレフィン系樹脂膜材の経・緯物性バランスに優れるため好ましい。繊維布帛に用いられる経糸・緯糸用繊維は合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混用繊維のいずれであってもよいが、加工性と汎用性を考慮するとポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、芳香族ポリエステル繊維、複素環高分子繊維などの合成繊維糸条が好ましく使用できる。また無機繊維としてはガラス繊維、セラミック繊維、炭素(カーボン)繊維などのマルチフィラメント糸条を使用することができる。又は繊維布帛用糸条は、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなど、いずれの形状でもよい。
【0036】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材に用いる繊維糸条としては、特に、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフチレンテレフタレート)、ナイロン繊維(ナイロン−6、ナイロン−6,6)、芳香族ポリアミド繊維(ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、p−フェニレン−3,4オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合)、芳香族ポリエステル繊維(p−ヒドロキシ安息香酸またはp,p−ジオキシジフェニールと芳香族ジカルボン酸との重縮合物)、複素環高分子繊維(ポリ−p−フェニレンベンズビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンズビスオキサゾール)、ガラス繊維、セラミック繊維(シリカ、アルミナ、チタン酸カリウム、チタニア)、炭素繊維(PAN系、ピッチ系)、その他、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などのマルチフィラメント糸条が最も好ましい。これらの繊維糸条は単繊維直径が1〜10μmの範囲に紡糸され、50〜500本収束して得られるストランドに1〜5回/25.4mmの撚りを掛けた単糸、あるいは、ストランド2本、または3本を撚り数1〜5回/25.4mmで撚り合わせた合撚糸などのマルチフィラメント糸条が好ましい。また、繊維布帛は、これら糸条、及びこれら糸条の混用による平織織布であることが最も好ましい。混用例としては、経糸、及び緯糸に上記繊維糸条のいずれか1種以上と、他の繊維糸条とを併用し、各々の繊維糸条を一定の打ち込み間隔で配置した織組織、例えば、アラミド繊維であるポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維糸条とポリエステル(PET)繊維糸条とを混用した{PPTA−PET−PET−…}を繰り返し単位とする織組織からなる繊維布帛が用いられる。
【0037】
本発明に使用するマルチフィラメント糸条としては、繊度250〜2500dtexの糸条を用いることが好ましく、より好ましくは500〜1500dtexのマルチフィラメント糸条を用いると、引張強度及び引裂強力に優れた繊維布帛を得ることができる。本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の、引張強度は1000〜10000N/3cmであることが好ましく、より好ましくは2000〜5000N/3cm(JIS L 1096)であり、及び引裂強度は100〜800Nであることが好ましく、より好ましくは300〜800N(JIS L 1096)である。全ての糸条が全て250dtex未満の繊度を有する繊維布帛、を用いると、その引張強度及び引裂強力が不十分であるため、得られる膜材の引張強度及び引裂強力も不十分となる。また、糸条が全て250dtex未満の繊度を有する繊維布帛を使用して、引張強度、及び引裂強度を満足する膜材を得るためには、これらの繊維布帛の多数を積層して基材を構成しなければならず、このためその製造工程が煩雑で高価なものとなる。また、糸条が全て250dtex未満の繊度を有する繊維布帛と、250dtex以上の繊度を有する糸条からなる繊維布帛を併用してもよいが、250dtex未満の繊度を有する繊維布帛を用いると、併用効果が希薄である。また糸条の繊度が2500dtexを超えると、得られる膜材の引張強力と引裂強力は向上するが、糸径が太くなり、得られる膜材を厚くすると同時に、繊維布帛の糸条の織交点による凹凸を大きくするため、積層したポリオレフィン系樹脂表裏外面層の表面平滑度が不均一となり、得られる膜材の耐摩耗性が不十分になるため好ましくない。
【0038】
繊維布帛における経糸及び緯糸の打込み密度は、用いられる繊維糸条の繊度によって変動し、特に限定はないが、繊度が250〜2500dtexのマルチフィラメント糸条を、経糸及び緯糸として25.4mm(1インチ)当たり8〜45本打込んで得られる織布、例えば糸条繊度が555dtexのマルチフィラメント糸条の場合、25.4mm(1インチ)当たり16〜24本の打ち込み本数で得られる平織織布、並びに糸条繊度が1111dtexのマルチフィラメント糸条の場合、25.4mm(1インチ)当たり12〜20本程度の打込みで得られる平織織布が本発明の膜材の基材に好適な繊維布帛として例示できる。これらの繊維布帛は糸条間空隙を有しており、得られる膜材のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層は、前記糸条間空隙においてポリオレフィン系樹脂中間層と互いに接合して部分連続する。
【0039】
繊維布帛の糸条間空隙率(布帛の表面積に対する空隙の合計面積のパーセンテージ)は、5〜35%であることが好ましく、特に10〜25%のものがより好ましい。糸条間空隙率が5%未満であると繊維糸条が接近しすぎて、繊維布帛の表裏面に形成される2層のポリオレフィン系樹脂表裏両外面層相互のブリッジ融着性を低下させ、得られる膜材の動的耐久性を不十分にするという問題を生ずることがある。また、糸条間空隙率が35%を越えると、得られる膜材の動的耐久性は向上するが、繊維糸条量が過少になるため、膜材の引張強度と引裂強度とが十分に得られないだけでなく、膜材の寸法安定性に不十分になり、実用性に欠けるものとなることがある。糸条間空隙率は、繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。糸条間空隙率の測定には、経方向10cm×緯方向10cmの100cm2 を単位面積として求めることが好ましい。
【0040】
また、本発明の膜材の基材において用いられる2枚以上の繊維布帛は、互に同一の繊維布帛であってもよく、あるいは、互に異種の繊維布帛であってもよい。繊維布帛が同一とは、繊維種、糸条、繊度、撚り、織り方、織組織、糸密度、空隙などの要素が全て同じであることであり、異種とは、前記要素の少なくとも1つを異にすることを意味する。異種の繊維布帛の組合わせとしては、例えば、ポリエステル繊維織物と芳香族ポリアミド繊維織物との併用、ポリエステル繊維織物とガラス繊維織物との併用、及び芳香族ポリアミド繊維織物とガラス繊維織物との併用などが挙げられる。
