JP3626945B2 - 雑音電流吸収具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電線に外嵌され電線を流れる雑音電流を吸収する雑音電流吸収具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電線の外周部をフェライトコアで包囲し、このフェライトコアによって電線を流れる雑音電流を吸収する雑音電流吸収具が知られている。
この種の雑音電流吸収具では、既存の配線を取り外すことなく、電線に磁性体コアを外嵌できるようにするため、一対の分割磁性体コアを組み合わせることで構成される環状のフェライトコアと、ヒンジを介して連結され、それぞれが分割磁性体コアを収納する一対のケース部、及び各ケース部に収納された分割片が元の環状に組み合わされるよう一対のケース部を固定するための突起やフックなどからなる固定機構を備えた保持ケースとからなるものが広く用いられている(例えば特開平11−97875号公報)。
【0003】
ところで、分割磁性体コアは、焼成時に外形寸法が収縮し、その収縮の割合は、焼成前のフェライト粉末の粒径,水分率,周囲温度,湿度,造型時の圧力,焼成温度等の影響を受けて変化する。従って、同じロットのもの以外は、ほぼ同じ外形寸法に焼成することが困難であることが知られている。このため、通常、その外寸は、保持ケースのケース部の内寸よりもやや小さくなるように作製されている。
【0004】
しかし、保持ケース内で分割磁性体コアのがたつきがあると、雑音電流の吸収効果が低下するだけでなく、振動などの外部の要因により、分割磁性体コアが破損するおそれもあるため、ケース部には、それを閉じた時に、分割面が密着するように分割磁性体コアを付勢するための付勢機構が設けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような付勢機構では、分割磁性体コアが、互いに分割面に沿った方向に位置ずれする可能性があり、この場合、図8に示すように、雑音電流の吸収効果を低下させてしまうという問題があった。
【0006】
なお、図8は、分割磁性体コアの分割面が正しく一致するように位置合わせされた雑音電流吸収具と、説明のための極端なケースとして、分割面での当接面積が10%減少するように位置合わせされた雑音電流吸収具とを用い、これらの雑音電流吸収具が取り付けられた電線のインピーダンスの周波数特性を測定した結果を示すグラフである。
【0007】
これに対して、特開平8−167524号公報には、環状フェライトコアの軸方向両端に位置するケース部の一方の端壁に、他方の端壁へ押し付ける方向に分割磁性体コアを付勢するための付勢機構を設け、この付勢機構により、分割面を位置合わせする技術が開示されている。
【0008】
しかし、この場合でも、一対のケース部を閉じ合わせた閉鎖状態において、分割磁性体コアが押し付けられる側の端壁が、面一になるように予め形成されていなければ、一対の分割磁性体コアは正しく位置合わせされない場合があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、磁性体コアの分割面が正しく位置合わせされる雑音電流吸収具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための発明である請求項1記載の雑音電流吸収具は、電線の外周部を包囲する形状に組み合わされる一対の分割磁性体コアと、該分割磁性体コアをそれぞれ包持する一対のケース部、及び前記分割磁性体コアが環状に組み合わされるよう前記一対のケース部を閉じ合わせた状態に固定する固定機構からなる保持ケースとを備え、電線に外嵌され該電線を流れる雑音電流を吸収する雑音電流吸収具において、前記一対のケース部には、前記分割磁性体コアを挟んで対向する各一対の端壁に、前記電線を挿通させるための挿通孔を形成する内周縁部に沿って突条を設けると共に、前記一対のケース部の少なくとも一方には、前記ケース部を閉じ合わせた時に前記一対の分割磁性体コアの分割面付近にて、前記一対の分割磁性体コアの双方に当接可能な複数の面一当接部を設け、前記突条は、その一部を前記分割磁性体コアに向けて押圧すると、前記面一当接部を含む当該突条の形成部位全体を押圧方向に変位させるような剛性を有することを特徴とする。
【0011】
ここで、「内周縁部に沿って」とは、内周縁部と接していてもよいし、内周縁部から離れていてもよい。
