JP3634996B2 - アニオン性界面活性剤ならびにそれを含有する洗浄剤および水溶性潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアニオン性界面活性剤ならびにそれを含有する洗浄剤組成物、および瓶や缶などの容器搬送用のコンベアに使用される水溶性潤滑剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物とモノハロゲン化低級カルボン酸から製造されるエーテルカルボン酸(塩)型アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー、食器用洗浄剤等の洗浄剤が知られている(例えば、特開平5−214362号公報)。
また、ビール、酒、清涼飲料水用の瓶や缶などの容器搬送用のコンベアに使用される水溶性潤滑剤組成物としてはアルキルエーテルカルボン酸(塩)を主成分としたものが知られている(例えば特開平11−199881号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの洗浄剤組成物に配合されるエーテルカルボン酸(塩)型アニオン性界面活性剤は、低温で長期保存した場合に外観がかすむ等の製品の経日安定性や、起泡性、および洗浄性が不十分であること、さらには人体への皮膚刺激性が強いことなどの問題が残されていた。
また、水溶性潤滑剤の場合、使用時、水で100〜600倍程度に希釈して使用されるため従来の組成物は希釈する水の硬度の影響を受けやすい。すなわち、希釈水中のカルシウムやマグネシウムイオンと反応し、水に不溶性の塩を形成し、潤滑性を阻害する要因となっていた。水に不溶性の塩を防ぐ目的で、EDTAなどの軟水化剤の添加や、軟水器の設置が必要であった。
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物を疎水基とするエーテルカルボン酸(塩)型アニオン界面活性剤が、製品の経日安定性、その他の問題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)のエーテルカルボン酸(塩)(B)からなり;(A)が、触媒(c1)の存在下、脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)、または(A1)に、アルカリ触媒(c2)の存在下、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)を付加反応させてなり下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であることを特徴とする界面活性剤;過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である触媒(c1)の存在下に炭素数8〜24の脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され、下記式(4)から求められる分布定数cが1.0以下である脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)または(A1)にアルカリ触媒(c2)の存在下に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)[(b3)は(b2)と同じであっても異なっていてもよい]を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であって、下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)を、未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、炭素数2〜5のモノハロゲン化低級カルボン酸アルカリ金属塩と反応させて、(A1)もしくは(A2)のエーテルカルボン酸塩(B)を製造することを特徴とする界面活性剤の製造方法;ならびに上記界面活性剤を含有する洗浄剤および水溶性潤滑剤組成物である。
【0006】
▲1▼脂肪族系アルコール(a)のアルキレンオキサイド(b)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数]
▲2▼重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
[但し、vは脂肪族系アルコール(a)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、上記一般式(1)でのkの平均に相当する。]
▲3▼下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a)のモル数、n0 は未反応の(a)のモル数を表す。]
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のアニオン性界面活性剤において、エーテルカルボン酸(塩)(B)は、上記▲1▼〜▲3▼を満たす(A)のエーテルカルボン酸(塩)であれば、特に限定されない。
【0008】
本発明において、(A)は、脂肪族系アルコール(a)(本明細書中、脂肪族系アルコールとは、脂肪族アルコールと脂環式アルコールの両者を含むものとする。)にアルキレンオキサイド(b)を付加して得られる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物の1種または2種以上の混合物であり、下記一般式(1)で表される。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数]
【0009】
一般式(1)において、 R1は、脂肪族系アルコール(a)の残基であり、炭素数が通常8〜24の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基など)または脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、多環炭化水素基など)を表す。R1 は好ましくは炭素数が10〜20である。また、R1 は、直鎖状でも分岐状でも両者の混合物でもよく、好ましくは直鎖状であり、天然アルコールの残基でも合成アルコール(チーグラーアルコール、オキソアルコール)の残基でもよく、好ましくは天然アルコールの残基であり、1級アルコールの残基でも2級アルコールの残基でもよく、好ましくは1級アルコールである。また、これらの2種以上の基の混合物であってもよい。R1 は炭素数8未満では十分な起泡力、洗浄力、潤滑性が得られず、炭素数が24を超えると起泡力、洗浄力が劣り、潤滑性も低下する。
【0010】
