JP3626610B2 - 処理装置及び処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,例えば半導体ウェハ等の基板に処理液を供給して処理する,処理装置及び処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に,半導体デバイスの製造工程においては,例えば半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という。)の表裏面に付着したパーティクル,有機汚染物,金属不純物等のコンタミネーションを除去するために洗浄処理システムが使用されている。ウェハを洗浄する洗浄処理システムの1つとして,例えばスピン型の洗浄処理装置を用いた枚葉式の洗浄処理システムが知られている。
【0003】
従来の洗浄処理装置は,例えばウェハの表面に付着したパーティクルを効果的に除去するために,回転しているウェハの表面に,ブラシやスポンジ等の部材を回転させながら接触させて洗浄するスクラブ洗浄や,ジェットポンプによって高圧に加圧された処理液をジェットノズルによってウェハの表面に供給するジェット洗浄が知られている。
【0004】
従来のジェット洗浄においては,比抵抗の高い純水を用いるときには,静電対策が不可欠となっている。即ち,例えば15〜18MΩ程度の純水を,50kgf/cm〜100kgf/cmの高圧でウェハの表面に供給すると,ウェハが電荷を帯びることになり(帯電),帯電量が絶縁耐圧を越えた場合,静電気によるスパーク(放電)が発生して,ウェハに形成された半導体デバイスを破壊(静電破壊)するおそれがある。
【0005】
そこで,図11に示すように,処理液をジェットノズル100にまで移送する移送回路101においては,二酸化炭素(CO)がバブリングされているバブリング部102に純水(DIW)を通すことによって,純水に二酸化炭素を溶解させ,処理液として炭酸水溶液(HCO)を生成するようになっている。そして,比抵抗が0.2MΩ程度の炭酸水溶液をジェットポンプ103によって高圧に加圧した後,ジェットノズル100に送り,このような炭酸水溶液をウェハWの表面に供給する。炭酸水溶液は,静電気が発生するのを中和するいわゆるイオン水として働き,ウェハWの表面が帯電するのを防止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,移送回路101,ジェットポンプ103の材質は,構造上,ステンレス鋼などの金属によって構成されているので,弱酸性である炭酸水溶液が,これら移送回路101,ジェットポンプ103に流れ込むことになれば,これら移送回路101,ジェットポンプ103の金属成分(鉄,クロム,ニッケル等)が,例えば1×1011atoms/cm程度の割合で炭酸水溶液中に溶出してしまう。このような金属成分を含んだ炭酸水溶液がジェットノズル100によってウェハWの表面に供給されれば,ウェハWが金属汚染されてしまう。
【0007】
従って,本発明の目的は,加圧された処理液を供給する際に,基板の金属汚染を防止することができる処理装置及び処理方法を提供することにある。
【0008】
上記課題を解決するために,本発明にあっては,加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理液供給ノズルを備えた処理装置において,前記基板に帯電除去液を供給する帯電除去液供給ノズルを前記処理液供給ノズルと別に設け,溶媒に帯電除去成分を溶解させて帯電除去液を生成する溶解手段と,前記溶解手段から帯電除去液供給ノズルに帯電除去液を移送する回路であって,前記帯電除去液中に金属成分を溶出させない材質から成る移送回路とを設けたことを特徴とする,処理装置が提供される。
【0009】
