JP3634080B2 - 光学フィルム及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、接着ミス時等に液晶セルを損傷させずに容易に剥離でき、かつ液晶セルに貼着して加熱加湿雰囲気においても発泡や剥がれ、光学特性の低下やセルの反りを生じにくくて液晶表示装置等に好適な粘着層付設型の光学フィルムに関する。
【0002】
【発明の背景】
液晶表示装置(LCD)に用いる光学フィルム素材、例えば偏光フィルムや位相差フィルムやそれらを積層した楕円偏光フィルム等は、LCDのキーデバイスであり品質のバラツキ防止やLCD組立の効率化などを目的に、アクリル系粘着剤等からなる粘着層を予め付設した光学フィルムの状態で液晶セルに貼着する方法が採られている。
【0003】
その光学フィルムにおいて、情報化社会の進展によるLCDのマルチメディア用情報端末機器等としての用途拡大や高性能化や大型化などに伴い、例えばLCDに実装して加熱加湿処理した場合に処理の前後で発泡や剥がれを生じない特性(耐湿熱性)や、高温雰囲気に置いても光の透過率や位相差(リタデーション値:複屈折の屈折率差とフィルム厚の積)等の光学性能が低下しない特性(光学機能維持性)等の実用特性や光学特性の一層の高度化や、より過酷な条件に耐える高耐久化などが求められている。
【0004】
しかしながら前記要求の達成は、これまでに準じた対策方法ではその実現が困難な問題点があった。すなわち加熱加湿下での光学フィルムの発泡・剥がれ問題は、光学フィルムの変形に起因するため光学フィルム素材の難変形化や粘着層の高凝集力化がこれまでの対処方法であるが、前者では光学特性を維持しつつ難変形化をはかることが困難で耐湿熱性向上の目途は立っておらず、LCDの大型化による光学フィルムの大面積化に伴う変形量の増大がその実現をより困難としている実情である。また後者では、粘着層の高凝集力化で光学フィルムの周囲と中央部とで加熱加湿処理により光透過率や位相差等の光学特性にムラが生じて光学機能維持性が低下し、液晶セルに反りを生じさる問題を誘発して、光学フィルムの大型化がその問題をより顕著とする。
【0005】
また前記の粘着層の高凝集力化は、加湿下での光学フィルム端部の剥離を発生させやすくし、その防止のために粘着層の接着力を向上させると、異物混入や損傷や接着ミス等で光学フィルムの交換を要する場合に剥離作業に多時間、多労力を要し、液晶セルに粘着剤が残存してそれが異物となるなどの問題を生じやすく、LCDの薄型化や軽量化に伴うガラス板やプラスチックフィルム等からなるセル基材の薄型化がセルの損傷のない剥離をより困難としてセルを再利用できない問題も発生する。
【0006】
【発明の技術的課題】
本発明は、接着ミス時等に液晶セルを損傷させずに容易に剥離できて液晶セルを再利用でき、しかも加熱加湿雰囲気においても発泡や剥がれや光学特性の低下を生じずに大サイズにても耐湿熱性と光学機能維持性の両性能を満足すると共に、液晶セルの反り問題も生じずに安定した接着特性を示す光学フィルムの開発を課題とする。
【0007】
【課題の解決手段】
本発明は、光学フィルム素材の片面又は両面に粘着層の重畳層を有してなり、その最外の粘着層が官能基濃度5×1/104モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとすると共に、その最外粘着層の内側に弾性率がより小さい粘着層を有することを特徴とする光学フィルムを提供するものである。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、適度な接着力を有して接着ミス時等に薄型や大型の液晶セルの場合にもそれを損傷させずに容易に剥離できて液晶セルを再利用でき、しかも加熱加湿雰囲気においても発泡や剥がれや液晶セルの反りを生じず、かつ光透過率や位相差等の光学特性が低下しにくくて耐湿熱性と光学機能維持性の両方に優れて安定した接着特性を示す光学フィルムを得ることができ、高品質で耐久性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の光学フィルムは、光学フィルム素材の片面又は両面に粘着層の重畳層を有してなり、その最外の粘着層が官能基濃度5×1/104モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとすると共に、その最外粘着層の内側に1層又は2層以上からなる粘着層を有し、しかもその内側の粘着層として、弾性率が前記した最外の粘着層よりも小さいものを含むものである。その例を図1、図2に示した。2が光学フィルム素材、3が粘着層31,32の重畳層である。また図2において、21は偏光フィルム、22は位相差フィルムであり、これらが重畳粘着層3を介し積層されて光学フィルム素材2としての楕円偏光フィルムが形成されている。なお1は保護フィルム、4はセパレータである。
【0010】
光学フィルム素材としては、例えば偏光フィルムや位相差フィルム、あるいは偏光フィルムと位相差フィルムを積層した楕円偏光フィルム、さらには反射型偏光フィルムやそれを用いた前記楕円偏光フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類について特に限定はない。なお前記の楕円偏光フィルムの如き積層タイプの光学フィルム素材の場合、その積層に用いる接着手段としては、本発明における粘着層が耐湿熱性や光学機能維持性等の点より好ましい。
