JP3632181B2 - わらび餅の製造方法 - Google Patents
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Description
【業務上の利用分野】
本発明は、わらび餅の改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本の伝統的な食品である和菓子類は、原料として各種澱粉を含む穀粉等が使用されている。これらの澱粉は歴史的背景から日本で生育する植物由来の穀粉、例えばくず澱粉、わらび澱粉、甘藷澱粉、片栗粉、米餅、もち米粉、小麦粉、そば粉等が用いられている。
代表的和菓子の1つであるわらび餅は、本来はワラビ科の多年草であるわらびの根から精製されるわらび粉を原料として製造されていた。しかし、わらび粉は工業的に生産されないため極めて高価であり、また入手も困難である。このため、現在では、専ら甘藷澱粉を代用原料として使用して和菓子類が製造されている。
【0003】
最近は和菓子類も機械化による大量生産化が進み、製品の流通も広範囲に及ぶようになり、製品が冷蔵や冷凍状態で流通されたり、長期間の保存が行われるようになった。このため、従来からの原料である前記の澱粉や穀粉を使用するだけでは、近代的機械による大量生産には不適当であったり、また保存中に品質が著しく劣化し喫食に供し得ない等の問題があった。
特に、甘藷澱粉を原料とする近年の和菓子類は、製造直後の品質は良いとしても、保存中に組織の硬化と脆弱化、白濁化と離水が進行し、総じて品質の劣化が著しい。このように、短時間のうちに老化が進み、喫食に供し得なくなるという問題点がある。
【0004】
保存中の品質劣化は、主として澱粉の老化に起因する。これを防ぐためには多量の砂糖、ぶどう糖、マルトース、ソルビトール等の糖質原料が使用される。
しかし、これらの糖質の使用は、効果が充分でないうえに大幅のコストアップを招き、さらに、過剰な糖質の添加は、和菓子等の加熱後の生地を過剰に軟らかくし、機械的な生産時の作業性を極端に悪化させる問題を生じた。
さらに、最近は健康上の配慮から高カロリー食品は敬遠される傾向になり、この観点からも過剰に糖質を添加して生地の老化を防止する方法は好ましくない。
【0005】
このような問題を解決するために、主原料である澱粉の配合を変更しようとする試みが行われ、例えば、和菓子類の1つであるわらび餅では特開昭55−13048号、特開平3−22948号が各々提案されているが、いずれも問題点を解決するには至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の方法では解決が困難であった、食感に優れるとともに保存中の品質の劣化が少なく、かつ機械的生産にも適した、和菓子類の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、わらび餅の製造に必要とされる澱粉の物性について鋭意研究を続けた。その結果、タピオカ澱粉を原料として使用すること、とくにタピオカ澱粉が糊化する過程で示す物性変化に着眼し、この物性変化を表す基準値が特定の範囲内となるように加工したタピオカ加工澱粉を原料として使用すると、製造されたわらび餅は、製造後の食味、食感の経時変化が小さく、かつ機械適性も極めて良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明はYA粘度保持指数100〜150に加工した酸化タピオカ澱粉またはジエステル化タピオカ澱粉を原料粉全量の30重量%以上使用することを特徴とする和菓子類の製造方法の発明である。
【0010】
YA粘度保持指数は、和菓子類の製造に好適とされる澱粉の物性を最も的確に特定するために本発明者らが開発した粘度保持状態を示す基準値である。
本基準値は、測定対象となる澱粉懸濁液を昇温させるに際して、50℃から95℃までの昇温過程を毎分1.5℃の速度で昇温せしめたのち、該95℃の温度に30分間保持したときに示す粘度をXとし、他方、上記の昇温中95℃に到達するまでの間に示す最高粘度をYとするとき、
で示される基準値である。
【0011】
粘度の測定方法は次のとおりである。
まず、澱粉を常温の純水中に最高粘度が600〜800BU(ブラベンダーユニット)となるような濃度に懸濁し、これを所定の容器に収容し、アミログラフ(ビスコグラフ)装置(ドイツ連邦共和国・ブラベンダー社製VS型、測定用カートリッジ700cm・g、測定容器ピン型フィーラーおよび容器回転速度75rpm)にセットし、50℃まで昇温した後、1分間1.5℃の割合で定速昇温させ、30分後に95℃に到達せしめ、さらに該95℃のまま30分間保持した。
