JPH094177A - 外壁改修構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は建築、構築物の古くなった既存の躯
体、既存外壁面の強度を向上する補強材を配設して、建
物の強度を向上させた後に乾式壁材からなる新規外壁を
表面に形成した改修の構造に関するものである。 【構成】 改修する既存外壁１面の４つの角部９に長尺
状の補強材２の片端を固定し、また補強材２は改修する
壁面の対角線に沿って配し、壁面の対角線が交差する箇
所の近傍にて固定部材３によって補強材２をまとめて固
定し、補強材２と固定部材３を覆うように乾式壁材から
なる新規外壁４を既存外壁１上に形成するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は建築、構築物の既存外壁
面を新規外壁で改修するための構造に関するものであ
り、さらに詳しくは、古くなった既存の躯体、既存外壁
面の強度を向上する補強材を配設して、建物の強度を向
上させた後に乾式壁材からなる新規外壁を表面に形成し
た改修の構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の外壁改修としては、古く
なった既存外壁を全て撤去して、既存の躯体や胴縁等の
壁下地材に新規外壁を形成する構造や、既存外壁上に直
に、もしくは、新規胴縁や防水シートを介して新規外壁
を取り付ける構造が一般的であった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな改修では古くなった既存外壁と新規外壁を交換する
ことや、傷んだ既存外壁上に新規外壁を形成して、既存
外壁を隠蔽することの技術思想のみであり、古くなった
建物の既存の躯体、あるいは既存外壁を補強し、強度を
向上させる技術思想は全く考慮に入れられていなかっ
た。このため、改修後の建物の躯体には負担がかかり、
強度的に弱く、特に耐震性に極端に劣り、地震等の発生
で新規外壁が脱落したり、躯体の破損、建物の崩壊等の
被害が発生することもあった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明はこのような欠点
を除去するため、既存外壁面を新規外壁で改修する前
に、主柱が土台、妻梁、あるいは胴差しと交わる箇所を
角部として、改修する既存外壁面の４つの角部に長尺状
の補強材の片端を固定し、また補強材は改修する既存外
壁面の対角線に沿って配し、既存外壁面の対角線が交差
する箇所の近傍で固定部材によって補強材をまとめて固
定し、補強材と固定部材を覆うように乾式壁材からなる
新規外壁を既存外壁上に形成する外壁改修構造を提案す
るものである。

【０００５】

【実施例】以下に図面を用いて本発明に係る外壁改修構
造の一実施例について詳細に説明する。図１（ａ）、
（ｂ）は上記外壁改修構造の一例を示す説明図であり、
Ａは既存建物の躯体、Ｆは基礎、１は既存外壁、２は補
強材、３は固定部材、４は新規外壁、７は役物、αは
釘、スクリュービス、テクス、アンカー、アンカーボル
ト、等の固定具、βはボルト・ナット等からなる固定具
βである。

【０００６】躯体Ａは図１（ｂ）に示すように、垂直方
向に伸びる主柱Ｂ、間柱Ｃ、および水平方向に伸びる土
台Ｄ、妻梁Ｅもしくは胴差しＧ、基礎Ｇとから構成され
る一般的なものである。勿論、これらは木造構造の建物
での名称であり、鉄骨造構造ではこれらの位置に、Ｈ型
鋼材、角形鋼材、Ｃ型鋼材、等が配設されているもので
ある。なお、図１（ｂ）では便宜上既存外壁１を点線で
示し省略してあるものである。

【０００７】また、既存外壁１は躯体Ａの外側面に例え
ば木摺、防水シート、ラスシート、モルタル壁材の順に
配設、施工されたモルタル壁からなるもの、もしくは、
躯体Ａ上に胴縁を設け、防水シート、金属系サイディン
グ材、窯業系サイディング材、ＡＬＣパネル、タイル、
塩ビ押出サイディング材、等の乾式壁材等からなるもの
である。

【０００８】補強材２は、図２に示すように、例えば幅
狭の長尺薄板状の鋼材、カラー鋼板、アルミ鋼板、等の
各種金属薄板やこれらの複合体、もしくは繊維強化樹脂
等の金属帯状物もしくは線状物、等から形成されるもの
であり、少なくともその片端を、主柱Ｂが土台Ｄ、妻梁
Ｅ、あるいは胴差しＧと交わる箇所を角部９として、改
修する既存外壁１面の４つの角部９に固定し、かつ改修
する既存外壁１面の対角線に沿って配し、既存外壁１面
の対角線が交差する箇所の近傍で後記する固定部材３に
よってまとめて固定するものである。

【０００９】固定部材３は、例えば図３に示すように略
長方形に形成された０．５〜５ｍｍ厚の鋼板で、少なく
ともその四隅近傍に補強材２と結合するため固定具βを
使用する孔３ａを有するもので、補強を施す既存外壁１
の対角線が交わる箇所にて補強材２をまとめて固定する
ものである。固定部材３は、補強材２をまとめて１つの
部材に結合することにより、震動により補強を施した範
囲内で寸法の変化を生じた際、その負担を補強材２の端
部が固定される隅部の各箇所に分散できるため、強力な
補強とするのに有効なものである。

