JP3634991B2 - アニオン性界面活性剤及び洗浄剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアニオン性界面活性剤およびそれを含有する洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、脂肪族系アルコール類とリン酸類とのエステルからなる、肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物を疎水基とするリン酸エステル(塩)型アニオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物からなる、シャンプー、食器用洗浄剤、金属等の硬質表面洗浄剤が知られている(例えば、特開昭62−192497号公報、特開昭62−138593号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの洗浄剤組成物に配合されるリン酸エステル(塩)型アニオン性界面活性剤は、低温で長期保存した場合に、外観がかすむ等の製品の経日安定性や、起泡性、洗浄性、人体の皮膚刺激性について問題が残されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物を疎水基とするリン酸エステル(塩)型アニオン界面活性剤が、製品の経日安定性、その他の問題が解決できることを見いだし、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)のリン酸エステル(塩)(B)からなり;(A)が、触媒(d)の存在下、脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)、または(A1)に、アルカリ触媒(e)の存在下、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)を付加反応させてなり下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であることを特徴とするアニオン性界面活性剤;過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である触媒(d)の存在下に炭素数8〜24の脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され、下記式(4)から求められる分布定数cが1.0以下である脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)または(A1)にアルカリ触媒(e)の存在下に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)[(b3)は(b2)と同じであっても異なっていてもよい]を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であって、下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)を、未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、リン酸エステル化して、(A1)もしくは(A2)のリン酸エステル(塩)(B)を製造することを特徴とするアニオン性界面活性剤の製造方法;上記アニオン性界面活性剤からなる洗浄剤組成物;並びに上記洗浄剤組成物からなる皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤または家庭用洗剤である。
【0006】
▲1▼脂肪族系アルコール(a1)のアルキレンオキサイド(b1)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数]
▲2▼重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
[但し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、上記一般式(1)でのkの平均に相当する。]
▲3▼下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a1)のモル数、n0 は未反応の(a1)のモル数を表す。]
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のアニオン性界面活性剤において、リン酸エステル(塩)(B)は、上記▲1▼〜▲3▼を満たす(A)のリン酸エステル(塩)であれば、特に限定されず、リン酸モノエステル(塩)、リン酸ジエステル(塩)、ポリリン酸のエステル(塩)などが含まれるが、下記一般式(5)で表される1種以上であることが界面活性能の点から好ましい。
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数;XはQ2 またはR2−(OA’)k’−基を表す。Q1 およびQ2 は、Hまたはカチオン性対イオン;R2 は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数1〜24の脂環式炭化水素基;A’は炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;k’は平均が1〜20となる0または1以上の整数を表す。〕
(B)中の一般式(5)で表される化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0008】
(B)を表す式(5)において、XがQ2 の場合がリン酸モノエステル(塩)、XがR2−(OA’)k’−基の場合がリン酸ジエステル(塩)に相当するが、界面活性剤としての用途に応じていずれであってもよい。
界面活性能の点から、モノエステル(塩)とジエステル(塩)の合計に基づくモノエステル(塩)の含量は、60質量%以上が好ましく、70〜99質量%のものがさらに好ましい。
Q1 およびQ2 基としては、中和に用いる塩基の種類により異なるが、水素およびカチオン性対イオンが挙げられる。カチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)イオンなどの金属イオン;アンモニウム(アンモニウム、トリメチルアンモニウムなど)イオン、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)イオンなどが挙げられる。
