JP3635323B2 - 薬液噴霧車 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は薬液噴霧車に関し、詳しくは、主として野菜畑等の畝間の谷間を手押しで走行させ、車体に搭載した動力噴霧手段て薬液剤を作物に散布する薬液噴霧車に関し、薬液タンクの構造を改良して使い勝手を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、背負型の噴霧機は作業者に多大の重労働を課すために、走行車輪を有する手押しタイプの薬液噴霧車が提案されている。この種の薬液噴霧車は、横に並んだ幅の広い2輪車や4輪車にすると、移動は楽であるが、畑の畝の谷間が細い場合には中に入れないことから、薬液を遠くに飛ばすか、先端にノズルの付いた長いホースを用いて作業する必要があり、いずれの場合も大きい動力を要するのみならず、作物の葉の裏面に散布ができず、かつ、ホースによって作物の損傷を招く恐れがあった。
【0003】
そのため、従来、1輪車タイプの薬液噴霧車が、特開平3−296458号公報、実公昭63−27804号公報、実公平3−1084号公報、実公平4−41960号公報、実公平7−55909号公報等において多数提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの1輪車型の噴霧機にも以下の問題点がある。
まず、畑の畝の間の狭い谷間を走行させるため、一輪車とされているが、一輪車であると、左右のバランスがとりにくく、運搬に非常に大きな力を必要とし、ハンドル操作する作業員の負担が大きくなる。
【0005】
また、特開平3−296458号公報及び実公平7−55909号公報に記載の薬液噴霧車は、側面視略円形の薬液タンクの外周面に車輪を被せた構造になっており、構造が複雑であり、製造コストが高くつくばかりか、背が高く安定性が悪いために移動時にバランスをとり難いという問題がある。
実公昭63−27804号公報、実公平3−1084号公報、実公平4−41960号公報に記載の散布機の場合は、車輪の上に薬液タンク等が載置されているので重心が高く不安定であり、作業が困難である上、構造が複雑であり、製造コストが高くなる。
実公平4−41960号公報に記載の散布機のように、後部に一対の静止用の脚を設けた構造の場合、車輪よりも幅広であるために畝問などの狭い場所で噴霧機を止めることができないという問題もある。
【0006】
また、薬液噴霧車においては、車体に設けた薬液タンク内に供給した薬液を残さずに使い切る必要があるが、従来の薬液タンクでは完全に残液無しにすることは困難であった。 即ち、薬液タンク内に吸管を垂下させ、該吸管先端の吸水口をタンク底面に横向きに置くか、先端を斜めカットしてタンク底面に置き、薬液をポンプで吸引させている。この構造であると、残液が少なくなった時に最後まで吸引しにくく、かつ、タンクの傾きや液の揺れにより吸管の中に空気が入りポンプによる吸引力が無くなる場合があり、タンク内の薬液の残量が多くなっている。このように、薬液の残量が多くなると、タンクの洗浄に手間取るだけでなく、残った農薬が次ぎに使用する別の農薬と混合して、作物に薬害を与える問題がある。
さらに、タンク内では吸管をタンク底面に置いているため、タンクの傾きやポンプの振動と吸管の吸水圧力で吸管の先がタンク底面や側面に吸い付き、吸水できなくなる場合もある。
【0007】
さらに、この種の畑の畝の谷間を走行させる薬液噴霧車では、車輪に土、泥が付着しやすく、付着した土や泥を掻き落とす必要がある。
従来は、これらの土や泥を掻き落とすためのスクレーパーとして、図10(A)(B)に示すように、長尺な鉄板Aや丸棒Bを車輪Wの回転軸Waと平行に配置している。
しかしながら、上記回転軸に平行配置した鉄板や丸棒からなるスクレーパーでは、車輪に付着する土や泥が多くなると、スクレーパーに大きな力が負荷され、スクレーパーの方が破損する問題がある。
【0008】
さらに、薬液噴霧車では、一般に薬液タンクと連通させたホースを作業員が把持して、ホース先端に取り付けられたノズルから薬液を噴霧している。そのため、作業員が薬液噴霧車を手押しで走行させながらホースを持って薬液を作業に散布する作業が必要となり、タンク容量が大きくタンク内に貯留した薬液により車体が重い場合には、作業者の負担が大きくなる。かつ、両側の畝の作物に薬液を噴霧する必要がある場合、一方側の畝の作物に薬液を噴霧した後に、他方側の畝の作物に薬液を噴霧しなければならず、作業時間および作業負担がかかる問題がある。
