JP3625110B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料噴射弁、特に筒内噴射用燃料噴射弁に適するものであって、燃料流に旋回手段により旋回エネルギーを与えて燃料噴射孔から噴射する形式の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料を旋回させて噴射する燃料噴射弁として、例えば特開昭64−36972号公報に示されるものがあった。図9(a)はこの従来例の燃料噴射孔付近を示す側面断面図、図9(b)はスワーラの平面図である。図において、可動弁101は図示しない電磁駆動手段により上下方向に駆動され、バルブガイド105の円錐座面105bと離接することにより弁の開閉を行い、燃料噴射孔105aから燃料が噴射される。一方、バルブガイド105の円錐座面105bには、この座面105bと同じ角度の円錐面を有するスワーラ(旋回体)102が配置されており、このスワーラ102の外周部には2本以上の渦巻状の燃料溝102bが形成されている。スワーラ102の中心軸に沿った透孔102aには可動弁101が摺動自在に設置され、スワーラ102の円錐面の底面と、ヨーク107と一体的に固定されたストッパ104との間には、弾性部材103が介装されて、スワーラ102を円錐座面105bに向けて付勢している。
【0003】
図9の従来例において、ヨーク107の燃料通路から導入された燃料は、ストッパ104、弾性部材103の通路103bを通り、スワーラ102の燃料溝102bを介してバルブガイド105の燃料噴射孔105aからエンジンのシリンダ内に噴射される。すなわち、燃料流は、渦巻き状のスワーラ溝102bを介して旋回エネルギーが与えられ、バルブガイド105のオリフィス孔105aで絞られ燃料の微粒化が行われて噴射される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9に示す従来の旋回式の燃料噴射弁では、旋回エネルギーを与える渦巻き状のスワーラ溝102bからそのまま直接的に、燃料流が燃料噴射孔105aから噴射されるように構成されているので、噴射される燃料流の旋回力が不安定になりやすく、また旋回力が充分に高められない問題があった。
【0005】
また、図9(a)に示すように、ヨーク107方向から流入する燃料は、弾性部材103の通路103bを介して、スワーラ溝102bに鋭角的に導入されるので、当該部分での燃料流の導入がスムーズに行かず燃料の旋回力及び噴射流量・形状に影響を及ぼす問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題を解消するためになされたもので、燃料が旋回して噴射される燃料噴射弁において、噴射される燃料流の旋回力の安定化及び強化を図り、噴射形状(噴霧角や噴霧の均一性)の安定化が可能な燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、中空状の弁本体、この弁本体の一端に設けられ噴射孔を有する弁座、弁本体内を移動し弁座に離接して噴射孔を開閉する弁体(ニードル弁)、及び弁体の周囲に配置され弁体を摺動可能に支持すると共に噴射孔から流出する燃料に旋回運動を与える旋回体を備えた燃料噴射弁において、弁座に設けた内周環状溝により旋回室を構成したものである。
【0008】
請求項2の発明は、旋回体と弁座の間にスペーサを設け、このスペーサに旋回体の第1端面と接するように弁軸から所定角度弁座方向に傾斜している傾斜面を備え、この傾斜面の先端であって上記旋回体の旋回溝が接続される位置に旋回室を構成する内周環状溝を形成した。
【0009】
請求項3の発明は、旋回体とスペーサの位置決めを、旋回体及びスペーサの径方向外側部分に設けた当接面により行う。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
(実施の形態1の構成)
図1はこの発明の実施形態である筒内噴射用燃料噴射弁1の全体構成を示す側面断面図である。筒内噴射用燃料噴射弁1は、ハウジング本体2と、このハウジング本体2の一端にかしめ等され先端がホルダ35により被覆された弁装置3とにより構成されている。ハウジング本体2の他端には燃料供給管4が接続され、この燃料供給管4から燃料フィルタ57を介して筒内噴射用燃料噴射弁1内に高圧の燃料が供給される。また、筒内噴射用燃料噴射弁1の先端部は内燃機関のシリンダヘッド5の噴射弁挿入孔6に挿入され、ウエーブワッシャ60等によりシールされて取り付けられている。
