JP3622583B2 - オーバーへッドカムシャフト式エンジン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオーバーへッドカムシャフト式エンジンの構造、特に、シリンダヘッドに枢着されるカムシャフトの端部に結合されるカムギアを覆うようにシリンダヘッドに取付けられるギアケースの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のオーバーへッドカムシャフト式のエンジンはクランク軸とカムシャフトを同期回転させるため、ギア列等からなる回転伝達系を備え、これを収容するための空間を必要としている。通常、比較的大型のエンジンの場合、シリンダヘッドやシリンダプロックに直接ギア列の収納空間を形成することはこれらシリンダヘッドやシリンダプロックの更なる大型化を招き得策ではない。そこで、シリンダヘッドやシリンダプロックの長手方向の側端壁に横断面が略チャンネル形状を成すギアケースを一体的に結合してその間にギア列の収納空間を確保するのが一般的である。ところで、シリンダヘッドに枢支されるカムシャフト及びカムギアがシリンダヘッドの長手方向中心軸線に対しその直交する幅方向にオフセットして配置されるエンジンでは、カムシャフトの端部のカムギアもシリンダヘッドの側壁よりシリンダヘッドの長手方向と直交する幅方向に突出すこととなる。この場合、カムギアを収容するギアケースも同横方向に突き出し、シリンダヘッドと対抗する部位の横方向端部がシリンダヘッドの側端壁より突出すこととなり、この際両者の間に生じることとなる隙間を閉鎖する必要が有り、通常はシリンダヘッドの側端壁より突出し部を突出し形成している。
【0003】
例えば、図4に示すシリンダヘッド100はその外側壁101にギアケース102を図示しないボルトで締め付け結合している。外側壁101は幅方向Yのオフセット側に突出し部103を形成し、ギアケース102は幅方向Yに膨出部104を形成し、その膨出部104の端縁を突出し部103に重ね、同部を図示しないボルトで締め付け結合している。この場合、幅方向Yに膨出するカムギアGが膨出部104と隙間を介し対抗でき、カムギアGとギアケース102側との干渉を確実に防止できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリンダヘッド100側に突出し部103を形成することで、ギアケース102の膨出部104がシリンダヘッド100の外側壁101側より外れることで生じる隙間を閉鎖できるが、このような突出し部103がシリンダヘッド100に突設された場合、シリンダヘッド100の製作時における加工性が低下し、コスト増を招く。
【0005】
即ち、通常、シリンダヘッド100の複数の面はフライス盤やNC旋盤により面加工されるが、これら研削機にシリンダヘッド100を加工に先立ちセットする場合、突出し部103が邪魔となって加工台への取付け作業に手間取る。あるいは、シリンダヘッド100の搬送時に、突出し部103が邪魔となり、従来の搬送ラインをそのまま使用できない場合もあり、このため、シリンダヘッド100より突出し部103を排除することが望まれていた。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮し、シリンダヘッドの側端壁より同シリンダヘッドの長手方向と直交する幅方向にギアケース側の膨出部と重なるように突出した突出し部を排除できるオーバヘッドカムシャフト式エンジンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、カムシャフトの長手方向中心軸線がシリンダヘッドの長手方向中心軸線に対しシリンダへッドの幅方向にオフセットされているオーバーへッドカムシャフト式エンジンであって、上記カムシャフトの端部に装着されるカムシャフト駆動用カムギアを備え、同カムシャフト駆動用カムギアがシリンダヘッドの長手方向外端面の外方に配設され、その一部がシリンダヘッドの幅方向一側部より突出し、さらに、主部と膨出部とフランジ部を有するギヤケースを備え、ここで、主部は複数箇所が上記シリンダヘッドの上記長手方向外端面に締結され同長手方向外端面との間にカムギア収納空間を形成する水平断面がコ字状を成すものであり、膨出部は主部から延び上記カムシャフト駆動用カムギアの上記シリンダヘッド一側部より突出した部位を覆って上記カムギア収納空間の延長部を形成し、フランジ部は膨出部から延びて上記シリンダヘッドの一側部である長手方向外端面に締結されるように形成されている。
【0008】
