JP3625978B2 - 半導体製造排ガス除害装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体の製造工程において排出される有毒性,可燃性,腐食性を有する半導体製造排ガスを除害する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人体に対して有害、有毒にして且つ可燃性、爆発性を有し、概ね金属に対しては腐食性の激しい半導体製造排ガスは、大量の窒素ガスで希釈した後、排ガス濃度が爆発下限界以下となるようにし、更に大過剰の空気と混合してからそのまま大気に放出する方法がとられていた。
【0003】
ところが、今般、環境保護に対する認識の高まりと共に環境行政が厳しくなり、前述のような大気放出方法は厳しく規制される方向となり、半導体製造排ガスも積極的に除害しなければならなくなって来た。そこで、製造工程においてCVDからの排ガスを大気中に放出するに当たり、少なくとも有毒なガスの濃度を許容値以下にまで低減化するために除害装置が用いられる。
【0004】
排ガスの代表例としては周期律表III,IV,V族元素の水酸化物、例えばSiH,PH,B等があり、また製造工程で使用されたが反応しなかったSiHCl,SiHCl,Si,TEOS(テトラエトキシシラン)等のSi化合物も排ガスとなる。
【0005】
半導体製造工程における排ガスの処理方法としては、湿式法、吸着法、加熱分解法,燃焼法の4種の方法に大別することができるが、機能、イニシャルコスト、ランニングコスト、必要スペース、安全性等の全ての点から完全といえる処理法はない。
【0006】
この中で、加熱分解法、特に電熱加熱酸化分解法は作業現場のニーズによく合致し多く採用されている。図2は電熱加熱酸化分解法による現在の排ガス除害装置の概略断面図である。
【0007】
同図において、(11)は水スクラバで、工場の半導体製造装置とはダクト(14)にて連結しており、半導体製造工程において使用された残留ガス及び半導体製造工程において使用され、諸々の化学変化を経た排ガスの集合した半導体製造排ガス(F1)がここに導入される。
【0008】
水スクラバ(11)は、水タンク(12)上に立設されており、その天井部には水を噴射するスプレーノズルが備えられている。スプレーノズルから噴出された霧状の高圧水により半導体製造排ガス(F1)内の水溶性成分或いは加水分解成分はスプレー水に接して分解され或いは溶解して除去される。これにより半導体製造排ガス(F1)は水洗排ガス(F2)となる。
【0009】
酸化加熱分解装置(16)は熱交換器(13)の上に一体的に設置されており、両者(13)(16)は水スクラバ(11)に隣接し且つ水タンク(12)上に設置されている。熱交換器(13)の一端は連通管(15)で水スクラバ(11)と連通している。
【0010】
水洗排ガス(F2)は、熱交換器(13)を通って加熱分解装置(16)の棒状ヒータが設置された加熱分解ゾーンに排出され、空気供給管(17)より送られて来た空気と混合して加熱分解されて熱分解排ガス(F3)となる。
【0011】
熱分解排ガス(F3) は、熱交換器(13)を通って水タンク(12)内に流入し、水タンク(12)の天井部分と水面との間の空間を通って、水洗され且つ熱を奪われて低温となり、排気ダクト(18)から清浄排ガス(F4)として排出される。
【0012】
このように、水スクラバ(11)にて半導体製造排ガス(F1)中の水溶性成分ガス又は/及び加水分解成分ガスを除去する事ができ、酸化加熱分解装置(16)で水洗排ガス(F2)中の熱分解成分ガスを熱分解することができ、半導体製造現場で発生するあらゆる種類の半導体製造排ガスの除害に対応することができる。
【0013】
この加熱分解法の問題点は、操業上熱分解装置において反応生成物としての粉塵が生成されるので、ある程度粉塵が溜まると一時停止して粉塵を取り除く清掃作業をしなければならない点である。
【0014】
従来は例えば加熱分解装置の反応筒(電熱加熱ゾーン)の中に直管状又はU字状の電気ヒータを複数本設置し、排ガスと酸化燃焼用空気とを導入する。この場合、排ガスと酸化燃焼用空気がヒータの存在を介して乱流を起こし撹拌混合の上、酸化分解により除害される。
