JP2018028962A - 円筒形電池 - Google Patents

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雄史 山上
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Abstract

【課題】電極体の座屈及び絶縁板の破損を抑制することである。【解決手段】本開示の一態様である円筒形電池10は、電極体13を収容する有底筒状の電池ケース本体11と、電池ケース本体11の開口部を塞ぐ封口体12と、電池ケース本体11の側面部を外側から内側に押し出して形成され、開口部側に向いた上面に封口体12が載せられる凸部21と、電極体13と凸部21との間に配置される絶縁板19とを備える。絶縁板19は、繊維強化フェノール樹脂を主成分として構成され、凸部21は、絶縁板側に向いた下面側の根元部分が絶縁板19と接触し、凸部21の下面は、根本部分から離れるほど絶縁板19の上面との間隔が大きくなるように上方に向かって傾斜している。【選択図】図1

Description

本開示は、円筒形電池に関し、より詳しくは円筒形非水電解質二次電池に関する。
特許文献1には、絶縁板によりガス排出経路が塞がれることを防止すべく、電池ケース本体の開口部から電極体の上端部までの間に内側且つ下方に窪んだ凹部を形成して絶縁板を押えることが開示されている。図3の拡大図に示すように、かかる凹部は電池ケース本体の側面部を外側から内側に押し出して形成され、凹部が形成された部分を電池ケース本体100の内側から見ると凸部101が存在する。凸部101はガスケット102を介して封口体103を支持しており、その下面101bが根本部分101dから離れるほど絶縁板104に近づくように下方に向かって傾斜している。そして、凸部101は絶縁板104の上面104aに接触して絶縁板104を上から押え付けている。
特開2013−69597号公報
ところで、特に容量が大きな電池、例えば負極活物質にケイ素(Si)を含有する材料が用いられる場合は、充放電による電極体の膨張率が大きくなる。したがって、従来構造のように凸部で絶縁板を強く拘束すると、絶縁板と接する電極体の上端部が座屈する場合があり、内部短絡による発熱等が発生する恐れがある。高容量の電池では、高強度で耐熱性が高い繊維強化フェノール樹脂からなる絶縁板を用いることが好ましいが、かかる絶縁板を凸部で強く拘束すると、電極体の座屈が発生し易くなる。また、繊維強化フェノール樹脂製の絶縁板は、大きな負荷がかかると破損する場合があり、例えば絶縁板の割れにより発生した微粉が電極体に混入して電池性能に悪影響を与える可能性がある。
本開示の一態様である円筒形電池は、電極体を収容する有底筒状の電池ケース本体と、電池ケース本体の開口部を塞ぐ封口体と、電池ケース本体の側面部を外側から内側に押し出して形成され、開口部側に向いた上面に前記封口体が載せられる凸部と、電極体と凸部との間に配置される絶縁板とを備え、絶縁板は、繊維強化フェノール樹脂を主成分として構成され、凸部は、絶縁板側に向いた下面側の根元部分が絶縁板と接触し、凸部の下面は、当該根本部分から離れるほど絶縁板の上面との間隔が大きくなるように上方に向かって傾斜していることを特徴とする。
本開示の一態様である円筒形電池によれば、充放電時における電極体の体積変化が大きな場合であっても、電極体の座屈及び絶縁板の破損を十分に抑制することができる。
実施形態の一例である円筒形電池の断面図である。 図1のA部拡大図である。 従来の円筒形電池の断面図であって、図2に対応する図である。
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例について詳細に説明する。
実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。なお、説明の便宜上、方向を示す用語として「上下」を使用し、封口体側を「上」、電池ケース本体の底面部側を「下」とする。
図1は、実施形態の一例である円筒形電池10の断面図である。
図1に例示するように、円筒形電池10は、有底筒状の電池ケース本体11と、電池ケース本体11の開口部を塞ぐ封口体12とを備える。電池ケース本体11及び封口体12により、電池内部を密閉する電池ケースが構成される。円筒形電池10は、電池ケース本体11の側面部11aを外側から内側に押し出して形成された凸部21を備える。そして、電池ケース本体11の開口部側に向いた凸部21の上面21aに封口体12が載せられている。本実施形態では、電池ケース本体11と封口体12との間にガスケット22が設けられ、電池ケース内部の密閉性が確保されている。凸部21はガスケット22を介して封口体12を支持している。
円筒形電池10は、電池ケース本体11内に収容される電極体13及び電解質を備える。電極体13は、例えば正極14と負極15がセパレータ16を介して巻回されてなる巻回型構造を有する。正極14には正極リード17が、負極15には負極リード18がそれぞれ取り付けられている。円筒形電池10は、電極体13と封口体12との間、より詳しくは電極体13と凸部21との間に配置される上部絶縁板19を備える。また、電極体13と電池ケース本体11の底面部11bとの間にも下部絶縁板20が設けられる。図1に示す例では、正極リード17が上部絶縁板19の貫通孔19cを通って封口体12側に延び、負極リード18が下部絶縁板20の外側を通って電池ケース本体11の底面部11b側に延びている。
