JP3623030B2 - タイヤ空気圧低下検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、4輪車両に備えられている各タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、この結果空気圧が低下しているタイヤがあると判定されたときには、警報を発生させることができるタイヤ空気圧低下検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車やトラック等の4輪車両のための安全装置の1つとして、タイヤの空気圧の低下を検出する装置が発明され、一部には実用化されているものもある。
上記タイヤ空気圧低下検出装置は、主に以下に示すような理由によりその重要性が認識され、開発されたものである。すなわち、空気圧が低下すると、たわみの増大によりタイヤの温度が上昇する。温度が高くなるとタイヤに用いられている高分子材料の強度が低下し、タイヤのバーストに繋がる。通常、タイヤの空気が0.5 気圧程度抜けても、ドライバはそれに気付かないことが多いから、それを検知できる装置が望まれていた。
【0003】
上記タイヤ空気圧低下検出装置における空気圧低下の検出方法は、たとえば車両に備えられている4つのタイヤW1 ,W2 ,W3 ,W4 (なお、タイヤW1 ,W2 はそれぞれ前左右輪に対応し、タイヤW3 ,W4 はそれぞれ後左右輪に対応する。また、以下総称するときは「タイヤWi 」という。)の各回転角速度F1 ,F2 ,F3 ,F4 (以下総称するときは「回転角速度Fi 」という)の違いに基づく方法がある。
【0004】
すなわち、上記方法では、たとえばタイヤWi に取付けられた車輪速センサから出力される信号に基づいて、上記タイヤWi の回転角速度Fi が所定のサンプリング周期ごとに検出される。
ここで、この検出された回転角速度Fi は、各タイヤWi の有効ころがり半径(タイヤの自由動転時において、タイヤが1回転したときに車両が進んだ距離を2πで割ることにより得ることができる値。)がすべて同一の場合であって、かつ車両が直線走行していれば、すべて同一である。
【0005】
一方、上記タイヤWi の有効ころがり半径は、たとえばタイヤWi の空気圧の変化に対応するように変化する。すなわち、タイヤWi の空気圧が低下すると、有効ころがり半径は正常内圧時に比べて小さくなる。したがって、その空気圧が低下しているタイヤWi の回転角速度Fi は正常内圧時に比べて速くなる。つまり、各回転角速度Fi の違いによって、タイヤWi の空気圧低下を検出することができる。
【0006】
回転角速度Fi の違いによるタイヤWi の空気圧低下の検出のための判定式は、たとえば下記(1) 式に示すようなものである(たとえば特開昭63−305011 号公報、特開平4−212609号公報参照。)。
【0007】
【数1】
【0008】
たとえば、各タイヤWi の有効ころがり半径が仮にすべて同一であるとすれば、回転角速度Fi はすべて同一となるので(F1 =F2 =F3 =F4 )、判定値Dは0である。そこで、基準しきい値DTH0 を設定し、
|D|<DTH0 ‥‥(2)
が満足された場合は、空気圧が低下しているタイヤWi はないと判定され、満足されなかった場合には、空気圧は低下しているタイヤWi はあると判定される。
【0009】
このように、空気圧が低下しているタイヤWi があると判定されると、空気圧が低下しているタイヤWi があることをできるだけ速くドライバに知らせるのが望ましい。
一方、タイヤWi の有効ころがり半径は、たとえばタイヤWi の製造時に生じる規格内でのばらつき(以下「初期差異」という)、凹凸などの路面状態、または車両の速度,車両が走行している旋回半径,車両にかかる前後方向加速度,車両にかかる横方向加速度などの車両の走行状態を含む要因によって変動する。すなわち、タイヤWi がたとえ正常内圧であっても、上記変動要因によって有効ころがり半径が変動し、これに伴い各タイヤWi の回転角速度Fi も変動する。したがって、空気圧が低下しているタイヤWi があると判定されたことに応答してすぐに警報を発生すると、誤警報となるおそれがある。
【0010】
これに対処するための技術として、たとえば特開平7−186643号公報に開示されている技術を適用することが考えられる。
より詳述すると、上記公開公報に開示されている技術では、上記(1) 式で算出された判定値Dが上記(2) 式を満足していない回数、すなわち空気圧が低下しているタイヤWi があると判定された回数が所定回数(たとえば5回)以上連続した場合にのみ警報が発生される。
【0011】
また、他の構成例▲1▼として、上記公開公報に開示されている技術では、上記(1) 式で算出された判定値Dが所定個数(たとえば10個)保持され、この保持されている所定個数の判定値Dのうち予め定める個数(たとえば8個)の判定値Dが上記(2) 式を満足しなかった場合にのみ警報が発生される。
さらに、他の構成例▲2▼として、上記公開公報に開示されている技術では、上記(1) 式で算出された判定値Dが上記(2) 式を満足しなかったときにインクリメントされ、上記判定値Dが上記(2) 式を満足したときにデクリメントされるカウンタが備えられ、このカウンタのカウント値が警報発生しきい値N1 (たとえばN1 =10)に達すると警報が発生される。
【0012】
このように、上記公開公報に開示されている技術によれば、一時的に発生する判定値Dの変動要因を考慮して警報を発生させているので、誤警報を効果的に防止できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、判定値Dは、各タイヤWi の回転角速度Fi に基づいて算出されるので、タイヤWi の空気圧低下の程度に対応している。すなわち、タイヤWi の空気圧低下の程度は有効ころがり半径の変動分に対応しており、回転角速度Fi はこの有効ころがり半径の変動分に対応して変動するからである。したがって、タイヤWi の空気圧が低下しているときの判定値Dの推移としては、たとえば図12(a) に示すように2つのケースA,Bが考えられる。もちろん、図12(a) では、ケースBがタイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合を示している。
【0014】
一方、警報発生の構成として上記他の構成例▲2▼を例にとると、上記ケースA,Bのように推移したときのカウンタのカウント値Cは、図12(b) に示すように、いずれのケースA,Bとも同じになる。すなわち、カウント値Cが警報発生しきい値N1 に達するタイミングt1 がケースA,Bとも同じなので、いずれのケースA,Bにおいても警報発生のタイミングは同じである。