【0015】
しかしながら酸化分解の結果生成する酸化物の粉塵がヒータ表面やヒータ間の空間に堆積して通気抵抗を高めることになる。その結果、除害効率が下がり、過剰の電気エネルギーの付加が必要となる。
【0016】
よって、粉塵の堆積の程度によって除害装置を一旦停止して解体し、粉塵を除去する必要がある。このことは半導体製造の生産性を落とすことにつながり、生産コスト等の種々の点で不利となる。
【0017】
具体的にはSiH濃度1000ppmの半導体製造排ガスを燃焼用空気と共に合計1000リットル/minの風量で電気ヒータ表面温度750°に接触させて酸化分解させた場合、下記の式にしたがって、1分間あたり2.7gのSiO粉塵が反応筒内で生成される。
SiH + 2O → SiO + 2H
この条件下で除害装置を稼働させると、反応筒内の粉塵の除去は例えば2週間に1度程度の頻度で行う必要がある。
【0018】
ところで、半導体製造排ガスの加熱酸化除害において反応を規制する要因として、供給空気量、反応系内に付与されるエネルギー量(電熱ヒータの表面温度)、反応筒内を移動するガスの容量速度(反応筒を通過させる風量)があるが、それ以外に排ガスと空気との乱流による混合の具合が影響する。すなわち、排ガスと空気とが層流移動していると反応効率が下がるので、乱流により両者を混合することが反応効率を高めるうえで重要である。特に、電熱加熱酸化分解法では、ガス燃焼法の場合のように火炎燃焼による強い乱流を得ることができないので、十分な気流撹拌のためには別途乱流を起こさせる手段が必要となる。
【0019】
気体移動において乱流を起こすには通路に障害物を配することが有効であるが、このような障害物の存在は通気抵抗を高くしてしまうと共に、反応により生成した粉塵を堆積しやすく、これにより通気抵抗が増加するという悪循環を招くことになるので好ましくない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、半導体製造排ガスの除害装置において、反応筒内で乱流を発生させて排ガスと空気との混合を促進することにより反応効率を向上させると共に、除害装置内の粉塵堆積を少なくして通気抵抗の高まりを防止し、粉塵除去作業の頻度を少なくして生産性を向上させることが望まれている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体製造排ガスの除害装置は、水溶性成分ガス又は加水分解成分ガスの少なくともいずれか一方と熱分解成分ガスを含む半導体製造排ガス中の水溶性成分ガス又は/及び加水分解成分ガスを除去する水スクラバ(11)と、水洗排ガス中の熱分解成分ガスを酸化熱分解する酸化加熱分解装置とを有し、酸化加熱分解装置の反応筒(C)内に水洗排ガスを下部より上方に向けて導入する筒状のガス導入管(A)の内面又は外面の少なくともいずれか一方に沿って非接触状態で円周状に移動する撹拌棒(D),(E)を備えていることを特徴とする。
【0022】
更には、上記の半導体製造排ガス除害装置において、撹拌棒(D),(E)は鉄合金製又はセラミック製であり、撹拌棒(D),(E)の本数は1本以上6本以下であることを特徴とすることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の半導体製造排ガスの除害装置の加熱分解装置の概略構成図である。水スクラバ等の基本構成は図2と同様の構成である。図1において(C)は反応筒であり、(1),(2)は断熱材、(3)は電気ヒータである。
【0024】
半導体製造過程で出されるガスは水可溶性成分を随伴しているので、先述のように水スクラバでそれらを水洗除去して、水不溶性のSiHのような熱分解性ガスを熱交換機能を有したガス導入管(A)より導入させる。(4)はガス導入管(A)の導入口である。
【0025】
一方、空気導入口(B)より排ガスの濃度や風量に対し理論的に酸化分解に要する量以上の過剰空気を吹き込む。その結果、ガス導入管(A)の上端付近において熱分解性ガスと空気が混合し、酸化反応を起こす。ここで、図2の場合と異なり、直接反応筒(C)内に空気を吹き込んだのは、後述のように反応筒(C)内において熱分解性ガスと空気を効率良く混合することができるため、あえて両者の接触距離を長くして混合させる必要がないからである。