【００１０】新規外壁４は金属系サイディング材、もし
くは、窯業系サイディング材、塩ビ押出サイディング
材、ＡＬＣパネル、タイル、金属系パネル、等からなる
乾式壁材からなるものであり、特に図４に示すような、
金属薄板からなる表面材５と金属薄板もしくはシート状
物からなる裏面材６とで、合成樹脂発泡体からなる芯材
７をサンドイッチした金属系サイディング材が軽量で強
度にも優れ、既存外壁１の強度向上にも有効で、なおか
つ施工容易な点からも好ましいものである。

【００１１】また、新規外壁４は図１（ａ）に示すよう
に補強材２上から直接、固定具αを介して躯体Ａに順次
取り付けられ、建物の外表面を覆い、意匠性、断熱性、
防音性、防火性、等をさらに向上させるものである。勿
論、新規外壁４を形成する際には、水切り、スタータ、
止縁、ジョイナ、出隅、入隅、等の役物８を必要に応じ
て配設するものである。

【００１２】ここで、本発明に係る外壁改修構造の施工
方法について簡単に説明する。まず、図５（ａ）に示す
ように、４本の補強材２の片端を４つの角部９に固定具
αによって打設する。

【００１３】次に図５（ｂ）に示すように、各補強材２
の他端を固定具βによって固定部材３に固定する。この
際、補強材２に弛みが生じないようにし、補強される既
存外壁１の対角線に沿って配設されるものであり、固定
部材３はその対角線同士の交点上に位置するものであ
る。

【００１４】そして、補強材２と固定部材３を覆うよう
に乾式壁材からなる新規外壁４を既存外壁１上に形成
し、図１（ａ）のように仕上げて改修を完了するもので
ある。

【００１５】なお、先に各補強材２を固定部材３に固定
し、次に各補強材２の他端を各角部９に固定し、最後に
新規外壁４を形成することもできる。

【００１６】以上説明したのは、本発明に係る外壁改修
構造の一実施例であり、図６〜図１３に示すような改修
構造としたり、改修ための部材を用いることもできる。

【００１７】図６（ａ）は補強材２と新規外壁４との間
に防水シート１０を介在し防水性能の向上を図った例で
ある。また、図６（ｂ）は補強材２、固定部材３の上か
ら表面が略フラットになるような断熱材層１１を形成し
た例である。

【００１８】また、図７は補強材２の上に胴縁１２を適
宜ピッチで配設すると共に、各胴縁１２間に断熱材層１
１を形成し、さらに、胴縁１２を取付下地として、か
つ、土台部分から軒点部分にかけてエアサイクルをおこ
なうエアサイクル通路を確保し、胴縁１２上に新規外壁
４を形成した例である。

【００１９】すなわち、断熱材層１１は構造全体の断熱
性能、気密性能の向上、および温度差により結露が発生
するのを防止するものである。また、断熱材層１１は補
強材２自体の厚み、もしくは補強材２同士の重なりによ
り、既存外壁１の面と段差が生じてしまうので、この段
差を断熱材層１１を配設することにより解消し、表面を
平らにするので、新規外壁４の施工を容易にし、張り上
がり面をフラットなものにするものである。

【００２０】断熱材層１１の形成は例えばポリウレタ
ン、ポリイソシアヌレート、フェノール、塩化ビニル、
ポリエチレン、ポリスチレン、等の合成樹脂発泡体や、
石膏ボード、ロックウールボード、ガラス繊維、シージ
ングボード、等の無機材ボード等のボード状パネルを順
次張り合わせて形成することもできるが、特に現場吹き
付け発泡型の合成樹脂を用いるのが好ましいものであ
る。

【００２１】すなわち、断熱材層１１を現場吹き付け発
泡型の合成樹脂とした際には、その素材としては硬質の
ウレタンフォーム、もしくは難燃２級、３級（ＪＩＳ−
Ａ−１３２１）合格品のフェノール＋イソシアネート＋
難撚材を用いることもできる。勿論、ノンフロンの合成
樹脂を用いると共に、フェノールにより難燃化を図った
ものである。また、断熱材層１１を現場吹き付け発泡型
の合成樹脂とすることで、補強材２の厚みによる段差の
解消を容易に行うことができ、しかも、狭い場所や、端
部にも吹き付け発泡できるので、より一層の気密化と断
熱化を図ることができ、さらに、施工が容易で、コスト
の節減になるものである。

【００２２】図８、および図９は補強材２の変形例であ
る。すなわち、図８は補強材２として使用するターンバ
ックルの例を示すものであり、両端に取付部１３と、両
取付部１３の間に長さを調節する調節部１４を有するも
のである。

【００２３】また、図９（ａ）〜（ｉ）に示すようなタ
ーンバックルを補強材２として使用することができる。
なお、図示しないが、ワイヤー等を補強材２として使用
することも可能である。