円筒形電池10は、例えば体積エネルギー密度が650Wh/L以上である。このような高いエネルギー密度の電池においては、充放電時における電極体13の体積変化が大きく、本開示の効果が顕著に発現する。詳しくは後述するように、円筒形電池10は、正極活物質にリチウム含有遷移金属酸化物を、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料を、電解質に非水系電解質をそれぞれ用いた非水電解質二次電池であることが好ましい。
正極14は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極14の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。正極14は、例えば正極集電体上に正極活物質、結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合材層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
正極活物質には、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好適である。リチウム含有遷移金属酸化物は、Liを除く金属元素の総量に対するNiの含有量が80mol%以上であることが好ましい。好適なリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、放電状態又は未反応状態において、一般式LiaNix1-x2(0.9≦a≦1.2、0.8≦x<1、MはCo、Mn、Alからなる群より選択される少なくとも1種の元素)で表される複合酸化物が挙げられる。これらの中でも、Ni−Co−Mn系のリチウム含有遷移金属酸化物は、出力特性に加え回生特性にも優れること等から好適であり、Ni−Co−Al系のリチウム含有遷移金属酸化物は、高容量且つ出力特性に優れるためさらに好適である。なお、金属元素Mとして、例えばニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)以外の遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第12族元素、アルミニウム(Al)以外の第13族元素、及び第14族元素が含有されていてもよい。
導電材は、正極合材層の電気伝導性を高めるために用いられる。導電材の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
結着材は、正極活物質及び導電材間の良好な接触状態を維持し、且つ正極集電体表面に対する正極活物質等の結着性を高めるために用いられる。結着材の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩(CMC−Na、CMC−K、CMC-NH4等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
負極15は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とで構成される。負極集電体には、銅などの負極15の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質の他に、結着材を含むことが好適である。負極15は、例えば負極集電体上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
負極活物質には、リチウムイオンの挿入脱離が可能な材料が用いられ、ケイ素及び/又はケイ素化合物を含有する材料を用いることが好ましく、ケイ素及び/又はケイ素化合物を含有する材料と黒鉛等の炭素材料を併用することが特に好ましい。ケイ素及び/又はケイ素化合物は、黒鉛などの炭素材料と比べてより多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、負極活物質に適用することで電池の高容量化を図ることができる。
ケイ素化合物は、SiOx(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物の粒子であることが好ましい。また、ケイ素化合物は表面が炭素を含む材料で被覆されていることがさらに好ましい。この炭素被膜は、主に非晶質炭素から構成されることが好ましい。非晶質炭素を用いることで、ケイ素化合物表面に良好且つ均一な被膜を形成することが可能となり、ケイ素化合物へのリチウムイオンの拡散をより促進させることが可能となる。上記炭素材料とケイ素化合物との質量比は、99:1〜70:30であることが好ましく、97:3〜90:10であることがより好ましい。
