JP3625745B2 - インストルメントパネルのエアバッグドア部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インストルメントパネルにエアバッグドア部を画定するティアラインを設けるとともに、エアバッグドア部の裏面側と、インストルメントパネルのドア支持部とにわたってヒンジ部材を連結してあるインストルメントパネルのエアバッグドア部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記エアバッグドア部構造は、エアバッグが膨張すると、この力でインストルメントパネルをティアラインで開裂させてエアバッグドア部を押し開き、これによって開いたインストルメントパネルのエアバッグ展開口から室内に展開する。このとき、ティアラインの作用により、インストルメントパネルがスムーズに開裂してエアバッグドア部が迅速に開くとともに、開裂部にエアバッグを破るような鋭角な突部ができにくく、エアバッグが迅速かつ確実に作用するものである。さらに、開いたエアバッグドア部がインストルメントパネルから外れてしまわないようにヒンジ部材によって支持されるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
インストルメントパネルが硬質樹脂で成る場合、レーザ加工によって切り溝を設けてティアラインとされ、ティアラインを設けた部位での肉厚が0.3〜0.4mmになることがある。つまり、このようにティアラインを設けたインストルメントパネルでは、ティアラインを設けた部位での強度が他の部位に比してかなり低くなる。
このため、従来、急ブレーキ操作されて搭乗者の頭部がインストルメントパネルに当るなど、インストルメントパネルに外面側から衝撃が掛かった場合、ティアラインの部位で割れるとか亀裂が入るトラブルが発生することがあった。
【0004】
本発明の目的は、インストルメントパネルの上記した損傷トラブルを構造簡単に抑制できるインストルメントパネルのエアバッグドア部構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の特徴のように、ヒンジ部材のエアバッグドア部に連結しているドア側部分にティアラインを越えてエアバッグドア部の外側にインストルメントパネル裏面に沿って突出している突出部を備えてあるから、ヒンジ部材のドア側部分がティアラインを跨いでその両横側にわたって存在する状態になる。これにより、インストルメントパネルに上記した荷重が掛かっても、ティアラインを跨いで裏面側に沿っているヒンジ部材のためにティアライン部位での応力集中が抑制され、ティアラインの存在に起因する割れとか亀裂が発生しにくくなる。
【0006】
請求項1の特徴のように、インストルメントパネルのエアバッグドア部以外の部位に設けられて前記突出部にエアバッグドア部とは反対側から受け止め作用する支持部を備えてあるから、インストルメントパネルに上記した荷重が掛かった場合、ヒンジ部材の前記突出部が前記支持部によってエアバッグドア部とは反対側から受け止め支持される。これにより、インストルメントパネルに上記した荷重が掛かっても、エアバッグドア部がヒンジ部材のドア側部分を介して支持部に強固に支持され、ティアライン部位に割れや亀裂が発生しにくくなる。
【0007】
請求項2の特徴のように、前記インストルメントパネルの裏面側に、前記エアバッグドア部を囲繞する環状の補強壁部を突設してあるから、インストルメントパネルのエアバッグドア部の周囲に位置するパネル部分が変形したり割れにくいように補強壁部によって補強される。すなわち、エアバッグが膨張した際に、エアバッグドア部がエアバッグの膨張力のために外面側にたわみ変形し、これによってティアライン部位で開裂して開くことから、エアバッグが膨張した際、インストルメントパネルの前記ドア支持部が割れたり、エアバッグドア部と共に同程度にたわみ変形したりすると、ティアライン部位に応力集中が発生しにくくなってエアバッグドア部が開裂しにくくなるとか、この開裂に時間が掛かりやすくなる。ところが、エアバッグドア部がたわみ変形してもドア支持部が補強のために割れにくいとかたわみ変形しにくいことからティアライン部位に応力集中が発生しやすくなり、エヤバッグドア部がティアライン部位で迅速に開裂して開きやすくなる。
【0008】
