JP3651428B2 - 演奏信号処理装置及び方法並びにプログラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、演奏データの楽音特性の変更等、編集が可能な演奏信号処理装置及び方法並びにプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データ等の演奏データは、音符の情報のみで構成される場合やベロシティ等の楽音特性データが一律である場合は、機械的で無表情であるため、感情を込め楽曲らしさを出すべく、これに表情付けを行うようにした演奏信号処理装置が知られている。この装置では、既成の演奏データを記憶媒体から読み出したり、DTM(デスクトップミュージック)でユーザが創作、入力したりして、当該演奏データの楽音特性(ベロシティ、エクスプレッション等)の変更を行うようにして、より自然な演奏、美しい演奏、生々しい演奏を実現することができる。
【0003】
表情付けを行う場合、元のオリジナル演奏データの楽音特性を変更した後、変更後の演奏データに書き換えることが通常であり、一般的には、表情付けをしたために演奏データを記憶させるチャネル数が増加するようなことはない。ところが、近年、楽音特性を個々の発音データ毎に修正して微妙な表情付けを行うことが求められており、同一チャネル内で演奏データを書き換えることに限定したのでは、より豊かな表情付けを施すのが困難になってきた。
【0004】
例えば、ギター等のように、独立した複数の弦によって同時に複数音が発音される楽器を演奏データで実現した場合は、弦毎にチャネルを異ならせることで複雑な弦操作を表現できる。すなわち、ギターを模した演奏データに表情付けをする場合、運指を判断した上で楽音特性を変更した方が、より生々しい表情を付けやすくなる。その際、運指による弦の違いに応じて、演奏データとしても弦に応じたチャネル分離を行えば、複数弦による和音演奏等で効果を発揮すると考えられる。そのため、ギターを模した演奏データに表情付けをする場合は、運指に応じた弦毎の分離処理が有効となる。
【0005】
図13は、表情付けに際し、演奏データ、乃至運指を評価してチャネル分離を行った場合における生成データ群の一例を示す図であり、トラックビューで表示されている。
【0006】
同図(a)に示すように、まず、オリジナルの演奏データはチャネル(ch)1に割り当てられているものとする。オリジナルの演奏データについて、表情付けを行いたい時間的区間を指定して、例えば、区間Aについてチャネル分離を行うと、生成データA1、A2、A3、A4というように4つに分離された生成データが生成される(同図(b))。ギターでいえば、例えば生成データA1が第1弦に対応し、生成データA3が第3弦に対応するというように、運指を判断した上で各弦毎に演奏データが分離されたわけである。この場合、まず、生成データA1、A2、A3、A4はチャネル(ch)1、2、3、4にそれぞれ記憶される(割り当てられる)。
【0007】
次に、既にチャネル分離した区間とは異なる区間についてチャネル分離を行う場合、例えば、区間Bを指定して同様にチャネル分離したとすると、生成データB1、B2、B3、B4が生成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この場合、従来のチャネル割り当ての手法によれば、生成データA1、A2、A3、A4が割り当てられているチャネル(ch)1、2、3、4は、既に使用済みと判断されるため、他の未使用のチャネル、例えば、チャネル(ch)5、6、7、8に生成データB1、B2、B3、B4が割り当てられることになる。同様に、その後、区間Cを指定してチャネル分離した場合は、生成された生成データC1、C2、C3、C4が、チャネル(ch)9、10、11、12にそれぞれ割り当てられることになる。
【0009】
このように、従来の演奏信号処理装置でチャネル分離をして表情付けを行う場合は、同一のオリジナル演奏データについて区間毎にチャネル分離をしたとき、新たに分離された生成データの割り当てチャネルとして未使用のチャネルが選択されるため、処理を繰り返す毎に使用チャネル数が膨らみ、チャネルを有効に使えなくなるという問題があった。
【0010】
さらに、一旦表情付けがなされたデータを含む区間について、表情付けを再度行いたい場合がある。しかし、既に分離された生成データの1つが音符を意味するデータではなく、フレットノイズ等の効果音を意味するデータであるというような場合には、その生成データだけは表情付けの対象外としてそのままの状態を保持したり、表情付けの邪魔になるということで消去したりしたい場合もある。
【0011】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、使用チャネル数を無用に増やすことなく、分離したデータ毎の表情付けを行うことができる演奏信号処理装置及び方法並びにプログラムを提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、意図に沿った自然な表情付けを行うことができる演奏信号処理装置及び方法並びにプログラムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項1の演奏信号処理装置は、オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手段と、前記区間指定手段により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離手段と、記データ分離手段により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当手段と、前記チャネル割当手段により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更手段とを備え、前記チャネル割当手段は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定手段により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の演奏信号処理装置は、上記請求項1記載の構成において、前記チャネル割当手段は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記過去に指定された区間において分離データを割り当てたチャネルの数に比し、前記今回指定された区間における分離データの数が同数以下の場合は、前記今回指定された区間におけるすべての分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶し、一方、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記過去に指定された区間において分離データを割り当てたチャネルの数に比し、前記今回指定された区間における分離データの数が大きい場合は、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのすべてと該複数のチャネルとは別の新たなチャネルとに、前記今回指定された区間における分離データの各々を割り当てて記憶することを特徴とする。
