JP3627024B2 - 外壁改修構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は建築、構築物の既存外壁面を新規外壁で改修するための構造に関するものであり、さらに詳しくは、古くなった既存の躯体、既存外壁面の強度を向上する補強材を配設して、建物の強度を向上させた後に乾式外壁材からなる新規外壁を表面に形成した改修の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の外壁改修としては、古くなった既存の外壁をすべて撤去して、既存の躯体や胴縁等の壁下地材に新規外壁を形成する構造や、既存の外壁材上に直に、もしくは、新規胴縁や防水シートを介して新規外壁を取り付ける構造が一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような改修では古くなった既存の外壁と新規外壁を交換することや、傷んだ既存の外壁上に新規外壁を形成して、既存外壁を隠蔽することの技術思想のみであり、古くなった建物の既存の躯体、あるいは既存外壁を補強し、強度を向上させる技術思想は全く考慮に入れられていなかった。このため、改修後の建物の躯体には負担がかかり、強度的に弱く、特に耐震性に極端に劣り、地震等の発生で新規外壁が脱落したり、躯体の破損、建物の崩壊等の被害が発生することもあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような欠点を除去するため、改修する既存外壁上から既存の躯体を構成する土台と軒桁もしくは妻梁を連結するように既存外壁に接する側の面の任意箇所に粘着性を有する弾性体を配して仮止めを容易にした長尺状補強材を斜めに配設して躯体に固定すると共に、補強材を覆うように乾式外壁材からなる新規外壁を既存外壁上に形成し、補強材の少なくとも長手方向の一方端部は、平面平板で任意箇所に孔を穿設した固定面と固定面の一辺を斜め上方に屈曲延長した平面の打設面と打設面の少なくとも片端側の平面の一部を緩傾斜をもって打設面の下方に屈曲した係止舌片とから構成され、係止舌片の下端辺と打設面とは補強材の厚みと同等の間隙を有した締金具を介するもので、締金具を固定面にて釘等の固定具によって既存外壁上から躯体に打設し、また締金具の打設面と係止舌片との間隙に補強材の少なくとも端部を挟み込み、補強材の端部を挟み込んだままの状態で打設面を固定面と略同一平面になるように変形することにより補強材に張力を与えて固定する外壁改修構造を提案するものである。
【0005】
【実施例】
以下に図面を用いて本発明に係る外壁改修構造の一実施例について詳細に説明する。図1(a)、(b)、および図2(図1(a)の部分拡大図)は上記外壁改修構造の一例を示す説明図であり、Aは既存建物の躯体、Fは基礎、Gは既存外壁、Hは補強材、Iは新規外壁、Kは役物である。
【0006】
躯体Aは図1(b)に示すように、垂直方向に伸びる主柱B、間柱C、および水平方向に伸びる土台D、軒桁もしくは妻梁Eとから構成される一般的なものである。勿論、これらは木造構造の建物での名称であり、鉄骨造構造ではこれらの位置に、H型鋼材、角形鋼材、C型鋼材等が配設されているものである。なお、図1(b)では便宜上既存外壁Gを一点鎖線で示し省略してあるものである。
【0007】
また、既存外壁Gは躯体Aの外側面に例えば木摺、防水シート、ラスシート、モルタル壁材の順に配設、施工されたモルタル壁からなるもの、もしくは、躯体A上に胴縁を設け、防水シート、金属系サイディング、窯業系サイディング、ALCパネル、タイル、塩ビ押出サイディング、等の乾式外壁材等からなるものである。
【0008】
補強材Hは、図3に示すように幅狭の長尺薄板状の鋼材、カラー鋼板、アルミ鋼板等の各種金属薄板やこれらの複合体、もしくは繊維強化樹脂等の金属帯状物もしくは線状物等からなる基板aと、基板aの片側面の任意箇所に密着して取り付けられる、ホットメルト系接着剤、合成ゴム系接着剤、天然ゴム系接着剤等の弾性接着剤、もしくはそれらの複合体からなる弾性体bから構成されるものである。図3においては、弾性体bは長手方向の両側の両端部を除く範囲に帯状に配した場合を示してある。勿論、弾性体bとしては両面テープでも良い。
【0009】
弾性体bは、既存外壁G面の凹凸を吸収すると共に、その粘着力による補強材Hの仮止めの機能、および補強力の向上に有効なものであり、補強材Hが弛みなく既存外壁G上に固定することにも効果があるものである。
【0010】
