JP3622437B2 - 連続鋳造用鋳型およびそれを用いた連続鋳造方法 - Google Patents

連続鋳造用鋳型およびそれを用いた連続鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融金属(以下、「溶湯」という)を連続的に鋳造凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型およびそれを用いた連続鋳造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造における凝固シェルの緩冷却化および鋳型の寿命延長を目的として、溶湯と接する表面に金属酸化物を溶射した鋳型およびその鋳型を使用した鋳造方法の開発が進められている。
【0003】
これらのうち、凝固シェルの緩冷却化が目的としているのは、熱抵抗の大きい金属酸化物から構成される溶射層を鋳型表面に施すことによって、鋳型の抜熱速度を低減し、凝固シェル(鋳片)を緩冷却することである。これによって、凝固シェルに熱変形が生じにくくなり、均一な厚さの凝固シェルが形成され易くなる。その結果、鋳片の表面は割れや凹み等の欠陥が著しく低減し、良好な品質の鋳片が得られる。
【0004】
一方、鋳型の寿命延長に関しては、金属酸化物を溶射して鋳型を被覆することによって、鋳型の耐久性を向上させることを目的としている。通常、鋳型の母材として使用されている銅合金や炭素鋼は硬度が小さいため、鋳型として用いる際には、その表面を耐熱性に優れた金属(Ni,Cr等)でメッキしている。しかし、このような金属をメッキした鋳型は、摩耗したり損傷することによって鋳片の表面品質に悪影響を及ぼすことから、長時間の操業には使用することができない。そのため、鋳型の寿命延長を図るため、硬度が大きく、耐熱性に優れた金属酸化物で薄膜を形成して鋳型を被覆し、その耐久性を向上させている。
【0005】
鋳造中の鋳型表面は、鋳造条件によって異なるが、100〜500℃の高温になる。また、被覆された鋳型表面の金属酸化物層は、鋳型母材の銅合金や炭素鋼と比べて熱膨張率が小さい。このため、鋳造中の鋳型表面では、熱膨張率の差に応じて膨張量の絶対値に大きな差が生じて、溶射された金属酸化物層に割れが発生して剥離し易くなる。このような剥離を防ぐため、通常、熱膨張率の差を小さくするような中間層(下地)を金属酸化物層と鋳型母材の間に設けている。例えば、中間層として、鋳型表面にNi等のメッキ加工またはNi−Cr、Ni、CrまたはMo等の溶射加工が施される。
【0006】
上述の通り、鋳型表面に溶射加工によって金属酸化物層を設けることは、凝固シェルの緩冷却化および鋳型の寿命延長に有効であることから、従来から各種の連続鋳造方法において、溶射によって金属酸化物層で被覆した鋳造用鋳型やこれを用いる鋳造方法が提案されている。
【0007】
例えば、鋳型が振動(オシレーション)して鋳片と同期して移動しない連続鋳造法(以下、単に「CC法」という)において、鋳型表面に高温での硬度が大きく、母材と熱膨張率がほぼ等しい金属を接合させた後、硬質金属、サーメットやセラミックスを溶射施工して、耐摩耗性に優れ、安価に製作でき、しかも再生が容易な鋳型が提案されている(特開昭61−289948号公報参照)。
【0008】
図1〜図3は連続鋳造方法のうちストッリプキャスティング法の概念を説明する図であり、回転するロール1を鋳型として用い、溶湯5から厚さ数mmの薄鋳片2を連続して製造する鋳造法を示している。このストッリプキャスティング法(以下、単に「SC法」という)において、ロール表面に厚さ151μm〜5mmの金属酸化物または窒化物の溶射被膜を施すことによって、凝固シェルを緩冷却で鋳造することを可能にして、均一な凝固シェルを形成させてポロシティの発生を抑制するとともに、内部欠陥のない薄鋳片の製造に対応した鋳造ロールが提案されている(特公平5−23858号公報参照)。ここでは、鋳造ロールに施される溶射材料として、低熱伝導率材である、ZrO、AlおよびCrから選ばれる金属酸化物またはBN、Siから選ばれる金属窒化物が示されている。さらに、前述の中間層として、適度の熱膨張係数を持つ合金等を設けることが記載されている。
