JP3627675B2 - 演奏データ編集装置及び方法並びにプログラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、トラックデータで構成される自動演奏データを加工処理可能な演奏データ編集装置及び方法並びにプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データ等の自動演奏データ(以下、単に「演奏データ」と称する)は一般に、複数種類の演奏パートに対応する複数のトラックデータで構成されるが、各トラック内の発音データが、音符の情報のみで構成される場合やベロシティ等の楽音特性データが一律である場合は、機械的で無表情であるため、感情を込め楽曲らしさを出すべく、これに表情付けを行うようにした演奏データ編集装置が知られている。この装置では、既成の演奏データを記憶媒体から読み出したり、DTM(デスクトップミュージック)でユーザが創作、入力したりして、当該演奏データの楽音特性(音長、音色、ベロシティのほか、エクスプレッション等を含むいわゆるコントロールチェンジ)を設定乃至変更するようにして、より自然な演奏、美しい演奏、生々しい演奏を実現することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、楽曲に表現力豊かに表情付けを行うには、ユーザは演奏データの各トラックの発音データについて適当な楽音特性を設定する必要があり、その作業は、楽器の特性やコンピュータミュージックを熟知していない初心者等にとっては困難であり、また、ある程度心得のある者にとっても繁雑で時間を要するものであった。
【0004】
一方、演奏家は、豊かな演奏をするために、楽譜上同じ音符であっても、場面によって異なる演奏を行う場合がある。このような演奏は各演奏家の感性に委ねられるものであり、画一的ではないもの、ある程度定型的な演奏手法が存在するものである。
【0005】
例えば、ギターのソロ演奏パートでは、同じようなフレーズが繰り返し登場する場合、複数回目のフレーズを、例えば音長が短くなるように演奏(パームミュート)することで、単調になるのを避け、演奏表現を豊かにすることがある。また、例えばギターのカッティングパートでは、50年代ロックンロールやビバップ、ブルース等で見られるように、ドラムスのスネアドラムとタイミング的に重なる拍のギターカッティングをミュートすることで、特徴的な演奏表現を行うことがある。
【0006】
このような、実際の演奏において行われる定型的な演奏手法を演奏データの加工、編集に取り入れられれば、自然で表情豊かな楽曲を実現する演奏データを初心者でも容易に編集することができると考えられる。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができる演奏データ編集装置及び方法並びにプログラムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の演奏データ編集装置は、発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集装置であって、前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析手段と、前記比較解析手段による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、同一フレーズが、楽音特性が同一のまま繰り返されることを避け、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができ、特に、単調な繰り返しを避けて多彩な表情を付与することができる。
【0010】
また、請求項2の演奏データ編集装置は、上記請求項1記載の構成において、前記特性変更手段による楽音特性の変更は、前記演奏データの所望範囲について楽音特性を一括して変更する一括変更処理、及び、演奏データについて楽音特性を変更しつつ該楽音特性が変更された発音データを再生用に出力するリアルタイム変更処理の、少なくとも一方によりなされることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、演奏データの表情付けを一括して行うことができ、あるいは、表情付けされた楽音をリアルタイムで再生することができる。
【0012】
また、請求項3の演奏データ編集装置は、上記請求項1または2記載の構成において、前記比較解析手段は、前記前後関係にある発音データ同士の比較を小節単位で行うことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、前後関係にある発音データ同士の比較が小節単位で行われる。よって、処理を簡単にすることができる。
【0014】
また、請求項4の演奏データ編集装置は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成において、前記トラックデータは、ギターのソロ演奏パートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ギターのソロ演奏パートの表情を豊かにすることができる。
【0016】
本発明の請求項5の演奏データ編集装置は、発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集装置であって、前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析手段と、前記比較解析手段による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性の変更処理を行う。これにより、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができ、特に、定型的な演奏等の経験則に基づいて自然な表情付けを行うことができる。
【0018】
また、請求項6の演奏データ編集装置は、上記請求項5記載の構成において、前記特性変更手段による楽音特性の変更は、前記演奏データの所望範囲について楽音特性を一括して変更する一括変更処理、及び、演奏データについて楽音特性を変更しつつ該楽音特性が変更された発音データを再生用に出力するリアルタイム変更処理の、少なくとも一方によりなされることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、演奏データの表情付けを一括して行うことができ、あるいは、表情付けされた楽音をリアルタイムで再生することができる。