その間、澱粉溶液の粘度変化を自記記録し、該チャート(アミログラフ)から、95℃30分保持後の粘度Xと、昇温中95℃に到達するまでの間の最高粘度Yを読みとり、前記の式によりYA粘度保持係数を算定した。
【0012】
本発明では、YA粘度指数が100〜150になるようあらかじめ加工した酸化タピオカ澱粉またはジエステル化タピオカ澱粉を使用してわらび餅を製造する。
タピオカ澱粉以外の澱粉を使用すると、これが例えYA粘度指数を100〜150になるように加工した澱粉であった場合でも、加熱後の生地が軟らかく、また粘着性が極めて高いために機械的にわらび餅を製造するのに適さず、また得られた製品においても老化が早い等の不都合がある。
したがって、本発明の目的を達成するためには、YA粘度保持指数を100〜150に加工した上記タピオカ加工澱粉を使用することが必須の要件である。
YA粘度保持指数は特に50未満のものを使用した場合には、前記と同様の不都合が生じ、逆に、YA粘度保持指数が150を超える場合には、澱粉の膨張性が悪いために加熱後の生地の粘着性が低下し、まとまりが悪くなり、やはり機械的生産に適さない。しかも、澱粉同士のネットワークが悪いため食感が弱く、成形後の水洗により表面部分が溶け出して肌荒れのはげしいものとなる。
【0013】
本発明で使用するYA粘度保持指数100〜150のタピオカ澱粉は、生タピオカ澱粉を、例えばエステル化または酸化処理をして得ることができる。
【0014】
本発明のタピオカ加工澱粉を使用すれば、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、その他の澱粉を原料とする従来法によるわらび餅製造技術を適用して、良質かつ機械的製造に適したわらび餅を製造することができる。
本発明のタピオカ澱粉の配合量は、原料粉全量を基準として30%以上とすることで特に顕著な効果を発現する。
【0015】
甘藷澱粉等を原料とする従来のわらび餅では、保存中の澱粉の老化に起因する食感の硬化が速く、食感の硬化に加えて、さらに白濁や離水による外観の劣化が速いので、これらを防止するために、澱粉の30〜100%に相当する糖質原料が添加されていた。
これに対し、本発明では糖類の添加量は必須の構成要件ではなく、その添加量を原料澱粉の20%以下に抑えても、経時劣化の少ないわらび餅を得ることができる。したがって、必要に応じて低カロリーのわらび餅を製造することができる。
【0016】
【作用】
本発明では、とくにYA粘度保持指数を100〜150に加工したジエステル化タピオカ澱粉または酸化タピオカ澱粉を使用してわらび餅を製造することによって、自動化機械による大量製造が可能となる。
また、製造直後の食感、食味に優れるだけでなく、製造後の澱粉の老化に起因する食感の劣化(硬化)、白濁や離水による外観の低下が極めて少ない。
本発明の上記効果は、わらび餅を冷蔵または冷凍状態で保存した場合においても顕著である。
【0017】
【実施例】
本発明のタピオカ加工澱粉の添加効果を調べるため、わらび餅で実施した実施例を述べる。
【0018】
参考例1.YA粘度保持指数37の生タピオカ澱粉を原料として、各種のYA粘度保持指数を有するタピオカ澱粉を次のようにして加工し、試験に使用した。
水6,750gに生タピオカ澱粉(水分13%)5,750gを懸濁した後、加温して30℃に保温した。これを撹拌しながら希水酸化ナトリウム水溶液でPH11に調整し、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素12%)2、4、8及び25gを添加して5時間反応させた。反応終了後、硫酸で中和し、2倍量の水で希釈したのち、ロ過し50℃で送風乾燥してYA粘度保持指数45、50、72及び100の酸化タピオカ澱粉を製造した。
【0019】
参考例2.YA粘度保持指数37の生タピオカ澱粉を原料として、本発明で使用する、所望のYA粘度保持指数を有するタピオカ澱粉を次のようにして加工した。
水6,750gに生タピオカ澱粉(水分13%)5,750gに懸濁した後、加温して40℃に保温した。これを撹拌しながら炭酸ナトリウム6gを加えた後、トリメタリン酸ナトリウムを2、4、16、50、60及び80g添加して10時間反応させた。反応終了後、塩酸で中和し、5倍量の水で希釈した後、ロ過、50℃で送風乾燥した。このようにして得たジエステル化タピオカ澱粉のYA粘度保持指数は47、50、80、150、155及び170であった。
【0020】
添加する加工澱粉の粘度特性とわらび餅の品質の関係を明らかにするために、参考例1および2で得たタピオカ加工澱粉を使用してわらび餅を製造した。