【0015】
しかしながら、タイヤWi のバーストに代表される交通上の危険度が高いケースBのようなタイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、できるだけ迅速に警報を発生できる方が好ましい。
そこで、この発明の目的は、タイヤの空気圧低下の程度が高いほど迅速に警報を発生できるタイヤ空気圧低下検出装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1記載のタイヤ空気圧低下検出装置は、車両に備えられているタイヤの回転角速度を検出するための回転角速度検出手段と、この回転角速度検出手段で検出された回転角速度に基づいて判定値を算出するための判定値算出手段と、この判定値算出手段で算出された判定値の絶対値が予め定める基準値以上であるか否かに基づいてタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定するための空気圧低下判定手段と、上記判定値算出手段で算出された判定値が、判定値の絶対値が上記基準しきい値未満となる範囲に設定された正常数値領域、および判定値の絶対値が上記基準しきい値以上となる範囲に設定された複数の空気圧低下数値領域を含む複数の数値領域のうちいずれの数値領域に属するのかを特定するための数値領域特定手段と、計数値を保有し、上記空気圧低下判定手段での判定結果に応じて互いに逆方向に累和されていくように、上記計数値を上記数値領域特定手段で特定された数値領域に応じた計数幅で更新するとともに、上記計数値が、タイヤの空気圧が低下していないと判定される場合に累和されるべき方向(以下「正常時累和方向」という。)、およびタイヤの空気圧が低下していると判定される場合に累和されるべき方向(以下「低下時累和方向」という。)にそれぞれ設定された定常値および上限値に達すると、それ以上の更新を禁止する計数手段と、この計数手段が保有している計数値が上記低下時累和方向に設定された警報発生しきい値に達すると警報を発生させ、上記計数手段が保有している計数値が上記正常時累和方向に設定された警報停止しきい値に達すると警報を停止させる警報発生/停止手段とを含み、上記計数手段は、判定値の絶対値が大きい空気圧低下数値領域ほど計数幅を大きくして計数値の更新動作を実行するものであることを特徴とする。
【0017】
この構成では、たとえばタイヤの空気圧が低下していない場合、計数手段では、正常時累和方向に計数値が累和するように、計数値が更新される。したがって、計数値は定常値に落ち着いている。
この状態において、パンク等によりタイヤの空気圧が低下していると判定される状態が続くと、計数手段では、上記定常値をスタート値とし、低下時累和方向に計数値が累和するように、計数値が更新される。その結果、計数値は警報発生しきい値に達するので、警報が発生される。
【0019】
一方、判定値の絶対値はタイヤの空気圧低下の程度に対応している。具体的には、判定値の絶対値が基準しきい値以上の場合、判定値の絶対値が相対的に大きいときにはタイヤの空気圧低下の程度は相対的に大きく、判定値の絶対値が相対的に小さいときにはタイヤの空気圧低下の程度は相対的に小さい。
請求項1記載のタイヤ空気圧低下検出装置では、上記計数幅はタイヤの空気圧低下の程度が相対的に大きくなるほど大きくなるように設定されている。そのため、計数値は、タイヤの空気圧低下の程度が相対的に大きくなるほど速く警報発生しきい値に達する。よって、タイヤの空気圧低下の程度が相対的に大きいほど速く警報を発生させることができる。
【0020】
一方、この構成では、誤警報が発生するおそれがある。すなわち、タイヤの空気圧が低下していない状態が続いている場合において、車両の走行状態または路面状態によってタイヤの空気圧が低下していると誤判定されると、計数手段では低下時累和方向に計数値が累和するように、計数値が更新される。したがって、計数値が警報発生しきい値に達するおそれがある。
【0021】
しかしながら、タイヤの空気圧は実際には低下していないので、計数手段では正常時累和方向に計数値が累和するように、計数値が更新されることになる。その結果、計数値は警報停止しきい値に達するので、誤警報が停止される。
この場合、計数値を更新する際の計数幅は、判定値が属する数値領域に応じた幅とされている。具体的には、たとえば請求項2記載の構成のように、判定値の絶対値が小さいほど大きい計数幅とされている。
【0022】
すなわち、請求項2記載のタイヤ空気圧低下検出装置は、請求項1記載のタイヤ空気圧低下検出装置であって、上記正常数値領域は、複数の下位正常数値領域に分割されており、上記計数手段は、判定値の絶対値が小さい下位正常数値領域ほど計数幅を大きくして計数値の更新動作を実行するものであることを特徴とする。
【0023】
一方、判定値の絶対値はタイヤの空気圧の程度に対応している。具体的には、判定値の絶対値が基準しきい値未満の場合、判定値の絶対値が相対的に小さいときにはタイヤの空気圧はほぼ完全な正常内圧であり、判定値の絶対値が相対的に大きいときにはタイヤの空気圧は許容範囲内で低下している。
したがって、上記計数幅はタイヤの空気圧が正常内圧であるほど大きくなるように設定されていることになる。そのため、計数値は、タイヤの空気圧が正常内圧であるほど速く警報停止しきい値に達する。よって、タイヤの空気圧が正常であるほど速く警報を停止させることができる。
【0027】
請求項3記載のタイヤ空気圧低下検出装置は、車両に備えられているタイヤの回転角速度を検出するための回転角速度検出手段と、この回転角速度検出手段で検出された回転角速度に基づいて判定値を算出するための判定値算出手段と、この判定値算出手段で算出された判定値が予め定める基準しきい値以上であるか否かに基づいてタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定するための空気圧低下判定手段と、上記判定値算出手段で算出された判定値が、判定値の絶対値が上記基準しきい値未満となる範囲に設定された正常数値領域、および判定値の絶対値が基準しきい値以上となる範囲に設定された複数の空気圧低下数値領域を含む複数の数値領域のうちいずれの数値領域に属するのかを特定するための数値領域特定手段と、上記空気圧低下判定手段による判定回数を計数するための判定回数計数手段と、上記空気圧低下判定手段によりタイヤの空気圧が低下していると判定された回数を、上記数値領域特定手段で特定された数値領域に応じた計数幅で計数するための低下回数計数手段と、この低下回数計数手段の計数値を記憶するための記憶手段と、上記判定回数計数手段で計数されている回数が予め定める回数に達すると、上記記憶手段に記憶されている計数値が予め定める第1の回数以上、またはこの第1の回数よりも少ない予め定める第2の回数未満であるか否かを判別する回数判別手段と、この回数判別手段での判別の結果、上記計数値が上記第1の回数以上であると判別されると警報を発生させるとともに、上記計数値が上記第2の回数未満であると判別されると警報を停止させる警報発生/停止手段とを含み、上記低下回数計数手段は、判定値の絶対値が大きい空気圧低下数値領域ほど大きな計数幅でタイヤの空気圧が低下した回数を計数するものであることを特徴とする。