【0020】
また、請求項7の演奏データ編集装置は、上記請求項6記載の構成において、前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データは、ドラムスパートにおけるスネアドラムに対応する発音データであることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、スネアドラムの演奏タイミングで楽音特性を変更することで自然な表情付けを行うことができる。
【0022】
また、請求項8の演奏データ編集装置は、上記請求項5〜7のいずれか1項に記載の構成において、前記所定のトラックデータは、ギターのカッティングパートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、ギターのカッティングパートについて自然な表情付けを行うことができる。
【0024】
また、請求項9の演奏データ編集装置は、上記請求項5〜8のいずれか1項に記載の構成において、前記他のトラックデータは、ドラムスパートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ドラムスパートの演奏に応じた自然な表情付けを行うことができる。
【0026】
本発明の請求項10の演奏データ編集方法は、発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法であって、前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析工程と、前記比較解析工程による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更工程とを有することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0028】
本発明の請求項11の演奏データ編集方法は、発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法であって、前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析工程と、前記比較解析工程による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更工程とを有することを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、請求項5と同様の作用効果を奏する。
【0030】
本発明の請求項12のプログラムは、発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析手順と、前記比較解析手順による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0032】
本発明の請求項13のプログラムは、発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析手順と、前記比較解析手順による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、請求項5と同様の作用効果を奏する。
【0034】
なお、請求項1〜9において、前記特性変更手段による前記楽音特性の変更は、例えば、音長変更、音色変更、音量変更及び付与効果変更の少なくとも1つによりなされるように構成してもよい。例えば、パームミュート等の処理を施すことで、自然で豊かな表情付けがなされる。
【0035】
なお、請求項1〜9において、前記特性変更手段により楽音特性が変更された発音データに基づいて前記演奏データを更新保存する処理、及び変更された発音データを再生用に出力する処理の少なくとも一方を行うようにしてもよい。これにより、例えば、記憶されている演奏データについて楽音特性を変更し、元の演奏データを変更後のデータに更新して記憶すれば、演奏データの表情付けを一括して行うことができる。また、内部記憶または外部機器等から、演奏データを読み出しつつ楽音特性を変更する場合は、変更後の発音データを再生出力することで、表情付けされた楽音をリアルタイムで再生することができる。
【0036】
なお、請求項12または13記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明を構成する。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態に係る演奏データ編集装置の全体構成を示すブロック図である。本演奏データ編集装置は、例えば、DTM(デスクトップミュージック)を行えるパーソナルコンピュータとして構成される。
【0039】
本装置は、押鍵検出回路3、スイッチ検出回路4、ROM6、RAM7、タイマ8、表示制御回路9、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ(FDD)10、ハードディスクドライブ(HDD)11、CD−ROM(コンパクトディスク−リード・オンリ・メモリ)ドライブ12、MIDIインターフェイス(MIDII/F)13、通信インターフェイス(通信I/F)14、音源回路15、効果回路16及びマウス情報検出回路20が、バス18を介してCPU5(比較解析手段、特性変更手段)にそれぞれ接続されて構成される。
【0040】
さらに、押鍵検出回路3には鍵盤1が接続され、スイッチ検出回路4にはパネルスイッチ2が接続されている。マウス情報検出回路20にはスイッチを有する平面移動自在のマウス21が接続され、表示制御回路9には例えばLCD若しくはCRTで構成される表示装置19が接続されている。CPU5にはタイマ8が接続され、MIDII/F13には他のMIDI機器100が接続されている。通信I/F14には通信ネットワーク101を介してサーバコンピュータ102が接続され、音源回路15には効果回路16を介してサウンドシステム17が接続されている。
【0041】
押鍵検出回路3は鍵盤1の各鍵(不図示)の押鍵状態を検出する。パネルスイッチ2は、各種情報を入力するための複数のスイッチ(不図示)を備える。スイッチ検出回路4は、パネルスイッチ2の各スイッチの押下状態を検出する。CPU5は、本装置全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、自動演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。表示制御回路9は、表示装置19に楽譜等の各種情報を表示させる。
