JP3626164B2 - オフセット印刷インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷インキ組成物に関し、さらに詳しくは、印刷直後に印刷物を棒積みした際の裏付き(以下、一次ブロッキングという)、印刷物を加工する際のブロッキング(以下、二次ブロッキングという)を起こすことのない耐ブロッキング適性およびセット性に優れたオフセット印刷物の製造を可能とするオフセット印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にオフセット印刷インキは着色剤、バインダー樹脂、鉱物油などの石油系溶剤などで構成され、印刷上の諸適性を向上させるために必要に応じて種々の添加剤が使用されている。
【0003】
近年環境問題に対する認識が高まっており、印刷インキ業界においても環境対策が求められている。その対策の一つとして、従来から原材料として使用されてきた鉱物油類の一部または全てを植物油、例えば大豆油等で置き換え、ノンVOCあるいは低VOC(VOC = Volatile Organic Compound)としたインキが注目を浴びている(特開平5−112745号公報)。
【0004】
しかしながら、現状のオフセット印刷インキに植物油を多用すると、セット性の低下、一次ブロッキングや二次ブロッキングを起こす等の問題が生じる。これは紙面に印刷されたインキからの溶剤離脱が遅く、植物油成分が多量に残留することが原因であり、植物油成分が鉱物油類より高粘度で、樹脂を溶解する性質が高いことによる。現状では、環境対策とこれらの性能は両立できていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、環境対策を行いながらセット性、耐ブロッキング性(耐一次ブロッキング性、耐二次ブロッキング性)等のオフセット印刷に要求される必要な性能を満足し得るオフセット印刷インキ組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、かつ、溶剤成分と相溶するポリマーをオフセット印刷インキ組成物に含有させることにより上記課題を克服できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、着色剤、バインダー樹脂としてロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂、溶剤成分として植物油成分のみを含有するオフセット印刷インキ組成物において、さらに、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、かつ、溶剤成分に相溶するポリマー(ただし、ポリブタジエンを除く)をインキ組成物中に0.1〜10重量%含有することを特徴とするオフセット印刷インキ組成物に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記ポリマーが、室温で液状である請求項1記載のオフセット印刷インキ組成物に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記植物油成分の一部または全てが植物油由来の脂肪酸エステル化合物である請求項1または2記載のオフセット印刷インキ組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオフセット印刷インキ組成物について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明のオフセット印刷インキ組成物を得るために使用する着色剤としては、従来からオフセット印刷インキに使用されている無色または有色の、無機または有機顔料が使用できる。具体的には、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、磁性酸化鉄などの無機顔料、アゾ系顔料、レーキ顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料などの有機顔料、およびカーボンブラックなどが使用できる。着色剤のオフセット印刷インキ組成物中における含有量は3〜40重量%程度が適当である。
【0012】
本発明のオフセット印刷インキ組成物を得るために使用するバインダー樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂を特に制限なく使用することができる。また、必要に応じて、アルキッド樹脂や石油樹脂等を併用することができる。バインダー樹脂の含有量は特に限定されないが、通常はオフセット印刷インキ組成物中に20〜60重量%程度の範囲が適当である。
【0013】
本発明の耐一次、耐二次ブロッキング性等の耐ブロッキング性およびセット性が向上されたオフセット印刷インキ組成物を得るには、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメータ(Solubility Parameter)が19(MPa)1/2より小さく、かつ、溶剤成分と相溶するポリマーを含有させる。該ポリマーは、より好ましくは、溶解性パラメータが15〜18(MPa)1/2であり、さらに常温で液状のものである。該ポリマーとしては、オレフィン系モノマーの単独重合体および共重合体、ジエン系モノマーの単独重合体および共重合体、オレフィン系モノマーとジエン系モノマーの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソプレン−イソブチレン共重合体などが挙げられる。溶剤成分と相溶しないポリマーは、他の成分との混和性が十分でない。また、該ポリマーの溶解性パラメータが前記範囲より高いと他の成分との相溶性が高くなりすぎて、セット性、耐ブロッキング性を改善することができない。
【0014】
本発明の、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメーターが19(MPa)1/2より小さく、かつ、溶剤成分(植物油成分)と相溶するポリマーを使用することによってセット性や耐ブロッキング性が向上するのは、バインダー樹脂成分とは溶解性パラメータが離れた該ポリマーが溶剤成分に相溶することで、溶剤系全体としての樹脂成分からの離脱性が向上されることによると考えられる。なお、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーの溶解性パラメータについては、溶解法や膨潤法等により求めることができ、主なものはポリマーハンドブック(J. Brandrup and E. H. Immergut, Polymer Handbook 3rd ed., John Wiley & Sons, Inc., New York, 1989, Section VII)等を参照できる。