【0011】
前記した偏光フィルムの具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルムなどがあげられる。偏光フィルムの厚さは通例5〜80μmであるが、これに限定されない。
【0012】
なお反射型の偏光フィルムは、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有する。
【0013】
反射型偏光フィルムの形成は、必要に応じ透明樹脂層等を介して偏光フィルムの片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式で行うことができる。前記の必要に応じて設けられる透明樹脂層は、図例の如き保護フィルム1に兼ねさせることもでき、従って上記の偏光フィルムとしては、その片側又は両側に透明保護層を有するものであってもよい。
【0014】
反射型偏光フィルムの具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルム等の透明樹脂層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記の透明樹脂層に微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。なお反射層は、その反射面が透明樹脂層や偏光フィルム等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0015】
前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明樹脂層は、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明樹脂層の表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明樹脂層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0016】
なお保護フィルムや透明保護層の形成には、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れるプラスチックなどが好ましく用いられる。その例としては、ポリエステル系樹脂やアセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。
【0017】
透明保護層は、プラスチックの塗布方式やフィルムとしたものの積層方式などの適宜な方式で形成してよく、厚さは適宜に決定してよい。一般には5mm以下、就中1mm以下、特に1〜500μmの厚さとされる。なお表面微細凹凸構造の透明樹脂層の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜5μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等からなる、導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明樹脂層中で透明性を示すものが用いられる。微粒子の使用量は、透明樹脂100重量部あたり2〜25重量部、就中5〜20重量部が一般的である。
【0018】
上記した光学フィルム素材である位相差フィルムの具体例としては、ポリカーボネートやポリビニルアルコール、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレートやポリアミドの如き適宜なプラスチックからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムなどがあげられる。位相差フィルムは、2種以上の位相差フィルムを積層して位相差等の光学特性を制御したものとして形成することもできる。
【0019】
また上記した光学フィルム素材である楕円偏光フィルム又は反射型楕円偏光フィルムは、偏光フィルム又は反射型偏光フィルムと位相差フィルムを適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光フィルム等は、(反射型)偏光フィルムと位相差フィルムの組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光フィルム等としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置の製造効率を向上させうる利点がある。
【0020】
なお偏光フィルムや位相差フィルム、保護フィルムや透明保護層等の光学フィルムを形成する各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能をもたせることもできる。
【0021】
光学フィルム素材の片面又は両面に設ける粘着層は、官能基濃度5×1/104モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとする粘着層が最外に位置すると共に、その最外粘着層32の内側の光学フィルム素材との間に弾性率がより小さい粘着層31を少なくとも有する重畳層3として形成される。