【0028】
この構成では、タイヤの空気圧が低下しているか否かの判定を行った回数が判定回数計数手段により計数される。また、上記判定の結果、タイヤの空気圧が低下していると判定された回数が低下回数計数手段により計数される。そして、上記判定回数計数手段の計数値が予め定める回数に達したときの低下回数計数手段の計数値が第1の回数以上であれば、警報が発生される。
【0029】
この場合、低下回数計数手段での計数幅は、数値領域特定手段で特定される数値領域に応じた幅とされている。具体的には、上記計数幅は、判定値の絶対値が大きいほど大きな幅となるようにされている。
【0030】
したがって、低下回数計数手段の計数値は、タイヤの空気圧低下の程度が大きくなるほど速く第1の回数以上に達する。そのため、タイヤの空気圧低下の程度が大きくなるほど迅速に警報を発生することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
〈第1実施形態〉
図4は、この発明の第1実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置の構成を示す概略ブロック図である。このタイヤ空気圧低下検出装置は、4輪車両に備えられた4つのタイヤW1 ,W2 ,W3 ,W4 (以下総称するときは「タイヤWi 」という。)の空気圧が低下しているか否かを検出するものである。ここに、タイヤW1 ,W2 はそれぞれ前左右タイヤに対応し、タイヤW3 ,W4 はそれぞれ後左右タイヤに対応する。
【0032】
タイヤ空気圧低下検出装置には、上記各タイヤW1 ,W2 ,W3 ,W4 にそれぞれ関連して設けられた従来公知の車輪速センサ1が備えられている。車輪速センサ1の出力は制御ユニット2に与えられる。制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWi を知らせるための表示器3が接続されている。表示器3は、液晶表示素子,プラズマ表示素子またはCRT等で構成されている。
【0033】
図5は、上記タイヤ空気圧低下検出装置の電気的構成を示すブロック図である。制御ユニット2は、I/Oインタフェース2a、CPU2b、ROM2c、RAM2dおよびカウンタCNTを含むマイクロコンピュータで構成されている。I/Oインタフェース2aは、車輪速センサ1等の外部装置との信号の受渡しに必要なものである。CPU2bは、ROM2cに格納された制御動作プログラムに従い、種々の演算処理を実行するものである。RAM2dは、CPU2bが制御動作を行う際にデータ等が一時的に書込まれたり、その書込まれたデータ等が読出されるものである。カウンタCNTは、後述する警報発生/停止処理に必要なカウント値Cをカウントするためのものである。
【0034】
車輪速センサ1では、タイヤWi の回転数に対応したパルス信号(以下「車輪速パルス」という)が出力される。CPU2bでは、車輪速センサ1から出力された車輪速パルスに基づき、所定のサンプリング周期ΔT(sec) (たとえばΔT=1 )ごとに、各タイヤWi の回転角速度Fi が算出される。
なお、この第1実施形態では、上記車輪速センサ1および制御ユニット2が回転角速度算出手段に対応している。また、この第1実施形態では、上記制御ユニット2が判定値算出手段,空気圧低下検出手段,数値領域特定手段,計数幅変更手段などに対応している。さらに、この第1実施形態では、上記カウンタCNTが計数手段に対応している。さらにまた、この第1実施形態では、上記制御ユニット2および表示器3が警報発生/停止手段に対応している。
【0035】
図6は、上記タイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。この警報発生/停止処理はソフトウエア処理で実現される。
車両の走行時において、車輪速センサ1から出力された車輪速パルスに基づいて各タイヤWi の回転角速度Fi が算出されると(ステップS1)、この算出された回転角速度Fi に基づいて、下記(1) 式から空気圧が低下しているか否かを判定するための判定値Dが求められる(ステップS2)。
【0036】
【数2】
【0037】
次いで、この求められた判定値Dに基づき、空気圧が低下しているタイヤWi があるか否かが判定される。具体的には、下記(2) 式に示すように、判定値Dの絶対値が基準しきい値DTH0 (DTH0 >0、たとえばDTH0 =0.1 。)未満である上位正常数値領域E(図7参照。)に属しているか否かが判別される(ステップS3)。
【0038】
|D|<DTH0 ‥‥(2)
この結果、判定値Dの絶対値が上記(2) 式を満足していない(たとえば図7における点C1,D1,C2,D2のいずれか。)と判別されると、空気圧が低下しているタイヤWi があると判断され、空気圧低下カウント処理が行われる(ステップS4)。一方、判定値Dの絶対値が上記(2) 式を満足している(たとえば図7における点A1,B1,A2,B2のいずれか。)と判別されると、タイヤWi はすべて正常内圧であると判断され、正常内圧カウント処理が行われる(ステップS5)。
【0039】
空気圧低下カウント処理および正常内圧カウント処理について簡単に説明する。
空気圧低下カウント処理では、制御ユニット2に備えられているカウンタCNTのカウント値Cが空気圧低下の程度(たとえばタイヤWi のバーストに代表される交通上の危険度が相対的に高い程度の空気圧低下か、または交通上の危険度が相対的に低い程度の空気圧低下か。)に応じて増加される。正常内圧カウント処理では、上記カウンタCNTのカウント値CがタイヤWi の空気圧の程度(たとえばほぼ完全な正常内圧であるか、または許容範囲内で空気圧が低下しているか。)に応じて減少される。このカウンタCNTのカウント値Cは後述する警報の発生/停止に利用される。
【0040】
なお、空気圧低下カウント処理および正常内圧カウント処理のより詳細な説明については後述する。
空気圧低下カウント処理または正常内圧カウント処理が終了すると、上記カウンタCNTのカウント値Cが予め設定された警報発生しきい値N1 (たとえばN1 =10)以上であるか否かが判別される(ステップS6)。その結果、カウント値Cが警報発生しきい値N1 以上であると判別されると、空気圧が低下しているタイヤWi が確実にあるとみなされ、表示器3(図4参照)で警報が発生される(ステップS7)。警報発生方法については後述する。
