JP3633589B2 - 洩れ検査方法および洩れ検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検査体に対して洩れ検査を低コストで、高精度に実施できる洩れ検査方法および洩れ検査装置に関するもので、例えば、車両用空調装置における冷媒配管等の洩れ検査に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の冷媒配管に代表される配管の洩れ検査には、通常、配管内部を空気加圧し、その空気加圧状態の配管を水中に入れて、配管からの気泡の発生の有無を作業者が目視確認する水没式の洩れ検査方法が用いられている。
【0003】
また、車両用空調装置の機能部品である熱交換器等においては、先ず、熱交換器等の被検査体を真空チャンバー内にセットして、真空チャンバー内部を真空引きし、その後、被検査体内部をヘリウムガスにて加圧し、真空チャンバー内に漏洩したヘリウムガスをガス測定装置に吸引して、漏洩ヘリウムガス分子の量を測定するようにしている。
【0004】
更に、別の洩れ検査方法として、特公平8−16634号公報には、被検査体内部にヘリウムガスを供給し、被検査体の外部へ漏洩したヘリウムガスをスニファーガンにて吸引し、この吸引したヘリウムガスをガス測定装置に導き、漏洩ヘリウムガスの分圧又は濃度を分析する洩れ検査方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水没式の洩れ検査方法では、水中での気泡の発生の有無を作業者が目視確認するので、気泡の発生、すなわち、洩れ発生品を見逃すという問題が生じやすい。また、水没作業の他に、水没作業後の乾燥のための加熱工程が必要となり、作業環境が悪化する等の不具合もある。
【0006】
また、真空チャンバー内にセットした被検査体から漏洩したヘリウムガスを測定する方法では、被検査体である配管の仕様(長さ)が車種毎に種々異なるので、この種々な仕様の配管に対応するために真空チャンバーを大型化する必要が生じ、設備費が高コストとなる。また、真空チャンバーの真空度を維持するためのメンテナンス費用も高くつく。そのため、配管のように種々な仕様を持つ被検査体に対する洩れ検査方法としては不向きである。
【0007】
更に、特公平8−16634号公報記載の洩れ検査方法では、スニファーガンを被検査体の外面に近接して移動させるスニファー吸引操作を作業者が行うので、熟練を要した作業者に依存する洩れ検査となる。そのため、一般の作業者によるスニファー吸引操作では、漏洩ガスの吸引が不十分となり、確実な洩れ検査を実施できない。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、配管等の接合部を含む被検査体の洩れ検査を、低コストで簡便に、しかも、高精度で実施できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の部品(11、12、13)間を接合して構成される被検査体(W)に対する洩れ検査を行う洩れ検査方法であって、
被検査体(W)のうち、複数の部品(11、12、13)間を接合する接合部(13c)を含む検査対象部位のみを密閉されたチャンバー(10)内に収容し、
チャンバー(10)の内部を窒素ガス雰囲気に置換し、また、被検査体(W)に対してヘリウムガスを、接合部(13c)の上流側部位から下流側部位に向かう一方向にて供給することにより被検査体(W)の内部空間をヘリウムガスで窒素ガス雰囲気より高い圧力に加圧し、
チャンバー(10)内部の雰囲気ガスをヘリウムガス測定装置(31)に導入し、ヘリウムガス測定装置(31)によりヘリウムガス分子の量を測定して、被検査体(W)の接合部(13c)の洩れを判定し、
更に、ヘリウムガスの供給開始後における前記下流側部位の圧力上昇割合に基づいて接合部(13c)の通路閉塞を判定することを特徴としている。
【0010】
