JP3630332B2 - 永久磁石式ロータ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業状の利用分野】
本発明は、ブラシレスDCモータや発電機等に使用されるいわゆる内部磁石型の永久磁石式ロータの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、SmーCo系やNd−Fe−B系等の高エネルギー積希土類永久磁石材料と、半導体を用いた制御方法とを組み合わせたブラシレスDCサーボモータ、ACサーボモータ等が広く実用に供されている。特に環境問題に関連して、電気自動車や電動バイク等の開発が活発化している。これらの推進用途に用いられるモータには、誘導モータよりも小型化が可能な永久磁石を用いた同期モータが適している。
同期モータのロータには、(1)小型化を実現するために、ロータ表面で高い磁束密度を有すること(2)永久磁石が熱サイクルや高速回転により、減磁や破壊を生じないことが要求される。また、上記推進モータでは一般的に減速時に回生制動と呼ばれる発電が行われている。この際、永久磁石に逆磁界がかかるため、永久磁石が減磁しないことが必要不可欠である。
【0003】
永久磁石を使用したモータに用いられるロータ構造は概略下記の2種類に分類される。
1つは、永久磁石を軟磁性金属のロータ外周部に接着剤で固着するタイプ(以下、表面磁石型ロータと呼ぶ)である。図4に表面磁石型ロータの1例を示す。図4において、1は永久磁石、2は軟磁性金属からなるロータ基体であり、8個の永久磁石1が通常ロータ基体2の外周面に接着剤で固着され、8極の表面磁石型ロータを構成している。
もう1つは永久磁石をロータ内部に放射状に埋設し、主として前記永久磁石の同極反発を利用してロータ外周部に磁束を取り出すタイプ(以下、内部磁石型ロータと呼ぶ)である。内部磁石型ロータの1例として図5(放射状磁石埋設型としては特公昭63ー41307号公報がある。)を示す。図5において、ロータ外周面の任意の1磁極を形成するロータ基体2の両端の永久磁石1は、同一磁極同士が対向するいわゆる同極反発型の構成である。図5はロータ外周面に合計8極を形成するために8個の永久磁石を使用している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の表面磁石型ロータにおいては、以下の問題があった。
1つは、永久磁石とロータ基体との熱膨張係数差により生ずる熱応力およびロータ回転により生ずる遠心力のために、永久磁石がロータから剥離してロータが破壊することである。例えば、電気自動車用モータの如く、数十kWの高出力が要求される場合にはロータの径、最大回転数が共に増加する結果、遠心力が増加し、前記剥離がより生じやすくなる。また、ステータの交流磁束によってロータ表面で発生する渦電流は回転数が大きいほど増加し、このためロータの発熱量がより増加することになる。このように、表面磁石型ロータは遠心力および発熱量の増加によってロータ破壊を生じやすいという問題を抱えている。
【0005】
もう1つの問題は、表面磁石型ロータにおいて、ロータ径とロータ長さが決まるとトルク定数(出力はトルク定数と電流と回転数の積に比例する。)がほぼ決まってしまい、高性能化しにくいという問題があった。すなわち、表面磁石型ロータとステータ間のギャップに直接磁石が接しているため磁気的な漏れが無く、有効に磁束を利用できる反面、磁石断面積がロータ外径で決定されてしまい、ギャップ磁束密度は磁石材料特性のみでほぼ決まってしまうのである。このように、表面磁石型ロータを用いた場合には、トルク定数はロータ1極あたりの有効磁束量と磁極数の積に比例するが、極数を増やしたとしてもその分1極あたりの面積が減少する結果、1極あたりの有効磁束量が減少するために、トルク定数の増加をほとんど望めない。
【0006】
一方、内部磁石型ロータはロータ径、ロータ長さ、永久磁石形状を一定にして磁極数を増加させると、1極あたりの有効磁束量がほとんど減少しないためにトルク定数が増加する。このことから前記内部磁石型ロータは多極化により高性能化が可能であるという特徴を有する。
【0007】
しかしながら、従来の内部磁石型ロータは以下の問題点を有していた。