R1の具体例としては、アルキル基としてはオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、2−エチルヘキシル、2−エチルオクチル、2−エチルデシル基などが挙げられる。アルケニル基としてはオクテニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、2−エチルデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニルオレイル、ガドレイル基などが挙げられる。アルカジエニル基としてはリノレイル基などが挙げられる。シクロアルキル基としてはエチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、オクチルシクロヘキシル、ノニルシクロヘキシル基などが挙げられる。多環炭化水素基としてはアダマンチル基などが挙げられる。
【0011】
一般式(1)中、Aは炭素数2以上、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは炭素数2または3のアルキレン基を表し、(OA)の部分は炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b)の付加により形成される。このようなアルキレンオキサイド(b)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−または2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイドなどが挙げられる。好ましくはEOおよび/またはPOである。
一般式(1)中、kは(b)の付加モル数に相当し、平均が1〜20となる整数であり、好ましくは1〜12である。kが20を超えると、十分な起泡力、洗浄力、潤滑性が得られない。
【0012】
(A)としては、工程が煩雑にならないように、(a)と(b)から直接製造されたものであることが好ましい。ここで、「直接製造された」とは、上記付加物が、精留などにより未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、直接得られたものであることを意味する。但し、分別を目的としないで簡単な操作で未反応アルキレンオキサイドや低沸点物をストリッピングしたものは直接製造されたものに含まれる。
【0013】
また、本発明で、(A)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす必要がある。
これらの式で、Ln(v)はvの自然対数を意味し、vは脂肪族系アルコール(a)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、前記一般式(1)でのアルキレンオキサイドの付加モル数であるkの平均に相当する(以下同じ)。
関係式(2)および(3)は、vとMw/Mnの実測値(GPCによる)から得られた式であり、Mw/Mnが(2)または(3)を満たす場合は分子量分布が狭いことを示す。関係式(2)または(3)を満たさない、すなわち分子量分布が広くなると、アニオン性界面活性剤としたときに、充分な界面活性能が得られない。また、Mw/Mnは下記関係式(2’)または(3’)を満たすことが好ましく、この場合はさらに分子量分布が狭くなるので好ましい。
【0014】
また、一般式(1)においてAがエチレン基のみである場合には、即ち、脂肪族系アルコール(a)にEOのみを付加した場合には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが関係式(2)または(3)に代わって、下記(6)または(7)を満たすことが好ましい。
関係式(6)または(7)を満たす場合、即ち分子量分布が狭くなると、アニオン性界面活性剤としたときに、良好な界面活性能が得られる。
また、この場合、Mw/Mnは下記関係式(6’)または(7’)を満たすことがさらに好ましい。
【0015】
さらに、(A)は、下記Weibullの分布則の式(8)から導き出される関係式(4)から分布定数cを求めることができるとき、cが2.0以下である必要がある。cは好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.7以下である。関係式(4)において、分布定数cの値が小さい、すなわち未反応の脂肪族系アルコールの含有量が少ないほど分子量分布が狭いことを意味する。
なお、この式は、未反応の脂肪族系アルコール(a)の量が検出限界(0.001質量%)以上の場合に適用される式であり、(A)の場合はアルキレンオキサイド(b)の平均付加モル数が12モル程度まで適用可能である。cが2を超えると、アニオン性界面活性剤としたときに、充分な界面活性能が得られない。
これらの式で、Ln(n00/n0)は(n00/n0)の自然対数を意味し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた脂肪族系アルコール(a)のモル数、n0 は未反応の脂肪族系アルコール(a)のモル数を表す。
【0016】
本発明において、上記(A)としては、さらに下記一般式(1’)で表されるものであることが、起泡性が優れる点で好ましい。
[式中、R1 は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Dは炭素数3または4のアルキレン基;m、nおよびpは、それぞれmの平均が0〜5の、nの平均が0〜5の、pの平均が1〜10の、(m+n+p)の平均が1〜20となる、0または1以上の整数であり、(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上である。{(OC2H4)m/(OD)n}は、m≠0,n≠0のときブロック付加またはランダム付加を表す。]
【0017】
上記一般式(1’)中、(OC2H4)の部分は、EOの付加により形成される。Dは炭素数3または4のアルキレン基を表し、(OD)の部分は、炭素数3または4のアルキレンオキサイドの付加により形成される。このようなアルキレンオキサイドとしては、PO、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0018】
上記一般式(1’)中、mは平均が0〜5、好ましくは0〜4となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは0〜3の整数である。nは平均が0〜5、好ましくは0〜3となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは0または1である。pは平均が1〜10好ましくは1〜9となる0または1以上の整数であり、さらに好ましくは1〜8である。(m+n+p)は平均が1〜20であり、さらに好ましくは1〜12である。(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。0.5以上であると、アニオン性活性剤としたときの洗浄力が良好となる。{(OC2H4)m/(OD)n} の部分は、ブロック付加〔(OC2H4)m、(OD)nの順〕 でもランダム付加でもよいが、さらに好ましくはブロック付加である。
【0019】
本発明において、(A)としては、以下に述べる方法により製造された(A1)または(A2)であることが好ましい。
