JP3629972B2 - 調質圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間圧延工程で極薄鋼板を調質圧延する方法に係り、特に、調質圧延により鋼板表面に生じるおそれのある縦筋を防止することのできる調質圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、板厚が0.05〜0.35mmの極薄鋼板、特にブリキ原板のDR(Double Reduction)材と呼ばれる材料において、タンデム圧延機などによる冷間圧延後に焼鈍し、さらに再圧延を施した後に調質圧延を行うと、鋼板表面に縦筋と呼ばれる形状不良が発生する。この縦筋の発生は、圧延機のロールギャップ内で鋼板内部に生じる幅方向の圧縮応力に起因する座屈現象によるとされる。
【0003】
このような形状不良は、後工程(表面処理)である電気メッキ、溶融亜鉛メッキ、食用缶などのラベル印刷の品質を著しく劣化させる。
このため、従来にあっては、調質圧延後に、縦筋が発生した鋼板をテンションレベラーやローラレベラーに通板して鋼板表面の矯正を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、全く縦筋のない鋼板の要求が強くなっているが、テンションレベラー等で矯正しても、縦筋が多少低減するのみで、縦筋を許容範囲以下まで消去することは難しく、この要求に応えることができない。
【0005】
ここで、縦筋を防止するには、調質圧延機のワークロール表面の研磨目の粗さを小さくすると効果的であることが知られているが、完全に縦筋を防止するほどに研磨目の粗さを充分小さくすると、要求される鋼板の表面粗さを満足できなくなる。すなわち、通常、調質圧延後の鋼板表面には、後工程である電気メッキ・溶融亜鉛メッキ・ラベルプリントなど、様々な表面処理を安定して行えるように、ある一定の表面粗さを保つことが要求される。このため、従来にあっては、ワークロール周面に対し、研磨により形成される円周方向の研磨目に、ある一定以上の粗さを付けている。
【0006】
また、調質圧延での出側張力を増加させると縦筋が減少する傾向にあることが知られている。しかし、完全に縦筋を防止するには張力を鋼板の降伏応力程度まで増加させる必要があり、このような設定は板破断の危険性が増大するため、縦筋を完全に防止するまで出側張力を付与することはできない。さらに、出側張力は、調質圧延の伸び率を一定に保つ必要があるので変更するのが難しい。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、縦筋の発生を抑えつつ要求された表面粗さを持つ極薄鋼板を安定して製造し得る調質圧延方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題の解決に向けて、調質圧延による縦筋の発生原因について詳細に検討し、調質圧延機に組み込まれるワークロールの周面の研磨目粗さ、及び圧延荷重、鋼板の出側流出角度などの各圧延条件に着目して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明は、上下ワークロールとして直径400mm以上の大径ロールを用いて極薄鋼板を調質圧延する方法であって、上記上下ワークロールの少なくとも一方のワークロール周面における研磨目の中心線平均粗さ(Ra)を1.0μm以下にすると共に、単位幅当たりの圧延荷重を0.4tonf/mm以下に設定し、かつ上記ワークロールからの鋼板の出側流出角度を、−0.5度以上0.5度以下とすることを特徴とする調質圧延方法を提供する。
【0011】
極薄鋼板の調質圧延における縦筋の発生メカニズムは未だ詳細には明らかにされていないが、おおよそ次のように考えられる。
通常、調質圧延後の表面処理を安定して行えるように、鋼板表面に一定の表面粗さを保つことが要求されるため、調質圧延に用いられるワークロール表面には、一定の粗さを持った円周方向に延びる研磨目が形成されている。この結果、上下ワークロールにより調質圧延される鋼板は、ロールギャップ内で鋼板が板幅方向に拡がろうとしても、調質圧延においては大径のワークロールを用いるためにロール偏平が大きく、鋼板表面がワークロールにより拘束される。このために、圧延された分だけ板幅方向に圧縮応力が生じる。これがロールギャップを出た後に塑性座屈を起こして縦筋となると考えられる。