【0022】
前記により、耐湿熱性と光学機能維持性の両方に優れ、薄型や大型等の液晶セルに適用した場合にもセルの反りを抑制できると共に、接着ミス時等における手作業による剥離処理も容易に効率よく行いうる光学フィルムとすることができる。当該官能基濃度が5×1/104モル/gを超えると、発泡や剥がれを防止する耐湿熱性を付与するために凝集力の高い粘着層とする必要が生じ、上記したように耐湿熱性以外の特性を両立させることが困難となる。
【0023】
すなわち前記において、加熱加湿処理による発泡や剥がれの防止は、粘着層における当該官能基濃度の低い設定による。かかる設計思想は、当該発泡問題が粘着層中の水分が高温で粘着剤の凝集力に勝って気化膨張し、その気泡が光学フィルムの変形で視認される程度にまで拡大すること、また光学フィルムの剥がれ、特に端部の剥がれ(浮き)は、吸湿によるセル・粘着層界面の接着力の低下によることを究明したことに基づく。
【0024】
従って当該発泡の防止の点では、従来の設計思想による粘着層の凝集力を高める対処が有効であることがわかる。しかしその場合には、上記したように凝集力の向上で光学フィルム素材に熱膨張差等による大きな応力が発生するなどして光学特性の低下を招き、また光学フィルム素材の収縮に伴って液晶セルの反りが発生し、さらに被着体に対する濡れ性が低下して前記の如く加湿条件下に光学フィルム、特に端部が剥がれやすくなり耐湿熱性と光学機能維持性を両立させることができない。
【0025】
また前記において、組成を変更したり薬剤を添加して接着力を向上させる従来の設計思想では、吸湿性が高く加湿時の接着力低下が大きい粘着層となり、その場合に吸湿による接着力の低下を見越して吸湿剥離を生じない接着力に設定したときには、接着ミス時等の剥離が困難な高い接着力となり、剥離時に液晶セルを破損しやすくてセルの再利用を実現しにくい。
【0026】
前記に対し本発明では、低い官能基濃度の最外粘着層とすることで液晶セル(光学フィルム素材)と粘着層の界面での接着力を低下させて剥離を容易とし、かつ吸湿を抑制して発泡と接着力の低下を防止すると共に、内側の低弾性率の粘着層を介し光学フィルム素材の変形に基づいて発生する応力を緩和して、最外粘着層が光学フィルム素材の変形に影響することを抑制する。その結果、発泡原因の吸湿が抑制されて初期接着力を良好に維持し、かつ発泡や剥がれや液晶セルの反りを防止して、しかも接着ミス時等の剥離を可能とする低い接着力の設定が可能となると共に、光学フィルム素材の変形も許容して耐湿熱性と光学機能維持性の両立が可能となる。接着ミス時等における光学フィルムの剥離の点よりは、フィルム端部での剥離が生じない範囲で可及的に低い接着力が好ましいが、前記の粘着層吸水率の低減による接着力の低下抑制効果で、通常時の接着力を低く設定できて剥離に有利となる。
【0027】
本発明において発泡や剥がれ、光学特性の低下や液晶セルの反り等の防止の点より最外粘着層における官能基濃度は、5×1/104モル/g以下とされ、好ましくは3×1/104モル/g以下、特に1×1/104モル/g以下とされる。官能基濃度が5×1/104モル/gを超えると端部での剥がれ防止等に必要な接着力と、接着ミス時等の剥離に必要な接着力とを両立させにくくなる。
【0028】
一方、剥離接着力は速度や角度の剥離条件で異なり、剥離作業を考慮した接着力の設定が作業効率や液晶セルの損傷防止などの点より好ましいが、本発明では手作業による剥離処理の繰返し性(疲労性)やスムーズな作業性、作業効率や低労働負担性、セル損傷の防止性などの点より、ガラス板やプラスチックフィルム等からなる液晶セルにおける剥離側被着体に対する90度剥離接着力(剥離速度100mm/分、25℃)に基づき600g/20mm以下、就中50〜500g/20mm、特に100〜400g/20mmの接着力に設定することが好ましい。
【0029】
粘着層の重畳数は、2層又は3層以上の適宜な層数とすることができ、一般には5層以下、就中2層又は3層とされる。3層以上の重畳層とする場合にも光学フィルムの最外に位置する粘着層が前記した官能基濃度を有するものとされる。なお3層以上の重畳層の場合の内層については、例えば最外層より弾性率が順次低くなる重畳構造、重畳層における中間層に弾性率が最小の粘着層を有する重畳構造などの如く、最外層よりも弾性率の低い粘着層を有する内層構造は適宜に決定でき、特に限定はない。
【0030】
発泡防止等の耐熱性や耐湿性などの点より好ましい重畳粘着層の弾性率は、最外層において2g/mm2以上、就中3g/mm2以上、特に4g/mm2以上である。また最外層よりも弾性率が低い内層粘着層のそれは、応力緩和による光学特性の維持性などの点より1.8g/mm2以下、就中1.7g/mm2以下、特に1.5g/mm2以下であることが好ましい。なお前記の弾性率は、90℃における引張り試験での1000%モジュラスに基づく。
【0031】
重畳粘着層の厚さは、使用目的に応じて適宜に決定でき、1mmを超える厚さとすることもできるが、一般には光学特性や付設加工性などの点より3〜500μm、就中10〜100μm、特に15〜50μmとされる。その場合、最外粘着層が占める厚さ比は、耐熱性や耐湿性等の点より全厚の80%以下、就中5〜65%、特に10〜50%とすることが好ましい。
