JP3633837B2 - 被覆工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、基材の上に被膜を形成した被覆工具に関し、特に、その表面に耐摩耗性被膜を形成したドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具、その表面に耐摩耗性被膜を形成した金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、ドリルにおいて穴開け加工をする場合には、切削中に被削材とドリルとの界面に切削油剤を供給することが一般に行なわれている。この切削油剤は切削加工中における工具と被削材の界面の潤滑性向上、工具の冷却、切屑の排出促進に大きな効果を持っており、近年における切削能力の向上に大きく寄与してきた。
【0003】
しかし、潤滑性を向上させる目的で切削油剤中に添加されている硫黄やリンや塩素などの極圧添加剤が、切削加工現場における作業環境の悪化、工場周辺の環境汚染、使用済み切削油剤の廃棄処理に伴う有害物質の飛散、廃棄処理費用問題などをもたらしてきた。
【0004】
ある調査では、切削加工においては、切削油剤関連費用が工具費を大幅に上回り、生産加工費全体のうちの15〜30%を上回るとも言われている。
【0005】
このような背景の下、切削油剤を減らしても寿命や切削能率が低下しない切削工具の開発が強く求められている。
【0006】
なお、種々の切削加工の中でも、旋削加工、フライス加工の分野では切削油剤の削減に伴う技術的問題が比較的少なく乾式化が進んでいるといえる。しかしながら、穴開け加工においては、乾式化はずいぶんと遅れているのが現状である。
【0007】
ドリルを用いた加工においては、切削油剤は、ドリルの逃げ面およびすくい面と被削材との間に薄い膜を形成するため潤滑効果を発揮する。また、切削の摩擦熱を吸収して、ドリルの刃先を冷却するという効果を有する。これら2つの効果により、ドリルの刃先、特に、逃げ面の摩耗を防ぐことができる。
【0008】
また、切削油剤はドリルの刃先と被削材との間の潤滑効果を有するので、加工穴の表面が加工硬化を起こすことが少ない。さらに、ドリルを用いた加工においては、ドリルの刃先が被削材内に深く入り込むため、ドリルの溝を通して切屑を排出する必要がある。ここで、潤滑油剤は、この溝の表面に膜を作り切屑がスムーズに排出される効果も果たす。
【0009】
そのため、切削油剤を使用しないと、上述の効果が達成できなくなり、逃げ面の摩耗の増大による工具寿命の低下、加工穴の加工硬化による穴質の低下、切屑の流出抵抗の増大によるドリルの折損等の問題が発生することが考えられる。
【0010】
エンドミル、フライス加工用および旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具では、工具の損傷を防止する技術についての開発が進められている。
【0011】
この損傷は、主として摩耗と欠損に大別できる。摩耗は大きく分けると(1)機械的な摩擦摩耗によるものと、(2)高温での酸化や被削材との拡散などによって生じる熱的摩耗に分類される。いずれの摩耗も、切削速度や送り速度が大きくなって工具の刃先温度が高くなると著しくなる。
【0012】
欠損は刃先にかかる大きな切削抵抗や機械的、熱的な衝撃によって起こり、高送り切削や断続切削で顕著に現われる。
【0013】
従来から、これらの損傷を低減させるために、WC基超硬合金、サーメット、セラミックス、高速度鋼などの切削工具の硬質基材の表面には、硬質被覆層として、PVD法(物理的気相蒸着法)やCVD法(化学的気相蒸着法)によりチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物またはアルミニウムの酸化物を単層または複層形成することがよく知られている。
【0014】
しかし、上記の切削工具においても、(1)加工能率を一層向上させるために切削速度がより高速になりつつあること、(2)切削油剤削減のためのドライ加工化が進みつつあることから、工具刃先温度はますます高温になる傾向がある。そのため、工具材料に要求される特性は一層厳しくなっている。
【0015】
そこで、たとえば特公平5−67705号公報に開示されているように、組成が(TiAl1−x)(N1−y)(ただし、0.56≦x≦0.75、0.6≦y≦1)で表わされるTiAl系の被膜が提案されている。通常のTiN膜では酸化開始温度が600℃程度であるが、このTiAl系被膜を用いると、酸化開始温度が850℃まで向上する。これにより、高温での酸化を抑制できることになる。
【0016】
しかしながら、この技術では、被膜の表面粗さや基材と被膜との密着性に関しては何ら改善されていない。被膜の表面粗さが大きく、被膜の表面に突起が多く存在すれば、被膜の表面粗さが大きくなり滑り性や焼付き性が悪化する。また、被膜の表面に硬度が高い突起が存在すれば、加工後の被削材の表面仕上げ状態も損なわれる。
【0017】
また、被膜と基材との密着性が悪ければ、たとえば耐酸化性に優れる被膜であったとしても切削工具寿命が短くなるという問題がある。
【0018】
金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用などの金型技術も年々急速に進歩している。その発展は金型製作技術によるところが大きく、今後も金型の高精度、高強度、高寿命および低価格化の傾向が一段と増していくものと考えられる。そこで、適切な金型基材の選定や金型表面被覆処理技術などは上記要求を満たす上で非常に重要となってきている。
【0019】
従来、金型の寿命を向上させるためには、耐摩耗性や耐焼付き性などに優れる拡散浸透法やCVD法(化学的気相蒸着法)が広く用いられてきた。しかし、これらの処理方法では非常に高温で処理するため、寸法精度や歪みなどに問題があり、近年、高精度の金型を製造する場合には、これらの方法は必ずしも好ましいものではなかった。
【0020】
しかし、温度200℃以下の比較的低温で処理することが可能なPVD法(物理的気相蒸着法)の技術が急速に発展した。その中でも、特にTiN被膜は切削工具関連の技術から発展してきた。この被膜は密着性が高いため、金型用途への応用が極めて活発になってきている。このPVD法を金型の製作に用いると有利な点は、基材の変態による体積変化が起こらず、高精度の金型が得られることおよび各種焼戻し温度の鋼基材やアルミニウム基材などにコーティングすることが可能である点である。
【0021】
しかし、最近切削工具関連の技術において指摘されているように、TiN膜は酸化開始温度が600℃と低く、過酷な使用条件下では耐熱性に問題があった。
【0022】
そこで、上記公報に記載されたTiAl系被膜を金型に用いることにより酸化開始温度を850℃まで向上させることができる。
【0023】
しかしながら、このような被膜でも、被膜表面の表面粗さや基材との密着性は向上していない。被膜の表面に突起が多く存在する場合には表面粗さが大きくなって滑り性や焼付き性が低下するとともに突起および突起が脱落して凹部となった部分が腐食の起点となるため耐食性も損なわれる。また、被膜の密着性が低ければ金型寿命も短くなる。
【0024】
そこで、この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、この発明の1つの局面に従った目的は、寿命が長い被覆工具を提供することである。
【0025】
また、この発明の別の局面に従った目的は、切削油剤を削減しても寿命が長く、加工孔の品質が低下せず、折損を防ぐことができるドリルを提供することである。
【0026】
また、この発明のさらに別の局面に従った目的は、耐摩耗性、滑り性、焼付き性、被削材の加工精度(表面仕上げ状態)などが高いエンドミル、フライス加工用および旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具を提供することである。
【0027】
この発明のさらに別の局面に従った目的は、耐摩耗性、耐食性、滑り性、焼付き性などが高い金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用などの金型を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のドリル、エンドミル、チップなどの切削工具、金属プレス用、金属鍛造用の金型などにおいて、種々の問題を解決するためにさまざまな研究を行なった。その結果、低温でも被覆可能なPVD法によって、耐酸化性を持たせながら耐摩耗性被膜を非常に平滑な状態で密着性よく基材表面に被覆することが必要であるとの知見を得た。
【0029】
また、ドリルの刃先、エンドミル、フライス加工用および旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具の刃先の摩耗や金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用などの金型表面の摩耗を防止するためには、特に硬い材料からなる膜を形成する必要がある。さらに、これらの表面での潤滑性を発揮させるためには、この被膜と被削材との間に何らかの潤滑剤を介在させる必要がある。