すなわち、前記の、Weibullの分布則から導かれる式(4)から求められる分布定数cが2.0以下となるアルキレンオキサイド1〜2.5モル付加物を与える触媒(c1)の存在下、前記脂肪族系アルコール(a)にアルキレンオキサイド(b)を平均1〜2.5モル付加して得られる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)であるか、(A1)にさらにアルカリ触媒(f)の存在下でアルキレンオキサイド(b2)を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であるのが好ましい。さらに好ましくは(A2)である。
【0020】
上記アルキレンオキサイド(b1)および(b2)としては、炭素数2以上のアルキレンオキサイドが挙げられる。具体例としては、一般式(1)におけるOAを形成するアルキレンオキサイド(b)の例として前記したアルキレンオキサイドが挙げられ、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよいが、好ましくはブロック付加である。これらのうちで好ましくは、EOおよび/またはPOである。
【0021】
触媒(c1)としては、得られるアルキレンオキサイド付加物の分布定数cが2.0以下となるものを用いる。好ましくはcが1.0以下、さらに好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.45以下となるものである。分布定数cが2.0を超えるものを用いると、アニオン性界面活性剤とした場合に、低温でカスミを生じたり、起泡性、洗浄性が低下する。また、皮膚に対する刺激性が低くならず問題となることがある。潤滑剤とした場合には、水で希釈したとき不溶性の塩を形成し、潤滑性が低下する。
【0022】
触媒(c1)の具体例としては、過ハロゲン酸もしくはその塩、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩が挙げられる。塩を形成する場合の金属は、特に限定されるものではないが、アルカリ金属以外のものが好ましく、2価または3価の金属が好ましい。
これら金属として好ましくは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co、Ni、Cu、Alであり、より好ましくは、Mg、Zn、Ca、Sr、Ba、Alであり、特に好ましくは、Mg、Zn、Alである。過ハロゲン酸(塩)のハロゲンとしては塩素、臭素、沃素が挙げられ、塩素が好ましい。
したがって、(c1)としては、2価もしくは3価の金属の過塩素酸塩が好ましく、Mg、ZnおよびAlから選ばれる金属の過塩素酸塩がさらに好ましい。また、(c1)に2価もしくは3価の金属アルコラートを併用してもよい。金属アルコラートのアルキル基としては、アルコールとして留去し易い低級(炭素数1〜4)アルキル基、または原料脂肪族系アルコールと同一組成のアルキル基が挙げられる。これらの触媒は1種でもよいが、2種以上の触媒〔たとえば、過塩素酸マグネシウム/硫酸マグネシウム7水塩=95/5〜50/50、過塩素酸マグネシウム/過塩素酸アルミニウム=99/1〜30/70(いずれも質量比)〕を併用した方が好ましい。
【0023】
触媒(c1)の使用量としては、反応速度と経済性の点から、(a)と(b1)の合計100質量部当たり、0.001〜1質量部が好ましい。さらに好ましくは0.003〜0.8質量部、特に好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0024】
(a)に(b1)を付加して得られるアルキレンオキサイド付加物(A1)に、さらにアルキレンオキサイド(b2)を付加させる際に用いる触媒は、アルカリ触媒(c2)である。アルカリ触媒(c2)としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられるが、より好ましくは水酸化カリウム、水酸化セシウムである。
触媒(c2)の使用量としては、反応速度と経済性の点から、(A1)と(b2)の合計100質量部当たり、0.0001〜1質量部が好ましい。さらに好ましくは0.001〜0.8質量部である。
【0025】
(a)と(b1)を反応させる場合の反応条件としては、(a)と(c1)を混合し、窒素置換を行った後、−0.8〜5kgf/cm2 Gで、80〜200℃で(b1)を導入し、所定量の(b1)を投入後、80〜200℃で反応系内の圧力が平衡になるまで熟成を行う方法などが挙げられる。
このようにして得られたアルキレンオキサイド付加物(A1)に、アルカリ触媒(c2)を添加し、アルキレンオキサイド(b2)を、上記と同様の方法で反応することで、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)が得られる。
【0026】
本発明のエーテルカルボン酸(塩)(B)は下記一般式(5)で表される化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
R1−(OA)k−O−R2−COOM (5)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数;Mは、Hまたはカチオン性対イオン;R2 は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。〕
(A)からエーテルカルボン酸(塩)(B)を得る方法としては特に限定されないが、脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)を、カルボン酸を構成する炭素数が2〜5のモノハロゲン化低級カルボン酸アルカリ金属塩(例えば、モノクロル酢酸ナトリウム等)と苛性アルカリ(例えば苛性ソーダ、苛性カリなど)および必要により溶媒(例えば、トルエン、キシレンなど)の存在下、縮合反応することによって得ることができる。
脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)とハロゲン化低級カルボン酸塩の反応としては、例えば脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)とハロゲン化低級カルボン酸塩のモル比1.0:0.95〜1.0:1.50、反応温度は通常30〜100℃、好ましくは40〜70℃で、溶剤を用い苛性アルカリを徐々に加えながら窒素雰囲気中で行うことができる。次いで、水洗、分離などの精製工程を経て脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物のエーテルカルボン酸塩を得る。その後、水を加えて脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物のエーテルカルボン酸塩の水溶液を得る。
エーテルカルボン酸塩のエーテル化度は、下記の条件にて液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
液体クロマトグラフィー測定条件
カラム :ODS系、6mmΦ×15cm