また、請求項3の演奏信号処理装置は、上記請求項1または2記載の構成において、前記チャネル割当手段は、前記今回指定された区間における分離データの各々の特性に基づいて、該分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする。
【0017】
また、請求項の演奏信号処理装置は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成において、記チャネル割当手段により割り当てられたチャネルを特定するための特定情報を、前記複数の分離データのうちの少なくとも1つが割り当てられて記憶されるチャネルに記憶する特定情報記憶手段を有し、前記チャネル割当手段は、前記今回指定された区間における分離データの各々を、前記特定情報記憶手段により記憶された特定情報で特定される複数のチャネルに割り当てて記憶することを特徴とする。
【0019】
なお、マルチチャネルを利用できる場合は、同一のマルチチャネルトラックに分離データを生成し、トラック内の各イベントが個々にチャネルを管理するようにして、チャネルを割り当てるようにしてもよい。
【0020】
上記第2の目的を達成するために本発明の請求項の演奏信号処理装置は、複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手段と、前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択手段と、前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手段により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間が指定され、指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルが選択される。そして、指定された区間内の複数の分離データのうち、選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、対象チャネル毎に楽音特性変更処理が施され得る。これにより、例えば、一旦楽音特性が変更されたデータを含む区間について、楽音特性の変更を再度行う際に、所望の割り当てチャネルのデータについてのみ表情付けを行うことを可能として、意図に沿った自然な表情付けを行うことができる。
【0022】
また、請求項の演奏信号処理装置は、上記請求項記載の構成において、前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手段により選択されなかった非対象チャネル割り当てられ記憶されている分離データを、前記指定された区間内において消去する消去手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項の演奏信号処理方法は、オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定工程と、前記区間指定工程により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離工程と、記データ分離工程により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当工程と、前記チャネル割当工程により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更工程とを有し、前記チャネル割当工程は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定工程により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする。
【0026】
上記第2の目的を達成するために本発明の請求項の演奏信号処理方法は、複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定工程と、前記区間指定工程により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択工程と、前記区間指定工程により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択工程により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更工程とを有することを特徴とする。
【0028】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項のプログラムは、演奏信号処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手順と、前記区間指定手順により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離手順と、記データ分離手順により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当手順と、前記チャネル割当手順により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更手順とを実行させるためのプログラムであり、前記チャネル割当手順は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定手順により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする。
【0030】
上記第2の目的を達成するために本発明の請求項10のプログラムは、演奏信号処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手順と、前記区間指定手順により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択手順と、前記区間指定手順により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手順により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更手順とを実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0032】
なお、請求項9または10記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明を構成する。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態に係る演奏信号処理装置の全体構成を示すブロック図である。本演奏信号処理装置は、例えば、DTM(デスクトップミュージック)を行えるパーソナルコンピュータとして構成される。
【0035】
本演奏信号処理装置は、押鍵検出回路3、スイッチ検出回路4、ROM6、RAM7(チャネル記憶手段)、タイマ8、表示制御回路9、フロッピ(登録商標)ディスクドライブ(FDD)10、ハードディスクドライブ(HDD)11、CD−ROM(コンパクトディスク−リード・オンリ・メモリ)ドライブ12、MIDIインターフェイス(MIDII/F)13、通信インターフェイス(通信I/F)14、音源回路15、効果回路16及びマウス情報検出回路20が、バス18を介してCPU5(データ分離手段、楽音特性変更手段、チャネル割当手段、消去手段)にそれぞれ接続されて構成される。