請求項3の特徴のように、前記補強壁部にエアバッグ装置を連結する取付け部を備えてあるから、エアバッグ装置を補強壁部に支持させ、エアバッグが膨張する際、インストルメントパネルのエアバッグドア部の周囲に位置するドア支持部をエアバッグ膨張の反力によってインストルメントパネル裏面側に引っ張り支持させながらエアバッグドア部を開き操作させられる。これにより、前記ドア支持部がエアバッグドア部と共にたわみ変形することを抑制しながらエアバッグドア部にエアバッグの膨張による押し開き操作力を作用させ、ティアライン部位に応力集中を発生させやすくしてエアバッグドア部を迅速に開裂させて開き操作させられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1、図2に示すように、インストルメントパネル1(以下、インパネ1と略称する。)の横方向での一端側に、インパネ1の前後方向に並ぶ2枚の矩形のエアバッグドア部2を設け、各エアバッグドア部2を支持するヒンジ部材10、両エアバッグドア部2を囲繞する環状に形成してインパネ1の裏面側に突設した補強壁部3、この補強壁部3の内側にエアバッグ21が位置しているエアバッグ装置20のそれぞれをインパネ1の裏側に設けて、助手席側のエアバッグシステムを構成してある。詳しくは、次の如く構成してある。
【0010】
インパネ1は、ポリプロピレン樹脂(PP)で作成してあり、硬質タイプの樹脂インパネに成っている。図1、図3、図4などに示すように、インパネ1の裏面側に、インパネ横方向に沿う方向の第1横向き切り込み4と、この第1横向き切り込み4の左端を通ってインパネ前後方向に沿っている前後向き切り込み5と、前記第1横向き切り込み4の右端を通ってインパネ前後方向に沿っている前後向き切り込み5と、前記第1横向き切り込み4のインパネ前方側およびインパネ後方側に第1横向き切り込み4に平行に位置する第2横向き切り込み6とをレーザ加工によって設けることにより、前記2枚のエアバッグドア部2を画定してある。
【0011】
すなわち、第1横向き切り込み4と左右の前後向き切り込み5との切り込み深さが、2本の第2横向き切り込み6の切り込み深さよりも深くなるとともに、第1横向き切り込み4と2本の前後向き切り込み5とを設けた部位におけるインパネ1の板厚が0.3〜0.4mmになるように各切り込み4,5,6の深さを設定してある。これにより、第1横向き切り込み4がインパネ横向きの開裂予定線である横向きティアラインになり、2本の前後向き切り込み5がインパネ前後向きの開裂予定線である前後向きティアラインになる。したがって、以後は、第1横向き切り込みを横向きティアライン4と呼称し、2本の前後向き切り込みを前後向きティアライン5と呼称する。横向きティアライン4と、2本の前後向きティアライン5の横向きティアライン4よりもインパネ前方側に位置する部分とが前方側のエアバッグドア部2を画定し、横向きティアライン4と、2本の前後向きティアライン5の横向きティアライン4よりもインパネ後方側に位置する部分とが、後方側のエアバッグドア部2を画定している。横向きティアライン4のインパネ前方側に位置する第2横向き切り込み6が、インパネ前方側のエアバッグドア部2が開くときの回動支点を設定し、横向きティアライン4のインパネ後方側に位置する第2横向き切り込み6が、インパネ後方側のエアバッグドア部2が開くときの回動支点を設定している。
【0012】
図3などに示すように、各エアバッグドア部2を支持する前記ヒンジ部材10は、インパネ1の横方向および前後方向に並ぶ複数個の連結孔11を有するドア側部分12を一端側に備え、他端側にインパネ1の横方向に並ぶ複数個の取付け孔13を有する支持部側部分14を備えるようにプレス成形した1枚の板金部材で成り、ドア側部分12を図1および図2に示す連結構造によってエアバッグドア部2の裏面側に連結し、支持部側部分14を図1に示す取付け構造によって前記補強壁部3の前側部分3a、後側部分3aの内面側に取付けることによって、エアバッグドア部2の裏面側と、インパネ1のドア支持部としての補強壁部3の前側部分3a,後側部分3aとにわたって連結してある。
【0013】
各ヒンジ部材10のドア側部分12をエアバッグドア部2に連結している前記連結構造は、エアバッグドア部2の裏面側に突出するようにしてエアバッグドア部2に一体成形した複数個の連結用突部2aと、各連結用突部2aのドア側部分12の前記連結孔11から突出する先端側に設けたカシメ処理部とによって、ドア側部分12をエアバッグドア部2の裏面側に張り付けるように構成してある。
【0014】
各ヒンジ部材10の支持部側部分14を補強壁部3に取付けている前記取付け構造は、エアバッグ装置20のエアバッグケース22の側壁部から横外向きに突出している複数個の取付け突起22aと、エアバッグケース22の底部に基端側が連結ボルト26によって分離自在に連結されるように構成した外れ止めブラケット23とによってエアバッグ装置20を前記補強壁部3の前後側部分3aに取付けるエアバッグ装置取付け構造を利用してヒンジ部材10の支持部側部分14を補強壁部3の前後側部分3aに取付けるように構成してある。
