JP3634088B2 - Sos基板の熱処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、SOS基板の熱処理方法に関し、特に、熱処理用ボートを用いて、複数のSOS基板に対して熱処理を行う場合のSOS基板内及びSOS基板毎の熱処理状態の差の発生を防止可能なSOS基板の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造においては、シリコン基板が広く用いられている。また、シリコン基板に限らず、素子間分離が容易であり、また、配線の寄生容量を小さくできる等の利点から、高速用、高密度用のLSIの基板として、SOS(Silicon On Sapphire)基板が用いられることも多い。
【0003】
一般に、半導体装置の製造工程において、例えばシリコン基板に対して酸化或いは拡散、CVD処理等の熱処理を行う工程では、熱処理用ボートに複数枚のシリコン基板を載置し、この熱処理用ボートを熱処理炉内に挿入することによって、複数枚のシリコン基板に対して同時に熱処理を行う方法が広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のシリコン基板に対して熱処理を行う熱処理方法は、一般的に行われている熱処理方法である。しかしながら、上記熱処理方法を用いて、シリコン基板に対する熱処理と同様の処理条件でSOS基板に対して熱処理工程を実行した場合、サファイアの熱膨張係数(=9.5×10−6/℃)は、シリコンの熱膨張係数(=4.2×10−6/℃)の約2倍と大きいため、熱処理炉からSOS基板を引き出す際の冷却過程でSOS基板の温度分布が不均一となったときに、SOS基板に大きな応力が生じ、場合によっては、SOS基板に基板割れ等が生じてしまうことがあるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の問題に着目してなされたものであり、SOS基板に基板割れ等が生じることなく、SOS基板に対する熱処理を実施することの可能なSOS基板の熱処理方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るSOS基板の熱処理方法は、直径125〔mm〕(5〔インチ〕)、厚さ625〔μm〕のSOS基板を、熱処理用ボート上に所定の搭載間隔で複数枚搭載した状態で、熱処理炉内で熱処理するSOS基板の熱処理方法において、前記熱処理終了後に前記熱処理用ボートを前記熱処理炉から引き出す際の速度を1.0〜3.0〔mm/s〕とし、前記搭載間隔を、前記SOS基板内の温度分布が均一となり且つ前記SOS基板毎の熱処理状態が同一となるように、8.0〜11.0〔mm〕とすることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、例えば10〜30枚をバッチ単位とし、このバッチ単位で熱処理(例えば、酸化,拡散,CVD処理等)を行う場合、例えば20枚の、直径125〔mm〕(5〔インチ〕)、厚さ625〔μm〕のSOS基板が載置された熱処理用ボートに対して熱処理炉で所定の熱処理が行われ、その後熱処理炉から引き出されるときに、1.0〜3.0〔mm/s〕の速度で引き出される。このとき、熱処理用ボートに搭載されたSOS基板の搭載間隔は、SOS基板内の温度分布が均一となるように、且つ、SOS基板毎にその熱処理状態が同一となるように、8.0〜11.0〔mm〕に調整される。よって、例えば引き出し速度が低速であったり或いは搭載間隔が広いと、熱処理炉から最初に引き出されるSOS基板と最後に引き出されるSOS基板との間に時間差が生じ、SOS基板毎に熱処理状態が異なったり、或いは、引き出し速度が高速であったり或いは搭載間隔が狭いと、熱処理炉から熱処理用ボートを引き出す時の冷却過程で、SOS基板への各部への熱の伝わり方が異なることから温度ムラが生じることがあるが、SOS基板内の温度分布が均一となるように、且つ、SOS基板毎の熱処理状態が同一となるように、搭載間隔が調整されるから、前述の温度ムラ、或いは熱処理状態に差が生じることが防止され、温度ムラに伴い生じるSOS基板の基板割れの発生が回避されると共に、SOS基板毎の熱処理状態が異なることによりSOS基板毎の特性が異なってしまうことが回避される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるSOS基板の熱処理方法を適用した熱処理炉の一例を示す構成図である。
【0010】
