JP3632095B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体に関するものであって、特に光ビームを照射することにより、記録材料の透過率、反射率等の光学的な変化を生じさせ、情報の記録、再生を行ない、且つ追記が可能な光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機色素薄膜を記録層とする記録媒体において、該有機色素薄膜にフタロシアニン化合物を使用したものが知られている。ただ、フタロシアニン化合物は熱、光に対する安定性が極めて高いため、情報記録感度が低く記録に時間を要している。また、有機溶剤等への溶解性に乏しく、従来は蒸着法でしか薄膜化はできず、生産性が悪いという難点があった。
【0003】
一方、最近では、高記録密度化を図るべく従来の光ディスクで使用されてきた波長域より短波長に発振波長(630〜720nm)を有する半導体レーザが実用化されはじめている。ところが、これまでデータ用追記光型ディスクとして、フタロシアニン化合物を記録材料として用いた数多くの提案がなされている(例えば、特開昭61−150243号、特開昭61−177287号、特開昭61−154888号、特開昭61−246091号、特開昭62−39286号、特開昭63−37791号、特開昭63−39888号各公報等がある)が、耐光性、保存安定性に優れ、且つ630〜720nmのレーザを用いた光ピックアップで記録、再生が可能な記録材料は、未だ開発されていないのが現状である。
【0004】
更に、基板上に、有機色素薄膜、金属反射層及び保護層を順次積層してなる追記コンパクトディスク型(CD−R)記録媒体においては、そのCD規格を満足するには高い反射率を必要とし、そのため再生波長域(770〜830nm)に高い屈折率を有し且つ安定性の高い有機色素材料の開発が必要である。CD−R記録媒体として、フタロシアニン化合物/金属反射層を記録材料として用いた数多くの提案がなされている(例えば、特開平1−176585号、特開平3−215466号、特開平4−113886号、特開平4−226390号、特開平5−1272号、特開平5−171052号、特開平5−116456号、特開平5−69860号、特開平5−139044号各公報等がある)が、上記のような点に関しては未だ不十分である。また、CD−R記録媒体は上記再生波長域に高い反射率が得られる様設定してあるため、700nm以下の波長域では反射率は極めて低く、レーザ波長の短波長化に対応できず、現在のCD−Rシステムで記録、再生している情報が、将来のシステムでは再生出来ない事態を招く。このような点に解決を与える記録材料は、未だ見出されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであって、記録感度を高め高速記録を実現するとともに、有機溶剤への溶解性を高め生産性の高い溶剤塗工可能なフタロシアニン化合物を記録材料とする、高密度記録が可能な630〜720nmのレーザを用いた光ピックアップに適用できる記録媒体を提供すること、及び安定性が高く770〜830nmに高い屈折率を有するフタロシアニン化合物を記録材料とする、保存安定性、再生安定性の高い高反射率のCD−Rメディアを提供すること、更には現状システムで記録・再生が可能で且つ次世代の高密度光ディスクシステムにおいても再生可能なCD−Rメディアを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するフタロシアニン化合物を主成分とする記録層を設けることにより、高密度記録が可能な630〜720nmの半導体レーザを用いる光ピックアップに適用可能なことを見出し、また本化合物を用いることにより、770〜830nmの波長域に高い反射率を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明によれば、第一に、基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、前記記録層中に下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする光記録媒体が提供される。
【化1】
〔式中、M及びR1〜R16はそれぞれ以下のものを表わす。
M:2個の水素原子又は2価の金属原子、
R1、R5、R9、R13:−Si(CH3)3基、
R2、R3、R4、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R14、R15、R16:それぞれ独立にメチル基又はエチル基。〕
第二に、前記一般式(I)において、その置換基の置換位置が1又は4であり、その他の置換基は水素原子又はハロゲン原子である上記第一に記載した光記録媒体が提供される。第三に、前記ハロゲン原子が臭素原子である上記第二に記載した光記録媒体が提供される。第四に、前記記録層が波長630〜720nmのレーザ光によって記録及び再生されるものである上記第一、第二又は第三に記載した光記録媒体が提供される。第五に、前記記録層が前記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種と680nm〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素とを含有してなることを特徴とする上記第一〜第四のいずれかに記載した光記録媒体が提供される。第六に、前記680nm〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素がペンタメチンのシアニン色素、フタロシアニン色素及びアゾ金属キレート色素の少なくとも1種である上記第五に記載した光記録媒体が提供される。第七に、前記記録層が波長770〜830nmのレーザ光によって記録及び再生されるものである上記第二、第三、第五又は第六に記載した光記録媒体が提供される。本発明の光記録媒体においては、必要に応じて、前記基板と前記記録層との間に下引き層、前記記録層上に保護層、また前記記録層と前記保護層との間に金属反射層を設けることができる。