これによると、チャンバー(10)の内部を窒素ガス雰囲気に置換し、その窒素ガス雰囲気中に洩れ出てくるヘリウムガス分子の量を測定して、被検査体(W)の接合部(13c)の洩れを判定するから、作業者によるスニファー吸引操作といった特別の熟練操作を要することなく、精度良く洩れ判定を行うことができる。
【0011】
しかも、複数の部品(11、12、13)間の接合部(13c)を含む検査対象部位のみをチャンバー(10)内に収容するから、配管類のように製品仕様に応じて長さが大きく変化する部品が被検査体(W)に包含されていても、チャンバー(10)の容積は検査対象部位のみを収容する大きさに設定できる。そのため、チャンバー(10)の体格を小型化でき、且つ、チャンバー(10)を真空チャンバーとして構成する必要もないので、洩れ検査を実施するための設備費を低減できる。
【0012】
ところで、チャンバー(10)内に供給される窒素ガスは、大気中に最も多く存在する気体であるから、洩れ検査後にそのまま大気中に放出することができ、非常に簡便に取り扱うことができる。このように窒素ガスはそのまま大気中に放出可能であるから、チャンバー(10)の密閉度を低くすることができ、チャンバー(10)の製造コストを一層低減できる。
【0013】
また、被検査体(W)の内部空間に加圧封入されるヘリウムガスは、窒素ガスと同様に、人体や地球環境に対して無害であり、また、不燃性であるから、安全に使用できる。更に、ヘリウムガスは、分子の直径が水素に次いで小さく、微細な洩れ箇所でも通過することができる。しかも、ヘリウムガスは水素に比べて化学的に安定しており、他の元素と化合物を作らないので、洩れ検査のための流体として最適である。
更に、請求項1の発明によると、接合部下流側部位の圧力上昇割合が接合部(13c)の通路閉塞の有無に応じて変化することに着目して、この接合部下流側部位の圧力上昇割合に基づいて接合部(13c)の通路閉塞を判定するようにしている。このため、被検査体(W)の内部空間にヘリウムガスを加圧する過程にて接合部(13c)の通路閉塞の有無を同時に判定することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、被検査体(W)の内部空間を真空引きしてからヘリウムガスの加圧を行うようにすれば、被検査体(W)の内部空間に存在する種々な不純物等を予め低減することができる。そのため、被検査体(W)内の不純物等がヘリウムガス測定装置(31)に導入されることに基づく弊害を低減できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、被検査体(W)の検査対象部位に圧力スイッチ(15)が備えられており、ヘリウムガスの加圧圧力を圧力スイッチ(15)の作動圧力より高い圧力に設定し、ヘリウムガスの加圧過程に圧力スイッチ(15)を作動させることにより、圧力スイッチ(15)の作動確認を行うことを特徴とする。
【0018】
これにより、ヘリウムガスの加圧過程に圧力スイッチ(15)の作動確認をも同時に行うことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、複数の部品(11、12、13)間を接合して構成される被検査体(W)に対する洩れ検査を行う洩れ検査装置であって、
被検査体(W)のうち、複数の部品(11、12、13)間を接合する接合部(13c)を含む検査対象部位のみを収容する密閉されたチャンバー(10)と、
チャンバー(10)の内部に窒素ガスを供給し、チャンバー(10)の内部を窒素ガス雰囲気に置換する窒素ガス供給手段(26、28)と、
被検査体(W)の内部空間にヘリウムガスを接合部(13c)の上流側部位から下流側部位に向かう一方向にて供給し、被検査体(W)の内部空間をヘリウムガスで窒素ガス雰囲気より高い圧力に加圧するヘリウムガス供給手段(20、21)と、
チャンバー(10)内部の雰囲気ガスが導入され、ヘリウムガス分子の量を測定するヘリウムガス測定装置(31)と、