【0041】
一方、カウント値Cが警報発生しきい値N1 未満であると判別されると、次いでカウント値Cは予め設定された警報停止しきい値N2 以下であるか否かが判別される(ステップS8)。その結果、カウント値Cが警報停止しきい値N2 以下であると判別されると、もしも警報が発生している場合には、その警報が停止される(ステップS9)。一方、カウント値Cが警報停止しきい値N2 より大きいと判別されると、それまでの状態が持続される。
【0042】
図2は、空気圧低下カウント処理(ステップS4)を説明するためのフローチャートである。空気圧低下カウント処理は、上記(1) 式で算出される判定値DがタイヤWi の空気圧が低下した程度に対応していることを利用して、上記カウンタCNTにおける増加すべき計数幅を決定するための処理である。
ここで、判定値DがタイヤWi の空気圧低下の程度に対応していることを説明する。すなわち、判定値Dは上記(1) 式で示したようにタイヤWi の回転角速度Fi に基づいて算出される。タイヤWi の回転角速度Fi は、タイヤWi の空気圧の変動に応じて変動するタイヤWi の有効ころがり半径に応じて変動する。したがって、判定値DはタイヤWi の空気圧低下の程度に対応していると言える。
【0043】
次に、空気圧低下カウント処理についてより具体的に説明する。
上記図6のステップS3での判別の結果、判定値Dの絶対値が上記(2) 式を満足していないと判別されると、その空気圧低下の程度が認識される。具体的には、下記(3) 式に示すように、判定値Dの絶対値が上記基準しきい値DTH0 よりも大きく、かつしきい値DTH1 (DTH1 >0、たとえばDTH1 =0.18。)よりも小さい第1下位空気圧低下数値領域F1に属しているか否かが判別される(ステップS41)。
【0044】
DTH0 <|D|<DTH1 ‥‥(3)
この結果、判定値Dが上記(3) 式が満足している(たとえば図7における点C1,C2。)と判別されると、空気圧低下の程度は相対的に小さいと判断され、ステップS42に移行する。一方、判定値Dが上記(3) 式を満足していない(たとえば図7における点D1,D2。)と判別されると、判定値Dの絶対値はしきい値DTH1 よりも大きい第2下位空気圧低下数値領域F2に属していると判断され、ステップS43に移行する。
【0045】
このように、この第1実施形態では、第2下位空気圧低下数値領域F2の方が第1下位空気圧低下数値領域F1よりも判定値Dの絶対値が大きい数値領域とされている。
ところで、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さい場合には、タイヤWi がバーストする可能性も相対的に低い。一方、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、タイヤWi がバーストする可能性は相対的に高い。したがって、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さい場合に比べて、できるだけ迅速に警報を発生させるのが好ましい。
【0046】
一方、警報は、上記図6のステップS6,S7に示すように、カウンタCNTのカウント値Cが警報発生しきい値N1 以上であるときに発生される。
そこで、この第1実施形態では、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きいときには、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さいときに比べて、カウンタCNTにおいて増加すべき計数幅を大きくしている。
【0047】
より詳述すると、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さいと判断された場合には、先ず、カウント値Cが予め設定された上限値L1 (たとえばL1 =N1 =10)未満であるか否かが判別される(ステップS42)。この結果、カウント値Cが上限値L1 未満であると判別されると、カウンタCNTが所定数n1 (たとえばn1 =1)だけインクリメントされる(ステップS44)。一方、カウント値Cが上限値L1 であると判別されると、カウンタCNTはインクリメントされずに、図6のステップS6に移行する。
【0048】
一方、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きいと判断された場合には、カウント値Cが上記上限値L1 から(n2 −1)(たとえばn2 =2、ただしn2 >n1 。)だけ差引いた値{L1 −(n2 −1)}未満であるか否かが判別される(ステップS43)。この結果、カウント値Cが上記値{L1 −(n2 −1)}未満であると判別されると、カウンタCNTが所定数n2 だけインクリメントされる(ステップS45)。一方、カウント値Cが上記値{L1 −(n2 −1)}以上であると判別されると、カウンタCNTはインクリメントされずに、図6のステップS6に移行する。
【0049】
このように、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きいと判断された場合には、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さいと判断された場合に比べて、カウンタCNTにおいて増加すべき計数幅を大きくしている。したがって、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、相対的に小さい場合よりも速くカウント値Cが警報発生しきい値N1 以上に達する。そのため、タイヤWi の空気圧低下の程度が大きくなるほど迅速に警報を発生させることができる。
【0050】
なお、カウンタCNTのカウント値Cに上限値L1 を設定しているのは、誤警報発生の停止に迅速に対応するためである。すなわち、たとえば上限値L1 を設定していない場合、車両の走行状態や路面状態によって判定値Dが上記(2) 式を満足している状態が長期間持続すると、カウンタCNTのカウント値Cは無限にプラス方向に増加していく。これに伴い、カウント値Cは当然警報発生しきい値N1 以上になるので、警報が発生される。一方、この警報は誤警報なので速やかに停止する必要がある。しかしながら、カウント値Cはプラス方向に無限に増加しているので、カウント値Cを警報停止しきい値N2 まで戻すのには時間がかかる。その結果、警報の停止が遅くなるので、交通安全上あまり好ましくないからである。
【0051】