カラム温度 :35℃
溶離液 :メタノール/水=90/10
流量 :0.8ml/min
試料濃度 :10%
注入量 :30μl
反応の終点はエーテル化度が90%以上となるところであり、好ましくは、95%以上となるところである。
【0027】
本発明の(B)からなるアニオン性界面活性剤は、単独で用いてもよいが、必要により、本発明の効果を妨げない量の本発明以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を配合することができる。また、これら組成物のpHは特に限定されないが、人体に対する安全性の面から中性〜弱酸性(例えば、pH4〜9)が好ましい。
界面活性剤有効成分(固形分換算)の配合割合(質量%)は、(B)が、好ましくは3〜60%であり、さらに好ましくは5〜50%である。(B)以外のアニオン性界面活性剤を用いる場合、本発明の(B)との合計量に対して、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下であり、かつアニオン性界面活性剤の合計の配合割合が上記範囲内であることが好ましい。また、ノニオン性界面活性剤は、(B)との合計量に対して好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは1〜30%である。カチオン性界面活性剤は、(B)との合計量に対して好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは10〜50%である。両性界面活性剤は、(B)との合計量に対して好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは1〜30%である。
【0028】
(B)以外のその他のアニオン性界面活性剤としては、具体的には炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホコハク酸またはその塩、[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル塩[アルキル硫酸エステル塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムなど、アルキルエーテル硫酸エステル塩、例えば(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミンなど、アシロキシアルキル硫酸エステル塩、例えば(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウムなど]、炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]及び炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル(塩)[アルキルリン酸エステル塩、例えばラウリルリン酸ナトリウムなど、アルキルエーテルリン酸エステル塩、例えば(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]、その他[スルホコハク酸(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウロイルエタノールアミド2ナトリウム等]等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪族系アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8,重合度=1〜100)多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノラウリン酸ポリオキシエチレン(重合度=10)ソルビタン、ポリオキシエチレン(重合度=50)ジオレイン酸メチルグルコシド等]、脂肪酸アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテルおよびアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。これらのうち好ましくは、前述の一般式(1)で表される脂肪族系アルコールのアルキレンオキサイド付加物(A)である。
【0030】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型[長鎖アルキル基(炭素数8〜24)を1または2個有する第4級アンモニウム塩、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなど、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。これらの1種または2種以上が使用出来る。
【0031】
本発明のエーテルカルボン酸(塩)(B)からなるアニオン性界面活性剤は、起泡性、洗浄性および潤滑性に優れる。また、▲1▼〜▲3▼を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)中にはその原料の脂肪族系アルコールが少ないので、そのエーテルカルボン酸(塩)中にも少なく、人体への皮膚刺激性の少ないものとなり、臭気も改善される。
本発明の(B)、または(B)と(B)以外の界面活性剤を含有する界面活性剤組成物は洗浄剤および水溶性潤滑剤として有用である。
【0032】
また、本発明の洗浄剤組成物には、従来から公知の添加剤を1種以上配合して使用することができる。このようなものとしては、保湿剤としてのグリセリン、およびピロリドンカルボン酸ナトリウムなど;コンディショニング剤としての高分子化合物(例えば、重量平均分子量500〜500万の範囲のカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、タンパク質誘導体など)、およびシリコン系化合物(例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に各種の有機基を導入した変性シリコーン、環状ジメチルシロキサンなど)など;キレート剤としてのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1、および1−ジホスホン酸ナトリウムなど;低級アルコール類としてのエタノール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のアルコールなど;香料、着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、水などが挙げられる。
【0033】
本発明の洗浄剤の形態は、液体、ペースト、固体、粉末など特に限定されないが、液体およびペーストが使いやすく好ましい。