【0042】
FDD10は、記憶媒体であるフロッピー(登録商標)ディスク(FD)24をドライブする。FD24には、上記制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、及び各種データ等が格納される。外部記憶装置であるHDD11は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種データ等を記憶する。CD−ROMドライブ12は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種データ等が格納されているCD−ROM(不図示)をドライブする。
【0043】
MIDII/F13は、他のMIDI機器100等の外部装置からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。通信I/F14は、通信ネットワーク101を介して、例えばサーバコンピュータ102とデータの送受信を行う。音源回路15は、FDD10、CD−ROMドライブ12またはMIDII/F13等から入力された自動演奏データを楽音信号に変換する。効果回路16は、音源回路15から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital−to−Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム17は、効果回路16から入力される楽音信号等を音響に変換する。マウス情報検出回路20は、マウス21の移動情報やスイッチオン/オフ等の操作情報を検出する。
【0044】
なお、本実施の形態では、音源回路15は、その名称の通りすべてハードウェアで構成したが、これに限らず、一部ソフトウェアで構成し、残りの部分をハードウェアで構成してもよいし、また、すべてソフトウェアで構成するようにしてもよい。
【0045】
HDD11には、前述のようにCPU5が実行する制御プログラムを記憶することができる。ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、このHDD11内のハードディスクに制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等を容易に行うことができる。
【0046】
CD−ROMドライブ12によりCD−ROMから読み出された制御プログラムや各種データは、HDD11内のハードディスクにストアされる。これにより、制御プログラムの新規インストールやバージョンアップ等を容易に行うことができる。なお、このCD−ROMドライブ12以外にも、外部記憶装置として、光磁気ディスク(MO)装置等、様々な形態のメディアを利用するための他の装置を設けるようにしてもよい。
【0047】
なお、MIDII/F13は、専用のものに限らず、RS−232CやUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインターフェースより構成してもよい。この場合、MIDIメッセージ以外のデータをも同時に送受信してもよい。
【0048】
通信I/F14は、上述のように、LAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット、電話回線等の通信ネットワーク101に接続されており、該通信ネットワーク101を介して、サーバコンピュータ102と接続される。HDD11内のハードディスクに上記各プログラムや各種パラメータが記憶されていない場合には、通信I/F14は、サーバコンピュータ102からプログラムやパラメータをダウンロードするために用いられる。クライアントとなるコンピュータ(本実施の形態では演奏データ編集装置)は、通信I/F14及び通信ネットワーク101を介してサーバコンピュータ102へとプログラムやパラメータのダウンロードを要求するコマンドを送信する。サーバコンピュータ102は、このコマンドを受け、要求されたプログラムやパラメータを、通信ネットワーク101を介してコンピュータへと配信し、コンピュータが通信I/F101を介して、これらプログラムやパラメータを受信してHDD11内のハードディスクに蓄積することにより、ダウンロードが完了する。
【0049】
この他、外部コンピュータ等との間でデータのやりとりを直接行うためのインターフェイスを備えるようにしてもよい。
【0050】
本装置では、自動演奏データの編集を行える。自動演奏データは、発音データが複数のトラックに入力されて編成されたものであり、各トラック内の発音データがそれぞれ対応するチャネルに出力され、楽音が合わせて発生されることで自動演奏データの再生がなされる。
【0051】
自動演奏データは、上述したように、FDD10、CD−ROMドライブ12、MIDII/F13または通信I/F14を介して読み出し乃至入力される。また、自動演奏データはユーザが創作して鍵盤1やマウス21等で入力することもできる。読み出しあるいは入力された自動演奏データは、RAM7に格納されると共に表示装置19に表示され、後述する表情付け処理等、各種処理の対象となる。なお、本実施の形態では、自動演奏データは、MIDIデータのほか、音声波形データ等の他の形式のデータであってもよい。
【0052】
また、自動演奏データのフォーマットは、演奏イベントの発生時刻を一つ前のイベントからの時間で表した「イベント+相対時間」、演奏イベントの発生時刻や曲や小節内における絶対時間で表した「イベント+絶対時間」、音符の音高と符長(あるいは休符と休符長)で演奏データを表した音高(休符)+符長方式、演奏の最小分割能毎にメモリの領域を確保し、[演奏イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域に演奏イベントを記憶した「ベタ」方式等、どのような形式であってもよく、いずれのフォーマットを採用しても、周知の技術によって簡単に自動演奏処理を実現することができる。
【0053】
図2は、本実施の形態におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。本処理は電源のオン時に開始される。
【0054】