ヘリウムガス測定装置(31)の測定結果の信号が入力され、被検査体(W)の接合部(13c)の洩れを判定する制御手段(41)とを備え、
更に、制御手段(41)は、ヘリウムガスの供給開始後における前記下流側部位の圧力上昇割合に基づいて接合部(13c)の通路閉塞を判定するようになっていることを特徴としている。
【0020】
これにより、請求項1の洩れ検査方法を実施するための装置を提供できる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、請求項4において、チャンバー(10)内部の雰囲気ガスをヘリウムガス測定装置(31)に導入する経路に、雰囲気ガス中に含まれる不純物を分離するフィルタ手段(36)を備えることを特徴とする。
【0022】
これにより、被検査体(W)内の不純物等がヘリウムガス測定装置(31)に導入されることに基づく弊害をより確実に低減できる。
【0023】
請求項6に記載の発明では、請求項5において、フィルタ手段(36)にて分離された不純物を吸引する吸引手段(33)を備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、フィルタ手段(36)にて分離された不純物をフィルタ手段(36)の外部へ排出できるので、不純物によるフィルタ手段(36)の詰まりを防止して、フィルタ手段(36)の寿命延長を図ることができる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態による洩れ検査装置の全体システム構成の概要を示すものであり、洩れ検査用のチャンバー10は密閉された箱状の部材により構成され、被検査体Wのうち、検査対象部位のみを収容する。本実施形態の被検査体Wは車両空調装置における冷媒配管11、12およびこの配管11、12とろう付けにより接合されるコネクタ部品13である。
【0027】
被検査体Wのうち検査対象部位は、コネクタ部品13と配管11、12とのろう付け接合部である。従って、チャンバー10はコネクタ部品13および配管ろう付け接合部を収容できる容積に設定すればよい。そして、コネクタ部品13に接合された冷媒配管11、12を密閉状態でチャンバー10外部へ取り出すための孔部(図示せず)がチャンバー10の壁面に設けられている。
【0028】
図2、図3は冷媒配管11、12およびコネクタ部品13により構成される被検査体Wの具体例を示すものであり、冷媒配管11、12は車両空調装置の冷凍サイクルにおいて凝縮器の出口側に接続される高圧側冷媒配管である。そして、コネクタ部品13の本体ブロック13a(図3)に設けられた通路穴13bに冷媒配管11、12の端部が挿入され、ろう付け等により接合される。13cはこのろう付け接合部を示す。
【0029】
本体ブロック13aには、サイトグラス14、圧力スイッチ15、およびサービスバルブ16が通路穴13bと連通するように弾性シール材(図示せず)を介して気密に装着される。
【0030】
サイトグラス14は冷媒配管11、12内を流れる高圧液冷媒の気泡の発生状況を目視観察するためのものである。圧力スイッチ15は図4の作動特性により冷媒圧力に応じて開閉されるものであって、サイクル外部への冷媒洩れ等により冷媒圧力が異常に低下すると、接点が正常時の閉状態から開状態に切り替わって冷媒圧力の異常低下(冷媒洩れ等)を検出するものである。サービスバルブ16は冷凍サイクル内への冷媒充填のために使用されるバルブである。
【0031】
図2に示す冷媒配管11、12の先端部のジョイント部11a、12aにはそれぞれ図1に示すキャップ部材17、18を装着する。キャップ部材17には冷媒配管11内の圧力を検出して電気信号を出す第1圧力センサ19が接続される。本実施形態の被検査体Wをなすコネクタ部品13では、冷媒配管11、12の端部のろう付け接合部13cおよび上記部品14〜16の装着部が冷媒洩れの原因となる。
【0032】
