JP3624448B2 - 硬質フォームの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は硬質フォームの製造方法に関する。さらには発泡剤としてシクロペンタンを使用した電気冷蔵庫用の断熱材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
最近、特定フロン類によるオゾン層の破壊の防止のため発泡剤としてHCFC−141b(1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン)や水(イソシアネートとの反応で副生するCO2 ガスによる発泡)が使用されてきた。しかし後者ではこのCO2 ガスの熱伝導率が悪化するためその使用が制限されており電気冷蔵庫用の断熱材には向いていない。
【0003】
HCFC−141bについてはオゾン破壊係数(ODP)が0.11と大きく、かつこのODPの時間依存性も大きいため、その使用を制限しようとする動きが欧州、米国などで起こっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
シクロペンタンは欧州を中心として既に発泡剤として使用されている。その理由はODP=0という点にある。しかしこのシクロペンタン自身はガソリン中に含まれる成分の1つである油であり、硬質フォーム用ポリオールは概して親水性が高いものが多いため、均一なフォームを製造するためには、このシクロペンタンと硬質フォーム用ポリオールとの混合性を高める必要がある。同時にシクロペンタン自身の有する熱伝導率がHCFC−141bのそれよりも大きいためにフォーム中の気泡をさらに細かくして輻射伝熱の効果を小さくして熱伝導率を低める工夫も必要である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上に述べた問題点を解決するため、本発明者らが検討を重ねた結果、シクロペンタンを発泡剤として使用する場合には、それ自身の有する疎水性を考慮しポリオールとの疎水性/親水性のバランスに注視しながらその断熱性を向上させるためにフォーム中の気泡を均一で細かくする必要があることがわかってきた。
【0006】
フォーム中の気泡を均一で細かくするためには、ポリオール、発泡剤および触媒からなる混合物成分が安定なエマルジョン分散系を形成しているとよいことがわかった。本発明は下記の発明である。
【0007】
(1)ポリオール、シクロペンタン、水、および、触媒を含有する第1成分と、(2)ポリイソシアネートを含有する第2成分、の少なくとも2成分からなる原料を反応させて硬質フォームを製造する方法において、ポリオールとして芳香環を有するポリエーテルポリオールと芳香環を有するポリエステルポリオールとを併用し、シクロペンタンの使用量が、全活性水素化合物(ただし水を除く)に対して15〜25重量%であり、前記第1成分を、シクロペンタンを分散質とし、ポリオールを分散媒とする分散質の粒径が2μm未満である予め安定なエマルジョン分散系とした後、前記第2成分と反応させることを特徴とする、硬質フォームの製造方法。
【0008】
本発明の硬質フォームとしては、硬質ポリウレタンフォーム、ウレタン変性硬質ポリイソシアヌレートフォーム、ウレタン変性硬質ポリウレアフォーム、その他の硬質フォームが挙げられる。以下便宜上硬質ポリウレタンフォームについて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0009】
(エマルジョン分散系)
硬質ポリウレタンフォームは通常、(1)ポリオール、シクロペンタン、水、および、触媒を含有する第1成分と、(2)ポリイソシアネートを含有する第2成分、の少なくとも2成分からなる原料を反応させて製造される。本発明において水とシクロペンタンは発泡剤である。本発明は前記第1成分を分散質の粒径が2μm未満である予め安定なエマルジョン分散系とした後、前記第2成分と反応させることを特徴とする。
【0010】
安定なエマルジョン分散系は、強く撹拌すること、例えば撹拌機の単位時間当たりの回転数を比較的高くして撹拌すること、または界面活性剤などの添加剤を添加することなどにより得られる。ここで「安定なエマルジョン分散系」とは、容易に分離しないことをいい、室温で24時間放置しても分離することなくエマルジョン分散系を保つことを要する。
【0011】
ここで該エマルジョン分散系は、シクロペンタンを分散質としポリオールや水などのその他の成分は分散媒となるようにする。
【0012】
従来の発泡剤であるCFC−11(トリクロロフルオロメタン)やHCFC−141bの分野では活性水素化合物成分は概して均一溶解系となっている。しかしシクロペンタンを発泡剤として使用する分野では前述したように疎水性のシクロペンタンをいかに親水性のポリオールと効率良く混合させるかという点に注意しなくてはならなかった。本発明者らは、このシクロペンタンがポリオール中に粒子分散したエマルジョン分散系であれば均一溶解系の場合と比較してその断熱性が向上する、すなわちエマルジョン分散系で粒子分散したシクロペンタンがポリオールとイソシアネートとの混合反応に際して細かい気泡をつくりやすい状況にあることを見出した。
【0013】
分散質の粒径は2μm未満であり、1.5μm以下、約1μm以下であることが好ましい。なお粒径は光学顕微鏡などで測定できる。
【0014】
水の使用量は全活性水素化合物(ただし水を除く)に対して0.6〜1.5重量%、特に0.8〜1.2重量%であることが好ましい。シクロペンタンの使用量は全活性水素化合物(ただし水を除く)に対して15〜25重量%であるが、特に17〜22重量%であることが好ましい。
【0015】
粒径はシクロペンタンや水の使用量にも影響されると考えられる。例えばシクロペンタンの使用量が少ないと、すなわち、全ポリオールに対して8重量%以下では均一溶解系となり、シクロペンタンの使用量の増加とともに、すなわち13重量%から15重量%に増加するとともに、その粒径が4μm程度から2μm程度となり、15重量%以上となると、微細になる、すなわち2μm未満となることが認められる。
【0016】
(ポリオール)
本発明においてはポリオールとしてポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコール、糖類、アルカノールアミン、ポリアミン、フェノール類などの開始剤に環状エーテルを反応させて得られるものが好ましい。環状エーテルとしてはプロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが好ましい。特にプロピレンオキシドとエチレンオキシドの併用が好ましい。ポリエーテルポリオールの末端を1級水酸基とするためにはプロピレンオキシドを反応させた後、エチレンオキシドを反応させることによって、末端にオキシエチレン基を含有させることが好ましい。