【0008】
本発明で使用する前記一般式(I)で示される化合物は、有機溶剤への溶解性が高く、しかも波長630〜720nmに高い吸収能、光反射性を有し、630〜720nmの半導体レーザを用いたピックアップに適用できるため、該化合物を記録層に含有させた追記型光記録媒体は、現状の770〜830nm対応の記録媒体に比べ、1.6〜1.8倍の高密度化が可能になる。また、前記一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物は、770〜830nmに高い屈折率を示し且つ高い安定性を有するため、基板上に記録層、金属反射層、保護層を順次積層してなるCD−R記録媒体において、該化合物を含有する記録層を設けると、高反射率で保存安定性及び再生安定性に優れたものとなる。更に、別の態様では、前記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物と、680〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素との混合物からなる記録層を設けたことから、現状システムでのCD−R記録媒体として使用でき、しかも次世代の高密度光ディスクシステムとなっても、記載された情報を再生することが可能なものとなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の光記録媒体は、記録層中に前記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。まず、本発明で使用する前記一般式(I)で示される化合物について説明すると、前記一般式(I)において、Mは2個の水素原子又は2価の金属原子を表わす。R1、R5、R9、R13は、−Si(CH 3 ) 3 基を表し、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R14、R15、R16は、それぞれ独立にメチル基又はエチルを表わす。
【0010】
前記一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物において、[−O−C(H)(R1)−Si(R2)(R3)(R4)]等の置換基がなく水素原子である場合には、再生波長域に高い屈折率を得ることができず、また分解温度が高いため記録感度は低い。ところが、上記のような置換基を導入した場合には、再生波長域に高い屈折率が得られ、その分解温度(350℃以下)を下げることで記録感度は良好になる。しかし、この置換基中のR1、R5、R9、R13への炭素数5を越える直鎖アルキル基や分岐アルキル基を導入することは、化合物の合成を困難としその収率を著しく下げるため適さない。また、置換基中のR2、R3、R4、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R14、R15、R16への炭素数3を越えるアルキル基を導入した場合も、化合物の合成を困難としその収率を著しく下げるため適さない。従って、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R14、R15、R16は、メチル基若しくはエチル基が最適である。
なお、一般式(I)中、Mの具体例としては、水素原子や、Ca、Mg、Zu、Cu、Ni、Pd、Fe、Pb、Co、Pt、Cd、Ruなどの二価の金属が挙げられる。
【0011】
近年、α−テトラ置換フタロシアニンを用いて、これをCD−R記録媒体の記録層とすることが提案されている(特開平3−215466号、特開平5−17477号、特開平5−17700号、特開平5−25179号各公報等)。しかしながら、上記α−テトラ置換体は、合成時に以下に示す四つの異性体の混合物として得られる。
【0012】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0013】
上記四つの異性体は、少量を合成した場合には分取可能であるが、工業的に合成された場合、その分取にはかなりのコストがかかり、分取して使用するのは工業的に不利である。更に、上記(A)、(B)、(C)、(D)は非常に似た特性を示すが、少しずつ物性値が異なる。例えば、分光特性(λmax)も少しずつ異なり、ある波長での高吸収能、高反射率、高屈折率を実現させるには適さない。その上、(A)で示される異性体は四つの異性体のうちの主生成物の一つであるが、対称性が高く、溶解性に関して他の三つの異性体と比べて著るしく劣るものであって、本発明のように溶解塗工法などで記録層を形成するには不適当であり、なおかつ四つの異性体のうち著るしく分解温度が高く、記録層形成が可能であっても記録感度が低下するという問題点を有する。このことは、特開平7−89240号公報、特開平7−125441号公報記載のフタロシアニン化合物でも同じである。
【0014】
本発明は上記問題点について解決すべくなされたものであると言えるものであって、特に前記一般式(I)において、置換基中のR1、R5、R9、R13が−Si(CH3)3基で示されるフタロシアニン化合物は、四つの異性体全て溶解性が高く、溶解塗工法等で記録層を形成するにも適当であるため、分取して使用する必要がなく、経済的である。なおかつ、四つの異性体全て分解温度が低く記録感度が良好である。