1つは、永久磁石が放射状に配置されているため、ロータ内周部での磁束の短絡が発生し、永久磁石の発生する磁束がロータ外周部に集中せず、永久磁石体積の割に磁束発生効率が悪いことである。したがって、この実用例はあまり多くない。
もう1つは、磁束発生効率が悪いために内径を小さくする必要があり、ロータの慣性モーメントが表面磁石型ロータよりも大きく、制御性が悪いという問題があった。また、図6に示すように、永久磁石1をロータ基体2の内部に組み込む方式が提案されている。しかし、この方式では永久磁石1の内外周側に形成される磁束短絡部21および22が同一の磁性体であるため、(1)磁束の一部が磁性体外部に出ずに短絡する。(2)磁束の短絡防止のために磁束短絡部の幅W21およびW22を小さくするとロータの機械的強度が弱くなり、遠心力に耐えられない。
という問題がある。なお、図6はロータ外周面の磁極数と使用する永久磁石の個数を1:1で構成した例である。
【0008】
そこで、上述した表面磁石型および内部磁石型の問題点を解決する永久磁石式ロータとして、ロータ基体を軟磁性金属から構成される内筒部と外筒部とで構成し、かつこの内筒部と外筒部との間に磁気的に一体である永久磁石とを配置した磁極数が4極以上の永久磁石式ロータ(特開平6ー38415号公報)が開示されている。このロータは、例えば図7(V字状に磁石を埋設した方式で、ロータ外周面の磁極数と永久磁石個数の比が1:2の構成である。)および図8(L字状磁石埋設型で、ロータ外周面の磁極数と永久磁石個数の比が1:1の構成である。)に示されるものである。なお、図7および図8において、21と22は各々軟磁性金属からなるロータ基体2の外筒部と内筒部である。
しかしながら、図7の場合は棒状、ブロック状、板状等の単純形状磁石を使用できる利点があるものの、使用した磁石の断面積を有効に使用できておらず、このためロータの表面磁束密度、およびロータとステータ間のギャップ磁束密度を最大限に引き出すことができていない。さらに、ロータ外周面の磁極数と永久磁石個数との比が1:2であり、高価な永久磁石の使用比率が高いといえる。
図8の場合はロータ外周面の磁極数と永久磁石個数の比が1:1であり、磁石使用個数が少ない反面、L字状の磁石を使用するため、例えば、L字状永久磁石1における磁石製造工程において、所望の磁気特性を付与するためのL字状永久磁石1における厚みt方向への結晶粒の配向(磁気異方性付与)工程および寸法出しのための加工工程およびクラック等を発生しない全製造工程にわたる注意深いハンドリング等極めて煩雑な磁石製造手段が要求される。
さらにまた、図7では、永久磁石式ロータの(内径寸法):(外径寸法)が1:1.2〜4.0の場合、すなわち永久磁石式ロータを磁気回路として利用できる厚みが小さくて永久磁石の断面積が制限される場合において、この永久磁石式ロータの表面およびギャップ磁束密度を所定のレベルに維持できないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点を解消し、永久磁石を用いたモータ用ロータおよび発電機用ロータにおいて、単純形状の永久磁石を使用でき、特にロータの(内径寸法):(外径寸法)が1:1.2〜4.0であるような薄いロータ厚みの場合において、永久磁石からの発生磁束量を極めて効率よく利用できると共に、ロータから永久磁石が剥離しない耐久性に優れた安価で高性能の永久磁石式ロータを提供することを目的とする。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の永久磁石式ロータは、軟磁性金属からなる外筒部と内筒部を有し、前記外筒部と前記内筒部との間に磁化方向が周方向で1磁極に対し2個の永久磁石を埋設してなる永久磁石式ロータであって、前記永久磁石のうち第1の永久磁石を前記ロータの隣合う磁極を区分する極間位置にロータの内周部と外周部とを垂直に結ぶように半径方向に配置し、他の第2の永久磁石は、前記第1の永久磁石の内周側端部と当該極間の隣にある他の極間の外周側端部とを結ぶように傾斜して配置されており、かつ前記第1の永久磁石に対して線対称に前記第2の永久磁石を設けることにより、隣合う2磁極が3個の永久磁石によって構成され、総磁極数と永久磁石個数との比を1極:1.5個に構成するという技術的手段を採用した。
また、本発明の永久磁石式ロータにおいては、(内径寸法):(外径寸法)=1:1.2〜4.0とすることが好ましい。
