JP3621235B2 - インクジェットヘッドの取付け構造および取付け方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドの取付け構造に関し、詳しくは、複写機、ファクシミリ装置、プリンター装置等に用いられ、吐出孔から記録紙にインクを噴射することにより画像を形成することができるインクジェットヘッドの取付け構造および取付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク液滴を吐出孔から吐出して画像を出力するインクジェット方式のプリンター装置は、低音性に優れ、小型化が容易であることから、近時広く使用されており、このインクジェット方式のプリンター装置としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを充填した4個のインクジェットヘッドによってフルカラーの画像を形成するものがある。
【0003】
このプリンター装置でカラー画像を形成する場合には、インク液滴を噴射するインクジェットヘッドをプリンター装置上に1列に並べ、各ヘッドから異なる色のインク液滴を噴射するようになっているため、4個のインクジェットヘッドのプリンター装置上の取付け位置が画像品質を左右する大きな要因となる。
具体的には、図13に示すように、プリンター装置上では、4色のインク液を充填したインクジェットヘッド1a、1b、1c、1dが一列に一体化(以下、この一体化されたものを4ヘッドユニットという)されており、この4ヘッドユニットをX方向に走査しながら記録紙2にインク液滴3a〜3dを噴射することにより画像を形成するようになっている。また、記録紙2もY方向に搬送されることにより記録紙2全体に画像を形成することができる。
【0004】
なお、図13(b)(c)にあっては、それぞれ同図(a)のY方向側面図およびX方向側面図を示しているが、個々のインクジェットヘッド1a、1b、1c、1dがX、Y方向に所定の位置からずれていると、記録紙2上の特定した位置にインク液滴3a〜3dを着弾することができず、色ずれや記録紙2の外形に対して画像領域のずれ等が生じてしまい、画像の品質が低下してしまう。
【0005】
また、個々のインクジェットヘッド1a、1b、1c、1dがZ方向に位置ずれしている場合でも、各ヘッド1a〜1dから記録紙2までのインク液滴3a〜3dの到達時間にずれが生じてしまい、X、Y方向の位置ずれと同様な画像不良が生じてしまう。さらに、X、Y、Z軸周りの回転成分であるα、β、γ方向の位置ずれも同様な不具合を生じてしまう。
【0006】
したがって、以上のようなインクジェットヘッド1a〜1dの位置ずれによる画像品質不良を発生させないために、通常は4個のインクジェットヘッド1a〜1dの相対位置およびインクジェットヘッド1a〜1dと記録紙2の相対位置を所定の位置ずれ量以下で固定する必要が生じる。
通常、これらの位置精度は数μmから数10μmが要求されており、この要求を満足するために不可欠とされるのが、4個のインクジェットヘッド1a〜1dの相対位置精度の必要量を維持しながら固定する技術である。これはいくら高精度に位置調整しても、固定時にずれると再度調整が必要になったり、分離不可能な構成方法を採用している場合には、その部分を廃棄処分するしかなくなってしまい、位置調整時間が長くなったりコスト高の原因になるからである。
【0007】
従来、この固定にはネジによる固定が多く用いられてきたが、固定時の位置ずれ量が数10μmから数100μmと大きすぎることにより、必要精度での固定ができなかったり、また、できたとしても位置調整固定時間が長くなったり、歩留りが低下したりして製造コスト高の一因になっていた。このため、現在ではネジによる固定に比べて固定時の位置ずれ量が少ないとされる接着剤による固定が試みられており、この接着剤による固定には一般的に充填接着と呼ばれる方法が多く用いられている。
【0008】
この充填接着とは、被接着物間に位置調整のための調整代以上の隙間があり、その隙間に接着剤を充填して固着させる方法である。従来のこの種の充填接着方法としては、例えば、特開平7−89185号公報に記載されたものがある。
このものは、被接着物の形状精度の影響があっても、被接着物同士が当接しないように被接着物間の隙間量を設定してあり、その隙間に接着剤を充填して固定するものである。
【0009】
また、インクジェットヘッドを紫外線硬化型の接着剤を介してヘッド保持部材に取付ける方法としては、図15または図16に示すような方法がある。
図15に示す方法は、同図(a)に示すように、ヘッド63の1面に接着剤64を塗布してヘッド63をヘッド保持部材65に対して位置決めし、この接着剤64を介してヘッド63をヘッド保持部材65に固定する際に、同図(b)に示すように、ヘッド63とヘッド保持部材65の隙間から接着剤64に対してライトガイド66により紫外線を照射することにより、接着剤64を硬化させてヘッド63をヘッド保持部材65に固定するようにしている。なお、ヘッド63またはヘッド保持部材65の一方が紫外線を透過する材料であれば、その一方を通して接着剤64に紫外線を照射するようにしている。
【0010】