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、RAM7等の各種レジスタをクリアして初期設定を行う(ステップS201)。次いで、後述する図3、図4のパネル処理を実行、すなわちパネルスイッチ2やマウス21の操作を受け付け、機器の設定や演奏データの編集等の指示を実行する(ステップS202)。次いで、後述する図8の演奏信号の生成処理を実行し(ステップS203)、生成された演奏信号に基づき発音処理を実行する(ステップS204)。この発音処理では例えば、自動再生処理を実行している場合は、読み出した演奏データから生成された演奏信号に設定された効果処理を付加し、増幅して出力する。その後、前記ステップS202に戻る。
【0055】
図3及び図4は、図2のステップS202で実行されるパネル処理のフローチャートを示す図である。
【0056】
まず、パネル入力があったか否か、すなわちパネルスイッチ2やマウス21による何らかの操作があったか否かを判別する(ステップS301)。その判別の結果、パネル入力がなかった場合は直ちに本処理を終了する一方、パネル入力があった場合は、それが演奏データの編集処理の指示であるか否かを判別する(ステップS302)。その判別の結果、演奏データの編集処理の指示でない場合は、パネル入力が自動演奏に関する設定指示であるか否かを判別する(ステップS303)。その判別の結果、パネル入力が自動演奏に関する設定指示でない場合は、パネル入力に基づくその他の指示を実行して(ステップS315)、本処理を終了する。
【0057】
前記ステップS302の判別の結果、パネル入力が演奏データの編集処理の指示である場合は、編集処理メニューの表示を行う(ステップS316)。編集処理メニューには、例えば、表情付け処理の実行指示、表情付け処理の態様種類、処理対象となる演奏データ(トラックデータ)やその範囲の指定等が含まれる。ここで、本実施の形態では、表情付け処理には主な態様として少なくとも2種類あり、これらを以下、「表情付けA」、「表情付けB」と称する。詳細例は後述するが、「表情付けA」は、同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較解析した結果に基づいて、後側の発音データの楽音特性を変更する処理である。「表情付けB」は、あるトラックと他のトラックとで同時期の関係にある発音データ同士を比較解析した結果に基づいて、発音データの楽音特性を変更する処理である。なお、表情付け処理の態様種類は同時に複数を選択可能である。
【0058】
次に、上記メニュー表示を介してユーザによる処理の選択を受け付け(ステップS317)、表情付け処理の実行指示が選択されたか否かを判別する(ステップS318)。その判別の結果、表情付け処理の実行指示が選択された場合は、HDD11等に記憶されている(内蔵の)自動演奏データを読み出し(ステップS320)、後述する図5の表情付け処理を実行する(ステップS321)。
【0059】
ここで、「表情付け処理」は、感情を込め楽曲らしさを出すべく行われるものである。すなわち、演奏データは、人間が実際に楽器で演奏するような微妙な演奏表現が付与されていないことから、それ自体では機械的で無表情であるので、機械的な硬い感じをなくし、人間的な感じを擬似的に出せるように後から加工処理を行うものである。表情付けのためのパラメータとしては、音長、音色をはじめ、抑揚を補うための効果指示データ(例えば、ピッチベンド、コントロールチェンジ等であり、「Continuous Data」とも称する)等が用いられる。
【0060】
また、自動演奏データは、トラックデータで構成される。各トラックデータは、例えば、ギターソロパート、ギターカッティングパート、ピアノパート、ドラムスパートというように、楽器乃至演奏形態に対応して複数存在し、各トラックは1つの発音チャネルに割り当てられる。トラックデータは発音データで構成され、発音データには、少なくとも音高、発音タイミング及び発音時間長を規定するデータが含まれる。発音データにはこのほか、音色をはじめ、必要に応じて上記効果指示データが設定される。
【0061】
次に、変更データ記録、すなわち、前記ステップS321で表情付け処理がされた変更後のデータを一旦記録しておく(ステップS322)。次に、全データの処理が終了したか否かを判別する(ステップS323)。ここで、全データとは、編集処理対象となっている1曲分の演奏データである場合もあるが、演奏データ中の処理対象として指定された指定範囲のデータである場合もあり、前記ステップS317での指定に基づき定まる。
【0062】
その判別の結果、全データの処理が終了していない場合は前記ステップS321に戻る一方、全データの処理が終了した場合は、更新処理を行う(ステップS324)。すなわち、前記ステップS322で記憶された変更後のデータに基づき、元の演奏データを表情付け処理後の演奏データに上書き更新してHDD11に保存する処理を行う。その後、本処理を終了する。
【0063】
一方、前記ステップS318の判別の結果、表情付け処理の実行指示が選択されていない場合は、ユーザの選択に基づくその他の指示を実行して(ステップS319)、本処理を終了する。
【0064】
前記ステップS303の判別の結果、パネル入力が自動演奏に関する設定指示である場合は、ステップS304に進み、自動演奏に関する設定指示が外部入力の設定、すなわち外部機器から入力される演奏データを演奏することに関連する設定であったか否かを判別し、その判別の結果、外部入力の設定であった場合は、ユーザによる外部機器や曲等の選択を受け付ける(ステップS305)。ここでは、前記ステップS317と同様に、表情付け処理の実行指示、表情付け処理の態様種類、処理対象となる演奏データ(トラックデータ)やその範囲の指定等の選択が受け付けられる。次に、前記ステップS306での選択に応じて外部機器の信号の処理を設定し(ステップS306)、本処理を終了する。
【0065】
なお、このステップS305で実行指示が設定される表情付け処理は、後述するように演奏データを再生しつつ行われるものであるので、特に「リアルタイム表情付け処理」とも称する。これに対し、前記ステップS317で設定される表情付け処理は、後述するように内蔵された演奏データの所望範囲について一括して表情付けするものであるので、こちらは特に「一括表情付け処理」とも称する。
【0066】
一方、前記ステップS304の判別の結果、外部入力の設定でない場合は、演奏曲の設定、すなわち、例えばHDD11に格納された内蔵の演奏データを指定して読み出す処理の設定であるか否かを判別する(ステップS307)。その判別の結果、演奏曲の設定である場合は、ユーザによる選択を受け付け(ステップS308)、選択された演奏曲に係る演奏データを読み出し、演奏曲として設定して(ステップS309)、本処理を終了する一方、演奏曲の設定でない場合は、ステップS310に進む。
【0067】