【００２４】図１０〜図１２は補強材２と固定部材３の
組み合わせの例を示すものである。図１０（ａ）は１本
の補強材２で対角の角部９を連結した場合に固定部材３
と組み合わせた例である。図１０（ｂ）は補強材２にワ
イヤーを使用し、固定部材３に滑車を使用した例であ
る。

【００２５】図１１（ａ）、（ｂ）および図１２
（ａ）、（ｂ）は補強材２にターンバックルを使用し、
その両端の取付部１３をそれぞれ角部９、および取付部
材３に固定した後に調節部１３を回転させて長さ調節す
るものである。図１１（ａ）はリング状の固定部材３を
使用した例、図１１（ｂ）は滑車とスチールベルトを組
み合わせた固定部材３を使用した例である。

【００２６】図１２（ａ）は短尺帯状の鋼板を４本組み
合わせた固定部材３を使用した例、図１３は略長方形に
形成した鋼板の孔３ａを介して、ターンバックルの取付
部１３を固定した例を示すものである。補強材２として
ターンバックルを使用することにより、補強材２自体の
伸縮が極めて小さいだけでなく、取付の際に各調節部１
４によって長さを調節することにより、各補強材２に均
等に負荷を分配できると共に、震災後に躯体Ａの各所寸
法に変化が生じた際、その程度に応じて、新規外壁４を
一旦剥して各調節部１４を調節して矯正することができ
る。

【００２７】図１３（ａ）〜（ｆ）は新規外壁４に用い
られる乾式壁材のその他の例を示すものであり、図１３
（ａ）〜（ｃ）は金属系サイディング材、図１３（ｄ）
は塩ビ押出サイディング材、図１３（ｅ）、（ｆ）は窯
業系サイディング材の断面形状を示すものである。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係る外壁改
修構造によれば、既存躯体の強度を向上させ、躯体の
強度向上と、外壁の改修を同時に行える。建物は水平
荷重、垂直荷重の両方に強くなり、地震等の振動や台風
等の外圧に強い構造となる。既存外壁を解体する必要
がないので、施工工数を省略できると共に、工期を大幅
に短縮することができ、しかも施工中の居住に何等支障
を来さない。既存外壁上に新規外壁を形成するので、
施工が簡単でコストを節約できる。既存外壁と新規外
壁の２重壁構造となり、断熱性、防音性、防火性に富む
構造となる。補強材には任意形状に形成、もしくは加
工を施して捻れ、弛みを生じにくくした長尺状の金属板
体を使用すれば、強力な補強となり、かつ補強材が施工
の際にも直線状の形状を維持するので、施工が極めて容
易である。補強される面の対角線が交差する箇所に固
定部材を用いて補強材を固定することにより、各補強材
に負荷が分散されるため、より強力な補強材になる。等
の特徴、効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る外壁改修構造の代表例を示す説明
図である。

【図２】本発明に用いる補強材の例を示す説明図であ
る。

【図３】本発明に用いる固定部材の例を示す説明図であ
る。

【図４】本発明に用いる新規外壁の例を示す説明図であ
る。

【図５】本発明に係る外壁改修構造の施工例を示す説明
図である。

【図６】本発明に係る外壁改修構造のその他の例を示す
説明図である。

【図７】本発明に係る外壁改修構造のその他の例を示す
説明図である。

【図８】補強材として使用するターンバックルの例を示
す説明図である。

【図９】補強材として使用するターンバックルの例を示
す説明図である。

【図１０】補強材と固定部材の組み合わせのその他の例
を示す説明図である。

【図１１】補強材と固定部材の組み合わせのその他の例
を示す説明図である。

【図１２】補強材と固定部材の組み合わせのその他の例
を示す説明図である。

【図１３】本発明に用いる新規外壁のその他の例を示す
説明図である。

【符号の説明】

α 固定具 β 固定具 Ａ 躯体 Ｂ 主柱 Ｃ 間柱 Ｄ 土台 Ｅ 妻梁 Ｆ 基礎 Ｇ 胴差し １ 既存外壁 ２ 補強材 ３ 固定部材 ３ａ 孔 ４ 新規外壁 ５ 表面材 ６ 裏面材 ７ 芯材 ８ 役物 ９ 角部 １０ 防水シート １１ 断熱材層 １２ 胴縁 １３ 取付部 １４ 調節部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建築、構築物の既存外壁面を新規外壁で
   改修した構造において、主柱が土台、妻梁、あるいは胴
   差しと交わる箇所を角部として、改修する既存外壁面の
   ４つの角部に長尺状の補強材の片端を固定し、また該補
   強材は改修する既存外壁面の対角線に沿って配し、既存
   外壁面の対角線が交差する箇所の近傍にて固定部材によ
   って前記補強材をまとめて固定し、該補強材と固定部材
   を覆うように乾式壁材からなる新規外壁を既存外壁上に
   形成したことを特徴とする外壁改修構造。