本発明によれば,処理液供給ノズルと帯電除去液供給ノズルとを個別に設け,帯電除去液供給ノズルによって基板に帯電除去液を供給して基板が帯電しないようにする一方で,処理液供給ノズルから加圧された処理液を基板に供給して基板からパーティクル等の不純物を除去する。この場合,帯電除去液は加圧機構に流れ込むことがないので,加圧機構の金属成分が帯電除去液に溶出することもない。これにより,金属成分を含んでいない帯電除去液を基板に供給することができ,基板の金属汚染を防止することができる。従って,静電破壊を防止しつつも,基板を良好に処理することが可能となる。また,処理液のみを供給する場合,処理液と帯電除去液とを供給する場合とを使い分けることによって,処理の応用範囲を広げることができる。なお,ここでいう静電破壊とは,基板上で静電気によるスパーク(放電)が発生して,例えば基板に形成されたデバイスを破壊するようなことをいう。
【0010】
溶媒に帯電除去成分を溶解させて帯電除去液を生成する溶解手段と,前記溶解手段から帯電除去液供給ノズルに帯電除去液を移送する回路であって,前記帯電除去液中に金属成分を溶出させない材質から成る移送回路とを設けることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば,溶解手段に溶媒を通し,この溶媒に帯電除去成分を溶解させて帯電除去液を生成する。この帯電除去液は,移送回路を介して帯電除去液供給ノズルにまで移送されることになるが,この移送回路の材質には,帯電除去液中に金属成分を溶出させないものが使用されるため,移送中に,帯電除去液に金属成分が溶出することがない。これにより,金属成分を含まない帯電除去液を基板に供給することができる。なお,移送回路の配管の材質には,例えばフッ素樹脂等を用いるのがよい。
【0012】
前記帯電除去液供給ノズルは,前記帯電除去液に金属成分を溶出させない材質からなり,前記基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば,帯電除去液中に金属成分を溶出させない材質から成る帯電除去液供給ノズルが,帯電除去液を基板に供給する。これにより,供給中に,帯電除去液中に金属成分が溶出することがなく,金属成分を含まない帯電除去液を基板に供給することができる。さらに,帯電除去液供給ノズルよりミスト状の帯電除去液を基板に供給するので,帯電除去液の液膜を基板に形成することができ,液膜の膜厚を非常に薄いものとすることができる。従って,加圧された処理液の基板に対する処理効果に影響なく帯電を防止することが可能となる。
【0014】
ここで,前記帯電除去液供給ノズルに気体供給回路が接続されることにより,前記帯電除去液供給ノズルは,前記基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されているのがよい。かかる構成によれば,気体供給回路によって帯電除去液供給ノズル内に気体が供給されることにより,帯電除去液供給ノズル内で帯電除去液がミストとなって,これを帯電除去液供給ノズルが基板に供給する。これにより,膜厚が非常に薄い液膜を基板の表面に形成できる。
【0015】
前記帯電除去液は,炭酸水溶液とするのがよい。この場合,溶媒を純水とし,帯電除去成分を二酸化炭素とする。
【0016】
また本発明は,加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理方法において,前記処理液を基板に供給する前に,前記帯電除去液を基板に予め供給して帯電除去液の液膜を形成することを特徴とする。
【0017】
本発明の処理方法によれば,基板に予め帯電除去液の液膜を形成して,帯電を除去することにより静電破壊を防止する。そして,このような基板に,加圧された処理液を供給する。
【0018】
また,加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理方法において,前記処理液を基板に供給すると同時に,前記帯電除去液を基板に供給することを特徴とする。
【0019】
処理液を基板に供給すると同時に基板に帯電除去液を供給して,帯電を除去することにより静電破壊を防止する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を,キャリア単位で基板であるウェハを搬入し,ウェハを一枚ずつ洗浄,乾燥を行い,キャリア単位でウェハを搬出するように構成された洗浄処理システムに基づいて説明する。図1は,本実施の形態を説明するための洗浄処理システム1の斜視図である。
【0021】