【0009】
図4、図5は、連続鋳造方法のうち薄スラブ連続鋳造法の概念を説明する図である。薄スラブ連続鋳造法(以下、単に「TSC法」という)は、背面を冷却されて回転する一対の薄鋼板製無端ベルト3、あるいはキャタピラのように回転移動する冷却ブロック4を鋳型として使用し、溶湯5から厚さ数十mmの薄鋳片2を連続して製造する連続鋳造法である。このTSC法においては、ベルト表面に耐火性セラミックスを溶射施工することによって、溶湯によるベルトへの熱負荷を軽減するとともに、ベルトの変形や損傷を防止し、鋳片の割れや凹み等の欠陥を低減できる無端ベルトが提案されている(特開昭59−174254号公報参照)。ここでは、無端ベルトに溶射されるセラミックスとして、低熱伝導率材料であるZrO、Al、BN、Si等が開示され、また、中間層として、Cr、Mo、Ni等の非鉄金属材を溶射若しくはメッキで施工されたものが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
鋳型表面に施工される溶射材料には、上述の通り、凝固シェルの緩冷却化の観点から、例えば、ZrO、Al、Cr等の低熱伝導率材である金属酸化物が使用されている。これらの酸化物は耐熱性や溶湯との耐溶損性に優れ、また、高硬度で耐摩耗性にも優れている。このため、鋳片との摺動や溶湯との接触によっても溶射表面に傷がつきにくく、溶射された金属酸化物層は耐摩耗性にも優れ薄肉化しにくいので、これらの金属酸化物を溶射した鋳造鋳型は、所定の長時間の連続操業に耐えられる。さらに、鋳造作業の効率操業の要請に応じて、連続鋳造用鋳型の一層の長寿命化を図るには、金属酸化物の溶射層の剥離防止を施さなければならない。
【0011】
従来の金属酸化物層の剥離防止については、鋳型材質との熱膨張率の差を考慮した中間層を施工しているだけであり、中間層が鋳型に付着している力、言い換えると中間層の密着力については十分な考慮がなされていない。すなわち、鋳型表面に溶射された金属酸化物層には、熱膨張量の差による応力以外に、高温の鋳片と接触して摺動する力や、双ロール方式を採用するSC法の場合には2個のロール間で鋳片を圧下する力が加わる。このため、鋳型表面に溶射された金属酸化物層が鋳片の表面に付着して剥離するという現象が多発する。この剥離した部分を切断して断面を詳細に観察すると、中間層と金属酸化物あるいは中間層と母材との界面、または中間層として2層施工した場合には、第一中間層と第二中間層の界面で剥離していることが分かる。
【0012】
このように、金属酸化物層の剥離が発生すると、金属酸化物層の剥離部分に対応して、鋳片の表面形状は凸状になる。鋳片のうち凸状になった部分では緩冷却が行われず、凝固時の冷却が速くなり、鋳片に表面割れやポロシティ等の欠陥が発生する。さらに、前述のCC法のように、鋳片と鋳型が常に摺動している場合には、この剥離部によって摩擦抵抗が大きくなり、凝固シェルが破損して一部溶湯が漏れ二重肌の鋳片欠陥を生じたり、時にはブレークアウトして操業を中断する場合もある。
【0013】
このように、従来の金属酸化物を溶射した鋳型では、金属酸化物層の一部が剥離するため、鋳片表面に割れ等の欠陥が生じたり、ブレークアウト等の操業トラブルが生じて、溶射施工によって本来目的としていた鋳片品質の向上や鋳型寿命の延長という効果を十分に得ることができなかった。このため、金属酸化物層の一部剥離を防止できるように溶射層の密着力を向上させる対策が提案された。
【0014】