【0036】
さらに、押鍵検出回路3には鍵盤1が接続され、スイッチ検出回路4にはパネルスイッチ2が接続されている。マウス情報検出回路20にはスイッチを有する平面移動自在のマウス21(区間指定手段、チャネル選択手段の一部)が接続され、表示制御回路9には例えばLCD若しくはCRTで構成される表示装置19(チャネル選択手段の一部)が接続されている。タイマ8はCPU5にも接続され、MIDII/F13には他のMIDI機器100が接続されている。通信I/F14には通信ネットワーク101を介してサーバコンピュータ102が接続され、音源回路15には効果回路16を介してサウンドシステム17が接続されている。
【0037】
押鍵検出回路3は鍵盤1の各鍵(不図示)の押鍵状態を検出する。パネルスイッチ2は、各種情報を入力するための複数のスイッチ(不図示)を備える。スイッチ検出回路4は、パネルスイッチ2の各スイッチの押下状態を検出する。CPU5は、本装置全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムやテーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、楽譜表示用画像データ、テキストデータ等の各種入力情報及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。表示制御回路9は、表示装置19に楽譜等の各種情報を表示させる。
【0038】
FDD10は、記憶媒体であるフロッピー(登録商標)ディスク(FD)24をドライブする。FD24には、上記制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、及び各種データ等が格納される。外部記憶装置であるHDD11は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種データ等を記憶する。CD−ROMドライブ12は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種データ等が格納されているCD−ROM(不図示)をドライブする。
【0039】
MIDII/F13は、他のMIDI機器100等の外部装置からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。通信I/F14は、通信ネットワーク101を介して、例えばサーバコンピュータ102とデータの送受信を行う。音源回路15は、FDD10、CD−ROMドライブ12またはMIDII/F13等から入力された自動演奏データ等の楽曲データを楽音信号に変換する。効果回路16は、音源回路15から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム17は、効果回路16から入力される楽音信号等を音響に変換する。マウス情報検出回路20は、マウス21の移動情報やスイッチオン/オフ等の操作情報を検出する。
【0040】
なお、本実施の形態では、音源回路15は、その名称の通り、すべてハードウェアで構成したが、これに限らず、一部ソフトウェアで構成し、残りの部分をハードウェアで構成してもよいし、また、すべてソフトウェアで構成するようにしてもよい。
【0041】
HDD11には、前述のようにCPU5が実行する制御プログラムを記憶することができる。ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、このHDD11内のハードディスクに制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等を容易に行うことができる。
【0042】
CD−ROMドライブ12によりCD−ROMから読み出された制御プログラムや各種データは、HDD11内のハードディスクにストアされる。これにより、制御プログラムの新規インストールやバージョンアップ等を容易に行うことができる。なお、このCD−ROMドライブ12以外にも、外部記憶装置として、光磁気ディスク(MO)装置等、様々な形態のメディアを利用するための他の装置を設けるようにしてもよい。
【0043】
なお、MIDII/F13は、専用のものに限らず、RS−232CやUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインターフェースより構成してもよい。この場合、MIDIメッセージ以外のデータをも同時に送受信してもよい。
【0044】
通信I/F14は、上述のように、LAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット、電話回線等の通信ネットワーク101に接続されており、該通信ネットワーク101を介して、サーバコンピュータ102と接続される。HDD11内のハードディスクに上記各プログラムや各種パラメータが記憶されていない場合には、通信I/F14は、サーバコンピュータ102からプログラムやパラメータをダウンロードするために用いられる。クライアントとなるコンピュータ(本実施の形態では演奏信号処理装置)は、通信I/F14及び通信ネットワーク101を介してサーバコンピュータ102へとプログラムやパラメータのダウンロードを要求するコマンドを送信する。サーバコンピュータ102は、このコマンドを受け、要求されたプログラムやパラメータを、通信ネットワーク101を介してコンピュータへと配信し、コンピュータが通信I/F101を介して、これらプログラムやパラメータを受信してHDD11内のハードディスクに蓄積することにより、ダウンロードが完了する。
【0045】
この他、外部コンピュータ等との間でデータのやりとりを直接行うためのインターフェイスを備えるようにしてもよい。
【0046】
演奏データは、上述したように、FDD10、CD−ROMドライブ12、MIDII/F13、通信I/F14を介して読み出し乃至入力される。また、演奏データはユーザが創作して鍵盤1やマウス21等で入力することもできる。読み出しあるいは入力された演奏データは、RAM7に格納されると共に表示装置19に表示され、後述する表情付け処理等、各種編集処理の対象となる。なお、本実施の形態では、演奏データは、MIDIデータのほか、音声波形データ等の他の形式のデータであってもよい。
【0047】
また、演奏データのフォーマットは、演奏イベントの発生時刻を一つ前のイベントからの時間で表した「イベント+相対時間」、演奏イベントの発生時刻や曲や小節内における絶対時間で表した「イベント+絶対時間」、音符の音高と符長(あるいは休符と休符長)で演奏データを表した音高(休符)+符長方式、演奏の最小分割能毎にメモリの領域を確保し、演奏イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域に演奏イベントを記憶した「ベタ」方式等、どのような形式であってもよく、いずれのフォーマットを採用しても、周知の技術によって簡単に自動演奏処理を実現することができる。
【0048】
図2は、本実施の形態におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。本処理は電源のオン時に開始される。