結着材としては、正極14の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて負極合材スラリーを調製する場合は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA−Na、PAA−K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
セパレータ16には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ16の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ16は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
高温条件下での放電時の正極14の発熱によるセパレータ16の劣化抑制を考慮すると、正極14と対向するセパレータ16の表面に耐熱層が形成されていることが好ましい。耐熱層は、例えばエンジニアプラスチック等の耐熱性に優れた樹脂、セラミックス等の無機化合物などで構成される。具体例としては、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド(アラミド)等のポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド樹脂などが挙げられる。無機化合物の例としては、金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。中でもアルミナ、チタニア、及びベーマイトが好ましく、アルミナ及びベーマイトがさらに好ましい。なお、2種以上の無機粒子を用いてもよい。例えば、微少な短絡が生じた場合、短絡電流が流れて熱が発生するが、耐熱層を設けることでセパレータ16の耐熱性が改善され、熱によるセパレータ16の溶融を軽減することができる。
電解質は、例えば非水系溶媒と、非水系溶媒に溶解した電解質塩とを含む非水電解質である。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
非水系溶媒としては、例えば鎖状カーボネート、環状カーボネートなどが用いられる。鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが例示できる。環状カーボネートの例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)などが例示できる。特に、低粘度、低融点でリチウムイオン伝導度の高い非水系溶媒として鎖状カーボネートと環状カーボネートの混合溶媒を用いることが好適である。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状カーボネートを用いることもできる。
出力向上を目的として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物などを上記の溶媒を添加することができる。また、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどを用いることもできる。
サイクル性向上を目的として、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物などを上記の溶媒に添加することができる。
また、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物などを上記の溶媒に添加することもできる。これらの水素原子の一部がフッ素原子により置換された溶媒を用いることもできる。
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiC(C25SO2)、LiCF3CO2、Li(P(C24)F4)、Li(P(C24)F2)、LiPF6-x(Cn2n+1x(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li247、Li(B(C24)2)[リチウム−ビスオキサレートボレート(LiBOB)]、Li(B(C24)F2)等のホウ酸塩類、LiN(FSO22、LiN(C12l+1SO2)(Cm2m+1SO2){l,mは1以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、少なくともフッ素含有リチウム塩を用いることが好ましく、例えばLiPF6を用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、非水溶媒1L当り0.8mol〜1.8molとすることが好ましい。
上部絶縁板19は、上記のように電極体13と凸部21との間に設けられる。詳しくは後述するように、上部絶縁板19の角部が凸部21の根本部分21dに接触して押えられることで、上部絶縁板19の封口体12側への移動が防止されている。電極体13は上部絶縁板19の下面19bと接触しており、上部絶縁板19は凸部21の根本部分21dと電極体13により上下から挟まれている。換言すると、凸部21と接触する上部絶縁板19は、電極体13を上から押えており、下部絶縁板20と共に電極体13を挟持している。