【0030】
また、ドリルにおいては、切屑を効率よく排出させるためには、ドリルの溝に切削油剤が存在しなくても、切屑が溝の表面に引っ掛からない程度の高い平坦性が溝の表面に要求される。
【0031】
上述の知見に基づいてなされた、この発明に従った被覆工具は、基材と、その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備える。耐摩耗性被膜の表面において横寸法が24μmで縦寸法が18μmの矩形の表面領域を任意に3ヶ所選び、その3ヶ所で高さ0.5μm以上の突起の個数の合計値が15以下である。高さ0.5μm以上の突起は耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものである。
【0032】
このような被覆工具においては、耐摩耗性被膜は(Ti、Al)Nを含む。この(Ti、Al)Nは極めて硬いため、被覆工具の耐摩耗性が向上する。そのため、たとえばドリルやフライスなどの切削工具では、逃げ面も摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、金型では、被削材と接触する面の摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、(Ti、Al)Nの表面は切削加工中または金型加工中に酸化されて、この表面にアルミナ(Al)が生成する。このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させる。
【0033】
これにより、たとえば被覆工具をドリルとして用いた場合には、加工孔の表面での表面硬化が起こることが少ない。そのため、加工孔の品質が向上する。また、被覆工具を切削工具として用いた場合には、このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が良くなる。さらに、被覆工具を金型として用いた場合には、アルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が向上する。
【0034】
また、この発明の別の局面に従った被覆工具は、基材と、その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備える。耐摩耗性被膜の表面において横寸法が60μmで縦寸法が45μmの矩形の表面領域で高さ0.5μm以上の突起の個数値が28以下である。高さ0.5μm以上の突起は耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものである。
【0035】
このような被覆工具においては、耐摩耗性被膜は(Ti、Al)Nを含む。この(Ti、Al)Nは極めて硬いため、被覆工具の耐摩耗性が向上する。そのため、たとえばドリルやフライスなどの切削工具では、逃げ面も摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、金型では、被削材と接触する面の摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、(Ti、Al)Nの表面は切削加工中または金型加工中に酸化されて、この表面にアルミナ(Al)が生成する。このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させる。
【0036】
これにより、たとえば被覆工具をドリルとして用いた場合には、加工孔の表面での表面硬化が起こることが少ない。そのため、加工孔の品質が向上する。また、被覆工具を切削工具として用いた場合には、このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が良くなる。さらに、被覆工具を金型として用いた場合には、アルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が向上する。
【0037】
この発明のさらに別の局面に従った被覆工具は、基材と、その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備える。耐摩耗性被膜の表面において横寸法が60μmで縦寸法が45μmの矩形の表面領域で高さ1.0μm以上の突起の個数が7以下である。高さ1.0μm以上の突起は耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものである。
【0038】
このような被覆工具においては、耐摩耗性被膜は(Ti、Al)Nを含む。この(Ti、Al)Nは極めて硬いため、被覆工具の耐摩耗性が向上する。そのため、たとえばドリルやフライスなどの切削工具では、逃げ面も摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、金型では、被削材と接触する面の摩耗を防ぎ、工具寿命を長くすることができる。また、(Ti、Al)Nの表面は切削加工中または金型加工中に酸化されて、この表面にアルミナ(Al)が生成する。このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させる。
【0039】
これにより、たとえば被覆工具をドリルとして用いた場合には、加工孔の表面での表面硬化が起こることが少ない。そのため、加工孔の品質が向上する。また、被覆工具を切削工具として用いた場合には、このアルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が良くなる。さらに、被覆工具を金型として用いた場合には、アルミナが被加工材と耐摩耗性被膜との間の潤滑性を向上させるため、滑り性が向上する。
【0040】
また、耐摩耗性被膜は、複数層形成されていることが好ましい。
さらに、耐摩耗性被膜の厚みは0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0041】
また、被覆工具は、基材と耐摩耗性被膜との間に形成された、チタンナイトライドを含む中間層をさらに備えることが好ましい。
【0042】
この場合、チタンナイトライドは、基材表面と耐摩耗性被膜との両方に密着性が良いので、基材と耐摩耗性被膜の密着性を一層向上させることができる。そのため、耐摩耗性被膜が基材から剥がれることなく工具の寿命をさらに向上させることができる。
【0043】
さらに、中間層の厚みは0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0044】
また、突起の高さは走査型電子顕微鏡を用いて得られた3次元的データをもとに算出されることが好ましい。
【0045】
さらに、基材は、WC基超硬合金、サーメット、立方晶窒化ホウ素含有焼結体、セラミックス、アルミニウム系合金および鉄系合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。ここで、セラミックスの例として、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ホウ素およびダイヤモンドを挙げることができる。さらに、鉄系合金として、高速度鋼、ダイス鋼、ステンレス鋼を挙げることができる。
【0046】
また、当該被覆工具は切削工具であり、耐摩耗性被膜は、陰極付近にガスを導入するガス導入口からガスを供給して成膜されることが好ましい。
さらに、切削工具は、切屑を排出するための溝がその表面に形成されたドリルであり、その溝に耐摩耗性被膜が形成されていることが好ましい。この場合、溝の表面において、高さが0.5μm以上の突起または高さが1.0μm以上の突起の個数が従来のドリルに比べて少ないため、溝の表面は平滑である。そのため、耐摩耗性被膜の表面の摩擦抵抗が低減されるため、この溝を通じて切屑がスムーズに排出されるので、ドリルの折損を防止することができる。
【0047】
また、ドリルは、切削油が存在しない乾式条件下で使用されることが好ましい。
【0048】
さらに、ドリルは、切削油を霧状に吹きつけるミスト潤滑条件下で使用されることが好ましい。
【0049】
また、ドリルは、植物油を切削油として使用したセミドライ条件下で使用されることが好ましい。
【0050】
また、ドリルにおいて、被削材に近い先端部分の溝の幅は、被削材から遠い根元部分の溝の幅よりも小さいことが好ましい。
【0051】
この場合、ドリルの先端部での溝の幅を狭めることによって、小さくカールした切屑が次々と生成され、この小さな切屑が根元部の広い溝を通ってスムーズに排出される。そのため、ドリルの折損をさらに防止することができる。
【0052】
また、ドリルにおいて、被削材に近い先端部分の溝の幅と、被削材から遠い根元部分の溝の幅とが等しいことが好ましい。この場合、溝の幅が一定であるため、ドリルを製造しやすくなり、低コストでドリルを提供することができる。