弾性体bは、基板aの一方面にガンやロール等を用いて予め施工現場に補強材Hを運搬する前に、もしくは施工現場にて基板aの一方面に任意のパターンに、締金具Iによって係止される近傍を除いて塗布するものである。勿論、施工は弾性体bの粘着力が有効な時間内に行うものであり、弾性体bの形成は施工を行う時間を考慮して適切な時期に行うものである。
【0011】
補強材Hは図1(a)、(b)に示すように、既存外壁G面上に土台Dから軒桁もしくは妻梁Eにかけて斜めに1本以上配設されるものであり、既存外壁G面を介して躯体Aを構成する少なくとも土台D、軒桁もしくは妻梁Eに、後記する締金具Iを介して取り付け、古くなった躯体Aおよび既存外壁G面の強度を向上する筋交いの機能を有するものである。また、2本以上の補強材Hを設ける際には、図1(a)、(b)のように互いにたすき状に交差させて形成するものである。
【0012】
さらに、補強材Hの配設方法としては、図1(b)に示すように、土台D、軒桁もしくは妻梁Eに対してθ1=約45度の角度程度で配設し、かつ、補強材Hを対角線として形成される4角形の縦L1、横L2の辺の比がL1:L2=約1:1程度となるように配設するのが好ましい。これは、補強材Hの縦と横の比をほぼ同一とすることで、最も筋交いとしての機能を発揮するものであり、一番躯体Aの強度を向上させることができるものである。なお、図1(b)において、θ2の角度は90度である。また、補強材Hは既存外壁G上から配設するので、間に存在する主柱B、間柱Cに妨げられることなく容易に配設することができるものである。
【0013】
締金具Iは図1(a)、(b)、および図2に示すように、補強材Hの端部に取り付けられ、鋼板を断面略く字状に成形したもので、補強材Hを既存外壁Gを介して躯体Aに取り付けるための介在具であり、補強材Hの固定の際に補強材Hに張力を加え、補強力を強化するのに有効なものである。
【0014】
締金具Iは図4(a)、(b)に示すように形成されるものである。すなわち1は固定面で、既存外壁G上から釘等の固定具αにて躯体Aに打設し、締金具Iを固定するための部分であり、固定具αを通過させるための孔2を穿設したものである。3は打設面で、固定面1の一辺から斜め上方に屈曲、延長したものである。
【0015】
4は係止舌片で、打設面3の少なくとも片側部の平面の一部を、打設面3に対して下方に緩傾斜をもって屈曲したものであり、図4(a)、(b)では係止舌片4と対称に、係止舌片4と断面略逆ハ字を描くように係止舌片5を設けたものである。係止舌片4と係止舌片5のそれぞれの先端同士の空隙8は、補強材Hの厚みと同程度の距離を有するもので、補強材Hの側端部を挟み込む部分である。また、打設面3には孔6、打設面3と係止舌片4との境界には孔7をそれぞれ設け、打設面3を固定面1と略同一平面となるように屈曲して既存外壁Gに打設する際に固定具αを通過させるものである。
【0016】
なお、係止舌片4、5が左右いずれに設けられたかによって、補強材Hの長手方向に対してどちら側に使用するかが決められるものである。
【0017】
新規外壁Jは金属系サイディング材、もしくは、窯業系サイディング材、塩ビ押出サイディング材、ALCパネル、タイル、金属パネル等からなる乾式外壁材Lからなるものであり、特に図5に示すような、金属薄板からなる表面材9と金属薄板もしくはシート状物からなる裏面材10とで、合成樹脂発泡体からなる芯材11をサンドイッチした金属系サイディングが軽量で強度にも優れ、既存外壁Gの強度向上にも有効で、なおかつ施工容易な点からも好ましいものである。
【0018】
また、乾式外壁材Lは図1(a)に示すように補強材H上から直接、締金具Iを介して躯体Aに順次取り付けられ、建物の外表面を覆い、意匠性、断熱性、防音性、防火性等をさらに向上させるものである。勿論、新規外壁Jを形成する際には、水切り、スタータ、止縁、ジョイナ、出入隅等の役物Kを必要に応じて配設するものである。
【0019】
次に、本発明に係る外壁改修構造の施工方法について簡単に説明する。まず、図示しない補強材Hを既存外壁の対角線に沿って仮止めした後、図4(a)、(b)に示す締金具Iを、図6のように固定面1によって既存外壁G上から躯体Aに釘等の固定具αによって固定する。この際、固定具αは孔2を通過させるもので、主柱Bが土台D、軒桁もしくは妻梁Eと交差する箇所にて打設を行うことが好ましい。なお、図2に示すように、補強材の固定一箇所につき複数の締金具Iを使用する際は、それぞれ補強材Hと平行に、補強材Hの幅と合致する程度の間隔で配するものである。
【0020】