図3は、正常内圧カウント処理(ステップS5)を説明するためのフローチャートである。正常内圧カウント処理は、上記(1) 式で算出される判定値DがタイヤWi の空気圧の程度に対応していることを利用して、カウンタCNTにおいて減少すべき計数幅を決定するための処理である。
より詳述すると、図6のステップS3での判別の結果、判定値Dが上記(2) 式を満足してタイヤWi はすべて正常内圧であると判別されると、その正常内圧の程度が認識される。具体的には、タイヤWi はほぼ完全な正常内圧なのか、または許容範囲内で空気圧が低下しているのかを認識すべく、下記(4) 式を満足するか否かが判別される(ステップS51)。ただし、下記(4) 式において、DTH−1>0である。DTH−1の具体的数値例としては、たとえば0.02を採用することができる。
DTH−1<|D|<DTH0 ‥‥(4)
この結果、判定値Dの絶対値が上記(4) 式を満足していないと判別されると(たとえば図7の点A1,A2。)、判定値Dの絶対値は第1下位正常数値領域E1に属していると判断され、タイヤWi はほぼ完全な正常内圧であると認識される。一方、判定値Dが上記(4) 式を満足したと判別されると(たとえば図7の点B1,B2。)、判定値の絶対値は第2下位正常数値領域E2に属していると判断され、タイヤWi は許容範囲内で空気圧が低下していると認識される。
【0052】
このように、この第1実施形態では、第1下位正常数値領域E1の方が第2下位正常数値領域E2よりも判定値Dの絶対値が小さい数値領域とされている。
ところで、判定値Dは、上述したように、たとえタイヤWi が正常内圧であっても、車両の走行状態や路面状態によって上記(2) 式を満足することがある。したがって、誤警報が発生するおそれがある。一方、警報は、上記図6のステップS6,S7に示すように、カウント値Cが警報停止しきい値N2 以下に達したときに停止される。したがって、誤警報である場合には、カウント値Cをできるだけ速やかに減少させるのが好ましい。
【0053】
そこで、この第1実施形態では、タイヤWi の空気圧がほぼ完全な正常内圧である場合には、タイヤWi の空気圧が許容範囲内で低下している場合に比べて、カウンタCNTにおいて減少すべき計数幅を大きくしている。
より詳述すると、判定値Dの絶対値が上記(4) 式を満足していないと判別されると、カウント値Cが予め設定された定常値L2 (たとえばL2 =N2 =0 )よりも大きいか否かが判別される(ステップS52)。この結果、カウント値Cが定常値L2 よりも大きいと判別されると、カウンタCNTが所定数n1 だけデクリメントされる(ステップS54)。一方、カウント値Cが定常値L2 であると判別されると、カウンタCNTはデクリメントされずに、図6のステップS6に移行する。
【0054】
一方、判定値Dの絶対値が上記(4) 式を満足したと判別されると、カウント値Cが上記定常値L2 に(n2 −1)を加算した値{L2 +(n2 −1)}よりも大きいか否かが判別される(ステップS53)。この結果、カウント値Cが上記値{L2 +(n2 −1)}よりも大きいと判別されると、カウンタCNTは所定数n2 だけデクリメントされる(ステップS55)。一方、カウント値Cが上記値{L2 +(n2 −1)}以下であると判別されると、カウンタCNTはデクリメントされずに、図6のステップS6に移行する。
【0055】
このように、タイヤWi の空気圧がほぼ完全な正常内圧であると認識された場合には、タイヤWi の空気圧が許容範囲内で低下していると認識された場合に比べて、カウンタCNTにおいて減少すべき計数幅を大きくしている。したがって、タイヤWi の空気圧がほぼ完全な正常内圧であると認識された場合には、タイヤWi の空気圧が許容範囲内で低下していると認識された場合よりも速くカウント値Cが警報停止しきい値N2 以下に達する。そのため、たとえ誤警報が発生していても、その誤警報を速やかに停止させることができる。
【0056】
なお、上記定常値L2 を設定したのは、突然のパンクに対応するためである。すなわち、定常値L2 を設定していない場合、もしも正常内圧状態が長期間持続すると、カウント値Cは無限にマイナス方向に増加する。このとき、タイヤWi が突然パンクすると、カウント値Cが警報発生しきい値L1 に達するまで非常に時間がかかり、これに伴い警報の発生が遅くなる。そのため、交通安全上危険になるおそれがあるからである。
【0057】
次に、この第1実施形態における警報発生方法について説明する。
この第1実施形態では、空気圧が低下しているタイヤWi があることだけをドライバに知らせるのではなく、いずれのタイヤWi の空気圧が低下しているのかをドライバに知らせることができる警報発生方法を採用している。
より具体的に説明すると、上記(2) 式において、
D>0であれば、空気圧が低下しているタイヤはW1 またはW4
D<0であれば、空気圧が低下しているタイヤはW2 またはW3
というように、先ず、特定される。次いで、この場合において、車両が直線走行しているときには、
F1 >F2 ならば、空気圧が低下しているタイヤはW1
F1 <F2 ならば、空気圧が低下しているタイヤはW2
F3 >F4 ならば、空気圧が低下しているタイヤはW3
F3 <F4 ならば、空気圧が低下しているタイヤはW4
と特定される。
【0058】
このようにして空気圧が低下しているタイヤWi が特定されると、その結果が図5に示すような表示器3に出力されて表示される。表示器3における表示態様としては、たとえば4つのタイヤW1 〜W4 に対応する表示ランプが同時に点灯するようにされる。これにより、いずれのタイヤWi の空気圧が低下しているかを一瞥するだけで認識することができる。
【0059】
図1は、この第1実施形態におけるカウンタCNTのカウント値Cの推移を説明するための図である。この図1を見て明らかなように、図1(a) において一点鎖線で示す空気圧低下の程度が相対的に大きいケースBのカウント値C(図1(b) において一点鎖線で示す。)は、図1(a) において実線で示す空気圧低下の程度が相対的に小さいケースAのカウント値C(図1(b) において実線で示す。)よりも時間Δtだけ速く警報発生しきい値N1 に達している。
【0060】
以上のようにこの第1実施形態のタイヤ空気圧低下検出装置によれば、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、タイヤWi の空気圧低下の程度が相対的に小さい場合に比べて、カウンタCNTで増加すべき計数幅を大きくしているので、タイヤWi の空気圧低下の程度が大きくなるほど迅速に警報を発生させることができる。
【0061】
