JP3629327B2 - 2重積分式a/d変換方法と回路および2重積分演算回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は2重積分式A/D変換技術に関し、とくに電源電圧の変動による精度低下を防止する技術改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、2重積分式A/D変換回路は変換時間が長いという弱点はあるものの、高分解能のA/D変換回路を比較的簡単に実現できるため、多くの分野で大量に使用されている。図1にはその基本的な回路構成と動作原理を示している。
【0003】
2重積分式A/D変換回路はミラー積分器1を中心に構成される。ミラー積分器1の入力段にはアナログ入力電圧Vinか基準電圧Vref のいずれかを印加するためのスイッチSW1とSW2が付帯しており、また積分コンデンサCを短絡してリセットするスイッチSW3もある。これらスイッチSW1〜SW3は制御回路2によりつぎのようにオン・オフされる。積分器1の出力電圧Vout は比較器3に入力され、アナロググランドVag=0と比較される。
【0004】
(1)初期化
スイッチSW3のみをオンとして積分コンデンサCを短絡し、積分器1の出力電圧Vout をゼロ(アナロググランドVag=0)にする。図中の時点t0から時点t1の期間である。
【0005】
(2)第1積分プロセス
時点t1から時点t2までの一定時間T1の間、スイッチSW1のみをオンとし、アナログ入力電圧Vinをミラー積分器1に印加して積分する。
【0006】
(3)第2積分プロセス
時点t2でスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとして、ミラー積分器1の入力を切り替え、アナログ入力電圧Vinに替えて基準電圧Vref をミラー積分器1に印加して積分する。基準電圧Vref は入力電圧Vinと逆極性の一定電圧である。
【0007】
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点t2からミラー積分回路1の出力電圧Vout がゼロ(アナロググランドVag=0)に達するまでの時間Txをカウンタ4によりディジタル計測する。つまり、制御回路2が時点t2から比較器3の出力が反転する時点t3までの期間、クロック発生器5からのクロック信号をカウンタ4に供給して計数させる。
【0008】
第1積分プロセスではアナログ入力電圧Vinを一定時間T1だけ積分するので、その終了時点t2での積分電圧Vout 2は入力電圧Vinに比例する。第2積分プロセスでは一定の基準電圧Vref を積分するので、積分出力Vout は一定の変化率で変化する。したがって、積分出力Vout =Vag=ゼロとなるまでの時間Txは時点t2の積分電圧Vout 2に比例する。つまり、時間Txはアナログ入力電圧Vinに比例する。時間Txに対応するカウンタ4のディジタル信号がアナログ入力電圧Vinのディジタル変換出力である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
(a)基準電圧と電源電圧と変換精度の関係
以上の動作原理から明らかなように、第2積分プロセスでの積分電圧Vout の変化率を決める基準電圧Vref の誤差や変動はA/D変換の誤差の原因となる。一般には基準電圧Vref は電源電圧からつくりだすが、できるだけ簡単な回路でできるだけ高精度・高安定の基準電圧Vref を発生することが重要である。コストなどの関係で、電源電圧から分割的に基準電圧Vref を得るような単純な基準電圧発生回路を採用した場合には、電源電圧の変動により基準電圧Vref が変動するので、高精度・高安定のA/D変換回路を実現するのは難しい。
【0010】
(b)レシオメトリック手法
前記の電源電圧変動による悪影響を低減する技術としてレシオメトリック手法が知られている。これは、電源電圧の変化による基準電圧Vref の変化と相似的にアナログ入力電圧Vinが変化する回路構成とし、両電圧Vref とVinの変動による影響分を相殺させる手法である。つまり、電源電圧Vddを抵抗分割して基準電圧Vref を発生させる場合、Vref は電源電圧Vddに比例する。また、サーミスタやストレインゲージにようなセンサ抵抗素子を含んだブリッジ回路などからアナログ入力電圧Vinが発生する場合、そのブリッジ回路を電源電圧Vddにより直接駆動すれば、VinはVddに比例する。したがって、電源電圧Vddの変動により基準電圧Vref が変化しても、それと比例的にアナログ入力電圧Vinも変化しているので、第1積分プロセスでの電源電圧変動の影響(Vinの変化による影響分)と、第2積分プロセスでの電源電圧変動の影響(Vref の変化による影響分)とが打ち消し合う。その結果、高精度で高安定なA/D変換を実現できる。