まず、特開昭61−289948号公報においては、鋳型表面に高温での硬度が大きく、Cu系の母材と熱膨張率がほぼ等しい金属を拡散溶接法または爆着法で接合させた後、接合金属の上に硬質金属、サーメットまたはセラミックスを溶射施工した鋳造鋳型が提案されている。しかし、この鋳造鋳型を製造する方法では、ロールやベルト、円筒鋳型等、大きな鋳型や形状の複雑な鋳型に適用することは困難である。また、接合金属を拡散溶接法や爆着法で接合するため、施工上、中間層となる金属の厚さが1mm以上必要になり、この部分の熱抵抗が大きくなる。このため、溶射層と中間層との界面の温度が上がり過ぎて、熱応力で中間層が割れるおそれがある。一方、中間層が厚くなりすぎると、鋳片は冷却されにくくなり、十分な厚さの凝固シェルが形成されない等の問題が発生する。
【0015】
さらに、溶射層の密着力を向上させる方策として、サーメットを鋳型表面に溶射することが検討されている。例えば、特開平1−273652号公報では厚さ20〜500μmのサーメット層を形成したロールが、特開昭59−163056号公報ではCrC基やWC基のサーメットを爆発式溶射法で施工したロールが提案されている。これらは、金属酸化物層の場合に比べ、ロールの耐久性を向上させ溶射層の剥離を防止して、ロール欠陥に起因する鋳片欠陥を低減することが予想される。
【0016】
しかしながら、サーメットとは、金属酸化物(ZrO、Al、Cr等)、炭化物(WC、CrC、TiC、SiC等)または窒化物(Si等)と金属(Ni、Cr、Ni−Cr等)との混合物であり、金属を比較的多く含有するものである。このため、熱伝導率が金属酸化物に比べて大きく、鋳片を緩冷却するため必要な熱抵抗層が十分に確保できない。したがって、上記のようにサーメットを鋳型表面に溶射する方法では、溶射層そのものの剥離は低減できるものの、鋳片を緩冷却できないため、鋳片に表面割れが発生して十分な品質が得られない。また、鋳型表面は高温度の溶湯と接するため、金属を多く含んでいるサーメットは、耐熱性、耐久性の面で金属酸化物より劣るという問題もある。
【0017】
本発明は、従来から提案されている鋳造鋳型の問題点に鑑み、操業中に鋳型表面に溶射された金属酸化物層が剥離することなく、凝固シェルの緩冷却化による鋳片品質の向上と、長時間使用に耐える鋳造鋳型およびそれを用いた連続鋳造方法をを提供することを目的としてなされたものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、溶射層の密着力に着目して、付着力試験方法(JIS−H8666)に基づいて評価試験を行った。具体的には、試験片の片方に評価する溶射層(金属酸化物層を単独に施工、または中間層と金属酸化物層を施工)を施し、その溶射層と他の試験片と接着剤で接着させ、引張り試験機で試験片を垂直方向に引張り、溶射層を試験片から強制的に剥離させ、そのときの剥離強度および剥離が発生した位置を調査した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003622437
【0020】
本発明者らは、これらの結果から下記▲1▼〜▲3▼の知見を得ることができた。
【0021】
▲1▼中間層なし(試験No.1)に比べ、金属(Ni、Ni基合金等)をメッキ施工または金属(Ni−Cr、SUS304、Mo等)をプラズマ方式、アーク方式若しくはガス方式で溶射した中間層を設けることによって、剥離強度を上昇させることができる(試験No.2〜6)。しかも、これらは、従来技術で提案のあった拡散溶接法や爆着法に比べて、ロールやベルト等の鋳型においても施工が容易である。
【0022】
しかし、これらの調査結果では、中間層と金属酸化物層の界面、中間層と母材の界面、あるいは中間層の内部で剥離が発生している。このように剥離が発生する位置が中間層に限られるのは、中間層に十分な密着力がないことに起因する。
【0023】