また、式(5)において、R2−(OA’)k’−基におけるR2 −基の例としては、R1 −基の例として後述する基の他に、メチル、エチル、イソプロピル、ヘキセニル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜7の炭化水素基が挙げられ、A’としては後述するAと同じものが挙げられるが、R2−(OA’)k’−基としては、R1−(OA)k−基が好ましい。R1−(OA)k−基は、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)の残基である。
【0009】
本発明において、(A)は、脂肪族系アルコール(a1)(本明細書中、脂肪族系アルコールとは、脂肪族アルコールと脂環式アルコールの両者を含むものとする。)にアルキレンオキサイド(b1)を付加して得られる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物の1種または2種以上の混合物であり、下記一般式(1)で表される。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数]
【0010】
上記一般式(1)において、R1 は、脂肪族系アルコール(a1)の残基であり、炭素数が通常8〜24の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基など)または脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、多環炭化水素基など)を表す。R1 は、直鎖状と分岐状など2種以上の基の混合物であってもよい。炭素数8未満では、十分な起泡力、洗浄力が得られず、炭素数が24を超えると起泡力、洗浄力が劣り、好ましくない。
R1 の具体例としては、アルキル基としては、オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、セチル、ステアリル、ノナデシル、2−エチルヘキシル、2−エチルオクチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、オクテニル、デセニル、ドデセニル、トリデセニル、ペンタデセニル、オレイル、ガドレイル基などが挙げられる。アルカジエニル基としては、リノレイル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、オクチルシクロヘキシル、ノニルシクロヘキシル基などが挙げられる。多環炭化水素基としては、アダマンチル基などが挙げられる。
【0011】
一般式(1)中、Aは炭素数2以上、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは炭素数2または3のアルキレン基を表し、(OA)の部分は、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b1)の付加により形成される。このようなアルキレンオキサイド(b1)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−または2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイドなどが挙げられる。好ましくはEOおよび/またはPOである。
一般式(1)中、kは(b1)の付加モル数に相当し、平均が1〜20となる整数であり、好ましくは1〜12である。kが20を超えると、十分な起泡力、洗浄力が得られず好ましくない。
【0012】
前記脂肪族系アルコール(a1)は、R1 残基を与えるものであり、炭素数が通常8〜24(好ましくは12〜18)のアルコールであり、天然アルコールでも合成アルコール(チーグラーアルコール、オキソアルコールなど)でもよい。具体例としては、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール;オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール;エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコールなどの環状脂肪族アルコールが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用出来る。これら脂肪族系アルコールは1級または2級が好ましく、さらに1級が好ましい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。特に好ましくはドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコールである。
【0013】
(A)としては、工程が煩雑でないことから、(a1)と(b1)から直接製造されたものであることが好ましい。ここで、「直接製造された」とは、上記付加物が、精留などにより未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、直接得られたものであることを意味する。但し、分別を目的としないで、簡単な操作で未反応アルキレンオキサイドや低沸点物をストリッピングしたものは分別操作に含まれない。
【0014】
また、本発明で、(A)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす必要がある。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
これらの式で、Ln(v)はvの自然対数を意味し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、前記一般式(1)でのアルキレンオキサイドの付加モル数であるkの平均に相当する。(以下同じ)
関係式(2)または(3)を満たさない、すなわち分子量分布が広くなると、アニオン性界面活性剤としたときに、充分な界面活性能が得られない。
また、Mw/Mnは下記関係式(2’)または(3’)を満たすことが好ましい。
Mw/Mn≦0.031×Ln(v)+1.000 (但し、v<10)(2’)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.129(但し、v≧10)(3’)
【0015】