また、タイヤWi がほぼ完全に正常内圧である場合には、タイヤWi の空気圧が許容範囲内で低下している場合に比べて、カウンタCNTで減少すべき計数幅を大きくしている。したがって、タイヤWi が正常内圧であればあるほど迅速に警報を停止させることができる。そのため、たとえ誤警報が発生したとしても、タイヤWi が正常内圧であれば、その誤警報を迅速に停止させることができる。
【0062】
さらに、警報の発生/停止は、カウンタCNTにおけるカウント値Cが警報発生しきい値N1 または警報停止しきい値N2 に達したときにのみ行うようにしている。したがって、突発的なノイズの影響を吸収し、誤警報の発生を未然に防止することができる。そのため、ドライバに対する警報の信頼性の向上を図ることができる。
【0063】
なお、この第1実施形態では、下位正常数値領域および下位空気圧低下数値領域をそれぞれ2つずつ設定した場合について説明しているが、たとえば上記下位正常数値領域および下位空気圧低下数値領域は任意の数だけ設定してもよい。この場合、カウンタCNTでカウントすべき計数幅は次のようにすればよい。すなわち、下位正常数値領域の場合、判定値Dの絶対値が小さい下位正常数値領域ほど大きくする。下位空気圧低下数値領域の場合、判定値Dの絶対値が大きい下位空気圧低下数値領域ほど大きくする。
【0064】
また、この第1実施形態では、カウンタCNTはタイヤWi の空気圧が正常内圧であると判別された場合にはデクリメント、その反対の空気圧が低下しているタイヤWi あると判別された場合にはインクリメントするようにしているが、たとえばデクリメントおよびインクリメントは逆にしてもよい。この場合、たとえばN1 を警報停止しきい値とし、N2 を警報発生しきい値とすればよい。
〈第2実施形態〉
図8は、この発明の第2実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。なお、この図8の説明では、上記図4および図5も必要に応じて参照する。また、この第2実施形態における警報発生/停止処理もソフトウエア処理で実現される。
【0065】
車両の走行時において、各タイヤWi の回転角速度Fi が算出されると(ステップN1)、この算出された回転角速度Fi に基づき、上記(1) 式により判定値Dが求められる(ステップN2)。次いで、この求められた判定値Dの絶対値と基準しきい値DTH0 との差分値ΔDが算出される(ステップN3)。具体的には、
ΔD=|D|−DTH0 ‥‥(5)
のように判定値Dの絶対値Dから基準しきい値DTH0 が差し引かれて、差分値ΔDが算出される。
【0066】
当該差分値ΔDは、タイヤWi の空気圧の状況に依存する。具体的には、差分値ΔDは、タイヤWi の空気圧が正常内圧に近いほど大きな負の値となり、タイヤWi の空気圧が大きく低下するほど大きな正の値となる。これについて図9を参照してさらに具体的に説明する。
判定値Dは、上記第1実施形態でも説明したように、タイヤWi の空気圧が大きく低下するほど大きな正または負の値となる。したがって、判定値Dの絶対値は、図9(a) に示すように、タイヤWi の空気圧が大きく低下するほど大きな値となり、タイヤWi の空気圧が正常内圧に近いほど小さな値となる。
【0067】
そこで、基準しきい値DTH0 を適当な値に設定し、判定値Dの絶対値から基準しきい値DTH0 を差し引けば、差分値ΔDは、図9(b) に示すようになる。すなわち、タイヤWi の空気圧が正常内圧に近いほど大きな負の値となり、タイヤWi の空気圧が大きく低下するほど大きな正の値となる。
図8に戻って、差分値ΔDが算出されると、当該差分値ΔDが累和される(ステップN4)。具体的には、従前までの累和結果をXp 、新たな累和結果をXとすると、
X=Xp +ΔD ‥‥(6)
が求められる。以下では、この新たな累和結果Xを警報判定値という。この警報判定値Xは、上記第1実施形態におけるカウント値と同様に、上限値L1 と定常値L2 との間の範囲内の値のみを採り得る。
【0068】
警報判定値Xが求められると、当該警報判定値Xが警報発生しきい値N1 以上であるか否かが判別される(ステップN5)。その結果、警報判定値Xが警報発生しきい値N1 以上であると判別されると、警報が発生される(ステップN6)。
一方、警報判定値Xが警報発生しきい値N1 未満であると判別されると、続いて警報停止しきい値N2 以下であるか否かが判別される(ステップN7)。その結果、警報判定値Xが警報停止しきい値N2 以下であると判別されると、警報発生が停止される。一方、警報判定値Xが警報停止しきい値N2 以上であれば、そのままの状態が継続される。
【0069】
ここで、タイヤWi の空気圧が正常内圧に近い場合(図9(a) の領域A。)、求められる差分値ΔDは大きな負の値である(図9(b) 参照。)。一方、警報判定値Xは上限値L1 と定常値L2 との間の範囲内の値のみを採る。したがって、上述の場合、警報判定値Xは定常値L2 に落ち着いている(図9(c) の領域A。)。
【0070】
この状態において、タイヤWi の空気圧が低下し始めると、判定値Dの絶対値は図9(a) に示すように増加し、やがて基準しきい値DTH0 以上となる(点a)。これに伴い、差分値ΔDも図9(b) に示すように正の方向に増加し、判定値Dの絶対値が基準しきい値DTH0 以上となったことに応答して正の値に転ずる(点a′)。このとき、警報判定値Xは、図9(c) に示すように、定常値L2 をスタート値として正の方向に増加し始める(点a′′)。
【0071】
その後、警報判定値Xは、差分値ΔDの値に応じて変化する。すなわち、差分値ΔDが正の値であれば増加し、負の値であれば減少する。一方、警報判定値Xは、上述のように、差分値ΔDが大きな正の値になるほど正の方向に大きく増加する。差分値ΔDが大きな正の値を採る場合とは、上述のように、タイヤWi の空気圧が大きく低下する場合である。
【0072】
したがって、タイヤWi の空気圧が大きく低下している場合には、たとえ領域Bのように突発的に差分値ΔDが負の値となったとしても、その影響はあまり大きくない。そのため、警報判定値Xは、タイヤWi の空気圧が大きく低下するほど速く警報発生しきい値N1 に達する。よって、タイヤWi がパンクして空気圧が大きく低下した場合等には、警報を迅速に発生させることができる。
【0073】
一方、タイヤWi の空気圧は低下していないのに車両の走行状態や路面状態によって判定値Dの絶対値が基準しきい値DTH0 以上として求められる場合がある(図10(a) の領域C。)。このような場合、差分値ΔDは大きな正の値として求められる(図10(b) の領域C′)。その結果、警報判定値Xは警報発生しきい値N1 に達し(図10(c) の領域C′′)、警報が発生されることになる。
【0074】