【0011】
弁装置3は、小径円筒部7及び大径円筒部8を有する段付中空円筒形の弁本体9と、弁本体9内で中心孔先端に固着されて燃料噴射孔10を有する弁座11と、ソレノイド装置50(後述)により弁座11に離接して燃料噴射孔10を開閉する弁体であるニードル弁12と、ニードル弁12を軸方向に案内すると共に、径方向内向きに弁座11の燃料噴射孔10に流れ込もうとする燃料に旋回運動を与える旋回体13とを備えている。
【0012】
ハウジング本体2は、筒内噴射用燃料噴射弁1をシリンダヘッド5に取り付けるためのフランジ30aを有する第1ハウジング30と、ソレノイド装置50を装着した第2ハウジング40を備えている。ソレノイド装置50は、コイル51を巻回したボビン52と、このボビン52の内周部に設置されたコア53とを備え、コイル51の巻線は端子56につながっている。コア53はその内部が燃料通路となるように中空円筒形状になっており、その中空部には、スプリング55がスリーブ54とニードル弁12の他端部間に懸架されている。
【0013】
ニードル弁12の他端部には、上記コア53の先端に対向するように可動アマチュア31が取り付けられており、また、ニードル弁12の中間部には、ニードル弁12を弁本体9の内周面に沿って摺動案内させるガイド12aと、第1ハウジング30に設置されたスペーサ32と当接するニードルフランジ12bが設けられている。
【0014】
図2は旋回体13及び弁座11の詳細を示す側面断面図、図3は旋回体13の弁座11側から見た正面図である。図において、弁装置3の旋回体13は、中心に弁体であるニードル弁12を囲んで軸方向に摺動可能に支持する中心孔15を有するほぼ中空円筒形状であり、その先端(弁座)側では傾斜面(第1端面)16を有する略中空円錐形状と成っている。この旋回体13は、弁装置3内に組み立てられた時、弁軸から所定角度傾斜している弁座11の傾斜面11bとほぼ同傾斜角を有し上記傾斜面11bに接する第1端面16と、弁座11と反対側の第2端面17と、これらの端面間にあって中空のハウジングの一部である弁本体9の内周面18に接する部分を有する周面19とを有している。
【0015】
旋回体13の第2端面17は、その周辺部で弁本体9の内周面18の肩部20に当接して支持されており、また径方向に延びた通路溝21が形成されていて、第2端面17の内周部から外周部に燃料が流れることができるように構成されている。
【0016】
旋回体13の周面19には、互いに等間隔に周方向に離間して軸方向に延びた多数の平坦面が形成されており、その結果、周面19には弁本体9の内周面18に当接して弁本体9に対する位置を規定する複数の外周面部分19aと、これら外周面部分間に設けられた平坦面であって、内周面18と共に燃料の軸方向流路22を形成する流路部分19bとが形成されている。これらの軸方向流路22は弁本体9の内周面18と平坦な流路部分19bとの間の間隙であり、その断面形状が略片面凸レンズ状となる。これらの軸方向流路22は図示の例では8本であるが、4本あるいは6本更にはそれ以上の適当な数でもよい。
【0017】
弁座11の傾斜面11bに接し、弁軸から所定角度噴射孔10に向けて傾斜している第1端面16には、第1端面16の中心孔15に隣接する内周辺に形成された所定幅の内周環状溝24と、一端で周面19の流路部分19bに接続されて、そこからほぼ径方向内側に延びて、他端で内周環状溝24に接線方向に接続された旋回溝25とが設けられている。そして、上記内周環状溝24により燃料流の旋回力を強化し安定化させる旋回室Wを構成する。なお、図示の例では旋回溝25の幅は内周環状溝24の幅と等しくされているが、内周環状溝24の外縁が旋回溝25の外縁と接続関係にあれば良い。また、旋回溝25の数は図示の例では8本であるが、4本あるいは6本更にはそれ以上の適当な数でも良い。
【0018】
(実施の形態1の動作)
