JP3635928B2 - スクラッチ隠蔽層付印刷物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抽選券やゲーム用カード等に用いられるスクラッチ隠蔽層付印刷物に関するものであり、特に、不正使用防止のためのスクラッチ隠蔽層付印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インスタント宝くじやゲーム用カード等において、「当たり」「はずれ」に相当する絵柄や文字、番号等の情報を隠蔽するため、その上に隠蔽性スクラッチインキ層を施した印刷物が知られ、例えば、図3に示すように、印刷用紙(10)上の一部に隠蔽すべき機密情報層(40)が印刷等で施され、その上に機密情報層(40)を覆うように銀インキ等でなるスクラッチ隠蔽層(50)が施されたもので、この隠蔽層(50)のみを爪やコインで引っ掻くように剥がして、絵柄や文字や番号数字等でなる機密情報層(40)の内容を知るようになっているものである。
【0003】
しかしながら、上記機密情報層(40)の内容を、印刷用紙(10)の裏面より強力な光を与え不正に読み取られるという問題があり、その対策として種々試みられ、実用もされている。
【0004】
例えば、図4に示すように、中央に厚さ7〜10μmのアルミニウム箔(12)をサンドイッチした印刷用紙(10)としたものや印刷用紙(10)として厚紙を用いて、裏面からの強力光を遮断するものがある。
【0005】
しかし、前者のアルミニウム箔(12)をサンドイッチした印刷用紙(10)とするには、薄いアルミニウム箔のサンドイッチは困難な技術であり、厚いアルミニウム箔では材料コスト高となる問題があった。さらにこの印刷用紙(10)を用いた印刷物の使用後等における廃棄処理において焼却処理が一般的であるが、この焼却処理では、焼却炉の火格子等に溶けたアルミニウムが絡みつきその動きを悪くし、焼却効率を低下させたり、火格子等の損傷などの問題があり、さらにアルミニウムが焼却によりアルミナに変化し、焼却残滓の埋め立て処分時にその時の加湿によって、そのアルミナに吸着されていた有毒なアンモニアガスが発生するという廃棄物に係わる多くの環境上の問題がある。
【0006】
また、上記アルミニウム箔(12)のコストや環境問題等を解決するものとして、本発明者らは、上記アルミニウム箔(12)の代わりに黒い紙をサンドイッチした印刷用紙(10)を試作し、スクラッチ隠蔽層付印刷物とすることを試みたが、黒い紙が透けて見えて意匠性に欠けたり、さらにスクラッチ隠蔽層(50)の印刷に際し、その部分に予め非水系インキでなるニスを施すがその溶剤が印刷用紙(10)に浸透してさらに透けるようになり、抽選券の当たり番号等機密情報層(40)の機械読み取りに際しこの機密情報層(40)と下地の色(濃度)差不足となり読み取り不可能となるなど致命的な問題もあった。
【0007】
また、上記後者の印刷用紙(10)に厚紙を用いた場合は、隠蔽すべき文字や番号等を印字するプリンターの搬送系に故障等の不具合が発生したり、裏面よりの強力光を遮断しきれないため機密情報層(40)を薄くしたり、その裏面部(スクラッチ隠蔽層(50)に相当する厚紙の裏面部)に墨インキ層を施したりするなどもあるが、印刷用紙(10)の裏面での意匠性に欠けたり、裏面への一般印刷の面積が制約されたり、また上記のような機密情報層(40)の機械読み取り不可能となるなど制約事項が多くあるという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、抽選券やゲーム用カード等に用いられるスクラッチ隠蔽層付印刷物において、材料を含めた製造コストに優位で、廃棄物に係わる環境問題に配慮され、デザイン的にも制約がなく、裏面からの強力光を遮断し得て不正使用を防止するスクラッチ隠蔽層付印刷物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を達成するために、本発明では、印刷用紙の片面に文字、番号、絵柄等でなる機密情報層、該機密情報層を隠蔽するスクラッチ隠蔽層の順に施されたスクラッチ隠蔽層付印刷物において、該印刷用紙が、片面に墨インキコート層、他の面に白インキコート層が施されたプラスチックフィルムを、接着剤層を介して該白インキコート層面の上質紙等でなる薄い上部用紙と該墨インキコート層面の下部用紙とでサンドしてなり、該上部用紙面が、機密情報層を施す面であることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付印刷物としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