一般式(1)においてAがエチレン基のみである場合、即ち、脂肪族系アルコール(a1)にエチレンオキサイドのみを付加した場合には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが関係式(2)または(3)に代わって、下記(6)または(7)を満たすことが好ましい。
Mw/Mn≦0.020×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(6)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.116(但し、v≧10)(7)
関係式(6)または(7)を満たす場合、即ち分子量分布が狭くなると、アニオン性界面活性剤としたときに、良好な界面活性能が得られる。
また、この場合、Mw/Mnは下記関係式(6’)または(7’)を満たすことがさらに好ましい。
Mw/Mn≦0.018×Ln(v)+1.015 (但し、v<10) (6’)
Mw/Mn≦−0.023×Ln(v)+1.113(但し、v≧10)(7’)
【0016】
さらに、(A)は、下記Weibullの分布則の式(8)から導き出される関係式(4)から分布定数cを求めることができるとき、cが2.0以下である必要がある。cは好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.7以下である。関係式(4)において、分布定数cの値が小さい、すなわち未反応の脂肪族系アルコールの含有量が少ないほど分子量分布が狭いことを意味する。
なお、この式は、未反応の脂肪族系アルコール(a1)の量が検出限界(0.001質量%)以上の場合に適用される式であり、(A)の場合はアルキレンオキサイド(b1)の平均付加モル数が12モル程度まで適用可能である。
cが2を超えると、アニオン性界面活性剤としたときに、充分な界面活性能が得られない。
v=c×Ln(n00/n0)−(c−1)×(1−n0/n00) (8)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
これらの式で、Ln(n00/n0)は(n00/n0)の自然対数を意味し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた脂肪族系アルコール(a1)のモル数、n0 は未反応の脂肪族系アルコール(a1)のモル数を表す。
【0017】
本発明において、上記(A)としては、さらに下記一般式(1’)で表される化合物であることが、起泡力の点で好ましい。
R1−[(OC2H4)m/(OD)n]−(OC2H4)p−OH (1’)
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Dは炭素数3または4のアルキレン基;mは平均が0〜5となる0または1以上の整数、nは平均が0〜5となる0または1以上の整数、pは平均が1〜10となる0または1以上の整数であり、(m+n+p)は平均が1〜20となる整数であり、(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上である。{(OC2H4)m/(0D)n}は、m≠0,n≠0のときブロック付加またはランダム付加を表す。]
【0018】
上記一般式(1’)中、(OC2H4)の部分は、EOの付加により形成される。Dは炭素数3または4のアルキレン基を表し、(OD)の部分は、炭素数3または4のアルキレンオキサイドの付加により形成される。このようなアルキレンオキサイドとしては、PO、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0019】
上記一般式(1’)中、mは平均が0〜5となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは0〜3の整数である。nは平均が0〜5となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは0または1である。pは平均が1〜10となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは1〜8である。(m+n+p)は平均が1〜20の整数であり、さらに好ましくは1〜12である。(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。0.5以上であると、アニオン性活性剤としたときの洗浄力が良好となる。{(OC2H4)m/(OD)n} の部分は、ブロック付加〔(OC2H4)m、(OD)nの順〕 でもランダム付加でもよいが、さらに好ましくはブロック付加である。
【0020】
本発明において、(A)としては、以下に述べる方法により製造された(A1)または(A2)であることが好ましい。
すなわち、前記の、Weibullの分布則から導かれる式(4)から求められる分布定数cが2.0以下となる付加物を与える触媒(d)の存在下、前記脂肪族系アルコール(a1)にアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加して得られる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)であるか、(A1)にさらにアルカリ触媒(f)の存在下でアルキレンオキサイド(b3)を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であるのが好ましい。さらに好ましくは(A2)である。
【0021】
上記アルキレンオキサイド(b2)および(b3)としては、炭素数2以上のアルキレンオキサイドが挙げられる。具体例としては、一般式(1)におけるOAを形成するアルキレンオキサイド(b1)の例として前記したアルキレンオキサイドが挙げられ、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよいが、好ましくはブロック付加である。これらのうちで好ましくは、EOおよび/またはPOである。
【0022】
触媒(d)としては、得られるアルキレンオキサイド付加物の分布定数cが2.0以下となるものを用いる。好ましくはcが1.0以下、さらに好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.45以下となるものである。分布定数cが2.0を超えるものを用いると、アニオン性界面活性剤とした場合に、低温でカスミを生じたり、起泡性、洗浄性が低下する。また、皮膚に対する刺激性が低くならず、問題となることがある。