この洗浄処理システム1には,ウェハWを収納したキャリアCを4個分載置できる載置部2が設けられている。洗浄処理システム1の中央には,載置部2に載置されたキャリアCから洗浄前のウェハWを一枚ずつ取り出し,また,洗浄後のウェハWをキャリアCに収納する取出収納アーム3が配置されている。この取出収納アーム3の背部には,取出収納アーム3との間でウェハWの授受を行い搬送機構である搬送アーム5が待機している。搬送アーム5は,洗浄処理システム1の中央に設けられた搬送路6に沿って移動可能に設けられている。搬送路6の両側には,各種の処理装置が配置されている。具体的には,搬送路6の一方の側方には,例えばウェハWの表面を洗浄処理するための表面洗浄処理装置7と,ウェハWの裏面を洗浄処理するための裏面洗浄処理装置8とが並んで配置されている。また,搬送路6の他方の側方には,加熱処理装置9が4基積み重ねて設けられている。この加熱処理装置9は,ウェハWを加熱して乾燥させるための手段である。この加熱処理装置9に隣接して2基のウェハ反転装置10が積み重ねて設けられている。
【0022】
ここで,表面洗浄処理装置7の構成について説明する。図2は,表面洗浄処理装置7の内部の斜視図である。図3は,表面洗浄処理装置7の内部の平面図であり,図4は,図3中のA−A線断面図である。この表面洗浄処理装置7は,ケース20のほぼ中央に設けられたカップ21内で,スピンチャック22によってウェハWを水平に吸着保持するようになっている。このスピンチャック22は,カップ21の下方に設けられたモータ23によって回転自在になるように構成されている。そして,洗浄処理中は,スピンチャック22によって回転しているウェハWの表面に純水(DIW)を供給し,ウェハWを包囲するカップ21によって,この純水が周囲に飛び散ることを防止するようになっている。また,図示の如くケース20の壁面に,ウェハWをこの表面洗浄処理装置7に搬入・搬出する際に上下動して開閉する開閉ドア24を設けている。
【0023】
表面洗浄処理装置7には,ウェハWの表面にブラシやスポンジ等の部材を回転させながら接触させて洗浄処理するスクラブ洗浄機25が設けられている。スクラブ洗浄機25は,駆動機構30の上端に水平に支持されたアーム部材31を備え,駆動機構30の稼働によってアーム部材31を昇降移動させることができると共に,図3中のθ方向に旋回させ,ウェハWの上方を往復移動させることができる構成になっている。アーム部材31の先端下方に図示しない昇降回転機構の稼働によって昇降及び回転自在なシャフト32を設け,このシャフト32の下端に処理体33を固定している。この処理体33は,その下面にブラシやスポンジ等からなる部材を取り付けており,処理体33を回転させてウェハWの表面に接触させることにより,ウェハWの表面を洗浄処理するようになっている。なお,この処理体33に純水供給回路を接続し,下方中央から純水を吐出しながら,処理体33をウェハWの表面に接触させるようにしてもよい。
【0024】
表面洗浄処理装置7は,後述するジェットポンプ46によって例えば50kgf/cm〜100kgf/cmの高圧に加圧された純水のみをウェハWに供給して洗浄処理するジェットノズル40と,高圧に加圧された純水を供給してもウェハWを帯電させないようにウェハWの表面に炭酸水溶液(HCO)を供給する炭酸水溶液供給ノズル41をジェットノズル40と別に設けている。
【0025】
ジェットノズル40は,ケース20の内部においてスピンチャック22を挟んでスクラブ洗浄機25と対称位置に配置されたジェット洗浄機42に装着されている。即ち,ジェット洗浄機42は,駆動機構43の上端に水平に支持されていたアーム部材44を備え,駆動機構43の稼働によってアーム部材44を昇降移動させることができると共に,図3中のθ’方向に旋回させ,ウェハWの上方を往復移動させることが可能な構成になっている。そして,アーム部材44の先端に上記ジェットノズル40を装着している。図5に示すように,このジェットノズル40には,純水を供給する純水供給回路45が接続され,この純水供給回路45の途中には,前述したジェットポンプ46が介装されている。このジェットポンプ46は,いわゆるプランジャ式のポンプであり,駆動エアを用いて純水を加圧して高圧水とする。
【0026】
