JP3642926B2 - 多孔性含水小麦粉食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パン類等の多孔性含水小麦粉食品の製造方法に関する。詳しくは、焼成後に嵩を減少させ、保存後、再加熱により嵩を復元させる圧縮多孔性含水小麦粉食品に関する技術であって、その際の風味、食感、復元性を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、食生活が洋風化しパン類の消費量が増加するに従って、一度焼成したパン類を常温、冷蔵あるいは冷凍状態で保存し、販売店や外食産業店で電子レンジ等を用いて加熱し、消費者に供給することが増えてきている。
又、本発明者らは、ベーカリー製品等の流通、保管における経費削減を図ると共に、販売店、外食産業店、家庭において、何時でも焼き立てに近い味を有するベーカリー製品等を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、ベーカリー製品等を一旦焼成等の手段により製造した後、嵩を減少させ、保存後、再加熱により嵩を復元させる技術に着目し、加熱処理後に嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品であって、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品に関する発明を完成し、特許出願するに至った(国際公開WO96/28036)。このような圧縮復元パンの場合、食感・風味と共に、レンジアップ時の復元性が極めて重要である。
本発明は、このような圧縮復元パンにおける更なる復元性の向上を目的とするものである。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、圧縮復元パン等の多孔性含水小麦粉食品の更なる復元性の向上について鋭意検討した結果、一定の条件下で加熱処理を施すことが極めて有効であることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち本発明は、焼成乃至半焼成後の多孔性含水小麦粉食品を圧縮により該食品の嵩を減少させた、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品を製造する際、焼成乃至半焼成後、温度70 〜 120 ℃で相対湿度80%以上の環境下で10 〜 30 分の加熱処理を行い、次いで嵩を減少させる工程を設けることを特徴とする多孔性含水小麦粉食品の製造方法である。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多孔性含水小麦粉食品の製造方法について詳細に説明する。
先ず、本発明で言う多孔性含水小麦粉食品とは、具体的には、食パン、コッペパン、ロールパン、クロワッサン、アンパン等の菓子パン等のパン類;スポンジケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキ等のケーキ類;中華マン等のマンジュウ類;ドーナツ、パイ、カステラ等の菓子類等が挙げられる。この場合に用いられる多孔性含水小麦粉食品は、小麦粉食品の内、比較的含水率が高く、且つ比較的内部空間容積の大きな食品である。ここで、比較的含水率が高いとは、一般的には含水率10%以上、また、比較的内部空間容積が大きいとは、一般的には空間容積10%以上のものを指す。クッキー、ビスケット等の比較的含水率が低く、且つ比較的内部空間容積の少ないものは、殆ど嵩の復元力がなく、このような圧縮技術の対象からは除かれる。
尚、本発明の多孔性含水小麦粉食品は、小麦粉を主成分とし、大麦、ライ麦、トウモロコシ粉、澱粉、卵、油脂、砂糖、乳成分、香料、乳化剤その他を含有するものであり、組成的には特に限定されるものではない。
又、上記多孔性含水小麦粉食品は、焼く、揚げる、蒸す等の加熱処理により半製品または製品となるものである。ここで、パン類を例にとれば、一般的には、一旦焼成し、製品としたものについて、後記の如き処理が施されるが、場合によっては、最初の段階では半焼成の状態にしておき、嵩の復元のための再加熱の際に同時に完全に焼成し、製品とする形でもよい。
【0005】
本発明は、焼成乃至半焼成後の多孔性含水小麦粉食品を、嵩を減少させる工程に先立ち、温度65℃以上で相対湿度80%以上の環境下で加熱処理を行うことを特徴とする。
このような、多孔性含水小麦粉食品のクラストが着色せず、且つ多孔性含水小麦粉食品の水分が蒸散しない温度条件、相対湿度条件で多孔性含水小麦粉食品を加熱処理することで、多孔性含水小麦粉食品の内相が充分加熱され、復元性が顕著に向上する。
より好ましい加熱処理条件は、温度70〜120 ℃、相対湿度85%以上の場合である。また処理時間は、一般に1〜60分であり、好ましくは10〜30分である。