【0012】
そして、この観点(圧延時の板幅方向への拘束緩和)に基づき、ワークロール周面に付与される研磨目の粗さ、圧延荷重、鋼板の出側流出角度の各圧延条件について、検討した。
【0013】
まず、研磨目の粗さと、発生する縦筋高さとの関係について検討したところ、粗さRaが1.5μmより小さくなるにつれて縦筋高さが小さくなり、1.0μm近傍で急激に縦筋高さが小さくなって、1.0μmを境に1.0μm以下で、縦筋の高さが約20μm以下と大幅に小さくなることを確認したため(図2参照)、本発明では、研磨目の粗さRaを1.0μm以下とした。
【0014】
ここで、鋼板の裏面側には多少の縦筋が許容される場合には、表面と接触するワークロールの粗さだけを1.0μm以下とすれば良い。
但し、上記研磨目の粗さRaを1.0μm以下としても、圧延荷重を高く設定すると、縦筋高さが許容以上(例えば50μm以上)に大きくなる(図3参照)。上記粗さRaを1.0μm以下とした場合の圧延荷重を検討したところ、0.4tonf/ mm近傍で急激に小さくなり、0.4tonf/ mm以下で、縦筋高さが約20μmと大幅に小さくなることから(図3参照)、圧延荷重を0.4tonf/ mm以下とした。
【0015】
以上のように、研磨粗さをRa=1.0μm以下、且つ、調質圧延の単位幅当たりの圧延荷重を0.4tonf/mm以下とすることで、安定して縦筋高さを小さく抑えることができることから、本発明では、研磨粗さをRa=1.0μm以下、且つ、調質圧延の単位幅当たりの圧延荷重を0.4tonf/mm以下と規定している。
【0016】
ここで、圧延荷重や研磨目の粗さを下げると調質圧延後の鋼板の表面粗さも低下することから、調質圧延後の鋼板に要求される表面粗さの要求下限から、本願発明における上記研磨目の粗さ及び圧延荷重の下限値が規制される。
【0017】
また、上述の圧延条件において、出側流出角度と縦筋高さとの関係を検討したところ、出側流出角度が、−0.5度以上0.5度以下の範囲で、縦筋高さが最小となることを確認したため(図4参照)、本発明では、出側流出角度を、−0.5度以上0.5度以下と規定した。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る2段式2スタンドの圧延機を示す図である。図1中、第1スタンド1は、焼鈍後の鋼板3を再圧延するための冷間圧延機であり、第2スタンド2が調質圧延用の圧延機である。
【0020】
そして、第1スタンド1での圧下率が20%となるように設定する。
また、第2スタンド2での圧延条件として、伸び率を1%以下の所定の伸び率に設定すると共に、研磨目の粗さRaが1.0μm以下、例えば0.9μmに研磨された上下ワークロール2a,2bを使用し、また、単位幅当たりの圧延荷重が0.4tonf/ mm以下、例えば0.35tonf/ mmとなるように調整して圧延した。なお、上記伸び率は、設定する圧延荷重にあわせて鋼板の出側張力を調整することで実現される。
【0021】
また、第2スタンド2の出側に配置される補助ロール4の高さを調整して、第2スタンド2のワークロール2a,2bからの鋼板の出側流出角度θが−0.5度以上0.5度以下の範囲内となるように設定した。
【0022】
そして、例えば、素材厚0.3mmで降伏応力40kgf /mm2 の焼鈍されたブリキ原板となる鋼板を、第1スタンド1での圧下率20%、第2スタンド2での伸び率1%で圧延する。
【0023】
以上のような圧延条件で、第2スタンド2において調質圧延することで、調質圧延後の鋼板表面に生成される縦筋の高さは20μm以下となり、縦筋の高さが許容範囲内に抑えられる。
【0024】
ここで、上記実施形態では、上下ワークロール2a,2bしかない2段式調質圧延機(第2スタンド2)を例に説明しているが、上下バックアップロールや中間ロールをもった4段式、6段式などの圧延機であってもよい。要は、少なくともワークロールの研磨目の粗さRaが1.0μm以下であって及び圧延荷重が0.4tonf/ mm以下であればよい。
【0025】
また、圧延スタンド数も2スタンドに限らず、シングルスタンドあるいは多スタンドミルの最終スタンドに本実施例を適用すればよい。
また、鋼種なども本実施形態に限られるものではない。
