JP3621549B2 - 多孔性含水小麦粉食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パン類等の多孔性含水小麦粉食品の製造方法に関する。詳しくは、焼成後に嵩を減少させ、保存後、再加熱により嵩を復元させる圧縮多孔性含水小麦粉食品に関する技術であって、その際の焼成品の形状の均一化を図り、生産性を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食生活が洋風化しパン類の消費量が増加するに従って、一度焼成したパン類を常温、冷蔵あるいは冷凍状態で保存し、販売店や外食産業店で電子レンジ等を用いて加熱し、消費者に供給することが増えてきている。
又、本発明者らは、ベーカリー製品等の流通、保管における経費削減を図ると共に、販売店、外食産業店、家庭において、何時でも焼き立てに近い味を有するベーカリー製品等を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、ベーカリー製品等を一旦焼成等の手段により製造した後、嵩を減少させ、保存後、再加熱により嵩を復元させる技術に着目し、加熱処理後に嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品であって、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品に関する発明を完成し、特許出願するに至った(国際公開WO96/28036)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記圧縮復元パンの生産性について検討を進めた結果、焼成後のパンに大きさ・形状の不揃いが多いと、圧縮・復元の際の歩留まりが悪く、また、復元性に問題が生ずることもあり、大量の連続生産に際して、生産効率の低下等の問題が顕著となることが判明した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、圧縮復元パン等の多孔性含水小麦粉食品における復元性、生産性の更なる向上を目的として鋭意検討した結果、焼成後のパンの大きさ・形状の不揃いを避けるには、多孔性含水小麦粉食品の生地をホイロして最終発酵させた後の大きさ・形状を均一化させるのが有効であることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち本発明は、焼成乃至半焼成後の多孔性含水小麦粉食品を圧縮により該食品の嵩を減少させ、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品を製造する方法であって、多孔性含水小麦粉食品の生地をホイロして最終発酵させる際に、該生地を円柱状空間部を有する型枠であって、その面積が型枠を使用せずに生地を最終発酵させた場合の投影面積の 70 〜 90 %である型枠に入れて発酵させた後、型枠から取り出した形状の揃った生地を焼成工程で使用することを特徴とする多孔性含水小麦粉食品の製造方法である。
上記の如き本発明によれば、発酵させた生地の大きさ・形状が均一化しており、これを焼成したパンもその大きさ・形状が揃っており、製品歩留まりが向上し、復元性も良く、生産性が極めて向上する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多孔性含水小麦粉食品の製造方法について詳細に説明する。
先ず、本発明で言う多孔性含水小麦粉食品とは、具体的には、食パン、コッペパン、ロールパン、クロワッサン、アンパン等の菓子パン等のパン類;スポンジケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキ等のケーキ類;中華マン等のマンジュウ類;ドーナツ、パイ、カステラ等の菓子類等が挙げられる。この場合に用いられる多孔性含水小麦粉食品は、小麦粉食品の内、比較的含水率が高く、且つ比較的内部空間容積の大きな食品である。ここで、比較的含水率が高いとは、一般的には含水率10%以上、また、比較的内部空間容積が大きいとは、一般的には空間容積10%以上のものを指す。クッキー、ビスケット等の比較的含水率が低く、且つ比較的内部空間容積の少ないものは、殆ど嵩の復元力がなく、このような圧縮技術の対象からは除かれる。
尚、本発明の多孔性含水小麦粉食品は、小麦粉を主成分とし、大麦、ライ麦、トウモロコシ粉、澱粉、卵、油脂、砂糖、乳成分、香料、乳化剤その他を含有するものであり、組成的には特に限定されるものではない。
又、上記多孔性含水小麦粉食品は、焼く、揚げる、蒸す等の加熱処理により半製品または製品となるものである。ここで、パン類を例にとれば、一般的には、一旦焼成し、製品としたものについて、後記の如き処理が施されるが、場合によっては、最初の段階では半焼成の状態にしておき、嵩の復元のための再加熱の際に同時に完全に焼成し、製品とする形でもよい。