【0015】
前記一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物の置換基の置換位置1、4をα位と呼ぶが、α位に[−O−C(H)(R1)−Si(R2)(R3)(R4)]等で示される置換基を導入した場合、その吸収極大波長(λmax)は無置換のフタロシアニン化合物に比べ長波長化し、λmaxが記録波長と一致する追記型光記録媒体、及び770〜830nmでの高屈折率化が計れるCD−R記録媒体が提供できるようになる。また、α位に置換基を導入すると、置換基はフタロシアニン平面の上下にはり出し、分子同士の会合を防ぎ、高屈折率化に寄与し、CD−R記録媒体の場合に特に適している。なお、フタロシアニン化合物の置換基の置換位置が1又は4である場合は、その他の置換基は水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(I)で表わされる化合物の具体例としては、例えば表1−(1)〜1−(2)に示されるものが挙げられる。なお、下記例示化合物には、異性体を含む場合もある。ただし、化合物No.19〜25は前記一般式(I)で表される化合物の例であるが、その他は参考化合物の例である。
【0017】
【表1−(1)】
【0018】
【表1−(2)】
【0019】
また、記録層においては、前記したように、前記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物と、680〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素との混合物を主成分とすることにより、現状システムで記録再生が可能であるとともに、次世代システムにおいても再生のみは可能なCD−R記録媒体となる。この場合の680〜750nmに最大吸収波長を有する色素としては、ペンタメチンのシアニン色素、フタロシアニン色素及びアゾ金属キレート色素が好ましい。
【0020】
ペンタメチンのシアニン色素の好ましい例としては、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
【化6】
式中、R21、R22は炭素数1〜3のアルキル基、R23、R24は炭素数1〜6の置換又は未置換のアルキル基、Xは酸アニオンを表わす。なお、芳香族環は他の芳香族環と縮合されていてもよく、また、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基又はアシル基で置換されていてもよい。
【0021】
フタロシアニン色素の好ましい例としては、下記一般式(III−1)若しくは(III−2)で示されるものが挙げられる。
【化7】
式中、M1はNi、Pd、Cu、Zn、Co、Mn、Fe、TiO又はVOを、X5〜X8はそれぞれ独立に置換位置α位の−OR又は−SRを、Rは置換されていてもよい炭素数3〜12の直鎖、分岐若しくは脂環式アルキル基又は同じく置換されていてもよいアリール基を表わす。X5〜X8以外のベンゼン環の置換基は水素原子又はハロゲン原子である。
【0022】
【化8】
式中、M2は、Si、Ge、In、又はSnを、X9〜X12はそれぞれ独立に置換位置α位の−OR又は−SRを、Rは置換されていてもよい炭素数3〜12の直鎖、分岐若しくは脂環式アルキル基又は同じく置換されていてもよいアリール基を、Y5、Y6は−OSiR25R26R27、−OCOR25R26R27、又は−OPOR25R26R27を表わし、R25〜R27はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基を表わす。X9〜X12以外のベンゼン環の置換基は、水素原子又はハロゲン原子である。
【0023】
また、アゾ金属キレート色素の好ましい例としては、下記一般式(IV)で示されるアゾ系化合物と金属とのアゾ金属キレート化合物の1種又は2種以上が挙げられ、、金属の好ましい例としては、Ni、Pt、Pd、Co、Cu、Znなどが挙げられる。
【化9】
式中、Aはそれが結合している炭素原子及び窒素原子と一緒になって複素環を形成する残基を表わし、Bはそれが結合している二つの炭素原子と一緒になって芳香環又は複素環を形成する残基を表わし、またXは活性水素を有する基を表わす。
【0024】
本発明の前記一般式(I)で示される少なくとも1種の色素と前記一般式(II)〜(IV)で示される少なくとも1種の色素とを併用する場合の重量組成比は、本発明色素/〔(II)〜(IV)の色素〕=10/100〜90/100、好ましくは40/100〜20/100である。また、両色素を併用した場合の記録層の膜厚は500Å〜5μm、好ましくは1000Å〜5000Åである。
【0025】
次に、本発明の記録媒体の構成について述べる。
図1は、本発明の記録媒体に適用し得る層構成例を示す図で、これは追記型光ディスクの例である。基板1の上に、必要に応じて下引き層3を介して、記録層2を設け、更に必要に応じ保護層4が設けられている。また、必要に応じて基板1の下にハードコート層を設けることができる。
図2は、本発明の記録媒体に適用し得る別のタイプの層構成例を示す図で、これはCD−Rメディアの例である。図1の構成の記録層2の上に反射層6が設けられている。
なお、本発明の記録媒体は、図1及び図2に示した構成の記録層(有機薄膜層)を内側にして、他の基板と空間を介して密封したエアーサンドイッチ構造にしてもよく、また保護層を介して接着した貼合せ構造にしてもよい。
【0026】
次に、構成各層の必要特性及びその構成材料について述べる。
1)基板
