JP3625243B2 - ローラ芯金およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真式の複写機、プリンタ、ファクシミリなどで使用される加熱定着装置で用いられる定着ローラのためのローラ芯金とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真式の複写機、プリンタ、ファクシミリなどでは、用紙に転写されたトナーを定着するために、加熱定着装置が用いられている。図7に、この加熱定着装置の概略構造を示す。
図7において、51は内空部にハロゲンランプなどの加熱装置を備えた円筒状の定着ローラ、52は定着ローラ51を回転自在に支持する軸受、53は定着ローラ51を図示しないモータによって定速度で回転駆動するためのローラ駆動用ギヤ、54は軸受52や駆動用ギヤ53が定着ローラ51から抜け落ちないように係止するための抜け防止用ばね、55はシリコンゴムなどで構成された加圧ローラ、56は加圧ローラ55の回転軸55Aを回転自在に支持する軸受、57は加圧ローラ55を定着ローラ51に所定の圧力で押し付けるための加圧用ばねである。なお、前記定着ローラ51は、中空円筒状のローラ芯金58と、その外周面に成膜されたフッ素樹脂などの離型層59から構成されている。
【0003】
上記構成になる加熱定着装置は、ハロゲンランプなどで加熱された定着ローラ51を、駆動用ギヤ53を介して図示しないモータにより定速度で回転させながら、定着ローラ51と加圧ローラ55の間にトナーを転写された用紙を挿通し、トナーを加熱溶融することにより用紙に定着させるものである。
【0004】
図8に前記定着ローラ51の基体部を構成するローラ芯金58の構造を示す。
(A)はローラ芯金58の平面図、(B)は(A)中のB−B線断面図である。ローラ芯金58は、アルミ合金などで形成された薄肉円筒体からなり、このローラ芯金58の外表面にフッ素樹脂などからなる薄い離型層59を成膜することにより、定着ローラ51として完成されるものである。ローラ芯金58の一方の端部には、ローラ駆動用ギア53(図7参照)を取り付けるためのU字状のギヤ取付け穴60が形成され、さらに、左右の両端部にはばね装着用長穴61が形成されており、図9に示すように、このばね装着用長穴61に、軸受52や駆動用ギヤ53が定着ローラ51から抜け落ちないように係止するための抜け防止用ばね54の先端が嵌め込まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記定着ローラ51の基体部を構成するローラ芯金58は、熱応答性を良くするために可能な限り薄肉化されており、現在では肉厚1.0〜0.3mm程度の薄肉円筒状のアルミ合金パイプが用いられるようになってる。しかしながら、一方において、ローラ芯金の肉厚を薄肉化すればするほど定着ローラとしての剛性が小さくなり、外力によるたわみや潰れに対して弱くなってしまうという問題が生じる。
【0006】
図7に示したように、定着ローラ51は、加圧ローラ55によって常時一方向に押されているため、長期間の間には、二点鎖線で示すようにローラ全体が永久変形を起こしてしまい、定着ローラとしての所期の性能を発揮できなくなってしまう。従来においては、このような問題を解決するために、ローラ芯金58の内空部に円盤状の補強板を溶接してローラの剛性を上げたり、定着ローラ51を一定期間毎に定期的に取り替えるなどの方法で対処していた。
【0007】
さらに、ローラ芯金58の肉厚が薄くなると、ローラ芯金の製造に際しても、次のような問題が生じる。すなわち、肉厚1.0mm以下の極めて薄い中空円筒状のローラ芯金58を作ろうとすると、外径仕上げの加工精度を維持するために、切削加工のクランプ圧力を極力小さくするとともに、切削回数を多くして1回当たりの切削厚を薄くすることにより切削抵抗を極力小さくし、さらに、切削加工時の外圧に耐えるようにするために、ローラ芯金の内部に耐圧用の補助具を内挿するなどの種々の工夫が必要となる。
【0008】
また、ローラ芯金の外径が大きく(例えば、φ20〜φ80)、しかも、その肉厚が0.7〜0.3mm程度になると、ローラ芯金の外径仕上げを切削加工で行うことは難しく、研磨加工によらざるを得ない。しかしながら、外径仕上げを研磨加工で行う場合、設備が高価となり、また、加工部品の洗浄や加工液の処理などが必要となるため、コストが高くなるとともに手間がかかるという新たな問題を生じる。
【0009】