【0011】
本発明においては、ロータ基体に埋設された永久磁石がロータ回転時に緊密に固定されているように、接着剤、シール剤、樹脂成形、非磁性金属(例えば公知のAlもしくはAl合金等)ダイキャスト等の公知の固定手段を用いて、永久磁石をロータに固着することが望ましい。この処理は常温でもよいが、好ましくはロータ部材が酸化しないかあるいは酸化してもロータ機能上問題を生じない程度の加熱高温下(必要により大気中以外にAr,N等の不活性ガス雰囲気中を使用できる。)で行うと、この処理後に永久磁石に圧縮残留応力が残存し、永久磁石が破壊しにくいという利点を有する。また、条件によっては上述の固定手段を用いることなく、例えば永久磁石の磁気吸着力のみで永久磁石をロータに固定する方法を採用することができる。この方法はロータの組立が簡単にできるという利点を有する。
【0012】
ロータ基体を内筒部および外筒部を有する形状に形成する手段としては、概略3通りがある。1つは、プレスで打ち抜いた薄い軟磁性金属(例えば珪素鋼板あるいは低炭素鋼等)を積層し、ロータ軸に固定する方法である。2つめは、軟磁性金属を鋳造し、必要に応じて加工する方法である。3つめは、軟磁性金属粉末をプレスまたは射出成形等の公知の手段により、所定形状に形成した後燒結し、必要に応じてサイジングプレスを行う方法である。上述のロータ形成手段は要求される形状、磁気特性、コスト等を考慮して適宜選択できる。
【0013】
本発明においては、永久磁石式ロータの1磁極を2個の永久磁石で形成すると共に、前記永久磁石のうちの1個(第1の永久磁石1a)を前記ロータの隣合う磁極を区分する極間位置であってロータの内周部と外周部間を垂直に結ぶ半径方向に配置し、他の1個(第2の永久磁石1b)を前記第1の永久磁石の内周側端部と前記第1の永久磁石が位置する極間の隣にある他の極間の外周側端部とを結ぶように傾斜して配置し、かつ第2の永久磁石は前記第1の永久磁石に対して左右線対称に設けている。これによって隣合う2磁極が3個の永久磁石によって構成される。その結果、総磁極数と永久磁石個数との比を1極:1.5個に構成したものである。以上の構成によって、従来の表面磁石型および内部磁石型のロータに比べて、1磁極を構成する2個の磁石幅長(有効断面積)の合計を最大に構成できる。その結果、ロータ外周表面の磁束密度およびギャップ磁束密度が最大となり、ロータの高性能化を実現できるのである。
【0014】
また、本発明に使用される永久磁石は公知の製造方法(例えば粉末冶金法、塑性加工法(据え込み、押し出し、圧延等)、ボンド磁石法、鋳造法、超急冷法等)により製造可能である。そして、前記永久磁石としてその基本組成を表す一般式がR−Fe−B系、R−Co5系、R2ーCo17系、R−Fe−N系(RはYを含む希土類元素のうちの1種または2種以上であり、さらに必要に応じてCo,Al,Nb,Ga,Fe,Cu,Zr,Ti,Hf,Ni,V,Si,Sn,Cr,Mo,Zn,Pt,Bi,Ta,W,Sb,Ge,Mn等から選ばれる1種または2種以上の磁気特性に有効な元素を含有できる。また、さらにO,C,N,H,P,S等から選ばれる1種または2種以上の不可避不純物元素を含有できる。)で示される希土類磁石、およびフェライト磁石、アルニコ磁石、Mn−Al−C磁石等の公知の永久磁石材料の1種または2種以上を使用することができる。さらに、上記永久磁石材料の1種または2種以上からなる粉末状粒子と、公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂またはゴム材料またはこれらのうちの1種または2種以上とを主体として構成される公知のボンド磁石材料(好ましくは異方性磁石)によって本発明の永久磁石を構成してもよい。なお、上記のうちR−Fe−B系の永久磁石は酸化防止のために表面に耐酸化性の被覆層(例えばNi,Cu,Al,Zn,Cr,Ni−P,Ti,Sn,Pb、Pt,Ag,Au等の1種または2種以上からなり、公知の無電解または電気メッキ手段により形成されるメッキ層を採用できる。これ以外に、例えば真空蒸着(例えば耐酸化性能の高い公知の金属や樹脂を全面に均一コートする方法がある。)、イオンスパッタリング、イオンプレーティング、IVD、EVD等の公知の被覆層形成手段のうちの1または2手段以上を採用できる。また、エポキシ樹脂等を電着塗装させてもよい。そして、より優れた耐酸化性を付与する場合は上述の被覆層形成手段を組み合わせて、例えばCuメッキ(数μm〜数十μmの層厚)の上にNiメッキ(数μm〜数十μmの層厚)を被覆し、さらにその上にエポキシ樹脂を電着コート(数μm〜数十μmの層厚)する構成等を採用することが好ましい。)を形成させることが好ましい。