【0015】
すなわち、エアバッグ装置取付け構造は、前記複数個の取付け突起22aが、補強壁部3の前後側部分3aに備えてある複数個の貫通孔で成る取付け部3bに各別に挿通し、前記複数個の取付け突起22aそれぞれに対応させて外れ止めブラケット23の先端側に設けてある抜け止め舌片23aが、前記取付け突起22aの補強壁部分3aから外側に突出している端部で取付け突起22aの貫通孔22bに入り込んで取付け突起22aの補強壁部分3aからの外れ止めを行うように構成してある。そして、前記複数個の取付け突起22aがヒンジ部材10の支持部側部分14における前記複数個の取付け孔13を各別に挿通して支持部側部分14を補強壁部分3aに係止させるように構成してある。
【0016】
図1、図2などに示すように、前記各ヒンジ部材10のドア側部分12の外周部に、エアバッグドア部2のインパネ横向き端縁からエアバッグドア部2の外側に突出するとともに突出端縁12bがヒンジ部材10を形成している板金部材の折り曲げ処理によってエアバッグ21を損傷させにくい面取り縁に成っているドア側突出部12aと、エアバッグドア部2のインパネ前後向き端縁からエアバッグドア部2の外側に突出するとともに突出端縁12dがヒンジ部材10を形成している板金部材の折り曲げ処理によってエアバッグ21を損傷させにくい面取り縁に成っているインパネ側突出部12cとを備えてあるとともに、ドア側突出部12aは、横向きティアライン4を越えて他方のエアバッグドア部2の裏面側にエアバッグドア部2の裏面に沿って存在して、インパネ1に表面側から荷重が掛かった際に横向きティアライン4の部位に応力集中を生じにくくするように構成し、左右のインパネ側突出部12cは、エアバッグドア部2の横側のインパネ部の裏面側にこのインパネ部の裏面に沿って存在して、インパネ1に表面側から荷重が掛かった際に前後向きティアライン5の部位に応力集中を生じにくくするように構成してある。
【0017】
図1、図2などに示すように、エアバッグ装置20は、前記補強壁部3の前側部分3aにおける前記取付け部3bに側壁部の前側が、前記補強壁部3の後側部分3aにおける前記取付け部3bに側壁部の後側がそれぞれ図1に示す前記取付け構造によって連結し、車体に連結している車体横方向の支持バー9に取付けアーム24を介して底部が連結している前記エアバッグケース22と、このエアバッグケース22に折りたたみ状態で収納してある前記エアバッグ21と、エアバッグケース22に付設してあるインフレータ25とによって構成してある。
【0018】
以上により、エアバッグ装置20のインフレータ25が作動しない通常の状態では、エアバッグ装置20のエアバッグ21が折りたたみ状態にあり、2枚のエアバッグドア部2は閉じている。このとき、ブレーキ操作されて乗員の頭部がインパネ1に当るなど、インパネ1の表面側に荷重が掛かっても、各ヒンジ部材10のドア側部分12が前記ドア側突出部12aとインパネ側突出部12cとによって横向きティアライン4の部位や前後向きティアライン5の部位における応力集中が抑制され、インパネ1にティライン部位での割れや亀裂が発生しにくくなる。
【0019】
車体に衝撃が加わってエアバッグ装置20のインフレータ25が作動した場合に、エアバッグ21がインフレータ25の作動によって膨張して各エアバッグドア部2の裏面側に押圧作用し、この押圧作用のためにインパネ1が横向きティアライン4および前後向きティアライン5の部位で開裂する。この後もエアバッグ21が膨張力によって前方側のエアバッグドア部2にも後方側のエアバッグドア部2にも押圧操作し、各エアバッグドア部2に連結しているヒンジ部材10のドア側部分12における左右のインパネ側突出部12cがインパネ1の開口周辺部との当たりによって弾性変形しながらインパネ1の開口周辺部を裏面側から表面側にすり抜けてインパネ1の表面側に出る。これにより、図1に二点鎖線で示す如く前方側のエアバッグドア部2がインパネ前方側に開き、後方側のエアバッグドア部2がインパネ後方後に開いてインパネ1のエアバッグ展開口1aが開き、エアバッグ21がエアバッグ展開口1aから車室内に展開する。このとき、各エアバッグドア部2がインパネ1から切り離れないようにヒンジ部材10によって支持される。また、エアバッグ21が各ヒンジ部材10におけるドア側部分12のエアバッグドア部2から突出しているドア側突出部12aやインパネ側突出部12cの突出端縁12b,12dに接触しても、この突出端縁12b,12dは面取り端縁であることによってエアバッグ21は損傷しにくい。