ステップS310では、再生指示であったか否かを判別し、その判別の結果、再生指示であった場合は、指定された演奏データの再生を開始して(ステップS311)、本処理を終了する一方、再生指示でない場合は、停止指示であったか否かを判別する(ステップS312)。その判別の結果、停止指示であった場合は、演奏データの再生を停止して(ステップS313)、本処理を終了する一方、停止指示でない場合は、設定指示に基づくその他の指示を実行して(ステップS314)。本処理を終了する。
【0068】
図5は、本実施の形態における表情付け処理のフローチャートを示す図である。本処理は、「一括表情付け処理」として図3のステップS321で実行され、あるいは「リアルタイム表情付け処理」として後述する図8のステップS804で実行される。
【0069】
ここで、表情付け処理は、各種楽器に対応するトラックデータに適用可能であるが、特にギターの音色はマニュアル的に処理することが困難であるため、自動処理を行うことが有効である。そこで、本実施の形態では、前記ステップS317またはステップS305で、処理対象となるトラックデータとして、ギターのパートが選択された場合を例示する。なお、本実施の形態では、ギターパートのうちカッティングパートとソロパートとが別々のトラックデータとして記録されている場合を例示する。また、「表情付けA」はギターソロ演奏パートが処理対象となり、「表情付けB」は、ギターカッティングパートが処理対象となる。
【0070】
まず、今回のトラックデータ(以下、単に「今回のデータ」とも称する)を取得する(ステップS501)。ここで、今回のデータは、ギターのパートだけでなく、例えば、ピアノやドラムス等、同じ曲を構成する他の楽器のパートのトラックデータも含んでいる。なお、本実施の形態では、発音データの楽音特性を変更する特性変更処理を行うが、この変更処理の必要性判断及び変更処理を、処理の簡単のために1小節単位で行う。従って、「今回のデータ」は本処理が繰り返される毎に1小節ずつ進むことになる。なお、上記判断及び処理の単位は必ずしも1小節単位に限定されるものではない。
【0071】
次に、表情付けAが選択されているか否かを判別する(ステップS502)。その判別の結果、表情付けAが選択されていない場合は、ステップS509に進み、表情付けBが選択されているか否かを判別する。その判別の結果、表情付けBが選択されていない場合は、ステップS515に進んで、「表情付けA」でも「表情付けB」でもない表情付け処理である「その他の表情付け」が選択されているか否かを判別する。その判別の結果、「その他の表情付け」が選択されてない場合は、本処理を終了する。
【0072】
前記ステップS502の判別の結果、「表情付けA」が選択されている場合は、上記取得した今回のデータを蓄積する(ステップS503)。ここでは、ギターパートのうちソロパートのトラックデータのみが蓄積される。なお、前後関係にある発音データ同士を比較する必要から、本表情付け処理が繰り返されても、ステップS503で蓄積されるデータは保持されて累積される。例えば、「一括表情付け処理」ではパネル処理(図3、図4)が終了するまで保持され、「リアルタイム表情付け処理」では指定された演奏データの自動再生が終了するまで保持される。
【0073】
次に、ステップS504では、過去と今回とのデータパターンを比較解析する。すなわち、上記蓄積された発音データと今回の発音データとを比較し、今回の小節の発音データに基づくフレーズ(今回のフレーズ)と同一または類似のフレーズが上記蓄積された発音データに基づくフレーズ(過去のフレーズ)中に存在するかどうかを検索、解析する。従って、同一曲のギターソロパートのトラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士が比較され、似たようなフレーズの繰り返しがあるかどうかが解析されることになる。
【0074】
次に、上記比較解析の結果に基づき、今回のデータが「表情付けA」による表情付け処理を施すべき「A対象」であるか否かを判別する(ステップS505)。ここで、上記比較解析の結果、今回のフレーズと同一または類似のものが過去のフレーズ中に存在する場合に「A対象」であると判別される。
【0075】
ここで、同一フレーズであるためには、小節単位で音高配列が同じであること、すなわち、発音データの構成が同じである必要がある。一方、類似フレーズには、小節単位で音高配列が同じで音長が相違する場合のほか、音高の変化パターンが類似しているような場合も含まれる。例えば、トランスポーズのように、音符が上下に平行移動されたような場合や、各音符の発音タイミングが均等に延びて音符配列順序を維持したままフレーズが2小節(あるいは半小節)に亘る長さになったような場合等である。なお、処理を簡単にする観点からは、「A対象」をフレーズが同一である場合に限定してもよい。
【0076】
前記ステップS505の判別の結果、「A対象」でない場合はステップS509に進む一方、「A対象」である場合は、今回のデータについて既に他で何らかの表情付け処理がなされているか否かを判別する(ステップS506)。その判別の結果、他で何らの表情付け処理もなされていない場合は、今回のデータの楽音特性を変更処理して(ステップS507)、ステップS509に進む。この楽音特性の変更処理は、例えば、音長変更、音色変更、音量変更及び上記付与される効果指示データの変更の少なくとも1つによりなされる。その一例を図6で説明する。
【0077】
図6は、「表情付けA」による楽音特性の変更処理の一例を示す図である。本例は、ギターのソロ演奏パートのトラックデータについて処理を行った場合を示す。
【0078】
同図(a)が過去、同図(b)が今回のデータの音符配列を示す。同図(c)、(d)はそれぞれ音高パターンをピアノロール図で表したものである。同じフレーズが過去に存在しているので、本例では「表情付けA」として今回のデータにパームミュートを施すようにする。すなわち、同図(c)から同図(d)のように、各音高の音長が短くなるように発音データの特性を変更する。これにより、単調な繰り返しが回避される。なお、パームミュートは、実際の演奏では右手のひらをブリッジ近傍で軽く弦に当ててピッキングするか、あるいは左手による押さえをやや浮かした状態でピッキングすることでなされる。データ処理としては、割り当てられる音源を、サンプリング音源をミュートした音源に切り替えることや、フィルタ処理と音長の変更(音長を短く、ブライトネスをかける)等によって行うようにしてもよく、これらによってもパームミュートを実現可能である。
【0079】