【0041】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材に使用する繊維布帛は、ケイ素化合物含有処理剤によって前処理されたものであってもよい。このケイ素化合物処理によって、得られる膜材の耐熱クリープ特性を改善させることができる。膜材の耐熱クリープ性の改善には、繊維布帛を反応硬化性樹脂で含浸被覆して、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層及びポリオレフィン系樹脂含有中間層との接着性を改善させることも有効であるが、この場合には、得られる膜材の風合いが硬くなり、膜材の引裂強度を著しく低下させるという不都合がある。本発明の膜材においては、ケイ素化合物含有処理剤で前処理した繊維布帛を使用することによって、引裂強度と柔軟性とを適度の水準に保持しながら耐熱クリープ性を改善することができる。
【0042】
ケイ素化合物含有処理剤としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、シランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種、及び合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、シランカップリング剤から選ばれた1種以上と熱可塑性樹脂との組成物が用いられる。これらのケイ素化合物のうち合成非晶質シリカとしては、シリカ粒子表面の吸着水及び、水酸基の含有量の少ない無水シリカ、エアロゲル法シリカ、湿式法シリカなどが使用できる。これらのシリカは平均粒子径が1〜20μm程度のものが好ましく使用できる。繊維布帛の前処理には、ケイ素化合物含有処理剤を水中に均一分散させ、好ましくはSiO2 含有濃度1〜15重量%の、処理剤水溶液浴中に繊維布帛を浸漬し、浴から引上げると同時にニップロールを通過させ、余分な処理剤水溶液を除去し、水分を乾燥させて行うことができる。また繊維布帛に対する処理剤の付着率には特に限定はないが、付着率が1〜5重量%であることが好ましい。この時、合成非晶質シリカとシランカップリング剤とを併用することが好ましい。
【0043】
コロイダルシリカとしてはケイ酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られるBET平均粒子径10〜50nmの水分散媒コロイド状のシリカゾルまたは、有機系溶剤を分散媒とするBET平均粒子径10〜50nmのコロイド状シリカゾルが使用できる。繊維布帛の前処理には、SiO2 含有濃度5〜30重量%のコロイダルシリカ浴中に繊維布帛を浸漬し、浴から引上げると同時にニップロールを通過させ、余分なコロイダルシリカを除去し、水分または有機系溶剤を乾燥させて行うことができる。また繊維布帛に対する付着率には特に限定はないが、付着率が1〜15重量%、特に3〜10重量%であることが好ましい。この時コロイダルシリカとシランカップリング剤とを併用することが好ましい。
【0044】
シランカップリング剤としては、一般式:XR−Si(Y)3 で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有する化合物で、例えば、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、クロル基、メルカプト基など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などを有する化合物が用いられる。また上記化合物の加水分解物、及びアルコキシシラン化合物との共加水分解化合物なども使用できる。具体的には、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、特にエポキシ系シランカップリング剤を使用することが好ましい。
シランカップリング剤は1〜5重量%濃度で使用し、蟻酸、酢酸などの酸を用いてpH3〜5の条件に調整されることが好ましい。繊維布帛の前処理には、シランカップリング剤水溶液浴中に繊維布帛を浸漬し、浴から引上げると同時にニップロールを通過させ、余分なシランカップリング剤水溶液を除去し、水分を乾燥させて行うことができる。この時、シランカップリング剤に、合成非晶質シリカまたはコロイダルシリカを併用することが好ましい。繊維布帛に対するシランカップリング剤の付着率には特に限定はないが、付着率が1〜15重量%、特に3〜10重量%であることが好ましい。
【0045】
上記処理剤中にケイ素化合物と共に用いられる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂のエマルジョン、ディスパージョンなどの水分散体の形態、または有機系溶剤中に可溶化させた形態のものが使用できる。上記熱可塑性樹脂は、例えば、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びこれらの変性体樹脂などであり、特にメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、無水イタコン酸、無水マレイン酸、N−メチルマレイミドなどによって変性されたエチレン系共重合体樹脂、及びアクリル系共重合体樹脂を包含する。また必要に応じて、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、アリルフタレート系樹脂などの熱硬化性樹脂を、上記熱可塑性樹脂にブレンドして使用することもできる。繊維布帛の前処理には、これらの熱可塑性樹脂エマルジョンまたはディスパージョン中にケイ素化合物を混合した水系処理液浴中に繊維布帛を浸漬し、浴から引上げると同時にニップロールを通過させ、余分なケイ素化合物含有組成物を除去し、水分を乾燥させて行うことができる。また溶剤系熱可塑性樹脂の場合も同様の方法によって前処理を行うことができる。熱可塑性樹脂固形分とケイ素化合物の固形分重量比には特に制限はないが、熱可塑性樹脂:ケイ素化合物(合成非晶質シリカ)の比が5:95〜40:60程度であることが好ましく、特に10:90〜30:70であることがより好ましい。
【0046】