【0011】
(c)レシオメトリック手法でも解決できない問題点
前記のようにレシオメトリック手法は、第1積分プロセスで生じた変動成分を第2積分プロセスで生じる変動成分で打ち消すという原理である。したがって電源電圧が急激に変動し、第1積分期間中の電源電圧と第2積分期間中の電源電圧とが異なる状態が生じると、両期間の影響分が正確に相殺されず、A/D変換誤差が発生する。電池を電源とする携帯用小型電子機器などでは、電池の放電とともに大きく電圧が変動するし、機器の動作状況に応じて放電電流が急変すると、電源電圧が急変する。この種の電子機器に含まれている2重積分式A/D変換回路では、レシオメトリック手法を採用しても前記のような変換誤差をなくすことが難しい。
【0012】
この発明は前述した従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、レシオメトリック手法を使っても発生する変換誤差をさらに低減することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の2重積分式A/D変換方法および回路では以下の要件(1)〜(4)に従ってA/D変換を行う。
【0014】
(1)初期化
第1および第2の2つのミラー積分器を初期化する。
(2)第1積分プロセス
初期化後にアナログ入力電圧を第1のミラー積分器で一定時間だけ積分するとともに、まったく同時に前記と同じ一定時間だけ原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分する
(3)第2積分プロセス
第1積分プロセスの終了時点で第2のミラー積分器の出力電圧を基準電圧として保持すると同時に第1のミラー積分器の入力を切り替え、前記アナログ入力電圧に替えて前記基準電圧を第1の積分器に印加して積分する。このとき前記基準電圧は前記アナログ入力電圧と逆極性になるように印加する。
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点から第1の積分器の出力電圧が初期化電圧に達するまでの時間をディジタル計測する。
【0015】
つまり、アナログ入力電圧を第1のミラー積分器で積分する第1積分プロセス中に同時に、原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分し、その第2のミラー積分器の積分結果を基準電圧として保持する。この第1積分プロセスにおいて、電源電圧がアナログ入力電圧に与える影響により第1のミラー積分器の積分結果に誤差分が生じたとすると、同時に電源電圧が原始基準電圧に与える影響により第2のミラー積分器の積分結果(基準電圧)にも誤差分が生じる。そして、それらの誤差分が第2積分プロセスで相殺されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に図面とともに詳しく説明するように、この発明の2重積分式A/D変換方法を実施するには、スイッチを介してアナログ入力電圧が印加される第1のミラー積分器と、電源電圧を分割して原始基準電圧を発生する回路と、前記原始基準電圧がスイッチを介して印加される第2のミラー積分器と、第2のミラー積分器の出力電圧を保持するとともに、保持した電圧をスイッチを介して第1のミラー積分器に印加するサンプルホールド回路と、第1のミラー積分器の出力電圧と規定電圧とを比較する比較器とを集積した2重積分演算回路を用いる。
【0017】
また前記構成の2重積分演算回路に、A/D変換動作の開始を指令する信号に応動して各部に付帯した前記各スイッチを制御して前述のA/D変換手順を実行する制御回路を付加することができる。この構成の2重積分演算回路に、前記制御回路によって制御され、前記比較器の出力変化期間の時間をディジタル計測するカウンタを付加することで、この発明の2重積分式A/D変換回路が実現できる。
【0018】
前述のA/D変換手順を実行する制御回路や、前記比較器の出力変化期間の時間をディジタル計測するカウンタの機能を、マイコンによって実現することもできる。
【0019】
図2はこの発明の一実施例による2重積分式A/D変換回路の構成を示し、図3にはその動作タイミングと要部の動作波形を示している。
【0020】