上部絶縁板19は、繊維強化フェノール樹脂を主成分として構成される。繊維強化フェノール樹脂を主成分とすることにより、高強度で耐熱性が高い絶縁板が得られる。繊維強化フェノール樹脂は、上部絶縁板19の総重量に対して、少なくとも50重量%以上、好ましくは80重量%以上であり、上部絶縁板19は繊維強化フェノール樹脂のみで構成されていてもよい。なお、上部絶縁板19は、例えばシリカ、クレイ、マイカなど繊維以外の補強材、またフェノール樹脂以外の耐熱性の高い樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等)を含有していてもよい。上部絶縁板19に含まれる繊維としては、ボロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等が例示できる。特にガラス繊維が好ましく、好適な構成材料の一例は、ガラス繊維強化フェノール樹脂(ガラスフェノール)である。
上部絶縁板19の厚みは、0.1mm〜1mmが好ましく、0.1mm〜0.6mmが特に好ましい。上部絶縁板19は、正極リード17を通すため、また発電要素で発生するガスを通すために、貫通孔を有することが好適である。貫通孔の形状、寸法等は、特に限定されず、例えば正極リード17の配置に応じて適宜変更できる。なお、下部絶縁板20についても、上部絶縁板19と同様の絶縁板を用いることができる。
以下、図2(図1のA部拡大図)を適宜参照しながら、特に封口体12及び封口体12を支持する凸部21について詳説する。
電池ケース本体11は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。本実施形態では、負極リード18が電池ケース本体11の底面部11bの内面に溶接等で接続されており、電池ケース本体11が負極端子となる。正極リード17は、封口体12の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続されており、フィルタ23と電気的に接続された封口体12の天板であるキャップ27が正極端子となる。本実施形態では、封口体12に電流遮断機構(CID)及びガス排出機構(安全弁)が設けられている。なお、電池ケース本体11の底面部11bにも、ガス排出弁(図示せず)を設けることが好適である。
封口体12は、正極リード17が接続される底板であるフィルタ23と、フィルタ23上に配置される弁体とを有する。弁体は、フィルタ23のフィルタ開口部23aを塞いでおり、内部短絡等による発熱で電池内圧が上昇した場合に破断する。本実施形態では、弁体として、下弁体24及び上弁体26が設けられている。封口体12は、下弁体24と上弁体26の間に配置される絶縁部材25と、キャップ開口部27aが形成されたキャップ27とをさらに有する。図1に示す例では、下から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27を重ね合わせて封口体12が構成されている。
封口体12を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。具体的には、フィルタ23と下弁体24が各々の周縁部で互いに接合され、上弁体26とキャップ27も各々の周縁部で互いに接合されている。下弁体24と上弁体26は、各々の中央部で互いに接続され、各周縁部の間には絶縁部材25が介在している。なお、内部短絡等による発熱で内圧が上昇すると、例えば下弁体24が薄肉部で破断し、これにより上弁体26がキャップ27側に膨れて下弁体24から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。
円筒形電池10は、電池ケース本体11の側面部11aを外側から内側に押し出して形成され、電池ケース本体11の開口側に向いた上面21aに封口体12が載せられる凸部21を備える。凸部21は、電池ケース本体11の上部に形成され、電池ケース本体11の内面の一部が内側に張り出した部分である。封口体12と凸部21の間には、上記のようにガスケット22が設けられており、凸部21はガスケット22を介して封口体12を支持している。凸部21は、電池ケース本体11の周方向に沿って環状に形成されることが好ましい。電池ケース本体11の側面部11aを外側から見ると、凸部21が形成された部分には側面部11aの周方向に沿って環状の凹部(溝)が存在する。
図2に示すように、凸部21は、上部絶縁板19側に向いた下面21b側の根元部分21dが上部絶縁板19と接触している。根本部分21dとは、側面部11aの上下方向に沿った部分と電池内部側に突出する凸部21との境界位置及びその近傍であって、換言すると凸部21の下端部である。凸部21の下面21bは、上部絶縁板19と接触する根元部分21dから離れるほど上部絶縁板19の上面19aとの間隔が大きくなるように上方に向かって傾斜している。即ち、凸部21の下面21bは、上部絶縁板19の上面19aと平行になる部分を有さず、また図3に示す凸部と異なり、最も電池ケース本体11の内側に張り出した部分である凸部21の頂部21cに近づくほど封口体12側に位置する。そして、頂部21cの近傍は上部絶縁板19と接触していない。なお、凸部21が形成された部分の側面部11aの外側には、上記のように凹部(溝)が存在する。したがって、側面部11aの外側に形成される凹部は、内側且つ上方に窪んでいると言える。