【0006】
本発明においては、多孔性含水小麦粉食品の生地をホイロして最終発酵させる際に、該生地を所定形状の型枠に入れて発酵させた形状の揃った生地を使用することに特徴がある。
ここで用いられる型枠は、生地が発酵した際に横方向への膨らみを制御し得る形状のものであり、発酵させる生地の大きさ・形状を所望の如く制御できるものであれば特に限定されない。
以下、丸型パンの場合を例にとり、上記型枠の使用状況を説明する。
後記する実施例に示されるような一般的処方の中種法によるパン生地50gを用意し、これをほぼ球形に丸めると直径約40mmとなる。次いで、この球形生地をホイロして最終発酵させると、生地長径は約80mm、生地高さは約50mm、生地容積は約200cc となる。
一方、図1及び図2に示すような、直径70mm、高さ20mmの円柱状空間部を有する型枠1を用い、これに上記球型生地2を入れ、ホイロして最終発酵させると、生地長径は約75mm、生地高さは約55mm、生地容積は約200cc となる。即ち、本発明の型枠を用いてホイロすることにより、横方向への膨らみを制御し、縦方向への膨らみを増大させることができるのである。
ここで、使用する型枠の大きさ(面積、高さ)は、パンの種類等の条件にもより一律には規定しずらいが、面積は型枠を使用せずに生地を最終発酵させた場合の投影面積の70〜90%程度とすれば良く、又、高さは型枠を使用せずに生地を最終発酵させた場合の高さの30%以上とすれば良い。あまりに型枠の面積が小さすぎたり、型枠の高さが低すぎると生地の変形が生じやすい。また、型枠の面積が大きすぎると所期の効果が得られない。
また、型枠の材質は生地発酵による外側への圧力で変形しないようなものであれば良く、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属類が用いられる。
最終発酵を終えた生地2’ は、図3に示すように、型枠1から取り出され、焼成工程に回される。
尚、型の内側に適当な潤滑剤(例えば、ショートニング等)を塗布してくことは、発酵生地の型からの取り出す際、離型性が良くなり好ましい態様である。
本発明の如き手法によれば焼成後のパンも大きさ・形状が整っている。
【0007】
本発明においては、上記の如き焼成処理した多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程を行う。
ここで、嵩の減少率は、上記多孔性含水小麦粉食品の種類、即ち内部空間容積と復元力との兼ね合いにより一律には規定できないが、一般的には加熱処理後の半製品又は製品の1に対して0.1 〜0.9 (体積比)の範囲であり、本発明の目的(流通、保管における経費削減)からすれば、減少率が大きいほど好ましく、0.5 以下が効果的である。要は、後記する再加熱により嵩が復元する程度まで、圧縮することが肝要である。
この多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の具体的手段としては、機械的圧縮等が挙げられ、具体的には、プレス機による加圧圧縮や、可撓性包材中に密封しておき中を減圧することによる圧縮(真空パック方式)が挙げられる。
本発明においては、加熱処理した多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の前または後に該食品を包装する工程を含むことができる。この包装の工程は、常法の技術により行われるが、前記の如き真空圧縮包装によれば、圧縮と同時に包装も可能である。尚、当然のことながら、これに限らず包装は圧縮の後でも可能である。又、品質維持のために、窒素、炭酸ガス等の単一または混合ガスを充填しながら包装しても良い。又、凍結工程を含む場合には、解凍しないうちに包装するのが望ましい。
本発明では、加熱処理した多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の後あるいは同時に多孔性含水小麦粉食品を冷凍または冷蔵処理する工程を設けるのが好ましい。これにより、嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品をそのままの形態で保存することが可能であると共に保存性も優れたものとなる。
【0008】
次いで、嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品を、必要により保存、運搬等の流通過程におき、販売店、外食産業店または家庭にて、再加熱し、嵩を復元させる。この再加熱の手段としては、乾式手段である電子レンジやオーブンレンジによるものが好ましいが、蒸し器等を使った湿式手段でもよい。又、その他の加熱によるものでもよいが、電子レンジによることが、利便性、復元性等の点から好ましい。