【0032】
本発明において粘着層は、弾性率の異なるものの重畳層として形成され、最外層はアクリル系粘着剤にて形成されるが、内側の粘着層の形成には適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に限定はない。ちなみにその粘着剤としては、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤やウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。就中、最外層と同様に透明性や耐候性や耐熱性などの点よりアクリル系粘着剤が好ましく用いうる。従って重畳層を形成する粘着層は、同種又は異種の適宜な組合せとすることができる。
【0033】
最外層を形成する粘着層は、上記の如く所定の官能基濃度を有するアクリル系重合体をベースポリマーとするものが用いられる。そのアクリル系重合体としては、適度な濡れ性と柔軟性を発現する主成分をなす単量体として、ガラス転移温度が−10℃以下のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの1種又は2種以上を用いたものなどがあげられる。
【0034】
前記のエステルとしては、低接着力化などの点より、例えばn−ブチル基やイソブチル基、イソアミル基やヘキシル基、ヘプチル基やシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基やイソオクチル基、イソノニル基やラウリル基、ドデシル基やイソミリスチル基、オクタデシル基の如き炭素数が4以上、就中4〜24のアルキル基等からなる有機基を有するアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルが好ましく用いうる。
【0035】
前記の低接着力性は、ガラス板に対して特に顕著に現れ、その理由は不明であるが本発明者らは、ガラスに対する接着力の寄与度に大きいエステル基が炭素数の増加で相対的に単位体積あたりに占める割合が減少するためであると考えている。なおメチル基やエチル基やプロピル基等の炭層数が3以下の有機基を有するアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルは、併用系として用いうる。
【0036】
またアクリル系重合体は、粘着剤としての凝集性や接着性を改質するための、あるいは架橋反応性を付与するための単量体を共重合成分として含有していてもよい。その共重合用単量体については特に限定はなく、前記した主成分をなす単量体と共重合可能なものであればよい。その場合、カルボキシル基や水酸基、エポキシ基やアミド基、イミド基やスルホン酸基、リン酸基等の官能基を有する共重合成分は、官能基濃度を上昇させるので上記した所定の官能基濃度を満足する範囲で用いうる。
【0037】
前記した官能基含有の共重合用単量体の例としては、アクリル酸やメタクリル酸、カルボキシエチルアクリレートやカルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸やマレイン酸、クロトン酸の如きカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルや(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートの如きヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルの如きエポキシ基含有単量体などがあげられる。
【0038】
また(メタ)アクリルアミドやN−アクリロイルモルホリン、N−置換(メタ)アクリルアミドやN−ビニルピロリドンの如きアミド系単量体、N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドの如きマレイミド系単量体、N−メチルイタコンイミドやN−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミドやN−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミドやN−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドの如きイタコンイミド系単量体、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドの如きスクシンイミド系単量体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の如きスルホン酸基含有単量体、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートの如き燐酸基含有単量体なども官能基含有の共重合用単量体としてあげられる。
【0039】
官能基を有する単量体は、その官能基と分子間架橋剤を介した分子間架橋に有用なことから共重合させる場合が多い。本発明による最外粘着層においては所定の官能基濃度を満足する範囲で適宜な使用量とすることができる。一般には、上記主成分モノマーの種類にもよるが通常、4重量%以下、就中2重量%以下、特に1重量%以下の共重合で、得られる共重合体の当該官能基濃度を上記した所定範囲とすることができる。