このように構成された本発明の雑音電流吸収具では、分割磁性体コアに巻き付けるようにして電線を配線すると、その配線された電線が、保持ケースの内周縁部に沿って設けられた突条を、磁性体コアの収納空間に向けて押圧する。すると、面一当接部も、分割磁性体コアのある方向に変位する。このとき、一対の分割磁性体コアのいずれか一方が面一当接部側に出っ張っていると、この出っ張った分割磁性体コアを面一当接部が押圧する。この押圧力により、分割磁性体コアの出っ張り、即ち一対の分割磁性体コアにおける分割面での位置ずれが、面一当接面に当接した両磁性体コアの側壁が面一になるように修正される。
【0012】
このように、本発明の雑音電流吸収具によれば、電線に取り付けられることによって、一対の分割磁性体コアの分割面が正しく位置合わせされるため、良好な雑音電流吸収特性を得ることができる。
ところで、一対の分割磁性体コアが異なった幅寸法を持つ場合、分割面を挟んで両側に設けられた面一当接部は、その双方が同時に両分割磁性体コアの側壁を面一に位置合わせすることはできない。しかし、この場合、面一当接部により位置ずれが修正されることにより、幅寸法が小さい方の分割磁性体コアにおける分割面の全体が、確実に幅寸法の大きい方の分割磁性体コアの分割面に当接することになるため、最大限の雑音電流の吸収効果を得ることができる。
【0013】
なお、前記面一当接部は、例えば、請求項2記載のように、前記ケース部の端壁を、前記内周縁部に沿って、且つ前記一対のケース部を閉じ合わせた時に前記分割磁性体コアの分割面が位置する面を超えて延設することで形成することができる。
【0014】
また、前記ケース部には、請求項3記載のように、前記一対のケース部を閉じ合わせた時に他方のケース部に形成された前記延設部が位置する部分を切り欠いてなる切欠部が形成されていてもよい。
そして、前記面一当接部は、分割磁性体コアの分割面の近傍であれば、一対のケース部のうちどちらに形成してもよいが、請求項4記載のように、一方のケース部のみに形成されていることが望ましい。
【0015】
即ち、磁性体コアに巻き付けるようにして電線を配線する場合の実際の作業では、開いた状態にされた一対のケース部のうち、一方のケース部にのみ電線を巻き付けることが考えられる。このため、一方のケース部にのみ面一当接部を形成し、そのケース部に電線を巻き付けるようにすれば、上述の効果を確実に得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本実施形態の雑音電流吸収具の構成を説明するための参考斜視図、図2は雑音電流吸収具を構成する保持ケースの五面図、図3は図2におけるA−A断面図及びB−B断面図である。
【0017】
図示の如く、本実施形態の雑音電流吸収具2は、円筒状に形成された磁性体コア10を、軸方向に沿って2分割した形状を有する一対の分割磁性体コア11,12と、一対の分割磁性体コア11,12をそれぞれ収納する一対のケース部21,22からなり、これら分割磁性体コア11,12を一体に保持し、且つ環状に組み合わせた状態で固定することが可能な保持ケース20とからなる。
【0018】
なお、分割磁性体コア11は、本来、ケース部21に収納されているものであるが、図1では、説明するために、これをケース部21から取り外して分割磁性体コア12に載置した状態のものを示している。
以下では、分割磁性体コア11,12の軸方向両側に位置する壁部を側壁11a,12a、電線を挿通させるための挿通孔を形成する部分を内周壁11b,12bとよぶ。また、ケース部21,22のうち、分割磁性体コア11,12の側壁11a,12aに沿って対向する各一対の壁部を端壁21a,22a、両端壁21a,22aに挟まれた部分を外周壁21b,22b、ケース部21,22を閉じ合わせた時に、分割磁性体コア11,12の内周壁11b,12bと共に電線挿通孔を形成する部分を内周縁部21c,22cとよぶ。
【0019】
そして、分割磁性体コア11,12を環状に組み合わせた時に、互いに当接する一対の分割面X,Yのうち、一方の分割面Xの近傍には、一対のケース部21,22の外周壁21b,22b上に、ケース部21,22を開閉自在に連結するヒンジ部23が形成され、他方の分割面Yの近傍には、ケース部21側に設けられた雄側嵌合部24、及びケース部22側に設けられた雌側嵌合部25からなる固定機構が形成されている。
【0020】
なお、雄側嵌合部24は、ケース部21の外周壁21bの接線方向に延設され、先端がV字状に折り返された形状を有する突起からなる。一方、雌側嵌合部25は、ケース部22の外周壁22bに突設され、雄側嵌合部24を挿入可能な嵌合孔を形成する枠体からなる。
【0021】
