JP3623813B2 - ポリプレニルハライドの精製方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリプレニルハライドの精製方法に関する。ポリプレニルハライドは化学薬品、医薬品、例えば抗癌剤などの合成中間体として重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
ポリプレニルハライドなどのアリルハライド誘導体の製造方法としては、種々の方法が知られている。
例えば、アリルクロライド誘導体の合成法としては、
Ph3P、CCl4を用いる方法(Org. Syn., 54, 63 (1974))、
MsCl、LiCl、collidineを用いる方法(J. Org. Chem., 36, 3044 (1971))、
NCS、Me2Sを用いる方法(J. Org. Chem., 51, 3098 (1986)
等が知られており、
また、アリルブロマイド誘導体の合成法としては、
NBS、Me2Sを用いる方法(Tetrahedron Lett., 42, 4339 (1972))、
MsCl、LiBrを用いる方法(J. Am. Chem. Soc., 107, 2712 (1985))
等が知られている。
これらの各文献では、アリルハライド誘導体は、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の方法により精製されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アリルハライド誘導体は不安定な物質であることが多く、カラムクロマトグラフィーを用いた精製方法では、精製中に分解が起こりやすいため、通常は蒸留で精製を行なう。しかしながら、高沸点アリルハライド誘導体を精製する場合、蒸留が困難な場合があり、このような場合にはカラムクロマトグラフィーで精製を行なうか、未精製のまま次反応を行なわなければならないことがある。またカラムクロマトグラフィーで精製を行なう際には、化合物の安定性より、出来るだけ短時間で精製を終わらせる必要がある。工業化スケールの大量生産時には、カラム精製に多くの時間がかかり、アリルハライド誘導体をシリカゲル等のカラム充填剤に長時間吸着させておくことは、化合物の分解を引き起こすことになる。その結果、収率のばらつき、収率の低下を招く原因となる。また、アリルハライド誘導体を未精製のままに、次の反応を行なう場合には、ハロゲン化剤の残留物等が悪影響を及ぼし、次反応での収率が低下する原因となることがある。したがって、このような問題点を解決し、アリルハライド誘導体、特にポリプレニルハライドを効率的に、かつ安定的に精製する方法が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明者等は研究した結果、ポリプレノールをハロゲン化した後、反応溶媒を蒸発留去し、得られた粗ポリプレニルハライドを非極性の溶媒に溶解し、この非極性溶媒と混和しない溶媒で抽出洗浄することによりポリプレニルハライドを精製する方法を見出し、本発明を完成した。
【0005】
ポリプレノールとしては、デカプレノール、ソラネソール、ファルネシルファルネシルゲラニオール、ファルネシルゲラニルゲラニオール、ファルネシルファルネソール、ファルネシルゲラニオール、ゲラニルゲラニオール等が挙げられ、ポリプレニルハライドとしては、デカプレニルクロライド、デカプレニルブロマイド、ソラネシルクロライド、ソラネシルブロマイド、ファルネシルファルネシルゲラニルクロライド、ファルネシルファルネシルゲラニルブロマイド、ファルネシルゲラニルゲラニルクロライド、ファルネシルゲラニルゲラニルブロマイド、ファルネシルファルネシルクロライド、ファルネシルファルネシルブロマイド、ファルネシルゲラニルクロライド、ファルネシルゲラニルブロマイド、ゲラニルゲラニルクロライド、ゲラニルゲラニルブロマイド等が挙げられる。
【0006】
ハロゲン化は、四塩化炭素あるいは四臭化炭素と、アルキルホスフィンあるいはアリールホスフィン、例えば、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等を、それぞれモル比で1〜10倍の範囲で、好ましくは1.2〜6倍の範囲で用いる。反応は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル系溶媒または、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒中で行なう。反応温度は通常0〜40℃で、反応時間は通常5分間〜3時間である。
【0007】
ポリプレニルアルコールをハロゲン化した後、反応溶媒を蒸発留去し、得られた粗ポリプレニルハライドを非極性の溶媒に溶解する。ここで、非極性の溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましく、ヘキサンが特に好ましい。また、溶媒量は、ポリプレニルハライドに対して2倍以上あればよく、普通5倍から30倍量用いる。この溶液に、非極性の溶媒と混和しない溶媒を加えて不純物を抽出洗浄する。非極性溶媒と混和しない溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール等があるが、アセトニトリルが特に好ましい。また、溶媒量は、ポリプレニルハライドに対して2倍以上あればよく、普通2倍から20倍量用いる。抽出温度は0〜50℃の範囲であればよく、普通は室温で行なう。抽出回数は、不純物が十分に除去されるのを確認しながら行ない、普通2回以上、好ましくは2〜5回行なう。
以下に本発明を実施例によって詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0008】
〔実施例1〕 ソラネシルクロライドの精製
ソラネソール(25.85g)、トリn−ブチルホスフィン(31ml)のテトラヒドロフラン(150ml)溶液に、氷冷下、四塩化炭素(24ml)を加え、2時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去しヘキサン(200ml)を加えた。ヘキサン層をアセトニトリル(50ml)で3回洗浄した後、溶媒を減圧留去し標題化合物(25.98g、収率98%、純度97.3%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル(CDCl3): δ1.60(24H, s)、 1.68(3H, s)、1.73(3H, s)、1.96〜2.12(32H, m)、 4.10(2H, d, J=7.8Hz)、5.08〜5.22(8H, m)、5.45(1H, t, J=7.8Hz)