また、図16に示す方法は、同図(a)に示すようにヘッド67の2面に、すなわち、ヘッド67を挟んで対称な位置に接着剤68を塗布してヘッド67をヘッド保持部材69に位置決めし、この接着剤68を介してヘッド67をヘッド保持部材69に固定する際に、同図(b)に示すようにヘッド67の一方の接着面とヘッド保持部材68の隙間から接着剤68に対してライトガイド70により紫外線を照射した後、同図(c)に示すようにヘッド67の他方の接着面とヘッド保持部材69の隙間から接着剤68に対して紫外線を照することにより、接着剤68を順々に硬化させてヘッドをヘッド保持部材に固定するようにしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の取付け構造にあっては、被接着物同士が当接しないように被接着物間の隙間量を設定してあり、その隙間に接着剤を充填して固定するようになっていたため、以下のような問題が発生してしまった。
以下、この充填接着の方法を図15に示すモデル図に基づいて説明するとともに、その問題点を具体的に説明する。
【0012】
図14において、4は被接着物であるインクジェットヘッド、5はヘッド保持部材、6は接着剤であり、この方法では、ヘッド4とヘッド保持部材5の隙間に接着剤6を充填して硬化させることにより、ヘッド4をヘッド保持部材5に固定している。
このため、ヘッド4とヘッド保持部材5を当接させないで接着固定するには、ヘッド4側の接着面4aの位置ばらつき量A(ヘッド4の位置調整代)とヘッド保持部材5側の接着面5aのばらつき量Cが発生しても、ヘッド4側の接着面4aとヘッド保持部材5側の接着面5aが当接せず、かつ、接着剤6を充填する隙間を確保するために隙間Bが必要になる。したがって、接着剤6の膜厚は最小でB、最大でA+B+Cになってしまい、接着剤6の膜厚はA+Cの長さだけばらつくことになる。
【0013】
さらに、ヘッド4側の接着面4aとヘッド保持部材5側の接着面5aの面精度の影響でI+Jだけ接着剤6の膜厚がばらついてしまうこともある。
一般的に、接着剤は硬化する際に収縮するため、接着剤の硬化後に被接着物を位置ずれさせないためには接着剤の塗布量をできるだけ少なくすることが重要になってくる。ところが、上述した充填接着方法では、接着剤の膜厚をB以下にすることができないので、接着剤の膜厚がBの場合に接着剤の硬化収縮での位置ずれが許容値よりも多く発生したとしても、接着剤の膜厚の変更で対応できなくなり、固定後の位置ずれ量の改善ができない場合があった。
【0014】
また、インクジェットプリンターとして完成した後の輸送時や実使用時に、接着部の周囲の雰囲気温度が上昇して接着剤や被接着物が熱膨張した場合、接着剤と被接着物の線膨張係数の差が原因で接着部が剥離してしまう場合がある。その際にも、接着剤の膜厚を薄くして寸法変化量を抑えることは有効な手段となるが、接着剤の膜厚をB以下にすることができないことにより、その対応手段がとれず、接着剤の剥離対策が図れない場合があった。
【0015】
また、接着剤の膜厚がA+Cだけ発生することにより、接着剤の硬化収縮量もそのばらつきに応じて変化することになる。これにより固定後のヘッド1の位置もばらついてしまい、必要な位置精度が確保できないという場合もあった。通常、紫外線硬化型の接着剤の硬化時の体積収縮率は5〜10%程度である。体積収縮率が7%の場合を考えてみると、接着剤の硬化形状が正方体の場合には、3次元各方向に約2%程度収縮することになる。
【0016】
したがって、接着剤の膜厚に0.5mm程度の差が生じると、硬化収縮量は各方向とも10μm程度の差が生じることになる。被接着物を樹脂の射出成形で製作する場合には、上述した接着剤の膜厚のばらつきA+Cは0.5mm以上になる場合が考えられるため、固定後の位置ずれが問題となる可能性が十分にある。
以上により、従来の充填接着方法にあっては、インクジェットヘッドの固定位置の必要精度を維持することができない場合が発生するため、生産時の歩留りが低下したり、固定精度不良の被接着物を廃棄処分にしなければならず、製造コストが増大するという問題が発生してしまった。
【0017】
また、生産後に接着剤の剥離によりインクジェットヘッドの固定力の低下が発生してしまい、インクジェットプリンターの基本機能を維持できなくなってしまうおそれがあった。
また、図15に示す取付け方法にあっては、接着剤64の固化が終了したときに、接着剤64が収縮するため、ヘッド63がヘッド保持部材65に引き付けられてヘッド63の位置ずれが発生してしまった。
【0018】
一方、図16に示す取付け方法にあっては、最初にヘッド67の一方の接着面の接着剤68を硬化させた後、他方の接着面の接着剤68を硬化させるようにしたため、ヘッド67の一方の接着面に塗布された接着剤68が収縮してヘッド67の一方の接着面がヘッド保持部材68に引寄せられた状態となってヘッド67の他方の接着面が移動せずに、他方の接着面の接着剤68が上下方向に収縮するだけとなってしまった。このため、ヘッド67の位置ずれが発生してしまった。
【0019】
このような不具合を解消するには、両方の接着剤に同時に紫外線を照射することが考えられる。
以下、この点を図17〜20に基づいて詳しく説明する。
図17に示すように、ヘッド67の2面に、すなわち、ヘッド67を挟んで対称な位置に接着剤68を塗布してヘッド67をヘッド保持部材69に位置決めし、この接着剤68を介してヘッド67をヘッド保持部材69に固定する際に、ライトガイド70によって接着剤68に同時に紫外線を照射すると、接着剤68の硬化収縮時の内部応力を相殺することができる。
【0020】
ここで、接着剤68の収縮を異なる境界条件に基づいて説明を行なう。
図18(a)(b)は接着剤A単体の硬化を示す図であり、同図(a)に示すように硬化開始前の接着剤Aに紫外線を照射すると、接着剤Aは内方に向かって応力ベクトルが作用し、同図(b)に示すように収縮を行なう。