そして、ケース部21,22の外周壁21b,22bには、ケース部21,22を閉じた状態にした時に、ケース部21,22に収納された分割磁性体コア11,12を、分割面X,Yが密着する方向に付勢する舌片状の付勢機構29が2個ずつ形成されている。更に、ケース部21の外周壁21bには、当該雑音電流吸収具2を、筐体や基板等に固定する際に使用する固定部材(図示せず)を取り付けるための取付部30が形成されている。
【0022】
また、ケース部21,22の端壁21a,22aの内壁面には、分割磁性体コア11,12の収納空間に向けて突出し、分割磁性体コア11,12に形成された凹部13に係合して分割磁性体コア11,12を緩嵌する係合突起31が形成されている。一方、ケース部21,22の端壁21a,22aの外壁面には、内周縁部21c,22cに沿って四角形の断面形状を有する突条26が形成されている。
【0023】
更に、ケース部22の端壁22aには、分割面X,Yを挟んで位置する4つの部分のそれぞれに、内周縁部22cに沿って延設された面一当接部27が形成されている。なお、この面一当接部27は、ケース部21,22を閉じた時に分割面X,Yが位置する面を超えて延設されている。これに対応して、ケース部21の端壁21aには、ケース部21,22を閉じた時に、面一当接部27が位置すべき部分を切り欠いてなる切欠部28が形成されている。
【0024】
つまり、面一当接部27が形成されたケース部22は、分割面X,Y付近にて、該ケース部22に収納される分割磁性体コア12の側壁12aだけでなく、ケース部21に収納される分割磁性体コア11の側壁11aにも当接するようにされている。
【0025】
また、面一当接部27は突条26の形成部位を含んでおり、突条26の一部を分割磁性体コア12に向けて押圧すると、面一当接部27を含む突条26の形成部位全体が、その押圧方向に変位する。つまり、突条26は、このような剛性が得られるように大きさ(幅,高さ)や断面形状が決められている。
【0026】
なお、これら保持ケース20を構成するケース部21,22、ヒンジ部23、雄側嵌合部24、雌側嵌合部25、突条26、面一当接部27、付勢機構29、取付部30、係合突起31は、弾性を有する合成樹脂により一体成形されている。
【0027】
このように構成された本実施形態の雑音電流吸収具2では、雄側嵌合部24と雌側嵌合部25との嵌合を解除して一対のケース部21,22を開いた状態にすると、付勢機構29により付勢された分割磁性体コア11,12は、ケース部21,22を閉じ合わせた時よりも、ケース部21,22から突出した状態で保持される。但し、係合突起31と凹部13とが緩嵌しているため、分割磁性体コア11,12がケース部21,22から脱落することはない。
【0028】
一方、雄側嵌合部24を雌側嵌合部25に嵌合させ、ケース部21,22を閉じ合わせると、分割磁性体コア11,12は、環状に組み合わされ、しかも、付勢機構29によって、分割面X,Yが互いに密着する方向に付勢された状態に保持される。
【0029】
この時、面一当接部27を備えるケース部22は、分割面X,Yの近傍にて、分割面X,Yを挟んだ両側から、分割磁性体コア11,12の側壁11a,12aのいずれにも当接する。
そして、図4に示すように、雑音電流吸収具2を、ケース部22に電線Lを巻き付けるようにして電線Lに取り付けると、電線Lが巻き付けられたケース部22の二つの内周縁部22cは、分割磁性体コア12に密着する方向に変位して、分割磁性体コア12を両側から挟み込むように押圧する。この時、電線Lが面一当接部27を直接的に圧接していなくても、内周縁部22cに沿って形成された突条26の剛性により、面一当接部27も、分割磁性体コア11,12が収納されている方向に変位し、両分割磁性体コア11,12の側壁11a,12aを、分割面X,Y近傍にて両側から挟み込むように押圧する。
【0030】
従って、本実施形態の雑音電流吸収具2によれば、面一当接部27からの押圧力により、分割磁性体コア11,12の分割面X,Yに沿った方向の位置ずれが矯正され、分割磁性体コア11,12の分割面X,Yが正しく一致した状態となるため、雑音電流の吸収特性を最大限に引き出すことができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、ケース部22には面一当接部27のみを、ケース部21には切欠部28のみを形成したが、両ケース部21,22に、それぞれ面一当接部27,切欠部28の双方を混在させて形成してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、ケース部22の端壁22aの分割面X,Y近傍端を部分的に延設することで面一当接部27が形成されているが、図5及び図6に示す雑音電流吸収具3のように、ケース部22の端壁22aの分割面X,Y近傍端37を全体的に長めに形成して、この部分を面一当接部とし、これに対応してケース部21の端壁21aの分割面X,Y近傍端38を全体的に短めに形成してもよい。なお、図5は、雑音電流吸収具3(他の実施形態)の構成を示す参考斜視図であり、図6は、その正面図である。そして、図5では、図1の場合と同様に、分割磁性体コア11をケース部21から取り外して、これを分割磁性体コア12上に載置した状態のものを示している。