図5に戻り、前記ステップS506の判別の結果、今回のデータについて既に他で何らかの表情付け処理がなされている場合は、変更状態を考慮して今回のデータの特性の再変更処理を行って(ステップS508)、ステップS509に進む。例えば、既になされている表情付け処理によって、フレーズの繰り返しによる単調さが回避されているような場合は、あえて再変更処理を行う必要はない。しかし、既になされている表情付け処理が単調さの回避とは別目的であるようなものである場合は、その元の処理は残したまま新たに上記パームミュートを施すようにしてもよいし、元の処理をクリアして上記パームミュートを施すようにしてもよい。なお、その際の判断を画面表示等でユーザに促し、ユーザが選択できるように構成してもよい。なお、ステップS508では、「表情付けA」による処理を一律に全く行わないようにしてもよい。
【0080】
前記ステップS509の判別の結果、「表情付けB」が選択されている場合は、ステップS510に進み、前記ステップS501で取得された今回のデータのうち、ギターカッティングパートのデータ(所定のトラックデータ)と発音タイミングがほぼ同時期となる他のトラックデータとを比較解析する。
【0081】
ここで、「他のトラックデータ」は、楽曲に応じて、また処理対象となるトラックデータに応じて定めればよいが、本実施の形態では、ギターカッティングパートを処理対象としたので、「他のトラックデータ」はドラムスパートにおけるスネアドラムの発音データ(所定の発音データ)とする。従って、同一曲のギターカッティングパートとドラムスパートの特にスネアドラムとの間で、時間的に略同時期の関係にある発音データ同士が比較され、両者に発音タイミングの重なりがあるかどうかが解析されることになる。
【0082】
次に、上記比較解析の結果に基づき、今回のデータが「表情付けB」による表情付け処理を施すべき「B対象」であるか否かを判別する(ステップS511)。ここで、上記比較解析の結果、ギターカッティングとスネアドラムとが略同一タイミングで発音される関係にある場合に、「B対象」であると判別される。
【0083】
前記ステップS511の判別の結果、「B対象」でない場合はステップS515に進む一方、「B対象」である場合は、今回のデータについて既に他で何らかの表情付け処理がなされているか否かを判別する(ステップS512)。その判別の結果、他で何らの表情付け処理もなされていない場合は、今回のデータの楽音特性を変更処理して(ステップS513)、ステップS515に進む。この楽音特性の変更処理は、例えば、音長変更、音色変更、音量変更及び上記効果指示データの少なくとも1つによりなされる。その一例を図7で説明する。
【0084】
図7は、「表情付けB」による楽音特性の変更処理の一例を示す図である。本例は、ギターのカッティング演奏パートのトラックデータについて処理を行った場合を示す。
【0085】
同図(a)は各楽器の演奏パートの一部を楽譜で示したものであり、ギター、ベース及びドラムスの各演奏パートが示されている。元の演奏データでは、小節P1のようなギターカッティングが行われるとき、同時期のドラムスパートでは、スネアドラムの音SN1、SN2が発音されるように設定されている。そこで、同図(b)に示すように、小節P1におけるギターカッティングについて、スネアドラムの音SN1、SN2と同じタイミングの拍(第2、第4表拍)の発音をミュートするように変更する。
【0086】
小節P2については、ドラムスパートは小節の反復記号REにより小節P1と同じ発音がなされるように設定されている。従って、小節P2におけるギターカッティングについても同様に、スネアドラムの音SN1、SN2と同じタイミングの発音をミュートするように変更する。なお、この場合のミュートは音量を低くするものであるが、パームミュートとしてもよい。
【0087】
このような手法は、実際の演奏では50年代ロックンロール、ビバップ、ブルース、ヘビーメタル等で見られ、フィルインやリフ(繰り返し部分)でなされるスネアドラムに対しても行われる。これを自動演奏データに反映させることで、経験則に基づいて自然な表情付けを行うことができる。
【0088】
図5に戻り、前記ステップS512の判別の結果、今回のデータについて既に他で何らかの表情付け処理がなされている場合は、変更状態を考慮して今回のデータの特性の再変更処理を行って(ステップS514)、ステップS515に進む。例えば、既になされている表情付け処理によって、「表情付けB」と同様の処理が適当な程度に施されている場合は、あえて再変更処理を行う必要はないが、処理の内容や程度に応じて再変更処理を行うようにしてもよい。なお、前記ステップS508の場合と同様に、再変更処理の可否をユーザが選択できるように構成したり、「表情付けB」による処理を一律に全く行わないようにしたりしてもよい。
【0089】
前記ステップS515の判別の結果、「その他の表情付け」が選択されている場合は、当該「その他の表情付け」に従った処理を行い、本処理を終了する。
【0090】
なお、前記ステップS504では、同一または類似のフレーズの検索は、各種反復記号を示すデータを手掛かりに行うようにしてもよく、従って、繰り返し演奏部分について適用してもよい。
【0091】
なお、前記ステップS507における楽音特性の変更処理では、2度目に登場する同一または類似のフレーズについては変更せず、3度目以降から変更するようにしてもよい。また、同一または類似のフレーズが3度以上登場する場合は、変更処理の態様(パラメータや変更の度合い等)は同じにしてもよいが、その都度、例えば、2度目と3度目とで異ならせるようにしてもよい。
【0092】
また、前記ステップS513において、同じような態様の特性変更処理が複数小節繰り返される場合は、単調さを避けるため、2度目以降の小節について異なる態様で特性変更処理を行うようにしてもよい。その際、重み付けやランダム性等を取り入れたルールを設定して制御するようにしてもよい。
【0093】
なお、「表情付けA」及び「表情付けB」の態様、すなわち、前記ステップS507またはS513で行われる変更処理は、上記例示したミュート等に限定されず、楽器の種類や曲想等に応じて処理態様を設定してもよいし、ユーザが曲毎に設定するようにしてもよい。
【0094】
図8は、図2のステップS203で実行される演奏信号の生成処理のフローチャートを示す図である。
【0095】