【0053】
また、切削工具は、エンドミル、フライス加工用または旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、タップおよびリーマから群より選ばれた1種であることが好ましい。この場合、被覆工具の表面において、耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生した高さ0.5μm以上の突起または高さ1.0μm以上の突起の個数が従来の切削工具に比べて少ないため、切削工具の表面は平滑である。そのため、耐摩耗性被膜の表面の摩擦抵抗が低減し、被加工材の焼付きを防止することができる。さらに、従来、突起部が原因で損なわれていた被削材の表面粗さを小さくすることができる。
【0054】
また、当該被覆工具は金型であることが好ましい。
さらに、金型は金属プレス加工用金型、金属鍛造用金型、金属ダイカスト用金型およびプラスチック成形用金型からなる群より選ばれた1種であることが好ましい。この場合、金型表面において、耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生した、高さが0.5μm以上の突起または高さが1.0μm以上の突起の個数が従来の金型に比べて少ないため、金型の表面が平滑である。そのため、耐摩耗性被膜の表面の摩擦抵抗が低減し、被加工材の焼付きを防止することができる。さらに、従来、突起部および突起が脱落した凹部が腐食の進行起点となっていたが、突起が少なくなることで耐食性も向上する。
【0056】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。
【0057】
実施例1:切削工具(ドリル)
(1) サンプルの作製
(i) 本発明品の作製
図1は、この発明の実施例で用いたドリルの基材を示す図である。図1を参照して、ドリルの基材1は超硬合金からなる。基材1の表面には2条のねじれ溝2が設けられている。
【0058】
図2は図1中のX−X線に沿って見た断面を示す図であり、図3は、図1中のY−Y線に沿って見た断面を示す図である。図2を参照して、ドリルの先端部1aでは、ねじれ溝2の角度Y とねじれ溝2のない部分の角度X との比Y :X は0.6:1となっており、ねじれ溝2が狭くなっている。図3で示すドリルの根元部分1bにおいては、ねじれ溝2の角度Y とねじれ溝2が存在しない部分の角度X との比Y :X は1:1であり、ねじれ溝2が存在する部分と存在しない部分との角度が等しくなっている。つまり、ドリル1の基材においては、ねじれ溝2は、先端部分1aで狭く、根元部分1bで広いといえる。また、図1中の、点Aから先端部分1aまででは、図2で示すような断面形状であり、点Bから根元部分1bまでは図3で示すような断面形状であり、点Aと点Bの間では、溝の幅が徐々にあるいは段階的に変化している。
【0059】
図4は、この発明で用いた成膜装置の模式図である。本装置は特開平10−68071号公報に記載された装置であり、平滑な表面状態の(Ti、Al)Nを得るためのものである。図4を参照して、成膜装置10は、チャンバ12と、主テーブル11と、支持棒13と、アーク式蒸発源14aおよび14bと、陰極16aおよび16bと、可変電源としての直流電源20a、20bおよび22と、陰極16aおよび16b付近にガスを供給するためのガス導入口24aおよび24bとを備える。
【0060】
チャンバ12は真空ポンプと連結されており、チャンバ12内の圧力を変化させることが可能である。チャンバ12内に主テーブル11と支持棒13とガス導入口24aおよび24bと陰極16aおよび16bが設けられている。
【0061】
チャンバ12内に設けられた支持棒13は主テーブル11を支持する。支持棒13内には回転軸が設けられており、この回転軸が主テーブル11を回転させる。主テーブル11上にドリルの基材1を保持するための治具100が設けられている。支持棒13、主テーブル11および治具100は直流電源22の負極と電気的に接続されている。直流電源22の正極はアースされている。
【0062】
チャンバ12の側壁には、アーク式蒸発源14aと、そのアーク式蒸発源14aに接続された陰極16aが取付けられている。アーク式蒸発源14aおよび陰極16aと向かい合うように、チャンバ12の側壁にアーク式蒸発源14bと陰極16bが取付けられている。
【0063】
アーク式蒸発源14aおよび陰極16aは、直流電源20aの負極と電気的に接続されている。直流電源20aの正極はアースされ、かつチャンバ12と電気的に接続されている。アーク式蒸発源14bおよび陰極16bは直流電源20bの負極と電気的に接続されている。直流電源20bの正極はアースされ、かつチャンバ12に電気的に接続されている。
【0064】
アーク式蒸発源14aおよび14bは陰極16aおよび16bとチャンバ12との間のアーク放電によって陰極16aおよび16bを部分的に溶解させて陰極物質を矢印18aおよび18bに示す方向に蒸発させるものである。陰極16aおよび16bとチャンバ12との間には数十Vから数百V程度の電圧が印加される。陰極16aは、(Ti0.5 、Al0.5 )により構成される。陰極16bはTiにより構成される。なお、(Ti0.5 、Al0.5 )とは、TiとAlの原子数比が0.5:0.5の化合物をいう。
【0065】
陰極16aおよび16b付近にガスを供給するガス導入口24aおよび24bには、矢印26aおよび26bで示す方向からさまざまなガスが導入される。このガスの例として、アルゴン、窒素ガスまたは、たとえばメタン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素系ガスなどがある。
【0066】
図5は、図4中の治具100を詳細に示す図である。図6は、治具100の上面図である。図5および図6を参照して、治具100は、主テーブル110と、副テーブル121〜126、131、134、141および144と、回転軸151および152とを備える。
【0067】
主テーブル110は、主テーブル11と接続されており矢印110aで示す方向に回転する。主テーブル110上には垂直方向に延びる回転軸151および152が設けられている。また、図5および図6では示さないが、主テーブル110上には他の4本の回転軸も設けられている。
【0068】
回転軸151には副テーブル121〜123が固定されている。それぞれの副テーブル121〜123には、図1〜3で示すドリルの基材1が取付けられている。同様に、副テーブル124〜126も回転軸152に固定されており、それぞれの副テーブル124〜126上には基材1が取付けられている。また、副テーブル131、134、141および144上にもドリルの基材1が取付けられている。
【0069】
すべての副テーブルは回転軸と固定されており、回転軸151および152は支持棒13中の回転軸とギアで接続されているため、矢印120aで示す方向に回転する。そのため、副テーブル121〜126、131、134、141および144も矢印120aで示す方向に回転する。
【0070】
これらの副テーブル121〜126、131、134、141および144上の基材1は、矢印110aで示す方向に大きく公転すると同時に、矢印120aで示す方向に小さく公転(自転)する。また、副テーブル121〜126、131、134、141および144の回転数は、主テーブル110の回転数よりも多いことが好ましい。さらに、基材1を個々に回転させる機構を付与してもよい。
【0071】
まず、図4〜図6で示すような装置を用いて、主テーブル110を矢印110aで示す方向に回転させ、副テーブル121〜126、131、134、141、および146を矢印120aで示す方向に回転させながら、真空ポンプによりチャンバ1内の圧力を1.3×10−3Paとした。次に、ガス導入口24からアルゴンガスを導入してチャンバ12内の圧力を2.7Paに保持し、ヒータ(図示せず)により基材1を温度200℃に加熱した後、直流電源22の電圧を−1000Vとし、基材1の表面のクリーニングを行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
【0072】
次に、直流電源22の電圧を−1000Vに維持したままチャンバ12内の圧力が6.6×10−1Paとなるようにアルゴンガスの流量を調整した。直流電源20bから100Aのアーク電流を供給し、陰極16bからチタンイオンを発生させた。これにより、チタンイオンが基材1の表面をスパッタクリーニングし、基材2の表面の強固な汚れや酸化膜が除去された。
【0073】
その後、チャンバ12内の圧力が4Paとなるようにガス導入口24aおよび24bから窒素ガスを導入し、直流電源22の電圧を−200Vとした。すると、基材1の表面においてTiN膜の形成が始まった。TiN膜が所定の厚み(0.3μm)に達するまでこの状態を維持した。これにより、中間層としてのTiN膜を形成した。中間層の厚みとしては0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0074】