次に、図7に示すように補強材Hの端部、すなわち弾性体bが配されていない部分を、締金具Iの空隙8の奥まで嵌挿して合致させ、孔6に固定具αを挿入して、空隙8に補強材Hを嵌挿したまま、図8に示すように締金具Iの打設面3が固定面1と略同一平面になるように変形し、孔6を通過させた固定具αを、既存外壁Gおよび躯体Aに打設する。締金具Iの変形はハンマーによる打撃や、その他押圧等の力によって行うものであり、変形を行う際は補強材Hの空隙8に挟持された部分は、打設面3が水平方向に傾斜していくのに伴って空隙8の補強材Hの上下方向に対する幅が狭くなり、挟持力が増していくため補強材Hがずれることがないものである。なお、締金具Iを変形させることで、補強材Hの空隙8に挟持された部分が補強材Hの長手方向に対して外側に移動し、補強材Hを引き延ばして弛みをなくすことにより、より強力な補強となるものである。
【0021】
そして、図9に示すように、孔7を通過させ、かつ補強材Hを介して固定具αを既存外壁Gおよび躯体Aに打設し、補強材Hの端部を完全に固定するものである。
【0022】
なお、補強材Hの幅方向の両側に締金具Iを用る場合は、図10に示すように配するもので、強力で安定した固定とするのに有効である。なお、図示しないが、締金具Iによって固定した補強材Hの端部の近傍にて、固定具αを補強材H上から直接、既存外壁G、躯体Aに打設して、さらに固定強度を高めることができる。また、補強材Hの片端を固定具αによってのみ固定し、もう片端を締金具Iを用いて固定することもできる。
【0023】
以上説明したのは、本発明に係る外壁改修構造の一実施例であり、図11〜図18に示すような改修構造としたり、改修のための部材を用いることもできる。
【0024】
すなわち、図11(a)は補強材Hと新規外壁Jとの間に防水シート12を介在し防水性能の向上を図った例である。また、図11(b)は補強材Hと新規外壁Jとの間に新規外壁Jの取付下地となる胴縁13を適宜ピッチで配設し、胴縁13自体の厚みを利用して、エアサイクル路を確保した例である。
【0025】
また、図12は補強材Hの上に胴縁13を適宜ピッチで配設すると共に、各胴縁13間に断熱材層14を形成した例である。断熱層材14は構造全体の断熱性能、気密性能の向上や、補強材Hが金属製の際に、温度差により結露が発生するのを防止するものであり、その形成は例えばポリウレタン、ポリイソシアヌレート、フェノール、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン等の合成樹脂発泡体や、石膏ボード、ロックウールボード、ガラス繊維、シージングボード等の無機材ボード等のボード状パネルを順次張り合わせて形成することもできるが、特に現場吹き付け発泡型の合成樹脂を用いるのが好ましいものである。
【0026】
図13(a)〜(d)〜図15(a)〜(d)は、本発明に係る外壁改修構造に用いられる補強材Hを変形した例である。
【0027】
すなわち図13(a)は、補強材Hの既存外壁に接する側の面の両端近傍を除く全域に亘って弾性体bを施した例、図13(b)は基板aの両端の他に、中心線近傍に屈曲した帯状の弾性体bを配した例、図13(c)、(d)は基板aの長手方向の両端に複数のリブ15を設けた例であり、締金具Iとの係合が強力になり、かつ確実に行えるものである。
【0028】
また、図14(a)〜(d)は弾性体bの配設のその他のパターンを示すものである。また、図15(a)〜(d)は、仮止めをさらに強力にするために粘着テープ16を配した場合の、弾性体bと粘着テープ16の配置パターンの例を示すものである。
【0029】
図16(a)〜(f)は新規外壁Jに用いられる乾式外壁材Lのその他の例を示すものであり、図16(a)〜(c)は金属系サイディング、図16(d)は塩ビサイディング、図16(e)、(f)は窯業系サイディングの断面形状を示すものである。
【0030】
図17(a)〜(d)、図18(a)〜(d)は締金具Iの変形例である。図17(a)〜(d)は打設面3の両側に係止舌片4を設け、使用する方向を問わないものであり、特に図17(b)、(d)は係止舌片5を設けない例、図17(c)は、締め付けたい強度によって2通りの空隙を選択できる締金具Iの例である。
【0031】