本発明の膜材の基材において、上記繊維布帛には、ポリオレフィン系樹脂表又は裏外面層用フィルム、または、ポリオレフィン系樹脂含有中間層が積層され、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層は、前記繊維布帛の糸条間空隙においてポリオレフィン系樹脂含有中間層に接合して部分的に連続するものである。これらの積層方法としては、繊維布帛の各々の表裏面に形成される2層のポリオレフィン系樹脂層相互のブリッジ融着が最も簡便で好ましいが、ポリオレフィン系樹脂表裏面両外面層フィルム、またはポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムと繊維布帛との間に接着剤層を設けて積層接着することもできる。本発明の膜材形成に適する積層方法は、カレンダートッピング法またはT−ダイ押出ラミネート法などであり、ポリオレフィン系樹脂表又は裏外面層フィルム、及びポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムを、その成型加工と同時に繊維布帛に熱ラミネートする方法、あるいはカレンダー法、T−ダイ押出法、インフレーション法などにより、ポリオレフィン系樹脂表又は裏外面層フィルム、及びポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムを成型加工した後に、これらのフィルムをラミネーターを使用して繊維布帛に熱圧着して積層を行う方法などが挙げられる。本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の製造には、カレンダー法によって成型加工されたポリオレフィン系樹脂表又は裏外面層フィルム、及びポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムを、繊維布帛に熱圧着して積層する方法が、効率的かつ経済的に優れているため好ましい。このとき、繊維布帛の糸条間空隙内において、ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムに直接に熱溶融ブリッジするために、接着剤の塗布を必要とせず、従って引裂強度の低下及び、風合い硬化を生ずることなく、十分な動的耐久性を有する膜材が得られる。
【0047】
本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材は、高周波ウエルダー機を用いて高周波融着によって接合を容易に行うことができる。高周波融着法としては、具体的には、2枚以上の本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材または、本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材と熱融着可能な他の熱可塑性樹脂成型物の一部とを重ね合わせ、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間に置き、接合部位をウエルドバーで加圧しながら、高周波(1〜200MHz )で発振する電位差を印加することにより膜材のポリオレフィン系樹脂を分子摩擦熱により溶融させ、それによって接着、シールすることができる、高周波融着性は、樹脂の誘電損率すなわち、誘電率(ε)と誘電正接(tanδ)との積量(ε.tanδ)に依存し、従って、高周波で発振する内部分子摩擦熱の大きさに関係している。誘電正接は、樹脂により吸収された高周波電磁放射線エネルギーのうち、熱に変換される部分の関数であり、この誘電損率は少なくとも0.01以上であることが好ましい。高周波ウエルダー機としては市販の機種、例えば、山本ビニター(株)のYC−7000FT,YF−7000など、精電舎電子工業(株)のKM−5000TA,KA−7000TEなど、クインライト電子精工(株)のLW−4000W,LW−4060Sなどが使用できる。
【0048】
その他、本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の接合方法として、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz )を工具ホーン先端を通じて振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して瞬時に融着を行う超音波ウエルダー融着法、またはヒーターの電気制御によって、20〜700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜材間に吹き込み、膜材の表面を瞬時に溶融させ、直後膜材を圧着して接着を行う熱風融着法、あるいは熱可塑性樹脂の溶融温度以上にヒーター内蔵加熱された金型(こて)を用いて被着体を圧着しシールする熱板融着法など、どの方法でも融着接合が可能であるが、特に縫製が複雑なフレキシブルコンテナには、専用の金型を用いた高周波融着が作業の効率に優れている。
【0049】
【実施例】
本発明を下記実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記実施例、及び比較例において本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の強度評価、引裂強度評価、柔軟性評価、耐摩耗性評価、及び高周波融着性評価、耐熱クリープ性評価の試験方法は以下の通りである。
【0050】
(I)引張強度評価
一般織物試験方法(JIS L 1096)引張強さA法に従い、3cm×30cmの試験片を、万能引張試験機(ストログラフV10:(株)東洋精機製作所製)を用いて、試験片つかみ間隔20cm、引張強度20cm/min の条件で、試験片が破断するまで引張し、破断時の応力荷重を求め引張強度とした。
【0051】
(II)引裂強度評価
一般織物試験方法(JIS L 1096)引裂強さA−1法に従い、10cm×25cm長の試験片を、万能引張試験機(ストログラフV10:(株)東洋精機製作所製)を用いて、試験片つかみ間隔10cm、引張強度20cm/min の条件で、試験片が破断するまで引裂き、最大荷重を求め引裂強度とした。
【0052】
(III )柔軟性評価
160mm幅×50mm長に採取した小片をまるめて直径50mm×50mmサイズの円筒を作製し(のりしろはシアノアクリレート系瞬間接着剤で固定)JIS K 6382の圧縮試験を行い、50%圧縮時の応力(20℃で円筒の直径が25mmまで潰した状態)を求めて比較し、その数値が少ない程帆布の柔軟性が優れていると判断した。柔軟性を評価する試験機にはループ・ステフネス・テスター((株)東洋精機製作所製)を使用した。
○:柔軟性良好(200g以下)
△:やや柔軟性に劣る(201〜299g)
×:柔軟性に劣る(300g以上)
【0053】
(IV)耐摩耗性評価
一般織物試験方法(JIS L 1096)に規定の摩耗強さ試験C法(テーパ形法)により帆布表面の摩耗性を評価した。摩耗強さを評価する試験機にはロータリー・アプレージョン・テスター((株)東洋精機製作所製)を使用し、摩耗輪(H−18)、摩耗荷重1kg、摩耗回数1000回の条件で摩耗試験を行い、試験前後の試料の質量差(摩耗減量)を求めて比較し、その数値が少ない程帆布の耐摩耗性が優れていると判断した。
【0054】
(V)高周波融着性評価
2枚のポリオレフィン系樹脂膜材の端末を4cm幅で直線状に重ね合わせ、4cm×30cmのウエルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凸部高さ0.5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凹部深さ0.5mm)を装着した高周波ウエルダー機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用いてポリオレフィン系樹脂膜材の高周波融着接合を行った。また融着接合部を含む3cm幅の試料を採取し、融着接合部の剪断試験(JIS L 1096)を行い、接合部の破壊状態を以下の判定基準によって評価した。
<高周波融着(ウエルダー)性>
○:融着が容易である。
※高周波融着条件:融着時間5秒、冷却時間5秒
陽極電流0.8A、ウエルドバー温度40〜50℃
△:融着条件を強く、かつ長くすることで融着可能である。