そして、上記のうちNd−Fe−B系の異方性燒結磁石および/またはボンド磁石(好ましくは異方性磁石)が特に好ましい。
【0015】
本発明に使用できる軟磁性金属としては、例えばFe,Ni,Coおよびこれらを主成分とする強磁性金属を使用できる。この一例として、例えば純鉄、軟鉄、;および炭素鋼、低合金鋼、構造用特殊鋼、工具鋼、フェライト系やマルテンサイト系のステンレス鋼等の公知の強磁性鉄鋼材料;および鋳鉄、鋳鋼等の公知の強磁性鉄系鋳物;およびパーマロイ等のFe−Ni系合金;およびコバール等のFe−Ni−Co系合金;および珪素鋼板やパーメンジュール等が挙げられる。さらに、Mn−Znフェライト等の公知のソフトフェライトをも有効に活用できる。そして、これらのうちの1種または2種以上を本発明においては好ましく使用できる。さらに、これらのうち、低炭素鋼、珪素鋼板、パーメンジュール、純鉄等の1種または2種以上が特に好ましい。
【0016】
【作用】
1磁極当たり1.5個の永久磁石を使用するため、安価な永久磁石式ロータを構成できる。また、埋設した永久磁石の断面積を効率よく利用できる結果、ロータ外周表面およびギャップ磁束密度が最大になり、高性能の永久磁石式ロータを構成できる。特に、永久磁石式ロータの(内径寸法)と(外径寸法)との比が1:1.2〜4.0である(磁気回路として機能する永久磁石式ロータの厚みが薄い)場合に極めて有利である。また、単純形状の永久磁石を使用できるため、磁石製造技術およびコストの点からも有利である。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
図1は本発明の一実施例を示す永久磁石式ロータの要部断面図である。図1において、1aおよび1bは各々ブロック状の永久磁石(日立金属(株)製Nd−FeーB系異方性燒結磁石、HSー37BH)であり、表面に耐酸化性を付与するためのNiメッキ処理層を有している。永久磁石1a(合計4個)が永久磁石式ロータ10の半径方向に沿って配置され、かつ永久磁石1b(合計8個)が永久磁石式ロータ10の半径方向に対して所定角度Θ(0<Θ<90度)を付与するように配置されている。永久磁石1aおよび1bは各々その厚みtおよびt方向に結晶粒子を配向させて磁気異方性を付与してあり、所定の着磁後図1に示すN,S極性が付与される。また、永久磁石1aの寸法は厚みtが5mm、幅Wが21mm、図示されない回転軸方向の長さlが55mmである。永久磁石1bの寸法は厚みtが5mm、幅Wが45mm、図示されない回転軸方向の長さlが55mmである。永久磁石1aおよび1bは各々永久磁石式ロータ10のロータ基体2内に埋設され、埋設された前記永久磁石を介して外筒部21および内筒部22が形成され、ロータ基体2を構成している。ロータ基体2は内径90mm、外径155mm、長さが110mm(後述する図3のシャフト部材を含めない。)の寸法であり、軟磁性金属(JIS S15C)製である。したがって、ロータ10の(内径寸法):(外径寸法)=1:1.7である。そして、ロータ基体2用素材に切削加工とワイヤー放電加工を施して、図1に示すような永久磁石1aと1bが入る溝孔30をロータ基体2の全長にわたって合計12個形成し、さらに図3に示すように回転軸となるシャフト4を有するシャフト部材15とロータ10とを連結固定するために、M8のネジ孔16を8個ロータ基体2の外周部近傍に設けた。そして、前記永久磁石挿入用溝孔30(合計12個)に接着剤(アラルダイト:AV−138)を塗布した永久磁石1aを4個×2段および1bを8個×2段埋設した後、固着させて、図1に示す要部断面図を有する永久磁石式ロータ10を製作した。なお、ロータ基体2内部に発生する渦電流損失を低減するために、ロータ基体2を薄板(厚みが0.01mm〜数mm程度)を積層して構成することが好ましい。
【0018】