【0023】
触媒(d)の具体例としては、過ハロゲン酸もしくはその塩、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩が挙げられる。塩を形成する場合の金属は、特に限定されるものではないが、アルカリ金属以外のものが好ましく、2価または3価の金属が好ましい。
これら金属として好ましくは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co、Ni、Cu、Alであり、より好ましくは、Mg、Zn、Ca、Sr、Ba、Alであり、特に好ましくは、Mg、Zn、Alである。過ハロゲン酸(塩)のハロゲンとしては塩素、臭素、沃素が挙げられ、塩素が好ましい。
したがって、(d)としては、2価もしくは3価の金属の過塩素酸塩が好ましく、Mg、ZnおよびAlから選ばれる金属の過塩素酸塩がさらに好ましい。また、(d)に2価もしくは3価の金属アルコラートを併用してもよい。金属アルコラートのアルキル基としては、アルコールとして留去し易い低級(炭素数1〜4)アルキル基、または原料脂肪族系アルコールと同一組成のアルキル基が挙げられる。これらの触媒は1種でもよいが、2種以上の触媒〔たとえば、過塩素酸マグネシウム/硫酸マグネシウム7水塩=95/5〜50/50、過塩素酸マグネシウム/過塩素酸アルミニウム=99/1〜30/70(いずれも質量比)〕を併用した方が好ましい。
【0024】
触媒(d)の使用量としては、反応速度と経済性の点から、(a1)と(b2)の合計100質量部当たり、0.001〜1質量部が好ましい。さらに好ましくは0.003〜0.8質量部、特に好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0025】
(a1)に(b2)を付加して得られるアルキレンオキサイド付加物(A1)に、アルキレンオキサイド(b3)を付加させる際に用いる触媒は、アルカリ触媒(e)である。
アルカリ触媒(e)としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられるが、より好ましくは水酸化カリウム、水酸化セシウムである。
触媒(e)の使用量としては、反応速度と経済性の点から、(A1)と(b3)の合計100質量部当たり、0.0001〜1質量部が好ましい。さらに好ましくは0.001〜0.8質量部である。
【0026】
(a1)と(b2)を反応させる場合の反応条件としては、(a1)と(d)を混合し、窒素置換を行った後、−0.8〜5kgf/cm2 Gで、80〜200℃で(b2)を導入し、所定量の(b2)を投入後、80〜200℃で反応系内の圧力が平衡になるまで熟成を行う方法などが挙げられる。
このようにして得られたアルキレンオキサイド付加物(A1)に、アルカリ触媒(e)を添加し、アルキレンオキサイド(b3)を、上記と同様の方法で反応することで、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)が得られる。
【0027】
(A)からリン酸エステル(塩)(B)を得る方法としては特に限定されないが、(A)と、リン酸、ポリリン酸、無水リン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤との反応によりリン酸化し、アルカリ金属の水酸化物、アミン等で中和する方法などが挙げられる。リン酸化はリン酸エステル化と同じであり、モノエステル、ジエステルなどが生成する。
一例として、(A)と無水リン酸の反応としては、反応温度は通常30〜150℃、好ましくは60〜130℃で、窒素雰囲気中で行い、(A)のリン酸ジエステルを得る。次いで、反応に用いた無水リン酸と等モルの水を加えて加水分解し、(A)のリン酸モノエステルを得る。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。
(A)と無水リン酸の反応モル比は、リン酸モノエステルを主成分として得る場合は、好ましくは2.0:1.15〜2.0:0.85、さらに好ましくは2.0:1.05〜2.0:0.95であり、リン酸ジエステルを主成分として得る場合は、好ましくは1.0:0.4〜1.0:0.6、さらに好ましくは1.0:0.45〜1.0:0.55である。
リン酸化の終点は56100/(エステル化物の分子量)で表される酸価(AV)が、理論値の90〜110%となる点であり、好ましくは、95〜105%となる点である。
その後、NaOH、KOHなどのアルカリ金属の水酸化物;Ba(OH)2 などのアルカリ土類金属の水酸化物;メチルアミン、ブチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、炭素数1〜10のモノ−、ジ−、トリ−のアルキルおよび/またはアルカノールアミン、並びにアンモニアなどのアミン類;などの水溶液を用いて中和し、目的の(B)を得る。中和度は随時に選択出来るが、好ましくは10%水溶液のpHが4〜9である。
【0028】
本発明のリン酸エステル(塩)(B)からなるアニオン性界面活性剤は、起泡性、洗浄性に優れる。また、▲1▼〜▲3▼を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)中にはその原料の脂肪族系アルコールが少ないので、そのリン酸エステル(塩)中にも少なく、人体の皮膚刺激性の少ないものとなる。また、臭気も改善される。
【0029】
本発明の(B)からなるアニオン性界面活性剤は、単独で洗浄剤として用いてもよいが、必要により、本発明の効果を妨げない量の本発明以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を配合して洗浄剤組成物とすることができる。また、洗浄剤組成物のpHは特に限定されないが、人体に対する安全性の面から中性〜弱酸性(例えば、pH4〜9)が好ましい。