※高周波融着条件:融着時間10秒、冷却時間5秒
陽極電流1.0A、ウエルドバー温度40〜60℃
×:融着条件を強く、かつ長く設定しても融着しない。
※高周波融着条件:融着時間10秒、冷却時間5秒
陽極電流1.3A、ウエルドバー温度40〜60℃
<剪断による接合部の破壊状態>
○:本体破壊する。
△:接合部破壊する。
×:接合部の糸抜け破壊する。
【0055】
(VI)耐熱クリープ性評価
耐熱クリープ性試験は(V)の高周波融着シートより接合部4cmを含む、3cm×30cmの試験片を採取し、これを耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(100LDR型:(株)東洋精機製作所製)を使用して50℃×25kgf 荷重×24時間の耐熱クリープ性試験を評価した。
○:24時間経過後、接合部の破壊はなく25kgf の荷重に耐えていた。
×:24時間以内に接合部が剪断破壊した。
【0056】
実施例1
1)ポリオレフィン系樹脂表外面層用フィルム
メタロセン系触媒の存在下、エチレンとヘキセンとを共重合した直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))100重量部に対し、合成非晶質シリカ(商標:ニップシールE200:日本シリカ工業(株):含水率6重量%:平均粒子径3μm)を3重量部、リン酸エステル系滑剤(商標:LTP−2:川研ファインケミカル(株))を1.0重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商標:バイオソーブ510:共同薬品(株))を0.3重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(商標:チヌビン770:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))を0.2重量部と、着色顔料を3重量部[(有機系顔料カラードペレット:商標:HCM1617ブルー:シアニンブルー(α型)含有率20重量%:大日精化工業(株))2重量部+無機系顔料カラードペレット:商標:HCM2060ホワイト:二酸化チタン(ルチル型)60重量%含有:大日精化工業(株)]2重量部]とを配合したコンパウンドをバンバリーミキサーで3分間溶融混練した後、140℃に設定した2本ロールで3分間均一に混練し、この混練組成物から0.16mm厚の青色のポリオレフィン系樹脂表外面層フィルムをカレンダー圧延成型した。
【0057】
2)ポリオレフィン系樹脂裏外面層用フィルム
上記ポリオレフィン系樹脂表外面用フィルムと同一のフィルムを、ポリオレフィン系樹脂裏外面層用フィルムとして用いた。(ポリオレフィン系樹脂表外面層:ポリオレフィン系樹脂裏外面重量比層=1:1)
【0058】
3)ポリオレフィン系樹脂含有中間層用フィルム
上記ポリオレフィン系樹脂表外面層フィルムの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))100重量部を全てエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバテートK2010:MFR3.0:VA含有量25重量%:住友化学工業(株))100重量部に変更したこと以外は、上記ポリオレフィン系樹脂表外面層フィルムと同一として、酢酸ビニル成分を25重量%含有する厚さ0.16mmの青色フィルムをポリオレフィン系樹脂含有中間層用フィルムとして用いた。(ポリオレフィン系樹脂表外面層:ポリオレフィン系樹脂含有中間層重量比=1:1)
【0059】
4)膜材の製造
ポリエステル繊維平織物(1)(833dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸19本/2.54cm×緯糸20本/2.54cm:糸条間空隙率18%:質量140g/m2 )と、ポリエステル繊維平織物(2)(1111dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸18本/2.54cm×緯糸19本/2.54cm:糸条間空隙率15%:質量180g/m2 )の各々に下記前処理を施し、ポリエステル繊維平織物(1)とポリエステル繊維平織物(2)の間に上記ポリオレフィン系樹脂含有中間層フィルムを配置し、ポリエステル繊維平織物(1)の表面上にポリオレフィン系樹脂表外面層フィルムを配置し、ポリエステル繊維平織物(2)の裏面上に、ポリオレフィン系樹脂裏外面層フィルムを配置して、この積層物を140℃に設定したラミネーターで順次熱圧着して貼り合わせ、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0060】
ポリエステル繊維平織物(1)、(2)用前処理剤組成
商標:ニップシールE200:日本シリカ工業(株):
合成非晶質シリカ:含水率6重量%:平均粒子径3μm 10重量部
商標:KBM303:信越化学工業(株):
エポキシ系シランカップリング剤(有効成分100重量%) 2重量部
商標:アクアテックスE−1800:中央理化工業(株):
エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂エマルジョン
(固形分40重量%) 10重量部
希釈剤:蒸留水 100重量部
上記処理剤浴中にポリエステル繊維平織物(1)を浸漬し、織布を引き上げ、直ちにニップロールで絞り、(wet付着質量75g/m2 )次いで100℃の熱風炉中2分間の乾燥を行った。得られた前処理ポリエステル繊維平織物(1)の質量は148g/m2 であった。(合成非晶質シリカ:シランカップリング剤:熱可塑性樹脂質量比=5:1:2)また、ポリエステル繊維平織物(2)に対してもポリエステル繊維平織物(1)と同一の前処理を施し、(wet付着質量85g/m2 )質量189g/m2 の前処理ポリエステル繊維平織物(2)を得た。
【0061】
実施例2
実施例1のポリオレフィン系樹脂含有中間層用エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバテートK2010:住友化学工業(株))100重量部を、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体樹脂(商標:アクリフトWH−206:MMA含有量20重量%:MFR2.0:密度0.940:住友化学工業(株))100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0062】
実施例3
実施例1のポリオレフィン系樹脂裏外面層用直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))1000重量部を、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバフレックスP−1905:VA含有量19重量%:MFR2.5:三井デュポン・ポリケミカル(株))100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0063】
実施例4