TiN膜の形成が終了すると、この状態のままアーク式蒸発源14aに100Aのアーク電流を供給した。これにより、陰極16aを構成する(Ti0.5 、Al0.5 )が矢印18aに示す方向に蒸発し、基材1の表面に厚さが約6μmの耐摩耗性被膜としての(Ti、Al)N膜を形成して本発明に従ったドリル(本発明品)を作製した。なお、耐摩耗性被膜としての(Ti、Al)N膜の厚みとしては、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。耐摩耗性被膜の厚さが0.5μm未満であれば被膜自体の強度が低下し、被膜の耐摩耗性が低下する。また、被膜の厚さが15μmを超えると膜の剥離や欠けが発生しやすくなる。また、(Ti、Al)N膜の組成式を(Ti、Al1−X )Nとした場合、0.3≦X≦0.8であることが好ましい。そのため、上述の陰極16aの組成式を(Ti、Al1−X )とすると、0.3≦X≦0.8であることが好ましい。
【0075】
(ii) 従来品1の作製
従来品1の作製に当たっては、まず、図1〜3で示すような基材1を準備した。この基材1を図4で示す治具100にセットした。また、装置10においてガス導入口24aおよび24bをチャンバ12の上部12aに一つにまとめて配置した。陰極16aをチタンとアルミニウムの化合物(Ti0.5 、Al0.5 )で構成した。その他の成膜装置10の構成については、本発明品の製造と同様にした。
【0076】
このような装置10を用いて、まず、主テーブル110を矢印110aで示す方向に回転させ、かつ、副テーブル121〜126、131、134、141および146をそれぞれ、矢印120aで示す方向に回転させた。次に、基材1の表面を本発明品を製造したのと同様の手法でアルゴンでスパッタクリーニングし、その後、チタンでスパッタクリーニングした。さらに、本発明品を製造した工程と同様に基材1の表面に厚さが0.3μmのTiN膜を形成した。
【0077】
TiN膜の形成が終了すると、直流電源20aから陰極16aへ−200V、100Aの電力を供給して、陰極16aを構成する(Ti0.5 、Al0.5 )を蒸発させた。また、チャンバ12の上部12aに設けられたガス導入口から窒素ガスを導入した。これらが基材1の表面で反応して基材1上のTiN膜上に膜厚が6μmの(Ti0.5 、Al0.5 )N膜が得られた。これにより、本発明品とほぼ同一の組成で窒素ガスの導入方法が異なる耐摩耗性被膜を有する従来品1を得た。
【0078】
(iii) 従来品2の作製
従来品2の作製に当たっては、陰極16aおよび陰極16bをチタンで構成した。その他の成膜装置10の構成については従来品1の場合と同様とした。このような成膜装置10において、まず、治具100に基材1を取付け、本発明品を製造したのと同様にこれらを回転させた。次に、本発明品を製造したのと同様の工程で基材1の表面をアルゴンでスパッタクリーニングし、その後、チタンでスパッタクリーニングし、さらに、厚さが0.3μmのTiN膜を形成した。
【0079】
次に、TiN膜の形成が終了すると、直流電源20aから陰極16aへ−200V、100Aの電力を供給して、陰極16aからチタンイオンを発生させた。また、ガス導入口からメタンガス(CH )と窒素ガスとを導入した。これらが反応して、基材1の表面のTiN膜上に膜厚が6μmのTi(C0.5 、N0.5 )膜を形成した。Ti(C0.5 、N0.5 )とは、TiとCとNの原子数比が1:0.5:0.5の化合物をいう。
【0080】
これにより、陰極として(Ti0.5 、Al0.5 )を用いた製造した(Ti0.5 、Al0.5 )N膜を有する本発明品、陰極として(Ti0.5 、Al0.5 )を用いて製造された(Ti0.5 、Al0.5 )N膜を有する従来品1および陰極としてTiを用いて製造されたTi(C0.5 、N0.5 )膜を有する従来品2を得た。
【0081】
(2) サンプルの表面粗さの評価
図7は、サンプルの表面粗さを評価するのに用いた3D−SEM(three dimension scanning electron microscope)の模式図である。図7を参照して、SEM200(エリオニクス社製ERA−800)は、電子銃210と、電子レンズ221〜224と、検出器231〜234とを有する。
【0082】
電子銃210は、電子線211を発射する。電子銃210から発射された電子線211は電子レンズ221〜224によりさまざまにその進路を変えられて支持台250上に置かれた試料260に照射される。試料260に照射された電子線は、試料260から2次電子を発生させる。この2次電子を検出器231〜234が検出することにより、試料260の表面状態を観察することができる。
【0083】
図8は、図7で示す装置において、試料の表面形状を測定する原理を示す模式図である。図8を参照して、試料260の表面261aのうち、角度θ を有する点261bおよび角度θを有する点261dに電子線211が照射されると、この点261bおよび261dから2次電子が発生する。
【0084】
発生した2次電子のうち、検出器232に検出される2次電子の出力信号をAとし、検出器233に検出される2次電子の出力信号をBとする。すなわち、検出器232に面した点261bでの信号強度は、検出器232で大きく、その値に比べて検出器233で小さくなる。一方、検出器233に面した点261dでの信号強度は検出器233で大きく、頂点261eの影響を受ける検出器232で極端に小さくなる。
【0085】
点261bから発生する2次電子の信号強度のうち、検出器232で検出される信号の強度を矢印212の長さで示し、検出器233で検出される信号の強度を矢印213の長さで示す。また、点261dで発生する2次電子の信号強度のうち、検出器232で検出される信号の強度を矢印241の長さで示し、検出器233で検出される信号の強度を矢印215の長さで示すと、矢印215の長さが最も長く、次いで、矢印212が長く、その次に、矢印213が長く、矢印214は一番短い。
【0086】
また、初期条件設定走査によりなるべく平面(水平面)に等しい部分から発生して検出器232に検出される2次電子の出力信号211aをAnとし、検出器233に検出される2次電子の出力信号211bをBnとする。そして、図8中の左から右へ向かう方向をXとして、上述のA、B、An、Bnを求めれば、以下の式に従い、X−Y平面内における角度θを求めることができる。
【0087】
【数1】
Figure 0003633837
【0088】
また、このようにして求めた試料の傾斜を積分していくことにより、X軸方向の表面形状を測定することができる。
【0089】
このようなSEM200を用いて各サンプルのねじれ溝2の表面に形成された耐摩耗性被膜の評価を行なった。具体的には、本発明品、従来品1および従来品2のねじれ溝2の表面から横寸法が80μmで縦寸法が50μmの試料260を取出した。
【0090】
本発明品、従来品1および2について、これらの試料260を支持台250上に置き、SEM200でその測定倍率を2000倍として試料260上の横寸法が60μmで縦寸法が45μmの矩形の領域での表面形状を観察した。なお、このとき、電子線の走査は基材2の研磨キズの影響を避けるため、研磨キズに平行に行なった。
【0091】
次に、得られた表面形状についてのデータをもとに、このデータを180個のデータに分割した。すなわち、図9で示すように、SEMで観察した横寸法が60μmで縦寸法45μmの領域上にライン1からライン180で示す180本の線分を設定し、それぞれのライン1〜ライン180においてのX軸方向での表面の高さを求めた。
【0092】
図10は、ライン1におけるサンプルの表面高さのプロファイル曲線300を示している。このプロファイル曲線300では、極大点301〜308と、極小点311〜317が存在する。極大点301〜308のうち、このプロファイル曲線300上をX軸方向に沿って進んだ場合に極小点からスレッシュホールド高さ(しきい値高さ)を通過して極大点に達し、さらにスレッシュホールド高さを通過して極小点に達した場合には、その極大点をピークとした。
【0093】
具体的には、極小点317から極小点316に達する場合には、プロファイル曲線300はスレッシュホールド高さTH およびTH を通過して極大点307に達し、さらに、スレッシュホールド高さTH およびTH を通過して極小点316に達するので、極大点307はピークとして数えた。
【0094】
一方、極小点314から極小点313へ至る場合には、極小点314から極大点307へ至る途中ではプロファイル曲線300はスレッシュホールド高さTH 〜TH を通過するが、極大点304から極小点313へ至るまではプロファイル曲線300はスレッシュホールド高さを通過しないので極大点304はピークとしては数えなかった。
【0095】