次に、実施の形態1の燃料噴射弁の動作について説明する。まず図1において、外部より端子56を介してソレノイド装置50のコイル51に通電すると、可動アマチュア31、コア53、ハウジング本体2で構成される磁気通路に磁束が発生し、可動アマチュア31はスプリング55の弾性力に抗してコア53側へ吸引される。そして、可動アマチュア31と一体のニードル弁12はそのニードルフランジ12bがスペーサ32に当接するまで所定ストローク図示右側へ移動する。なお、ニードル弁12はガイド12aにより弁本体9の内周面に案内保持されている。
【0019】
次に、図2及び図3において、ニードル弁12の先端部が弁座11から離れて間隙が形成されると、燃料供給管4から導入される高圧の燃料は、弁本体9とニードル弁12間の通路から、まず旋回体13の第2端面17の通路溝21を通って周面の軸方向流路22に流れ込む。そして、旋回体13の所定角度傾斜した第1端面16の旋回溝25に流入して径方向内側に流れ、第1端面16の内周環状溝24内へその接線方向に流れ込み、内周環状溝24で構成する旋回室Wにおいて旋回流を形成する。その後、弁座11の噴射孔10内に入ってその先端出口から噴霧される。
【0020】
(実施の形態1の効果)
以上のように実施の形態1によれば、弁本体9とニードル弁12間の通路から導入される高圧の燃料は、まず旋回体13の周面の軸方向流路22に流れ込むように構成されているので、従来のように鋭角的に曲折しながら旋回溝に導入されず、燃料流がスムーズに旋回体13の旋回溝25に導入される。
【0021】
そして、この旋回溝25は弁軸方向に向かって所定角度傾斜しかつ内周環状溝24の接線方向に接続されるように設けられているので、当該溝24に導入された燃料には、軸方向の流体力と弁軸周りの旋回力が付与される。
【0022】
更に、旋回溝25からの燃料流は、第1端面16の中心孔15に隣接する内周辺に形成された内周環状溝24により構成される旋回室Wに導入されるので、当該旋回室W内で更に燃料流が旋回し、旋回力の強化と安定化が図れる。
【0023】
また、旋回溝25から内周環状溝24への燃料の流れは、内周環状溝24の接線方向に高速で但し滑らかに流入するので、複数の旋回溝25からの燃料の複数の噴流が衝突し合ったり、既に形成されている燃料の旋回流に新たに加えられる燃料の噴流が衝突したりすることがなく、燃料の流れが滑らかで、流れの衝突や乱れによる大きな圧力損失は発生しない。
【0024】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、旋回体13に内周環状溝24を設けて旋回室Wを形成したが、弁座11側に内周環状溝を設けるようにしても良い。
【0025】
図4は実施の形態2による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図であり、弁座11には、ニードル弁12と弁座11が離接するシート部Sの上流側であって旋回体13の旋回溝25が接線方向に接続される位置に内周環状溝11Aが形成されており、この内周環状溝11Aにより旋回室Wが構成されている。
【0026】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れると共に、弁座11側に内周環状溝11Aを設けたので、旋回体13に内周環状溝を設けるよりも工作しやすい利点がある。
【0027】
実施の形態3.
図5は実施の形態3による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。この実施の形態では、旋回体13と弁座11の間にスペーサ30を挟みこみ、このスペーサ30に内周環状溝30Aを形成する。すなわち当該スペーサ30は、旋回体13の第1端面16と接しかつ弁軸から所定角度弁座方向に傾斜している傾斜面30Bと、この傾斜面30Bの先端であって旋回体13の旋回溝25が接線方向に接続される位置に形成され旋回室Wを構成する内周環状溝30Aと、弁座11の端面11Cに当接する平坦な軸方向端面30Cを備えている。
【0028】
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れると共に、旋回体13と弁座11の間にスペーサ30を設けこのスペーサに内周環状溝30Aを形成したので、旋回体13、弁座11、及びスペーサ30の各部品が簡単な形状になり、工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0029】
実施の形態4.