まず、自動演奏が再生中か、すなわち内蔵の自動演奏データに基づく自動演奏が開始されているか否かを判別し(ステップS801)、その判別の結果、自動演奏が再生中である場合は、ステップS803に進む一方、自動演奏が再生中でない場合は、ステップS802に進み、外部機器からの演奏データの再生中か、すなわち、外部機器から入力される演奏データに基づく自動演奏が開始されているか否かを判別する。その判別の結果、外部機器からの演奏データの再生中でない場合は、ステップS806に進む一方、外部機器からの演奏データの再生中である場合は、前記ステップS803に進む。
【0096】
ステップS803では、「リアルタイム表情付け処理」が設定されているか否かを判別する。その判別の結果、「リアルタイム表情付け処理」が設定されていない場合は前記ステップS806に進む一方、「リアルタイム表情付け処理」が設定されている場合は、ステップS804に進んで、図5の表情付け処理を実行する。
【0097】
この表情付け処理では、上述の通り、「今回のデータ」について上記「表情付けA」、「表情付けB」等の特性変更処理がなされる場合もあれば、全く処理がなされない場合もある。次に、ステップS805では、前記ステップS804の処理を経た「今回のデータ」に対応する楽音信号を再生出力用に生成して、ステップS806に進む。
【0098】
ステップS806〜S811では、鍵盤1等によるリアルタイム演奏を行う。すなわち、ステップS806では、演奏操作子の入力があったか否かを判別する。演奏操作子には鍵盤1の鍵、フットペダル、効果ボタン等の各種操作子が含まれる。その判別の結果、演奏操作子の入力がなかった場合は本処理を終了する一方、演奏操作子の入力があった場合は、それがキーオンであるか否かを判別する(ステップS807)。
【0099】
その判別の結果、演奏操作子の入力がキーオンである場合は、それに対応する楽音信号を生成し(ステップS808)、本処理を終了する一方、演奏操作子の入力がキーオンでない場合は、演奏操作子の入力がキーオフであるか否かを判別する(ステップS809)。その判別の結果、演奏操作子の入力がキーオフである場合は、それに対応する楽音信号の発音を停止する制御を行って(ステップS810)、本処理を終了する。一方、演奏操作子の入力がキーオフでない場合は、演奏操作子(ペダル等)の入力に応じたその他の楽音処理を実行して(ステップS811)、本処理を終了する。
【0100】
本処理によれば、内蔵または外部機器からの自動演奏データの再生が設定されている場合は、自動演奏データが、必要に応じて表情付け処理が施されつつ、リアルタイムで再生される。
【0101】
本実施の形態によれば、例えば、ギターのソロ演奏パートにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較解析し、フレーズが同一または類似である場合に、後方の発音データにパームミュートかけるようにしたので、単調な繰り返しを避けて多彩な表情を付与し、ギターのソロ演奏パートの表情を豊かにすることができる。
【0102】
また、ギターカッティングの発音データとドラムスパートにおけるスネアドラムの発音データとが略同一タイミングで発音される関係にある場合に、スネアドラムの発音と同じタイミングの拍のギターカッティングの発音データにミュートをかけるようにしたので、経験則に基づいて、ギターのカッティングパートについて自然な表情付けを行うことができる。
【0103】
上記のような表情付け処理手法はギター以外のパートのトラックデータにも応用可能であり、よって、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができる。
【0104】
なお、「表情付けB」では、比較するパートがスネアドラムに限定されず、バスドラムや他のリズム楽器等、曲想によってはあらゆるものへの適用が考えられる。
【0105】
なお、本発明を達成するためのソフトウェアによって表される制御プログラムを記憶した記憶媒体を、本装置に読み出すことによって同様の効果を奏するようにした場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、プログラムコードが電送媒体等を介して供給される場合は、プログラムコード自体が本発明を構成することになる。なお、これらの場合の記憶媒体としては、ROMのほか、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0106】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1、10、12によれば、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができ、特に、単調な繰り返しを避けて多彩な表情を付与することができる。
【0108】
また、請求項2によれば、演奏データの表情付けを一括して行うことができ、あるいは、表情付けされた楽音をリアルタイムで再生することができる。
【0109】
また、請求項3によれば、処理を簡単にすることができる。
【0110】
また、請求項4によれば、ギターのソロ演奏パートの表情を豊かにすることができる。
【0111】
本発明の請求項5、11、13によれば、楽曲の表情を豊かにする演奏データの編集を音楽知識や経験の少ない者でも簡単に行うことができ、特に、定型的な演奏等の経験則に基づいて自然な表情付けを行うことができる。
【0112】
また、請求項6によれば、演奏データの表情付けを一括して行うことができ、あるいは、表情付けされた楽音をリアルタイムで再生することができる。
【0113】
また、請求項7によれば、スネアドラムの演奏タイミングで楽音特性を変更することで自然な表情付けを行うことができる。
【0114】
また、請求項8によれば、ギターのカッティングパートについて自然な表情付けを行うことができる。
【0115】
また、請求項9によれば、ドラムスパートの演奏に応じた自然な表情付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る演奏データ編集装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】メインルーチンのフローチャートを示す図である。
【図3】図2のステップS202で実行されるパネル処理のフローチャートを示す図である。
【図4】図2のステップS202で実行されるパネル処理の図3の続きのフローチャートを示す図である。
【図5】表情付け処理のフローチャートを示す図である。
【図6】「表情付けA」による楽音特性の変更処理の一例を示す図である。
【図7】「表情付けB」による楽音特性の変更処理の一例を示す図である。
【図8】図2のステップS203で実行される演奏信号の生成処理のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
