JP3630529B2 - 非水電解液二次電池およびその電極板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に用いられる電極板の製造方法およびこれによって製造された電極板を用いた非水電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の発達に伴い、小型で軽量かつエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な二次電池の開発が要望されている。このような二次電池として、正極にLiCoO2 などのリチウム含有複酸化物を、負極に炭素材料をそれぞれ用いた円筒形リチウム二次電池が活発に研究開発されている。特に、この種の電池は非水電解液を用いるため、電流特性の観点から、電極板の表面積を大きくするため電極板をシート状に構成している。そしてこのシート状電極板を円筒状電池ケース内に収容率よく収容するため、そのシートを渦巻き状に巻回する構成が多く提案されている。このようなシート状電極板は、金属箔製の集電体の上に活物質粉末が分散した活物質ペーストを厚さ数十〜数百μm均一に塗布し、乾燥した後に、活物質の充填率を上げるため圧延されてなる。この活物質ペーストは、活物質粉末と結着剤などとを水または有機溶媒に配合、混練して得られる。
【0003】
円筒形電池の組立てにおいて、金属集電体の上に厚い活物質層が塗着されたシート状電極板を小さな曲率半径で曲げることになるので、金属集電体と活物質層間に大きなストレスが発生する。ここで、活物質層中の結着剤は、活物質同士を結着すると共に、金属集電体と活物質間を接着する役目を担っている。結着剤としては、一般にペースト状態が安定なポリ四フッ化エチレン樹脂ディスパージョンが用いられるが、金属集電体と活物質間の接着強度をより強くするには、それに代えてスチレンブタジエンゴムなどのゴム系の結着剤を主成分とした方がよいことが判っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの検討において、ゴム系の結着剤を主成分とした活物質ペーストでは、金属集電体の上に塗着された活物質ペーストの乾燥速度が適切でないと、金属集電体と活物質層間の接着強度が低下して、金属集電体から活物質層が脱落することがあるということが判った。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、集電体と活物質層間の接着強度に優れるゴム系の結着剤を用いつつ、その優れた接着強度を安定させることができる非水電解液二次電池の電極板の製造方法およびこれによって製造された電極板を用いた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の非水電解液二次電池の電極板の製造方法は、上記目的を達成するため、電極活物質粉末とゴム系結着剤と溶媒40〜70vol%とを混練した活物質ペーストを集電体に塗布した後、前記集電体に塗布された活物質ペーストをその溶媒量が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5〜2.5分間となるように水、N−メチルピロリドン、キシレン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、エタノール、メタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、塩化エチレンから選ばれた1種以上の溶媒の蒸発速度を制御しながら乾燥することを特徴とする。
【0007】
本発明の非水電解液二次電池の電極板の製造方法によれば、溶媒量が40〜70vol%の流動状態(ゾル状態)にある活物質ペーストは、集電体に塗布された後、その溶媒量が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5分間以上となるように活物質ペースト層表面からの溶媒の蒸発速度が制限されるので、活物質ペースト層中の溶媒量の均一化が維持されて結着剤の分布の均一化が維持されるし、前記の時間が2.5分間以下となるように活物質ペーストが流動状態にある時間が制限されるので、活物質層中で活物質と結着剤とが重力差などで分離することなく結着剤の分布の均一化が維持される。そして、集電体に塗布された活物質ペーストの溶媒量が35vol%まで減少すると、その活物質ペーストが非流動状態(ゲル状態)になるので、その後の溶媒の蒸発速度の大小に係わらず活物質ペースト層中の結着剤の移動は生じなくなる。従って、活物質層の集電体表面近傍の結着剤の量や分布が均一となるので、集電体と活物質層間の接着強度に優れるゴム系の結着剤を用いつつ、その優れた接着強度を安定させることができる。