洗浄剤組成物中の界面活性剤有効成分(固形分換算)の配合割合(質量%)は、本発明のアニオン性界面活性剤が、好ましくは3〜60%であり、さらに好ましくは5〜50%である。本発明以外のアニオン性界面活性剤を用いる場合、本発明のアニオン性界面活性剤との合計量に対して、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下であり、かつアニオン性界面活性剤の合計の配合割合が上記範囲内であることが好ましい。また、ノニオン性界面活性剤は、好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは1〜30%である。カチオン性界面活性剤は、好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは0.05〜3%である。両性界面活性剤は、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは1〜30%である。
【0030】
具体的には、本発明以外のその他のアニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜24の炭化水素系エーテルカルボン酸またはその塩、[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素系硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、]、炭素数8〜24の炭化水素系スルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]及び炭素数8〜24の炭化水素系リン酸エステル(塩)[ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム(本発明以外のもの)等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]、その他[スルホコハク酸(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウロイルエタノールアミド2ナトリウム等]等が挙げられる。
【0031】
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪族系アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8,重合度=1〜100)多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノラウリン酸ポリオキシエチレン(重合度=10)ソルビタン、ポリオキシエチレン(重合度=50)ジオレイン酸メチルグルコシド等]、脂肪酸アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテルおよびアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。これらの1種または2種以上が使用出来る。
【0033】
また、本発明の洗浄剤組成物には、従来から公知の添加剤を1種以上配合して使用することができる。このようなものとしては、保湿剤としてグリセリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなど;コンディショニング剤として使用する高分子化合物として、重量平均分子量500〜500万の範囲のカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、タンパク質誘導体など;シリコンとして、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に各種の有機基を導入した変性シリコーン、環状ジメチルシロキサンなど;キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ナトリウムなど;低級アルコール類として、エタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のアルコール類;香料、着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、水などが挙げられる。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物の形態は、液体、ペースト、固体、粉末など特に限定されないが、液体およびペーストが使いやすく好ましい。
例えば、液体およびペースト状のシャンプー用組成物の場合、本発明のアニオン性界面活性剤が好ましくは5〜30質量%、本発明の界面活性剤を含む界面活性剤の合計量が好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜30質量%;高分子化合物、シリコン、香料、着色剤、防腐剤および紫外線吸収剤が好ましくは各々0〜5質量%、保湿剤、キレート剤および低級アルコール類が好ましくは各々0〜10質量%、これらの界面活性剤以外の添加剤の合計が好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは1〜25質量%;水が好ましくは35〜95質量%用いられる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物の用途も特に限定されないが、例えば、ボディシャンプー、洗顔料などの皮膚洗浄剤;シャンプーなどの毛髪洗浄剤;食器用洗剤、衣料用洗剤などの家庭用洗剤として用いられる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。部は質量部を示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による分子量の測定、ガスクロマトグラフ(GC)による未反応の脂肪族系アルコールの含有量の測定は次の通りである。
【0037】
【0038】
《 GCの測定条件》
カラム シリコンGE−SE30
検出器 :FID
Injection :280℃
昇温速度 :100〜250℃/10℃毎分
内部標準 :オクタノール
【0039】
製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、過塩素酸マグネシウム0.32部および水酸化マグネシウム0.03部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。EOの付加重合に要した時間は10時間であった。
得られた反応物に水酸化カリウム1.3部を加え、EO44部(1モル)を130℃で反応させた。反応物を前記GPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.037[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値1.043]、前記GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全反応物中の2.35質量%(0.040モル)であった。(定数c=0.910)