【0009】
本発明は上記列挙した問題、特に、薬液タンク内の薬液を残り無く使える構造とした薬液噴霧車を提供することを課題としている。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、薬液タンクを設けた車体と、該車体に搭載した動力噴霧手段とを備え、
上記薬液タンクの底面に一対のリブを突設し、該一対のリブの間に開口を設けると共に、この開口に向かって上記薬液タンクの底面全体を下方傾斜させ、かつ、これらリブに挟まれた底面の略中心に最下点となる窪み部を設けると共に、該窪み部の周縁の一部に開口する吸管狭持溝を設け、該吸管挟持溝に薬液吸管の先端をはめ込んで、該薬液吸管の先端の吸水口を上記窪み部の内部に向かって開口させ、
上記薬液タンク内の薬液を上記リブに挟まれた上記窪み内に溜めて、薬液タンク内の薬液が上記薬液吸管により残液なしに吸引される構成としている薬液噴霧車を提供している。
【0011】
上記のように、タンクの底面に傾斜を設けていることにより、薬液は最終的に上記窪みに溜まることとなる。この窪みに対して、吸管挟持溝で挟持した吸管を窪み部内部に開口しているため、タンク内の残液を残すことなく略完全に吸管に吸い込むことができる。
特に、吸管の先端の吸水口を窪み部内部に向かって先端吸水口を開口させて窪み内部に浮かせ、タンク底面が側面に当てないため、底面や側面に吸い付くことを防止でき、吸水 が出来なくなることが無いことで、薬液噴霧作業の中断がなく、かつ、ポンプを痛めることも防止できる。
さらに、残液を無くすことができるため、タンクの洗浄が簡単となり、かつ、次回に用いる農薬と交じり合って、薬液が散布された作物に薬害を発生させることも防止できる。
【0012】
上記薬液噴霧車は、上記走行車輪として、上記車体の両側板間に軸架した1本の車軸上に、2つのタイヤを隙間をあけずに隣接させて取り付け、かつ、これら2輪のタイヤを上記車軸に夫々回転自在に取り付けて、各タイヤが夫々独立して自由に回転できる構成としている。
具体的には、車体の前部に左右一対の車輪支持部を突設し、該車輪支持部の間に車軸を軸架して固定し、この車軸上に細幅で同径の2つの空気入りタイヤをベアリングを介して回転自在に取り付けている。該構成とすることで、2輪の走行車輪の車体の幅方向の中央位置に配置している。
さらに、上記車体はブロー成形で一体成形し、車体の車幅は畑の畝間の谷間を走行できる幅としている。上記走行車輪の車軸を固定する車輪支持部は、略直線状の車体の左右外側面より突出させていない。該構成とすることで、走行車輪を2輪としながら、細い畝の谷間を自在に走行させることができるようにしている。また、上記車体には薬液タンクも一体成形で設けている。
【0013】
上記のように、車幅の中央に2輪のタイヤを隣接配置して取り付けているため、車幅を拡大することなく、畝の間の狭い谷間を走行させることができる。また、2輪車であるため、一輪車で問題となっていた左右のバランスがとりつくい問題を解消でき、左右のバランスをとりながら安定した走行を実現できる。かつ、2輪が独立に回転できるようにしているため、非常に小さい回転ができ、幅の狭い畝の谷間での方向転回を容易に行うことができる。
【0014】
上記二輪のタイヤは、上記車体の前部あるいは/および後部に取り付けている。即ち、車体の前後に2輪を取り付けても良いが、いずれか一方でもよく、その場合は、他方は一輪のキャスターを取り付けることが好ましい。但し、一輪のキャスターを取り付けずに、車体の底部を円弧形状として接地させてもよい。
【0015】
また、上記薬液噴霧車において、上記走行車輪の外周面に付着する土や泥を掻き落とすために、走行車輪の上部にあたる上記車体の底面から、複数のピンを間隔をあけて突設して、スクレーパーとしている。
【0016】
前記したように、従来はスクレーパーとして車軸と平行に延在する棒や板を用いていたが、上記のように複数のピンを用いているため、土や泥を掻き落とす時にスクレーパーにかかる負荷を減少できる。かつ、スクレーパーのピンを車体と一体形成し、あるいは車体に固定しているため、ピンの強度を高めることができ、その結果、車輪の外周面に大量の土や泥が付着しても、スクレーパーのピンにより掻き落とすことができる。