【0009】
〔実施例2〕 ソラネシルクロライドの精製
ソラネソール(1.0g)、トリn−ブチルホスフィン(1.2ml)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液に、四塩化炭素(0.9ml)を加え室温で1時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去しヘキサン(30ml)を加えた。ヘキサン層をメタノール(10ml)で3回洗浄した後、溶媒を減圧留去し、標題化合物(0.76g、収率74%、純度96.9%)を得た。
【0010】
〔実施例3〕 ソラネシルクロライドの精製
ソラネソール(1.0g)、トリn−ブチルホスフィン(1.2ml)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液に、四塩化炭素(0.9ml)を加え室温で1時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去しヘキサン(30ml)を加えた。ヘキサン層をジメチルホルムアミド(10ml)で3回洗浄した。更に、水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過後、溶媒を減圧留去し、標題化合物(0.91g、収率88%、純度96.5%)を得た。
【0011】
〔実施例4〕 デカプレニルブロマイドの精製
デカプレノール(2.0g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液に、四臭化炭素(1.9g)、トリフェニルホスフィン(2.3g)を加え、室温で1時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。濃縮物にヘキサン(20ml)を加え、アセトニトリル(10ml)で3回洗浄した後、溶媒を減圧留去し、標題化合物(2.1g、収率96%、純度90.8%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル(CDCl3): δ1.60(27H, s)、 1.68(3H, s)、1.73(3H, s)、1.96〜2.10(36H, m)、 4.02(2H, d, J=8.64Hz)、5.09〜5.14(9H, m)、 5.53(1H, t, J=8.64Hz)
【0012】
〔実施例5〕 ゲラニルゲラニルクロライドの精製
ゲラニルゲラニオール(2.9g)、トリn−ブチルホスフィン(6.0g)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、四塩化炭素(9.2g)を加え、室温で5分間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去しヘキサン(80ml)を加えた。ヘキサン層をアセトニトリル(50ml)で3回洗浄した後、溶媒を減圧留去し、標題化合物(2.3g、収率74%、純度95.0%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル(CDCl3): δ1.60(9H, s)、 1.68(3H, s)、1.76(3H, s)、1.95〜2.13(12H, m)、 4.10(2H, d, J=7.8Hz)、5.08〜5.11(3H, m)、 5.45(1H, t, J=7.8Hz)
【0013】
〔実施例6〕 ソラネシルブロマイドの精製
ソラネソール(2.8g)のジクロロメタン(50ml)溶液に、四臭化炭素(2.2g)、トリフェニルホスフィン(1.4g)を加え、室温で5分間撹拌した。溶媒を減圧留去後、濃縮物にヘキサン(50ml)を加え、アセトニトリル(30ml)で2回洗浄した後、溶媒を減圧留去し、標題化合物(3.1g、収率100%、純度93.2%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル(CDCl3): δ1.60(24H, s)、 1.68(3H, s)、1.73(3H, s)、1.96〜2.10(32H, m)、 4.02(2H, d, J=8.3Hz)、5.10〜5.13(8H, m)、 5.53(1H, t, J=8.3Hz)
【0014】
〔比較例1〕 ソラネシルクロライドの精製
ソラネソール(20.0g)、トリn−ブチルホスフィン(23ml)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、氷冷下、四塩化炭素(18ml)を加え、2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300g(MERCK 7734)、5%酢酸エチル−ヘキサン)で精製し、標題化合物(3.13g、収率15%、純度96.3%)を得た。
【0015】
〔比較例2〕 デカプレニルブロマイドの精製
デカプレノール(10.0g)、トリフェニルホスフィン(11.5g)のジクロロメタン(100ml)溶液に、氷冷下、四臭化炭素(9.5g)を加え、1時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、ヘキサン100mlを加え室温で30分間撹拌した。不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300g(MERCK 7734)、5%酢酸エチル−ヘキサン)で精製し、標題化合物(4.36g、収率40%、純度92.5%)を得た。
なお、実施例および比較例中の生成物の純度は、HPLC〔カラム:CAPCEL PAK C18,φ4.6×250mm、移動相:エタノール−アセトニトリル(2:3)、検出波長:220nm〕により測定した。
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