【0040】
なお当該官能基を介した架橋処理を可能としつつ、耐湿熱性と光学機能維持性の両立性などの点より有利な低い官能基濃度、例えば1×1/104モル/g以下の濃度等を達成する点よりは、低い官能基濃度にても架橋反応点として効率よく機能するものが好ましく用いられる。ちなみに、上記した5−カルボキシペンチルアクリレートや(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルや(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシルや(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルの如く、比較的長いメチレン鎖の末端に官能基を有する単量体などは、共重合体中での官能基の運動の自由度が大きいためか架橋反応性に富み、0.5重量%程度の少量の共重合で充分な架橋効果を発揮し、得られる共重合体の官能基濃度を殆ど上昇させない。
【0041】
粘着剤の凝集性や接着性等の制御を目的に用いられる他の共重合用単量体としては、例えば酢酸ビニルやスチレンの如きビニル系単量体、ジビニルベンゼンの如きジビニル系単量体、1,4−ブチルジアクリレートや1,6−ヘキシルジアクリレートの如きジアクリレート系単量体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートやポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートやフッ化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートの如きアクリル酸エステル系単量体、トリメトキシシリルプロピルアクリレートの如きアルコキシ基含有単量体、無水マレイン酸や無水イタコン酸の如き酸無水物単量体などがあげられる。なお酸無水物単量体は共重合体中で加水分解によりカルボキシル基を生成する場合があるので官能基濃度の制御の点より考慮する必要がある。
【0042】
一方、多官能アクリレート系単量体なども、例えば電子線等の放射線の照射により架橋剤無添加による後架橋操作等で架橋処理する場合などの如く、必要に応じて共重合用単量体として用いうる。かかる単量体の例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートや(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートやネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレートやポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどがあげられる。
【0043】
アクリル系重合体の調製は、例えば1種又は2種以上の各単量体の混合物に、溶液重合方式や乳化重合方式、塊状重合方式や懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。塊状重合方式の場合には、紫外線照射による重合方式が好ましく適用しうる。最外粘着層を形成するためのアクリル系重合体の調製に際しては、上記した如く所定の官能基濃度を達成するために官能基含有の共重合用単量体の使用量を制御することが必要である。一方、内層用の粘着層を形成するためのアクリル系重合体の調製に際しては、かかる官能基含有の共重合用単量体の使用量は適宜に決定してよい。また、上記に例示の適宜な(メタ)アクリル酸エステルや共重合用単量体を用いてよく、炭素数が3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルも主成分に用いうる。
【0044】
本発明において好ましく用いうるアクリル系重合体は、耐湿熱性等の点より重量平均分子量が40万以上のものであり、就中80万〜400万、特に100万〜300万のものである。またかかる範囲の重量平均分子量を有するものからなる粘着層とすることで、光学フィルムを所定サイズ等に切断したり、打ち抜いたりする際などに粘着層のはみ出しや打ち抜き刃の汚染などを防止することができ、切断加工性や保存性等の実用性に優れる光学フィルムを得ることができる。
【0045】
前記アクリル系重合体の調製に際しては、必要に応じて重合開始剤を用いうる。その使用量は、適宜に決定しうるが一般には、単量体全量の0.001〜5重量%とされる。重合開始剤としては、その重合方式に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの適宜なものを用いうる。
【0046】
ちなみに熱重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイルやt−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートやジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエートやt−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドやジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドの如き有機過酸化物があげられる。