【0049】
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、RAM7等の各種レジスタをクリアして初期設定を行う(ステップS201)。次いで、後述する図3、図4のパネル処理を実行、すなわちパネルスイッチ2やマウス21の操作を受け付け、機器の設定や演奏データの編集等の指示を実行する(ステップS202)。次いで、演奏信号を生成して(ステップS203)、発音処理を実行する(ステップS204)。例えば、再生処理を実行している場合は、演奏データを読み出し、設定された効果処理を付加し、増幅して出力する。あるいは、通常の演奏のための処理、すなわちリアルタイム演奏処理を実行している場合は、押鍵された鍵に対応するキーコード(音高情報)、ベロシティ(音量情報)、及びキーオン/オフの信号が押鍵検出回路16により検出され、その検出信号が音源回路14に送信され、そのとき指定されている音色の楽音が再生される。
【0050】
前記ステップS204の処理後、前記ステップS202に戻る。
【0051】
図3及び図4は、図2のステップS202で実行されるパネル処理のフローチャートを示す図である。
【0052】
まず、パネル入力があったか否か、すなわちパネルスイッチ2やマウス21による何らかの操作があったか否かを判別する(ステップS301)。その判別の結果、パネル入力がなかった場合は直ちに本処理を終了する一方、パネル入力があった場合は、それが演奏データの編集処理の指示であるか否かを判別する(ステップS302)。その判別の結果、演奏データの編集処理の指示でない場合は、パネル入力が自動演奏に関する設定指示であるか否かを判別する(ステップS303)。その判別の結果、パネル入力が自動演奏に関する設定指示でない場合は、パネル入力に基づくその他の指示を実行して(ステップS315)、本処理を終了する一方、パネル入力が自動演奏に関する設定指示である場合は、ステップS304に進む。
【0053】
ステップS304では、自動演奏に関する設定指示が外部入力の設定、すなわち外部機器から入力される演奏データを演奏することに関連する設定であったか否かを判別し、その判別の結果、外部入力の設定であった場合は、ユーザによる外部機器や曲等の選択を受け付け(ステップS305)、選択に応じて外部機器の信号の処理を設定して(ステップS306)、本処理を終了する。一方、前記ステップS304の判別の結果、外部入力の設定でない場合は、演奏曲の設定、すなわち、RAM7に格納された演奏データを指定して読み出す処理の設定であるか否かを判別する(ステップS307)。
【0054】
その判別の結果、演奏曲の設定である場合は、ユーザによる選択を受け付け(ステップS308)、選択された演奏曲に係る演奏データを読み出し、演奏曲として設定して(ステップS309)、本処理を終了する一方、演奏曲の設定でない場合は、ステップS310に進む。
【0055】
ステップS310では、再生指示であったか否かを判別し、その判別の結果、再生指示であった場合は、指定された演奏データの再生を開始して(ステップS311)、本処理を終了する一方、再生指示でない場合は、停止指示であったか否かを判別する(ステップS312)。その判別の結果、停止指示であった場合は、演奏データの再生を停止して(ステップS313)、本処理を終了する一方、停止指示でない場合は、設定指示に基づくその他の指示を実行して(ステップS314)。本処理を終了する。
【0056】
前記ステップS302の判別の結果、パネル入力が演奏データの編集処理の指示である場合は、編集処理メニューの表示を行う(ステップS316)。編集処理メニューには、例えば、表情付け処理の実行指示、マージ処理の実行指示、及びこれらの処理対象となる演奏データの指定等が含まれる。次に、上記メニュー表示を介してユーザによる編集処理の選択を受け付け(ステップS317)、表情付け処理が選択されたか否かを判別する(ステップS318)。その判別の結果、表情付け処理が選択された場合は、後述する図5、図6の表情付け処理を実行して(ステップS319)、本処理を終了する。
【0057】
一方、前記ステップS318の判別の結果、表情付け処理が選択されていない場合は、マージ処理が選択されたか否かを判別し(ステップS320)、その判別の結果、マージ処理が選択された場合は、マージ処理を実行して(ステップS321)、本処理を終了する一方、マージ処理が選択されない場合は、ユーザの選択に基づくその他の指示を実行して(ステップS322)、本処理を終了する。
【0058】
ここで、本実施の形態では、演奏データを構成する発音データには、少なくとも発音タイミング及び発音時間長を規定するデータが含まれる。発音データにはこのほか、音色をはじめ、必要に応じて各種コントロールチェンジ(ビブラート、エフェクト(リバーブ、コーラス、ディレイ等)、音色の変化等)等の効果指示データが設定される。マージ処理の対象となる演奏データは表情付けがなされたものであってもよいし、未だ表情付けがなされていないものであってもよい。ここで、「マージ処理」は、複数のトラックに入力された発音データを併合してより少ないトラックに取り込み合併する処理をいう。例えば、2つのトラックは、そのままでは異なる2つのチャネルに割り当てられるべきところ、2つのトラックの発音データを1つのトラックにマージした場合は、マージ後のトラックが1つのチャネルに割り当てられることになり、占有されるチャネル数が減少する。
【0059】
「マージ処理」は例えば、次のようにしてなされる。
【0060】
すなわち、決定した組み合わせに係る各トラック(内の発音データ)に存在する効果指示データを検出し、
(a)上記組み合わせに係るいずれのトラックにも効果指示データが存在しない場合
(b)存在する効果指示データが異なる効果指示データではない場合
(c)各トラック内の発音データ同士をトラック間で比較し、発音データの発音時間帯に重複がない場合
のいずれかに該当する場合は、上記組み合わせに係る複数のトラックを1つのトラックにマージ、すなわち、合併処理する。
【0061】
図5、図6は、図3のステップS319で実行される表情付け処理のフローチャートを示す図である。図7〜図11は、表情付けに際し、表示装置19に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【0062】
本表情付け処理の前には、図7〜図11の各図(a)に示すように、演奏データが表示装置19にトラックビューで表示(例えば、楽譜表示やピアノロール表示等)されているものとする。オリジナルの演奏データはチャネル(ch)1に記憶されているものとし、後述するチャネル分離がなされている時間的区間では、チャネル(ch)1以外のチャネルにも分離データが記憶されている場合もある。
【0063】
まず、1曲分の演奏データのうちユーザが表情付けを行いたい時間的区間の指定を受け付ける(ステップS501)。区間指定は例えば、表示されている演奏データに対してマウス21を用いて始点及び終点を指定することでなされる。区間の受け付けは、小節単位で行うようにしてもよい。
【0064】