例えば、液体およびペースト状のシャンプー用組成物の場合、(B)が好ましくは5〜30質量%、本発明の(B)を含む界面活性剤の合計量が好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜30質量%であり、高分子化合物、シリコン、香料、着色剤、防腐剤および紫外線吸収剤が好ましくは各々0〜5質量%、保湿剤、キレート剤および低級アルコール類が好ましくは各々0〜10質量%、これらの界面活性剤以外の添加剤の合計が好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは1〜25質量%;水が好ましくは35〜95質量%用いられる。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物の用途も特に限定されないが、例えば、ボディシャンプー、洗顔料などの皮膚洗浄剤;シャンプーなどの毛髪洗浄剤;食器用洗剤、衣料用洗剤などの家庭用洗剤として用いられる。
【0035】
また、本発明の水溶性潤滑剤組成物には、従来から公知の添加剤を1種以上配合して使用することができる。このようなものとしては、保存安定性を向上・維持するために殺菌剤(ベンザルコニウムクロライド、ニトロフラゾン、クロラミンT、クロラミンBなど)およびグリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、さらにPH調整剤としてのアミン類(トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど)、低級脂肪酸類(乳酸、グリコール酸、シュウ酸など)および水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
本発明の水溶性潤滑剤の形態は、液体、ペースト、固体、粉末など特に限定されないが、液体およびペーストが使いやすく好ましい。
例えば、液体およびペースト状の水溶性潤滑剤の場合、(B)が好ましくは5〜30質量%、本発明の(B)を含む界面活性剤の合計量が好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜30質量%であり、殺菌剤、グリコール類、PH調整剤、低級脂肪酸類および水酸化ナトリウムが好ましくは各々0〜5質量%、水が好ましくは35〜95質量%用いられる。
本発明の水溶性潤滑剤の用途は特に限定されないが、ビール、酒、清涼飲料水用の瓶や缶などの容器搬送用のコンベアに使用される水溶性潤滑剤組成物、および金属の加工に使用される水溶性潤滑剤組成物(例えば水溶性切削油、水溶性研磨液、水溶性引き抜き油、水溶性研削油、水溶性鍛造油および水溶性プレス油など)として有用である。これらのうちで特に瓶や缶の容器搬送用のコンベアに使用される水溶性潤滑剤組成物として有用である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。部は質量部を示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による分子量の測定、ガスクロマトグラフ(GC)による未反応の脂肪族系アルコールの含有量の測定は次の通りである。
【0037】
《GPCの測定条件》
カラム温度 :40℃
検出器 :RI
溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :0.6ml/分
試料濃度 :0.25質量%
注入量 :10μl
標準 :ポリオキシエチレングリコール
(東ソー株式会社製;TSK STANDARD
POLYETHYLENE OXIDE)
データ処理装置:SC−8020(東ソー株式会社製)
《 GCの測定条件》
カラム シリコンGE−SE30
検出器 :FID
Injection :280℃
昇温速度 :100〜250℃/10℃毎分
内部標準 :オクタノール
【0038】
製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、過塩素酸マグネシウム0.32部および水酸化マグネシウム0.03部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。EOの付加重合に要した時間は10時間であった。
得られた生成物にさらに水酸化カリウム1.3部を加え、EO44部(1モル)を130℃で反応させた。生成物を前記GPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.037[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値1.043]、前記GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全生成物中の2.35質量%(0.040モル)であった。(定数c=0.910)
ガラス製反応容器に上記生成物240部(0.75モル)とモノクロル酢酸ナトリウム97部(0.83モル)、トルエン293gを仕込み、温度を50℃に保ちながら徐々に減圧度を高め75mmHgとする。その後、減圧脱水しながら顆粒状の水酸化ナトリウム38部(0.94モル)を2時間かけて仕込んだ。さらに熟成を6時間行った。液体クロマトグラフィーを用い測定した反応率(エーテル化度)は96%であった。
水300部を加え、塩酸で酸性にし、静置、分液による脱塩を行った後、脱トルエンを行った。水酸化ナトリウム30部(0.75モル)を水700部に溶解し60℃で上記のエーテルカルボン酸を加え、pHを6.5にし、本発明に係わるエーテルカルボン酸ナトリウム塩の約30%水溶液を得た。
【0039】
製造例2
製造例1と同様にして、ラウリルアルコールの第1段階EO付加物(水酸化カリウム触媒使用前)を得た。
反応物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.020[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.031]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全反応物中の3.98重量%(0.0586モル)であった。(定数c=0.558)
ガラス製反応容器に上記反応物232部(0.85モル)とモノクロル酢酸ナトリウム109部(0.93モル)、トルエン284gを仕込み、温度を50℃に保ちながら徐々に減圧度を高め80mmHgとする。その後、減圧脱水しながら顆粒状の水酸化ナトリウム42部(1.06モル)を2時間かけて仕込んだ。さらに熟成を6時間行った。液体クロマトグラフィーを用い測定した反応率(エーテル化度)は97%であった。
水300部を加え、塩酸で酸性にし、静置、分液による脱塩を行った後、脱トルエンを行った。
水酸化ナトリウム35部(0.85モル)を水700部に溶解し60℃で上記のエーテルカルボン酸を加え、pHを6.5にし、本発明に係わるエーテルカルボン酸ナトリウム塩の約30%水溶液を得た。
【0040】
製造例3
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、過塩素酸マグネシウム0.05部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(約20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。(定数c=0.558、未反応ラウリルアルコール3.98質量%)