【0026】
酸化反応の過程はガス導入管(A)の外側の反応筒(C)空間にまで及び、反応により生成したSiO等の粉塵がガス導入管(A)の上部や、反応筒(C)とガス導入管(A)との間の空間に付着,堆積し、このまま放置すれば先述のように通気抵抗が高くなる。
【0027】
そこで本発明では導入管(A)の内面又は外面又はその両方に対し、僅かな間隔を持たせた撹拌棒(D),(E)を配し、それぞれの撹拌棒(D),(E)の上端を装置上部に備えられたモータ(6)と回転軸(7)を介して接続された回転板(8)に取り付けている。
【0028】
撹拌棒(D),(E)とガス導入管(A)との間隔は適宜調整すればよいが、1mm〜2mmが好適であった。また、撹拌棒(D),(E)の材質もSUSが好適であるが、耐熱性があり、十分な機械強度,熱衝撃強度の得られる材質であれば他の材質、例えばアルミナ,ムライト等のセラミック等を使用することができる。
【0029】
また、撹拌棒の配置や本数,長さ,形状等はガス成分(組成)や濃度,風量等に応じて適宜変更すればよい。したがって、配置として導入管の内側の内側撹拌棒のみを有する場合や、導入管の外側の外撹拌棒のみを有する場合や、内側撹拌棒と外撹拌棒の両方を有している場合がある。撹拌棒の回転に伴う乱流により空気とガスとがすばやく混合される効果は、煙を導入した試験で目視により確認することができた。
【0030】
撹拌棒の形状は円柱状,角柱状,板状等が考えられる。撹拌棒の本数は1〜6本程度が好適である。本数が多いほど、ガスの通過空間を狭めることになると共に、熱歪による変形によりガス導入管壁との接触の危険性も増すからである。
【0031】
モータ(6)を駆動させると回転体(8)に取り付けられた各撹拌棒(D),(E)が同心円状に回転する。すなわち、内側撹拌棒(D)は筒状のガス導入管(A)の内面に対し約1〜2mmの間隔を保ちつつガス導入管(A)内側で内面に沿って回転し、外側撹拌棒(E)は導入管(A)の外面に対し約1〜2mmの間隔を保ちつつガス導入管(A)外側で外面に沿って回転する。
【0032】
撹拌棒(D),(E)の回転により乱流が生じて熱分解性ガスと空気が混合され、反応が効率よく行われる。また、各撹拌棒(D),(E)がガス導入管(A)上部の内外面に付着した粉塵を掻き落とすため、ガス導入管(A)上部における粉塵の堆積を抑制し通気抵抗の増大を防止することができる。掻き落とされた粉塵は、ガス排出口(5)等を通って下部の水タンク(12)内に落ち、循環水の排水とともに排水口から外部に排出される。
【0033】
以下、本発明を好適な実施例を用いてより具体的に説明する。
[実施例1]
概要は上記した通りであるが、本実施例では内側撹拌棒(D)と外側撹拌棒(E)の両方を備えている。内側撹拌棒(D)はガス導入管(A)の内面に対し約2mmの間隔を持たせて配され、外側撹拌棒(E)はガス導入管(A)の外面に対し約2mmの間隔を持たせて配されている。内側撹拌棒(D)と外側撹拌棒(E)の本数は各2本とした。
【0034】
撹拌棒はSUS304製の10mmφの円柱よりなり、内側撹拌棒(D)の長さは300mm、外側撹拌棒(E)の長さは600mmとした。モータ(6)による撹拌棒(D),(E)の回転速度は30rpmとした。
【0035】
本装置を稼働させて効果を調べた。シリンダー状の反応筒内壁表面温度を700℃に設定した状態で、中心部に設置したガス導入管(A)を通して濃度1000ppmのSiH,残部Nからなる混合ガス1000リットル/minを下方から上方に向けて導入した。
【0036】
一方、空気導入口(B)から空気を35リットル/minを導入し、ガス導入管(A)の上端で熱分解性ガスと空気とを接触させた。同時に撹拌棒の回転によりガス導入管(A)上部の内外層において熱分解性ガスと空気とを混合撹拌し、乱流下でSiHは酸化分解され、SiOを発生した。処理後の放出ガス中にはSiHは検知されなかった。
【0037】
ガス導入管(A)上部においてSiO粉塵は10分当たり27g生成したが、その間に通気抵抗を測定した結果、ガス導入前の段階で6mmAq(mmHO)、除害作業経過5時間後で10mmAqであり、除害作業の前後においてあまり変化はなかった。