図3は本発明によるロータ10の組立の一例を示す斜視図である。図3において、ロータ10はその断面図が図1に示す形態を有し、回転軸となるシャフト4およびネジ孔16を有するステンレス(例えば、SUS304等)製のシャフト部材15と永久磁石1aおよび1bを組み込んだ前記ロータ10とを図示しないボルトによって締結することにより、本発明の永久磁石式ロータが組み立てられる。なお、シャフト部材15の代わりに、永久磁石1aおよび1bをロータ基体2に組み込み後、ロータ基体2に形成されたシャフト挿入孔3に接着剤(アラルダイト:AV−138)等を塗布した回転軸となる図示されないシャフト40(例えば、SUS304製)を直接挿入し、前記ロータ基体2とシャフト40とを接着剤で固着して構成してもよい。
【0019】
次に、前述した図3における本発明のロータ10とシャフト部材15との連結作業の後、カウンターウェイト(図示省略)を取り付けてダイナミックバランスを取り、そののち専用の着磁ヨーク(図示省略)を使用して常温で組み込みパルス着磁(22kOe×8m sec)を行い、ロータ10に組み込まれた永久磁石1aおよび1bに磁力を付与した。
【0020】
図2は本発明のロータ10の1磁極を形成する2個(2種)の永久磁石の配置に関する説明図である。図2において、点Oはロータの回転中心点、Rはロータ外半径、rはロータ内半径、Θはロータ外周面に形成された任意の1磁極の形成角度:角AOBである。実線の永久磁石aおよび永久磁石bの一方の片端は角度Θを形成するように各々ロータ外周面近傍において点P、点Qに位置している。また、永久磁石aと永久磁石bの他方の片端はロータ内周面近傍の点A〜点B間の任意の位置、例えば点Cにあると共に、角BOC=Θなる角度を形成している。また、永久磁石aと永久磁石bは各々ロータ10の回転軸方向に図示されない所定の長さを有している。
そして、永久磁石aおよび永久磁石bの幅長を各々W,Wとした場合、永久磁石幅長の合計(W+W)が最大となるのはΘ=0またはΘの場合である。すなわち、永久磁石aまたは永久磁石bのどちらか一方が図2において半径方向に位置した場合(すなわち、点線で示す永久磁石1aおよび1bの配置構成の場合)に(W+W)が最大幅長となり、ロータ外周面側の発生磁束源として有効に寄与できる永久磁石aおよび永久磁石bの合計の有効断面積を最大にできる結果、ロータの表面磁束密度およびギャップ磁束密度を最大に構成できるのである。
【0021】
図1の要部断面図を有する本発明のロータ10(実施例1)および、実施例1のロータと同一の内径寸法および外径寸法を有する従来のロータ(図4、図5、図7の要部断面図に各々対応する比較例1〜3)を製作し、ギャップ0.5mmを隔ててステータを配置した。そして、各ロータの表面磁束密度およびギャップ磁束密度を測定した結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003630332
【0023】
本発明のロータは表面磁束密度およびギャップ磁束密度が比較例1〜3に比べて高く優れている。なお、比較例2は図5に示す如く半径方向に沿って永久磁石1を配置した構成であるが、上述したようにロータの(内径寸法)と(外径寸法)の比が1:1.7と小さいため、表面磁束密度およびギャップ磁束密度が著しく小さくなっている。
【0024】
次に、上述した本発明のロータ10(実施例1)において、その内径寸法に対して外径寸法を変化させた場合の(外径/内径)寸法比に対するロータの表面磁束密度変化(イ)を図9に示す。なお、前述の比較例1〜3の各々のロータにおいて、それぞれ(イ)と同一寸法でかつその内径寸法に対して外径寸法を変化させた場合の(外径/内径)寸法比に対するロータの表面磁束密度変化;比較例1に基ずく(ロ)、比較例2に基ずく(ハ)、比較例3に基ずく(ニ)を各々図9に併記する。
【0025】
図9より、(外径/内径)=1.2〜4.0の範囲において、実施例(イ)は各比較例(ロ)、(ハ)、(ニ)に比べて表面磁束密度が高く優れている。
また、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)において、各々ギャップ0.5mmを隔ててステータを配置し、ギャップ磁束密度を測定したところ、図9の表面磁束密度と同様の測定値を得た。
なお、図9において、(外径/内径)>4の領域では実施例(イ)と比較例(ニ)との表面磁束密度がほぼ同等となり、本発明のロータの優位性が次第に消失することがわかった。