しかし、この警報は誤警報なので迅速に停止させる必要がある。一方、タイヤWi の空気圧は実際には低下していないので、そのうち判定値Dの絶対値は基準しきい値DTH0 未満まで減少し、零近傍を推移する(図10(a) の領域D。)。その結果、差分値ΔDは大きな負の値として求められる(図10(b) の領域D′)。したがって、警報判定値Xは減少し、警報停止しきい値N2 に達する(図10(c) の領域D′′)。そのため、誤警報を迅速に停止させることができる。
【0075】
なお、上記説明では、警報判定値Xを単に差分値ΔDを累積した値としているが、たとえば差分値ΔDの所定時間の平均値の累積値を警報判定値Xとして求めるようにしてもよい。この構成によれば、差分値ΔDが突発的に大きくなったとしても、それ以後に警報判定値Xに与える影響を最小限に抑えることができる。
〈第3実施形態〉
図11は、この発明の第3実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。なお、この図11における説明では、図4および図5を必要に応じて参照する。また、この第3実施形態における警報発生/停止処理もソフトウエア処理で実現される。
【0076】
車両の走行時において、各タイヤWi の回転角速度Fi が算出されると(ステップP1)、カウンタCNT1 のカウント値がインクリメントされる(ステップP2)。カウンタCNT1 は、予め設定されているサンプリング周期ΔTの複数倍に相当する監視期間T1 (たとえばT1 =25(sec) )を計測するためのもので、ステップP13において予めクリアされている。
【0077】
その後、上記算出された回転角速度Fi に基づき、上記(1) 式により判定値Dが求められ(ステップP3)、この求められた判定値Dが上記第1実施形態で説明した(2) 式を満足するか否かが判別される(ステップP4)。この結果、判定値Dは上記(2) 式を満足しないと判別されると、空気圧が低下しているタイヤWi があると判断され、その空気圧低下の程度を認識するため、判定値Dが上記第1実施形態で説明した(3) 式を満足するか否かが判別される(ステップP5)。
【0078】
この結果、判定値Dは上記(3) 式を満足していると判別されると、空気圧低下の程度は相対的に小さいと判断され、カウンタCNT2 のカウント値が所定数n1 だけインクリメントされる(ステップP6)。カウンタCNT2 は、空気圧が低下しているタイヤWi があると判別された回数を計数するためのもので、ステップP13において予めクリアされている。
【0079】
一方、上記ステップP5での判別の結果、判定値Dが上記(3) 式を満足していないと判別されると、空気圧低下の程度は相対的に大きいと判断され、後述する警報発生をより迅速に行わせるため、カウンタCNT2 のカウント値が所定数n2 だけインクリメントされる(ステップP7)。
その後、上記監視期間T1 が経過したか否か、すなわちカウンタCNT1 のカウント値C1 が予め設定された監視期間終了値M1 (たとえばM1 =10)に達したか否かが判別される(ステップP8)。その結果、カウント値C1 が監視期間終了値M1 に達していないと判別されると、上記動作が再度繰り返される。
【0080】
一方、上記ステップP4での判別の結果、判定値Dは上記(3) 式を満足しないと判別されると、カウンタCNT2 のインクリメント動作は行わせず、直接ステップP8に移行する。
上記ステップP8での判別の結果、カウント値C1 が監視期間終了値M1 に達したと判別されると、監視期間終了値M1 に対するカウンタCNT2 のカウント値C2 の比率α(α=C2 /M1 )が求められる。そして、この比率αが予め定める警報発生しきい値α1 (たとえばα1 =0.8 )以上であるか否かが判別される(ステップP9)。
【0081】
その結果、比率αが警報発生しきい値α1 以上であると判別されると、表示器3で警報が発生される(ステップP10)。一方、比率αが警報発生しきい値α1 未満であると判別されると、比率αは予め設定された上記警報停止しきい値α1 よりも小さい警報停止しきい値α2 (たとえばα2 =0.2 )未満であるか否かが判別される(ステップP11)。この結果、比率αが警報停止しきい値α2 未満であると判別されると、警報が発生している場合には、その警報が停止される(ステップP12)。一方、比率αが警報停止しきい値α2 以上であると判別されると、カウンタCNT1 ,CNT2 がクリアされた後(ステップP13)、それまでの状態が持続される。
【0082】
以上のようにこの第3実施形態によれば、空気圧低下の程度が相対的に大きい場合には、空気圧低下の程度が相対的に小さい場合に比べて、カウンタCNT2 において増加すべき計数幅を大きくしている。したがって、空気圧低下の程度が大きいほど迅速に警報を発生できる。
また、タイヤWi がほぼ完全に正常内圧である場合には、タイヤWi の空気圧が許容範囲内で低下している場合に比べて、カウンタCNT2 において増加すべき計数幅を大きくしている。したがって、タイヤは正常内圧であるほど迅速に警報を停止できる。
〈他の実施形態〉
この発明の実施の形態の説明は以上のとおりであるが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば上記各実施形態では、表示器3によって警報を発生しているが、たとえばスピーカ等から合成音声や各タイヤWi 固有に与えられている音を発生させて警報を発生するようにしてもよい。また、ブザー音等で単に空気圧が低下しているタイヤWi があることだけを示す警報を発生するようにしてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、警報発生/停止処理をソフトウエア処理にて実現しているが、たとえばハードウエア処理によって実現するようにしてもよい。
さらに、上記各実施形態では、上限値L1 と警報発生しきい値N1 とを、および定常値L2 と警報停止しきい値N2 とを、それぞれ同じ値に設定した場合について説明しているが、これら各値L1 ,N1 ,L2 ,N2 は、L1 ≧N1 >N2 ≧L2 の関係を満たしていればよい。
【0084】
その他、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内で種々の設計変更を施すことは可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、警報の発生/停止に必要な計数値は、タイヤの空気圧低下の程度が大きくなるほど大きな計数幅で更新される。したがって、計数手段の計数値はタイヤの空気圧低下の程度が相対的に大きくなるほど速く警報発生しきい値に達する。そのため、タイヤの空気圧低下の程度が相対的に大きいほど速く警報を発生させることができる。
【0086】