具体的な処理方法としては、蒸し器を用いる方法や、密閉された空間内に多孔性含水小麦粉食品を置き、自己の水分蒸散により相対湿度を上昇させる方法あるいは蒸気を吹き込む方法等が挙げられる。
【0006】
また本発明においては、焼成乃至半焼成後、上記の如き加熱処理の後に多孔性含水小麦粉食品を冷却する工程を設けても良い。その方法及び条件は特に限定されないが、表面の温度が50℃以下となるまで冷却するのが望ましい。
【0007】
本発明においては、上記の如き加熱処理後、多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程を行う。
ここで、嵩の減少率は、上記多孔性含水小麦粉食品の種類、即ち内部空間容積と復元力との兼ね合いにより一律には規定できないが、一般的には加熱処理後の半製品又は製品の1に対して0.1 〜0.9 (体積比)の範囲であり、本発明の目的(流通、保管における経費削減)からすれば、減少率が大きいほど好ましく、0.5 以下が効果的である。要は、後記する再加熱により嵩が復元する程度まで、圧縮することが肝要である。
この多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の具体的手段としては、機械的圧縮等が挙げられ、具体的には、プレス機による加圧圧縮や、可撓性包材中に密封しておき中を減圧することによる圧縮(真空パック方式)が挙げられる。
本発明においては、加熱処理した多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の前または後に該食品を包装する工程を含むことができる。この包装の工程は、常法の技術により行われるが、前記の如き真空圧縮包装によれば、圧縮と同時に包装も可能である。尚、当然のことながら、これに限らず包装は圧縮の後でも可能である。又、品質維持のために、窒素、炭酸ガス等の単一または混合ガスを充填しながら包装しても良い。又、凍結工程を含む場合には、解凍しないうちに包装するのが望ましい。
本発明では、加熱処理した多孔性含水小麦粉食品の嵩を減少させる工程の後あるいは同時に多孔性含水小麦粉食品を冷凍する工程が設けられる。これにより、嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品をそのままの形態で保存することが可能であると共に保存性も優れたものとなる。
【0008】
次いで、嵩を減少させた多孔性含水小麦粉食品を、必要により保存、運搬等の流通過程におき、販売店、外食産業店または家庭にて、再加熱し、嵩を復元させる。この再加熱の手段としては、乾式手段である電子レンジやオーブンレンジによるものが好ましいが、蒸し器等を使った湿式手段でもよい。又、その他の加熱によるものでもよいが、電子レンジによることが、利便性、復元性等の点から好ましい。
ここで、再加熱処理による嵩の復元率は、加熱処理後の1に対して0.5 〜2.0 (体積比)程度である。
【0009】
【発明の効果】
このようにして、本発明の技術によれば、焼成した多孔性含水小麦粉食品において、食感・風味、外観、復元性等の問題が発生せず、生産性が良く、復元性も良好であり、販売店、外食産業店、家庭において、何時でも焼き立てに近い味を有するパン類等を提供することができる。
【0010】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1、比較例1
表1に示す配合に基づき、70%中種法にてロールパンを製造し、パンの評価を行った。
即ち、縦型ミキサー(関東ミキサー10コート)、フックを用い、中種原材料をボールに入れ、低速2分、中高速1分にて混捏し、捏上げ温度を24℃とし、中種生地を調製した。次に、これを中種発酵温度27℃、相対湿度75%、発酵時間3時間、発酵終点品温29.5℃の条件で発酵させた。
次に、中種発酵生地に本捏原材料を混合し、低速3分、中高速4分にて混捏した後、油脂を添加し、更に低速2分、中高速3分、高速2分で、捏上げ温度を27.5℃とし、本捏生地とした。次いで、フロアタイム20分後、50gに分割し、ベンチタイムを20分とった後、モルダーにて成型し、ホイロを行った。ホイロ条件は、37℃、湿度85%にて約45分とした。
このようにして調製した生地を200 ℃のオーブンで10分焼成して、比容積5.7 (cm3/g)のパンを得た。更に、このパンを、蒸し器を用い、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下で10分間加熱した。その後、室温にて1時間放冷し、得られたパンを圧縮プレス板にはさんで、比容積が2.00(cm3/g)となるまで15秒で圧縮成型し、その状態で−30℃まで急速冷凍した。