【0015】
前記ポリマーの使用量はオフセット印刷インキ組成物中に0.1〜10重量%が適切である。使用量が前記範囲未満ではセット性、耐一次、耐二次ブロッキング性の改善に十分な効果が得られず、一方この範囲を超えるとインキ組成物からの分離が激しくなったり、光沢が低下する等の問題が生じる傾向がある。ただし、適切な使用量は使用するバインダー樹脂および前記ポリマーの種類により異なるため、前記範囲内で適切な使用量を選択することが好ましい。
【0016】
本発明のオフセット印刷インキ組成物を得るために使用できる植物油成分としては、植物油および植物油由来の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。
【0017】
前記植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油または半乾性油が例示できる。これらは単独で、または2種以上を併用できる。
【0018】
前記植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、前記の乾性油または半乾性油由来の脂肪酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。かかる脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基が例示できる。これら脂肪酸モノエステルは、単独で、または2種以上を組合わせて使用できる。
【0019】
本発明のオフセット印刷インキ組成物においては、植物油成分として、植物油、脂肪酸エステルをそれぞれ単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。脂肪酸エステルの使用量はオフセット印刷インキ組成物中において3重量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明のオフセット印刷インキ組成物における溶剤は、植物油成分単独である。環境対応(有害成分の除去やノンVOCあるいは低VOC化による、印刷作業環境の改善と無害な印刷物の提供)の点から、植物油成分の単独使用が好ましい。
【0021】
さらに、本発明のオフセット印刷インキ組成物には、必要に応じて、ゲル化剤、顔料分散剤、ドライヤー、乾燥遅延剤、酸化防止剤、整面助剤、耐摩擦性向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤などの添加剤を適宜使用することができる。ゲル化剤としては、トリメチロールプロパン−トリス−β−N−アジリジニルプロピオネート、ペンタエリスリトールプロパン−トリス−β−N−アジリジニルプロピオネートなどのアジリジン化合物、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソポロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート化合物、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドなどのアルミニウムアルコラート類などを挙げることができる。
【0022】
本発明のオフセット印刷インキ組成物を製造するには、従来公知の方法が使用できる。例えば、バインダー樹脂、植物油成分とを加熱しワニスを得る。このとき、ゲル化剤を加えてゲルワニスとしてもよい。次いで着色剤、および必要に応じて、植物油成分、顔料分散剤または顔料分散樹脂を加え、ビーズミルや3本ロールミル等で練肉分散させることによりオフセット印刷インキ用ベースを得る。さらに、得られたオフセット印刷インキ用ベースに、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、かつ溶剤成分と相溶するポリマー、必要に応じてドライヤー等のその他の添加剤を加え、植物油成分等で所定の粘度に調整しオフセット印刷インキ組成物を得る。該ポリマーはインキベースの調製時に配合してもよい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明のオフセット印刷インキ組成物ならびににその製造方法をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨と適用範囲に逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。なお、以下の記述において「部」は重量部を示す。
【0024】
[オフセット印刷インキ用ワニスの製造]
(ワニスA)
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、重量平均分子量90,000、酸価15mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂A((株)日立化成ポリマー製)、大豆油、および鉱物油((株)日本石油化学製、AFソルベント6号、以下同様)をそれぞれ表1の配合(各成分の配合量は部数で示す、以下同様)となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド((株)川研ファインケミカル製、ALCH)を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、ワニスAを得た。
【0025】
(ワニスB)
ワニスAの製造において、ロジン変性フェノール樹脂Aを重量平均分子量140,000、酸価15mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂B((株)日立化成ポリマー製)に変えた以外は、ワニスAを得る方法と同様にしてワニスBを得た。
【0026】
(ワニスC)