【0018】
開始剤としての多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。糖類としては、シュークロース、デキストロース、ソルビトールなどがある。アルカノールアミンとしてはジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがある。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリレンジアミンなどがある。フェノール類としてはビスフェノールAなどがある。
【0019】
ポリエーテルとしては特に芳香環を有するポリエーテルポリオールが好ましい。芳香環を有するポリエーテルポリオールは開始剤として芳香環を有する化合物を使用することによって得られる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、多価アルコール−多価カルボン酸縮合系のポリオールや環状エステル開環重合体系のポリオールがある。多価アルコールとしては上記したものが使用できる。多価カルボン酸としては、アジピン酸、フタル酸などがある。環状エステルとしてはラクトンなどがある。特に芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。これは芳香環を有する多価カルボン酸を使用することなどよって得られる。芳香環を有する多価カルボン酸にはフタル酸などがある。
【0021】
ポリオールの水酸基価は250〜800のポリオールが好ましく、特に水酸基価350〜600が好ましい。ポリオールは混合して使用してもよい。
【0022】
上記ポリオール以外にアルカノールアミン、ポリアミン、フェノール性水酸基を有する化合物(例えばフェノール樹脂初期縮合物)などの活性水素化合物も少量使用できる。
【0023】
ポリウレタンフォーム中に細かい気泡を生成させるためには適当な反応速度が必要と考えられる。それにはポリオールの初期の反応性を高めることが好ましく、そのためにはポリオールの水酸基を1級水酸基とすることが好ましい。またポリイソシアネートとポリオールとの反応性の向上のための工夫としてポリオールとポリイソシアネートとの相溶性を高めることも好ましい。そのためには、ポリオールとして芳香環を有するポリオールを使用することが好ましい。
【0024】
本発明においてはポリオールとして芳香環を有するポリエーテルポリオールと芳香環を有するポリエステルポリオールとを併用する。この場合、両者の割合は重量比で95/5〜80/20が好ましい。
【0025】
本発明において最も好ましいのはポリオールがトリレンジアミンなどの芳香族アミンを開始剤とする芳香環を有するポリエーテルポリオール50〜85重量%、ビスフェノールAを開始剤とする芳香環を有するポリエーテルポリオール1〜20重量%、芳香環を有するポリエステルポリオール5〜15重量%およびその他のポリオールを0〜15重量%のポリオール混合物であることである。
【0026】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしてはイソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、それら2種類以上の混合物、およびそれらを変成して得られる変成ポリイソシアネートがある。
【0027】
具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、などのポリイソシアネートやそれらのプレポリマー型変成体、ヌレート変成体、ウレア変成体などがある。このうちトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香環を有するものがポリオールとの相溶性がよい点で好ましい。
【0028】
ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、通常、触媒の使用が必要とされる。触媒としては、活性水素含有官能基とイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒が使用される。また、カルボン酸金属塩などのイソシアネート基同士を反応させる多量化触媒が目的に応じて使用される。
【0029】
さらに、良好な気泡を形成するための整泡剤も多くの場合使用される。整泡剤としては、例えばシリコーン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤などがある。その他、任意に使用しうる配合剤としては、例えば充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤などがある。
【0030】
【実施例】
以下、実施例(例1〜3)、比較例(例4〜7)により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されない。以下において、部は重量部を示す。使用するポリオールを表1に示す。POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。
【0031】
(例1)
防爆設備内の3リットルの真空乳化撹拌装置に表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物(表2にポリオール混合物の水酸基価を示す、以下同様)100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒3.0部、水1.0部およびシクロペンタン19部を加えたものを約1リットル作り、約30分間かけて混合撹拌し乳化させた。光学顕微鏡により、得られたエマルジョンがポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約1μmに分散したものであることを確認した。
【0032】
続いて防爆設備内の空気駆動の撹拌機を用いて上記のエマルジョンの所定量を秤量し、これとポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製C・MDI)を液温20℃に調温し、3000rpmでイソシアネートインデックス=115で混合し、400mm×400mm×50mm(t)のモールドに注入発泡した。モールドの温度は40℃である。得られた硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率(単位:kcal/m・hr・℃)を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