【0033】
また、図5,図6に示す雑音電流吸収具3では、端壁22aの分割面X,Y近傍端37と共に外周壁22bも延設されているが、この外周壁22bの延設部分Pを除去した構成としてもよい。
更に、上記実施形態では、図7(a)に示すように、突条26が、端壁22aの内周縁部22cに接するよう形成されているが、図7(b)に示すように、内周縁部22cから少し離れた位置に突条26を形成してもよい。また、突条26の断面形状は、四角形に限らず、三角形や半円形等であってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、磁性体コア10として円筒状のものを用いているが、これに限らず、例えば、中央に円柱形貫通穴を有する平行六面体状のもの等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の雑音電流吸収具の構成を説明するための参考斜視図である。
【図2】実施形態の雑音電流吸収具を構成する保持ケースの五面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図、及びB−B断面図である。
【図4】実施形態の雑音電流吸収具の使用状態を示す斜視図である。
【図5】他の実施形態の構成を説明するための参考斜視図である。
【図6】図5に示す他の実施形態の正面図である。
【図7】突条の形成位置のバリエーションを示す説明図である。
【図8】雑音電流吸収具を構成する分割磁性体コアの分割面の位置ずれが、雑音電流吸収具を取り付けた電線のインピーダンスに与える影響を示すグラフである。
【符号の説明】
2,3…雑音電流吸収具、10…磁性体コア、11,12…分割磁性体コア、11a,12a…側壁、11b,12b…内周壁、13…凹部、20…保持ケース、21,22…ケース部、21a,22a…端壁、21b,22b…外周壁、21c,22c…内周縁部、23…ヒンジ部、24…雄側嵌合部、25…雌側嵌合部、26…突条、27…面一当接部、28…切欠部、29…付勢機構、30…取付部、31…係合突起、L…電線、X,Y…分割面。
Claims (4)
- 電線の外周部を包囲する形状に組み合わされる一対の分割磁性体コアと、
該分割磁性体コアをそれぞれ包持する一対のケース部、及び前記分割磁性体コアが環状に組み合わされるよう前記一対のケース部を閉じ合わせた状態に固定する固定機構からなる保持ケースと、
を備え、電線に外嵌され該電線を流れる雑音電流を吸収する雑音電流吸収具において、
前記一対のケース部には、前記分割磁性体コアを挟んで対向する各一対の端壁に、前記電線を挿通させるための挿通孔を形成する内周縁部に沿って突条を設けると共に、前記一対のケース部の少なくとも一方には、前記ケース部を閉じ合わせた時に前記一対の分割磁性体コアの分割面付近にて、前記一対の分割磁性体コアの双方に当接可能な複数の面一当接部を設け、
前記突条は、その一部を前記分割磁性体コアに向けて押圧すると、前記面一当接部を含む当該突条の形成部位全体を押圧方向に変位させるような剛性を有することを特徴とする雑音電流吸収具。 - 前記面一当接部は、前記ケース部の端壁を、前記内周縁部に沿って、且つ前記一対のケース部を閉じ合わせた時に前記分割磁性体コアの分割面が位置する面を超えて延設することで形成されていることを特徴とする請求項1記載の雑音電流吸収具。
- 前記ケース部には、前記一対のケース部を閉じ合わせた時に他方のケース部に形成された前記延設部が位置する部分を切り欠いてなる切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の雑音電流吸収具。
- 前記面一当接部は一方のケース部のみに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載の雑音電流吸収具。
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