本発明は、上記問題を問題を解決するためになされたもので、肉厚を薄くした場合でも切削加工によって外径仕上げを行うことができ、また、定着ローラとして加熱定着装置へ組み付けた後においても永久変形をほとんど起こすことのない、剛性の高いローラ芯金とその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明では次のような手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の発明は、加熱定着装置に用いられる定着ローラのためのローラ芯金であって、中空円筒状になるローラ芯金の内周面所定位置に、ローラ芯金の胴部を内側へ折り曲げて重ね合わせたリング状の補強リブが形成され、このリング状の補強リブの外表面側の折り合わせ部は溶接によって溶着されており、この溶着されたローラ芯金の外表面全体を切削加工によって所定の外径寸法に仕上げたことを特徴とする。
【0011】
このような構成とした場合、ローラ芯金の内周面に形成されたリング状の補強リブ3が、外部から作用する押し潰し力や折り曲げ力などに対して補強部材として作用する。したがって、外部から押し潰し力や折り曲げ力などが作用しても、これらの外力をリング状の補強リブで支えることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、加熱定着装置に用いられる定着ローラのためのローラ芯金であって、中空円筒状になるローラ芯金の内周面所定位置に、ローラ芯金の胴部を内側へ折り曲げて重ね合わせたリング状の補強リブが形成され、このリング状の補強リブの外表面側の折り合わせ部は溶接によって溶着されており、この溶着されたローラ芯金の外表面全体を切削加工によって所定の外径寸法に仕上げるととともに、前記ローラ芯金の左右両端部には、その外周面を一周する凹状のくぼみが形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成とした場合、前記請求項1記載のローラ芯金の作用と同時に、次の作用を実現することができ、ローラ芯金の剛性をさらに高めることができる。即ち、前記凹状のくぼみのために芯金両端部分の剛性が上がり、外径切削加工時のクランプ圧力や外圧をこのくぼみで支えることができる。また、定着ローラとして加熱定着装置に組み付けた場合においては、前記くぼみ部にCリングなどを取り付けることにより、定着ローラの軸受や駆動用ギヤが抜け落ちないように係止することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のローラ芯金の製造方法であって、塑性加工により中空素管の胴部を全周にわたって所定深さだけ内側へ押し曲げ、素管内面を一周する隆起を形成する第1工程と、前記隆起を形成された中空素管を座屈加工して前記隆起を押し潰して折り合わせて密着させ、中空素管の内周を一周するリング状の補強リブを形成する第2の工程と、前記座屈加工によって形成されたリング状の補強リブの外表面の折り合わせ部に溶接を施し、補強リブの折り合わせ部が離れることのないように溶着する第3の工程と、前記溶接された中空素管1の外周面全体を切削加工し、中空素管の外径寸法が設定寸法となるように仕上げ加工を行う第4の工程とからなることを特徴とする。
【0017】
このような構成とした場合、切削加工を利用して請求項1記載のローラ芯金を作ることができ、研磨加工を利用した製造方法に比べてローラ芯金の製造コストを低減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係るローラ芯金の第1の実施形態を示す。
この第1の実施形態は、ローラ芯金1の内周面の3個所に、ローラ芯金1の胴部を内側へ折り曲げて重ね合わせたリング状の補強リブ2を形成し、このリング状の補強リブ2の該表面側の折り合わせ部を溶接3によって溶着した後、ローラ芯金の外表面全体を切削加工によって所定の外径寸法に仕上げたものである。なお、前記補強リブ2の形成数と設置間隔は、定着ローラとして要求される仕様に応じて設定すればよく、図示の3個に限定されるものではない。
【0019】
上記構造になるローラ芯金1の場合、ローラ芯金1の内周面に形成されたリング状の補強リブ3が、外部から作用する押し潰し力や折り曲げ力などに対して補強部材として作用する。したがって、外部から押し潰し力や折り曲げ力などが作用しても、これらの外力をリング状の補強リブ3で支えることができる。このため、ローラ芯金としての剛性が格段に上がり、たわみや潰れに対して極めて強くなる。