実施の形態4では、上記実施の形態における旋回体13と弁座11の位置決め、旋回体11とスペーサ30の位置決めを、相互の傾斜面(円錐面)で行うのではなく別個の当接面を設けることにより行う。すなわち、図6は旋回体13に内周環状溝24を形成した実施の形態1の場合において、旋回体13及び弁座11の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、11Hを形成し、その当接面において旋回体13と弁座11の位置決めを行う。また、図7は弁座11に内周環状溝11Aを形成した実施の形態2の場合において、旋回体13及び弁座11の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、11Hを形成し、その当接面において旋回体13と弁座11の位置決めを行う。更に、図8はスペーサ30に内周環状溝30Aを形成した実施の形態3の場合において、旋回体13及びスペーサ30の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、30Hを形成し、その当接面において旋回体13とスペーサ30の位置決めを行う。
【0030】
実施の形態4によれば、旋回体13、弁座11、又はスペーサ30の位置決めを傾斜面で行うのではなく別個の当接面を設けることにより行うようにしたので、位置決めが簡単かつ容易に定まる効果がある。
【0031】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、弁座に設けた内周環状溝により旋回室をしたので、燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れるとともに、各部品を工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0032】
請求項2の発明によれば、旋回体と弁座の間に設けたスペーサ旋回室を構成する内周環状溝を形成したので、各部品を工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0033】
請求項3の発明によれば、旋回体とスペーサの位置決めを、径方向外側部分に設けた当接面で行うことにより、位置決めが簡単かつ容易に定まる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る筒内噴射用燃料噴射弁の全体構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態1の旋回体及び弁座の詳細を示す側面断面図である。
【図3】実施の形態1の旋回体の弁座側から見た正面図である。
【図4】実施の形態2による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図5】実施の形態3による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図6】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図7】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図8】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図9】従来の燃料噴射弁の構造及びスワーラを示す図である。
【符号の説明】
1 筒内噴射用燃料噴射弁、3 弁装置、9 弁本体、10 燃料噴射孔、11 弁座、12 ニードル弁(弁体)、13 旋回体、24,11A,30A 内周環状溝、25 旋回溝、30 スペーサ、11H,13H,30H 当接面、W 旋回室。
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料噴射弁、特に筒内噴射用燃料噴射弁に適するものであって、燃料流に旋回手段により旋回エネルギーを与えて燃料噴射孔から噴射する形式の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料を旋回させて噴射する燃料噴射弁として、例えば特開昭64−36972号公報に示されるものがあった。図9(a)はこの従来例の燃料噴射孔付近を示す側面断面図、図9(b)はスワーラの平面図である。図において、可動弁101は図示しない電磁駆動手段により上下方向に駆動され、バルブガイド105の円錐座面105bと離接することにより弁の開閉を行い、燃料噴射孔105aから燃料が噴射される。一方、バルブガイド105の円錐座面105bには、この座面105bと同じ角度の円錐面を有するスワーラ(旋回体)102が配置されており、このスワーラ102の外周部には2本以上の渦巻状の燃料溝102bが形成されている。スワーラ102の中心軸に沿った透孔102aには可動弁101が摺動自在に設置され、スワーラ102の円錐面の底面と、ヨーク107と一体的に固定されたストッパ104との間には、弾性部材103が介装されて、スワーラ102を円錐座面105bに向けて付勢している。
【0003】
図9の従来例において、ヨーク107の燃料通路から導入された燃料は、ストッパ104、弾性部材103の通路103bを通り、スワーラ102の燃料溝102bを介してバルブガイド105の燃料噴射孔105aからエンジンのシリンダ内に噴射される。すなわち、燃料流は、渦巻き状のスワーラ溝102bを介して旋回エネルギーが与えられ、バルブガイド105のオリフィス孔105aで絞られ燃料の微粒化が行われて噴射される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9に示す従来の旋回式の燃料噴射弁では、旋回エネルギーを与える渦巻き状のスワーラ溝102bからそのまま直接的に、燃料流が燃料噴射孔105aから噴射されるように構成されているので、噴射される燃料流の旋回力が不安定になりやすく、また旋回力が充分に高められない問題があった。