このように、主部と、同主部から延びカムシャフト駆動用カムギアのシリンダヘッド一側部より突出した部位を覆ってカムギア収納空間の延長部を形成する膨出部とその膨出部より内側に屈曲するフランジ部を備えるので、膨出部がシリンダヘッドの外端面より外れたとしても,フランジ部がシリンダヘッドの一側部に装着され、膨出部とシリンダヘッドの一側部との間を確実に閉鎖できる。
【0009】
このため、カムシャフトやカムギアがシリンダヘッドの長手方向中心軸線に対し幅方向にオフセットして配置されるエンジンであっても、シリンダヘッド側に突出し部を形成する必要が無く、これを排除でき、シリンダヘッドの製作時における加工性の低下を防止でき、コスト低減を図れる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1乃至図3には本発明のオーバヘッドカムシャフト式のエンジン2を示した。このエンジン2のエンジン本体部分は下部に図示しないオイルパンを結合するシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上側に結合されるシリンダヘッド4(図3参照)と、その上のロッカケース5及びロッカカバー6と、シリンダブロック3の長手方向端部の外側壁301にプレート8を介し締め付け結合されるハウジング9(図3参照)と、シリンダヘッド4の外端面を形成する外側壁401に結合されるギアケース1とを備える。
【0011】
シリンダブロック3は下部がクランク軸7を枢支するクランクケース部として形成され、上部が長手方向Xに直列状に複数の気筒C(図2参照)を順次形成した矩形ブロック状部を成す。図3に示すように、シリンダブロック3の一側端はクランク軸7を外側壁301より突出し、同突出し部にクランクギア11及びフライホイール12を一体的に取り付け、同フライホイールは図示しない駆動力伝達系に連結される。
【0012】
カムシャフト13はその長手方向中心軸線L1が各気筒の動弁系の構造上、シリンダヘッド4の長手方向Xの中心軸線L(図2参照)と直交する幅方向Yに所定量αだけオフセットして配置される。同様にカムシャフト13の端部に一体結合されたカムギア15も幅方向Yにオフセットされ、シリンダヘッド4の外側壁401と隙間tを有して対設されている。
【0013】
カムギア15は図示しない複数のアイドラギアから成るカムギア列Gを介しクランクギア11に噛み合い連結される。このカムギア列Gはカムギア収納空間Eに配備され、このカムギア収納空間Eはシリンダブロック3とハウジング9の間、シリンダヘッド4とギアケース1の間、ロッカケース5及びロッカカバー6の内部空間の端部とに亘り連続して形成される。
ハウジング9は、シリンダブロック3に結合されたプレート8に重なり、同プレート8とともにシリンダブロック3の外側壁301に図示しないボルトにより締め付け結合される。なお、ハウジング9はその上部901のみがコ字状の略チャンネル形状の水平断面に形成され、ギアケース1の下端部と密接可能に形成される。
【0014】
図2に示すように、ギアケース1は、水平断面がコ字状の略チャンネル形状を成す主部101と、主部101より幅方向Yのカムシャフト配置側(図2において上側)に膨出する膨出部102と、膨出部102よりシリンダヘッド4の内側(図2において下側)に屈曲するフランジ部103を備える。主部101はその複数箇所がボルト16によりシリンダヘッド4の外側壁401に締め付け結合される。主部101の下端部aはハウジング9の上部901と重なり、連続した形状に形成され、互いは密接し、ボルト16’で締め付け結合される。
【0015】
主部101の幅方向Yにおいてカムシャフト配置側に主部101の一側部を膨出させた形状の膨出部102が形成される。膨出部102は下部aより上部bに向かうに従い膨出量、即ち、幅方向Yのカムシャフト配置側(図1で右側)への突出量が増すように形成される。この膨出部102の端部はシリンダヘッド4の外側壁401より外れるが、同膨出部102の端部は更にシリンダヘッド4の内側方向(図2において下側)に向け屈曲してフランジ部103を延出形成する。
【0016】