【0026】
また、上記実施形態では、上下ワークロール2a,2bの両方の研磨目の粗さRaを1.0μm以下にする場合を例に説明しているが、鋼板の裏面の品質がさほど問題とならない極薄鋼板の場合にあっては、表面と接触する側のワークロールの研磨目の粗さだけを1.0μm以下にしてもよい。
【0027】
また、調質圧延スタンドがパスラインに沿って並ぶ複数組の上下ワークロールで行われる場合には、調質圧延用の全てのワークロールに本発明を適用しても良いが、少なくとも最終位置の上下ワークロールについて本発明を採用すればよい。
【0028】
【実施例】
上記実施形態の2段式2スタンドの圧延機を使用して、素材厚0.3mmで降伏応力40kgf /mm2 のブリキ原板となる鋼板3を、第1スタンド1での圧下率20%、第2スタンド2での伸び率1%で圧延し、第2スタンド2におけるワークロールの研磨目の粗さ、圧延荷重、出側流出角度θを種々に変更して縦筋高さを測定してみた。
【0029】
図2〜図4は、その各結果である。
図2から分かるように、粗さRa1.0μmを境にそれ以下では縦筋高さが十分に小さくなり、表面粗さRaを1.0μm以下とすることで安定して縦筋高さを小さく抑えることができることが分かる。特に、圧延荷重を0.35tonf/ mm以下とした場合には、粗さRaを1.0μm以下にすることで、縦筋高さは20μm以下となる。
【0030】
また、図3から分かるように、粗さRaを1.0μm以下としても圧延荷重が高ければ縦筋高さは大きくなるが、0.4tonf/ mmを境に縦筋高さが急激に小さくなり、それ以下では縦筋高さを安定して小さく抑えることができることが分かる。
【0031】
また、図4から、粗さRaを1.0μm以下とし、圧延荷重を0.4tonf/ mm以下とすれば、出側流出角度θに関係なく、縦筋高さをほぼ50μm以下にできることが分かる。さらに、当該出側流出角度θを−0.5〜0.5度の範囲に設定すれば、出側流出角度θによる縦筋の発生を最低限に抑えることができることが分かり、上記粗さを1.0μm以下且つ圧延荷重を0.4tonf/ mm以下では、出側流出角度θを−0.5〜0.5度の範囲にすることで、縦筋高さを約20μm以下とすることができることが分かる。
【0032】
そして、上記実施形態に示す2段式2スタンドの圧延機にて、素材厚0.23mmで降伏応力45kgf/mm2 のブリキ原板を、第1スタンド1での圧下率を22%、第2スタンド2での伸び率を1%に設定して圧延した。
【0033】
このとき、第2スタンド2におけるワークロールの研磨目の粗さをRa=0.95μm、圧延荷重0.3tonf/mm(ロール径600mm)、出側流出角度θを0.3度に設定したところ、縦筋高さが15μm以下となり目標とする50μm以下の良好な鋼板を得た。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、極薄鋼板の調質圧延において縦筋の発生を許容範囲内に収めることができ、縦筋低減のためのレベラー通板が必ずしも必要がなくなって、効率的に極薄鋼板を製造することが可能となる。
【0035】
特に、請求項2に係る発明を採用すると、さらに縦筋の高さを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧延機の配列を示す図である。
【図2】研磨目の粗さと縦筋高さとの関係を示す図である。
【図3】圧延荷重と縦筋高さとの関係を示す図である。
【図4】出側流出角度と縦筋高さとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 第1スタンド
2 第2スタンド
2a,2b ワークロール
3 鋼板
4 補助ロール
θ 出側流出角度
Claims (1)
- 上下ワークロールとして直径400mm以上の大径ロールを用いて極薄鋼板を調質圧延する方法であって、上記上下ワークロールの少なくとも一方のワークロール周面における研磨目の中心線平均粗さ(Ra)を1.0μm以下にすると共に、単位幅当たりの圧延荷重を0.4tonf/mm以下に設定し、かつ上記ワークロールからの鋼板の出側流出角度を、−0.5度以上0.5度以下とすることを特徴とする調質圧延方法。
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