【0005】
また、図9(a)に示すように、ヨーク107方向から流入する燃料は、弾性部材103の通路103bを介して、スワーラ溝102bに鋭角的に導入されるので、当該部分での燃料流の導入がスムーズに行かず燃料の旋回力及び噴射流量・形状に影響を及ぼす問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題を解消するためになされたもので、燃料が旋回して噴射される燃料噴射弁において、噴射される燃料流の旋回力の安定化及び強化を図り、噴射形状(噴霧角や噴霧の均一性)の安定化が可能な燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、中空状の弁本体、この弁本体の一端に設けられ噴射孔を有する弁座、弁本体内を移動し弁座に離接して噴射孔を開閉する弁体(ニードル弁)、及び弁体の周囲に配置され弁体を摺動可能に支持すると共に噴射孔から流出する燃料に旋回運動を与える旋回体を備えた燃料噴射弁において、弁座に設けた内周環状溝により旋回室を構成したものである。
【0008】
請求項2の発明は、旋回体と弁座の間にスペーサを設け、このスペーサに旋回体の第1端面と接するように弁軸から所定角度弁座方向に傾斜している傾斜面を備え、この傾斜面の先端であって上記旋回体の旋回溝が接続される位置に旋回室を構成する内周環状溝を形成した。
【0009】
請求項3の発明は、旋回体とスペーサの位置決めを、旋回体及びスペーサの径方向外側部分に設けた当接面により行う。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
(実施の形態1の構成)
図1はこの発明の実施形態である筒内噴射用燃料噴射弁1の全体構成を示す側面断面図である。筒内噴射用燃料噴射弁1は、ハウジング本体2と、このハウジング本体2の一端にかしめ等され先端がホルダ35により被覆された弁装置3とにより構成されている。ハウジング本体2の他端には燃料供給管4が接続され、この燃料供給管4から燃料フィルタ57を介して筒内噴射用燃料噴射弁1内に高圧の燃料が供給される。また、筒内噴射用燃料噴射弁1の先端部は内燃機関のシリンダヘッド5の噴射弁挿入孔6に挿入され、ウエーブワッシャ60等によりシールされて取り付けられている。
【0011】
弁装置3は、小径円筒部7及び大径円筒部8を有する段付中空円筒形の弁本体9と、弁本体9内で中心孔先端に固着されて燃料噴射孔10を有する弁座11と、ソレノイド装置50(後述)により弁座11に離接して燃料噴射孔10を開閉する弁体であるニードル弁12と、ニードル弁12を軸方向に案内すると共に、径方向内向きに弁座11の燃料噴射孔10に流れ込もうとする燃料に旋回運動を与える旋回体13とを備えている。
【0012】
ハウジング本体2は、筒内噴射用燃料噴射弁1をシリンダヘッド5に取り付けるためのフランジ30aを有する第1ハウジング30と、ソレノイド装置50を装着した第2ハウジング40を備えている。ソレノイド装置50は、コイル51を巻回したボビン52と、このボビン52の内周部に設置されたコア53とを備え、コイル51の巻線は端子56につながっている。コア53はその内部が燃料通路となるように中空円筒形状になっており、その中空部には、スプリング55がスリーブ54とニードル弁12の他端部間に懸架されている。
【0013】
ニードル弁12の他端部には、上記コア53の先端に対向するように可動アマチュア31が取り付けられており、また、ニードル弁12の中間部には、ニードル弁12を弁本体9の内周面に沿って摺動案内させるガイド12aと、第1ハウジング30に設置されたスペーサ32と当接するニードルフランジ12bが設けられている。
【0014】
図2は旋回体13及び弁座11の詳細を示す側面断面図、図3は旋回体13の弁座11側から見た正面図である。図において、弁装置3の旋回体13は、中心に弁体であるニードル弁12を囲んで軸方向に摺動可能に支持する中心孔15を有するほぼ中空円筒形状であり、その先端(弁座)側では傾斜面(第1端面)16を有する略中空円錐形状と成っている。この旋回体13は、弁装置3内に組み立てられた時、弁軸から所定角度傾斜している弁座11の傾斜面11bとほぼ同傾斜角を有し上記傾斜面11bに接する第1端面16と、弁座11と反対側の第2端面17と、これらの端面間にあって中空のハウジングの一部である弁本体9の内周面18に接する部分を有する周面19とを有している。
【0015】
旋回体13の第2端面17は、その周辺部で弁本体9の内周面18の肩部20に当接して支持されており、また径方向に延びた通路溝21が形成されていて、第2端面17の内周部から外周部に燃料が流れることができるように構成されている。
【0016】
旋回体13の周面19には、互いに等間隔に周方向に離間して軸方向に延びた多数の平坦面が形成されており、その結果、周面19には弁本体9の内周面18に当接して弁本体9に対する位置を規定する複数の外周面部分19aと、これら外周面部分間に設けられた平坦面であって、内周面18と共に燃料の軸方向流路22を形成する流路部分19bとが形成されている。これらの軸方向流路22は弁本体9の内周面18と平坦な流路部分19bとの間の間隙であり、その断面形状が略片面凸レンズ状となる。これらの軸方向流路22は図示の例では8本であるが、4本あるいは6本更にはそれ以上の適当な数でもよい。