▲2▼中間層の密着力を強化させるには、前述のプラズマ方式、アーク方式若しくはガス方式の溶射に比べて、溶射粒子の飛行速度が速い高速フレーム方式で溶射施工するのが有効である(試験No.7〜15)。
【0024】
すなわち、中間層を設ける場合、高速フレーム方式で溶射すると剥離強度が上昇し、さらに溶射材料としてサーメットと組み合わせることによって、剥離強度が著しく上昇する。例えば、高速フレーム方式の溶射と、サーメットに炭化物(WC、CrC等)とNi−Crを組み合わせることによって、中間層またはその界面で剥離することなく、金属酸化物層の内部で剥離することが分かる(試験No.7〜10)。このとき、母材材質は銅合金であっても炭素鋼であっても改善効果が期待でき、中間層を2層設ける場合(第一中間層をメッキ施工)であっても、同様の効果が発揮される。
【0025】
▲3▼高速フレーム方式による溶射とは、炭化水素系ガスや水素を燃料として内部燃焼室で酸素と燃焼させ、噴射孔を通して高温の超音速ジェット流を形成し、そこに溶射原料を送給して溶融、加速させて被処理体に激突させる溶射方法である。高速フレーム方式であっても、ロールやベルト等の大型で、かつ複雑な形状の鋳型にも中間層を容易に施工できるという、溶射加工の本来の特長を満足することができる。さらに、他方式の溶射に比べて、溶射粒子の飛行速度が速いため、母材と機械的に強固に接合し、かつ緻密な層を形成することができる。
【0026】
本発明は上記▲1▼〜▲3▼の知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)の連続鋳造用鋳型および(2)の連続鋳造法を要旨としている。
【0027】
(1)溶融金属を凝固させて連続的に鋳片を製造する連続鋳造用鋳型であって、冷却された金属製鋳型が溶融金属と接触する面はサーメットまたは金属を高速フレーム方式による溶射で施工された中間層と、この中間層の上面に溶射で施工された金属酸化物層とからなることを特徴とする連続鋳造用鋳型である。
【0028】
(2)溶融金属を凝固させて連続的に鋳片を製造する連続鋳造法であって、冷却されてた金属製鋳型が溶融金属と接触する面に中間層としてサーメットまたは金属を高速フレーム方式による溶射で施工し、この中間層の上面から金属酸化物を溶射で施工した鋳型を用いたことを特徴とする連続鋳造方法である。
【0029】
本発明で対象となる鋳造方法は、前述のCC法、SC法およびTSC法であるが、これらの連続鋳造方法の他で、さらに、タンディシュ(溶湯容器)と鋳型とを直結して構成される水平式連続鋳造法の場合であっても、本発明の対象とすることができる。
【0030】
本発明に使用する鋳型は、CC法における板や管で形成した鋳型、SC法におけるロールおよびTSC法におけるブロックや無端ベルトとして用いられ、母材の材質は銅合金あるいは炭素鋼である。CC法、SC法およびTSC法の各連続鋳造法では、使用する鋳型の形状や大きさが異なるが、本発明のサーメットまたは金属を高速フレーム方式の溶射方法で中間層を施工した後金属酸化物を鋳型表面に溶射することにより、いずれも同様の効果を得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の鋳型表面には、以下の手順および条件によって中間層が施工され、この中間層の上面から溶射によって金属酸化物層が施工される。
【0032】
鋳型母材は、洗浄後グリッドまたはショットで表面の粗さを調整した後、中間層として所定の材料を高速フレーム方式による溶射で施工される。さらに、その上面から溶射材として金属酸化物を所定の厚さまで溶射される。溶射後は、金属酸化物層が必要な表面粗さとなるように、表面を研磨する。
【0033】
なお、鋳型母材表面にNi等のメッキを第一の中間層として施工し、洗浄後ショット等で表面の粗さを調整した後、第二の中間層として所定の材料を高速フレーム方式で溶射してもよい。
【0034】