【0020】
[別実施形態]
図6は別の実施形態を備えるエアバッグドア部の構造を示し、このエアバッグドア部構造にあっては、前記補強壁部3の左右側部分3cの基部で、かつ、各ヒンジ部材10のドア側部分12の左右側に沿っている部分に、ヒンジ部材10の前記インパネ側突出部12cの端部が入り込む凹入溝7を形成してインパネ側突出部12cに対する支持部8を設けるとともに、インパネ1に表面側から荷重が掛かった際、ヒンジ部材10のインパネ側突出部12cが前記支持部8によってエアバッグドア部2とは反対側から受け止め支持されながらインパネ1を受け止め支持し、インパネ1のエアバッグドア部2やその横外側に位置する部分がインパネ1の裏側にたわみにくいようにヒンジ部材10のドア側部分12を介して支持部8によって受け止め支持されるように構成してある。
【0021】
ヒンジ部材10のドア側部分12における前記インパネ側突出部12cに受け止め作用する支持部8としては、上記した実施形態の如く補強壁部3に備えさせる他、インパネ1のエアバッグ展開口1aの周囲に単に位置するだけの部位に備えさせるなど、インパネ1のエアバッグドア部以外であれば、いずれの部位に備えさせて実施してもよい。すなわちインパネ1のエアバッグドア部以外であれば、いずれの部位に備えさせてもヒンジ部材10のドア側部分12を介してエアバッグドア部2を受け止め支持させる、という目的を達成できるのである。
【0022】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によると、エアバッグが膨張した際にはティアラインのためにドア部が開きやすいものでありながら、インパネの表面側に荷重が掛かっても、ティアライン部位での応力集中がヒンジ部材のドア側部分によって抑制されてインパネ破損が発生しにくくなる。しかも、ヒンジ部材を補強手段に利用していることから、そのドア側部分に突出部を備えさせるだけの簡単な構造で済んで安価に得られる。
【0023】
請求項1に記載の発明によると、インパネの表面側に荷重が掛かっても、エアバッグドア部がヒンジ部材のドア側部分を介して支持部によって強固に受け止め支持され、ティアラインの部位で割れるとか亀裂が入るなどのインパネ破損が一層発生しにくくなる。
【0024】
請求項2に記載の発明によると、エアバッグが膨張する際、ドア支持部の補強壁部による補強のためにエアバッグドア部が迅速に開裂して開放し、エアバッグが室内に迅速に展開する。
【0025】
請求項3に記載の発明によると、エアバッグが膨張する際、ドア支持部をエアバッグドア部に付いて変形しにくいようにエアバッグの膨張反力で支持させてエアバッグドア部が迅速に開裂して開放するようにし、この面からもエアバッグが室内に迅速に展開するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エアバッグシステムの縦断側面図
【図2】エアバッグシステムの縦断後面図
【図3】エアバッグシステムの分解斜視図
【図4】ヒンジ部材の閉じ状態での平面図
【図5】ヒンジ部材の開き状態での斜視図
【図6】別の実施形態を備えるエアバッグドア部の一部を示す断面図
【符号の説明】
1 インストルメントパネル
2 エアバッグドア部
3 補強壁部
3a ドア支持部
3b 取付け部
4,5 ティアライン
8 支持部
10 ヒンジ部材
12 ドア側部分
12a,12c 突出部
Claims (3)
- インストルメントパネルにエアバッグドア部を画定するティアラインを設けるとともに、エアバッグドア部の裏面側と、インストルメントパネルのドア支持部とにわたってヒンジ部材を連結してあるインストルメントパネルのエアバッグドア部構造であって、
前記ヒンジ部材のエアバッグドア部に連結しているドア側部分に、前記ティアラインを越えてエアバッグドア部の外側にインストルメントパネル裏面に沿って突出している突出部を備え、
前記ヒンジ部材のドア側部分の突出部をエアバッグドア部とは反対側から直接に接当して受け止める支持部を、前記インストルメントパネルの裏面側に備えてあるインストルメントパネルのエアバッグドア部構造。 - 前記インストルメントパネルの裏面側に、前記エアバッグドア部を囲繞する環状の補強壁部を突設してある請求項1に記載のインストルメントパネルのエアバッグドア部構造。
- 前記補強壁部に、エアバッグ装置を連結する取付け部を備えてある請求項2に記載のインストルメントパネルのエアバッグドア部構造。
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