【0017】
弁座11の傾斜面11bに接し、弁軸から所定角度噴射孔10に向けて傾斜している第1端面16には、第1端面16の中心孔15に隣接する内周辺に形成された所定幅の内周環状溝24と、一端で周面19の流路部分19bに接続されて、そこからほぼ径方向内側に延びて、他端で内周環状溝24に接線方向に接続された旋回溝25とが設けられている。そして、上記内周環状溝24により燃料流の旋回力を強化し安定化させる旋回室Wを構成する。なお、図示の例では旋回溝25の幅は内周環状溝24の幅と等しくされているが、内周環状溝24の外縁が旋回溝25の外縁と接続関係にあれば良い。また、旋回溝25の数は図示の例では8本であるが、4本あるいは6本更にはそれ以上の適当な数でも良い。
【0018】
(実施の形態1の動作)
次に、実施の形態1の燃料噴射弁の動作について説明する。まず図1において、外部より端子56を介してソレノイド装置50のコイル51に通電すると、可動アマチュア31、コア53、ハウジング本体2で構成される磁気通路に磁束が発生し、可動アマチュア31はスプリング55の弾性力に抗してコア53側へ吸引される。そして、可動アマチュア31と一体のニードル弁12はそのニードルフランジ12bがスペーサ32に当接するまで所定ストローク図示右側へ移動する。なお、ニードル弁12はガイド12aにより弁本体9の内周面に案内保持されている。
【0019】
次に、図2及び図3において、ニードル弁12の先端部が弁座11から離れて間隙が形成されると、燃料供給管4から導入される高圧の燃料は、弁本体9とニードル弁12間の通路から、まず旋回体13の第2端面17の通路溝21を通って周面の軸方向流路22に流れ込む。そして、旋回体13の所定角度傾斜した第1端面16の旋回溝25に流入して径方向内側に流れ、第1端面16の内周環状溝24内へその接線方向に流れ込み、内周環状溝24で構成する旋回室Wにおいて旋回流を形成する。その後、弁座11の噴射孔10内に入ってその先端出口から噴霧される。
【0020】
(実施の形態1の効果)
以上のように実施の形態1によれば、弁本体9とニードル弁12間の通路から導入される高圧の燃料は、まず旋回体13の周面の軸方向流路22に流れ込むように構成されているので、従来のように鋭角的に曲折しながら旋回溝に導入されず、燃料流がスムーズに旋回体13の旋回溝25に導入される。
【0021】
そして、この旋回溝25は弁軸方向に向かって所定角度傾斜しかつ内周環状溝24の接線方向に接続されるように設けられているので、当該溝24に導入された燃料には、軸方向の流体力と弁軸周りの旋回力が付与される。
【0022】
更に、旋回溝25からの燃料流は、第1端面16の中心孔15に隣接する内周辺に形成された内周環状溝24により構成される旋回室Wに導入されるので、当該旋回室W内で更に燃料流が旋回し、旋回力の強化と安定化が図れる。
【0023】
また、旋回溝25から内周環状溝24への燃料の流れは、内周環状溝24の接線方向に高速で但し滑らかに流入するので、複数の旋回溝25からの燃料の複数の噴流が衝突し合ったり、既に形成されている燃料の旋回流に新たに加えられる燃料の噴流が衝突したりすることがなく、燃料の流れが滑らかで、流れの衝突や乱れによる大きな圧力損失は発生しない。
【0024】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、旋回体13に内周環状溝24を設けて旋回室Wを形成したが、弁座11側に内周環状溝を設けるようにしても良い。
【0025】
図4は実施の形態2による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図であり、弁座11には、ニードル弁12と弁座11が離接するシート部Sの上流側であって旋回体13の旋回溝25が接線方向に接続される位置に内周環状溝11Aが形成されており、この内周環状溝11Aにより旋回室Wが構成されている。
【0026】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れると共に、弁座11側に内周環状溝11Aを設けたので、旋回体13に内周環状溝を設けるよりも工作しやすい利点がある。
【0027】
実施の形態3.
図5は実施の形態3による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。この実施の形態では、旋回体13と弁座11の間にスペーサ30を挟みこみ、このスペーサ30に内周環状溝30Aを形成する。すなわち当該スペーサ30は、旋回体13の第1端面16と接しかつ弁軸から所定角度弁座方向に傾斜している傾斜面30Bと、この傾斜面30Bの先端であって旋回体13の旋回溝25が接線方向に接続される位置に形成され旋回室Wを構成する内周環状溝30Aと、弁座11の端面11Cに当接する平坦な軸方向端面30Cを備えている。
【0028】
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れると共に、旋回体13と弁座11の間にスペーサ30を設けこのスペーサに内周環状溝30Aを形成したので、旋回体13、弁座11、及びスペーサ30の各部品が簡単な形状になり、工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0029】
実施の形態4.