このようにして、ライン1〜180について所定のスレッシュホールド高さのピークがいくつあるかを算出した。
【0096】
図11は、図10で示すプロファイル曲線300において所定のスレッシュホールド高さのピークがいくつあるかを示すグラフである。図11を参照して、図10で示すプロファイル曲線300では、スレッシュホールド高さがTH のピークが3個、スレッシュホールド高さTH 〜TH のピークがそれぞれ1個ずつあったことを示す。
【0097】
これらの手法により、本発明品、従来品1および従来品2について、横寸法が60μmで縦寸法が45μmの領域でのピーク高さ(スレッシュホールド高さ)の個数を調べた。
【0098】
なお、このとき、高さが0の基準点としては、各ラインの測定で得られたプロファイル曲線(ライン1についてのプロファイル曲線)において、測定曲線の中心線を基準高さ(高さ0μm)とし、その部分からのスレッシュホールド高さを求めた。それらの結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
Figure 0003633837
【0100】
表1より、本発明品では、低いスレッシュホールド高さ(0.1755μm)の個数が多くなっていることがわかる。一方、従来品1および2では、比較的高いスレッシュホールド高さ(0.5264μm)の個数が比較的多くなっていることがわかる。また、本発明品では、高さが1μm以上の突起の個数が7個であったのに対し、従来品1では18個、従来品2では17個存在した。
【0101】
これにより、本発明品のねじれ溝2の表面は従来品1および従来品2のねじれ溝の表面より平滑であることがわかる。
【0102】
また、本発明品、従来品1および2について、SEMの観察の倍率を5000倍とし、横寸法が24μmで縦寸法が18μmの矩形の表面領域を任意に3ヶ所(視野1〜視野3)選び、それぞれの視野において図8で示す原理に従って表面の高さについてのデータを得た。
【0103】
その後、図12で示すように、それぞれの視野を横方向に180分割し、それぞれのライン1〜ライン180について図10で示すようなプロファイル曲線を求め、この曲線からスレッシュホールド高さの個数を求めた。それらの結果を表2〜表4に示す。
【0104】
【表2】
Figure 0003633837
【0105】
【表3】
Figure 0003633837
【0106】
【表4】
Figure 0003633837
【0107】
表2〜表4より、本発明品では、高さの高い(1μm)のピークが合計で3個しか存在しないのに対し、従来品1および従来品2では、高さが高い(1μm)のピークが多く存在することがわかる。これより、本発明品のねじれ溝2の表面は従来品1および2のねじれ溝2の表面より平滑であることがわかる。
【0108】
(3) サンプルの切削試験評価
▲1▼ 乾式切削における切削動力の変化
上述の工程で製造したサンプルである本発明品、従来品1および従来品2について、以下の条件で切削試験を行ない、穴開け回数と、切削動力の関係について調べた。
【0109】
被削材:SCM(JIS呼称)440
切削速度:V=70m/min
送り:f=0.7mm/回転
穴の深さ:d=32mm(止まり穴)
切削油剤:なし(完全乾式)
ドリル:φ8mm超硬
この試験の結果を図13に示す。
【0110】
図13より、本発明品では、穴開けを600回行なっても縦軸で示す切削動力はほぼ変化せず、一定の切削動力で試験を続けることができた。また、本発明品では、目標切削長である20mをクリアし、優れた特性が得られた。
【0111】
一方、従来品1および従来品2では、いずれも2穴目で切削動力が急上昇したため、これ以上試験を続けることができなくなった。
【0112】
このデータから明らかなように、本発明品では、切削油剤が存在しない完全乾式状態でも安定に切削を続けることができるということがわかる。
【0113】
▲2▼ 乾式深穴加工における被削材の加工硬化について
乾式加工で懸念される加工穴の加工硬化についても評価を行なった。試験の対象は、本発明品を乾式で使用したもの、本発明品を湿式(切削油剤あり)で使用したものおよび比較品とした。なお、比較品として、本発明品と同様の基材に本発明と同様のTiNの中間層を形成し、さらに、その上に、本発明品と同様の厚さでVNからなる耐摩耗性被膜を形成したものを用いた。なお、比較品は、特開平10−237628号公報に記載された耐摩耗性被膜を有するドリルである。
【0114】
試験の条件は以下のとおりとした。
被削材:SCM(JIS呼称)440
切削速度:V=70m/min
送り:f=0.3mm/回転
深さ:d=40mm(止まり穴)
ドリル:φ8mm超硬
この条件で穴を600個製造し、600穴目についての穴表面からの距離と被削材の硬度との関係を調べた。その結果を図14に示す。
【0115】
図14より、本発明品を乾式で使用した場合、本発明品を湿式で使用した場合とも穴表面に近い部分で硬度は大幅に上昇していないことがわかる。一方、比較品を乾式で使用した場合に穴表面からの距離が近い部分ではその硬度が400Hvを超えており加工硬化が生じていることがわかる。また、本発明品では、乾式で使用した場合と湿式で使用した場合は、ほぼ同様の硬度分布曲線が得られることがわかる。
【0116】
これにより、本発明品は、比較品に比べて被削材が加工硬化を起こしにくい優れたものであることがわかる。
【0117】
また、上述の条件で試験を行ない、1つ目の穴と600個目の穴について、被削材の穴表面からの距離と硬度との関係を調べた。その結果を図15に示す。
【0118】
図15より、本発明品を用いれば、1穴目と600穴目についてほとんど硬度分布が変化していないことがわかる。
【0119】
なお、加工穴の内面が加工硬化を生じる原因としては、工具の切れ味が低下することによって発熱したり被削材が強い応力を受けることがあると考えられる。比較品の場合に加工硬化層の発生が顕著であった原因として、比較品に形成されたVN膜の耐摩耗性が本発明品に比べてやや劣るため、切れ刃の摩耗が進行し、被削材に強い応力が加わったためであると思われる。
【0120】
これに対して、本発明品の場合は、600回の穴開けの加工テスト中にほとんど工具表面が摩耗しなかったため、最後まで切れ味が落ちることなく結果的に加工硬化層の発生が1穴目と600穴目で変化しなかったものと思われる。
【0121】
▲3▼ 再研磨・再コーティング時の切削性能について
超硬合金製ドリルにおいては、使い捨てにされるケースはほとんどなく、摩耗したドリル先端を再研磨して切れ刃を再生し、さらにコーティングを再度施した上で再使用されるケースが多い。本発明品においても、一度切削試験に供した後にドリル先端部を再研磨・再コーティングしたものを切削長20mまで再度切削試験を行なった。その結果、新品時と同様に切削長20mまで耐摩耗性に問題はなく、新品同様に使用できることが確認された。
【0122】
▲4▼ ミスト潤滑セミドライ潤滑での評価
潤滑油が全く存在しない乾式状態だけではなく、潤滑油剤を霧状に吹き付けるミスト潤滑状態や植物油を潤滑油剤として使用したセミドライ条件での切削試験を行なった。その場合でも、乾式条件と同様の結果が得られることがわかった。
【0123】
実施例2:切削工具(チップ)
(1) サンプルの作製
(i) 本発明品の作製
基材として、グレードがJIS呼称P30の超硬合金からなるチップであり、形状がJIS規格のSDKN42のものを用意した。
【0124】
この基材を図4で示す装置内に入れて所定の治具により保持した。次に、図4〜6で示す装置において、主テーブル110を矢印110aで示す方向に回転させ、副テーブル121〜126、131、134、141および146を矢印120aで示す方向に回転させながら、真空ポンプによりチャンバ12内を減圧させた。ヒータ(図示せず)により基材1を温度500℃に加熱し、チャンバ12内の圧力が1.3×10−3Paとなるまで真空引きを行なった。次に、ガス導入口24aおよび24bからアルゴンガスを導入してチャンバ12内の圧力を2.7Paに保持し、直流電源22の電圧を徐々に上げながら−1000V(支持棒13の電位が−1000V)とし、基材1の表面のクリーニングを10分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
【0125】
次に、直流電源22の電圧を−1000Vに維持したまま、チャンバ12内にガス導入口24aおよび24bを通して流量が100sccm(cm/分)の窒素ガスを導入した。直流電源20bから80Aのアーク電流を供給し、陰極16bからチタンイオンを発生させた。これにより、チタンイオンが基材1の表面をスパッタクリーニングし、基材1の表面の強固な汚れや酸化膜が除去された。
【0126】
その後、チャンバ12内の圧力が4Paとなるようにガス導入口24aおよび24bから窒素ガスを導入し、直流電源22の電圧を−200V(支持棒13の電位が−200V)とした。すると、基材1の表面においてTiN膜の形成が始まった。TiN膜の厚みが所定の厚み(0.3μm)に達するまでこの状態を維持した。これにより、中間層としてのTiN膜を形成した。なお、この中間層の厚みとしては、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0127】