前述の通り、高速フレーム式溶射とは炭化水素ガス、水素、ケロシンまたは灯油等を燃料として内部燃焼室で酸素と燃焼させ、噴射孔を通して高温の超音速ジェット流を形成し、そこに溶射原料を送給して、溶融、加速して被処理体に激突させる溶射方法である。本方式によれば、他の溶射方法に比べ、溶射粒子の飛行速度が速いという特長がある。
【0035】
中間層の施工に用いられる材質は、高速フレーム方式による溶射が可能な材料であり、金属酸化物(ZrO、Al、Cr等)、炭化物(WC、CrC、TiC、SiC等)、あるいは窒化物(Si等)と金属(Ni、Cr、Ni−Cr等)との混合物であるサーメットや、Ni、Cr、Mo、SUS304、Ni−Cr等の金属である。本発明では、特に炭化物系サーメット、具体的に炭化物とNi−Crとのサーメットが、密着力を確保できることから望ましい。
【0036】
中間層は鋳型母材と金属酸化物層の密着力の向上、さらに金属酸化物層の耐熱衝撃性の向上のために設けるものであるため、その厚さは30〜1000μmでよく、特に望ましくは30〜200μmであればよい。下限を30μmとしたのは、金属酸化物層の厚さにある程度のバラツキがあるため、これ未満の場合は部分的に中間層が設けられない部分が存在するからである。一方、上限を200μmとしたのは、これより大きくすると溶射施工時に熱応力によって、中間層が割れたり、母材から離れたりすることがあるからである。さらに、上限を超えても効果は変わらず、必要な材料の量や施工時間が多くなり不経済であるからである。
【0037】
金属酸化物を鋳型表面に、すなわち、中間層の上面に溶射するのは、鋳片を緩冷却して品質改善を図るとともに、ロール表層の磨耗や引っかき疵を低減して耐久性を向上させるためにある。このため、金属酸化物として熱伝導率が小さく、硬度の大きいものであれば良い。例えば、ZrO、Al、Cr、TiO、SiOやこれらの混合物である。このとき、金属酸化物の表層の溶射粒子の移着(脱落)を防止し、さらに融点が高くなりすぎるのを防ぐため、ZrOを20〜80%で残りがAl、TiOあるいはSiOまたはこれらの混合物を使用するのが望ましい。
【0038】
金属酸化物層の厚さは鋳片を緩冷却にするために必要な熱抵抗となるように厚さが決められ、材質や鋳造方法等によって異なるが、厚さは50〜1000μmにするのが望ましい。あまり薄すぎると、熱抵抗が小さく凝固シェルを緩冷却する効果が得られない。逆に、厚すぎると、熱抵抗が大きくなりすぎて凝固シェルの成長速度が小さくなり、必要なシェル厚さを確保するためには、鋳造速度を小さくすることが必要で、生産性が悪化する。
【0039】
金属酸化物層の施工方法は、本発明では特に限定するものではないが、プラズマ方式あるいは爆発方式による溶射が一般的である。
【0040】
プラズマ方式とは、陰極と陽極間に発生したアーク電流にArガスやHeガスを供給してプラズマガスとし、噴出孔を通してジェット流を形成させる。ここに、溶射材料を供給し、溶融、加速させて被処理体に衝突させて皮膜を形成させる溶射方法である。エネルギー密度が大きいため、高融点の金属や金属酸化物等の溶射が容易にできるという特長がある。
【0041】
爆発方式とは、アセチレンと酸素の混合ガスを爆発させて、これにより生じる高速燃焼エネルギーを利用して、溶射材料を溶融・加速させて、被処理体に衝突させ皮膜を形成させる溶射方法である。
【0042】
上記の構成からなる本発明の鋳型によれば、高速フレーム方式による溶射施工でサーメットあるいは金属を溶射した中間層を設けているので、その上面に溶射された金属酸化物層の密着力は向上する。このため、金属酸化物層は、鋳造中に摺動力やせん断力等が加わっても剥離することなく、耐久性が向上する。このように金属酸化物層が鋳型表面から剥離しないので、剥離に起因する鋳片の表面割れやポロシティ等の欠陥はなくなる。また、鋳片と鋳型が常に摺動している通常CC法では、鋳片と鋳型間の摩擦抵抗が大きく変化することもなく、安定した操業ができる。