第1のミラー積分器10はアンプA1と積分コンデンサC1と積分抵抗R1とリセットスイッチSW1とからなる。アナログ入力電圧Vref はスイッチSW2とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。この積分器10の出力電圧Vout は比較器30にてアナロググランドVag=0と比較される。
【0021】
第2のミラー積分器20はアンプA3と積分コンデンサC2と積分抵抗R2とリセットスイッチSW3とからなる。電源電圧Vddを抵抗R3とR4で分割した電圧が前述の原始基準電圧Vrである。スイッチSW4がオフでスイッチSW5がオンだと、原始基準電圧VrがバッファA4を介して第2のミラー積分器20に印加される。スイッチSW5をオフにしてスイッチSW4をオンにすると積分器20の出力電圧の変化は停止する。
【0022】
サンプルホールド回路40は電圧保持用のコンデンサC3とスイッチSW6〜SW10からなる。第1積分プロセスではスイッチSW6とSW10をオンにする(SW7・SW8・SW9はオフ)。すると、第2のミラー積分器20の出力でコンデンサC3が充電される。第1積分プロセスの終了時点t2でスイッチSW6をオフにすると、コンデンサC3にそのときの電圧(これが基準電圧Vref である)が保持される。時点t2で同時にスイッチSW9をオンにすると、コンデンサC3に保持した基準電圧Vref がスイッチSW9とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。なお、コンデンサC3に基準電圧Vref を保持した後、SW6とSW9とSW10をオフにし、SW7とSW8をオンにすると、基準電圧Vref の極性を反転させた電圧(−Vref )がSW7とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。これはアナログ入力電圧Vinの極性が負の場合の動作モードである。
【0023】
制御回路50が各スイッチSW1〜SW10を以下のように制御することで (図3の表に整理して示している)、この発明の2重積分式A/D変換を実行する。この例では制御回路50にはクロック発生器も含まれるとする。カウンタ60は、第2積分プロセスの開始時点t2から比較器30の出力が反転するまでの時間Txをディジタル計測する。
【0024】
(1)初期化
スイッチSW1・SW3・SW4・SW7・SW10をオンにし(他はオフ)、2つのミラー積分器10と20をリセットする。
【0025】
(2)第1積分プロセス
A/D変換の開始を指令するトリガ信号が制御回路50に供給されると、時点t1から時点t2までの一定時間T1のあいだ、SW2をオン、SW1・SW7・SW9をオフとして第1のミラー積分器10でアナログ入力電圧Vinを積分する。同時に時点t1から時点t2までの一定時間T1のあいだ、SW5をオン、SW4とSW3をオフにして第2のミラー積分器20で原始基準電圧Vrを積分する。このときサンプルホールド回路40では、スイッチSW6とSW10をオン、SW7・SW8・SW9はオフとし、第2のミラー積分器20の出力でコンデンサC3を充電する。
【0026】
(3)第2積分プロセス
一定時間T1を経過した時点t2においてSW6をオフにし、そのときの第2のミラー積分器20の出力電圧を基準電圧Vref としてコンデンサC3に保持する。同時に時点t2において、SW2をオフ、SW9をオンとして第1のミラー積分器10の入力を切り替え、アナログ入力電圧Vinに替えてコンデンサC3に保持した基準電圧Vref を第1の積分器10に印加して積分する。なお第2の積分器20はリセットする。
【0027】
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点t2から第1のミラー積分回路10の出力電圧Vout がゼロ(アナロググランドVag=0)に達するまでの時間Txをカウンタ60によりディジタル計測する。つまり、制御回路50が時点t2から比較器30の出力が反転する時点t3までの期間、クロック信号をカウンタ60に供給して計数させる。時間Txのディジタル計数出力がアナログ入力電圧Vinのディジタル変換出力である。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、アナログ入力電圧を第1のミラー積分器で積分する第1積分プロセス中に同時に、原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分し、その第2のミラー積分器の積分結果を基準電圧として保持する。