フランジ部103はシリンダヘッド4の外側壁401へ所定の幅で重なる取付面fを形成され、しかも、取付面f上にボルト穴hを形成する。このボルト穴hは外側壁401に形成される図示しないねじ穴と対抗しており、ボルト16により締め付け結合される。これにより、ギアケース1の膨出部102が幅方向Yのカムシャフト配置側に向けて膨出するように形成され、フランジ部103が、膨出部102と外側壁401の間を閉鎖できる。ここでは、主部101と膨出部102とフランジ部103から成るギアケース1を外側壁401にボルト止めすることで、これらの間にカムシャフト配置側に向けて膨出するカムギア収納空間Eを確保できる。特に、ここではカムギア収納空間Eの延長部を形成でき、カムギア15がその一部をシリンダヘッド4の一側壁面より突出し、外側壁401より外れているにもかかわらず同部位を膨出部102とフランジ部103とで覆うことができる。なお、ギアケース1の上部bは主部101と膨出部102とフランジ部103とが連続して形成され、ここにロッカケース5の一側端の下端部が密接可能に形成される。尚、ロッカケース5はアッパケース502とロアケース501とにより分割可能に構成され、アッパケース502とロアケース501とが共働してカムシャフト13の軸受を形成している。
【0017】
ロッカケース5はシリンダヘッド4上部に加え、ギアケース1の上部b側をも含む全周部eに当接する枠状体として形成され、複数箇所がシリンダヘッド4及びギアケース1にボルトで締め付け結合される。ロッカカバー6は枠状体であるアッパケース502の上方開口の全周縁部に当接する蓋状体であり、複数箇所がアッパケース502にボルトで締め付け結合される。
【0018】
なお、これらロッカケース5及びロッカカバー6はギアケース1の膨出部102の上方対抗位置に膨出部501’、601’が形成されている。以上説明したようなギアケース構造を採用することにより従来のシリンダヘッドのような突出し部(図4中の符号104参照)を形成する必要がなくなる。このため、突出し部のないシリンダヘッド4はその研削機による面加工作業及び加工台へのセット作業が容易化され、しかも、搬送作業が容易化され、低コスト化に寄与できる。
【0019】
上述のギアケース1は膨出部102を幅方向Yのカムシャフト配置側にのみ膨出していたが、DOHCオーバーへッドカムシャフト式のエンジン(図示せず)である場合には、シリンダヘッドの長手方向中心軸線Lに対し幅方向Yの両側にそれぞれオフセットして配置されるカムギアとの干渉を避けるべく、ギアケースの両側にそれぞれ膨出部を膨出するように構成してもよく、この場合も図1のオーバーへッドカムシャフト式エンジンと同様の作用効果が得られる。
【0020】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、膨出部がシリンダヘッドの一側部より外れたとしても,フランジ部がシリンダヘッドの一側部である外端面に装着され、膨出部とシリンダヘッドの一側部の外端面との間を確実に閉鎖できる。
【0021】
このため、オーバーへッドカムシャフト式エンジンのようなカムシャフトやカムギアがシリンダヘッドの長手方向中心軸線に対し幅方向にオフセットして配置されるエンジンであってもシリンダヘッド側に突出し部を形成する必要が無く、これを排除でき、シリンダヘッドの製作時における加工性の低下を防止でき、コスト低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオーバーへッドカムシャフト式エンジンが適用されたギアケースを有するエンジンの要部切欠側面図である。
【図2】図1のエンジンが用いるシリンダヘッドの要部切欠平面図である。
【図3】図1のエンジンの要部切欠概略側面図である。
【図4】従来のシリンダヘッド及びそれに結合されるギアケースの平面図である。
【符号の説明】
1 ギアケース
101 主部
102 膨出部
103 フランジ部
2 エンジン
3 シリンダブロック
301 外側壁
4 シリンダヘッド
401 外側壁(長手方向外端面)
13 カムシャフト
15 カムギア
E カムギア収納空間
L シリンダヘッドの長手方向中心軸線
L1 カムシャフトの長手方向中心軸線

Claims (1)

  1. カムシャフトの長手方向中心軸線がシリンダヘッドの長手方向中心軸線に対しシリンダヘッドの幅方向にオフセットされているオーバーヘッドカムシャフト式エンジンにおいて、
    上記カムシャフトの端部に装着され、シリンダヘッドの長手方向外端面の外方に配設され、一部がシリンダヘッドの幅方向一側部より突出したカムシャフト駆動用カムギアと、
    複数箇所が上記シリンダヘッドの上記長手方向外端面に締結され同長手方向外端面との間にカムギア収納空間を形成する水平断面がコ字状の主部と、同主部から延び上記カムシャフト駆動用カムギアの上記シリンダヘッド一側部より突出した部位を覆って上記カムギア収納空間の延長部を形成する膨出部と、この膨出部から延びて上記シリンダヘッドの一側部に締結されるフランジ部とを有するギヤケースを備えることを特徴とするオーバヘッドカムシャフト式エンジン。
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