次に、指定された区間が複数のチャネルで構成されているか否かを判別する(ステップS502)。例えば、図7(a)に示すように、区間Aに関して、未だチャネル分離がなされていない状態では、オリジナルの演奏データがチャネル(ch)1にのみ記憶されており、この状態で区間Aが指定された場合は、判定の答は「NO」となる。一方、図11(a)に示すように、チャネル分離がなされている区間が指定された場合は、判定の答は「YES」となる。
【0065】
その判別の結果、指定された区間が複数のチャネルで構成されていない場合は、ステップS503に進み、演奏データの解析を行う。すなわち、演奏データがチャネル分離をすべきデータであるか否かを解析する。例えば、ギター等での複数同時発音に対応するようなデータである場合は、チャネル分離をすべきデータであると判別される。次に、上記解析の結果に基づき、演奏データがチャネル(ch)分離の対象であるか否かを判別する(ステップS504)。その判別の結果、演奏データがチャネル分離の対象である場合は、チャネル分離処理を実行する(ステップS505)。
【0066】
ここで、チャネル分離処理は、例えば、本出願人が提案した手法(特願2000−345170号:演奏データを逆方向に走査し、運指付けや表情付け処理を行う手法)等により行うことができる。
【0067】
例えば、同時に複数発音がされるような演奏データについて、音高や運指を評価することで各弦に対応する発音データを解釈し、同時発音数がより少ない(例えば単音の)生成データを複数生成する。図7でいえば、区間Aについてチャネル分離を行うと、生成データA1、A2、A3、A4というように4つに分離された生成データが生成される。ギターを例にとれば、例えば、生成データA1は第1弦、生成データA2、A3、A4は第4、5、6弦にそれぞれ対応するものとして分離生成される。なお、本実施の形態では、生成データA1は、オリジナルの演奏データを置換してチャネル(ch)1に記憶されるようにしている。しかし、オリジナルの演奏データをチャネル(ch)1にそのまま残し、チャネル(ch)2以降に各生成データを記憶するようにしてもよい。
【0068】
次に、上記分離した各生成データに表情付けを施す(ステップS506)。すなわち、生成データA1、A2、A3、A4のそれぞれについて、付随する楽音特性を変更する。楽音特性の変更態様は、各生成データ毎に異ならせることができる。表情付けの手法としては、演奏データ中の音符に対して表情が付与される確率を決定し、その確率と乱数を使って適当な数の音符を表情付与対象とする手法(特願2000−168592号)、曲データを複数の区分に分割し、抑揚データの各区分毎に抑揚データを時間的に伸張して、抑揚データで規定されるパラメータの時間的変化に基づいて曲データの区分の楽音特性を制御する手法(特願2000−380371号)等がある(いずれも本出願人により提案)。また、表情付けに際し、演奏データを逆方向(後ろから前)に走査することで、運指付けを適切に行う手法もある(特願2000−345170号)(本出願人により提案)。これらの場合、「楽音特性」としては、例えば、ベロシティ、エクスプレッション、発音のタイミングのほか、各種コントロールチェンジの値を対象とすることができる。
【0069】
次に、過去に取得したチャネルをサーチする(ステップS507)。ここで、「過去に取得したチャネル」とは、事前に、後述するステップS512またはステップS522で記録されたチャネルである。
【0070】
次に、分離したチャネル数、すなわちチャネル分離処理で分離生成した生成データの数が、上記サーチしたチャネル数より多いか否かを判別する(ステップS508)。その判別の結果、分離したチャネル数がサーチしたチャネル数より多い場合は、新たに空きチャネルを取得して(ステップS509)、ステップS510に進む一方、分離したチャネル数がサーチしたチャネル数と同じか、またはサーチしたチャネル数より少ない場合は、新たな空きチャネルを取得することなく前記ステップS510に進む。
【0071】
ステップS510では、分離された各生成データの特性(例えば、生成データA1は第1弦に対応し、生成データA2は第4弦に対応する等)を考慮しチャネルを割り当て、続くステップS511では、割り当てたチャネルに演奏データ(各生成データ)を記憶させる。次に、生成データの記憶に使用されたチャネルを記録して(ステップS512)、本処理を終了する。
【0072】
なお、表情付け処理後の演奏データは、一旦はRAM7に記憶されるが、パネル処理の終了する毎にユーザの指定する記憶装置(例えば、HDD11やFDD10)に記憶される。
【0073】
ここで、前記ステップS505〜S512の処理の具体例を図7〜図10を用いて説明する。
【0074】
例えば、図7(a)に示すように、他のいずれの区間においても未だチャネル分離がなされていない状態で区間Aが指定され、区間Aをチャネル分離した結果、生成データが4つであった場合は、前記ステップS507でサーチされるチャネル数は「1」(チャネル(ch)1のみ)であるので、前記ステップS509では3つのチャネルが新たに取得されることになる。そして、前記ステップS510、S511では、図7(b)に示すように、生成データA1、A2、A3、A4がそれぞれチャネル(ch)1、(ch)2、(ch)3、(ch)4に割り当てられ、記憶される。次いで、前記ステップS512では、使用チャネルであるチャネル(ch)1〜チャネル(ch)4を特定する情報(以下、「特定情報」と称する)が記憶される。
【0075】
ここで、使用チャネルを特定する情報の記憶の手法は種々考えられるが、例えば、第1の手法では、「特定情報」を生成データA1に対応させてチャネル(ch)1に記憶する。この場合、チャネル(ch)1以外の他のチャネル(ch)2〜(ch)4を示す情報をメタイベント等の形式で記憶する。このようにすると、その後の区間の表情付け処理の際、既にチャネル分離されている他の区間におけるチャネル(ch)1の「チャネル特定情報」を参照することで、取得済みのチャネルを認識することができる。なお、チャネル(ch)1にオリジナルの演奏データをそのまま残すようにした場合においても、チャネル(ch)1に「特定情報」を記憶するようにすればよい。
【0076】
また、第2の手法では、分離処理の結果をグルーピングして管理する。これは、同一トラック内に複数のチャネル属性が混在する形式、すなわち、トラック内のイベントが個々にチャネルを管理する、いわゆるマルチチャネルをサポートしていることを前提に行える。具体的には、同一のマルチチャネルトラックに生成データA1〜A4を生成することで、「特定情報」の記憶に代える。このようにすると、その後の区間の表情付け処理の際、そのマルチチャネルトラックにおける他の区間で使用されているチャネルを調べることで、取得済みのチャネルを認識することができ、チャネル割り当てが効率的になる。
【0077】
また、第3の手法では、マルチチャネルを用いず、生成データA1〜A4が同一のオリジナルの演奏データから分離生成されたものであることを示す情報(以下、「識別情報」と称する)を「特定情報」として記憶しておく。「識別情報」は、生成データA1〜A4の各々に対応させて記憶する。
【0078】
なお、上記第2、第3の手法のように、分離後の各生成データを同一の演奏データから派生したものとしてグルーピングする方法をとった場合、グルーピングの手法は、オリジナルのトラックにグループとなるトラックを記憶する方法でもよいし、別途設けたグルーピング用のテーブルを用いる手法によってもよい。
【0079】