この第1積分プロセスにおいて、電源電圧がアナログ入力電圧に与える影響により第1のミラー積分器の積分結果に誤差分が生じたとすると、同時に電源電圧が原始基準電圧に与える影響により第2のミラー積分器の積分結果(基準電圧)にも誤差分が生じる。そして、それらの誤差分が第2積分プロセスで相殺されることになる。したがって、この発明において前述したレシオメトリック手法を採用すれば、電源電圧が急激に変動し、第1積分期間中の電源電圧と第2積分期間中の電源電圧とが異なる状態が生じても、そのことによるA/D変換誤差は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の2重積分式A/D変換回路の基本構成と動作原理を示す図である。
【図2】この発明の一実施例による2重積分式A/D変換回路の構成図である。
【図3】同上実施例回路の動作タイミング図である。
【符号の説明】
10 第1のミラー積分器
20 第2のミラー積分器
30 比較器
40 サンプルホールド回路
50 制御回路
60 カウンタ
【発明の属する技術分野】
この発明は2重積分式A/D変換技術に関し、とくに電源電圧の変動による精度低下を防止する技術改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、2重積分式A/D変換回路は変換時間が長いという弱点はあるものの、高分解能のA/D変換回路を比較的簡単に実現できるため、多くの分野で大量に使用されている。図1にはその基本的な回路構成と動作原理を示している。
【0003】
2重積分式A/D変換回路はミラー積分器1を中心に構成される。ミラー積分器1の入力段にはアナログ入力電圧Vinか基準電圧Vref のいずれかを印加するためのスイッチSW1とSW2が付帯しており、また積分コンデンサCを短絡してリセットするスイッチSW3もある。これらスイッチSW1〜SW3は制御回路2によりつぎのようにオン・オフされる。積分器1の出力電圧Vout は比較器3に入力され、アナロググランドVag=0と比較される。
【0004】
(1)初期化
スイッチSW3のみをオンとして積分コンデンサCを短絡し、積分器1の出力電圧Vout をゼロ(アナロググランドVag=0)にする。図中の時点t0から時点t1の期間である。
【0005】
(2)第1積分プロセス
時点t1から時点t2までの一定時間T1の間、スイッチSW1のみをオンとし、アナログ入力電圧Vinをミラー積分器1に印加して積分する。
【0006】
(3)第2積分プロセス
時点t2でスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとして、ミラー積分器1の入力を切り替え、アナログ入力電圧Vinに替えて基準電圧Vref をミラー積分器1に印加して積分する。基準電圧Vref は入力電圧Vinと逆極性の一定電圧である。
【0007】
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点t2からミラー積分回路1の出力電圧Vout がゼロ(アナロググランドVag=0)に達するまでの時間Txをカウンタ4によりディジタル計測する。つまり、制御回路2が時点t2から比較器3の出力が反転する時点t3までの期間、クロック発生器5からのクロック信号をカウンタ4に供給して計数させる。
【0008】
第1積分プロセスではアナログ入力電圧Vinを一定時間T1だけ積分するので、その終了時点t2での積分電圧Vout 2は入力電圧Vinに比例する。第2積分プロセスでは一定の基準電圧Vref を積分するので、積分出力Vout は一定の変化率で変化する。したがって、積分出力Vout =Vag=ゼロとなるまでの時間Txは時点t2の積分電圧Vout 2に比例する。つまり、時間Txはアナログ入力電圧Vinに比例する。時間Txに対応するカウンタ4のディジタル信号がアナログ入力電圧Vinのディジタル変換出力である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
(a)基準電圧と電源電圧と変換精度の関係
以上の動作原理から明らかなように、第2積分プロセスでの積分電圧Vout の変化率を決める基準電圧Vref の誤差や変動はA/D変換の誤差の原因となる。一般には基準電圧Vref は電源電圧からつくりだすが、できるだけ簡単な回路でできるだけ高精度・高安定の基準電圧Vref を発生することが重要である。コストなどの関係で、電源電圧から分割的に基準電圧Vref を得るような単純な基準電圧発生回路を採用した場合には、電源電圧の変動により基準電圧Vref が変動するので、高精度・高安定のA/D変換回路を実現するのは難しい。