ガラス容器に上記反応物216部(0.68モル)と無水リン酸48部(0.34モル)を仕込み、65℃で8時間反応させエステル化物を得た。次いで、水6部(0.34モル)を加え65℃で2時間反応させ、モノエステル化物を得た。さらに、水酸化ナトリウム54部を水675部に溶解し、60℃で上記モノエステル化物270部を加え、pHを6.5にして、本発明に係わるリン酸エステル塩の約30%水溶液を得た。
【0040】
製造例2
製造例1と同様にして、ラウリルアルコールの第1段階EO付加物(水酸化カリウム触媒使用前)を得た。
反応物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.020[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.031]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全反応物中の3.98重量%(0.0586モル)であった。(定数c=0.558)
ガラス容器に上記反応物207部(0.76モル)と無水リン酸54部(0.38モル)を仕込み、80℃で7時間反応させエステル化物を得た。次いで、水7部(0.38モル)を加え80℃で2時間反応させ、モノエステル化物を得た。さらに、水酸化ナトリウム60部を水673部に溶解し、70℃で上記モノエステル化物268部を加え、pHを6.5にして、本発明に係わるリン酸エステル塩の約30%水溶液を得た。
【0041】
製造例3
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、過塩素酸マグネシウム0.05部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(約20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。(定数c=0.558、未反応ラウリルアルコール3.98質量%)
得られた反応物に水酸化カリウム1.3部を加え、PO58部(1モル)次いでEO44部(1モル)の順に130℃にて反応を行った。反応物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.036[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.052]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは0.21質量%であった。(定数c=0.628)
ガラス容器に上記反応物226部(0.60モル)と無水リン酸43部(0.30モル)を仕込み、90℃で7時間反応させエステル化物を得た。次いで、水5部(0.28モル)を加え80℃で2時間反応させ、モノエステル化物を得た。その後、水酸化ナトリウム48部(1.2モル)を水678部に溶解し、50℃で上記モノエステル化物274部を加え、pHを6.5にし、本発明に係わるリン酸エステル塩の約30%水溶液を得た。
【0042】
比較製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、水酸化カリウム、0.3部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO176部(4モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。
反応物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.10[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.052]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全反応物中の11.0質量%(0.214モル)であった。(定数c=2.26)
ガラス容器に上記反応物216部(0.60モル)と無水リン酸43部(0.30モル)を仕込み、65℃で8時間反応させエステル化物を得た。次いで、水5部(0.28モル)を加え65℃で2時間反応させ、モノエステル化物を得た。その後、水酸化ナトリウム48部(1.2モル)を水675部に溶解し、60℃で上記モノエステル化物264部を加え、pHを6.5にして、比較のリン酸エステル塩の約30%水溶液を得た。
【0043】
比較製造例2
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、水酸化カリウム0.3部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いで、EO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。
反応物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.07[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.031]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全反応物中の38.0質量%(0.560モル)であった。(定数c=11.15)
ガラス容器に上記反応物207部(0.76モル)と無水リン酸54部(0.38モル)を仕込み、80℃で7時間反応させエステル化物を得た。次いで、水7部(0.38モル)を加え80℃で2時間反応させ、モノエステル化物を得た。その後、水酸化ナトリウム60部を水673部に溶解し、70℃で上記モノエステル化物268部を加え、pHを6.5にして、比較のリン酸エステル塩の約30%水溶液を得た。
【0044】
実施例4〜8および比較例3〜4
製造例1〜3により得られた本発明のリン酸エステル塩からなるアニオン性界面活性剤〔実施例1〜3〕、および比較製造例1〜2により得られた比較のアニオン性界面活性剤〔比較例1〜2〕を、表2、3記載の組成(質量部)で配合し、これに水(残部)を加えて全部を100部にすることにより、本発明の洗浄剤組成物および比較の洗浄剤組成物を調整した。
【0045】