図18(a)は係止舌片4を大きく形成した例、図18(b)は係止舌片5を設けずに係止舌片4を大きく形成した例、図18(c)は空隙8を2箇所に設けて、必要に応じて使い分けることができるようにした例、図18(d)は係止舌片4、5のそれぞれ先端を鋸状に形成して補強材Hとの結合を強化した締金具Iの例である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したような本発明に係る外壁改修構造によれば、▲1▼既存の外壁面を新規外壁で改修する前に、改修する既存外壁上から既存の躯体を構成する土台と軒桁もしくは妻梁を連結するように、長尺状補強材を斜め配設し締金具を介して躯体に固定すると共に、補強材を覆うように新規外壁を既存外壁上に形成したので、既存躯体の強度を向上させ、躯体の強度向上と、外壁の改修を同時に行える。▲2▼建物は水平荷重、垂直荷重の両方に強くなり、地震等の振動や、台風等の外圧に強い構造となる。▲3▼既存外壁を解体する必要がないので、施工工数を省略できると共に、工期を大幅に短縮することができ、しかも施工中の居住に何等支障を来さない。▲4▼既存外壁上に新規外壁を形成するので、施工が簡単でコストを節約できる。▲5▼既存外壁と新規外壁の2重壁構造となり、断熱性、防音性、防火性に富む構造となる。▲6▼締金具によって補強材に張力を加えることにより補強材に弛みが生じなくなるので、極めて震動に強い補強となる。▲7▼補強材の裏面に粘着性を有する弾性体を施したので、仮止めが容易で、かつさらに弛みを少なく仕上げられるため、より強力な補強となる。▲8▼補強材の裏面に粘着性を有する弾性体を施したので、既存外壁の不陸(凹凸)を吸収し、施工性が向上する。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る外壁改修構造の代表例を示す説明図である。
【図2】補強材の端部の固定部分を示す部分拡大図である。
【図3】本発明に用いる補強材の例を示す説明図である。
【図4】本発明に用いる締金具の例を示す説明図である。
【図5】本発明に用いる乾式外壁材の例を示す説明図である。
【図6】本発明の施工方法の一実施例の説明図である。
【図7】本発明の施工方法の一実施例の説明図である。
【図8】本発明の施工方法の一実施例の説明図である。
【図9】本発明の施工方法の一実施例の説明図である。
【図10】本発明の施工方法の一実施例の説明図である。
【図11】本発明に係る外壁改修構造のその他の例を示す説明図である。
【図12】本発明に係る外壁改修構造のその他の例を示す説明図である。
【図13】本発明に使用する補強材のその他の例を示す説明図である。
【図14】本発明に使用する補強材のその他の例を示す説明図である。
【図15】本発明に使用する補強材のその他の例を示す説明図である。
【図16】本発明に使用する乾式外壁材のその他の例を示す説明図である
【図17】本発明に使用する締金具のその他の例を示す説明図である。
【図18】本発明に使用する締金具のその他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
α 固定具
A 躯体
B 主柱
C 間柱
D 土台
E 軒桁もしくは妻梁
F 基礎
G 既存外壁
H 補強材
I 締金具
J 新規外壁
K 役物
L 乾式外壁材
a 基板
b 弾性体
1 固定面
2 孔
3 打設面
4 係止舌片
5 係止舌片
6 孔
7 孔
8 空隙
9 表面材
10 裏面材
11 芯材
12 防水シート
13 胴縁
14 断熱材層
15 リブ
16 粘着テープ
Claims (1)
- 建築、構築物の既存外壁を新規外壁で改修した構造において、改修する既存外壁上から既存の躯体を構成する土台と軒桁もしくは妻梁を連結するように長尺状補強材を斜めに配設して躯体に固定すると共に、該補強材を覆うように乾式外壁材からなる新規外壁を既存外壁上に形成した構造であり、前記補強材の少なくとも長手方向の一方端部は、平面平板で任意箇所に孔を穿設した固定面と該固定面の一辺を斜め上方に屈曲延長した平面の打設面と該打設面の少なくとも片端側の平面の一部を緩傾斜をもって打設面の下方に屈曲した係止舌片とから構成され、該係止舌片の下端辺と打設面とは前記補強材の厚みと同等の間隙を有した締金具を介するもので、締金具を固定面にて釘等の固定具によって既存外壁上から躯体に打設し、また締金具の打設面と係止舌片との間隙に補強材の少なくとも端部を挟み込み、補強材の端部を挟み込んだままの状態で打設面を固定面と略同一平面になるように変形することにより補強材を固定し、また前記補強材は既存外壁に接する側の面の任意箇所に粘着性を有する弾性体を配することを特徴とする外壁改修構造。
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