【0010】
(b)レシオメトリック手法
前記の電源電圧変動による悪影響を低減する技術としてレシオメトリック手法が知られている。これは、電源電圧の変化による基準電圧Vref の変化と相似的にアナログ入力電圧Vinが変化する回路構成とし、両電圧Vref とVinの変動による影響分を相殺させる手法である。つまり、電源電圧Vddを抵抗分割して基準電圧Vref を発生させる場合、Vref は電源電圧Vddに比例する。また、サーミスタやストレインゲージにようなセンサ抵抗素子を含んだブリッジ回路などからアナログ入力電圧Vinが発生する場合、そのブリッジ回路を電源電圧Vddにより直接駆動すれば、VinはVddに比例する。したがって、電源電圧Vddの変動により基準電圧Vref が変化しても、それと比例的にアナログ入力電圧Vinも変化しているので、第1積分プロセスでの電源電圧変動の影響(Vinの変化による影響分)と、第2積分プロセスでの電源電圧変動の影響(Vref の変化による影響分)とが打ち消し合う。その結果、高精度で高安定なA/D変換を実現できる。
【0011】
(c)レシオメトリック手法でも解決できない問題点
前記のようにレシオメトリック手法は、第1積分プロセスで生じた変動成分を第2積分プロセスで生じる変動成分で打ち消すという原理である。したがって電源電圧が急激に変動し、第1積分期間中の電源電圧と第2積分期間中の電源電圧とが異なる状態が生じると、両期間の影響分が正確に相殺されず、A/D変換誤差が発生する。電池を電源とする携帯用小型電子機器などでは、電池の放電とともに大きく電圧が変動するし、機器の動作状況に応じて放電電流が急変すると、電源電圧が急変する。この種の電子機器に含まれている2重積分式A/D変換回路では、レシオメトリック手法を採用しても前記のような変換誤差をなくすことが難しい。
【0012】
この発明は前述した従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、レシオメトリック手法を使っても発生する変換誤差をさらに低減することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の2重積分式A/D変換方法および回路では以下の要件(1)〜(4)に従ってA/D変換を行う。
【0014】
(1)初期化
第1および第2の2つのミラー積分器を初期化する。
(2)第1積分プロセス
初期化後にアナログ入力電圧を第1のミラー積分器で一定時間だけ積分するとともに、まったく同時に前記と同じ一定時間だけ原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分する
(3)第2積分プロセス
第1積分プロセスの終了時点で第2のミラー積分器の出力電圧を基準電圧として保持すると同時に第1のミラー積分器の入力を切り替え、前記アナログ入力電圧に替えて前記基準電圧を第1の積分器に印加して積分する。このとき前記基準電圧は前記アナログ入力電圧と逆極性になるように印加する。
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点から第1の積分器の出力電圧が初期化電圧に達するまでの時間をディジタル計測する。
【0015】
つまり、アナログ入力電圧を第1のミラー積分器で積分する第1積分プロセス中に同時に、原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分し、その第2のミラー積分器の積分結果を基準電圧として保持する。この第1積分プロセスにおいて、電源電圧がアナログ入力電圧に与える影響により第1のミラー積分器の積分結果に誤差分が生じたとすると、同時に電源電圧が原始基準電圧に与える影響により第2のミラー積分器の積分結果(基準電圧)にも誤差分が生じる。そして、それらの誤差分が第2積分プロセスで相殺されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に図面とともに詳しく説明するように、この発明の2重積分式A/D変換方法を実施するには、スイッチを介してアナログ入力電圧が印加される第1のミラー積分器と、電源電圧を分割して原始基準電圧を発生する回路と、前記原始基準電圧がスイッチを介して印加される第2のミラー積分器と、第2のミラー積分器の出力電圧を保持するとともに、保持した電圧をスイッチを介して第1のミラー積分器に印加するサンプルホールド回路と、第1のミラー積分器の出力電圧と規定電圧とを比較する比較器とを集積した2重積分演算回路を用いる。