実施の形態4では、上記実施の形態における旋回体13と弁座11の位置決め、旋回体11とスペーサ30の位置決めを、相互の傾斜面(円錐面)で行うのではなく別個の当接面を設けることにより行う。すなわち、図6は旋回体13に内周環状溝24を形成した実施の形態1の場合において、旋回体13及び弁座11の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、11Hを形成し、その当接面において旋回体13と弁座11の位置決めを行う。また、図7は弁座11に内周環状溝11Aを形成した実施の形態2の場合において、旋回体13及び弁座11の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、11Hを形成し、その当接面において旋回体13と弁座11の位置決めを行う。更に、図8はスペーサ30に内周環状溝30Aを形成した実施の形態3の場合において、旋回体13及びスペーサ30の径方向外側部分にそれぞれ当接面13H、30Hを形成し、その当接面において旋回体13とスペーサ30の位置決めを行う。
【0030】
実施の形態4によれば、旋回体13、弁座11、又はスペーサ30の位置決めを傾斜面で行うのではなく別個の当接面を設けることにより行うようにしたので、位置決めが簡単かつ容易に定まる効果がある。
【0031】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、弁座に設けた内周環状溝により旋回室をしたので、燃料流の旋回力の強化及び安定化が図れるとともに、各部品を工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0032】
請求項2の発明によれば、旋回体と弁座の間に設けたスペーサ旋回室を構成する内周環状溝を形成したので、各部品を工作しやすく取り扱いやすい利点がある。
【0033】
請求項3の発明によれば、旋回体とスペーサの位置決めを、径方向外側部分に設けた当接面で行うことにより、位置決めが簡単かつ容易に定まる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る筒内噴射用燃料噴射弁の全体構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態1の旋回体及び弁座の詳細を示す側面断面図である。
【図3】実施の形態1の旋回体の弁座側から見た正面図である。
【図4】実施の形態2による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図5】実施の形態3による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図6】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図7】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図8】実施の形態4による燃料噴射弁の旋回体及び弁座付近の詳細を示す側面断面図である。
【図9】従来の燃料噴射弁の構造及びスワーラを示す図である。
【符号の説明】
1 筒内噴射用燃料噴射弁、3 弁装置、9 弁本体、10 燃料噴射孔、11 弁座、12 ニードル弁(弁体)、13 旋回体、24,11A,30A 内周環状溝、25 旋回溝、30 スペーサ、11H,13H,30H 当接面、W 旋回室。
Claims (3)
- 中空状の弁本体、この弁本体の一端に設けられ噴射孔を有する弁座、上記弁本体内を移動し上記弁座に離接して上記噴射孔を開閉する弁体、及び上記弁体の周囲に配置され上記弁体を摺動可能に支持すると共に上記噴射孔から流出する燃料に旋回運動を与える旋回体を備えた燃料噴射弁において、
上記弁座には、上記弁体と上記弁座が離接するシート部の上流側であって、上記旋回体の旋回溝が接線方向に接続される位置に内周環状溝を形成し、この内周環状溝により旋回室を構成したことを特徴とする燃料噴射弁。 - 中空状の弁本体、この弁本体の一端に設けられ噴射孔を有する弁座、上記弁本体内を移動し上記弁座に離接して上記噴射孔を開閉する弁体、及び上記弁体の周囲に配置され上記弁体を摺動可能に支持すると共に上記噴射孔から流出する燃料に旋回運動を与える旋回体を備えた燃料噴射弁において、
上記旋回体と上記弁座の間にスペーサを設け、このスペーサは上記旋回体の第1端面と接するように弁軸から所定角度弁座方向に傾斜している傾斜面を有し、この傾斜面の先端であって上記旋回体の旋回溝が接続される位置に旋回室を構成する内周環状溝を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。 - 上記旋回体と上記スペーサの位置決めを、上記旋回体及び上記スペーサの径方向外側部分に設けた当接面により行うことを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁。
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