TiN膜の形成が終了すると、この状態のまま、アーク式蒸発源14aに95Aの電流を供給した。これにより、陰極16aを構成する(Ti0.5、Al0.5)が矢印18aで示す方向に蒸発し、基材1の表面に厚さが約6μmの耐摩耗性被膜としての(Ti、Al)N膜を形成して本発明に従った切削工具(チップ)(本発明品)を作製した。なお、耐摩耗性被膜としての(Ti、Al)N膜の厚みは0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。耐摩耗性被膜の厚さが0.5μm未満であれば、耐摩耗性被膜の強度が低下し、被膜の耐摩耗性が低下する。また、耐摩耗性被膜の厚さが15μmを超えると残留内部応力が増大し、被膜が剥離する。
【0128】
さらに、(Ti、Al)Nの組成式を(Ti、Al1−x)Nとした場合、xは、0.3≦x≦0.8で示す関係を満たすことが好ましい。そのため、陰極16aの組成式を(Ti、Al1−x)とすると、xは0.3≦x≦0.8で示す関係を満たすことが好ましい。
【0129】
(ii) 従来品1の作製
従来品1の作製にあたっては、まず、本発明品と同じ基材を準備した。この基材を図4で示す治具100にセットした。また、装置10において、ガス導入口24aおよび24bをチャンバ12の上部12aに一つにまとめて配置した。陰極16aにチタンとアルミニウムの化合物(Ti0.5、Al0.5)で構成した。
【0130】
このような装置10を用いて、まず、主テーブル110を矢印110aで示す方向に回転させ、かつ副テーブル121〜126、134、141および146をそれぞれ矢印120aで示す方向に回転させた。次に、基材1の表面を、本発明品を製造したのと同様の手法でアルゴンガスでスパッタクリーニングし、その後、チタンでスパッタクリーニングした。さらに、本発明品を製造した工程と同様に基材1の表面に厚さが0.3μmのTiN膜を形成した。
【0131】
TiN膜の形成が終了すると、直流電源20aから陰極16aへ−200V、95Aの電力を供給して陰極16aを構成する(Ti0.5 、Al0.5 )を蒸発させた。また、チャンバ12の上部12aに設けられたガス導入口から窒素ガスを導入した。これらが基材1の表面で反応して基材1の上のTiN膜上に厚さが6μmの(Ti0.5、Al0.5)N膜が得られた。これにより、本発明品とほぼ同一の組成で窒素ガスの導入方法が異なる耐摩耗性被膜を有する従来品1を得た。
【0132】
(iii) 従来品2の作製
従来品2の作製にあたっては、陰極16aおよび16bをチタンで構成した。その他の装置10の構成については、従来品1の製造と同様とした。このような装置10において、まず、治具100に基材1を取付け、本発明品を製造したのと同様にこれらを回転させた。次に、本発明品を製造したのと同様の工程で基材1の表面をアルゴンでスパッタクリーニングし、その後チタンでスパッタクリーニングし、さらに厚さが0.3μmのTiN膜を形成した。
【0133】
TiN膜の形成が終了すると、直流電源20aから陰極16aへ−200V、95Aの電力を供給して陰極16aからチタンイオンを発生させた。また、チャンバ12の容器12aに設けられたガス導入口からメタンガス(CH)と窒素ガスを導入した。これらが反応して基材1の表面のTiN膜上に厚さが6μmのTi(C0.5、N0.5)膜を形成した。
【0134】
以上により、陰極として(Ti0.5、Al0.5)を用いて製造した(Ti0.5、Al0.5)N膜を有する本発明品、陰極として(Ti0.5、Al0.5)を用いて製造された(Ti0.5、Al0.5)N膜を有する従来品1および陰極としてTiを用いて製造されたTi(C0.5、N0.5)膜を有する従来品2を得た。
【0135】
(2) サンプル表面粗さの評価
実施例1の「(2)サンプルの表面粗さの評価」の欄で記載したのと同様の手法で、上述の工程で製造した本発明品、従来品1および従来品2の表面粗さを測定した。その結果、表1〜表4で示すデータと同様のデータが得られた。
【0136】
(3) 切削工具寿命評価
上述の工程で製造したサンプルである本発明品、従来品1および従来品2のそれぞれについて、実際に被削材を熱間ダイス鋼(JIS呼称SKD61)として、正面フライス加工を実施し、切削工具寿命評価を行なった。切削条件は、切削速度が50m/min、送りが0.3mm/刃、切込みが2mmでドライ条件とした。なお、寿命の判定は、切削長15mでの逃げ面摩耗幅により行なった。その寿命評価結果を表5に示す。
【0137】
【表5】
Figure 0003633837
【0138】
表5から明らかなように、本発明品では、切削工具寿命が大幅に向上したことが確認された。
【0139】
図16は、本発明品であるチップを有するフライスの平面図、図17は、図16で示すフライスで用いられるチップの平面図、図18は、図17中のA−A線に沿って見た断面を示す図である。
【0140】
図16を参照して、フライス401は、フライス本体402と、チップ403とを有する。フライス本体402の外周部に複数のチップ403が取付けられている。
【0141】
図17および図18を参照して、チップ403は、基材404と、耐摩耗性被膜405とを有する。耐摩耗性被膜405は、(Ti0.5、Al0.5)Nからなる。チップ403の基材404が耐摩耗性被膜405に覆われていた。
【0142】
実施例3:切削工具(リーマ)
実施例2と全く同じ方法により、リーマ(JIS呼称K10超硬合金)にそれぞれコーティングを行ない、本発明品、従来品1および従来品2を得た。なお、本発明品は、実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は、実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例2の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0143】
次に、これらのサンプルを用いて、実際に鋳鉄の穴あけ加工を行ない、その寿命評価を行なった。切削条件は、リーマ径が15mm、切削速度が10m/min、送りが0.4mm/刃、切込みが0.15mmとし、ウェット条件とした。なお、寿命の判定は、被加工材の寸法精度が規定の範囲を外れるまでの加工個数とした。その結果を表6に示す。
【0144】
【表6】
Figure 0003633837
【0145】
表6より、本発明のリーマの寿命が大きく向上していることが確認された。
図19は、この発明に従って得られたリーマの平面図であり、図20は、図19中のB−B線に沿って見た断面を示す図である。図19および図20を参照して、リーマ411は、基材412と、耐摩耗性被膜413とを有する。耐摩耗性被膜413の組成は(Ti0.5、Al0.5)Nである。基材412を覆うように耐摩耗性被膜413が形成されている。
【0146】
実施例4:切削工具(エンドミル)
実施例2と全く同じ方法により、エンドミルの基材(JIS呼称K10超硬合金)にコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は、実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例2の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0147】
次に、これらのサンプルを用いて実際に鋳鉄のエンドミル側面削り(切削幅15mm)加工を行ない、その寿命評価を行なった。切削条件は、切削速度が75m/min、送りが0.02mm/刃、切込みが2mmでウェット条件とした。なお、寿命の判定は、被加工材の寸法精度が規定の範囲を外れた時点とした。その評価結果を表7に示す。
【0148】
【表7】
Figure 0003633837
【0149】
表7より、本発明のエンドミルの寿命が大きく向上していることが確認された。
【0150】
図21は、上述の工程で得られた本発明品のエンドミルの平面図であり、図22は、図21中のC−C線に沿って見た断面を示す図である。
【0151】
図21および図22を参照して、エンドミル421は、基材422と、耐摩耗性被膜423により構成されている。耐摩耗性被膜423の組成は(Ti0.5、Al0.5)Nである。基材422を覆うように耐摩耗性被膜423が形成されている。
【0152】
実施例5:切削工具(旋削用刃先交換型チップ)