実施例2のポリオレフィン系樹脂表外面層及び、ポリオレフィン系樹脂裏外面層の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))100重量部を、それぞれエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバフレックスP−1905:VA含有量19重量%:MFR2.5:三井デュポン・ポリケミカル(株))100重量部に変更したこと以外は、実施例2と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0064】
実施例5
実施例1のポリオレフィン系樹脂表外面層及び、ポリオレフィン系樹脂裏外面層の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))100重量部のうちの40重量部を、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(1)(商標:エバフレックスP−1905:VA含有量19重量%:MFR2.5:三井デュポン・ポリケミカル(株))に置き換えたこと以外は実施例1と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0065】
実施例6
実施例5のポリオレフィン系樹脂含有中間層のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(2)(商標:エバテートK2010:住友化学工業(株))100重量部をのうちの20重量部を、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(商標:カーネルKF270:日本ポリケム(株))に置き換えた以外は実施例5と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0066】
実施例7
実施例1のポリオレフィン系樹脂表外面層と、実施例5のポリオレフィン系樹脂裏外面層と、実施例6のポリオレフィン系樹脂含有中間層を用いたこと以外は実施例1と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0067】
実施例8
実施例1のポリオレフィン系樹脂含有中間層を、実施例6で用いたポリオレフィン系樹脂中間層に変更したこと以外は実施例1と同一として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量780g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0068】
実施例1〜8の各々の、ポリオレフィン系樹脂表外面層の組成を表1に示し、ポリオレフィン系樹脂裏外面層の組成を表2に示し、ポリオレフィン系樹脂含有中間層の組成を表3に示す。また、実施例1〜8の各々の膜材の繊維布帛の組成及び膜材の試験結果を表4に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
実施例1〜8の膜材の性能
実施例1〜8のポリオレフィン系樹脂高強度膜材は、これらが2枚(以上)のポリエステル繊維布帛(平織物)を有し、かつ、ポリオレフィン系樹脂表外面層及びポリオレフィン系樹脂裏外面層の各々が、繊維布帛の糸条間空隙において、ポリオレフィン系樹脂含有中間層と接合し、部分的に連続することによって、従来の高密度繊維織物上にポリオレフィン系樹脂被覆を施した膜材では成し得なかった優れた屈曲耐久性と、接合部耐熱クリープ性とを有し、同時に、引張強度が2500〜3500N/3cm(JIS L 1096)であり、さらに引裂強度300〜500N(JIS L 1096)程度の高強度膜材を得ることができた。また、本発明のポリオレフィン系樹脂膜材は、陽極電流値が0.8A、融着時間5秒、冷却時間5秒、ウエルドバー温度40〜50℃の条件で容易に融着接合を行うことが可能であり、しかも、膜材本体強度に匹敵する接合部剪断強度を有するものであった。また、実施例1〜8のポリオレフィン系樹脂膜材は、ケイ素化合物で前処理を施した繊維布帛を用いることによって、得られる膜材の柔軟性を保持し、かつ、引裂強度の低下を伴うことなく、融着接合部の耐熱クリープ性を改善するものであった。
【0074】
実施例9
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)を、ガラス繊維平織物(1350dtexガラスマルチフィラメント:糸密度経糸20本/2.54cm×緯糸21本/2.54cm:糸条間空隙率12%:質量240g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ガラス繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(2)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ1.1mm、質量880g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0075】
実施例10
実施例1のポリエステル繊維平織物(2)を、カーボン繊維平織物(660dtexカーボンマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率19%:質量185g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/カーボン繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ0.95mm、質量825g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0076】
実施例11
実施例1のポリエステル繊維平織物(2)を、アラミド繊維平織物(1111dtexアラミドマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率15%:質量145g/m2 )に変更したこと以外は実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(1)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/アラミド繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ0.95mm、質量785g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0077】
実施例12
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)を、実施例9のガラス繊維平織物(1350dtexガラスマルチフィラメント:糸密度経糸20本/2.54cm×緯糸21本/2.54cm:糸条間空隙率12%:質量240g/m2 )に変更し、また、実施例1のポリエステル繊維平織物(2)を実施例11のアラミド繊維平織物(1111dtexアラミドマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率15%:質量145g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ガラス繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/アラミド繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ1.0mm、質量890g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0078】