【0017】
また前記構成の2重積分演算回路に、A/D変換動作の開始を指令する信号に応動して各部に付帯した前記各スイッチを制御して前述のA/D変換手順を実行する制御回路を付加することができる。この構成の2重積分演算回路に、前記制御回路によって制御され、前記比較器の出力変化期間の時間をディジタル計測するカウンタを付加することで、この発明の2重積分式A/D変換回路が実現できる。
【0018】
前述のA/D変換手順を実行する制御回路や、前記比較器の出力変化期間の時間をディジタル計測するカウンタの機能を、マイコンによって実現することもできる。
【0019】
図2はこの発明の一実施例による2重積分式A/D変換回路の構成を示し、図3にはその動作タイミングと要部の動作波形を示している。
【0020】
第1のミラー積分器10はアンプA1と積分コンデンサC1と積分抵抗R1とリセットスイッチSW1とからなる。アナログ入力電圧Vref はスイッチSW2とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。この積分器10の出力電圧Vout は比較器30にてアナロググランドVag=0と比較される。
【0021】
第2のミラー積分器20はアンプA3と積分コンデンサC2と積分抵抗R2とリセットスイッチSW3とからなる。電源電圧Vddを抵抗R3とR4で分割した電圧が前述の原始基準電圧Vrである。スイッチSW4がオフでスイッチSW5がオンだと、原始基準電圧VrがバッファA4を介して第2のミラー積分器20に印加される。スイッチSW5をオフにしてスイッチSW4をオンにすると積分器20の出力電圧の変化は停止する。
【0022】
サンプルホールド回路40は電圧保持用のコンデンサC3とスイッチSW6〜SW10からなる。第1積分プロセスではスイッチSW6とSW10をオンにする(SW7・SW8・SW9はオフ)。すると、第2のミラー積分器20の出力でコンデンサC3が充電される。第1積分プロセスの終了時点t2でスイッチSW6をオフにすると、コンデンサC3にそのときの電圧(これが基準電圧Vref である)が保持される。時点t2で同時にスイッチSW9をオンにすると、コンデンサC3に保持した基準電圧Vref がスイッチSW9とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。なお、コンデンサC3に基準電圧Vref を保持した後、SW6とSW9とSW10をオフにし、SW7とSW8をオンにすると、基準電圧Vref の極性を反転させた電圧(−Vref )がSW7とバッファA2を介して第1のミラー積分器10に印加される。これはアナログ入力電圧Vinの極性が負の場合の動作モードである。
【0023】
制御回路50が各スイッチSW1〜SW10を以下のように制御することで (図3の表に整理して示している)、この発明の2重積分式A/D変換を実行する。この例では制御回路50にはクロック発生器も含まれるとする。カウンタ60は、第2積分プロセスの開始時点t2から比較器30の出力が反転するまでの時間Txをディジタル計測する。
【0024】
(1)初期化
スイッチSW1・SW3・SW4・SW7・SW10をオンにし(他はオフ)、2つのミラー積分器10と20をリセットする。
【0025】
(2)第1積分プロセス
A/D変換の開始を指令するトリガ信号が制御回路50に供給されると、時点t1から時点t2までの一定時間T1のあいだ、SW2をオン、SW1・SW7・SW9をオフとして第1のミラー積分器10でアナログ入力電圧Vinを積分する。同時に時点t1から時点t2までの一定時間T1のあいだ、SW5をオン、SW4とSW3をオフにして第2のミラー積分器20で原始基準電圧Vrを積分する。このときサンプルホールド回路40では、スイッチSW6とSW10をオン、SW7・SW8・SW9はオフとし、第2のミラー積分器20の出力でコンデンサC3を充電する。
【0026】
(3)第2積分プロセス
一定時間T1を経過した時点t2においてSW6をオフにし、そのときの第2のミラー積分器20の出力電圧を基準電圧Vref としてコンデンサC3に保持する。同時に時点t2において、SW2をオフ、SW9をオンとして第1のミラー積分器10の入力を切り替え、アナログ入力電圧Vinに替えてコンデンサC3に保持した基準電圧Vref を第1の積分器10に印加して積分する。なお第2の積分器20はリセットする。
【0027】