上記第1の手法では、生成データを生成した後に、チャネル変更をした場合は、変更の監視を逐一行う必要があるが、上記第2、第3の手法によれば、その必要がなく、煩雑さが解消される点で有利である。
【0080】
すなわち、第1の手法のデメリットは、「特定情報」を演奏データ側に持たせている点にある。「特定情報」を演奏データ側に持たせると、本装置以外の装置によって演奏データが編集された場合、「特定情報」が持つ対応関係が崩れる場合がある。
【0081】
例えば、生成データA1〜A4が生成された際、それぞれチャネル(ch)1〜(ch)4という対応関係が成立して、その情報を「特定情報」に持たせたとする。その後、別の編集装置によって、生成データA1の割り当てチャネルがチャネル(ch)1から(ch)8に変更されたとする。その後、本装置によって、他の区間の分離処理を行う場合、生成データA1がチャネル(ch)8に変更されたことを知っていないと、チャネル(ch)1は使用済みと判断されるため、新たに余計なチャネルを確保することになる。
【0082】
ところが、生成データA1のチャネル(ch)が変更されたことを知るためには、常に「特定情報」の変更を監視している必要がある。これは、様々な種類の編集機能が同時に動作するシステムにおいては、はなはだ困難な処理になる。その点、第2、第3の手法だと、生成データA1がどのチャネルに対応しているのかは、実際に他の区間の分離処理を行う段階で初めて調べるので、別の装置による編集による矛盾を起こす可能性が少なくなる。
【0083】
図7(b)に示すように区間Aの分離及び表情付けがなされた後、図8(a)に示すように、区間Bが指定区間とされた場合は、次のようになる。まず、図8(b)に示すように、生成データが4つ生成された場合、図6の前記ステップS507では、区間Aにおけるチャネル(ch)1に記憶された特定情報を参照することによって(第1の手法の場合)、区間Aで既に取得され使用されているチャネル(ch)1〜(ch)4がサーチされる。従って、サーチされたチャネル数は「4」であるので、新たなチャネル取得はなされず、前記ステップS510、S511では、図8(b)に示すように、生成データB1、B2、B3、B4がそれぞれチャネル(ch)1、(ch)2、(ch)3、(ch)4に割り当てられ、記憶される。
【0084】
次いで、前記ステップS512では、区間Aの場合と同様に、特定情報が記憶される。ここでは、生成データB1に対応付けられてチャネル(ch)1に記憶される。次回以降(例えば、区間C以降)では、それ以前に記憶された特定情報で特定されるチャネル数の最大値以内であれば、新たなチャネル取得はなされず、取得済みのチャネルが優先的に割り当てられることになる。
【0085】
また、分離されたチャネル数が既に取得したチャネル数より少ない場合は、図9に示すように、チャネルを余らせて割り当てる。その場合にも、上述したように、各生成データの特性を考慮して割り当てるチャネルが決定される。例えば、図9(b)では、生成データB1、B2、B3が、チャネル(ch)1、(ch)2、(ch)4に割り当てられている。
【0086】
また、分離されたチャネル数が既に取得したチャネル数より多い場合は、図6の前記ステップS509で新たなチャネルが取得される。例えば、図10に示すように、生成データB1〜B4がチャネル(ch)1〜(ch)4に、生成データB5が新たなチャネル(ch)5に、それぞれ割り当てられ、記憶される。
【0087】
なお、このように、既に取得されたチャネル数と新たな指定区間における分離チャネル数とが一致しない場合は、各生成データが何番目の生成データなのかを連番等によって記憶しておくことで、指定区間同士で特定の生成データを同じチャネルに割り当てることが容易になる。また、分離されたチャネル数が既に取得したチャネル数より少ない場合は、音符がない弦に対応するチャネルにも、ノイズ音等、何らかのデータを生成して、必ず既得のチャネル数に一致させるようにしてもよい。
【0088】
図5、図6のフローチャートに戻り、前記ステップS504の判別の結果、演奏データがチャネル分離の対象でない場合は、演奏データに表情付けを施し(ステップS513)、表情付け処理後の演奏データを記憶して(ステップS514)、本処理を終了する。この場合、表情付け処理後の演奏データは、オリジナルの演奏データに置き換えて記憶してもよいし、オリジナルの演奏データを残したまま別のチャネルに記憶するようにしてもよい。
【0089】
一方、前記ステップS502の判別の結果、指定された区間が複数のチャネルで構成されている場合は、ステップS515に進み、表示装置19にダイアログを表示させる。例えば、図11(a)に示すように、区間Cにおける演奏データが既に4つのチャネルに分離されているような場合が該当する。このような状況は、同図(a)に示すように、隣接する区間A、Bについて個々に表情付け処理をした後に、区間A、Bを包含して区間Cとして指定した場合等に生じるが、区間A、を指定して表情付け処理をした後に区間Aを再度指定した場合にも生じる。なお、区間Cの各生成データが既に実際に表情付けがなされているか否かは問わない。
【0090】
図12は、表示装置19に表示されるダイアログの一例を示す図である。
【0091】
同図に示す「チャネル」欄は、指定された区間Cにおける生成データの割り当てチャネル(ch)1〜(ch)4である。同図に示す「有効」欄は、これから実際にチャネル分離乃至表情付けを行う対象としたい生成データを指定するためのチェック欄である。同図に示す「消去」欄は、チャネル分離乃至表情付けの対象から外してデータとしても消去することを指定するためのチェック欄である。
【0092】
事前の表情付け(区間A、B)の際、例えば、生成データA4は音符を意味するデータではなく、フレットノイズ等の効果音を意味するデータであるという場合もある。そのような場合は、表情付けを再度行う際に、表情付けの対象外としてそのままの状態を保持したい場合がある。あるいは、表情付けの邪魔になるということで、消去したい場合もある。上記ダイアログは、このようなユーザの希望を受け付けるために表示されるものである。
【0093】
例えば、「有効」欄にチェックがされたチャネルに割り当てられている生成データだけがその後の表情付け等の処理対象となる。「有効」欄にチェックがされていないチャネル(非対象チャネル)に割り当てられている生成データは処理対象とならず、しかも、そのうち「消去」欄にチェックがされたチャネルに割り当てられている生成データは、その区間(区間C)において消去されることになる。
【0094】
なお、同図に示す「パート」欄は「チャネル」欄とは必ずしも番号が一致しない。例えば、「パート」NO.1、2、3、4に対して「チャネル」1、4、5、6が対応する場合もある。
【0095】
次に、ステップS516では、対象チャネルの受け付けを行う。ユーザは、例えば、マウス21を用いて、上記ダイアログ上で、「有効」欄及び必要に応じて「消去」欄にチェックを付し、「OK」をクリックすることで、指定を決定する。なお、「消去」欄にチェックがされたチャネルに割り当てられている生成データは、例えば、後述するステップS521での演奏データの記憶時に消去される。
【0096】