実施例2と全く同じ方法により、旋削用刃先交換型チップ(JIS呼称P10超硬合金、刃先形状は、すくい角8°、逃げ角6°)に耐摩耗性被膜のコーティングを行ない、本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例2で示す本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は、実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品3は実施例2の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0153】
次に、これらのサンプルを用いて、実際に鋼の中仕上げ旋削加工を行ない、その寿命評価を行なった。切削条件は、切削速度が180m/min、送りが0.8mm/刃とした。なお、寿命の判定は、被加工材の寸法精度が規定の範囲を外れた時点とした。その寿命評価結果を表8に示す。
【0154】
【表8】
Figure 0003633837
【0155】
表8より、本発明のチップの寿命が大きく向上していることが確認された。
図23は、上述の工程で得られた刃先交換型チップの斜視図、図24は、図23で示すチップの平面図、図25は、図24中のD−D線に沿って見た断面を示す図である。
【0156】
図23を参照して、刃先交換型のチップ(スローアウェイチップ)431は、シャンク432に取付けられる。チップ431の中央部には孔が形成されており、この孔にボルト435を嵌め込み、ボルト435の先端をシャンク432に差し込んでねじで固定する。また、チップ431は、ねじ433とクランプ434とによりシャンク432に固定される。
【0157】
図24および図25を参照して、チップ431は基材437と耐摩耗性被膜438とを有する。耐摩耗性被膜の組成は(Ti0.5、Al0.5)Nである。耐摩耗性被膜を形成する際に基材437の底面を治具と接触させるため、基材437の底面には耐摩耗性被膜438の形成されない部分が存在する。
【0158】
実施例6:金型(温間鍛造用の金型パンチ)
基材として、温間鍛造用の金型パンチと表面粗さ測定用平板(JIS呼称SKH51からなる鋼、ロックウェルCスケール硬度53)を用意した。実施例2と同じ方法により、この金型パンチにコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例1の耐摩耗性被膜と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0159】
これらのサンプルについて、実際に、温間鍛造時の金型寿命評価を行なった。鍛造時には、金型の表面は温度700℃まで加熱されていた。なお、寿命の判定は、被加工材の寸法精度が規定の範囲から外れた時点を金型の寿命とした。寿命評価結果を表9に示す。
【0160】
【表9】
Figure 0003633837
【0161】
表9より、本発明品では、従来品と比較して金型寿命が大きく向上していることがわかる。
【0162】
図26は、上述の工程で得られたパンチの平面図であり、図27は、図26中のE−E線に沿って見た断面を示す図である。
【0163】
図26および図27を参照して、金型パンチ441は、基材442と耐摩耗性被膜443とを有する。耐摩耗性被膜443は、基材442を覆うように形成されており、耐摩耗性被膜443の組成は(Ti0.5、Al0.5)Nである。
【0164】
実施例7:金型(アルミニウム合金鋳造用鋳抜きピン)
まず、アルミニウム合金鋳造用鋳抜きピンの基材(JIS呼称SKD61の鋼、ロックウェルCスケール硬度51)を用意した。この基材にコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例2従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0165】
次に、これらのサンプルを用いて、実際にアルミニウム合金の鍛造時に鋳抜きピンの寿命評価を行なった。鋳造方法は重力鋳造とし、鋳抜きピンの表面の温度は670℃まで加熱されていた。なお、被加工材の寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とした。寿命評価結果を、表10に示す。
【0166】
【表10】
Figure 0003633837
【0167】
表10より、従来品と比較して、本発明の鋳抜きピンの寿命が大きく向上していることが確認された。
【0168】
図28は、上述の工程で得られた鋳抜きピンの平面図であり、図29は、図28中のF−F線に沿って見た断面を示す図である。
【0169】
図28および図29を参照して、鋳抜きピン451は、基材452と耐摩耗性被膜453とにより構成される。耐摩耗性被膜453の材質は(Ti0.5、Al0.5)Nである。基材452の表面を覆うように耐摩耗性被膜453が形成されている。
【0170】
実施例8
実施例2と全く同じ方法により、JIS呼称SKD11の鋼(ロックウェルCスケール硬度58)の平板のそれぞれにコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例2の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0171】
次に、これらのサンプルを用いて実際に塩水噴霧試験を行なった。試験条件はJIS呼称Z2371に準じて行なうもので、5重量%のNaCl水溶液を温度35℃の条件で1000時間サンプルに吹き付ける方法とした。その結果を表11に示す。
【0172】
【表11】
Figure 0003633837
【0173】
表11より、本発明品では表面に変化が見られないものの、従来品1および従来品2では膜が部分的に剥離し、基材の腐食が生じていることがわかった。
【0174】
実施例9:金型(プラスチック射出成形機用スクリュー)
JIS呼称SKD11(ロックウェルCスケール硬度58)の鋼からなるプラスチック射出成形機用スクリューの基材を用意した。この基材表面に、実施例2と同じ方法でコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は実施例2の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は、実施例2の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は実施例2の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0175】
次に、これらのサンプルを用いて、プラスチック射出成形を行ない、スクリューの寿命を評価した。その結果を表12に示す。
【0176】
【表12】
Figure 0003633837
【0177】
表12より、本発明品では樹脂の離型性が良く、樹脂焼けも減少するので、従来品1および2の寿命に比べて約5倍の寿命の延長が確かめられた。
【0178】
図30は、上述の工程で得られたプラスチック射出成形機用のスクリューの平面図であり、図31は、図30中のG−G線に沿って見た断面を示す図である。
【0179】
図30および図31を参照して、スクリュー461は、基材462と、耐摩耗性被膜463とを備える。耐摩耗性被膜463の組成は(Ti0.5、Al0.5)Nである。基材462の表面を覆うように耐摩耗性被膜463が形成されている。
【0180】
実施例10:切削工具(ドリル)
実施例10では、実施例1で製造したドリルにおいて、ねじれ溝の角度とねじれ溝のない部分の角度との比がドリルの全長にわたって一定の基材を準備した。この基材の表面に、実施例1と同様の方法で耐摩耗性被膜のコーティングを行ない、サンプルである本発明品、従来品1および従来品2を得た。本発明品は、実施例1の本発明品と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品1は実施例1の従来品1と同じ耐摩耗性被膜を有し、従来品2は、実施例1の従来品2と同じ耐摩耗性被膜を有する。
【0181】
次に、これらのサンプルを用いて、実施例1と同様のさまざまな試験を行なった。その結果、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0182】
図32は、上述の工程でえられたドリルを示す図であり、図33は図32中のH−H線に沿って見た断面を示す図でる。図32および33を参照して、ドリルの基材474は超硬合金からなる。基材474の表面には2条のねじれ溝472が設けられている。ドリルの先端部471aでは、ねじれ溝472の角度Y とねじれ溝472のない部分の角度X との比Y :X は0.8:1となっている。ドリルの根元部分471bにおいては、ねじれ溝472の角度Y とねじれ溝472が存在しない部分の角度X との比Y :X は0.8:1である。つまり、ドリル1の基材においては、ねじれ溝472の幅は一定である。
【0183】
以上、この発明について説明したが、この発明は、上記の工具だけでなく、他の形状のエンドミル、フライス加工用および旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具に適用することができる。また、他の形状の金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用などの金型にも適用することができる。