また、図19(a)(b)に示すように、接着剤Bを2つの被着体C、Dの間に塗布して同図(a)に示すように硬化開始前の接着剤Bに紫外線を照射すると、接着剤Bは上述したように内方に向かって応力ベクトルが作用する。このとき、接着剤Bは被着体C、Dの接着面に塗布されているため、接着剤Bの内方に向かって作用する応力ベクトルによって被着体C、Dには逆方向の応力ベクトルが作用して互いに近接する方向に移動する。
【0021】
一方、図20(a)(b)に示すように被着体Eに対して接着剤F、Gが塗布される接着面が面対称な位置に配設されている
場合に、同図(a)で示すように接着剤F、Gを塗布して接着剤F、Gを同一条件で硬化させると、同図(b)に示すように接着剤F、Gが内方に向かって収縮するため、被着体Eの2つの接着面に同方向で逆向きの応力ベクトルが発生する。
【0022】
以上の原理から、ライトガイド70によって接着剤68に同一条件で、かつ上方から紫外線を同時に照射すると、接着剤68の硬化が同時に開始される。このとき、接着剤68の収縮を同方向で逆向きに発生させることができ、収縮の動きを相殺させることができる。すなわち、ヘッド67の2つの接着面に同方向で逆向きの応力ベクトルを同じタイミングで発生させて2つの応力ベクトルを釣り合わせることができる。
【0023】
この結果、接着剤68が硬化されてヘッド67がヘッド保持部材69に固定される際にヘッド67が位置ずれしてしまうのを防止することができ、ヘッド保持部材69に高精度に取付けることができる。
しかしながら、このようにヘッド67を接着剤68を介してヘッド保持部材69に直接取付け、接着剤68に対して同一照射条件で紫外線を照射する場合には、後に位置調整を行なうための調整代が必要となって接着剤68の膜厚を小さくすることができないため、接着剤68の内部応力を十分に小さくすることができない上に、ヘッド67をヘッド保持部材69に位置決めする際に、ヘッド67が正確な位置に位置決めできずに、ヘッド67がヘッド保持部材69の接着面の一方側に偏った場合には、左右の接着剤68の膜厚を同じにすることができなくなるため、同一条件で紫外線を照射しても内部応力を相殺することができないという問題があった。
【0024】
そこで請求項1〜4記載の発明は、インクジェットヘッドの取付けを高精度に行なうことができるようにして、歩留りを高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じないインクジェットヘッドの取付け構造を提供することを目的としている。
また、請求項5記載の発明は、接着剤が硬化されてヘッドがヘッド保持部材に固定される際にヘッドが位置ずれしてしまうのを防止して、ヘッド保持部材に高精度に取付けることができるインクジェットヘッドの取付け方法を提供することを目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上記課題を解決するために、インク液滴を吐出孔から吐出するインクジェットヘッドがヘッド保持部材に取付けられるインクジェットヘッドの取付け構造において、前記インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材が介装され、該中間保持部材が接着剤によってインクジェットヘッドに固定されるとともに接着剤を介してヘッド保持部材に固定されることを特徴としている。
【0026】
その場合、インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材を介装している分だけ、インクジェットヘッドの接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤とヘッド保持部材の接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤の膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで、インクジェットヘッドの接着箇所とヘッド保持部材の接着箇所の位置精度を厳密に管理しなくても、インクジェットヘッドの取付けを高精度に行なうことができ、歩留りを高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じるのを防止することができる。
【0027】
請求項2記載の発明は、上記課題を解決するために、請求項1記載の発明において、前記接着剤を紫外線硬化型接着剤から構成するとともに、中間保持部材を紫外線が透過する材料から構成したことを特徴としている。
その場合、中間保持部材を通して紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射することができるため、接着箇所全域で同時に、かつ接着面に対して垂直方向から紫外線を照射することができ、接着剤が硬化するまでの時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0028】
請求項3記載の発明は、上記課題を解決するために、請求項1または2記載の発明において、前記中間保持部材は、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面、または、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向と直交する方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面を挟んで対称な位置に同数配設されていることを特徴としている。