【0017】
特に、上記スクレーパーのピンは、その断面形状を車輪の周方向に長い楕円形状としていることが好ましい。このように、周方向の長い楕円形状とすると、ピンに負荷される荷重をより小さくできると共に、周方向に長くすることで掻き落とし効果を高めることができる。
さらに、スクレーパーのピンを千鳥配置(即ち、車軸方向に間隔をあけると共に、周方向に間隔をあけて配置)すると、ピンが土や泥に当たる時間をずらせて、ピンにかかる負荷をさらに減少できる。
スクレーパーのピンが占める車輪幅に対する割合は、約20%程度とすることが好ましく、この割合でピンを突設すると、車輪外周面全体に付着する土や泥を確実に掻き落とすことができる。
【0018】
削除
【0019】
削除
【0020】
削除
【0021】
さらに、車体に搭載した動力噴霧手段は、上記車体に搭載したエンジン、モータ等の駆動源で駆動されるポンプと、該ポンプの吸入口に連通させると共に上記薬液タンクに先端を垂下させた薬液吸管と、上記ポンプの吐出口に連通させる2本のホースと、これら各ホースの先端に接続したノズル付設管と、各ノズル付設管に間隔をあけて取り付けた薬液噴霧ノズルを備え、
上記2本のノズル付設管は、車体に設置した昇降兼開閉機構に取り付けて、車体の両側に所要角度で開くと共に高さ位置が調節できる構成としている。
【0022】
上記ノズル付設管に畝の間隔と対応させた間隔をあけてノズルを取り付けているため、薬液噴霧車を中心として左右両側の複数の畝の作物に同時に薬液を散布することができる。また、該ノズル付設管の傾斜角度(左右への開き角度)を調節することにより、作物の高さに応じてノズル付設管の高さ調節が可能となる。
なお、作業員が把持するホースの先端にノズル付設管を設けたものを選択的に付け替えて、作業員がホースを持ってノズルより薬液を散布させている構成としても良いことは言うまでもない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の薬液噴霧車1の全体を示し、2はブロー成形により一体成形した車体、3(3A、3B)は前輪となる2輪の空気入りタイヤ、4は後輪となる一輪の走行車輪、5は車体2の後部に取り付けたハンドル、6は車体2の前部に取り付けた薬液噴霧ノズル装置、7(7A、7B)は薬液供給ホースである。
上記車体2の中央部に薬液タンク8を形成すると共に、車体2の後部に薬液タンク8内の薬液9を吸引吐出するためのポンプ10、該ポンプ駆動用のモータ11を搭載している。薬液タンク8には、上面の蓋12を取り外して、農薬と水を投入するようにしている。
【0024】
図2および図3に示すように、2輪の空気入りタイヤ3A、3Bは、細幅で同径としている。車体2の前部に突設した左右一対の腕状の車輪支持部2a、2b間に1本の車軸13を固定し、この車軸13上に、タイヤ3A、3Bを隙間をあけずに隣接させて、ベアリングを介して夫々独立して回転自在に取り付けている。
車体2の車幅Wは畑の畝間の谷間を走行できる幅としており、上記車輪支持部2a、2bは車体2の両側板部2c、2dより外方へ突出させずに直線状に突出させ、よって、前輪となる2つのタイヤ3A、3Bを車体2の車幅W内に収めている。
【0025】
後輪4は図3に示すように、一輪のキャスターからなり、前輪よりも小径として小回りが効くようにしており、樹脂製ドラムあるいは金属製ドラムの外周面にゴムを取り付けた構造である。この後輪4の支軸4aは、車体2の後端下方に設けた軸受部で回転自在に支持している。この左右軸受部には、縦長なコ字形状のハンドル5の左右縦枠部の下端を固定し、ハンドル5の方向操作を後輪4に伝達している。
【0026】
上記タイヤ3A、3Bからなる二輪の前輪に付着した土砂、泥を掻き落とすスクレーパとして、図5(A)(B)(C)に示すように、タイヤ3A、3Bの外周面と対向する上記車体2の底面2e(薬液タンク8の前端側底面)に間隔をあけて、複数のピン14を車体2より突設している。
【0027】
上記スクレーパーのピン14は、その断面形状を車輪の周方向に長い楕円形状とし、かつ、車軸方向と周方向との間隔をあけて交互に配置し、言わば、千鳥配置としている。本実施形態では、1つのタイヤに2本のピン14が周方向に位相して車輪外周面に付着した泥等に当たるようにし、合計4本のピンを配置している。これらのピン14が車輪幅に対する割合は、約20%程度としている。