炭酸水溶液供給ノズル41は,支持台50に取り付けられ,ウェハWの中心方向に炭酸水溶液を吐き出すように指向されている。図5に示すように,純水に二酸化炭素(CO)を溶解させて炭酸水溶液を生成するセル部51と,セル部51から炭酸水溶液供給ノズル41に炭酸水溶液を移送する回路であって,炭酸水溶液中に金属成分(鉄,クロム,ニッケル等)を溶出させない材質,例えばフッ素樹脂から成る移送回路52とを設けている。
【0027】
図6に示すように,セル部51の上面には,純水供給回路53の出口と,二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給回路54の途中から分岐した分岐回路55の出口と,移送回路52の入口とが接続されている。セル部51の内部に,中空糸56を設け,この中空糸56と分岐回路55とが連通している。セル部51では,純水供給回路53からセル部51に流れ込んだ純水を,中空糸56の周面を迂回するようにして,移送回路52の出口に向かって流すようになっている。その間に中空糸56を介して純水に二酸化炭素を溶解させて,例えば比抵抗が0.05MΩ程度で飽和した炭酸水溶液を生成し,このような炭酸水溶液を移送回路52に流出させるようになっている。なお,このような簡易な構成のセル部51は,安価でメンテナンスの手間が殆どかからない。
【0028】
移送回路52の途中には,フィルタ57,フローメータ58,弁59を順が介装されている。セル部51から流出した炭酸水溶液をフィルタ57,フローメータ58の順に流して浄化及び流量の確認を行い,弁59を開放させることにより,炭酸水溶液供給ノズル41に,所定の状態にある炭酸水溶液を送る構成になっている。
【0029】
炭酸水溶液の移送は,工場供給圧(0.5kgf/cm〜1kgf/cm)を用いて行うので,加圧された純水とは異なり,材質がステンレス鋼などの金属から成るジェットポンプ46は不要となっている。さらに,移送回路52だけでなく,フィルタ57,フローメータ58,弁59も,いずれも炭酸水溶液中に金属成分を溶出させないような材質,例えばフッ素樹脂,石英等から成っている。従って,セル部51から炭酸水溶液供給ノズル41に炭酸水溶液を移送している間,炭酸水溶液中に金属成分が溶出するようなことはない。
【0030】
炭酸水溶液供給ノズル41は,炭酸水溶液中に金属成分を溶出させない材質,例えば石英から成っており,さらに炭酸水溶液供給ノズル41には,上記二酸化炭素供給回路54が接続されている。この二酸化炭素供給回路54の途中には,二酸化炭素の供給をオン・オフする弁60が介装されている。従って,弁60を開放させれば,二酸化炭素が炭酸水溶液供給ノズル41内に供給され,図7に示すように,炭酸水溶液供給ノズル41は,ミスト状の炭酸水溶液を吐出してウェハWの表面に供給するようになっている。また,ジェットノズル40が純水を吐出してウェハWの表面に供給する前に,炭酸水溶液供給ノズル41がミスト状の炭酸水溶液をウェハWの表面に供給することや,ジェットノズル40が純水を供給すると同時に,炭酸水溶液供給ノズル41がミスト状の炭酸水溶液をウェハWの表面に供給すること,さらに炭酸水溶液供給ノズル41がミスト状の炭酸水溶液が供給することを停止する一方で,ジェットノズル40が単独で純水を供給すること等をプロセスレシピで自由に設定することが可能となっている。
【0031】
次に,以上のように構成された洗浄処理システム1において行われるウェハWの洗浄について説明する。まず,図示しない搬送ロボットが未だ洗浄されていないウェハWを例えば25枚ずつ収納したキャリアCを載置部2に載置する。そして,この載置部2に載置されたキャリアCからウェハWが取り出され,取出搬入アーム3を介して搬送アーム5に受け渡される。そして,表面洗浄処理装置7及び裏面洗浄処理装置8を用いて,ウェハWを洗浄処理し,ウェハWの表裏面に付着しているパーティクル等を除去する。
【0032】
ここで,表面洗浄処理装置7で行われる洗浄処理について説明する。この表面洗浄処理装置7は,ジェット洗浄やスクラブ洗浄を単独で行ったり,ジェット洗浄の後にスクラブ洗浄を,逆にスクラブ洗浄の後にジェット洗浄を行うことが可能であるが,本実施の形態では,スクラブ洗浄の後にジェット洗浄を行う場合について,図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