また、請求項2記載の発明によれば、計数値は、タイヤの空気圧が正常内圧に近いほど大きな計数幅で更新されるので、タイヤの空気圧が正常内圧に近いほど速く警報を停止させることができる。そのため、たとえ誤警報が発生していても、その誤警報を迅速に停止させることができる。
【0087】
また、請求項3記載の発明によれば、低下回数計数手段での計数幅はタイヤの空気圧低下の程度が大きくなるほど大きくなるので、タイヤの空気圧低下の程度が大きくなるほど迅速に警報を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置におけるカウンタの計数値の推移を説明するための図である。
【図2】上記タイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理の一部である空気圧低下カウント処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】上記タイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理の一部である正常内圧カウント処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】上記タイヤ空気圧低下検出装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】上記タイヤ空気圧低下検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】上記タイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】判定値が属すべき数値領域の具体例を説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明の第2実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】この第2実施形態において、タイヤの空気圧が低下している場合の判定値,差分値および警報判定値の推移を示すグラフである。
【図10】この第2実施形態において、タイヤの空気圧が正常内圧である場合であって誤警報が発生される場合の判定値,差分値および警報判定値の推移を示すグラフである。
【図11】この発明の第3実施形態が適用されたタイヤ空気圧低下検出装置における警報発生/停止処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来の警報発生/停止処理を説明するための図である。
【符号の説明】
1 車輪速センサ
2 制御ユニット
2a I/Oインターフェイス
2b CPU
2c ROM
2d RAM
3 表示器
CNT,CNT1 ,CNT2 カウンタ
Claims (3)
- 車両に備えられているタイヤの回転角速度を検出するための回転角速度検出手段と、
この回転角速度検出手段で検出された回転角速度に基づいて判定値を算出するための判定値算出手段と、
この判定値算出手段で算出された判定値の絶対値が予め定める基準値以上であるか否かに基づいてタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定するための空気圧低下判定手段と、
上記判定値算出手段で算出された判定値が、判定値の絶対値が上記基準しきい値未満となる範囲に設定された正常数値領域、および判定値の絶対値が上記基準しきい値以上となる範囲に設定された複数の空気圧低下数値領域を含む複数の数値領域のうちいずれの数値領域に属するのかを特定するための数値領域特定手段と、
計数値を保有し、上記空気圧低下判定手段での判定結果に応じて互いに逆方向に累和されていくように、上記計数値を上記数値領域特定手段で特定された数値領域に応じた計数幅で更新するとともに、上記計数値が、タイヤの空気圧が低下していないと判定される場合に累和されるべき方向(以下「正常時累和方向」という。)、およびタイヤの空気圧が低下していると判定される場合に累和されるべき方向(以下「低下時累和方向」という。)にそれぞれ設定された定常値および上限値に達すると、それ以上の更新を禁止する計数手段と、
この計数手段が保有している計数値が上記低下時累和方向に設定された警報発生しきい値に達すると警報を発生させ、上記計数手段が保有している計数値が上記正常時累和方向に設定された警報停止しきい値に達すると警報を停止させる警報発生/停止手段とを含み、
上記計数手段は、判定値の絶対値が大きい空気圧低下数値領域ほど計数幅を大きくして計数値の更新動作を実行するものであることを特徴とするタイヤ空気圧低下検出装置。 - 上記正常数値領域は、複数の下位正常数値領域に分割されており、
上記計数手段は、判定値の絶対値が小さい下位正常数値領域ほど計数幅を大きくして計数値の更新動作を実行するものであることを特徴とする請求項1記載のタイヤ空気圧低下検出装置。 - 車両に備えられているタイヤの回転角速度を検出するための回転角速度検出手段と、
この回転角速度検出手段で検出された回転角速度に基づいて判定値を算出するための判定値算出手段と、
この判定値算出手段で算出された判定値が予め定める基準しきい値以上であるか否かに基づいてタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定するための空気圧低下判定手段と、
上記判定値算出手段で算出された判定値が、判定値の絶対値が上記基準しきい値未満となる範囲に設定された正常数値領域、および判定値の絶対値が基準しきい値以上となる範囲に設定された複数の空気圧低下数値領域を含む複数の数値領域のうちいずれの数値領域に属するのかを特定するための数値領域特定手段と、
上記空気圧低下判定手段による判定回数を計数するための判定回数計数手段と、上記空気圧低下判定手段によりタイヤの空気圧が低下していると判定された回数を、上記数値領域特定手段で特定された数値領域に応じた計数幅で計数するための低下回数計数手段と、
この低下回数計数手段の計数値を記憶するための記憶手段と、
上記判定回数計数手段で計数されている回数が予め定める回数に達すると、上記記憶手段に記憶されている計数値が予め定める第1の回数以上、またはこの第1の回数よりも少ない予め定める第2の回数未満であるか否かを判別する回数判別手段と、
この回数判別手段での判別の結果、上記計数値が上記第1の回数以上であると判別されると警報を発生させるとともに、上記計数値が上記第2の回数未満であると判別されると警報を停止させる警報発生/停止手段とを含み、
上記低下回数計数手段は、判定値の絶対値が大きい空気圧低下数値領域ほど大きな計数幅でタイヤの空気圧が低下した回数を計数するものであることを特徴とするタイヤ空気圧低下検出装置。
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