【0047】
また2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)や2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)やジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)や2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]の如きアゾ系化合物なども熱重合開始剤としてあげられる。
【0048】
一方、光重合開始剤の例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンやα−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノンや2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンや2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1の如きアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエチルエーテルやベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾインエーテル系開始剤があげられる。
【0049】
またベンジルジメチルケタールの如きケタール系開始剤、ベンゾフェノンやベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系開始剤、チオキサンソンや2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソンや2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソンや2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソンや2,4−ジイソプロピルチオキサンソンの如きチオキサンソン系開始剤、その他、カンファーキノンやハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシドやアシルホスフォナートなども光重合開始剤としてあげられる。
【0050】
その他の重合開始剤としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムや過酸化水素等、あるいはそれらと還元剤を併用したレドックス系開始剤などがあげられる。
【0051】
本発明において粘着層は、上記したように架橋処理することもできる。その場合、分子間架橋剤による架橋処理は、粘着剤の液に分子間架橋剤を配合する方式などにより行うことができる。分子間架橋剤としては、分子間架橋に関与するベースポリマーにおける官能基の種類などに応じて適宜なものを用いることができ、特に限定はない。従って公知物のいずれも用いうる。
【0052】
ちなみに分子間架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネートやトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートの如き多官能イソシアネート系架橋剤、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの如きエポキシ系架橋剤、その他、メラミン樹脂系架橋剤や金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤やアミノ樹脂系架橋剤などがあげられる。
【0053】
分子間架橋剤の配合量は、ベースポリマーにおける官能基の含有量などに応じて適宜に決定することができる。一般には、ベースポリマー100重量部あたり、0.005〜20重量部、就中0.01〜15重量部、特に0.1〜10重量部の分子間架橋剤が用いられる。
【0054】
粘着層には、透明性を損なわない範囲で必要に応じて、例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある適宜な添加剤を配合することもできる。また微粒子を含有させて光拡散性を示す粘着層とすることもできる。
【0055】
なお粘着層の弾性率は、ポリマーの組成や分子量、架橋方式や架橋度、任意成分の添加などの従来に準じた方法で行うことができる。その場合、弾性率の低減化は、ベースポリマーの低分子量化や架橋度の低減、軟化剤の添加などの適宜な方式で行ってよい。
【0056】
光学フィルム素材の片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に粘着剤を溶解又は分散させて10〜40重量%程度の粘着剤液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学フィルム素材上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学フィルム素材上に移着する方式などがあげられる。