なお、表情付けの対象を指定することができる方法であれば、上記ダイアログの態様に限るものではなく、不図示のキーボードによる入力等によって受け付ける方法でもよい。その場合は、分離状態がユーザに認識できるものであることが好ましく、画面表示のほか、音声表示、コメントの表示等によってもよい。
【0097】
次に、前記ステップS503と同様に、演奏データの解析を行い(ステップS517)、上記解析の結果に基づき、対象チャネルに割り当てられている演奏データ(生成データ)が新たなチャネル(ch)分離の対象であるか否かを判別する(ステップS518)。その判別の結果、対象チャネルとなった演奏データが新たなチャネル分離の対象である場合、例えば、生成データの少なくとも1つが複数同時発音に対応しているような場合は、新たに空きチャネルを取得して(ステップS519)、ステップS520に進む一方、新たなチャネル分離の対象でない場合は、新たに空きチャネルを取得することなく前記ステップS520に進む。図11(a)の例では、新たな空きチャネルは取得されない。
【0098】
ステップS520では、対象チャネルに割り当てられている演奏データ(各生成データ)に表情付けを施す。例えば、図11でいえば、区間Cは区間A、Bを包含するので(同図(a))、生成データA、Bが共に生成データCとしてまとめて表情付けがなされる(同図(b))。ただし、チャネル毎に異なる表情付けを行うことは可能である。
【0099】
次に、前記ステップS511と同様に、割り当てたチャネルに演奏データ(各生成データ)を記憶させる(ステップS521)。次に、前記ステップS512と同様に、生成データの記憶に使用されたチャネルを記録して(ステップS522)、本処理を終了する。
【0100】
本実施の形態によれば、所望の区間においてチャネル分離して表情付けを行うに際し、同一のオリジナルの演奏データにおける他の区間に関して以前にチャネルが記憶されている場合は、そのチャネルと同一のチャネルを、今回割り当てるチャネルとして優先的に決定するようにしたので、新たなチャネルを用いることなく、各生成データの楽音特性を変更して記憶することができる。よって、使用チャネル数を無用に増やすことなく、分離生成した生成データ毎の表情付けを行うことができる。また、割り当てられたチャネルを特定するための特定情報を、例えば、生成データA1に対応付けて記憶しておき、これを参照することで、既得のチャネルを認識するようにしたので、以後の処理区間に関し割り当てるべきチャネルを容易に決定することができる。
【0101】
本実施の形態によればまた、指定区間が複数の生成データで構成されている場合は、各生成データに各々割り当てられているチャネルのうち、ユーザの所望により対象チャネルが選択されるようにし、且つ選択された対象チャネルが割り当てられている生成データについてのみ、表情付けが施され得るようにしたので、例えば、一旦楽音特性が変更されたデータを含む区間について、再度楽音特性の変更を行う際、所望の割り当てチャネルのデータについてのみ表情付けを行うことを可能として、意図に沿った自然な表情付けを行うことができる。さらに、選択されなかった非対象チャネルが割り当てられている生成データを所望により消去できるようにしたので、処理区間における不要なデータの消去を可能にして、意図に沿った自然な表情付けをより円滑に行うことができる。また、対象チャネルの選択は、ダイアログ上でなされるようにしたので、指定操作が容易である。
【0102】
なお、本実施の形態では、ギターを模した演奏データに表情付けをする場合を例示したが、同時発音数が6音以外の楽器についても同様に適用可能である。
【0103】
なお、本発明を達成するためのソフトウェアによって表される制御プログラムを記憶した記憶媒体を、本装置に読み出すことによって同様の効果を奏するようにした場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、プログラムコードが電送媒体等を介して供給される場合は、プログラムコード自体が本発明を構成することになる。なお、これらの場合の記憶媒体としては、ROMのほか、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0104】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1によれば、使用チャネル数を無用に増やすことなく、分離したデータ毎の表情付けを行うことができる。
【0106】
また、請求項2によれば、使用チャネル数の増加を極力回避することができる。
【0107】
また、請求項3によれば、分離データを、各々の特性を考慮したチャネルに割り当て、記憶することができる。
また、請求項によれば、特定情報を参照することで、以後の処理区間に関し割り当てるべきチャネルを容易に決定することができる。
【0108】
本発明の請求項によれば、所望の割り当てチャネルのデータについてのみ表情付けを行うことを可能として、意図に沿った自然な表情付けを行うことができる。
【0109】
また、請求項によれば、処理区間における不要なデータの消去を可能にして、意図に沿った自然な表情付けをより円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る演奏信号処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】 同形態におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。
【図3】 図2のステップS202で実行されるパネル処理のフローチャートを示す図である。
【図4】 図2のステップS202で実行されるパネル処理の図3の続きのフローチャートを示す図である。
【図5】 図3のステップS319で実行される表情付け処理のフローチャートを示す図である。
【図6】 図3のステップS319で実行される表情付け処理の図5の続きのフローチャートを示す図である。
【図7】 表情付けに際し、表示装置に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【図8】 表情付けに際し、表示装置に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【図9】 表情付けに際し、表示装置に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【図10】 表情付けに際し、表示装置に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【図11】 表情付けに際し、表示装置に表示される演奏データ乃至チャネル分離された生成データ(分離データ)群の一例を示す図である。
【図12】 表示装置に表示されるダイアログの一例を示す図である。
【図13】 表情付けに際し、演奏データ乃至チャネル分離された生成データ群の一例を示す図である。
【符号の説明】
2 パネルスイッチ、 5 CPU(データ分離手段、楽音特性変更手段、チャネル割当手段、消去手段)、 7 RAM(チャネル記憶手段)、 19 表示装置(チャネル選択手段の一部)、 21 マウス(区間指定手段、チャネル選択手段の一部)

Claims (10)

  1. オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手段と、