実施例13
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)とポリエステル繊維平織物(2)とを、ともに実施例11のアラミド繊維平織物(1111dtexアラミドマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率15%:質量145g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/アラミド繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/アラミド繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ0.9mm、質量790g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0079】
実施例14
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)を、実施例9のガラス繊維平織物(1350dtexガラスマルチフィラメント:糸密度経糸20本/2.54cm×緯糸21本/2.54cm:糸条間空隙率12%:質量240g/m2 )に変更し、また、実施例1のポリエステル繊維平織物(2)を、実施例10のカーボン繊維平織物(660dtexカーボンマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率19%:質量185g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ガラス繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/カーボン繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.0mm、質量930g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0080】
実施例15
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)とポリエステル繊維平織物(2)を、ともに実施例10のカーボン繊維平織物(660dtexカーボンマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率19%:質量185g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/カーボン繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/カーボン繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる、厚さ0.9mm、質量770g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0081】
実施例16
実施例1のポリエステル繊維平織物(1)を、実施例10のカーボン繊維平織物(660dtexカーボンマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率19%:質量185g/m2 )に変更し、また、実施例1のポリエステル繊維平織物(2)を、実施例11のアラミド繊維平織物(1111dtexアラミドマルチフィラメント:糸密度経糸15本/2.54cm×緯糸15本/2.54cm:糸条間空隙率15%:質量145g/m2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/カーボン繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/アラミド繊維平織物/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ0.9mm、質量820g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を得た。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0082】
実施例9〜16の各々で得られた膜材の繊維布帛の組成及び試験結果を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例9〜16の膜材の性質
実施例9〜16のポリオレフィン系樹脂膜材は、2枚(以上)の繊維布帛(平織物)を含み、繊維布帛の少なくとも1枚が、ガラス繊維布帛、カーボン繊維布帛、又はアラミド繊維布帛であり、かつ、ポリオレフィン系樹脂表外面層及びポリオレフィン系樹脂裏外面層の各々が、繊維布帛の糸条間空隙においてポリオレフィン系樹脂含有中間層と接合して部分的に連続しており、それによって、従来の高密度繊維織物にポリオレフィン系樹脂被覆を施した膜材では達成し得なかった優れた屈曲耐久性と、接合部耐熱クリープ性とを有し、同時に、引張強度が2500〜8500N/3cm(JIS L 1096)であり、さらに引裂強度300〜800N(JIS L 1096)レベルのポリオレフィン系樹脂高強度膜材を得ることができた。また、本発明のポリオレフィン系樹脂膜材は、陽極電流値が0.8A、融着時間5秒、冷却時間5秒、ウエルドバー温度40〜50℃の条件で容易に融着接合を行うことが可能であり、しかも、膜材本体強度に匹敵する接合部剪断強度を有するものであった。また、実施例9〜16のポリオレフィン系樹脂膜材は、ケイ素化合物で前処理を施した繊維布帛を用いることによって、得られる膜材の柔軟性を保持し、かつ、引裂強度の低下を伴うことなく、接合部の耐熱クリープ性を改善するものであった。
【0085】
比較例1
実施例1の膜材で用いたポリエステル繊維平織物(1)及び(2)の2枚を、ポリエステル繊維平織物(5)(1666dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸19本/2.54cm×緯糸20本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量245g/m2 )1枚のみに変更し、さらにポリオレフィン系樹脂含有中間層を省略したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(5)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、3層構造からなる、厚さ0.65mm、質量535g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:裏面最外層厚=1:1)
【0086】
比較例2