【0020】
上記構造になるローラ芯金1の製造方法を、図2(A)〜(E)を参照して説明する。
まず、(A)に示すように、所望の肉厚からなるアルミ合金製の中空素管4を用意する。この中空素管4は、完成品としてのローラ芯金1よりも外径仕上げの切削加工分だけ肉厚の厚いパイプであって、押し出し成形などで作られている。
【0021】
次に、(B)に示すように、フォーミングローラ5を用い、塑性加工の一種たるビーデング加工により、中空素管4の胴部を全周にわたって所定深さだけ内側へ押し曲げ、素管内面を一周する隆起(ビード)6を形成する。図1の例の場合、このビーデング加工を中空素管4の3個所に施したものである。
【0022】
次に、(C)に示すように、前記隆起6を形成された中空素管4内にダイス・ガイド棒7を挿通し、このダイス・ガイド棒7で案内しながら、左右のダイス8,8によって中空素管4を座屈加工し、前記ビーデング加工によって形成された隆起6を押し潰して折り合わせ、図示するような素管内面を一周するリング状の補強リブ2を形成する。
【0023】
次に、(D)に示すように、前記座屈加工によって形成されたリング状の補強リブ2の外表面の折り合わせ部に溶接3を施し、補強リブ2の折り合わせ部が離れることのないように溶着する。
【0024】
次いで、(E)に示すように、中空素管1の外周面全体を切削加工し、中空素管4の外径寸法が設定寸法となるように仕上げ加工を行う。この外径仕上げ加工が終了すると、図1に示した本発明のローラ芯金1が完成する。
【0025】
図3に、前記ローラ芯金1を用いて構成した定着ローラ9を用いた加熱定着装置を示す。なお、従来の加熱定着装置(図7)と同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。この図3から明らかなように、ローラ芯金1の内部に形成したリング状の補強リブ2が外力を支えるので、定着ローラ9が加圧ローラ55によって押されても定着ローラ9がたわんだり、潰れたりすることがなくなり、従来の加熱定着装置(図7)のように、定着ローラが永久変形を起こすというようなことがなくなる。
【0026】
図4に、本発明に係るローラ芯金の第2の実施形態を示す。
この第2の実施形態は、中空素管4の両端部に位置して、従来のばね装着用長穴61(図8)に代えて、ビーデング加工などにより中空素管の外周面を一周する凹状のくぼみ10を形成したものである。このように、従来のばね装着用長穴61に代えて、凹状のくぼみ10を形成した場合、このくぼみ10のために芯金両端部分の剛性が上がり、外径切削加工時のクランプ圧力や外圧をこのくぼみ10で支えることができる。このため、切削加工時の歪みを低減して加工精度を上げることができる。
【0027】
また、図9に示したように、従来のばね装着用長穴61を形成した場合には、この長穴61にばね先端を嵌入させるために特殊形状の抜け防止用ばね54を用いる必要があるが、前記凹状のくぼみ10とした場合には、図5(A)(B)に示すように、市販のCリング11などで軸受52や駆動用ギヤ53が抜け落ちないように係止することができるとともに、ばね装着用長穴61を開けるためのプレス抜き加工機が不要となる。このため、コストを下げることができる。
【0028】
図6に、本発明に係るローラ芯金の第3の実施形態を示す。
この第3の実施形態は、前記第1の実施形態の構造と、前記第2の実施形態の構造を組み合わせたもので、ローラ芯金1の中央部分にリング状の補強リブ2を形成するとともに、左右両端部に凹状のくぼみ10を形成したものである。このような構造とすると、ローラ芯金の剛性をさらに高めることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によるときは、ローラ芯金の内周面に形成されたリング状の補強リブが外部から作用する押し潰し力や折り曲げ力などに対して補強部材として作用し、外部から押し潰し力や折り曲げ力などが作用しても、これらの外力をリング状の補強リブで支えることができる。このため、ローラ芯金としての剛性が格段に上がり、たわみや潰れに対して極めて強くなり、製造時の切削加工の安定化(ビビリ現象の回避)、外径寸法、真円度、触れなどの加工精度を維持し、充分な加工品質を得ることができる。また、定着ローラとして加熱定着装置に組み付けられた後も、加圧ローラの押圧力による永久歪みなどの発生を阻止することができる。
【0031】