凸部21は、頂部21cの近傍だけでなく、根本部分21d以外の部分が上部絶縁板19と接触しないことが好適である。凸部21は、下面21bが根本部分21dから上方に向かって傾斜しているため、根本部分21dのみで上部絶縁板19と接触し当該絶縁板を押えることができる。根本部分21dには、例えば上部絶縁板19の角部が接触する。即ち、凸部21の場合は、従来構造と比較して上部絶縁板19の上面19aとの接触面積が小さい。但し、上部絶縁体19は凸部21の根元部分21dで上から押えられているため、上部絶縁板19及び電極体13の封口体12側への移動は防止されている。
凸部21の下面21bの傾斜角度は、例えば根本部分21d以外の部分が上部絶縁板19と接触せず上部絶縁板19の移動を拘束可能な範囲であれば特に限定されないが、好ましくは接線αと上部絶縁板19の上面19aとがなす角度θが5°〜45°である。接線αは、根本部分21d(側面部11aの上下方向に沿った部分と凸部21との境界位置)を通り頂部21c側に延びる下面21bの接線である。角度θが当該範囲内であれば、上部絶縁板19及び電極体13の封口体12側への移動を防止しながら凸部21と上部絶縁板19との接触点を小さくすることができる。なお、凸部21の上面21aは、封口体12の底板と平行であってもよく、下方に向かって傾斜していてもよい。
上述のように、凸部21の下面21bを上方に傾斜させることによって、上部絶縁板19及び電極体13の封口体12側への移動を防止しながら凸部21と上部絶縁板19との接触点を小さくすることができる。これにより、充放電時における電極体13の体積変化が大きな場合、例えば負極活物質にケイ素を含有する材料を用いた場合であっても、上部絶縁板19の破損及び電極体13の座屈を十分に抑制することができる。つまり、上部絶縁板19の上面19aと凸部21との接触点を減らし、荷重に比較的強い上部絶縁板19の角部と凸部21を接触させることで、上部絶縁板19の割れ等を抑制することができる。また、上部絶縁板19は高強度で撓み難い材料である繊維強化フェノール樹脂で構成されるが、当該絶縁板は全く撓まないわけではなく、電極体13の膨張により上部絶縁板19が僅かに撓むことで、電極体13の座屈が抑制されると考えられる。凸部21の下面21bを上方に傾斜させることで、上部絶縁板19及び電極体13の封口体12側への移動を防止しながら、かかる上部絶縁板19の僅かな撓みを許容することができ、電極体13の座屈を抑制することが可能となる。
実験例
以下、実験例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実験例に限定されるものではない。
<実験例1>
[正極の作製]
正極活物質としてLiNi0.88Co0.09Al0.032で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を100質量部と、アセチレンブラック(AB)を1質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1質量部とを混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、当該正極合材スラリーを、厚みが13μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて正極合材密度が3.6g/ccとなるように圧延して、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。
[負極の作製]
負極活物質として黒鉛粉末を93質量部、及び粒子表面が炭素被覆された酸化ケイ素(SiO)を7質量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)を1質量部とを混合し、さらに水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、当該負極合材スラリーを、厚みが6μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて合材密度が1.65g/ccとなるように圧延して、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを、20:75:5の体積比で混合した。当該混合溶媒に1.4mol/Lの濃度になるようにLiPF6を溶解させて、非水電解液を調製した。
[電池の作製]
上記正極にアルミニウムリードを、上記負極にニッケルリードをそれぞれ取り付け、セパレータを介して正極及び負極を渦巻き状に巻回することにより巻回型の電極体を作製した。セパレータには、ポリエチレン製の微多孔膜の片面にポリアミドとアルミナのフィラーを分散させた耐熱層を形成したものを用いた。当該電極体を、外径18.2mm、高さ65mmの有底円筒形状の電池ケース本体に収容し、上記非水電解液を注入した後、ガスケット及び封口体により電池ケース本体の開口部を封口して18650型、体積エネルギー密度が730Wh/Lの円筒形非水電解質二次電池A1を作製した。