図中1は熱処理対象のSOS基板であって、これらSOS基板1は、熱処理用ボート2に載置されるようになっている。この熱処理用ボート2は、通常石英ガラス等の材質で形成され、その上部には、基板搭載用の溝が形成されている。この溝は、熱処理用ボート2の長手方向に所定ピッチ間隔Lで平行に且つ一列に複数形成され、複数枚のSOS基板を搭載できるようになっている。そのため、熱処理用ボート2は、通常約500〔mm〕程度の長さに形成されている。通常、熱処理は10〜30枚の基板をバッチ単位とし、このバッチ単位で処理が行われることから、熱処理用ボート2は、10〜30枚のSOS基板を搭載可能に形成されている。
【0011】
この熱処理用ボート2は、フォーク4によって、熱処理炉3に対して長手方向に出し入れされるようになっている。前記熱処理炉3は、例えば酸化炉,拡散炉,CVD処理用の電気炉等であって、半導体装置の製造工程においては、通常400〔℃〕程度以上の温度となっている。そして、前記フォーク4は、前記熱処理用ボート2を前記熱処理炉3内から引き出す場合には、所定の引き出し速度Vで引き出すようになっている。
【0012】
この引き出し速度Vは、1.0〜3.0〔mm/s〕の速度範囲に設定されている。この引き出し速度Vが3.0〔mm/s〕以上である場合には、引き出し時に熱処理炉外部の雰囲気温度に急にSOS基板1がさらされるため、熱処理用ボート2に搭載された各SOS基板1の表面とその内部との間に温度差が生じ、基板内で温度ムラが発生することになって、基板割れの原因となる。また、引き出し速度Vが1.0〔mm/s〕以下である場合には、例えば図1に示すように、熱処理用ボート2上のSOS基板1のうち、引き出し方向先頭に載置されたSOS基板1aと、最後尾に載置されたSOS基板1bとでは、実際に熱処理炉3の外部に引き出される時点が異なるために、熱処理炉3内に滞在する時間に差が生じ、結果的に熱処理状態に差が発生することになって、同時に熱処理を行ったSOS基板の中でバラツキが生じる原因となる。よって、これらを回避するために、1.0〜3.0〔mm/s〕の速度範囲が好ましい。
【0013】
この引き出し速度Vの条件で、10〜30枚のSOS基板をバッチ単位とする場合、熱処理用ボート2に載置するSOS基板のピッチ間隔Lは、8.0〜11.0〔mm〕のピッチ範囲に設定されている。このピッチ間隔Lが8.0〔mm〕以下の場合には、例えば垂直に搭載されたSOS基板1の円周上部付近と、SOS基板1の中心点付近とでは、隣接するSOS基板1により遮られることになってSOS基板1に対する熱伝導状態と異なってしまい、SOS基板1の全面に対する熱伝導状態が均一とならず、その結果SOS基板1内に温度ムラが生じ、基板割れの原因となる。また、ピッチ間隔Lが11.0〔mm〕以上の場合には、フォーク4によって熱処理用ボート2を熱処理炉3から引き出す際に、引き出し方向先頭に載置されたSOS基板1aと、最後尾に載置されたSOS基板1bとの間の距離差のため、実際にSOS基板1が熱処理炉3の外部に引き出される時点が異なることから、これら基板に対する熱処理状態に差が発生することになり、同時に熱処理を行った複数のSOS基板の中でバラツキが生じる原因となる。よって、これらを回避するために、8.0〜11.0〔mm〕のピッチ範囲が好ましい。
【0014】
したがって、バッチ単位のSOS基板1を熱処理用ボート2に、上述の所定ピッチ間隔Lで載置し、熱処理炉3内で、拡散,酸化,或いはCVD処理等の所定の熱処理を行った後、上述の引き出し速度Vで引き出すことにより、SOS基板1内での温度ムラが生じることはない。よって、シリコンとサファイアとの熱膨張係数が異なることから、SOS基板内で温度ムラが生じた場合、基板割れが生じることがあるが、SOS基板内での温度ムラの発生が防止されるから、基板割れが生じることが回避される。また、同時に熱処理を行った複数のSOS基板の中で熱処理状態に差が生じることが防止されるから、同一特性を有するSOS基板を形成することができる。
【0015】
また、引き出し速度Vを1.0〜3.0〔mm/s〕の範囲で設定し、温度ムラ等が生じないように、ピッチ間隔Lを調整するようにしたから、温度ムラ等の発生を防止するために、引き出し速度Vをより低速にすることにより生産性が低下することを防止することができ、生産性を維持した状態で、基板割れ等が生じることなく、熱処理を行うことができる。
【0016】
なお、上記実施の形態においては、10〜30枚のSOS基板に対して熱処理を行う際に、ピッチ間隔Lを8.0〜11.0〔mm〕の範囲で設定し、引き出し速度Vを1.0〜3.0〔mm/s〕の範囲で設定するようにした場合について説明したが、これら引き出し速度V或いはピッチ間隔Lは、実験により求めるようにすればよい。また、熱処理用ボートに搭載するSOS基板の数、或いはSOS基板の大きさ厚さ等の形状に応じてピッチ間隔L及び引き出し速度Vを、設定するようにしてもよい。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1に示す熱処理路において、直径125〔mm〕(5〔インチ〕),厚さ625〔μm〕のSOS基板、20枚に対して熱処理を行った。