本発明のスクラッチ隠蔽層付印刷物は、図1に示すように、印刷用紙(10)の片面に文字、番号、絵柄等でなる機密情報層(40)、該機密情報層(40)を隠蔽するスクラッチ隠蔽層(50)の順に施されたスクラッチ隠蔽層付印刷物であって、この印刷用紙(10)に特徴を持たせたものであり、その層構成としては、下部から上質紙等でなる比較的薄い下部用紙(10b)、接着剤層(70)、墨インキコート層(20)、プラスチックフィルム(60)、白インキコート層(30)、接着剤層(70)、上質紙等でなる比較的薄い上部用紙(10a)としたものであり、この上部用紙(10a)の表面の一部に機密情報層(40)、スクラッチ隠蔽層(50)の順に積層したスクラッチ隠蔽層付印刷物である。
【0011】
上記構成の印刷用紙(10)の製造は、片面に墨インキコート層(20)、他の面に白インキコート層(30)を施したプラスチックフィルム(60)を、その白インキコート層(30)面に上部用紙(10a)、墨インキコート層(20)面に下部用紙(10b)がくるように接着剤層(70)を介して接着サンドして得られるものである。
【0012】
本発明に係わる上部用紙(10a)および下部用紙(10b)としては、従来の技術の項で述べたように、印刷用紙(10)全体の厚さが、厚紙(例えば坪量350g/m2 のコートボール)程度では機密情報層(40)の印字に際し、プリンターの搬送系に不具合が生じるので、紙換算で坪量40g/m2 〜160g/m2 が好ましいことから、上部用紙(10a)、下部用紙(10b)ともに、20g/m2 〜80g/m2 の例えば上質紙、中質紙、あるいはコート紙などが挙げられるが、この紙の種類に限定するものではない。
【0013】
また、本発明に係わるプラスチックフィルム(60)としては、例えば10μm〜100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0014】
また、上記プラスチックフィルム(60)に塗布する墨インキコート層(20)のためのインキとしては、一般的にはグラビアコート法、バーコート法あるいはロールコート法にて塗布するのでその方法に適したインキであり、さらにプラスチックフィルム(60)の種類に応じたトルエンや酢酸エチルなどの有機溶剤系インキや水溶性インキを使用する必要があり、例えばニューLPスーパー墨インキ(東洋インキ製造社製)などは上記コート法、プラスチックフィルム(60)の種類に対し汎用性の高いものとして挙げられるがこれに限定するものではない。また、この墨インキコート層(20)の厚さは、2〜3μmが上記コート法と裏面からの強力光の遮断を考慮すれば好適な値である。
【0015】
また、上記プラスチックフィルム(60)に塗布する白インキコート層(30)のためのインキとしては、墨インキコート層(20)の場合とほぼ同様であり、グラビアコート法、バーコート法あるいはロールコート法にて塗布するのでその方法に適し、さらにプラスチックフィルム(60)の種類に応じたインキを使用する必要があり、例えばニューLPスーパー白インキ(東洋インキ製造社製)などは上記コート法、プラスチックフィルム(60)の種類に対し汎用性の高いものとして挙げられるがこれに限定するものではない。またこの白インキコート層(30)の厚さは、2〜3μmが上記コート法と非水性のニスの浸透防止等を考慮すれば好適な値である。
【0016】
また、上記接着剤層(70)とする接着剤としては、一般的には天然物接着剤であるカゼイン系やアラビアゴムなどが挙げられ、合成水溶性接着剤であるポリビニールアルコール系、イソブテン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミドなど、エマルジョン接着剤であるスチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、n−ブチルメタクリレート等々が使用でき、接着強度、固着速度、カール性などを考慮して適性な接着剤を選定しなければならない。
なお以上の接着剤は、水溶性または水に分散したものであるのに対し、有機溶剤を溶媒とした接着剤は、墨インキコート層(20)を溶解する恐れがあるため好ましいものではない。
【0017】
一方他の接着方法としてポリエチレンの押し出しラミネーションによる方法も採用できる。具体的には、溶融したポリエチレンを上部用紙(10a)とプラスチックフィルム(60)、下部用紙(10b)とプラスチックフィルム(60)の間に押し出して3者を貼り合わせる方法で、巻き取り状素材の貼り合わせには高生産性の面から絶好の方法であり、冷却ロール間で即固化し、カール問題などもない管理のし易さに優位な方法でもある。
【0018】