請求項2記載の発明によるときは、ローラ芯金の剛性をさらに高め、ローラ芯金の内周面に形成されたリング状の補強リブが外部から作用する押し潰し力や折り曲げ力などに対して補強部材として作用し、外部から押し潰し力や折り曲げ力などが作用しても、これらの外力をリング状の補強リブで支えることができる。このため、ローラ芯金としての剛性が格段に上がり、たわみや潰れに対して極めて強くなり、製造時の切削加工の安定化(ビビリ現象の回避)、外径寸法、真円度、触れなどの加工精度を維持し、充分な加工品質を得ることができる。また、定着ローラとして加熱定着装置に組み付けられた後も、加圧ローラの押圧力による永久歪みなどの発生を阻止することができる。
同時に、凹状のくぼみのためにローラ芯金の左右両端部分の剛性が上がり、外径切削加工時のクランプ圧力や外圧をこのくぼみ部で支えることができる。このため、切削加工時の歪みを低減してローラ芯金製造時の加工精度を加工精度を維持することができる。また、くぼみに市販のCリングなどを取り付けることにより、定着ローラの軸受や駆動用ギヤが抜け落ちないように係止することができるとともに、従来の定着ローラのようにばね装着用長穴を開けるためのプレス抜き加工機が不要となるため、コストを下げることができる。
【0032】
請求項3記載の発明によるときは、切削加工を利用して請求項1記載のローラ芯金を作ることができ、研磨加工を利用した製造方法に比べてローラ芯金の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るローラ芯金の第1の実施形態の縦断面図である。
【図2】第1の実施形態のローラ芯金の製造方法を示す図である。
【図3】第1の実施形態のローラ芯金を用いて構成した定着ローラを用いた加熱定着装置の縦断面図である。
【図4】本発明に係るローラ芯金の第2の実施形態の縦断面図である。
【図5】第2の実施形態のローラ芯金におけるくぼみ部分へのCリングの装着状態を示す図であり、(A)はくぼみ部分の縦断面図、(B)は(A)中のB−B線断面図である。
【図6】本発明に係るローラ芯金の第3の実施形態の断面図である。
【図7】加熱定着装置の構造を示す図である。
【図8】従来の定着ローラに用いられているローラ芯金の構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)中のB−B線断面図である。
【図9】従来の定着ローラにおける抜け防止用ばねの装着状態を示す図であり、(A)はばね装着用長穴部分の縦断面図、(B)は(A)中のB−B線断面図である。
【符号の説明】
1 ローラ芯金
2 補強リブ
3 溶接
4 中空素管
5 フォーミングローラ
6 隆起
7 ダイス・ガイド棒
8 ダイス
9 定着ローラ
10 凹状のくぼみ
11 Cリング
Claims (3)
- 加熱定着装置に用いられる定着ローラのためのローラ芯金であって、中空円筒状になるローラ芯金の内周面所定位置に、ローラ芯金の胴部を内側へ折り曲げて重ね合わせたリング状の補強リブが形成され、このリング状の補強リブの外表面側の折り合わせ部は溶接によって溶着されており、この溶着されたローラ芯金の外表面全体を切削加工によって所定の外径寸法に仕上げたことを特徴とするローラ芯金。
- 加熱定着装置に用いられる定着ローラのためのローラ芯金であって、中空円筒状になるローラ芯金の内周面所定位置に、ローラ芯金の胴部を内側へ折り曲げて重ね合わせたリング状の補強リブが形成され、このリング状の補強リブの外表面側の折り合わせ部は溶接によって溶着されており、この溶着されたローラ芯金の外表面全体を切削加工によって所定の外径寸法に仕上げるととともに、前記ローラ芯金の左右両端部には、その外周面を一周する凹状のくぼみが形成されていることを特徴とするローラ芯金。
- 請求項1記載のローラ芯金の製造方法であって、
塑性加工により中空素管の胴部を全周にわたって所定深さだけ内側へ押し曲げ、素管内面を一周する隆起を形成する第1工程と、
前記隆起を形成された中空素管を座屈加工して前記隆起を押し潰して折り合わせて密着させ、中空素管の内周を一周するリング状の補強リブを形成する第2の工程と、
前記座屈加工によって形成されたリング状の補強リブの外表面の折り合わせ部に溶接を施し、補強リブの折り合わせ部が離れることのないように溶着する第3の工程と、
前記溶接された中空素管1の外周面全体を切削加工し、中空素管の外径寸法が設定寸法となるように仕上げ加工を行う第4の工程とからなることを特徴とするローラ芯金の製造方法。
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