ここで、再加熱処理による嵩の復元率は、加熱処理後の1に対して0.5 〜2.0 (体積比)程度である。
【0009】
【発明の効果】
このようにして、本発明の技術によれば、焼成品の大きさ・形状が揃っているので、圧縮工程での圧縮度合いが均一となり、復元性が向上する。また、不良品の発生も少なく、大量の連続生産に際して、生産効率の低下等の問題が生じず、生産性が向上する。
【0010】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
比較例1
以下の工程・処方に従って、丸型パンを400 個製造した。
〔中種材料〕
強力粉 70.0 重量部
イースト 2.0 重量部
イーストフード 0.1 重量部
卵白 5.0 重量部
グルテン 2.0 重量部
水 46.0 重量部
〔本捏材料〕
強力粉 30.0 重量部
砂糖 5.0 重量部
塩 2.0 重量部
卵 10.0 重量部
脱脂粉乳 2.0 重量部
ショートニング 10.0 重量部
水 18.0 重量部
中種材料を低速3分・中速1分でミキシングした。得られた生地を、25℃で捏上、次いでそれを27℃・湿度75%の発酵室内で4.5 時間発酵させた。
ショートニングを除く上記本捏材料と中種生地を添加し、低速3分・中速3分でミキシング後、ショートニングを加えて更に低速3分・中速4分でミキシングした。得られた生地を27.0℃で捏上た。
このようにして得られた生地を、フロアタイムを20分とった後、50gずつに分割し球状に成型した。次いで、37℃・湿度85%の条件下で45分間醗酵させた。醗酵後の生地の長径、高さ、容積を表1に示す。次いで、生地を220 ℃のリールオーブンにて20分間焼成し、丸型パンを得た。この丸型パンの長径、高さ、容積も表1に示す。
実施例1
図1及び図2に示すような、直径70mm、高さ20mmの円柱状空間部を有する型枠1を用い、この中に球状生地を入れて醗酵させた以外は上記比較例1と同様にして、丸型パンを得た。醗酵後の生地及び焼成後の丸型パンの長径、高さ、容積を表1に示す。
【0011】
比較例2
生地重量を70gにした以外は、比較例1と同様にして丸型パンを得た。結果を表1に示す。
【0012】
実施例2
図1及び図2に示すような、直径80mm、高さ20mmの円柱状空間部を有する型枠1を用い、この中に球状生地を入れて醗酵させた以外は上記比較例2と同様にして、丸型パンを得た。結果を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
上記実施例・比較例で得た丸型パンを2cmにプレス板で圧縮した後、プレス板に挟んだまま−40℃の冷凍庫で急速冷凍した。冷凍庫で30分冷却後、プレス板をはずし、高さ2cmの圧縮冷凍パンを得た。この圧縮冷凍パンを電子レンジ(600 W)で4個同時に180 秒加熱した時の復元性を評価したところ、何れも復元性は良好であった。
しかし、この圧縮・冷凍工程に回せる製品の歩留まり率(焼成後の高さが大きすぎるか、長径が大きすぎ、規定の装置に搬入できないもの、並びに外観が悪いものはカット)は、実施例1〜2が90±5%であったのに対し、比較例1〜2では80±5%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で好適に使用される型枠の上面図である。
【図2】本発明で好適に使用される型枠の側面図である。
【図3】本発明で好適に使用される型枠を用い、生地を発酵させた後に型枠を開き、発酵生地を取り出す際の状況を示す図である。
【符号の説明】
1 型枠
2 生地
2’ 発酵生地
Claims (3)
- 焼成乃至半焼成後の多孔性含水小麦粉食品を圧縮により該食品の嵩を減少させ、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品を製造する方法であって、多孔性含水小麦粉食品の生地をホイロして最終発酵させる際に、該生地を円柱状空間部を有する型枠であって、その面積が型枠を使用せずに生地を最終発酵させた場合の投影面積の 70 〜 90 %である型枠に入れて発酵させた後、型枠から取り出した形状の揃った生地を焼成工程で使用することを特徴とする多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
- 圧縮後に冷凍工程を有する請求項1記載の多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
- 多孔性含水小麦粉食品がパン類である請求項1又は2記載の多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
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