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、脂肪酸エステルA(Lawter Inc.製、大豆油脂肪酸メチルエステル)、ロジン変性フェノール樹脂A、大豆油、および鉱物油をそれぞれ表1の配合となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、ワニスCを得た。
【0027】
(ワニスD)
ワニスCの製造において、脂肪酸エステルAを脂肪酸エステルB(Lawter Inc.製、大豆油脂肪酸イソブチルエステル)に変えた以外は、ワニスCを得る方法と同様にしてワニスDを得た。
【0028】
(ワニスE)
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂A、大豆油および脂肪酸エステルAをそれぞれ表1の配合となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、ワニスEを得た。
【0029】
(ワニスF)
ワニスEの製造において、脂肪酸エステルAを脂肪酸エステルBに変えた以外は、ワニスEを得る方法と同様にしてワニスFを得た。
【0030】
[オフセット印刷インキ組成物の製造]
実施例1〜4および参考例1〜9
ワニスA〜F、およびカーボンブラック((株)三菱化学製、MA−7)をそれぞれ表2の配合(各成分の配合量は部数で示す、以下同様)で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、各インキベースに対して表2の配合で溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で常温で液状のポリブタジエン(以下、単にポリブタジエンという)、溶解性パラメータが16.6(MPa)1/2で常温で液状のポリイソプレン(以下、単にポリイソプレンという)、溶解性パラメータが15.2(MPa)1/2で常温で液状のポリイソブチレン(以下、単にポリイソブチレンという)、ワックスコンパウンド(シャムロック社製、ポリエチレンワックスコンパウンド、以下同様)、ドライヤー、鉱物油、脂肪酸エステルAおよび脂肪酸エステルBを添加、攪拌し、実施例1〜4および参考例1〜9のオフセット印刷インキ組成物を得た。なお、参考例1〜9は鉱物油含有系のインキ組成物、実施例1〜4は鉱物油非含有系のインキ組成物である。
【0031】
比較例1〜4
ワニスAまたはワニスEとカーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、各インキベースに対して表2の配合でポリブタジエン、溶解性パラメータが20.7のポリアクリル酸メチル、ワックスコンパウンド、ドライヤー、鉱物油および脂肪酸エステルAを添加、攪拌し、比較例1〜4のオフセット印刷インキ組成物を得た。なお、比較例1〜3は鉱物油含有系のインキ組成物、比較例4は鉱物油非含有系のインキ組成物である。
【0032】
[性能評価試験]
実施例1〜4、参考例1〜9および比較例1〜4のオフセット印刷インキ組成物について、印刷性能に関し、下記の評価を行った。
【0033】
(1)光沢
各オフセット印刷インキ組成物をRIテスター((株)明製作所)にてコート紙に展色し、室温で1日放置した後、60°−60°反射率を光沢計(村上色彩技術研究所製、デジタル光沢計)により測定した。
【0034】
(2)セット性
各オフセット印刷インキ組成物をRIテスター((株)明製作所)にてコート紙に展色した。上質紙を重ね、自動インキセット試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて上質紙へのインキの付着度を観察し、インキが付着しなくなるまでに要する時間(分)を測定した。この時間が短い方がセット性に優れる。
【0035】
(3)耐一次ブロッキング適性
各オフセット印刷インキ組成物を枚葉オフセット印刷機にてコート紙(NK−ハイコート 73K、日本加工紙(株))に印刷し、10000枚を棒積みして室温で24時間放置したときのブロッキングの度合いを次の基準に基づいて目視で評価した。この評価に優れる方が耐一次ブロッキング適性に優れる。
3:ブロッキングが少ないもの
2:ブロッキングが中程度のもの
1:ブロッキングが多いもの
【0036】
(4)耐二次ブロッキング適性
各オフセット印刷インキ組成物を枚葉オフセット印刷機にてコート紙(NK−ハイコート 73K、日本加工紙(株))に印刷し、室温で24時間放置したのち、裁断機にて200枚の印刷物を重ねて裁断したときのブロッキングの度合いを次の基準に基づいて目視で判断した。この評価に優れる方が耐二次ブロッキング適性および乾燥性に優れる。
3:ブロッキングが少ないもの
2:ブロッキングが中程度のもの
1:ブロッキングが多いもの
【0037】
[評価結果]
参考例1〜9および比較例1〜3のオフセット印刷インキ組成物(鉱物油含有系)について、前記評価を行った結果を表3に示す。また実施例1〜4および比較例4のオフセット印刷インキ組成物(鉱物油非含有系)について、前記評価を行った結果を表4に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】
本発明は、印刷物のセット性、耐一次、耐二次ブロッキング性に優れ、かつ印刷面の光沢、乾燥性を損わないオフセット印刷インキ組成物を提供する。
Claims (3)
- 着色剤、バインダー樹脂としてロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂を含有し、溶剤成分として植物油成分のみを含有するオフセット印刷インキ組成物において、さらに、オレフィン系モノマー、ジエン系モノマーの少なくとも1種を重合して得られるポリマーであって、溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、かつ、溶剤成分に相溶するポリマー(ただし、ポリブタジエンを除く)をインキ組成物中に0.1〜10重量%含有することを特徴とするオフセット印刷インキ組成物。
- 前記ポリマーが、室温で液状である請求項1記載のオフセット印刷インキ組成物。
- 前記植物油成分の一部または全てが植物油由来の脂肪酸エステル化合物である請求項1または2記載のオフセット印刷インキ組成物。
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