実施例1〜8および比較例1〜4のアニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物の起泡性、低温および高温での経日安定性、水溶液の粘度、使用性および皮膚刺激性を試験した。その結果を表1〜3に示す。
【0046】
実施例および比較例で用いた界面活性剤、その他の添加剤および試験方法は次の通りである。
活性剤A;ポリオキシエチレン(2モル)ラウリル硫酸ナトリウム
活性剤B;ポリオキシエチレン(4モル)ラウリル硫酸トリエタノールアミン
活性剤C;ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム
活性剤D;ポリオキシエチレン(3モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム
活性剤F;スルホコハク酸ポリオキシエチレン(5モル)ラウロイルエタノールアミド2ナトリウム
活性剤G;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム
活性剤H;ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム
活性剤J;ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム
活性剤K;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン
活性剤L;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
活性剤M;2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
活性剤O;1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
活性剤P;ラウリルジメチルアミンオキシド
活性剤R;ポリオキシエチレン(120モル)ジオレイン酸メチルグルコシド活性剤S;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム
活性剤T;エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム
【0047】
保湿剤A;グリセリン
保湿剤B;ピロリドンカルボン酸ナトリウム
高分子A;カチオン化セルロース
高分子B;カチオン化グアーガム
高分子D;ジメチルポリシロキサン
高分子E;加水分解プロテイン
キレートA ;エチレンジアミン四酢酸ナトリウム
キレートB ;1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム
アルコールA ;プロピレングリコール
アルコールB ;ジプロピレングリコール
【0048】
試験方法
<起泡性>
CaO換算15ppmの硬水を用いて、アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物の0.3%(固形分)水溶液200mlを調整し、ジューサーミキサー(東芝製MX−390GX)で30秒間撹拌し、その時の泡高さ(mm)により起泡性を評価した。
【0049】
<経日安定性;外観>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス性ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後の外観を肉眼で観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○;透明液状
△;若干濁りが生じる/若干分離傾向
×;著しく濁りが生じる/分離
<経日安定性;色相>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス性ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後、着色の度合を肉眼で観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○;着色無し
△;若干着色
×;著しく着色
<経日安定性;臭気>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス性ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後、着臭の度合を官能検査行い、次の基準で評価した。
評価基準
○;変化なし
△;若干着臭
×;著しく着臭
【0050】
<粘度>
粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用い、25℃で測定した。
<使用性>
使用性は、男女各10名のパネルに、表1〜3に示すアニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を用いシャンプーさせ、使用時の「泡立ち」、「泡質」、「風合い」につき次の基準で評価した。
評価基準
「泡立ち」および「風合い」
○;良好
△;普通
×;劣っている
「泡質」
○;クリーミー
△;普通
×;荒い
【0051】
<皮膚刺激性>
表1〜3に示すアニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物の1.0%(固形分)水溶液を調整し、男女各5名による人パッチテスト(クローズド、48時間、上腕内側)を行い、次の基準で評価しその合計点で表した。
評価基準
0;反応(紅斑)無し
1;ごく軽度の紅斑
2;明瞭な紅斑
3;強度の紅斑
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
この結果から、本発明のアニオン性界面活性剤および洗浄剤組成物は、中性〜弱酸性のpH領域で、起泡性、低温および高温での経日安定性、水溶液へのしやすさ、使用性および人に対する安全性が良好であることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
従来から使用されているリン酸エステル(塩)は、中性〜弱酸性のpH領域での起泡性、低温および高温での長期保存安定性(特に低温でのかすみないし固化)、水溶液のハンドリング性に問題があった。本発明のアニオン性界面活性剤は、これらの問題点を解決するばかりでなく、人に対する安全性を満足した洗浄剤組成物を得ることができるものである。特に、低温および高温下での長期保存安定性が著しく改善されている。