次に、圧縮成型されたパンをプレス板から開放し、包装フィルムに導入し、窒素ガス置換後、密封包装した。この圧縮成型されたロールパンを1ヵ月、−20℃の冷凍庫に保存した後取り出し、電子レンジで約60秒加熱し、元の嵩に対する嵩復元性を評価したところ、98%であった。
一方、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下での加熱処理をしなかった以外は実施例1と全く同様に製造したパンについて復元性を評価したところ、68%であった。
【0011】
【表1】
【0012】
実施例2、比較例2
実施例1と同様に調製した生地を200 ℃のオーブンで7分焼成し、焼き色を余りつけない半焼成状態でオーブンより取り出し、比容積5.5 (cm3/g)のパンを得た。次いで、蒸し器を用い、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下で10分間加熱した。その後、室温にて1時間放冷し、得られたパンを圧縮プレス板にはさんで、比容積が2.00(cm3/g)となるまで15秒で圧縮成型し、その状態で−30℃まで急速冷凍した。
次に、圧縮成型されたパンをプレス板から開放し、包装フィルムに導入し、窒素ガス置換後、密封包装した。この圧縮成型されたロールパンを1ヵ月、−20℃の冷凍庫に保存した後取り出し、家庭用オーブンを用い、220 ℃で約5分焼成して焼き色をつけ、その時の元の嵩に対する嵩復元性を評価したところ、85%であった。
一方、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下での加熱処理をしなかった以外は実施例2と全く同様に製造したパンについて復元性を評価したところ、68%であった。
実施例3、比較例3
実施例1と同様に調製した生地を200 ℃のオーブンで10分焼成し、比容積5.7 (cm3/g)のパンを得た。更に、蒸し器を用い、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下で10分間加熱した。その後、室温にて1時間放冷し、得られたパンを圧縮プレス板にはさんで、比容積が2.00(cm3/g)となるまで15秒で圧縮成型し、その状態で炭酸ガス置換を行い、圧縮したパンの形状が戻らないよう、型容器に密封し、プレス板から開放した。この圧縮成型されたロールパンを1ヵ月常温で保存した後取り出し、電子レンジで約60秒加熱し、元の嵩に対する嵩復元性を評価したところ、90%であった。
一方、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下での加熱処理をしなかった以外は実施例3と全く同様に製造したパンについて復元性を評価したところ、68%であった。
実施例4、比較例4
実施例1と同様に調製した生地を200 ℃のオーブンで7分焼成し、焼き色を余りつけない半焼成状態でオーブンより取り出し、比容積5.5 (cm3/g)のパンを得た。次いで、蒸し器を用い、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下で10分間加熱した。その後、室温にて1時間放冷し、得られたパンを圧縮プレス板にはさんで、比容積が2.00(cm3/g)となるまで15秒で圧縮成型し、その状態で圧縮したパンの形状が戻らないよう、型容器に密封し、プレス板から開放した。この圧縮成型されたロールパンを4日間常温で保存した後取り出し、家庭用オーブンを用い、220 ℃で約5分焼成して焼き色をつけ、その時の元の嵩に対する嵩復元性を評価したところ、80%であった。
一方、温度95℃、相対湿度95%以上の条件下での加熱処理をしなかった以外は実施例4と全く同様に製造したパンについて復元性を評価したところ、68%であった。
尚、対応する実施例1〜4のパンと比較例1〜4のパンは風味的には殆ど差がないものであった。
Claims (3)
- 焼成乃至半焼成後の多孔性含水小麦粉食品を圧縮により該食品の嵩を減少させた、再加熱により嵩が復元する特徴を有する多孔性含水小麦粉食品を製造する際、焼成乃至半焼成後、温度70〜120℃で相対湿度80%以上の環境下で10〜30分の加熱処理を行い、次いで嵩を減少させる工程を設けることを特徴とする多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
- 嵩を減少させる工程と同時あるいは該工程の後に冷凍工程を設けることを特徴とする請求項1記載の多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
- 多孔性含水小麦粉食品がパン類である請求項1又は2記載の多孔性含水小麦粉食品の製造方法。
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