基板の必要特性としては、基板側より記録再生を行なう場合には使用レーザ光に対して透明でなければならないが、記録層側から記録再生を行なう場合は透明である必要はない。基板材料としては、例えばポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、ガラス、セラミックあるいは金属などを用いることができる。なお、基板の表面にトラッキング用の案内溝や案内ピット、更にアドレス信号などのプレフォーマットが形成されていてもよい。
【0027】
2)記録層
記録層はレーザ光の照射により何らかの光学的変化を生じさせその変化により情報を記録できるものであって、この記録層中には前記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種が含有されている必要がある。更に、これらの色素は光学特性、記録感度、信号特性の向上のため、他の有機色素及び金属、金属化合物と混合又は積層化して用いることも、もちろん可能である。この場合の他の有機色素としては、ポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、及び金属錯体化合物などが挙げられる。また金属、金属化合物例としては、In、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO2、SnO、As、Cdなどが挙げられ、それぞれを分散混合あるいは積層の形態で用いることができる。更に、上記染料中に高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の材料若しくはシランカップリング剤などを分散混合しても良いし、特性改良の目的で、安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などと一緒に用いることができる。
【0028】
記録層の形成は蒸着、スパッタリング、CVD又は溶剤塗布などの通常の手段によって行なうことができる。塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶剤に溶解して、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング又はスピンコーティングなどの慣用のコーティング法で行なうことができる。用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、あるいはメトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセルソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
記録層の膜厚は、100Å〜10μm、好ましくは200Å〜2000Åが適当である。
【0029】
3)下引き層
下引き層は、▲1▼接着性の向上、▲2▼水又はガスなどに対するバリヤー、▲3▼記録層の保存安定性の向上、▲4▼反射率の向上、▲5▼溶剤からの基板の保護、▲6▼案内溝、案内ピット、プレフォーマットの形成などを目的として使用される。▲1▼の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子化合物及びシランカップリング剤などを用いることができ、▲2▼及び▲3▼の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiNなどがあり、更に金属又は半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Alなどを用いることができる。また、▲4▼の目的に対しては、金属、例えばAl、Au、Agなどや、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料などを用いることができ、▲5▼及び▲6▼の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。下引き層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0030】
4)保護層、基板表面ハードコート層
保護層又は基板表面ハードコート層は、▲1▼記録層(反射吸収層)を傷、埃、汚れなどから保護する、▲2▼記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、▲3▼反射率の向上などを目的として使用される。これらの目的に対しては、前記の下引き層に示した材料を用いることができる。また、無機材料としてSiO、SiO2なども用いることもでき、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジンなどの熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。上記材料のうち最も好ましいものは、生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層又は基板表面ハードコート層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0031】
5)金属反射層
金属反射層は単体で高反射率の得られる腐食されにくい金属、半金属などが使用できる。材料例としては、Au、Ag、Al、Cr、Ni、Fe、Snなどが挙げられ、反射率、生産性の点からAu、Ag、Alが最も好ましい。これらの金属、半金属は単独で使用してもよく、2種以上の合金としてもよい。膜形成法としては蒸着、スパッタリングなどが挙げられ、膜厚としては50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åである。