その場合、接着剤の硬化収縮による力や残留応力による力が打ち消し合う方向に同じ量だけ作用させることができ、インクジェットヘッドの取付け位置の位置ずれをより一層生じ難くすることができる。この結果、インクジェットヘッドの取付けをより一層高精度に行なうことができ、歩留りをより一層高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じるのをより一層防止することができる。
【0029】
請求項4記載の発明は、上記課題を解決するために、請求項1〜3何れかに記載の発明において、前記インクジェットヘッド、ヘッド保持部材、中間部材および接着剤を構成する材料の線膨張係数が同一または、同一に近いものを用いたことを特徴としている。
その場合、インクジェットヘッドの取付け後に接着部の周囲の雰囲気温度が上昇した場合に接着部が剥離するのを防止することができ、インクジェットヘッドを長期間に亘って使用することができる。
【0030】
請求項5記載の発明は、上記課題を解決するために、少なくとも1つ以上のインクジェットヘッドを中間保持部材を介して接着剤によってヘッド保持部材に固定するようにしたインクジェットヘッドの取付け方法であって、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面、または、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向と直交する方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面を挟んで対称な位置に中間保持部材の接着面を設定し、中間保持部材の一方の接着面に同じ膜厚の接着剤を介してインクジェットヘッドを取付けるとともに、該中間保持部材の他方の接着面に前記接着剤の膜厚と同じ膜厚の接着剤を介してヘッド保持部材を取付けた後、インクジェットヘッドが中間保持部材を介してヘッド保持部材の所定位置に位置決めされるように調整し、次いで、前記対称な接着面に塗布された接着剤に対して、同一条件で、かつ同一方向から紫外線を同時に照射するようにしたことを特徴としている。
【0031】
その場合、インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材を介装している分だけ、インクジェットヘッドの接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤とヘッド保持部材の接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤の膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで良く、接着剤の膜厚が増大するのを防止することができる。これに加えて、インクジェットヘッドを中間保持部材を介してヘッド保持部材に対して位置決めする際に、ヘッド保持部材に対するヘッドの調整位置に拘わらず接着剤の膜厚が変化するのを防止することができる。
【0032】
また、インクジェットヘッドを挟んで対称な接着面に塗布された接着剤の膜厚が変化しないため、この接着剤が同一条件で、かつ同一方向から同時に照射される紫外線によって硬化する際に、接着剤の収縮を同方向で逆向きに発生させることができ、収縮の動きを相殺させることができる。すなわち、インクジェットヘッドの対称な接着面に同方向で逆向きの応力ベクトルを同じタイミングで発生させて2つの応力ベクトルを釣り合わせることができる。
【0033】
この結果、接着剤が硬化されてヘッドがヘッド保持部材に固定される際にヘッドが位置ずれしてしまうのを防止することができ、ヘッド保持部材に高精度に取付けることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜8は本発明に係るインクジェットヘッドの取付け構造の第1実施形態を示す図である。
まず、構成を説明する。図1〜3において、11a〜11dはそれぞれ10面形状のインクジェットヘッドであり、このインクジェットヘッド11a〜11dはそれぞれ順番にシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが充填され、複数の吐出孔12から各色のインク液滴を吐出するようになっている。
【0035】
各ヘッド11a〜11dはそれぞれL字形状の4つの中間保持部材13a〜13dを介してヘッド保持部材14に取付けられており、中間保持部材13a〜13dは紫外線硬化型の接着剤15によってヘッド11a〜11dに固定されるとともに同様に紫外線硬化型の接着剤15を介してヘッド保持部材14に固定されている。また、この中間保持部材13a〜13dは紫外線を透過する材料から構成されている。
【0036】
また、ヘッド保持部材14は仕切部14aによってヘッド11a〜11dの取付け位置が仕切られているとともに、下面に図示しない固定部が設けられており、この固定部が図示しないプリンター本体に取付けられるようになっている。なお、このプリンター本体はプリンター装置、ファクシミリ装置あるいは複写機等に装着されるものである。
【0037】
図4はヘッド11a〜11dの取付け装置を示す図である。
図4において、21は取付け装置の定盤であり、この定盤21には1軸移動機構を内蔵したヘッド保持部材移動用テーブル22が設けられており、この移動用テーブル22は固定部材23によって定盤21上に固定されている。この移動用テーブル22上にはヘッド保持部材チャック24が設けられており、このチャック24にはヘッド保持部材14を位置決めして固定するようになっている。すなわち、移動用テーブル22はチャック24でヘッド保持部材14を把持して図4中、左右方向であるX方向に移動するようになっている。