1 鍵盤、 3 押鍵検出回路、 5 CPU(比較解析手段、特性変更手段)、 6 ROM、 7 RAM、 9 表示制御回路、 11 ハードディスクドライブ(HDD)、 15 音源回路、 16 効果回路、 17 サウンドシステム、 19 表示装置

Claims (13)

  1. 発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集装置であって、
    前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析手段と、
    前記比較解析手段による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更手段とを備えたことを特徴とする演奏データ編集装置。
  2. 前記特性変更手段による楽音特性の変更は、前記演奏データの所望範囲について楽音特性を一括して変更する一括変更処理、及び、演奏データについて楽音特性を変更しつつ該楽音特性が変更された発音データを再生用に出力するリアルタイム変更処理の、少なくとも一方によりなされることを特徴とする請求項1記載の演奏データ編集装置。
  3. 前記比較解析手段は、前記前後関係にある発音データ同士の比較を小節単位で行うことを特徴とする請求項1または2記載の演奏データ編集装置。
  4. 前記トラックデータは、ギターのソロ演奏パートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の演奏データ編集装置。
  5. 発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集装置であって、
    前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析手段と、
    前記比較解析手段による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更手段とを備えたことを特徴とする演奏データ編集装置。
  6. 前記特性変更手段による楽音特性の変更は、前記演奏データの所望範囲について楽音特性を一括して変更する一括変更処理、及び、演奏データについて楽音特性を変更しつつ該楽音特性が変更された発音データを再生用に出力するリアルタイム変更処理の、少なくとも一方によりなされることを特徴とする請求項5記載の演奏データ編集装置。
  7. 前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データは、ドラムスパートにおけるスネアドラムに対応する発音データであることを特徴とする請求項6記載の演奏データ編集装置。
  8. 前記所定のトラックデータは、ギターのカッティングパートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の演奏データ編集装置。
  9. 前記他のトラックデータは、ドラムスパートに対応する演奏トラックデータであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の演奏データ編集装置。
  10. 発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法であって、
    前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析工程と、
    前記比較解析工程による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰 り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更工程とを有することを特徴とする演奏データ編集方法。
  11. 発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法であって、
    前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析工程と、
    前記比較解析工程による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更工程とを有することを特徴とする演奏データ編集方法。
  12. 発音データを有するトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
    前記演奏データ中の同一トラックデータにおいて時間的に前後関係にある発音データ同士を比較して同一フレーズの繰り返しがあるか否かを解析する比較解析手順と、
    前記比較解析手順による比較解析の結果、同一フレーズの繰り返しがある場合は、該繰り返される同一フレーズのうち時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性を変更することで、前記時間的に後方のフレーズを構成する発音データの楽音特性が時間的に先方のフレーズを構成する発音データの楽音特性と異なるようにする特性変更手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
  13. 発音データを有する複数のトラックデータで構成される演奏データを加工処理可能な演奏データ編集方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
    前記演奏データ中の前記複数のトラックデータのうち、所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記所定のトラックデータ以外の他のトラックデータ中の所定の発音データの発音タイミングとが略同一であるか否かを比較解析する比較解析手順と、
    前記比較解析手順による比較解析の結果、前記所定のトラックデータ中の発音データの発音タイミングと前記他のトラックデータ中の前記所定の発音データの発音タイミングとが略同一である場合は、前記所定のトラックデータ中の前記発音データの発音タイミングを変更することなく音長変更、音色変更、ミュート及び付与効果変更の少なくとも1つを行うことで該発音データの楽音特性を変更する特性変更手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
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