【0032】
本発明において、前記の下引き層、保護層及び基板表面ハードコート層には記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを含有させることができる。
【0033】
【実施例】
以下実施例について本発明を説明するが、本発明これらに限定されるものではない。
【0034】
参考例1
厚さ1.2μmのポリメチルメタクリレート基板上にフォトポリマーにて、深さ1200Å、半値幅0.4μm、トラックピッチ1.4μmの案内溝を形成した基板上に、化合物具体例No.3のクロロホルム溶液をスピンナー塗布し、厚さ800Åの記録層を設けて記録媒体を得た。
【0035】
実施例1及び参考例2〜8
参考例1において、化合物具体例No.3の代わりに、化合物具体例No.5、No.8、No.12、No.14、No.16、No.20、No.25、No.27を用いたこと以外は、参考例1と同様にして実施例1及び参考例2〜8の記録媒体を得た。
【0036】
比較例1
参考例1において、化合物具体例No.3の代わりに下記式(V)で示される化合物を用いたこと以外は、参考例1と同様にして比較例1の記録媒体を得た。
【化10】
【0037】
前記の実施例1、参考例1〜8及び比較例1の記録媒体を用い、下記の記録条件で基板から光を入射して記録し、その後記録位置を再生光によりC/N比及び反射率を測定した。その結果を表2に示す。
記録条件:
レーザ発振波長 680nm
記録周波数 1.25MHz
記録線速 1.2m/sec
再生条件:
レーザ発振波長 680nm
再生パワー 0.25〜0.3mWの連続光
スキャニングバンド巾 30KHz
耐光テスト条件:
耐光テスト 4万Lux、Xe光、50時間連続照射
保存テスト 85℃、85%、720時間放置
【0038】
【表2】
【0039】
参考例9
深さ1000Å、半値幅0.45μm、トラックピッチ1.6μmの案内溝を有する厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に、化合物具体例No.2をメチルシクロヘキサン、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランの混合溶液に溶解した液をスピンナー塗布し、厚さ1800Åの記録層を形成し、次いでその上にスパッタ法により金2000Åの反射層を設け、更にその上にアクリル系フォトポリマーにて5μmの保護層を設け、記録媒体を得た。
【0040】
実施例2〜3、参考例10〜15
参考例9において、化合物具体例No.2の代わりにそれぞれ化合物具体例No.6、No.11、No.13、No.15、No.17、No.21、No.24、No.26を用いたこと以外は、参考例9と同様にして実施例2〜3及び参考例10〜15の記録媒体を得た。
【0041】
比較例2
参考例9において、化合物具体例No.2の代わりに比較例1で用いた前記式(II)で示される化合物を用いたこと以外は、参考例9と同様にして比較例2の記録媒体を得た。
【0042】
実施例2〜3、参考例9〜15及び比較例2の記録媒体に発振波長780nm、ビーム径1.4μmの半導体レーザ光を用い、トラッキングしながらEFM信号を記録し(線速1.4m/sec)、同じレーザの連続光で再生し、再生波形を観察した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
参考例16
深さ1000Å、半値幅0.45μm、トラックピッチ1.6μmの案内溝を有する厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に、下記の式(VI)で示される化合物と化合物具体例No.4とを、重量比(1/1)のメチルシクロヘキサン、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン混合溶媒に溶解し、スピンナー塗布して、厚さ1700Åの記録層を形成し、次いで、スパッタ法により金2000Åの反射層を形成して、更にその上にアクリル系フォトポリマーにて5μmの保護層を設け、記録媒体を得た。
【0045】
【化11】
【0046】
実施例4、参考例17〜18
参考例16において、化合物具体例No.4の代わりにそれぞれ化合物具体例No.7、No.10、No.22を用いたこと以外は、参考例16と同様にして実施例4及び参考例17〜18の記録媒体を得た。
【0047】
実施例5、参考例19〜20
参考例16において、化合物具体例No.4の代わりにそれぞれ化合物具体例No.9、No.18、No.23を用い、且つ前記式(VI)で示される化合物の代わりに下記式(VII)で示される化合物を用いたこと以外は、参考例16と同様にして実施例5及び参考例19〜20の記録媒体を得た。
【0048】
【化12】
【0049】
実施例6、参考例21〜22
参考例16において、化合物具体例No.4の代わりにそれぞれ化合物具体例No.1、No.19、No.28を用い、且つ前記式(VII)で示される化合物の代わりに下記式(VIII)で示される化合物を用いたこと以外は、参考例16と同様にして実施例6及び参考例21〜22の記録媒体を得た。
【0050】
【化13】
【0051】
比較例3〜5
参考例16において、記録層をそれぞれ前記一般式(VI)で示される化合物のみ、前記一般式(VII)で示される化合物のみ、前記一般式(VIII)で示される化合物のみとしたこと以外は、参考例16と同様にして比較例3〜5の記録媒体を得た。
【0052】