【0026】
次に、実施例1および比較例1〜3に関して80℃×1000時間の耐久スピンテストを行い、剥離の有無を調査した結果(表2)を示す。なお、表2において、○は異常なし、×はロータからの磁石剥離あり、ーはテストを実施しなかったことを表す。
【0027】
【表2】
Figure 0003630332
【0028】
表2より、本発明(実施例1)のロータは表面磁石型(比較例1)に比較して、80℃における高速回転時の剥離が発生しにくく、従来の内部磁石型ロータ(比較例2,3)と同等の剥離に対する耐久性を有することがわかる。
【0029】
なお、本発明の実施例(図1)においてロータ10は永久磁石が12個で8磁極を構成し、かつ永久磁石1bが永久磁石1aに対して線対称に配置され、ロータ10外周面の磁極N極およびS極が等間隔に8磁極形成された場合を示したが、本発明はこれに限定されず、永久磁石1aに対する両側の永久磁石1bの配置角度Θを個々に異なる角度Θ(0<Θ<90度)を付与するように配置してもよく、この構成によってロータ10外周面の磁極パターンを非対称とできる。さらに、例えばこの非対称の磁極パターンを付与する場合、ロータ10の外周面に形成された非対称のN磁極またはS磁極の磁極幅に対応するようにロータ10の外径寸法および/または内径寸法を本発明の構成範囲内において部分的に変えた略円筒体形状のロータ10(例えば、ロータ10の外周面および/または内周面の軸方向全長にわたって1箇所または2箇所以上の凹部または凸部を有するロータ10形状とする等。)としてもよい。また、本発明のロータの磁極数は本発明の構成を満足する限り限定されないが、特に実用性の高い4極〜100極のものに好ましく用いられるものである。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、永久磁石を用いたモータ用ロータおよび発電器用ロータにおいて、単純形状の永久磁石を使用でき、またロータの1磁極に対して永久磁石を1.5個とでき、特にロータの内径寸法と外径寸法の比が1:1.2〜4.0というロータ厚みが薄い場合において永久磁石からの発生磁束量を効率よく利用できると共に、ロータから永久磁石が剥離しにくい耐久性に優れた高性能で安価な永久磁石式ロータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロータの一実施例を示す要部断面図である。
【図2】本発明のロータにおける1磁極を形成する永久磁石の幅長を説明する図である。
【図3】本発明のロータの組立例を示す図である。
【図4】従来のロータの要部断面図を示す図である。
【図5】従来のロータの要部断面図を示す図である。
【図6】従来のロータの要部断面図を示す図である。
【図7】従来のロータの要部断面図を示す図である。
【図8】従来のロータの要部断面図を示す図である。
【図9】ロータの(外径/内径)寸法比に対する表面磁束密度変化を示す図である。
【符号の説明】
1a 永久磁石、1b 永久磁石、2 ロータ基体、3 シャフト挿入孔、
4 シャフト、10 ロータ、15 シャフト部材、16 ネジ孔、
21 外筒部、22 内筒部、30 溝孔、40 シャフト。

Claims (2)

  1. 軟磁性金属からなる外筒部と内筒部を有し、前記外筒部と前記内筒部との間に磁化方向が周方向で1磁極に対し2個の永久磁石を埋設してなる永久磁石式ロータであって、前記永久磁石のうち第1の永久磁石を前記ロータの隣合う磁極を区分する極間位置にロータの内周部と外周部とを垂直に結ぶように半径方向に配置し、他の第2の永久磁石は、前記第1の永久磁石の内周側端部と当該極間の隣にある他の極間の外周側端部とを結ぶように傾斜して配置されており、かつ前記第1の永久磁石に対して線対称に前記第2の永久磁石を設けることにより、隣合う2磁極が3個の永久磁石によって構成され、総磁極数と永久磁石個数との比を1極:1.5個としたことを特徴とする永久磁石式ロータ。
  2. 前記永久磁石式ロータにおいて、(内径寸法):(外径寸法)=1:1.2〜4.0としたことを特徴とする請求項1記載の永久磁石式ロータ。
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