また、キャップ部材18にはヘリウムガス導入管20によりヘリウムガスタンク21が接続される。ヘリウムガス導入管20の途中には電気的に開閉されるヘリウムガス供給弁22が設けられている。また、ヘリウムガス供給弁22およびヘリウムガスタンク21と並列に、電気的に開閉される真空排気弁23および真空ポンプ24が接続される。この真空ポンプ24はモータにより駆動される電動ポンプである。更に、ヘリウムガス導入管20には、その内部の圧力を検出して電気信号を出す第2圧力センサ25が接続される。
【0033】
チャンバー10には窒素ガス導入管26と被検査流体吸引管27が接続されている。窒素ガス導入管26は窒素ガスタンク28内の窒素ガスをチャンバー10内に導入するためのものである。窒素ガス導入管26の途中には作業者により手動操作される流量調整弁29と、電気的に開閉される窒素ガス供給弁30が配置されている。
【0034】
被検査流体吸引管27はチャンバー10内の雰囲気ガス、すなわち、被検査流体をヘリウムガス測定装置31、第1吸引ポンプ32および第2吸引ポンプ33に向けて吸引するためのものである。ここで、第1、第2吸引ポンプ32、33はモータにより駆動される電動ポンプである。また、被検査流体吸引管27には、電気的に開閉される開閉弁34と作業者により手動操作される流量調整弁35が設けてある。
【0035】
被検査流体吸引管27において流量調整弁35より下流側に分岐フィルタ36が設けてある。図5は分岐フィルタ36の具体例を示すものであり、分岐フィルタ36の箱状のケース36aには被検査流体吸引管27からの被検査流体が流入する入口36bと、第1、第2の2つの出口36c、36dが設けてある。
【0036】
そして、ケース36aの内部において第1出口36cの上流部位にはフィルタ部材36eが設けてあり、このフィルタ部材36eを通過した被検査流体のみが第1出口36c側へ流れる。第1出口36cはヘリウムガス測定装置31および第1吸引ポンプ32に接続される。一方、入口36bと第2出口36dとの間はケース36aの内部空間によって直接接続され、第2出口36dは第2吸引ポンプ33に接続される。
【0037】
フィルタ部材36eは金属製のブロック体に直径5μm以下の微小貫通穴を多数開けたメタルメッシュフィルタで構成される。ここで、被検査流体には、被検査体Wであるコネクタ部品13、冷媒配管11、12に付着していた水分、塵埃等の不純物が含まれているが、これらの水分、塵埃等の不純物はいずれも5μm以上の大きさであるので、フィルタ部材36eを通過しない。
【0038】
一方、後述するヘリウムガスの分子の直径は2.8オングストローム(=0.28μm)であって、フィルタ部材36の微小貫通穴の直径より小さいので、ヘリウムガス分子、はフィルタ部材36eを通過する。同様に、窒素ガス分子もフィルタ部材36の微小貫通穴の直径より直径が小さいので、フィルタ部材36eを通過する。
【0039】
ヘリウムガス測定装置31は従来周知のものであり、後述の測定原理によりヘリウム分子の量(数)を測定し、その測定結果を電気信号として出力するものである。
【0040】
また、窒素ガス導入管26には、窒素ガス供給圧力を検出して電気信号を出す第3圧力センサ37が設けられている。被検査流体吸引管27にはその内部圧力(真空度)を検出して電気信号を出す第4圧力センサ38が設けられている。
【0041】
制御ユニット40は、マイクロコンピュータ等により構成される制御装置41、この制御装置41に作業者の操作信号を入力する操作スイッチ部42、制御装置41の制御出力により制御される表示部43等を備えている。制御装置41には、第1〜第4圧力センサ19、25、37、38の検出信号、およびヘリウムガス測定装置31のヘリウム分子測定信号が入力される。更に、コネクタ部品13の圧力スイッチ15に電気配線44を接続することにより、圧力スイッチ15の接点開閉信号が制御装置41に入力されるされるようになっている。
【0042】
また、前述した開閉弁22、23、30、34、真空ポンプ24および第1、第2吸引ポンプ32、33の作動は制御装置41の制御出力により制御される。