【0008】
活物質層が流動状態にある時間が0.5分間より短いと、活物質層中の結着剤が雰囲気側に移動するマイグレーションが発生して、集電体側の結着剤が不足する結果、集電体と活物質層間の接着強度が低下し好ましくなく、前記時間が2.5分間より長いと、活物質層中で活物質と結着剤とが重力差などで徐々に分離して結着剤の分布が不均一になる結果、結着剤が不足した部分の集電体と活物質層間の接着強度が低下し好ましくない。なお、活物質ペーストの当初の溶媒量が40vol%に満たないと、活物質ペーストの流動性が小さすぎて塗布が困難となり好ましくなく、前記溶媒量が70vol%を越えると、流動性が大きすぎて均一な厚さでの塗布が困難となり好ましくない。
【0009】
本発明の非水電解液二次電池は、前記本発明の電極板の製造方法により製造された正極板または負極板を用い、正極板と負極板とがセパレータを介して渦巻き状に巻回されて円筒状の電池ケースに組み込まれていることを特徴とする。
【0010】
本発明の非水電解液二次電池によれば、前記本発明の電極板の製造方法による正極板または負極板は、集電体と活物質層間の接着強度が強く安定しているので、小さな曲率半径で曲げられても、活物質層が剥離することがない。従って、正極板と負極板とを、セパレータを介して渦巻き状に巻回して円筒状の電池ケース内に空間利用効率よく組み込むことができる。また、円筒状電池ケースの中心軸近傍の空間にも電極を配することができるので、特に直径の小さな円筒形の非水電解液二次電池において有用である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0012】
本発明の非水電解液二次電池の電極板の製造方法の一実施形態は、活物質ペーストを得る第1工程と、活物質ペーストを集電体に塗布する第2工程と、集電体に塗布された活物質ペーストをその溶媒量が35vol%以下になるまで乾燥する第3工程と、前記の活物質ペーストをほぼ完全に乾燥する第4工程と、乾燥して得られたものを圧延・裁断して電極板を得る第5工程とからなる。前記の第2〜第4工程は、図1に示す製造装置にて行われる。
【0013】
先ず、製造装置は、図1に示すように、テープ状の集電体12(13)を繰出す繰出し機14と、走行している集電体12(13)を弛まないように支持する4つのローラ15と、走行している集電体12(13)に活物質ペーストを塗布する活物質コーター16と、活物質コーター16の走行方向下流に配され槽内の雰囲気の温度と湿度とを制御する恒温恒湿槽17と、恒温恒湿槽17の走行方向下流に配され集電体12(13)に塗布された活物質ペーストをほぼ完全に乾燥する乾燥炉18と、ほぼ完全に乾燥された集電体12(13)を走行速度可変に巻取る巻取り機19とを備えている。
【0014】
恒温恒湿槽17は、前記第3工程に用いられるもので、集電体12(13)の走行方向長さが500mmある槽内の雰囲気の温度と湿度とを制御することによって、集電体12(13)に塗布された活物質ペーストをその溶媒の蒸発速度を制御しながら乾燥するように構成されている。また、乾燥炉18は、前記第4工程に用いられるもので、加熱ヒータとファンとを内蔵している。
【0015】
第1工程は、正極活物質ペーストおよび負極活物質ペーストそれぞれを得る工程である。
【0016】
正極活物質ペーストは、正極活物質としてLiCoO2 粉末を55wt%と、導電材としてカーボンブラックを1.5wt%、結着剤としてスチレンブタジエンゴム3.0wt%と、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロースを0.5wt%、ペースト溶媒として水を40wt%、配合して混練して得た。得られた正極活物質ペーストの水分は体積率で64vol%であった。正極活物質は、LiCoO2 の他に、例えばLiNiO2 、LiMn2 O4 でもよい。
【0017】
負極活物質ペーストは、負極活物質として黒鉛粉末を53wt%、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを6.0wt%、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロースを1.0wt%、ペースト溶媒として水を40wt%、配合し混練して得た。得られた負極活物質ペーストの水分は体積率で53vol%であった。負極活物質は、002面の格子面間隔が3.35〜3.80Åの炭素材粉末が好ましく、前記黒鉛粉末の他に、例えば石油コークス、クレゾール樹脂焼成炭素粉末、フラン樹脂焼成炭素粉末、ポリアクリロニトリル樹脂焼成炭素粉末、気相成長炭素粉末、メソフェーズピッチ焼成炭素粉末でもよい。