すなわち、試験区番号4〜35において、YA粘度保持指数を異にするタピオカ加工澱粉を配合してわらび餅の生地を調整した。生地は、総澱粉量100部に対し、砂糖0〜100部を水450部に溶解して加えて懸濁し、間接加熱型のニーダーで充分攪拌しながら加熱し、澱粉が糊化し透明になる(品温85℃)まで混練して調整した。
対照として、試験区番号1〜3では甘藷澱粉のみを、同36〜40ではタピオカ澱粉以外の加工澱粉(参考例1および2に準じて調整)をそれぞれ配合した。砂糖および水の添加、攪拌、加熱、混練については試験区番号4〜35と同様である。
得られた生地を小餅切り機(福山製菓機械(株)製 商品名「つぶぞろい」)を使用して1粒約10gに成形し、流水中で冷却した後、水切りしてわらび餅を得た。
機械適性は、生地の機械への付着の程度、成形の際の切れ易さ、製品の形状などを加味して5段階で評価した。得られたわらび餅は室温(約25℃)および冷蔵庫内(5℃)で保存し、製造直後および48時間後(室温および5℃)の食感および外観を評価した。食感は柔らかさや粘弾性等を総合し、また外観は表面の滑らかさ、透明感および離水の程度、白濁の程度を総合し、それぞれ5段階で評価した。評価は熟練したパネル5名で行い、各評点は5(非常に良好)、4(良好)、3(普通)、2(劣る)、1(非常に劣る)と表示した。
また得られたわらび餅の破断強度を、不動工業(株)製の物性試験機(商品名「レオメーター」型式NRM−2010J−CW)でテーブル速度30cm/minで球形(φ7mm)のアダプターを使用し、最高応力を測定し5回の平均値を表示した。
経時的数値変化が少ないことは、食感の経時劣化が少ないことを意味する。
タピオカ加工澱粉の加工処理方法、YA粘度保持指数、配合割合を表1および表2に、わらび餅の機械適性、食感と外観の経時変化を表3および表4に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
表1ないし表4から明らかなように、タピオカ加工澱粉を用いて製造した本発明のわらび餅は、試験区番号10〜29に示されるように、YA粘度保持指数が50〜150の範囲のものが、従来の甘藷澱粉を原料として製造したわらび餅(試験区番号1〜3)と比較して食感、外観とも優れ、経時劣化も極めて少ない。このうち、レオメーターによる破断強度の測定結果その他も併せて食感、外観、機械適性を総合判断すれば、特にYA粘度保持指数100〜150の範囲のものが、わらび餅の原料として最適である。糖類の使用量も軽減でき、また機械による製造にも適している。他方タピオカ澱粉を原料としない場合には、YA粘度保持指数が上記50〜150の範囲に属するものを原料として使用しても、試験区番号36〜40に示すように、本発明の方法で製造したわらび餅のような優れた物性の製品を得ることはできない。
【0031】
【発明の効果】
タピオカ澱粉を使用する本発明の方法を用いて製造したわらび餅は、老化の防止効果が顕著であり、長時間にわたって安定した品質の製品が得られる。従来経時劣化が著しかったわらび餅において、特にYA粘度保持指数が100〜150の前記タピオカ加工澱粉を原料粉全量の30重量%以上使用する本発明の製造方法により、食感、外観ともに優れ、糖類の使用量を減少させても経時劣化の極めて少ない製品を製造することができる。この効果は、わらび餅を冷蔵または冷凍して保存した場合でも顕著である。
さらに、本発明の製造方法は機械による大量生産に好適であり、本発明はこれらの効果を複合的に達成する。
Claims (1)
- YA粘度保持指数100〜150であるジエステル化タピオカ澱粉を原料粉全量の30重量%以上使用することを特徴とするわらび餅の製造方法。
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JP32588992A JP3632181B2 (ja) | 1992-10-23 | 1992-10-23 | わらび餅の製造方法 |
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JP32588992A Expired - Lifetime JP3632181B2 (ja) | 1992-10-23 | 1992-10-23 | わらび餅の製造方法 |
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1992
- 1992-10-23 JP JP32588992A patent/JP3632181B2/ja not_active Expired - Lifetime
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