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点t2から第1のミラー積分回路10の出力電圧Vout がゼロ(アナロググランドVag=0)に達するまでの時間Txをカウンタ60によりディジタル計測する。つまり、制御回路50が時点t2から比較器30の出力が反転する時点t3までの期間、クロック信号をカウンタ60に供給して計数させる。時間Txのディジタル計数出力がアナログ入力電圧Vinのディジタル変換出力である。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、アナログ入力電圧を第1のミラー積分器で積分する第1積分プロセス中に同時に、原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分し、その第2のミラー積分器の積分結果を基準電圧として保持する。この第1積分プロセスにおいて、電源電圧がアナログ入力電圧に与える影響により第1のミラー積分器の積分結果に誤差分が生じたとすると、同時に電源電圧が原始基準電圧に与える影響により第2のミラー積分器の積分結果(基準電圧)にも誤差分が生じる。そして、それらの誤差分が第2積分プロセスで相殺されることになる。したがって、この発明において前述したレシオメトリック手法を採用すれば、電源電圧が急激に変動し、第1積分期間中の電源電圧と第2積分期間中の電源電圧とが異なる状態が生じても、そのことによるA/D変換誤差は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の2重積分式A/D変換回路の基本構成と動作原理を示す図である。
【図2】この発明の一実施例による2重積分式A/D変換回路の構成図である。
【図3】同上実施例回路の動作タイミング図である。
【符号の説明】
10 第1のミラー積分器
20 第2のミラー積分器
30 比較器
40 サンプルホールド回路
50 制御回路
60 カウンタ
Claims (5)
- 以下の要件(1)〜(4)を備えたことを特徴とする2重積分式A/D変換方法。
(1)初期化
第1および第2の2つのミラー積分器を初期化する。
(2)第1積分プロセス
初期化後にアナログ入力電圧を第1のミラー積分器で一定時間だけ積分するとともに、同時に前記と同じ一定時間だけ原始基準電圧を第2のミラー積分器で積分する。
(3)第2積分プロセス
第1積分プロセスの終了時点で第2のミラー積分器の出力電圧を基準電圧として保持すると同時に第1のミラー積分器の入力を切り替え、前記アナログ入力電圧に替えて前記基準電圧を第1の積分器に印加して積分する。このとき前記基準電圧は前記アナログ入力電圧と逆極性になるように印加する。
(4)時間計測
第2積分プロセスの開始時点から第1の積分器の出力電圧が初期化電圧に達するまでの時間をディジタル計測する。 - 請求項1に記載の方法に従ってA/D変換を行うことを特徴とする2重積分式A/D変換回路。
- 請求項1に記載の2重積分式A/D変換方法を実施するのに使用する回路であって、スイッチを介してアナログ入力電圧が印加される第1のミラー積分器と、電源電圧を分割して原始基準電圧を発生する回路と、前記原始基準電圧がスイッチを介して印加される第2のミラー積分器と、第2のミラー積分器の出力電圧を保持するとともに、保持した電圧をスイッチを介して第1のミラー積分器に印加するサンプルホールド回路と、第1のミラー積分器の出力電圧と規定電圧とを比較する比較器とを備えたことを特徴とする2重積分演算回路。
- 請求項1に記載の2重積分式A/D変換方法を実施するのに使用する回路であって、スイッチを介してアナログ入力電圧が印加される第1のミラー積分器と、電源電圧を分割して原始基準電圧を発生する回路と、前記原始基準電圧がスイッチを介して印加される第2のミラー積分器と、第2のミラー積分器の出力電圧を保持するとともに、保持した電圧をスイッチを介して第1のミラー積分器に印加するサンプルホールド回路と、第1のミラー積分器の出力電圧と規定電圧とを比較する比較器と、A/D変換動作の開始を指令する信号に応動して各部に付帯した前記各スイッチを制御して請求項1に記載の手順を実行する制御回路とを備えたことを特徴とする2重積分演算回路。
- 請求項4に記載の2重積分演算回路の構成に加えて、前記制御回路によって制御され、前記比較器の出力変化期間の時間をディジタル計測するカウンタを備えたことを特徴とする2重積分式A/D変換回路。
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