【0038】
装置稼働10時間経過後に加熱を停止して降温させ、ガス導入を停止した後に装置を解体して内部を目視観察したところ、ガス導入管上部を中心にSiO粉塵は極く薄く白色を示す程度であり、堆積状態は認められなかった。
【0039】
[実施例2]
アルミナ製の8mmφの円柱よりなり、長さ200mmの内側撹拌棒(D)3本を導入管(B)内壁から2mmの間隔を開けて配した。外側撹拌棒(E)は使用しなかった。
【0040】
SiHが800ppm,PHが20ppm,Bが10ppm,残部がNからなる混合ガスを600リットル/minでガス導入管の下方から上方に向けて導入した。また、空気を30リットル/minの割合で供給した。
【0041】
反応筒内壁温度は720℃とし、モータによる撹拌棒(D)の回転数は25rpmとした。
【0042】
処理後の放出ガス中の残存量はSiHが1ppmが確認されたが、PHとBは検出可能値以下であった。
【0043】
また、通気抵抗はガス導入前は6mmAqであったが、除害処理5時間後は8mmAqであり、ほとんど変化がなかった。また、装置稼働10時間経過後に加熱を停止して降温させ、ガス導入を停止した後に装置を解体して内部を目視観察したところ、ガス導入管上部を中心にSiO粉塵は極く薄く白色を示す程度であり、堆積状態は認められなかった。
【0044】
[比較例]
撹拌機構(6),(7),(8),(D),(E)を使用しない以外は実施例1と同一条件で除害装置を稼働させてSiHの除害試験を行った。その間における放出ガス中の残存SiHは3〜8ppmに達した。通気抵抗はガス導入前の段階で6mmAq、除害作業経過5時間後で45mmAqであり、除害作業の前後において大きく増えていることがわかる。
【0045】
装置稼働10時間経過後に加熱を停止して降温させ、ガス導入を停止した後に装置を解体して内部を目視観察したところ、ガス導入管(A)上部は殆どSiO粉塵の堆積で詰まっており、ガス導入管の外側と反応筒内壁との間の空間にもSiO粉塵が綿菓子状に付着していた。逆に、下部の水タンクからの排水は粉塵により濁った程度の状態に止まった。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明により、半導体製造排ガスの除害装置において、反応筒のガス導入管内外で乱流を発生させて排ガスと空気との混合を促進することにより反応効率を向上させると共に、除害装置の粉塵堆積を少なくして通気抵抗の高まりを防止し、粉塵除去作業の頻度を少なくして生産性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成の概要を示した図。
【図2】電熱加熱酸化分解法による現在の排ガス除害装置の概略断面図。
【符号の説明】
(A) ガス導入管
(B) 空気導入口
(C) 反応筒
(D) 内側撹拌棒
(E) 外側撹拌棒
(1) 断熱材
(2) 断熱材
(3) 電気ヒーター
(4) ガス導入管の導入口
(5) ガス排出口
(6) モータ
(7) 回転軸
(8) 回転体
(11) 水スクラバ
(F1) 半導体製造排ガス
(F2) 水洗排ガス
(F3) 熱分解排ガス
(F4) 清浄排ガス

Claims (2)

  1. 水溶性成分ガス又は加水分解成分ガスの少なくともいずれか一方と酸化熱分解成分ガスを含む半導体製造排ガス中の水溶性成分ガス又は/及び加水分解成分ガスを除去する水スクラバと、水洗排ガス中の酸化熱分解成分ガスを酸化熱分解する酸化加熱分解装置とを有する半導体製造排ガス除害装置であって、
    酸化加熱分解装置の反応筒内に水洗排ガスを下部より上方に向けて導入する筒状のガス導入管の内面又は外面の少なくともいずれか一方に沿って非接触状態で円周状に移動する撹拌棒を備えている
    ことを特徴とする半導体製造排ガス除害装置。
  2. 撹拌棒は鉄合金製又はセラミック製であり、撹拌棒の本数は1本以上6本以下であることを特徴とする請求項1の半導体製造排ガス除害装置。
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