【0018】
第2工程では、厚さ20μmのAl箔製の集電体12に正極活物質ペーストを、厚さ16μmのCu箔製の集電体13に負極活物質ペーストを、それぞれ厚さ約150μm均一に連続塗布した。集電体12(13)の走行速度は、巻取り機19にて200〜1000mm/分の範囲で設定した。活物質コーター16は、前記に設定された走行速度に対応して活物質の吐出速度を制御して、一定の塗布厚さ約150μmを確保するように構成されている。
【0019】
第3工程では、恒温恒湿槽17の槽内雰囲気の温度と湿度とを制御して、集電体12(13)に塗布された活物質ペーストを、その水分量(溶媒量)が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5〜2.5分間となるように、水分の蒸発速度を可変制御しながら乾燥した。具体的には、負極集電体13の実施例1、2および3それぞれの走行速度1000、500および200mm/分間に対応して、長さ500mmの恒温恒湿槽17内を通過した直後の水分量が35±1vol%となるように槽内雰囲気の温度と湿度とを可変制御した。表1に示すように、実施例1、2および3では、前記の時間をそれぞれ0.5、1.0および2.5分間とした。なお、正極集電体12における前記の時間は、一定の1.0分間とした。
【0020】
第4工程では、乾燥炉18の炉内温度を約150℃に設定して、集電体12(13)に塗布され第3工程で約35vol%まで乾燥された活物質ペーストの水分をほぼ完全に除去し、自然に冷却して巻取り機19に巻き取った。
【0021】
第5工程では、乾燥して得られたものを活物質の充填密度を上げるために圧延し、最後に電池一個分に使用する寸法に裁断して正極板、負極板それぞれの電極板が得られた。
【0022】
【表1】
【0023】
このようにして得られた負極板の実施例1〜3の活物質層の接着強度を連続荷重式引掻強度試験機(JISK6718)を用いた引掻強度で評価した。この試験は、幅5mmの引掻刃を活物質層の上面に垂直に押圧しながら引掻速度600mm/分で引掻いて剥離の有無を判定するもので、試料に印加する荷重を段階的に増加させて印加し、活物質層の剥離が発生したときの最低荷重がその試料の引掻強度となる。評価結果を比較例1、2と共に、表1にまとめた。
【0024】
表1に示すように、負極板は、集電体13に塗布された活物質ペーストをその水分量が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5〜2.5分間の範囲において、活物質層の集電体13との接着強度が強く安定していることが判る。
【0025】
また、前記時間が0.3分間の比較例1や前記時間が4.0分間の比較例2のものは、共に接着強度が低下している。
【0026】
本発明の非水電解液二次電池の一実施形態は、前記実施形態による正極板および負極板を用いたもので、図2に示すような直径17mm、長さ50mmの円筒型リチウム二次電池であり、極板群と、電解液と、これらを収容する電池ケースとからなる。
【0027】
極板群は、シート状の正極板1と、シート状の負極板3と、正極板1と負極板3間を絶縁するシート状のセパレータ5と、正極リード2と、負極リード4と、上部絶縁板6と、下部絶縁板7とからなる。これら正極板1と負極板3とが、多孔質ポリプロピレンフィルム製のセパレータ5を介して重ねられ、渦巻き状に巻回されて、円筒型の電池ケース内にきっちりと収容されている。特に、負極板3は上記実施例2のものである。
【0028】
電解液は、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとプロピオン酸メチルとの等体積混合有機溶媒にLiPF6 を1.5mol/literの濃度に溶解した非水電解液からなる。この非水電解液は、電池ケース内に収容され、正極活物質層および負極活物質層中の連続した空隙中にも充填されて、電池反応において、多孔質なセパレータ5の微小孔を通しての正極板1と負極板3間のLiイオンの移動を担う。
【0029】
電池ケースは、耐有機電解液性のステンレス鋼板を深絞り成形して得たケース本体8と、安全弁11を設けた封口板10と、正極外部端子となる封口板10と負極外部端子となるケース本体8との間を絶縁しガスシールする絶縁ガスケット9とからなる。
【0030】
この円筒型リチウム二次電池によれば、正極板と負極板とを小さな曲率半径で曲げても活物質層が剥離することなく、正極板と負極板とをセパレータを介して渦巻き状に巻回して円筒状の電池ケース内に空間利用効率よく組み込むことができた。