【0057】
粘着層の重畳化は、2種以上の粘着剤の同時又は随時の直接塗工方式や移着によるラミネート方式、直接塗工方式と移着ラミネート方式の併用などの適宜な方式で行ってよい。重畳粘着層を光学フィルム素材の両面に設ける場合、その表裏において異なる組成や種類や組合せ等の重畳粘着層とすることもできる。粘着層が表面に露出する場合には、実用に供するまでの間その表面をセパレータ等で保護しておくことが好ましい。
【0058】
なお本発明の光学フィルムの形成に際して、保護フィルム等の各種のフィルム素材の積層には、上記した光学フィルム素材に付設する粘着層に準じたものを使用することが、耐湿熱性や光学機能維持性等の点より好ましい。
【0059】
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置の形成などの適宜な用途に用いうる。液晶表示装置の形成は、本発明による光学フィルムをその粘着層を介して液晶セルの片側又は両側に貼着することにより行うことができる。その貼着に際しては、偏光フィルムや位相差フィルム等が所定の配置位置となるように行われ、その配置位置は従来に準じることができる。
【0060】
ちなみに図3、図4に液晶表示装置における光学フィルムの配置例を示した。5が液晶セルであり、その他の符号は上記に準じる。なお図3に例示の装置は、偏光フィルム21に反射層23を設けてなる反射型のものであり、このように反射層は液晶セルの片側の外側に配置される。
【0061】
また図4に例示の装置は、位相差フィルム22を用いたものである。位相差フィルムは、着色防止や視角範囲の拡大等を目的に液晶セルの位相差を補償するためなどに用いられる。その場合、偏光フィルムと積層してなる楕円偏光フィルムとして用いることもできる。
【0062】
本発明の光学フィルムは、柔軟性を有して湾曲面や大面積面等への適用が容易であり、任意な液晶セル、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルに適用して種々の液晶表示装置を形成することができる。
【0063】
【実施例】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸イソオクチル99.7部(重量部、以下同じ)、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート0.3部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、固形分濃度30重量%のアクリル系重合体溶液を得、それに固形分100部あたり0.2部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートと0.1部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシランを配合したアクリル系粘着剤(A)、及び0.05部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートと0.1部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシランを配合したアクリル系粘着剤(B)を得た。なお前記のアクリル系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算(以下同じ)で194万であり、官能基濃度は0.17×1/104モル/gであった。
【0064】
次に、前記のアクリル系粘着剤(A)をポリエステルフィルムからなるセパレータに塗工し150℃で5分間加熱処理して厚さ5μmの最外粘着層を形成した後、その上に前記に準じてアクリル系粘着剤(B)からなる厚さ20μmの内側粘着層を形成し、その重畳粘着層を偏光フィルム(日東電工社製、NPF−G1225DUNAGS1)の片面に移着して光学フィルムを得た。
【0065】
実施例2
モノマーとして、アクリル酸ブチル99.8部と4−ヒドロキシブチルアクリレート0.2部を用いて重量平均分子量170万、官能基濃度0.14×1/104モル/gのアクリル系重合体を得、その容液にトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを0.3部(最外粘着層用)又は0.2部(内側粘着層用)加えてアクリル系粘着剤を調製し、それを用いて重畳粘着層を形成したほかは実施例1に準じて光学フィルムを得た。
【0066】
実施例3
モノマーとしてアクリル酸ブチル95部とアクリル5部を用いて実施例1に準じ重量平均分子量145万、官能基濃度6.9×1/104モル/gのアクリル系重合体を得、その容液にトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを0.2部加えてアクリル系粘着剤(C)を調製し、それを内側粘着層の形成に用いて重畳粘着層を形成したほかは実施例1に準じて光学フィルムを得た。
【0067】
比較例1
前記のアクリル系粘着剤(C)からなる最外粘着層と、アクリル系粘着剤(A)からなる内側粘着層とで重畳粘着層を形成したほかは実施例1に準じて光学フィルムを得た。