さらに、本発明のアニオン性界面活性剤および洗浄剤組成物は、上記洗浄性、起泡性等に加えて、浸透性などの界面活性能にも優れるので、シャンプー、食器用洗剤、金属等の硬質表面の洗浄剤等の洗浄剤として特に有用である。
Claims (11)
- 脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)のリン酸エステル(塩)(B)からなり;(A)が、触媒(d)の存在下、脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)、または(A1)に、アルカリ触媒(e)の存在下、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)を付加反応させてなり下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であることを特徴とするアニオン性界面活性剤。
(i)脂肪族系アルコール(a1)のアルキレンオキサイド(b1)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは、平均が1〜20となる、0または1以上の整数]
(ii)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
[但し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、一般式(1)でのkの平均に相当する。]
(iii)下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a1)のモル数、n0は未反応の(a1)のモル数を表す。] - 触媒(d)が、過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載のアニオン性界面活性剤。
- 触媒(d)が、2価もしくは3価の金属の過塩素酸塩である請求項1または2記載のアニオン性界面活性剤。
- 触媒(d)の使用量が、(a1)と(b2)の合計100質量部当たり0.001〜1質量部である請求項1〜3のいずれか記載のアニオン性界面活性剤。
- 一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1’)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか記載のアニオン性界面活性剤。
R1−[(OC2H4)m/(OD)n]−(OC2H4)p−OH (1’)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Dは炭素数3または4のアルキレン基;mは平均が0〜5となる0または1以上の整数、nは平均が0〜5となる0または1以上の整数、pは平均が1〜10となる0または1以上の整数であり、(m+n+p)は平均が1〜20となる整数であり、(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上である。{(OC2H4)m/(OD)n}は、m≠0,n≠0のときブロック付加またはランダム付加を表す。] - 過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である触媒(d)の存在下に炭素数8〜24の脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され、下記式(4)から求められる分布定数cが1.0以下である脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)または(A1)にアルカリ触媒(e)の存在下に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)[(b3)は(b2)と同じであっても異なっていてもよい]を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であって、下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)を、未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、リン酸エステル化して、(A1)もしくは(A2)のリン酸エステル(塩)(B)を製造することを特徴とするアニオン性界面活性剤の製造方法。
(i)脂肪族系アルコール(a1)のアルキレンオキサイド(b1)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは、平均が1〜20となる、0または1以上の整数]
(ii)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
[但し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、一般式(1)でのkの平均に相当する。]
(iii)下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a1)のモル数、n0は未反応の(a1)のモル数を表す。] - 請求項1〜6のいずれか記載のアニオン性界面活性剤からなる洗浄剤組成物。
- さらに、他のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の活性剤を含有する請求項8記載の洗浄剤組成物。
- さらに、高分子化合物、シリコン、保湿剤、キレート剤、低級アルコール類、香料、着色剤、防腐剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0〜30質量%含有し、シャンプー用である請求項8または9記載の洗浄剤組成物。
- 請求項8〜10のいずれか記載の洗浄剤組成物からなる皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤または家庭用洗剤。
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JP31170699A JP3634991B2 (ja) | 1999-11-01 | 1999-11-01 | アニオン性界面活性剤及び洗浄剤組成物 |
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