得られた生成物に水酸化カリウム1.3部を加え、PO58部(1モル)次いでEO44部(1モル)の順に130℃にて反応を行った。生成物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.036[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.052]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは0.21質量%であった。(定数c=0.628)
ガラス製反応容器に上記生成物247部(0.66モル)とモノクロル酢酸ナトリウム84部(0.72モル)、トルエン302gを仕込み、温度を45℃に保ちながら徐々に減圧度を高め75mmHgとする。その後、減圧脱水しながら顆粒状の水酸化ナトリウム33部(0.82モル)を2時間かけて仕込んだ。さらに熟成を8時間行った。液体クロマグラフィーを用い測定した反応率(エーテル化度)は96%であった。
水300部を加え、塩酸で酸性にし、静置、分液による脱塩を行った後、脱トルエンを行った。
水酸化ナトリウム26部(0.66モル)を水700部に溶解し60℃で上記のエーテルカルボン酸を加え、pHを6.5にし、本発明に係わるエーテルカルボン酸ナトリウム塩の約30%水溶液を得た。
【0041】
比較製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、水酸化カリウム、0.3部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでEO176部(4モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。
生成物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.10[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.052]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全生成物中の11.0質量%(0.214モル)であった。(定数c=2.26)
ガラス製反応容器に上記生成物240部(0.662モル)とモノクロル酢酸ナトリウム97部(0.83モル)、トルエン293gを仕込み、温度を50℃に保ちながら徐々に減圧度を高め75mmHgとする。その後、減圧脱水しながら顆粒状の水酸化ナトリウム38部(0.94モル)を2時間かけて仕込んだ。さらに熟成を6時間行った。液体クロマトグラフィーを用い測定した反応率(エーテル化度)は96%であった。
水300部を加え、塩酸酸性にし、静置、分液による脱塩を行った後、脱トルエンを行った。水酸化ナトリウム30部(0.75モル)を水700部に溶解し60℃で上記のエーテルカルボン酸を加え、pHを6.5にし、エーテルカルボン酸ナトリウム塩の約30%水溶液を得た。
【0042】
比較製造例2
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル)、水酸化カリウム0.3部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いで、EO88部(2モル)を150℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2 となるように導入した。
生成物をGPCの測定条件によって測定した結果、Mw/Mnは1.07[一般式(2)をみたすMw/Mnの上限計算値;1.031]、GCの測定条件によって測定した未反応のラウリルアルコールは全生成物中の38.0質量%(0.560モル)であった。(定数c=11.15)
ガラス製反応容器に上記生成物232部(0.85モル)とモノクロル酢酸ナトリウム109部(0.93モル)、トルエン284gを仕込み、温度を50℃に保ちながら徐々に減圧度を高め80mmHgとする。その後、減圧脱水しながら顆粒状の水酸化ナトリウム42部(1.06モル)を2時間かけて仕込んだ。さらに熟成を6時間行った。液体クロマトグラフィーを用い測定した反応率(エーテル化度)は97%であった。
水300部を加え、塩酸で酸性にし、静置、分液による脱塩を行った後、脱トルエンを行った。水酸化ナトリウム35部(0.85モル)を水700部に溶解し60℃で上記のエーテルカルボン酸を加え、pHを6.5にし、エーテルカルボン酸ナトリウム塩の約30%水溶液を得た。
【0043】
実施例1〜3および比較例1、2
製造例1〜3により得られた本発明のエーテルカルボン酸塩からなるアニオン性界面活性剤〔実施例1〜3〕、および比較製造例1、2により得られた比較のエーテルカルボン酸塩からなるアニオン性界面活性剤〔比較例1〜2〕について、起泡性、低温および高温での経日安定性、水溶液の粘度、使用性および皮膚刺激性を試験した。結果を表1に示す。
【0044】
実施例4〜8、比較例3、4
製造例1〜3により得られた本発明のエーテルカルボン酸塩、および比較製造例1、2により得られた比較のエーテルカルボン酸塩に、その他の界面活性剤、その他の添加剤を表2、3記載の配合量(質量部)で配合し、これに水(残部)を加えて全部を100部にすることにより、本発明の洗浄剤組成物および比較の洗浄剤組成物を調整した。
実施例4〜8および比較例3、4の洗浄剤組成物の起泡性、低温および高温での経日安定性、水溶液の粘度、使用性および皮膚刺激性を試験した。その結果を表2、3に示す。
【0045】
実施例および比較例で用いた界面活性剤、その他の添加剤および試験方法は次の通りである。
界面活性剤A;ポリオキシエチレン(2モル)ラウリル硫酸ナトリウム
界面活性剤B;ポリオキシエチレン(4モル)ラウリル硫酸トリエタノールアミン
界面活性剤C;ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム
界面活性剤D;ポリオキシエチレン(3モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム
界面活性剤F;スルホコハク酸ポリオキシエチレン(5モル)ラウロイルエタノールアミド2ナトリウム
界面活性剤G;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム
界面活性剤H;ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム
界面活性剤J;ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム
界面活性剤K;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン
界面活性剤L;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
界面活性剤M;2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