実施例1の膜材で用いたポリエステル繊維平織物(1)及び(2)の2枚を、ポリエステル繊維平織物(5)(1666dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸19本/2.54cm×緯糸20本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量245g/m2 )1枚のみに変更し、さらにポリオレフィン系樹脂含有中間層を省略した。また、実施例1の繊維布帛の前処理(合成非晶質シリカ:シランカップリング剤:熱可塑性樹脂/5:1:2)を下記前処理に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(5)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、3層構造からなる、厚さ0.66mm、質量545g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:裏面最外層厚=1:1)
<ポリエステル繊維平織物(5)の前処理剤組成>
商標:タケラックE−350:武田薬品工業(株):ポリエステル系
ポリウレタン(固形分26重量%) 100重量部
商標:コロネートL:日本ポリウレタン工業(株):イソシアネート
化合物(固形分75重量%) 4重量部
希釈溶剤:トルエン 100重量部
上記前処理剤浴中にポリエステル繊維平織物(5)を浸漬し、織布を引き上げ、直ちにニップロールで絞り、(wet付着質量125g/m2 )次いで90℃の熱風炉中3分間の乾燥を行った。得られた前処理ポリエステル繊維平織物(5)の質量は263g/m2 であった。(ポリウレタン樹脂:イソシアネート化合物/26:3)
【0087】
比較例3
実施例1の膜材で用いたポリエステル繊維平織物(1)を、糸条間空隙のないポリエステル繊維平織物(6)(833dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸25本/2.54cm×緯糸26本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量175g/m2 )に変更し、また、ポリエステル繊維平織物(2)を、糸条間空隙のないポリエステル繊維平織物(7)(1111dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸23本/2.54cm×緯糸24本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量210g/m2 )に変更したこと以外は実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(6)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(7)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.1mm、質量845g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
【0088】
比較例4
実施例1の膜材で用いたポリエステル繊維平織物(1)を、糸条間空隙のないポリエステル繊維平織物(6)(833dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸25本/2.54cm×緯糸26本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量175g/m2 )に変更し、ポリエステル繊維平織物(2)を、糸条間空隙のないポリエステル繊維平織物(7)(1111dtexポリエステルマルチフィラメント:糸密度経糸23本/2.54cm×緯糸24本/2.54cm:糸条間空隙率0%:質量210g/m2 )に変更し、また、実施例1の繊維布帛の前処理剤(合成非晶質シリカ:シランカップリング剤:熱可塑性樹脂/5:1:2)を、下記前処理剤に変更したこと以外は、実施例1と同様として、ポリオレフィン系樹脂表外面層/ポリエステル繊維平織物(6)/ポリオレフィン系樹脂含有中間層/ポリエステル繊維平織物(7)/ポリオレフィン系樹脂裏外面層の、5層構造からなる厚さ1.1mm、質量870g/m2 のポリオレフィン系樹脂膜材を作製した。(表面最外層厚:中間層厚:裏面最外層厚=1:1:1)
<ポリエステル繊維平織物(6)、(7)の前処理剤組成>
商標:タケラックE−350:武田薬品工業(株):ポリエステル系
ポリウレタン(固形分26重量%) 100重量部
商標:コロネートL:日本ポリウレタン工業(株):イソシアネート
化合物(固形分75重量%) 4重量部
希釈溶剤:トルエン 100重量部
上記前処理剤の浴中にポリエステル繊維平織物(6)を浸漬し、織布を引き上げ、直ちにニップロールで絞り、(wet付着質量80g/m2 )次いで90℃の熱風炉中3分間の乾燥を行った。得られた前処理ポリエステル繊維平織物(6)の質量は186g/m2 であった。ポリエステル繊維平織物(7)も同様にして、質量223g/m2 の前処理ポリエステル繊維平織物(7)を得た。(ポリウレタン樹脂:イソシアネート化合物/26:3)
【0089】
比較例1〜4の各々に用いられた繊維布帛の組成、及び膜材の試験結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
比較例1〜4の膜材の性能
比較例1,2で得られた膜材は高周波融着が不能であったため、ヒーターを内蔵する加熱された熱板で被着体を圧着し熱融着するタイプの熱板加熱融着機(クインライト電子精工(株)製ヒートシール機LHP−W703)を用いて接合を行い、その剪断強度を評価した。比較例1の膜材では接合部が布帛面で剥がれ、本体強度の約16%の強度しか得られなかった。また、比較例2において、ポリウレタン樹脂処理した繊維布帛を使用することによって接合部の剪断強度は幾分向上し、本体強度の約44%程度の剪断強度を得たが、これでも布帛面における剥離破壊を防ぐことができなかった。また、繊維布帛をポリウレタン樹脂処理したことにより、引裂強度が60%低下する欠点も露呈した。また、比較例3,4で得られた膜材は高強度を有し、高周波融着も可能であったが、接合部強度は、比較例1,2同様、不十分であり、特に比較例4の膜材では引裂強度が不十分なものであった。また、比較例1〜4の膜材の耐熱クリープ性を評価したが、繊維布帛とポリオレフィン系樹脂最外層、及び、ポリオレフィン系樹脂中間層との接着が不十分であるため、いずれの膜材も接合部が剥離して破壊することが明らかとなった。
【0092】
【発明の効果】
上記実施例及び、比較例から明らかな様に、本発明により得られるポリオレフィン系樹脂膜材は、従来の高密度繊維織物にポリオレフィン系樹脂被覆を施して得られた膜材では達成し得なかった優れた屈曲耐久性と、接合部耐熱クリープ性とを有し、同時に、引張強度が2500〜8500N/3cm、さらに引裂強度300〜800N程度を有する高強度膜材である。また、本発明のポリオレフィン系樹脂膜材は、高周波融着接合を行うことが可能であり、しかも、膜材本体強度に匹敵する接合部剪断強度を有するため、特に高強度、高引裂強度が要求される、フレキシブルコンテナ、オイルフェンス、大型テント、土木用シートなどに好適に用いることができる極めて有用なシートである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオレフィン系樹脂高強度膜材の一例の構成を示す断面説明図。