【0028】
車体2と一体成形で設ける薬液タンク8は、上記車軸支持部2a、2bを突設した前端側より車体後部の動力源搭載部を除く車体の中央領域に設けており、車体2を小型化している割りに薬液タンク8の容量を大としている。この薬液タンク8内に薬液9を充填すると、車輪3、4よりの車軸より下方まで薬液が入り、車体の重心を非常に低位置に設定できるようにし、これにより安定した走行を可能としている。
【0029】
図6(A)(B)(C)に示すように、底面8aの中央部近傍に一対の残液防止用のリブ8b、8bを対向して突設し、これらリブ8b、8bに挟まれた底面8aー1の略中心に最下点となる球状の窪み部8dを形成している。本実施形態では、この窪み部8dは直径30mm〜80mm、好ましくは50mm〜60mm、深さは10mm〜30mm、好ましくは20〜25mmとして、所要量の薬液を溜められるようにしている。
【0030】
上記最下点の窪み部8dの周縁の一部に開口する断面U形状の吸管挟持溝8eを凹設している。この吸管挟持溝8eに薬液吸管15の先端近傍をはめ込んで、該薬液吸管15の先端吸水口15aを窪み部8dの内部に向かって開口させている。この状態で、吸水口15aは窪み部8d内に浮いた状態で保持され、薬液吸管の先端が底面に吸い付いつくことを防止している。この薬液吸管15はポンプ10の吸引口と接続し、ポンプ10の作動で、窪み部8d内の薬液を最後の一滴まで吸引するように設定している。
【0031】
図6(D)に示すように、上記一対のリブ8bは隙間をあけて突設して、リブにより遮蔽されない開口8fを設け、この開口8fに向かって、薬液タンク8の底面8a全体を下方傾斜させている。該構成により、薬液タンク8内の薬液9をリブ8bに挟まれた空間内に流下させ、最終的に窪み部8d内に溜め、薬液タンク8内の薬液9が薬液吸管15により残液なしに吸引される構成としている。
【0032】
車体2に搭載する動力噴霧手段として、車体後部に前記ポンプ10、該ポンプ駆動用のエンジン11を搭載している。図1及び図2に示すように、ポンプ10の吸引口は前記のように薬液吸管15と接続し、吐出口に接続する吐出管19に2本のホース7A、7Bを分岐接続している。これら2本のホース7A、7Bは車体2の上面側で後部へと配管して、車体2の前部上面に付設した薬液噴霧ノズル装置6のノズル付設管16(16A、16B)にそれぞれ接続している。
【0033】
各ノズル付設管16A、16Bは夫々複数の畝U(本実施形態では1本のノズル付設管で3本の畝、合計6本の畝)の作物に薬液を噴霧できる程度の長とし、間隔をあけて複数のノズル17(本実施形態では各3個)を取り付けている。これらのノズル17は、ノズルを回転させることにより噴射を停止でき、かつ、噴射方向の調節も可能なものを用いている。
【0034】
薬液噴霧ノズル装置6はまた、上記左右一対のノズル付設管16A、16Bは、車体2の上面に固定したリンク式の昇降兼開閉機構20により高さ調節および開き角度の調節を可能としている。
即ち、昇降兼開閉機構20は、支柱21、該支柱21に中央部を昇降自在に外嵌した横軸22、該横軸22の両端に回転自在に軸着したリンク24A、24B、これらリンク24A、24Bの他端と支柱21とにピン26で連結したリンク25A、25Bとからなる。上記リンク24A、24Bにノズル付設管16A、16Bを連結している。
【0035】
上記4本のリンク24A〜25Bの作動により、ノズル付設管16A、16Bは図2で示す垂直方向の実線位置から点線で示す水平方向の位置まで90度で開閉される。即ち、横軸22が支柱21に対して最下点位置にある時、ノズル付設管は垂直方向となり、上方へと移動させると左右に開き、最上点位置に達すると水平位置となる。
【0036】
また、支柱21とリンク25A、25Bとを連結するピン26の位置を上下動可能としており、それにより、ノズル付設管16A、16Bの高さを調節可能としている。
【0037】
このように、薬液を噴霧するノズル17を取り付けたノズル付設管16A、16Bを開閉および高さ調節可能としているため、作物の高さに応じた位置に調節して、最適位置から作物に薬液を噴霧できるようにしている。
【0038】