界面活性剤O;1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
界面活性剤P;ラウリルジメチルアミンオキシド
界面活性剤R;ポリオキシエチレン(120モル)ジオレイン酸メチルグルコシド
界面活性剤S;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム
界面活性剤T;エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム
【0046】
保湿剤A;グリセリン
保湿剤B;ピロリドンカルボン酸ナトリウム
コンディショニング剤A;カチオン化セルロース
コンディショニング剤B;カチオン化グアーガム
コンディショニング剤D;ジメチルポリシロキサン
コンディショニング剤E;加水分解プロテイン
キレート剤A ;エチレンジアミン四酢酸ナトリウム
キレート剤B ;1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム
低級アルコール類A ;プロピレングリコール
低級アルコール類B ;ジプロピレングリコール
【0047】
試験方法
<起泡性>
CaO換算15ppmの硬水を用いて、アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物の0.3%(固形分)水溶液200mlを調整し、ジューサーミキサー(東芝製MX−390GX)で30秒間撹拌し、その時の泡高さ(mm)により起泡性を評価した。
【0048】
<経日安定性;外観>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス性ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後の外観を肉眼で観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○;透明液状
△;若干濁りが生じる
×;著しく濁りが生じる/固化
<経日安定性;色相>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス製ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後、着色の度合を肉眼で観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○;着色無し
△;若干着色
×;著しく着色
<経日安定性;臭気>
アニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を100mlのガラス製ボトルに入れ、0℃、25℃および50℃の恒温槽中に30日間放置した後、着臭の度合を官能検査行い、次の基準で評価した。
評価基準
○;変化なし
△;若干着臭
×;著しく着臭
【0049】
<粘度>
粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用い、25℃で測定した。
<使用性>
使用性は、男女各10名のパネラーに、表1〜3に示すアニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物を用いシャンプーさせ、使用時の「泡立ち」、「泡質」、「風合い」について以下の基準で評価した。
評価基準
「泡立ち」および「風合い」
○;良好
△;普通
×;劣っている
「泡質」
○;クリーミー
△;普通
×;荒い
【0050】
<皮膚刺激性>
表1〜3に示すアニオン性界面活性剤または洗浄剤組成物の1.0%(固形分)水溶液を調整し、男女各5名による人パッチテスト(クローズド、48時間、上腕内側)を行い、次の基準で評価しその合計点で表した。
評価基準
0;反応(紅斑)無し
1;ごく軽度の紅斑
2;明瞭な紅斑
3;強度の紅斑
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
これらの結果から、本発明のアニオン性界面活性剤および洗浄剤組成物は、中性〜弱酸性のpH領域で、起泡性、低温および高温での経日安定性、水溶液へのしやすさ、使用性および人に対する安全性が良好であることがわかる。
【0055】
表4に記載した実施例9〜11と比較例5〜7の水溶性潤滑剤を作成し性能評価を行った。
【0056】
潤滑性評価には水溶性潤滑剤組成物を水で300倍と600倍に希釈した試料溶液を用い、濡れ性評価、洗浄性評価、および外観安定性評価は300倍に希釈した試料溶液を用いた。希釈は硬度(CaOとして)10ppmの水を用いて行った。
【0057】
〈潤滑性評価〉
ステンレス製コンベアにビールビンを置き、希釈した試料溶液を30ml/min.の条件で噴霧し、コンベアを60cm/secのスピードで稼働したときの10分後の容器の搬送状態を観察した。
(判定基準)
○:作業性に支障なく容器が搬送される。
△:容器の揺れが見られ、作業性に多少支障がある。
×:作業性に支障があり容器が転倒する。
【0058】
〈濡れ性評価〉
前述と同様の条件でコンベアを稼働させ、10分後の容器表面の濡れ状態を観察した。
(判定基準)
○:撥水せず濡れている。
△:一部撥水して濡れていない。
×:大部分撥水し濡れていない。
【0059】
〈洗浄性評価〉
前述と同様の条件でコンベアを稼働させ、30分後のコンベアプレート表面の洗浄度合いを観察した。
(判定基準)
○:摩耗粉が付着せず、清浄に保たれている。
△:摩耗粉の付着が見られるが、ほぼ清浄に保たれている。
×:摩耗粉が付着し、清浄に保たれていない。
【0060】
〈外観安定性評価〉
原料配合調整後の製剤の外観安定性を目視で観察した。
(判定基準)
○:均一透明
△:わずかにカスミを認める。
×:白い濁りを認める。
【0061】
【表4】
【0062】
表4から、本発明の水溶性潤滑剤組成物は良好な潤滑性と濡れ性、洗浄性、製剤の外観安定性に優れていることが解る。
【0063】
【発明の効果】
本発明のエーテルカルボン酸(塩)(B)からなる界面活性剤は、従来から使用されているエーテルカルボン酸(塩)に比して中性〜弱酸性のpH領域での起泡性が優れ、低温および高温での長期保存安定性が著しく改善されており、特に低温でのかすみや、固化を起こすことがない。また、水溶液の粘度が低いためハンドリング性が優れ、しかも皮膚刺激性が低く、人に対する安全性の点でも優れている。
また、本発明のアニオン性界面活性剤および洗浄剤組成物は、洗浄性、起泡性等に加えて、浸透性などの界面活性能にも優れるので、シャンプー、食器用洗剤、金属等の硬質表面の洗浄剤等の洗浄剤として特に有用である。
さらに、本発明の水溶性潤滑剤組成物は下記の効果を有する。
(1)食品および薬品の瓶、缶等をコンベアで搬送する時の潤滑性に優れている。
(2)容器表面が撥水しないため、容器欠陥検査機の誤操作が低減する。
(3)摩耗粉が付着せず、コンベア表面が清浄にたもたれる。
(4)製剤の外観安定性が良好なため、可溶化剤の添加が少なくてすみ化学的酸素要求量(COD)が低い。
Claims (12)