    前記区間指定手段により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離手段と、
    記データ分離手段により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当手段と、
    前記チャネル割当手段により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更手段とを備え、
    前記チャネル割当手段は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定手段により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする演奏信号処理装置。
  2. 前記チャネル割当手段は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記過去に指定された区間において分離データを割り当てたチャネルの数に比し、前記今回指定された区間における分離データの数が同数以下の場合は、前記今回指定された区間におけるすべての分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶し、一方、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記過去に指定された区間において分離データを割り当てたチャネルの数に比し、前記今回指定された区間における分離データの数が大きい場合は、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのすべてと該複数のチャネルとは別の新たなチャネルとに、前記今回指定された区間における分離データの各々を割り当てて記憶することを特徴とする請求項1記載の演奏信号処理装置。
  3. 前記チャネル割当手段は、前記今回指定された区間における分離データの各々の特性に基づいて、該分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする請求項1または2記載の演奏信号処理装置。
  4. 記チャネル割当手段により割り当てられたチャネルを特定するための特定情報を、前記複数の分離データのうちの少なくとも1つが割り当てられて記憶されるチャネルに記憶する特定情報記憶手段を有し、前記チャネル割当手段は、前記今回指定された区間における分離データの各々を、前記特定情報記憶手段により記憶された特定情報で特定される複数のチャネルに割り当てて記憶することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の演奏信号処理装置。
  5. 複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手段と、
    前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択手段と、
    前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手段により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更手段とを備えたことを特徴とする演奏信号処理装置。
  6. 前記区間指定手段により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手段により選択されなかった非対象チャネル割り当てられ記憶されている分離データを、前記指定された区間内において消去する消去手段を備えたことを特徴とする請求項記載の演奏信号処理装置。
  7. オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定工程と、
    前記区間指定工程により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離工程と、
    記データ分離工程により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当工程と、
    前記チャネル割当工程により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更工程とを有し、
    前記チャネル割当工程は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定工程により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とする演奏信号処理方法。
  8. 複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定工程と、
    前記区間指定工程により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択工程と、
    前記区間指定工程により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択工程により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更工程とを有することを特徴とする演奏信号処理方法。
  9. 演奏信号処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
    オリジナルの演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手順と、
    前記区間指定手順により指定された区間内の演奏データを複数の分離データに分離するデータ分離手順と、
    記データ分離手順により分離された複数の分離データの各々を別々のチャネルに割り当てて記憶するチャネル割当手順と、
    前記チャネル割当手順により割り当てられたチャネル毎の分離データに対して、楽音特性を変更可能な楽音特性変更手順とを実行させるためのプログラムであり、
    前記チャネル割当手順は、同一のオリジナルの演奏データにおいて前記区間指定手順により過去に指定された区間とは異なる区間が今回指定されたときは、該今回指定された区間における分離データの各々を、前記過去に指定された区間における分離データを割り当てた複数のチャネルのいずれかに割り当てて記憶することを特徴とするプログラム。
  10. 演奏信号処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
    複数の異なるチャネルに分離されて割り当てられた分離データの束で成る演奏データにおける時間的区間を指定する区間指定手順と、
    前記区間指定手順により指定された区間内の複数の分離データに各々割り当てられているチャネルのうち、対象チャネルを選択するチャネル選択手順と、
    前記区間指定手順により指定された区間内の複数の分離データのうち、前記チャネル選択手順により選択された対象チャネルが割り当てられている分離データについてのみ、前記対象チャネル毎に楽音特性変更処理を施すことが可能な楽音特性変更手順とを実行させるためのプログラム。
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