【0043】
次に、本実施形態における洩れ検査方法を具体的に説明する。先ず最初に、洩れ検査前に作業者自身が行う準備工程を説明すると、作業者は、被検査体Wであるコネクタ部品13に接合された冷媒配管11の先端部のジョイント部11aにキャップ部材17を装着し、また、他方の冷媒配管12の先端部のジョイント部12aにキャップ部材18を装着する。更に、コネクタ部品13の圧力スイッチ15を電気配線44により制御装置41に接続する作業を行う。その後に、被検査体Wのうち、コネクタ部品13および配管端部の接合部13c部分をチャンバー10内に収容する。
【0044】
なお、図1に示すように冷媒配管11のキャップ部材17には第1圧力センサ19が接続され、他方の冷媒配管12のキャップ部材18にはヘリウムガス導入管20が接続される。
【0045】
次に、制御ユニット40の操作スイッチ部42を操作して、自動検査の起動信号を制御装置41に入力すると、以下に述べる自動検査方法が実行される。先ず、最初の工程として、チャンバー10内の大気雰囲気を窒素ガス雰囲気に置換する窒素ガス置換、および被検査体W内部の真空引きを行う。具体的には、制御装置41の出力により弁23、30、34を開弁すると同時に、第1、第2吸引ポンプ32、33および真空ポンプ24を始動させる。
【0046】
これにより、タンク28内の窒素ガスが導入管26を通過してチャンバー10内に供給される。これと同時に、チャンバー10内の空気が被検査流体吸引管27を通して第1、第2吸引ポンプ32、33に吸引されるので、チャンバー10内の雰囲気は、大気雰囲気から窒素ガス雰囲気に徐々に置換されていく。また、冷媒配管11、12およびコネクタ部品13内部の空気等が真空ポンプ24に吸引され、冷媒配管11、12およびコネクタ部品13内部の真空引きが行われる。
【0047】
そして、この間においても、第1吸引ポンプ32に吸引される流体(窒素ガスと空気の混合流体)中に含まれるヘリウムガス分子の量は測定装置31により測定される。チャンバー10内の窒素ガス置換が進行することにより、測定装置31を通過するヘリウムガス分子の量が減少していくので、このヘリウムガス分子の量が0に近い所定の僅少値以下に減少したことを制御装置41において判定することにより、チャンバー10内の窒素ガス置換の完了を判定できる。チャンバー10内の窒素ガスの圧力は大気圧より若干高い程度の圧力でよい。
【0048】
窒素ガス置換の完了を判定し、且つ、第2圧力センサ25により検出される冷媒配管12側の管路の圧力が所定値以下に低下して真空引きの完了を判定すると、制御装置41の制御出力により真空排気弁23を閉弁するとともに真空ポンプ24を停止する。これと同時に、制御装置41の制御出力によりヘリウムガス供給弁22を開弁する。
【0049】
これにより、ヘリウムガスタンク21から、今まで負圧状態にあった冷媒配管11、12およびコネクタ部品13内部へのヘリウムガス供給が開始され、時間の経過とともに冷媒配管11、12およびコネクタ部品13内部のヘリウムガス圧力が上昇していく。そして、第2圧力センサ25により検出されるコネクタ部品上流側圧力P1が第1所定圧力Ps1まで上昇すると、ヘリウムガス加圧が完了したと判定する。
【0050】
この第1所定圧力Ps1は制御装置41内に設定されるもので、チャンバー10内の窒素ガス雰囲気の圧力よりも高い圧力である。より具体的には、第1所定圧力Ps1を図4に示す圧力スイッチ15の作動圧力=2.1〜2.4kgf/cm2より十分高い圧力、例えば、8kgf/cm2に設定してある。
【0051】
従って、ヘリウムガスの供給開始後、上流側圧力P1が第1所定圧力Ps1に向かって上昇する過程においてコネクタ部品13の圧力スイッチ15が必ず開閉作動を行うことになる。圧力スイッチ15の開閉信号は電気配線44を通して制御装置41に入力されるので、上流側圧力P1の上昇過程に圧力スイッチ15の接点が開状態から閉状態に切り替わる作動を制御装置41にて判定することにより、圧力スイッチ15の接点が正常であることを確認できる。