まず,搬送アーム5は,開放された開閉ドア24から表面洗浄処理装置7内に進入し,図3に示したように,スピンチャック22にウェハWを受け渡す。搬送アーム5は表面洗浄処理装置7内から退出し,開閉ドア24を閉じる。そして,スピンチャク22によって吸着保持されたウェハWを,モータ23の稼働によって,スピンチャック22と一体となって回転させ,洗浄処理を開始する(S1)。まず,スクラブ洗浄機25をウェハWの上方に移動させ,ウェハWの表面に処理体30を接触させてスクラブ洗浄を行う。スクラブ洗浄が終了した後,ジェット洗浄機42を稼働させてジェット洗浄を行う。
【0034】
即ち,図5及び図6に示したように,セル部51に純水(DIW)を通し,純水に二酸化炭素(CO)を溶解させて,比抵抗が0.05MΩ程度で飽和した炭酸水溶液(HCO)を生成する。ここで,中空糸56を備えたセル部51は,簡易な構成なため,図11で説明したような,比抵抗値を例えば0.2MΩに制御する従来のバブリング部102と比べて安価になっており,しかもメンテナンスも殆ど行わないで済ますことができる。
【0035】
炭酸水溶液は,工場供給圧(0.5kgf/cm〜1kgf/cm)によって移送回路52から炭酸水溶液供給ノズル41にまで移送される一方で,二酸化炭素供給回路54によって炭酸水溶液供給ノズル41内に二酸化炭素が供給される。そして,炭酸水溶液供給ノズル41内で炭酸水溶液がミストとなって,これを炭酸水溶液供給ノズル41が吐出してウェハWの表面に供給し,ウェハWの表面に炭酸水溶液の液膜を形成する(S2)。
【0036】
次いで,待機状態にあったジェット洗浄機42を,ウェハWの上方に旋回させて,ジェットポンプ46によって例えば50kgf/cm〜100kgf/cmの高圧に加圧された純水を,ジェットノズル40によってウェハWの表面に供給する(S3)。ジェット洗浄機42を少なくともウェハWの表面中央からウェハWの周縁部まで往復移動させて,高圧に加圧された純水をウェハWの回転と合わせてウェハWの表面全体に均一に供給する。
【0037】
このように,ジェットノズル40と炭酸水溶液供給ノズル41とを個別に設け,炭酸水溶液供給ノズル41によってミスト状の炭酸水溶液を予めウェハWに供給して炭酸水溶液の液膜を形成し,ウェハWを帯電させないようにする一方で,その後に,このようなウェハWにジェットノズル40から高圧に加圧された純水を供給し,ウェハWの表面からパーティクル等の不純物を除去する。
【0038】
この場合,炭酸水溶液は,純水のようにジェットポンプ46に流れ込むことがないので,ジェットポンプ46の金属成分が炭酸水溶液に溶出することもない。さらに,移送回路52の材質はフッ素樹脂から成り,炭酸水溶液供給ノズル41の材質は石英,樹脂から成り,その他,フィルタ57,フローメータ58,弁59の材質も,炭酸水溶液中に金属成分を溶出させないものが使用できるため,移送中及び供給中に,炭酸水溶液中に金属成分が溶出することがない。これにより,金属成分を含んでいない炭酸水溶液をウェハWに供給することができ,ウェハWの金属汚染を防止することができる。従って,静電破壊を防止しつつも,ウェハWの表面を良好に洗浄処理することが可能となる。
【0039】
しかも,高圧に加圧された純水を供給する前に,ミスト状の炭酸水溶液を供給して炭酸水溶液の液膜をウェハWの表面に予め形成することができ,炭酸水溶液の液膜の膜厚を非常に薄いものとすることができる。そして,高圧に加圧された純水のウェハWに対する洗浄効果に影響なく帯電を防止することが可能となる。さらに,ジェットノズル40から供給される純水に,ミスト状の炭酸水溶液が混合しても,純水の浄化能力が落ちて洗浄効果が低下するということもない。従って,高圧に加圧された純水による洗浄効果を最大限に発揮することができる。
【0040】
所定の時間の経過後,ジェット洗浄機42からの純水の供給が停止し,ジェット洗浄機42は,元の待機状態に戻る。それからしばらく立つと,炭酸水溶液供給ノズル41も,ミスト状の炭酸水溶液を吐出することを停止する(S4)。この後,ウェハWを高速回転させて乾燥処理を行い(S5),洗浄処理を終了させる。以上のような炭酸水溶液供給ノズル41の動作及びジェットノズル40の動作を図9のタイミングチャートに示す。