【0043】
金属酸化物層の熱衝撃性については、高速フレーム方式で施工した中間層も、鋳型母材との熱膨張率の差を低減できるために、従来の中間層同様の効果が得られる。したがって、本発明の連続鋳造用鋳型を使用して鋳造することにより、溶射された金属酸化物層の本来の効果である凝固シェルの緩冷却や耐摩耗性の向上を損なうことはない。このため、表面性状の良好な鋳片が得られるとともに、鋳型の寿命を大幅に延長することができる。
【0044】
【実施例】
本発明の連続鋳造用鋳型の効果を、CC法、SC法およびTSC法に適用した場合を実施例1〜3に基づいて説明する。
【0045】
(実施例1)
本発明の構成からなる鋳型を、CC法に適用した場合を説明する。
【0046】
Figure 0003622437
(4)比較例1
実施例1の比較材として、上記中間層の炭化物系サーメットの溶射施工による厚さ=70μmに代えて、中間層として金属(Ni)を厚さ80μmでメッキ施工し、それ以外は同条件で試験を行った。
【0047】
本発明の金属酸化物層の場合、15チャージ操業後の鋳型表面には金属酸化物層の剥離は見られず、傷や摩耗等の損傷も見られなかった。得られた鋳片(幅1000mm×厚さ100mm)の表面には、鋳型振動によるオシレーションマークが見られるだけで、表面割れや凹み、ポロシティ等の欠陥はなかった。溶射された金属酸化物層本来の効果である凝固シェルを均一に形成させ、鋳片の表面割れや凹みやポロシティ等の欠陥を防止しつつ表面性状の良好な鋳片を得ることができた。また、鋳型の耐摩耗性が向上することにより、鋳型寿命が長くできること期待できる。
【0048】
一方、比較例1では、鋳型表面には傷や摩耗は見られなかったものの、3チャージ試験後に湯面近傍に金属酸化物層の剥離(φ2〜10mm程度の大きさ)が多数見られた。剥離した部分を観察すると、金属酸化物層がすべて脱落しており、中間層(Ni)と金属酸化物層(ZrO−70wt%Al)界面で剥離したことが明らかになった。鋳片の表面には、オシレーションマーク以外に、金属酸化物層が剥離したためにできたと考えられる表面の凹凸や二重肌があり、割れを伴う場合があった。このため、溶射された金属酸化物層本来の効果を確認することはできなかった。
【0049】
(実施例2)
次に、本発明の構成からなるロール(鋳型)を、図3に示す双ロール横注ぎ方式のSC法に適用した場合を説明する。
【0050】
Figure 0003622437
【0051】
Figure 0003622437
(4)比較例2
実施例2の比較材として、上記第二中間層の炭化物系サーメットの溶射施工による厚さ=60μmに代えて、第二中間層を下記のように施工し、それ以外は同条件で試験を行った。
【0052】
Figure 0003622437
本発明の施工条件による金属酸化物層の場合、8チャージ操業後のロール表面には金属酸化物層の剥離は見られず、傷や摩耗等の損傷も見られなかった。得られた鋳片(幅750mm×厚さ2.1mm)の表面には、ロール表面の金属酸化物層の剥離跡(凸形状)は見られず、表面割れやポロシティ等の欠陥はなかった。金属酸化物層本来の効果である凝固シェルを均一に形成させ、鋳片の表面割れや凹みやポロシティ等の欠陥を防止しつつ表面性状の良好な鋳片を得ることができた。また、鋳型の耐摩耗性が向上することにより、鋳型寿命が長くできることも期待できる。
【0053】
一方、比較例2では、ロール表面には傷や摩耗は見られなかったものの、3チャージ試験後に金属酸化物層の剥離(φ2〜10mm程度の大きさ)が25個発生した。剥離した部分を観察すると、金属酸化物層と第二中間層がすべて脱落しており、第一中間層(Ni)と第二中間層(Ni−Cr)界面で剥離したことが分かった。鋳片の表面には、この剥離した部分に対応してやや凸状になっており、この部分には表面割れや内部には大きなポロシティを伴っていた。このため、この鋳片は製品にすることができなかった。