【0052】
逆に、上流側圧力P1の上昇過程に圧力スイッチ15の接点が開状態のままであるとか、閉状態のままであるときは圧力スイッチ15の接点が異常である。このようにして、制御装置41は圧力スイッチ15の接点の正常、異常を判定することができ、その判定結果に基づいて表示部43にて圧力スイッチ15の正常、異常を表示する。具体的には、表示部43に備えられる圧力スイッチ正常表示灯又は圧力スイッチ異常表示灯を点灯する。
【0053】
また、本実施形態においては、コネクタ部品13における通路閉塞をも判定するようになっているので、次に、この通路閉塞の判定について説明する。図6はコネクタ部品13における通路閉塞を例示するものであり、冷媒配管11の端部はコネクタ部品13の本体ブロック13aの通路穴13bにろう付けにより接合されるので、接合部13cにろう付け不良が発生して通路穴13bがろう材13dにより閉塞されることがある。図6はろう材13dにより通路穴13bの通路面積が90%程度減少した状態を図示している。
【0054】
図7は横軸にヘリウムガスの供給開始後の経過時間をとり、縦軸に被検査体Wにおけるヘリウムガスの加圧圧力をとったものである。図7において、P1は第2圧力センサ25により検出される上記コネクタ部品上流側圧力であり、P2は第1圧力センサ25により検出されるコネクタ部品下流側圧力である。実線のP2はコネクタ部品13における通路閉塞が発生していない正常時の圧力変化であり、これに対し、破線のP2はコネクタ部品13における通路閉塞が発生した異常時の圧力変化である。
【0055】
すなわち、図6のように本体ブロック13aの通路穴13bがろう材13dにより閉塞されて通路面積が減少すると、この通路面積の減少による圧損によって、コネクタ部品下流側圧力P2の上昇割合は図7の破線に示すように正常時(実線)の上昇割合に比して大きく低下する。
【0056】
このため、コネクタ部品13における通路閉塞の発生時には、ヘリウムガスの供給開始後、コネクタ部品上流側圧力P1が図7の時刻t1にて第1所定圧力Ps1に到達しても、コネクタ部品下流側圧力P2は第1所定圧力Ps1より大幅に小さい値になっている。
【0057】
そこで、ヘリウムガス加圧の完了を判定する第1所定圧力Ps1より所定量小さい第2所定圧力Ps2を制御装置41内に設定し、上流側圧力P1が第1所定圧力Ps1に到達する時刻t1において下流側圧力P2が第2所定圧力Ps2以上であるか制御装置41にて判定する。P2≧Ps2であるときは、コネクタ部品13にて通路閉塞が発生せず、正常であると判定する。逆に、P2<Ps2であるときは、コネクタ部品13にて通路閉塞が発生し、異常であると判定する。この判定に基づいて、コネクタ部品13における通路閉塞の発生有無を表示部42にて表示する。この通路閉塞の発生有無の表示も、前述の圧力スイッチ15の正常、異常の表示と同様の方法でよい。
【0058】
一方、コネクタ部品上流側圧力P1が第1所定圧力Ps1に到達すると、制御装置41はヘリウムガス加圧の完了を判定し、コネクタ部品13での洩れ検査を開始する。すなわち、P1≧Ps1となった後における所定時間の間に、ヘリウムガス測定装置31により測定されるヘリウム分子の量(数)の測定値に基づいてコネクタ部品13での洩れ有無を判定する。
【0059】
このコネクタ部品13での洩れ検査を行う間も、タンク21からのヘリウムガス供給、タンク28からの窒素ガス供給、および第1、第2吸引ポンプ32、33の吸引作動は継続されている。従って、コネクタ部品13の接合部13cに不良箇所があると、コネクタ部品13内部の加圧ヘリウムガスが接合部13cの不良箇所からチャンバー10内に洩れ出て、置換窒素ガスとともに吸引管27側へ吸引される。ヘリウムガスは更に分岐フィルタ36を通過してヘリウムガス測定装置31に流入する。
【0060】