【0031】
上記実施形態では、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを用いたが、本発明はこれに限定されず、他のゴム系結着剤、例えばイソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムでもよい。
【0032】
また上記実施形態では、ペースト溶媒として水を用いたが、本発明はこれに限定されず、適当な蒸気圧を有する一般的な有機溶媒、例えばN−メチルピロリドン、キシレン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、エタノール、メタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、塩化エチレンでもよい。
【0033】
円筒型リチウム二次電池の上記実施形態では、正極板および負極板共に、前記本発明の電極板の製造方法を適用したが、正極板または負極板のうち集電体と活物質層間の接着強度の弱い方の極板にのみ前記本発明の電極板の製造方法を適用しても、大きな効果を得られる。
【0034】
また上記実施形態では、正極活物質および負極活物質がLiを可逆的に吸蔵、放出する電極板の製造方法とこれによる電極板を用いたリチウム二次電池について述べたが、Liの代わりにH、NaまたはKを可逆的に吸蔵、放出する電極板の製造方法とこれによる電極板を用いた非水溶液二次電池にも適用できる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の非水電解液二次電池の電極板の製造方法によれば、溶媒量が40〜70vol%の流動状態(ゾル状態)にある活物質ペーストは、集電体に塗布された後、その溶媒量が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5分間以上となるように活物質ペースト層表面からの溶媒の蒸発速度が制限されるので、活物質ペースト層中の溶媒量の均一化が維持されて結着剤の分布の均一化が維持されるし、前記の時間が2.5分間以下となるように活物質ペーストが流動状態にある時間が制限されるので、活物質層中で活物質と結着剤とが重力差などで分離することなく結着剤の分布の均一化が維持される。そして、集電体に塗布された活物質ペーストの溶媒量が35vol%まで減少すると、その活物質ペーストが非流動状態(ゲル状態)になるので、その後の溶媒の蒸発速度の大小に係わらず活物質ペースト層中の結着剤の移動は生じなくなる。従って、活物質層の集電体表面近傍の結着剤の量や分布が均一となるので、集電体と活物質層間の接着強度に優れるゴム系の結着剤を用いつつ、その優れた接着強度を安定させることができる。
【0036】
本発明の非水電解液二次電池によれば、前記本発明の電極板の製造方法による正極板または負極板は、集電体と活物質層間の接着強度が強く安定しているので、小さな曲率半径で曲げられても、活物質層が剥離することがない。従って、正極板と負極板とを、セパレータを介して渦巻き状に巻回して円筒状の電池ケース内に空間利用効率よく組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極板の製造方法の一実施形態を示す概念図。
【図2】本発明の非水電解液二次電池の一実施形態を示す概略断面図。
【符号の説明】
1 正極板
3 負極板
Claims (2)
- 電極活物質粉末とゴム系結着剤と溶媒40〜70vol%とを混練した活物質ペーストを集電体に塗布した後、前記集電体に塗布された活物質ペーストをその溶媒量が35vol%まで減少するのに要する時間が0.5〜2.5分間となるように水、N−メチルピロリドン、キシレン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、エタノール、メタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、塩化エチレンから選ばれた1種以上の溶媒の蒸発速度を制御しながら乾燥することを特徴とする非水電解液二次電池の電極板の製造方法。
- 請求項1記載の非水電解液二次電池の電極板の製造方法により製造された正極板または負極板を用い、正極板と負極板とがセパレータを介して渦巻き状に巻回されて円筒状の電池ケースに組み込まれていることを特徴とする非水電解液二次電池。
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