【0184】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。たとえば、耐摩耗性被膜を複数層設けてもよく、被膜中のTiとAlの割合をさまざまに設定してもよい。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0185】
【発明の効果】
この発明に従えば、乾式条件、ミスト潤滑条件およびセミドライ条件など切削油剤が少ない条件においても工具寿命が長く、被削材の加工硬化が生じにくくかつ折損の可能性の少ないドリルを提供することができる。
【0186】
また、この発明に従えば、エンドミル、フライス加工用および旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具における耐摩耗性、高滑り性、高焼付き性、被削材の加工精度(表面仕上げ状態)などの向上を図れるため、寿命の長い切削工具を提供することができる。
【0187】
さらに、この発明に従えば、金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキャスト用、プラスチック成形用などの金型における耐摩耗性、高耐食性、高滑り性、高焼付き性などの向上が図れるため、長寿命の金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いたドリルの基材を示す図である。
【図2】図1中のX−X線に沿って見た断面を示す図である。
【図3】図1中のY−Y線に沿って見た断面を示す図である。
【図4】本発明で用いた成膜装置の模式図である。
【図5】図4中の治具を詳細に示す図である。
【図6】図5で示す治具の上面図である。
【図7】3D−SEMの模式図である。
【図8】試料の表面形状を測定する原理を示す模式図である。
【図9】180分割された視野を示す模式図である。
【図10】プロファイル曲線を示すグラフである。
【図11】スレッシュホールド高さと、その個数との関係を示すグラフである。
【図12】180分割された視野を示す模式図である。
【図13】穴開け回数と切削動力との関係を示すグラフである。
【図14】600穴目における穴表面からの距離と被削材の硬度との関係を示すグラフである。
【図15】1穴目と600穴目における穴表面からの距離と被削材の硬度との関係を示すグラフである。
【図16】この本発明品であるチップを有するフライスの平面図である。
【図17】図16で示すフライスで用いられるチップの平面図である。
【図18】図17中のA−A線に沿って見た断面を示す図である。
【図19】この発明に従ったリーマの平面図である。
【図20】図19中のB−B線に沿って見た断面を示す図である。
【図21】この発明に従ったエンドミルの平面図である。
【図22】図21中のC−C線に沿って見た断面を示す図である。
【図23】この発明に従ったチップの斜視図である。
【図24】図23で示すチップの平面図である。
【図25】図24中のD−D線に沿って見た断面を示す図である。
【図26】この発明に従ったパンチの平面図である。
【図27】図26中のE−E線に沿って見た断面を示す図である。
【図28】この発明に従った鋳抜きピンの平面図である。
【図29】図28中のF−F線に沿って見た断面を示す図である。
【図30】この発明に従ったプラスチック射出成形機用のスクリューの平面図である。
【図31】図30中のG−G線に沿って見た断面を示す図である。
【図32】この発明に従ったドリルの平面図である。
【図33】図32中のH−H線に沿って見た断面を示す図である。
【符号の説明】
1,404,422,437,442,452,462,471 基材、1a先端部、1b 根元部、2,472 ねじれ溝、405,413,423,438,443,453,463 耐摩耗性被膜。

Claims (19)

  1. 基材と、
    その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備えた被覆工具であって、
    前記耐摩耗性被膜の表面において横寸法が24μmで縦寸法が18μmの矩形の表面領域を任意に3ヶ所選び、その3ヶ所で高さ0.5μm以上の突起の個数の合計値が15以下であり、前記高さ0.5μm以上の突起は前記耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものであることを特徴とする、被覆工具。
  2. 基材と、
    その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備えた被覆工具であって、
    前記耐摩耗性被膜の表面において横寸法が60μmで縦寸法が45μmの矩形の表面領域で高さ0.5μm以上の突起の個数が28以下であり、前記高さ0.5μm以上の突起は前記耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものであることを特徴とする、被覆工具。
  3. 基材と、
    その基材の上に形成された(Ti、Al)Nを含む耐摩耗性被膜とを備えた被覆工具であって、
    前記耐摩耗性被膜の表面において横寸法が60μmで縦寸法が45μmの矩形の表面領域で高さ1.0μm以上の突起の個数が7以下であり、前記高さ1.0μm以上の突起は前記耐摩耗性被膜形成時に不可避的に発生したものであることを特徴とする、被覆工具。
  4. 前記耐摩耗性被膜は、複数層形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の被覆工具。
  5. 前記耐摩耗性被膜の厚みは0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の被覆工具。
  6. 前記基材と前記耐摩耗性被膜との間に形成された、チタンナイトライドを含む中間層をさらに備えた、請求項1から5のいずれか1項に記載の被覆工具。
  7. 前記中間層の厚みは0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の被覆工具。
  8. 前記突起の高さは走査型電子顕微鏡を用いて得られた3次元的データをもとに算出されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の被覆工具。
  9. 前記基材は、WC基超硬合金、サーメット、立方晶窒化ホウ素含有焼結体、セラミックス、アルミニウム系合金および鉄系合金からなる群より選ばれた少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の被覆工具。
  10. 当該被覆工具は切削工具であり、前記耐摩耗性被膜は、陰極付近にガスを導入するガス導入口からガスを供給して成膜されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の被覆工具。
  11. 前記切削工具は、切屑を排出するための溝がその表面に形成されたドリルであり、前記溝に前記耐摩耗性被膜が形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の被覆工具。
  12. 前記ドリルは、切削油が存在しない乾式条件下で使用されることを特徴とする、請求項11に記載の被覆工具。
  13. 前記ドリルは、切削油を霧状に吹きつけるミスト潤滑条件下で使用されることを特徴とする、請求項11に記載の被覆工具。
  14. 前記ドリルは、植物油を切削油として使用したセミドライ条件下で使用されることを特徴とする、請求項11に記載の被覆工具。
  15. 前記ドリルにおいて、被削材に近い先端部分の前記溝の幅は、被削材から遠い根元部分の前記溝の幅よりも小さいことを特徴とする、請求項11から14のいずれか1項に記載の被覆工具。
  16. 前記ドリルにおいて、被削材に近い先端部分の前記溝の幅と、被削材から遠い根元部分の前記溝の幅とが等しいことを特徴とする、請求項11から14のいずれか1項に記載の被覆工具。
  17. 前記切削工具は、エンドミル、フライス加工用または旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、タップおよびリーマからなる群より選ばれた1種であることを特徴とする、請求項10に記載の被覆工具。
  18. 当該被覆工具は金型であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の被覆工具。
  19. 前記金型は、金属プレス加工用金型、金属鍛造用金型、金属ダイカスト用金型およびプラスチック成形用金型からなる群より選ばれた1種であることを特徴とする、請求項18に記載の被覆工具。
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