電池A1は、図1及び図2に示す構造を有する。電池A1の電池ケース本体の側面部には、下面が根本部分から離れるほど上部絶縁板19の上面19aとの間隔が大きくなるように上方に向かって傾斜した凸部21が形成されている。凸部21の下面の傾斜角度(角度θ)は20°であり、頂部21cの内径は14.5mmであった。上部絶縁板19には、ガラス繊維強化フェノール樹脂で構成された、外径17.2mm、厚み0.3mmの円形状の平板を用い、貫通孔19cの開口率を40%とした。
<実験例2>
電池ケース本体の側面部に形成される凸部21の下面21bを上部絶縁板19の上面19aと平行に形成し、凸部21の下面21bと上部絶縁板19の上面19aとの接触面積を大きくしたこと以外は、実験例1と同様の方法で電池A2を作製した。
<実験例3>
負極活物質として酸化ケイ素を用いず黒鉛のみを用いたこと以外は、実験例2と同様の方法で電池A3を作製した。
実験例1〜3の各電池について、以下の方法で電極体の座屈発生率の評価、及び上部絶縁板の破損発生率の評価を行った。評価結果は、表1に示した。
[電極体の座屈発生率の評価]
実験例1〜3の各電池をそれぞれ40個準備し、下記の手順で評価を行った。
25℃の環境下で、0.3C(1050mA)の定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電を行い、その後定電圧で電流値が0.02C(70mA)になるまで充電を引き続き行った。当該充電を行った各電池のX線画像を撮影し、下記の判断基準に基づいて評価を行った。
座屈有り:電極体(正極及び負極)の上端部に折れ曲がりが確認された。
座屈無し:充放電の前後において電極体の形状に変化が見られない。
[上部絶縁板の破損発生率の評価]
上記充電を行った各電池を分解し、下記の判断基準に基づいて評価を行った。
破損有り:割れ、変形、変色など、絶縁板の外観変化が確認された。
破損無し:絶縁板の外観に変化が見られない。
Figure 2018028962
表1に示すように、絶縁板と接触する凸部の下面を上方に向かって傾斜させることにより、電極体の座屈及び絶縁板の破損(いずれも発生率0%)を防止することができた(実験例1参照)。一方、凸部の下面を絶縁板の上面と平行に形成した場合は、電極体の座屈及び絶縁板の破損が発生した(実験例2,3参照)。負極活物質にケイ素を含有する材料を用いてエネルギー密度を上げた場合には、電極体の座屈及び絶縁板の破損が発生し易くなるが(実験例2,3参照)、凸部の下面を上方に傾斜させることにより、エネルギー密度が高い場合においても、かかる不具合の発生を防止することができる。実験例1の電池A1によれば、電極体の座屈に起因する内部短絡等の発生を防止できると共に、絶縁板の破損により発生した微粉が電極体に混入して電池性能に悪影響を与えることを防止できる。
10 円筒形電池、11 電池ケース本体、11a 側面部、11b 底面部、12 封口体、13 電極体、14 正極、15 負極、16 セパレータ、17 正極リード、18 負極リード、19 上部絶縁板、19a 上面、19b 下面、19c 貫通孔、20 下部絶縁板、21 凸部、21a 上面、21b 下面、21c 頂部、21d 根本部分、22 ガスケット、23 フィルタ、23a フィルタ開口部、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、27a キャップ開口部、α 接線、θ 接線αと上部絶縁板19の上面19aとがなす角度

Claims (4)

  1. 電極体を収容する有底筒状の電池ケース本体と、
    前記電池ケース本体の開口部を塞ぐ封口体と、
    前記電池ケース本体の側面部を外側から内側に押し出して形成され、前記開口部側に向いた上面に前記封口体が載せられる凸部と、
    前記電極体と前記凸部との間に配置される絶縁板と、
    を備え、
    前記絶縁板は、繊維強化フェノール樹脂を主成分として構成され、
    前記凸部は、前記絶縁板側に向いた下面側の根元部分が前記絶縁板と接触し、
    前記凸部の下面は、前記根本部分から離れるほど前記絶縁板の上面との間隔が大きくなるように上方に向かって傾斜している、円筒形電池。
  2. 体積エネルギー密度が650Wh/L以上である、請求項1に記載の円筒形電池。
  3. 前記電極体を構成する負極は、ケイ素(Si)及び/又はケイ素化合物を含有する負極活物質を含む、請求項2に記載の円筒形電池。
  4. 前記凸部の前記根本部分を通る前記下面の接線と、前記絶縁板の上面とがなす角度が5°〜45°である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の円筒形電池。
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