【0038】
また、定盤21上には移動機構固定部材25を介して6軸移動機構26が設けられており、この6軸移動機構26の先端部にはインクジェットヘッド11a〜11dを把持可能なチャック27が設けられている。この6軸移動機構26は各ヘッド11a〜11dをチャック27で把持してX方向、Y方向、Z方向、X軸周りのα方向、Y軸周りのβ方向およびZ軸周りのγ方向に移動可能になっている。
【0039】
また、定盤21上にはカメラ固定部材28を介してCCDカメラ29が設けられており、このCCDカメラ29は各ヘッド11a〜11dの吐出孔12を撮像するようになっている。この撮像された画像は図示しない演算部で演算されるようになっており、この演算結果に基づいて6軸移動機構26でヘッド11a〜11dを移動することにより、ヘッド11a〜11dをヘッド保持部材14に位置決めするようになっている。
【0040】
また、定盤21上には中間保持部材13a〜13dをチャックで把持してX、Y、Zの3軸方向に移動する移動機構が設けられている。なお、図4中、30は紫外線を照射するライトガイドである。
次に、ヘッド11a〜11dをヘッド保持部材14に取付ける方法を説明する。
まず、チャック24上にヘッド保持部材14を把持して、ヘッド保持部材14の右側端部がCCDカメラ29の下方に位置するように移動用テーブル22を移動させる。次いで、チャック27でヘッド11dを把持してヘッド11dをヘッド保持部材14の右側端部上に移動させ、ヘッド保持部材14上に位置させる。
【0041】
次いで、ヘッド11dの吐出孔12をCCDカメラ29で撮像し、その吐出孔12の画像の重心位置を演算部で演算してヘッドのX、Y方向の位置計測を行なう。また、Z方向に関しては、CCDカメラ29に内蔵してある図示しないオートフォーカス装置からのZ方向のデフォーカス量に関する出力データに基づいて演算部で演算して位置を求める。
【0042】
このようにしてヘッド11dの位置を計測し、その測定結果から目標位置の移動量を算出し、6軸移動機構26でヘッド11dを目標位置までの移動量だけ移動させることにより、ヘッド11dの位置調整を行なう。
次いで、中間保持部材13a〜13dを移動機構のチャックで把持してヘッド11d側に向って移動させる。次いで、ヘッド11aとヘッド保持部材14側の接着面に紫外線硬化型樹脂を一定の膜厚になるように塗布する。このとき、CCDカメラ29によって接着剤15の膜厚をモニターしながら接着剤15の膜厚が一定になるように調整する。
【0043】
次いで、中間保持部材13a〜13dをヘッド11aとヘッド保持部材14の間に介装してライトガイド30によって接着剤15に紫外線を照射することにより、接着剤15を硬化させ、硬化終了後に中間保持部材13a〜13dの移動機構のチャックと6軸移動機構26のチャック27を開放して取付けを終了する。
次いで、ヘッド11dに隣接するヘッド保持部材14部分がCCDカメラ29の下方に位置するように移動用テーブル22をX方向に移動させた後、チャック27でヘッド11bを把持して上述した作業を行なうことにより、ヘッド11cを中間保持部材13a〜13dを介してヘッド保持部材14に取付ける。以降、上述した動作を行なうことにより、残りのヘッド11b、11aを中間保持部材13a〜13dを介してヘッド保持部材14に取付ける作業を行なう。
【0044】
このように本実施形態では、インクジェットヘッド11a〜11dとヘッド保持部材14の間に中間保持部材13a〜13dを介装し、中間保持部材13a〜13dを接着剤15によってインクジェットヘッド11a〜11dに固定するとともに接着剤15を介してヘッド保持部材14に固定したため、ヘッド11a〜11dとヘッド保持部材14の間に中間保持部材13a〜13dを介装している分だけ、ヘッド11a〜11dの接着面と中間保持部材13a〜13dの接着面に接着される接着剤15とヘッド保持部材14の接着面と中間保持部材13a〜13dの接着面に接着される接着剤15の膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで、ヘッド11a〜11dの接着箇所とヘッド保持部材14の接着箇所の位置精度を厳密に管理しなくても、ヘッド11a〜11dの取付けを高精度に行なうことができ、歩留りを高くすることができるとともに生産後のヘッド11a〜11dの固定力の低下が生じるのを防止することができる。
【0045】
また、接着剤15を紫外線硬化型の接着剤から構成するとともに、中間保持部材13a〜13dを紫外線が透過する材料から構成したため、中間保持部材13a〜13dを通して接着剤15に紫外線を照射することができる。このため、接着箇所全域で同時に、かつ接着面に対して垂直方向から紫外線を照射することができ、接着剤15が硬化するまでの時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0046】
なお、接着剤が硬化するまでの時間を考慮しない場合には、中間保持部材13a〜13dに紫外線が透過しない材料を使用しても良い。但し、この場合には、被接着物の隙間に紫外線を照射して紫外線を硬化させる必要があるため、中間保持部材13a〜13dを紫外線が透過する材料から構成した方が好ましい。この場合には、上述した効果に加えて、ヘッド11a〜11dに対する硬化収縮による制御がし易くなり、固定後のヘッド11a〜11dの位置ずれも制御し易くなる。
【0047】