【符号の説明】
1…ポリオレフィン系樹脂高強度膜材
2,3…糸条間空隙を有する布帛層
4…ポリオレフィン系樹脂含有中間層
5…基材層
6…ポリオレフィン系樹脂表外面層
7…ポリオレフィン系樹脂裏外面層
8…布帛層の糸条間空隙
9…ポリオレフィン系樹脂表外面層とポリオレフィン系樹脂含有中間層との部分的接合連続部
10…ポリオレフィン系樹脂裏外面層とポリオレフィン系樹脂含有中間層との部分的接合連続部
Claims (15)
- それぞれ糸条間空隙を有する繊維布帛からなる少なくとも2層の布帛層と、この布帛層の間に形成され、かつポリオレフィン系樹脂を含む少なくとも1層の中間層とを有する基材層、及び前記基材層の表裏両面上に形成され、それぞれポリオレフィン系樹脂からなる表裏両外面層を含み、
前記基材層の中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂を含み、かつ前記ポリオレフィン系樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が10〜35重量%であり、
前記ポリオレフィン系樹脂からなる表裏両外面層及び前記ポリオレフィン系樹脂中間層の、前記布帛層の糸条間空隙に露出している部分が、互いに接合して連続している、
ことを特徴とするポリオレフィン系樹脂高強度膜材。 - 前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層のそれぞれが、互いに独立に、
(イ)炭素原子数3〜18のα−オレフィンを含む直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、及び
(ロ)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなり、その全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜30重量%であるエチレン系共重合体樹脂、から選ばれた少なくとも1員により形成されている、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。 - 前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)により形成されている、請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)により形成されている、請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記ポリオレフィン系樹脂表裏両外面層の少なくとも1層が、前記直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)と、前記エチレン系共重合体樹脂(ロ)とのブレンド樹脂により形成されており、このブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれている酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%である、請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂のみからなり、このエチレン系共重合体樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、10〜35重量%である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂が、(a)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系共重合体樹脂と、(b)エチレンと、炭素原子数3〜18のα−オレフィンとの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂と、のブレンド樹脂からなり、このブレンド樹脂の全重量に対し、それに共重合成分として含まれる酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸(エステル)の合計重量の割合が、6〜25重量%である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記中間層及び表裏両外面層の少なくとも1層中に、その重量の1〜10重量%の合成非晶質シリカ粒子がさらに含まれている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記中間層の厚さが、0.08mm〜1.0mmであり、前記表外面層と、前記中間層との厚さの比が、2:1〜1:4であり、前記表外面層と、裏外面層との厚さの比が、2:1〜1:2である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記布帛層を形成する繊維布帛の糸条間空隙率が、5〜35%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記布帛層を形成する繊維布帛が、有機合成繊維及び無機繊維より選ばれ、かつ250〜2500dtexの繊度を有するマルチフィラメント糸条により構成された編織物から選ばれる、請求項1〜10項のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記布帛層用繊維布帛が合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を含むケイ素化合物処理剤により前処理されたものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- JIS L 1096に規定された引張強度が1,000〜10,000N/3cmである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記表裏両外面層用直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(イ)が、エチレンと炭素原子数3〜18のα−オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下に共重合して得られたものから選ばれる、請求項2,3又は5に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
- 前記中間層用直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(b)が、エチレンと炭素原子数3〜18のα−オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下に共重合して得られたものから選ばれる、請求項7に記載のポリオレフィン系樹脂高強度膜材。
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