(例2)
当初から防爆設備内の空気駆動の撹拌機を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒3.0部、水0.9部およびシクロペンタン20部を加えたものを所定量秤量したものを取り、1分間、3000rpmで混合撹拌し乳化させた。得られたエマルジョンはポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約1μmに分散したものであることを光学顕微鏡により確認した。次いで、同じ空気駆動の撹拌機を用いて例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0034】
(例3)
例1と同様に防爆設備内真空乳化撹拌装置を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒3.0部、水0.9部およびシクロペンタン20部を加えたものを所定量秤量して、約30分間かけて混合撹拌し、乳化させた。光学顕微鏡により、得られたエマルジョンがポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約1μmに分散したものであることを確認した。続いて、空気駆動の撹拌機を用いて例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0035】
(例4)
当初から防爆設備内の空気駆動の撹拌機を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒3.0部、水1.0部およびシクロペンタン19部を加えたものを所定量秤量して1分間、1000rpmで混合撹拌し、乳化させた。光学顕微鏡により、得られたエマルジョンがポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約10μmに分散したものであることを確認した。
【0036】
得られたエマルジョンの一部を室温にて一晩放置したものでは表面にシクロペンタンが浮遊しており、シクロペンタンの分離が観察された。
【0037】
残りのエマルジョンを使用して同じ空気駆動の撹拌機を用いて例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0038】
(例5)
当初から防爆設備内の空気駆動の撹拌機を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒2.5部、水1.3部およびシクロペンタン13部を加えたものを所定量秤量して1分間、3000rpmで混合撹拌し、乳化させた。光学顕微鏡により、得られたエマルジョンがポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約2μmに分散したものであることを確認した。次いで、同じ空気駆動の撹拌機を用いて例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0039】
(例6)
例5と同様に空気駆動の撹拌機を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒2.5部、水1.7部およびシクロペンタン8部を加えたものを所定量秤量して1分間、3000rpmで混合撹拌し、乳化させた。光学顕微鏡により、得られたエマルジョンがポリオールを分散媒としてシクロペンタンが粒径約4μmに分散したものであることを確認した。例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0040】
(例7)
例5と同様に空気駆動の撹拌機を用いて表2記載の組成割合で秤量したポリオール混合物100部にさらにシリコーン系整泡剤2.0部、触媒3.2部、水1.0部およびシクロペンタン19部を加えたものを所定量秤量して1分間、3000rpmで混合撹拌した。これは均一溶解系であった。例1と同様にモールドに成形し硬質ポリウレタンフォームを得た。その熱伝導率を測定し、表2に結果を示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
オゾン層破壊のおそれのない炭化水素系の発泡剤により硬質フォームを製造できる。
Claims (4)
- (1)ポリオール、シクロペンタン、水、および、触媒を含有する第1成分と、(2)ポリイソシアネートを含有する第2成分、の少なくとも2成分からなる原料を反応させて硬質フォームを製造する方法において、
ポリオールとして芳香環を有するポリエーテルポリオールと芳香環を有するポリエステルポリオールとを併用し、
シクロペンタンの使用量が、全活性水素化合物(ただし水を除く)に対して15〜25重量%であり、
前記第1成分を、シクロペンタンを分散質とし、ポリオールを分散媒とする分散質の粒径が2μm未満である予め安定なエマルジョン分散系とした後、前記第2成分と反応させることを特徴とする、硬質フォームの製造方法。 - 前記ポリオールとして併用する、芳香環を有するポリエーテルポリオールと芳香環を有するポリエステルポリオールとの割合が、重量比で95/5〜80/20である請求項1に記載の硬質フォームの製造方法。
- 前記ポリオールが、芳香族アミンを開始剤とする芳香環を有するポリエーテルポリオール50〜85重量%、ビスフェノールAを開始剤とする芳香環を有するポリエーテルポリオール1〜20重量%、芳香環を有するポリエステルポリオール5〜15重量%およびその他のポリオールを0〜15重量%含むポリオール混合物である請求項1または2に記載の硬質フォームの製造方法。
- 水の使用量が、全活性水素化合物(ただし水を除く)に対して0.6〜1.5重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質フォームの製造方法。
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1995
- 1995-02-24 JP JP03725295A patent/JP3624448B2/ja not_active Expired - Fee Related
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