【0054】
(実施例3)
本発明の構成からなるベルト(鋳型)を、図4に示す傾斜型双ベルト方式のTSC法に適用した場合を説明する。
【0055】
Figure 0003622437
(4)比較例3
実施例3の比較材として、上記中間層の炭化物系サーメットの溶射施工による厚さ=40μmに代えて、中間層を下記のように施工し、それ以外は同条件で試験を行った。
【0056】
Figure 0003622437
本発明の溶射の場合、20チャージ試験後も溶射ベルト表面には溶射層の剥離は見られず、傷や摩耗等の損傷も見られなかった。得られた鋳片(幅1000mm×厚さ50mm)の表面には、ロール表面の金属酸化物層の剥離跡(凸形状)は見られず、表面割れや凹み等の欠陥はなかった。溶射された金属酸化物層の本来の効果である凝固シェルを均一に形成させ、鋳片の表面割れや凹み等の欠陥を防止しつつ表面性状の良好な鋳片を得ることができた。また、無端ベルトの耐摩耗性が向上することにより、ベルト寿命が長くできることも期待できる。
【0057】
一方、比較試験の場合、溶射された無端ベルト表面には傷や摩耗は見られなかったものの、5チャージ試験後には金属酸化物層の剥離(φ2〜10mm程度の大きさ)が多数見られた。剥離した部分を観察すると、金属酸化物層と中間層がすべて脱落しており、母材(炭素鋼)と中間層(Mo)との界面で剥離したことがわかった。鋳片の表面には剥離した溶射被膜が移着していたり、鋳片の剥離跡の凸部分は、表面割れやポロシティが発生した。このため、溶射された金属酸化物層本来の効果を確認することはできなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の連続鋳造用鋳型およびそれを用いた連続鋳造方法によれば、高速フレーム方式による溶射で施工した中間層と、この中間層の上面に溶射施工された金属酸化物層を設けているので、操業中に金属酸化物層が剥離することなく、鋳片表面に剥離跡や表面割れ等の欠陥が発生しない。このため、溶射施工された金属酸化物層本来の目的であるシェルの緩冷却化によって鋳片品質の向上が図れ、鋳型(ロール、ベルト、ブロック等)寿命を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造方法のうち単ロール方式によるストッリプキャスティング法(SC法)の概念を説明する図である。
【図2】連続鋳造方法のうち双ロール上注ぎ方式によるストッリプキャスティング法(SC法)の概念を説明する図である。
【図3】連続鋳造方法のうち双ロール横注ぎ方式によるストッリプキャスティング法(SC法)の概念を説明する図である。
【図4】連続鋳造方法のうち傾斜型双ベルト方式による薄スラブ連続鋳造法(TSC法)の概念を説明する図である。
【図5】連続鋳造方法のうち双ブロック方式による薄スラブ連続鋳造法(TSC法)の概念を説明する図である。
【符号の説明】
1:ロール、 2:鋳片
3:無端ベルト、 4:冷却ブロック
5:溶湯

Claims (2)

  1. 溶融金属を凝固させて連続的に鋳片を製造する連続鋳造用鋳型であって、冷却された金属製鋳型が溶融金属と接触する面はサーメットまたは金属を高速フレーム方式による溶射で施工された中間層と、この中間層の上面に溶射で施工された金属酸化物層とからなることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 溶融金属を凝固させて連続的に鋳片を製造する連続鋳造法であって、冷却されてた金属製鋳型が溶融金属と接触する面に中間層としてサーメットまたは金属を高速フレーム方式による溶射で施工し、この中間層の上面から金属酸化物を溶射で施工した鋳型を用いたことを特徴とする連続鋳造方法。
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