実施例4〜6、参考例16〜22及び比較例3〜5の記録媒体に発振波長780nm、ビーム径1.6μmの半導体レーザ光を用い、トラッキングしながらEFM信号を記録し(線速1.4m/sec)、前記レーザ及び発振波長680nm、ビーム径1.4μmの半導体レーザの連続光で再生し、再生波形を観察した。その結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】
請求項1の光記録媒体は、前記一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物を記録層中に含有してなるものとしたことから、波長630〜720nmに高い光吸収能と光反射性を有しているため、高密度記録が可能な630〜720nmの半導体レーザを用いたピックアップに適応でき、現状の770〜830nmの光記録媒体に比べ記録密度で1.6〜1.8倍の高密度化追記型記録媒体が提供でき、特に前記一般式(I)において、R 1 、R 5 、R 9 、R 13 が−Si(CH 3 ) 3 基であるフタロシアニン化合物を記録層に含有してなるものとしたことから、該化合物は四つの異性体全てが溶解性が高く且つ分解温度が低く、異性体の分取を必要としないので、生産性の高い高密度化高感度化記録媒体が提供できる。
【0057】
請求項2の光記録媒体は、前記一般式(I)において、その置換基の置換位置が1又は4であり、その他の置換基は水素原子又はハロゲン原子であるフタロシアニン化合物を記録層に含有してなるものとしたことから、波長の長波長化が計れ、吸収極大波長(λmax)が記録波長と一致する追記型記録媒体が提供できるし、また770〜830nmでの高屈折率化が計れるCD−R記録媒体が提供できる。
【0058】
請求項3の光記録媒体は、前記ハロゲン原子が臭素原子であるフタロシアニン化合物を記録層に含有してなるものとしたことから、更に波長の長波長化が容易になるという効果が加わる。
【0059】
請求項4の光記録媒体は、前記記録層が波長630〜720nmのレーザ光によって記録及び再生されるものであることから、現状の770〜830nmの光記録媒体に比べ記録密度で1.6〜1.8倍の高密度化追加型記録媒体が提供できる。
【0060】
請求項5の光記録媒体は、前記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種と680〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素とを記録層中に含有してなるものとしたことから、現状システムでのCD−Rとして使用でき、しかも次世代の高密度光ディスクシステムとなっても、記録された情報を再生することが可能になる。
【0061】
請求項6の光記録媒体は、680〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素として、ペンタメチンのシアニン色素、フタロシアニン色素及びアゾ金属キレート色素の少なくとも一種を選択したことから、高品位の信号特性が記録可能となる。
【0062】
請求項7の光記録媒体は、前記記録層が波長770〜830nmのレーザ光によって記録及び再生されるものであることから現行システムでの優れたCD−R記録媒体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録媒体に適用し得る通常の追記型光記録媒体としての層構成例を示す図である。
【図2】本発明の記録媒体に適用し得るCD−R用としての層構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層(有機色素層)
3 下引き層
4 保護層
5 ハードコート層
6 金属反射層
Claims (7)
- 基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、前記記録層中に下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする光記録媒体。
M:2個の水素原子又は2価の金属原子、
R1、R5、R9、R13:−Si(CH3)3基、
R2、R3、R4、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R14、R15、R16:それぞれ独立にメチル基又はエチル基。〕 - 前記一般式(I)において、その置換基の置換位置が1又は4であり、その他の置換基は水素原子又はハロゲン原子である請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記ハロゲン原子が臭素原子である請求項2に記載の光記録媒体。
- 前記記録層が波長630〜720nmのレーザ光によって記録及び再生されるものである請求項1、2又は3に記載の光記録媒体。
- 前記記録層が前記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種と680nm〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素とを含有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記680nm〜750nmに最大吸収波長を有する有機色素がペンタメチンのシアニン色素、フタロシアニン色素及びアゾ金属キレート色素の少なくとも1種である請求項5に記載の光記録媒体。
- 前記記録層が波長770〜830nmのレーザ光によって記録及び再生されるものである請求項5又は6に記載の光記録媒体。
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