上記した構成からなる薬液噴霧車では、まず、走行時に、前輪を2輪の空気入りタイヤ3A、3Bとし、車体2の幅方向の中央位置に隣接配置しているため、走行車輪を2輪としながら、車幅を拡大することなく、畝の間の狭い谷間を自在に走行させることができる。かつ、2輪車であるため、一輪車で問題となっていた左右のバランスがとりつくい問題を解消でき、走行路面に凹凸があっても左右のバランスをとりながら安定した走行を実現できる。
さらに、2輪が独立に回転できるようにしているため、非常に小さい曲率ができ、幅の狭い畝の谷間での方向転回を容易に行うことができる。
【0039】
また、走行車輪の外周面に付着する土や泥を掻き落とすために、複数のピン14を用いているため、土や泥を掻き落とす時にスクレーパーにかかる負荷を減少できる。特に、ピン14の断面形状を周方向に長い楕円形状としているため、ピン14に負荷される荷重をより小さくできると共に、周方向に長いことにより掻き落とし効果を高めることができる。さらに、千鳥配置としているため、ピン14が土や泥に当たる位置がずらされ、ピン14にかかる負荷をさらに減少できる。 畝の間の谷間を走行させると大量の泥が車輪の外周面に付着するが、上記のように、スクレーパーをピン14とし、かつ、車体2に固定しているため強度も大きく、さらに、楕円状で、千鳥配置としているため、車輪の外周面に付着する大量の土や泥を確実に掻き落とすことができる。
【0040】
一方、薬液タンク8からの薬液9の吸い出しに関しても、薬液タンク8の底面8aに傾斜を設けていることにより、薬液9は最終的に上記窪み部8dに溜まることとなる。この窪み部8dに対して、吸管挟持溝8eで挟持した薬液吸管15を吸水口を開口しているため、薬液タンク8内の残液を残すことなく略完全に薬液吸管15に吸い込むことができる。
特に、薬液吸管15の先端の吸水口15aを窪み部8d内に浮かせ、薬液タンク8の底面や側面に当てないため、底面や側面に吸い付くことを防止でき、吸水が出来なくなることが無いことで、薬液噴霧作業の中断がなく、かつ、薬液ポンプ8を痛めることも防止できる。
また、窪み部8dを囲むようにリブ8bを設けているため、車体が傾いても、リブ8b内の薬液の飛び出しを防止でき、残液をリブ8b内に溜めて、最終的に窪み部8dに溜めることができる。
このように、残液を無くすことができるため、薬液タンク8の洗浄が簡単となり、かつ、次回に用いる農薬と交じり合って、薬液が散布された作物に薬害を発生させることも防止できる。
【0041】
上記薬液タンク8よりポンプ10により吸引されて、所要の圧力で吐出される薬液9はホース7A、7Bを通して車体2の前部のノズル噴射装置6へと導かれ、左右一対のノズル付設管16A、16Bの取り付けたノズル17より噴霧される。各ノズル17はノズル付設管16A、16Bにそれぞれ畝の間隔と対応させて間隔をあけて取り付けているため、薬液噴霧車を中心として左右両側の複数の畝の作物に同時に薬液を散布することができる。また、ノズル付設管16を上記のように左右方向に開閉操作して傾斜角度(左右への開き角度)を調節することができると共に、高さも調節できるため、作物Yの高さや生育状況に応じてノズル付設管16(16A、16B)の高さを調節して、最適位置から作物に薬液を噴霧することができる。
【0042】
本発明は上記実施形態に限定されず、図7に示すように、作業員が把持するホース30の先端にノズル付設管16’を設けたものを、ポンプ吐出口に接続した配管に選択的に付け替えて使用してもよい。この場合は、薬液噴霧ノズル装置による自動薬液噴霧に代えて、作業員がホースを持って所要の作物にのみ薬液を散布させることができる。
【0043】
また、図8に示すように、車輪に付着した土砂を掻き落とすためのスクレーパーのピン14’を車体2と一体成形で設けた突起から形成してもよい。かつ、該突起からなるピン14’を円筒状の突出させて丸ピン状とし、かつ、車輪の軸線方向に間隔をあけて当たるように配置してもよく、必ずしも前記実施形態のように千鳥配置とする必要はない。
【0044】