【0041】
ウェハWの表面の洗浄処理が終了すると,開閉ドア24を開放させ,搬送アーム5によって,ウェハWを表面洗浄処理装置7から取り出す。その後,ウェハ反転装置10でウェハWを反転させ,裏面洗浄処理装置8でウェハWの裏面を洗浄,乾燥処理する。そして,必要に応じて,ウェハWを乾燥処理装置9で例えば30秒間100℃に加熱して乾燥させる。所定の洗浄工程が終了したウェハWは,搬送アーム5から取出収納アーム3に受け渡され,再びキャリアCに収納される。続いて,残りの24枚のウェハWに対しても一枚ずつ同様な洗浄工程が行われていく。25枚のウェハWに対して所定の洗浄工程が終了すると,キャリアC単位で洗浄処理システム1外に搬出される。
【0042】
かくして,本実施の形態の表面洗浄処理装置7によれば,ジェットノズル40と炭酸水溶液供給ノズル41とを個別に設けて,高圧に加圧された純水と炭酸水溶液を別々に供給するように構成したので,金属成分を含まない炭酸水溶液をウェハWの表面に供給することができ,ウェハWの金属汚染を防止することができる。従って,静電破壊を防止しつつも,ウェハWの表面を良好に洗浄処理することが可能となる。
【0043】
なお,本発明の実施の形態の一例について説明したが,本発明はこの例に限定されず種々の様態を採りうるものである。例えば,図10に示すように,二酸化炭素供給回路54をセル部51のみに接続させるようにして,炭酸水溶液をミストにするためのN(窒素)ガスを供給するN供給回路70を別途設けて,このN供給回路70を炭酸水溶液供給ノズル41に接続するようにしてもよい。このような構成においては,N供給回路70中に介装された弁71を開放させて,Nガスを炭酸水溶液供給ノズル41に供給し,Nガスを用いて炭酸水溶液をミストにする。従って,上記実施の形態に比べて,消耗費のかかる二酸化炭素の使用量を減らすことができ,ランニングコストを抑制することができる。なお,N供給回路70を設け,二酸化炭素供給回路54の出口をセル部51に接続した以外は,先に説明した表面洗浄処理装置7と同一の構成であるので,図5及び図10において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0044】
また,ジェットノズル40によって純水をウェハWに供給すると同時にウェハWに炭酸水溶液を供給するようにしてもよい。かかる洗浄処理方法においても,静電破壊を確実に防止しながら,ウェハWの表面からパーティクル等の不純物を除去することができる。さらに,炭酸水溶液供給ノズル41を,ジェット洗浄機42に取り付けてもよい。これにより,炭酸水溶液供給ノズル41を,ジェットノズル40と同様にウェハWの上方を往復移動させることができる。
【0045】
また,ウェハWの表面状況や洗浄処理の種類によっては,二酸化炭素が原因となって,ウェハWの表面が荒れてしまうような問題がある,この場合,炭酸水溶液供給ノズル41の供給を止め,ジェットノズル40によって高圧に加圧された純水のみをウェハWの表面に供給するようにしてもよい。従来であれば,一つの供給手段によって炭酸水溶液のみしか供給することができなかったので,上記のような問題があっても解決する手段がなかったが,本実施の形態のように,ジェットノズル40と炭酸水溶液供給ノズル41を個別に設ければ,上記問題を解決することが可能となる。このように,純水のみを供給する場合,純水と炭酸水溶液とを供給する場合とを使い分けることによって,洗浄処理の応用範囲を広げることができる。
【0046】
以上は何れも基板としてウェハWを用いた例について説明したが,基板としてLCD基板を用いてもよい。また,本発明の作用効果,即ち,静電破壊を防止しつつも,基板を良好な処理を行えることに着目すれば,単なる洗浄処理ではなく,例えば所定の処理液を基板に塗布する装置や方法に対して本発明を応用することもできる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば,処理液供給手段と帯電除去液供給手段とを個別に設けて,加圧された処理液と帯電除去液を別々に供給するように構成したので,金属成分を含まない帯電除去液を基板に供給することができ,基板の金属汚染を防止することができる。従って,静電破壊を防止しつつも,基板を良好に処理することが可能となる。