なお、本実施形態では、10面体形状のヘッド11a〜11dを使用しているが、これに限らず、図5〜8に示すような立方体形状のヘッド31〜34を用いても良い。要は、接着面が1面以上あれば、特に面の数に限定されるものではないのである。また、相対する被接着面が平行になっていれば、面形状も特に平面に限定されるものではなく、曲面や球面でも良い。
【0048】
また、中間保持部材も4つではなく、図6、7に示すように、1つのインクジェットヘッドに対して2つの中間保持部材39、40から構成しても良く、ヘッド1個当りに1個以上配設すれば問題はない。
また、ヘッド保持部材14に関しても、仕切部14aに仕切られている形状に限らず、図5〜8に示すように平板状のヘッド保持部材35〜38であっても良い。
【0049】
なお、本実施形態および図5〜8に示す態様では、1つのヘッド11a〜11d、31〜34に対して中間保持部材13a〜13d、39、40を複数個設けているが、この中間保持部材13a〜13d、39、40はヘッド11a〜11d、31,32の吐出孔12の配列方向のヘッド11a〜11d、31、32の中心線を通る面、または、ヘッド33、34の吐出孔12の配列方向と直交する方向のヘッド33、34の中心線を通る面を挟んで対称な位置に同数個配設することが重要である。
以下、具体的に説明する。接着剤は硬化する際に収縮するが、これにより硬化中にヘッド11a〜11d、31〜34に対して力が発生し、ヘッド11a〜11d、31〜34の位置が接着中にずれる場合がある。
【0050】
また、接着中にヘッド11a〜11d、31〜34の位置がずれなくとも接着剤の中に残留応力が蓄積され、接着後の熱等の衝撃でその残留応力がヘッド11a〜11d、31〜34に作用し、ヘッド11a〜11d、31〜34の位置がずれたり、接着部が剥離する場合がある。
このような場合に、中間保持部材13a〜13d、39、40をヘッド11a〜11d、31〜34の中心線に対して両側の対称な位置に同数配設することにより、硬化収縮による力や残留応力による力が打ち消し合う方向に同じ量だけ作用することにより、上記の不具合が発生するのを防止することができ、インクジェットヘッドの取付けをより一層高精度に行なって、歩留りをより一層高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じるのをより一層防止することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、ヘッド11a〜11d、中間保持部材13a〜13dおよびヘッド保持部材14を線膨張係数が同一または、同一に近いものを用いた材料から構成することも考えられる。
すなわち、ヘッド11a〜11dがインクジェットプリンターの内部で稼働する際や、ヘッド11a〜11dの取付けが終了した後に輸送される場合等に、接着部の周囲の雰囲気温度が数10℃上昇することが往々としてある。
【0052】
このような場合に、ヘッド11a〜11d、中間保持部材13a〜13dおよびヘッド保持部材14の線膨張に相違があると、接着部が剥離してしまうことがある。したがって、ヘッド11a〜11d、中間保持部材13a〜13d、ヘッド保持部材14の線膨張係数を同一、または同一に近い材料から構成すれば、接着部に剥離が生じずに品質を維持することができる。また、接着剤15の材料も硬化した接着剤15の線膨張係数がヘッド11a〜11d、中間保持部材13a〜13dおよびヘッド保持部材14の線膨張係数と同一、または同一に近いものにすれば、上記不具合を抑えることができる。
【0053】
図9、10は本発明に係るインクジェットヘッドの取付け構造の第2実施形態を示す図であり、1つのインクジェットヘッドに対して中間部材を1つ設けた例を示している。なお、本実施形態では、中間保持部材や接着剤の材料や、ヘッドの組付け装置や組付け方法は第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、特に接着部分の詳細な構造を説明するものである。
【0054】
図9、10において、51はインクジェットヘッド、52はヘッド保持部材、53は中間保持部材、54は接着剤である。中間保持部材53は2ヵ所の接着面53a、53bを有しており、その接着面53a、53bは平面で各面が直交している。また、接着面53aはヘッド51に接着剤54によって固定されており、接着面53bは接着剤54によってヘッド保持部材52に固定されている。
【0055】
このような構造を有する組付け構造にあっては、図4に示す取付け装置によってヘッド51が中間保持部材53を介してヘッド保持部材52に取付けられる。本実施形態では、ヘッド51がヘッド保持部材52に取付けられた後に、ヘッド51側の接着面51aがヘッド51の位置調整量やヘッド51の形状精度によってAだけ位置がばらついた場合に、中間保持部材53をX、γ方向に移動させることにより、接着剤54を所定の厚さに調整することができる。ここでの接着剤54の所定の膜厚とは寸法Eであるが、ヘッド51側の接着面51aと中間保持部材53側の接着面53aの平行度によって接着剤54の膜厚がDになる場合もある。
【0056】
この際、ヘッド保持部材52のヘッド51側の接着面51aに相対する面52aの位置ばらつきCの影響で接着層の膜厚の値が制約を受けることは、面52aが接着面でないことから影響がない。
また、中間保持部材53とヘッド保持部材52の接着層に関しては、ヘッド保持部材52の接着面52bの位置ばらつきがHだけ発生した場合に、ヘッド51側の膜厚を所定の値に維持しながら中間保持部材53をZ、α方向に移動させることによりヘッド保持部材52側の接着層の膜厚を所定の値に維持することができる。但し、ここでもヘッド保持部材52の接着面52bと中間保持部材53の接着面53bの平行度により接着剤54の膜厚が変化する場合がある。