さらに、走行車輪の取付形態も上記実施形態に限定されず、図9(A)に示す後輪4’も前輪3と同様なタイヤからなる二輪車としてもよい。この場合、後輪は小径とすることが好ましい。さらに、図9(B)に示すように、前輪3’を一輪とし、後輪4’を二輪としてもよい。さらに、図9(C)に示すように、前輪3二輪車とし、後輪はキャスターを取り付けずに、車体2の底部に円弧形状部2g’を設けて接地させてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の薬液噴霧車によれば、薬液タンクの底面に一対のリブを突設し、これらリブに挟まれた底面の略中心に最下点となる窪み部を設けると共に、該窪み部の周縁の一部に開口する吸管挟持溝を設け、該吸管挟持溝に薬液吸管の先端をはめ込んで、該薬液吸管の先端の吸水口を上記窪み部の内部に向かって開口させているため、薬液タンク内の残液を残すことなく略完全に薬液吸管に吸い込むことができる。また、底面や側面に吸い付くことを防止でき、吸水が出来なくなることが無いことで、薬液噴霧作業の中断がなく、かつ、薬液ポンプを痛めることも防止できる。
また、走行車輪として、前輪あるいは/および後輪として、同径の2つの空気入りタイヤをベアリングを介して回転自在に取り付けているため、走行車輪を2輪としながら、車幅を拡大することなく、畝の間の狭い谷間を自在に走行させることができると共に、2輪車であるため、左右のバランスをとりながら安定した走行を実現できる。さらに、2輪が独立に回転できるようにしているため、非常に小さい回転ができ、幅の狭い畝の谷間での方向転回を容易に行うことができる。
【0046】
さらに、走行車輪には大量の土砂が付着するが、車輪の外周面に当たる位置に上記車体の底面から、複数のピンを、車体と一体形成/あるいは車体に固定して間隔をあけて突設し、これらのピンをスクレーパーとしているため、車輪外周面全体に付着する土や泥を確実に掻き落とすことができる。
【0047】
削除
【0048】
さらに、薬液の噴霧機構として、薬液噴霧ノズル装置を付設し、そのノズル付設管を左右に開閉可能で、かつ高さ調節可能としているため、作物の高さや生育状況に応じてノズル付設管の高さち可能となり、最適位置から薬液を噴霧できる。かつ、複数の畝の作物に自動的に薬液を噴霧でき、作業者は薬液噴霧車を手押しするだけで良いため、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の薬液噴霧車の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】 上記薬液噴霧車の側面図である。
【図3】 上記薬液噴霧車の底面図である
【図4】 上記薬液噴霧車の薬液タンクの容量を示す一部破断図である。
【図5】 上記薬液噴霧車に取り付けたスクレーパーの構造を示し、(A)は概略断面図、(B)は斜視図、(C)はスクレーパーのピンの形状および配置形態を示す概略図である。
【図6】 上記薬液噴霧車の薬液タンクを示し、(A)は断面図、(B)は要部斜視図、(C)は要部拡大断面図、(D)は要部斜視図である。
【図7】 本発明の変形例の薬液噴霧車を示す図面である。
【図8】 (A)(B)はスクレーパーの変形例を示す図面である。
【図9】 (A)(B)(C)は車輪の変形例を示す図面である。
【図10】(A)(B)は、従来のスクレーパーの構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1 薬液噴霧車
2 車体
3(3A、3B)前輪となるタイヤ
4 後輪
5 ハンドル
6 薬液噴霧ノズル装置
7A、7B 薬液供給ホース
8 薬液タンク
8b リブ
8d 窪み部
9 薬液
10 ポンプ
11 エンジン
15 薬液吸管
16 ノズル付設管
17 ノズル
Claims (1)
- 薬液タンクを設けた車体と、該車体に搭載した動力噴霧手段とを備え、
上記薬液タンクの底面に一対のリブを突設し、該一対のリブの間に開口を設けると共に、この開口に向かって上記薬液タンクの底面全体を下方傾斜させ、かつ、これらリブに挟まれた底面の略中心に最下点となる窪み部を設けると共に、該窪み部の周縁の一部に開口する吸管狭持溝を設け、該吸管挟持溝に薬液吸管の先端をはめ込んで、該薬液吸管の先端の吸水口を上記窪み部の内部に向かって開口させ、
上記薬液タンク内の薬液を上記リブに挟まれた上記窪み内に溜めて、薬液タンク内の薬液が上記薬液吸管により残液なしに吸引される構成としている薬液噴霧車。
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