【0018】
このとき、SOS基板1をピッチ間隔L=9.52〔mm〕で熱処理用ボート2に搭載し、726〔℃〕の熱処理炉3内で熱処理を行った。その後、引き出し速度V=2.0〔mm/s〕で、熱処理炉3から引き出した。
【0019】
その結果、SOS基板に、基板割れは発生しなかった。
これに対し、第1の比較例として、上記実施例の条件のうち、ピッチ間隔Lのみを変更し、L=14.28〔mm〕として、熱処理を行い熱処理炉3から引き出した。
【0020】
その結果、ピッチ間隔Lが広くなることから、SOS基板面内の温度均一性は向上するが、これと共に、熱処理炉3から引き出す時に冷却速度も早くなるため、SOS基板の表面と基板内部との間で温度差が生じ、基板の深さ方向の温度均一性が低下し、SOS基板20枚中、2枚の基板に基板割れが発生した。
【0021】
このとき、熱処理炉3から引き出す時の温度均一性の低下による基板割れを回避するために、引き出し速度Vをより遅くすることも考えられる。この引き出し速度Vが遅くなるほど、SOS基板の温度均一性は向上するため、基板割れを防止することができるが、引き出し速度Vが遅くなるほど、熱処理炉3から最初に引き出されるSOS基板と、最後尾に搭載されたSOS基板が炉内から引き出されるSOS基板との間に時間差が生じ、同時に熱処理を行った複数のSOS基板の中で熱処理状態に差が生じることになり、好ましくない。また、引き出し速度Vが遅くなるほど生産性が低下してしまう。
【0022】
図2は、上記実施の形態及び第1の比較例と同一の条件で、引き出し速度V=2.0〔mm/s〕とした場合の、ピッチ間隔Lに対する基板割れの発生頻度をグラフにしたものである。図2からわかるように、ピッチ間隔Lが広すぎても、狭すぎても基板割れが発生し、ピッチ間隔L=8.0〜11.0〔mm〕のピッチ範囲が適当であることが確認された。
【0023】
次に、第2の比較例として、上記の本実施例と同様のSOS基板20枚に対して、炉内温度726〔℃〕の熱処理炉3内で、所定の熱処理を行った。
このとき、ピッチ間隔L=4.76〔mm〕,引き出し速度V=4.0〔mm/s〕の条件で熱処理を行った後、熱処理炉3から引き出した。
【0024】
その結果、SOS基板20枚中,半数のSOS基板に基板割れが発生した。
この第2の比較例と同一の条件で、SOS基板に替えてSi基板に対して、熱処理を行った後引き出したところ、基板割れは発生しなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の本発明に係るSOS基板の熱処理方法は、熱処理用ボートを熱処理炉から引き出す際の引き出し速度を1.0〜3.0〔mm/s〕とし、熱処理用ボートに搭載する複数枚のSOS基板の搭載間隔を、SOS基板内の温度分布が均一となり、且つ、SOS基板毎の熱処理状態が同一となるように調整するようにしたから、SOS基板の生産性を維持した状態で、SOS基板内の温度ムラにより生じる基板割れの発生を回避することができ、また、SOS基板毎の熱処理状態が異なることに伴いSOS基板毎に特性が異なることを回避することができる。特に、搭載間隔を8.0〜11.0〔mm〕とすることにより、基板割れ等の発生を回避すると共に、同一特性を有する複数のSOS基板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるSOS基板の熱処理方法を適用した熱処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】ピッチ間隔Lとこれに対する基板割れの発生頻度との対応を表す図である。
【符号の説明】
1 SOS基板
2 熱処理用ボート
3 熱処理炉
4 フォーク
L ピッチ間隔
V 引き出し速度
Claims (1)
- 直径125〔mm〕(5〔インチ〕)、厚さ625〔μm〕のSOS基板を、熱処理用ボート上に所定の搭載間隔で複数枚搭載した状態で、熱処理炉内で熱処理するSOS基板の熱処理方法において、前記熱処理終了後に前記熱処理用ボートを前記熱処理炉から引き出す際の速度を1.0〜3.0〔mm/s〕とし、前記搭載間隔を、前記SOS基板内の温度分布が均一となり且つ前記SOS基板毎の熱処理状態が同一となるように、8.0〜11.0〔mm〕とすることを特徴とするSOS基板の熱処理方法。
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