【0057】
また、ヘッド51側の接着面51aとヘッド保持部材52側の接着面52bおよび中間保持部材53の接着面53a、53bのβ方向の傾きによる接着剤54の膜厚の変化は吸収できない。
以上のように、X、Y、Z、α、γ方向に関する、ヘッド51の位置調整量、ヘッド51側の接着面51aの位置精度、ヘッド保持部材52の面52aの位置精度、ヘッド保持部材52側の接着面52bの位置精度による接着層の膜厚の変化は抑えることができる。また、接着剤54の膜厚は接着面間の平行度の影響てばらつくだけとなり、必要最小限の膜厚に近づけることができる。
【0058】
なお、本実施形態で得られる効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態では、1つの中間保持部材53をヘッド51とヘッド保持部材52の間に介装しているが、図10に示すように中間保持部材61、62を分割することにより、ヘッド51側の接着面51aの面精度による接着層の膜厚の影響の変化を抑えることができる。
【0059】
図11、12は本発明に係るインクジェットヘッドの取付け方法の一実施形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図11において、81はインクジェットプリンターのフレームを構成するヘッド保持部材、82はインクジェットヘッド、83、84はヘッド82とヘッド保持部材81の間に介装された中間保持部材、85a、86aは中間保持部材83、84の一方の接着面83a、84aとヘッド保持部材81の接着面81a、81bの間に塗布された紫外線硬化型の接着剤、85b、86bは中間保持部材83、84の他方の接着面83b、84bとヘッド82の接着面82a、82bの間に塗布された紫外線硬化型の接着剤であり、本実施形態では、ヘッド82を挟んで対称(ヘッド82の吐出孔12の配列方向のヘッド82の中心線を通る面を挟んで対称な位置)に中間保持部材83、84の接着面83a、83b、84a、84bが設定されている。
【0060】
なお、この中間保持部材83、84の機能は上述したインクジェットヘッドの取付け構造の第1実施形態で説明したものと同様である。また、本実施形態はヘッド82を1つ設けた例を示しているが、本発明はカラーインクジェットプリンターのように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを充填した4個のヘッドを中間保持部材を介してヘッド保持部材に取付けるものに適用することができる。
【0061】
また、中間保持部材83、84は紫外線を透過する材料から構成されており、各接着剤85a、85b、86a、86bには図示しないライトガイドによって同一条件、すなわち、紫外線の照射開始タイミング、照射終了タイミングおよび照度が同一で、かつ同一方向(本実施形態では上方)から同時に紫外線が照射されるようになっている。
次に、作用を説明する。
【0062】
本実施形態では、接着剤85a、85b、86a、86bにライトガイドによって紫外線の照射開始タイミング、照射終了タイミングおよび照度が同一で、かつ上方から同時に紫外線を照射すると、図12(a)に示すように接着剤85a、85bが照射初期状態から図12(b)に示すように収縮する(接着剤86a、86bも同様)。
このとき、接着剤85a、85bが収縮するために、中間保持部材83がヘッド保持部材81側に引寄せられるように移動し、ヘッド82が中間保持部材83側に引寄せられるように移動する(接着剤86a、86bも同様)。
【0063】
このため、ヘッド82は図12(c)に示すように初期位置からΔXおよびΔZだけそれぞれX、Z方向に移動する。しかしながら、接着剤85a、85bおよび86a、86bはヘッド82の中心線を挟んで対称な位置に配設されているため、接着剤85aおよび86aの収縮を同方向で逆向きに発生させることができ、収縮の動きを相殺させることができる。
【0064】
このように本実施形態では、ヘッド82とヘッド保持部材81の間に中間保持部材83、84を介装している分だけ、ヘッド82の接着面82a、82bと中間保持部材83、84の接着面83b、84bに接着される接着剤85b、86bとヘッド保持部材81の接着面81a、81bと中間保持部材83、84の接着面83a、84aに接着される接着剤の85a、86aの膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで良く、接着剤85a、85b、86a、86bの膜厚が増大するのを防止することができる。
【0065】
これに加えて、ヘッド82を中間保持部材83、84を介してヘッド保持部材81に対して位置決めする際に、ヘッド保持部材81に対するヘッド82の調整位置に拘わらず接着剤85a、85b、86a、86bの膜厚が変化するのを防止することができる。また、ヘッド82を挟んで対称な位置に配設された中間保持部材83、84の接着面83a、83b、84a、84bに塗布された接着剤85a、85b、86a、86bの膜厚が変化しないため、この接着剤85a、85b、86a、86bが同一条件で、かつ同一方向から同時に照射される紫外線によって硬化する際に、接着剤85a、85b、86a、86bの収縮を同方向で逆向きに発生させることができ、収縮の動きを相殺させることができる。すなわち、ヘッド82の対称な接着面82a、82bに同方向で逆向きの応力ベクトルを同じタイミングで発生させて2つの応力ベクトルを釣り合わせることができる。
【0066】