ここで、ヘリウムガス測定装置31によるヘリウム分子の量の測定原理を簡単に説明すると、測定装置31内部ではフィラメントの加熱により発生したマイナス電子の流れにより、測定装置31内へ流入してくる被検査流体に含まれる様々な分子をイオン化している。このイオン化した分子は測定装置31内に発生している電場と磁場とにより円弧を描く。その際に、イオン化分子の円弧半径は原子量の違いにより各イオン毎に異なる特有の値になっている。この現象を利用してヘリウムイオンのみを取り出し、そのヘリウムイオンの電荷を測定することによりヘリウム分子の量を測定できる。
【0061】
そして、所定の測定時間におけるヘリウム分子の量が予め設定された量より小さい時は、コネクタ部品13での洩れが発生していない正常状態であると判定し、逆に、所定の測定時間におけるヘリウム分子の量が予め設定された量以上であると、コネクタ部品13での洩れが発生している異常状態であると判定する。この判定結果に基づいてコネクタ部品13での洩れの有無を表示部43にて表示する。この洩れの有無の表示も、前述の圧力スイッチ15の正常、異常の表示、および通路閉塞の発生有無の表示と同様の方法でよい。
【0062】
次に、分岐フィルタ36の作用について説明すると、コネクタ部品13の接合部13cに不良箇所がある場合には、窒素ガスとヘリウムガスの混合流体が被検査流体としてチャンバー10内から吸引管27を通過し分岐フィルタ36のケース36a内に流入する。この被検査流体の一部はケース36a内部からフィルタ部材36eを通過して出口36cからヘリウムガス測定装置31へ向かう。
【0063】
ここで、被検査流体には、コネクタ部品13、冷媒配管11、12に付着していた水分、塵埃等の不純物が含まれているが、フィルタ部材36eは直径5μm以下の微小貫通穴を多数開けたメタルメッシュフィルタで構成されており、そして、上記の水分、塵埃等の不純物はいずれも5μm以上の大きさであるので、フィルタ部材36eを通過しない。この水分、塵埃等の不純物は、被検査流体のうち出口36d側へ流れる被検査流体とともに第2吸引ポンプ33に吸引される。
【0064】
もし、ヘリウムガス測定装置31に流入する被検査流体に上記の水分、塵埃等の不純物が混入していると、この不純物が測定装置31内のフィラメントに付着してフィラメント損傷の原因になったり、ヘリウムガス分子の量の検出感度を低下させる等の不具合を生じるが、本実施形態によると、フィルタ部材36eにより不純物を分離し、測定装置31内への不純物の流入を阻止できるので、測定装置31の検出感度を長期間にわたって高精度に維持できる。
【0065】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態では、被検査体Wであるコネクタ部品13に、サイトグラス14、圧力スイッチ15、およびサービスバルブ16を装着する場合について説明したが、図8に示すコネクタ部品13では本体ブロック13aをこれらの機器14〜16を装着しない単純なブロック体として構成し、この本体ブロック13aの通路穴13bに冷媒配管11、12の端部を挿入し、ろう付けしている。このようなコネクタ部品13に対しても本発明を同様に適用できることはもちろんである。
【0066】
また、上記の実施形態では、車両空調装置における冷媒配管11、12とコネクタ部品13とにより被検査体Wが構成される場合について説明したが、複数の部品間を接合する接合部を有する機器であれば、どんな用途の機器であっても、本発明による洩れ検査を同様に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による洩れ検査装置の全体システム構成の概要図である。
【図2】図1における被検査体の具体例の概略説明図である。
【図3】図2の被検査体のうち、コネクタ部品の断面図である。
【図4】図3の圧力スイッチの作動特性図である。
【図5】図1における分岐フィルタの具体例を示す断面図である。