【0048】
本発明によれば,移送回路,帯電除去液供給ノズルは,いずれも帯電除去液中に金属成分を溶出させない材質から成るので,移送中及び供給中に,帯電除去液中に金属成分が溶出することがない。特に,帯電除去液供給ノズルが,基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されることになるので,加圧された処理液の基板に対する処理効果に影響なく帯電を防止することが可能となる。
【0049】
本発明によれば,帯電を除去しながら,加圧された処理液を基板に供給するので,静電破壊を防止しつつも,基板を良好に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる表面洗浄処理装置が備えられた洗浄処理システムの斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる表面洗浄処理装置の斜視図である。
【図3】本実施の形態にかかる表面洗浄処理装置の平面図である。
【図4】図3中のA−A線断面図である。
【図5】ジェットノズル及び炭酸水溶液供給ノズルにかかる回路図である。
【図6】セル部の内部断面図である。
【図7】ウェハの表面に炭酸水溶液供給ノズルがミスト状の炭酸水溶液を供給している状態を示す説明図である。
【図8】本実施の形態にかかる洗浄処理方法を示すフローチャートである。
【図9】炭酸水溶液供給ノズルの動作及びジェットノズルの動作を示すタイミングチャートである。
【図10】N供給回路が設けられた,ジェットノズル及び炭酸水溶液供給ノズルにかかる他の回路図である。
【図11】従来のジェットノズルにかかる回路図である。
【符号の説明】
1 洗浄処理システム
7 表面洗浄処理装置
40 ジェットノズル
41 炭酸水溶液供給ノズル
46 ジェットポンプ
51 セル部
52 移送回路
54 二酸化炭酸供給回路
C キャリア
W ウェハ

Claims (6)

  1. 加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理液供給ノズルを備えた処理装置において,
    前記基板に帯電除去液を供給する帯電除去液供給ノズルを前記処理液供給ノズルと別に設け
    溶媒に帯電除去成分を溶解させて帯電除去液を生成する溶解手段と,前記溶解手段から帯電除去液供給ノズルに帯電除去液を移送する回路であって,前記帯電除去液中に金属成分を溶出させない材質から成る移送回路とを設けたことを特徴とする,処理装置。
  2. 前記帯電除去液供給ノズルは,前記帯電除去液に金属成分を溶出させない材質からなり,前記基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されたことを特徴とする,請求項1に記載の処理装置。
  3. 加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理液供給ノズルを備えた処理装置において,
    前記基板に帯電除去液を供給する帯電除去液供給ノズルを前記処理液供給ノズルと別に設け,
    前記帯電除去液供給ノズルは,前記帯電除去液に金属成分を溶出させない材質からなり,前記基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されたことを特徴とする,処理装置。
  4. 前記帯電除去液供給ノズルに気体供給回路が接続されることにより,前記帯電除去液供給ノズルは,前記基板にミスト状の帯電除去液を供給するように構成されたことを特徴とする,請求項2または3に記載の処理装置。
  5. 前記帯電除去液は,炭酸水溶液であることを特徴とする,請求項1,2,3又は4に記載の処理装置。
  6. 加圧機構によって加圧された処理液を基板に供給して処理する処理方法において,
    前記処理液を基板に供給する前に,前記帯電除去液を基板に予め供給して帯電除去液の液膜を形成することを特徴とする,処理方法。
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