本発明に係わるスクラッチ隠蔽層(50)としては、アルミニウム粉またはアルミニウムフレークを、ゴム系樹脂(例えばスチレン−ブタジエンラテックスなど)を主成分とするバインダーに分散させたインキでなり、スクリーン印刷法等で機密情報層(40)上に部分形成する。なおコイン等でスクラッチ隠蔽層(50)を擦り剥がすときに機密情報層(40)まで剥がれないようにするため通常は機密情報層(40)の上に非水系の透明ニスを施してからスクラッチ隠蔽層(50)を形成するものである。
【0019】
以上のような構成の印刷用紙(10)を用いたスクラッチ隠蔽層付印刷物は、印刷用紙(10)として従来の厚紙よりも比較的薄いものを使用することによって、隠蔽すべき文字や番号等を印字するプリンターの搬送系に不具合が発生ことがなく、また、白インキコート層(30)によって、例えば図2に示すように、非水系インキでなる透明ニス層(58)による浸透が遮断され、墨インキコート層(20)が透けなくなり、抽選券等の当たり番号等機密情報層(40)の機械読み取りがより容易で確実なスクラッチ隠蔽層付印刷物とすることができる。さらにこの白インキコート層(30)は、印刷用紙(10)の表面すなわち機密情報層(40)の面から見た白さを増加させ、表面の一般印刷層(44)形成に対する意匠性の制約のないものとすることができる。
【0020】
さらに、墨インキコート層(20)は裏面からの強力光を遮断するものであり、従来のようなアルミニウム箔を使用していないので、材料を含めた製造コストに優位で、かつ廃棄物に係わる環境問題にも配慮されたスクラッチ隠蔽層付印刷物(1)とすることができる。さらにこの墨インキコート層(20)上に下部用紙(10b)を施すことによって、裏面の一般印刷層(42)の面積等に制約されることがなく意匠性にも問題のないスクラッチ隠蔽層付印刷物(1)とすることがでる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、印刷用紙の片面に文字、番号、絵柄等でなる機密情報層、該機密情報層を隠蔽するスクラッチ隠蔽層の順に施されたスクラッチ隠蔽層付印刷物であって、この印刷用紙の構成に特徴を持たせたものであり、その層構成として、裏面から上質紙等でなる比較的薄い下部用紙、接着剤層、墨インキコート層、プラスチックフィルム、白インキコート層、接着剤層、上質紙等でなる比較的薄い上部用紙とし、この上部用紙の表面の一部に機密情報層、スクラッチ隠蔽層の順に積層したスクラッチ隠蔽層付印刷物としたので、隠蔽すべき文字や番号等を印字するプリンターの搬送系に不具合が発生ことがなく、印刷用紙の間に黒い紙をサンドイッチするのに比べて墨インキコート層が機密情報層側から透けて見えることはなく、従って機密情報層の機械読み取りも容易で確実なものとすることができる。さらに表面および裏面の一般印刷層の面積等に制約されることがなく、しかもアルミニウム箔を使用していないので、材料を含めた製造コストに優位で、かつ廃棄物に係わる環境問題にも配慮された、裏面からの強力光を遮断し得る不正使用対応可能なスクラッチ隠蔽層付印刷物とすることができる。
【0022】
従って本発明は、インスタント宝くじで代表される抽選券等のスクラッチ隠蔽層付印刷物において、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の事例形態を示すスクラッチ隠蔽層付印刷物を側断面で表した説明図である。
【図2】本発明に係わる印刷用紙に対する透明ニス層による浸透状態を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明に係わる従来の一般的なスクラッチ隠蔽層付印刷物の一事例を側断面で表した説明図である。
【図4】本発明に係わる従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物に用いられる印刷用紙の一事例を側断面で表した説明図である。
【符号の説明】
1‥‥スクラッチ隠蔽層付印刷物
10‥‥印刷用紙
10a‥‥上部用紙
10b‥‥下部用紙
12‥‥アルミニウム箔
20‥‥墨インキコート層
30‥‥白インキコート層
40‥‥機密情報層
42‥‥裏面の一般印刷層
44‥‥表面の一般印刷層
50‥‥スクラッチ隠蔽層
58‥‥透明ニス層
60‥‥プラスチックフィルム
70‥‥接着剤層
Claims (1)
- 印刷用紙の片面に文字、番号、絵柄等でなる機密情報層、該機密情報層を隠蔽するスクラッチ隠蔽層の順に施されたスクラッチ隠蔽層付印刷物において、該印刷用紙が、片面に墨インキコート層、他の面に白インキコート層が施されたプラスチックフィルムを、接着剤層を介して該白インキコート層面の上質紙等でなる薄い上部用紙と該墨インキコート層面の下部用紙とでサンドしてなり、該上部用紙面が、機密情報層を施す面であることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付印刷物。
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