- 脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)のエーテルカルボン酸(塩)(B)からなり;(A)が、触媒(c1)の存在下、脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)、または(A1)に、アルカリ触媒(c2)の存在下、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)を付加反応させてなり下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であることを特徴とする界面活性剤。
(i)脂肪族系アルコール(a1)のアルキレンオキサイド(b1)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは、平均が1〜20となる、0または1以上の整数]
(ii)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
[但し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、一般式(1)でのkの平均に相当する。]
(iii)下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a1)のモル数、n0は未反応の(a1)のモル数を表す。] - 触媒(c1)が、過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の界面活性剤。
- 触媒(c1)が、2価もしくは3価の金属の過塩素酸塩である請求項1または2記載の界面活性剤。
- 触媒(c1)の使用量が、(a1)と(b2)の合計100質量部当たり0.001〜1質量部である請求項1〜3のいずれか記載の界面活性剤。
- エーテルカルボン酸(塩)(B)が、下記一般式(5)で表される塩の少なくとも1種からなる請求項1〜4のいずれか記載の界面活性剤。
R1−(OA)k−O−R2−COOM (5)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜20となる0または1以上の整数;Mは、Hまたはカチオン性対イオン;R2は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。] - (A)が、下記一般式(1’)で表される化合物の1種または2種以上の混合物である請求項1〜5のいずれか記載の界面活性剤。
R1−[(OC2H4)m/(OD)n]−(OC2H4)p−OH (1’)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Dは炭素数3または4のアルキレン基;mは平均が0〜5となる0または1以上の整数、nは平均が0〜5となる0または1以上の整数、pは平均が1〜10となる0または1以上の整数であり、(m+n+p)は平均が1〜20となる整数であり、(m+p)/(m+n+p)は平均0.5以上である。{(OC2H4)m/(OD)n}は、m≠0,n≠0のときブロック付加またはランダム付加を表す。] - 過ハロゲン酸(塩)、硫酸塩、燐酸塩および硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上である触媒(c1)の存在下に炭素数8〜24の脂肪族系アルコール(a1)に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b2)を平均1〜2.5モル付加させて直接製造され、下記式(4)から求められる分布定数cが1.0以下である脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A1)または(A1)にアルカリ触媒(c2)の存在下に炭素数2以上のアルキレンオキサイド(b3)[(b3)は(b2)と同じであっても異なっていてもよい]を付加反応させてなる脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A2)であって、下記(i)〜(iii)を満たす脂肪族系アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)を、未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、炭素数2〜5のモノハロゲン化低級カルボン酸アルカリ金属塩と反応させて、(A1)もしくは(A2)のエーテルカルボン酸塩(B)を製造することを特徴とする界面活性剤の製造方法。
(i)脂肪族系アルコール(a1)のアルキレンオキサイド(b1)付加物であって、下記一般式(1)で表される化合物の1種または2種以上の混合物からなる。
R1−(OA)k−OH (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基または炭素数8〜24の脂環式炭化水素基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは、平均が1〜20となる、0または1以上の整数]
(ii)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnが下記関係式(2)または(3)を満たす。
Mw/Mn≦0.030×Ln(v)+1.010 (但し、v<10)(2)
Mw/Mn≦−0.026×Ln(v)+1.139(但し、v≧10)(3)
[但し、vは脂肪族系アルコール(a1)1モル当たりに付加したアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、一般式(1)でのkの平均に相当する。]
(iii)下記式(4)から求められる分布定数cが2.0以下である。(本項はvが12以下の場合のみ適用する。)
c=(v+n0/n00−1)/[Ln(n00/n0)+n0/n00−1] (4)
[但し、vは上記に同じ、n00は反応に用いた(a1)のモル数、n0は未反応の(a1)のモル数を表す。] - さらに、他のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選ばれる界面活性剤の1種以上を含有する請求項1〜6のいずれか記載の界面活性剤。
- 請求項1〜6のいずれか又は請求項8記載の界面活性剤からなる洗浄剤組成物。
- さらに、コンディショニング剤、保湿剤、キレート剤、低級アルコール類、香料、着色剤、防腐剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を30質量%を越えない量含有する請求項9記載の洗浄剤組成物。
- 請求項9または10記載の洗浄剤組成物からなる皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤または家庭用洗剤。
- 請求項1〜6のいずれか又は請求項8記載の界面活性剤からなる水溶性潤滑剤組成物。
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