【0068】
比較例2
アクリル系粘着剤(C)からなる内側粘着層と、そのトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートの使用量を0.8部としたアクリル系粘着剤からなる最外粘着層とで重畳粘着層を形成したほかは実施例1に準じて光学フィルムを得た。
【0069】
評価試験
弾性率
実施例、比較例に準じて厚さ1mmの粘着層(5mm×30mm)を形成し、それを引張り試験装置(島津製作所製)用いて、引張り速度300mm、チャック間隔10mmの条件で90℃における応力−歪曲線を求め、1000%モジュラス(1000%歪時の応力)を調べた。
【0070】
剥離接着力
実施例、比較例に準じて厚さ50μmの粘着層を厚さ25μmのポリエステルフィルム上に形成して幅20mmに切断し、それをガラス板に2kgのゴムローラを一往復させる方式で圧着し、50℃、5気圧のオートクレーブ中に30分間放置して接着状態を熟成した後、90度剥離接着力(剥離速度100mm/分、25℃)を調べた。
【0071】
剥離性
実施例、比較例で得た194mm×250mmサイズの光学フィルムをその粘着層を介して厚さ1.1mmのガラス板に接着した後、光学フィルムを剥離してその際の作業性を次の基準で判定した。
良好:剥離作業に特に問題がなかった場合
不良:剥離作業に少し強めの抵抗感が認めらた場合
不適:剥離作業に著しい抵抗感か、ガラス板に糊残りが認められた場合
【0072】
耐熱性
実施例、比較例で得た194mm×250mmサイズの光学フィルムをその粘着層を介して厚さ1.1mmのガラス板(光学フィルムより各辺10mmずつ大サイズのもの、以下同じ)に接着し、50℃、5気圧のオートクレーブ中に30分間放置して接着状態を熟成した後、90℃の雰囲気中で1000時間加熱して発泡、剥がれ、反りの有無を目視観察し、次の基準で判定した。
【0073】
(1)発泡
良好:直径が20μm以上の気泡が認められない場合
不良:直径が20〜50μmの気泡が認められた場合
不適:直径が50μm以上の視認性に影響する気泡が認めらた場合
(2)剥がれ
良好:剥がれが認められない場合
不良:視認性に影響しない剥がれが認めらた場合
不適:視認性に影響する剥がれが認めらた場合
(3)反り
良好:ガラス板の反りが0.5mm未満の場合
不良:ガラス板の反りが0.5〜1mm未満の場合
不適:ガラス板の反りが1mm以上の場合
【0074】
耐湿性
加熱条件を60℃、90%R.H.の雰囲気中で1000時間としたほかは前記の耐熱性に準じて発泡、剥がれ、反りの有無を判定した。
【0075】
光学特性維持性
実施例、比較例で得た194mm×250mmサイズの光学フィルムをその粘着層を介して厚さ1.1mmのガラス板の両面に表裏で吸収軸が直交するように接着し、50℃、5気圧のオートクレーブ中に30分間放置して接着状態を熟成した後、90℃の雰囲気中で1000時間加熱し、バックライト上で視認性に影響する偏光度の低下の有無を調べ、次の基準で判定した。
良好:全体に視認性に影響する偏光度の低下が認められない場合
不良:視認性に影響する偏光度の低下(端部)が認めらた場合
【0076】
前記の結果を表1、表2に示した。
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1、表2より、光学フィルムをその粘着層を介して液晶セルに接着後、セルを損傷させずに容易に剥離でき、しかも液晶セルに対し安定した接着力を示して加熱加湿処理しても発泡や剥がれ、光学特性の低下やセルの反りを生じないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学フィルム例の断面図
【図2】他の光学フィルム例の断面図
【図3】液晶表示装置例の断面図
【図4】他の液晶表示装置例の断面図
【符号の説明】
2:光学フィルム素材
21:偏光フィルム
22:位相差フィルム
23:反射層
3:重畳粘着層
31,32:粘着層
5:液晶セル
Claims (4)
- 光学フィルム素材の片面又は両面に粘着層の重畳層を有してなり、その最外の粘着層が官能基濃度5×1/104モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとすると共に、その最外粘着層の内側に弾性率がより小さい粘着層を有することを特徴とする光学フィルム。
- 請求項1において、官能基がカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、イミド基、スルホン酸基又はリン酸基の1種又は2種以上であり、光学フィルム素材が偏光フィルム、反射型偏光フィルム又は位相差フィルムである光学フィルム。
- 請求項1又は2において、光学フィルム素材が請求項1又は2に記載の粘着層を介して、偏光フィルムと位相差フィルムを積層した楕円偏光フィルム、又は反射型偏光フィルムと位相差フィルムを積層した反射型楕円偏光フィルムである光学フィルム。
- 液晶セルの片側又は両側に請求項1〜3に記載の光学フィルムの少なくとも1枚が貼着されてなることを特徴とする液晶表示装置。
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