【図6】図3のコネクタ部品の通路閉塞状況を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態でのヘリウムガス供給圧力の変化を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示すコネクタ部品の断面図である。
【符号の説明】
W…被検査体、10…チャンバー、11、12…冷媒配管、
13…コネクタ部品、21…ヘリウムガスタンク、28…窒素ガスタンク、
31…ヘリウムガス測定装置、41…制御装置。
Claims (6)
- 複数の部品(11、12、13)間を接合して構成される被検査体(W)に対する洩れ検査を行う洩れ検査方法であって、
前記被検査体(W)のうち、前記複数の部品(11、12、13)間を接合する接合部(13c)を含む検査対象部位のみを密閉されたチャンバー(10)内に収容し、
前記チャンバー(10)の内部を窒素ガス雰囲気に置換し、また、前記被検査体(W)に対して前記ヘリウムガスを、前記接合部(13c)の上流側部位から下流側部位に向かう一方向にて供給することにより前記被検査体(W)の内部空間をヘリウムガスで前記窒素ガス雰囲気より高い圧力に加圧し、
前記チャンバー(10)内部の雰囲気ガスをヘリウムガス測定装置(31)に導入し、前記ヘリウムガス測定装置(31)により前記ヘリウムガス分子の量を測定して、前記被検査体(W)の接合部(13c)の洩れを判定し、
更に、前記ヘリウムガスの供給開始後における前記下流側部位の圧力上昇割合に基づいて前記接合部(13c)の通路閉塞を判定することを特徴とする洩れ検査方法。 - 前記被検査体(W)の内部空間を真空引きしてから前記ヘリウムガスの加圧を行うことを特徴とする請求項1に記載の洩れ検査方法。
- 前記被検査体(W)の前記検査対象部位に圧力スイッチ(15)が備えられており、
前記ヘリウムガスの加圧圧力を前記圧力スイッチ(15)の作動圧力より高い圧力に設定し、
前記ヘリウムガスの加圧過程に前記圧力スイッチ(15)を作動させることにより、前記圧力スイッチ(15)の作動確認を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の洩れ検査方法。 - 複数の部品(11、12、13)間を接合して構成される被検査体(W)に対する洩れ検査を行う洩れ検査装置であって、
前記被検査体(W)のうち、前記複数の部品(11、12、13)間を接合する接合部(13c)を含む検査対象部位のみを収容する密閉されたチャンバー(10)と、
前記チャンバー(10)の内部に窒素ガスを供給し、前記チャンバー(10)の内部を窒素ガス雰囲気に置換する窒素ガス供給手段(26、28)と、
前記被検査体(W)の内部空間にヘリウムガスを前記接合部(13c)の上流側部位から下流側部位に向かう一方向にて供給し、前記被検査体(W)の内部空間を前記ヘリウムガスで前記窒素ガス雰囲気より高い圧力に加圧するヘリウムガス供給手段(20、21)と、
前記チャンバー(10)内部の雰囲気ガスが導入され、前記ヘリウムガス分子の量を測定するヘリウムガス測定装置(31)と、
前記ヘリウムガス測定装置(31)の測定結果の信号が入力され、前記被検査体(W)の接合部(13c)の洩れを判定する制御手段(41)とを備え、
更に、前記制御手段(41)は、前記ヘリウムガスの供給開始後における前記下流側部位の圧力上昇割合に基づいて前記接合部(13c)の通路閉塞を判定するようになっていることを特徴とする洩れ検査装置。 - 前記チャンバー(10)内部の雰囲気ガスを前記ヘリウムガス測定装置(31)に導入する経路に、前記雰囲気ガス中に含まれる不純物を分離するフィルタ手段(36)を備えることを特徴とする請求項4に記載の洩れ検査装置。
- 前記フィルタ手段(36)にて分離された不純物を吸引する吸引手段(33)を備えることを特徴とする請求項5に記載の洩れ検査装置。
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