この結果、接着剤85a、85b、86a、86bが硬化されてヘッド82がヘッド保持部材81に固定される際にヘッド82が位置ずれしてしまうのを防止することができ、ヘッド保持部材81に高精度に取付けることができる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材を介装している分だけ、インクジェットヘッドの接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤とヘッド保持部材の接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤の膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで、インクジェットヘッドの接着箇所とヘッド保持部材の接着箇所の位置精度を厳密に管理しなくても、インクジェットヘッドの取付けを高精度に行なうことができ、歩留りを高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じるのを防止することができる。
【0068】
請求項2記載の発明によれば、中間保持部材を通して紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射することができるため、接着箇所全域で同時に、かつ接着面に対して垂直方向から紫外線を照射することができ、接着剤が硬化するまでの時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
請求項3記載の発明によれば、接着剤の硬化収縮による力や残留応力による力が打ち消し合う方向に同じ量だけ作用させることができ、インクジェットヘッドの取付け位置の位置ずれをより一層生じ難くすることができる。この結果、インクジェットヘッドの取付けをより一層高精度に行なうことができ、歩留りをより一層高くすることができるとともに生産後のインクジェットヘッドの固定力の低下が生じるのをより一層防止することができる。
【0069】
請求項4記載の発明によれば、インクジェットヘッドの取付け後に接着部の周囲の雰囲気温度が上昇した場合に接着部が剥離するのを防止することができ、インクジェットヘッドを長期間に亘って使用することができる。
請求項5記載の発明によれば、インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材を介装している分だけ、インクジェットヘッドの接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤とヘッド保持部材の接着面と中間保持部材の接着面に接着される接着剤の膜厚を必要最小限で、かつ一定に管理するだけで良く、接着剤の膜厚が増大するのを防止することができる。これに加えて、インクジェットヘッドを中間保持部材を介してヘッド保持部材に対して位置決めする際に、ヘッド保持部材に対するヘッドの調整位置に拘わらず接着剤の膜厚が変化するのを防止することができる。
【0070】
また、インクジェットヘッドを挟んで対称な接着面に塗布された接着剤の膜厚が変化しないため、この接着剤が同一条件で、かつ同一方向から同時に照射される紫外線によって硬化する際に、接着剤の収縮を同方向で逆向きに発生させることができ、収縮の動きを相殺させることができる。すなわち、インクジェットヘッドの対称な接着面に同方向で逆向きの応力ベクトルを同じタイミングで発生させて2つの応力ベクトルを釣り合わせることができる。
【0071】
この結果、接着剤が硬化されてヘッドがヘッド保持部材に固定される際にヘッドが位置ずれしてしまうのを防止することができ、ヘッド保持部材に高精度に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの取付け構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の取付け構造の要部正面図である。
【図3】第1実施形態の取付け構造の要部分解図である。
【図4】第1実施形態の取付け装置の概略構成図である。
【図5】第1実施形態の取付け構造の他の態様を示す図である。
【図6】第1実施形態の取付け構造の他の態様を示す図である。
【図7】第1実施形態の取付け構造の他の態様を示す図である。
【図8】第1実施形態の取付け構造の他の態様を示す図である。
【図9】本発明に係るインクジェットヘッドの取付け構造の第2実施形態を示す斜視図であり、(a)はその上面図、(b)は同図(a)のF−F断面図である。
【図10】第2実施形態の取付け構造の他の態様を示す図である。
【図11】本発明に係るインクジェットヘッドの取付け方法の一実施形態を示す図であり、インクジェットヘッドを接着剤を介してヘッド保持部材に取付けた状態を示す図である。
【図12】(a)は一実施形態のインクジェットヘッドを接着剤を介してヘッド保持部材に取付けて接着剤を硬化させる前の状態を示す図、(b)は接着剤の硬化後の状態を示す図、(c)はインクジェットヘッドの移動量を示す図である。
【図13】(a)は一般的なインクジェットヘッドの配設構造を示す図であり、記録紙とヘッドの斜視図、(b)は同図(a)のY方向側面図、(c)は同図(a)のX方向側面図である。
【図14】従来の充填接着方法のモデル図であり、(a)はその上面図、(b)は同図(a)のH−H断面図である。
【図15】従来のインクジェットヘッドの取付け手順を示す図である。
【図16】従来のインクジェットヘッドの他の取付け手順を示す図である。
【図17】従来のインクジェットヘッドの他の取付け手順を示す図である。
【図18】(a)(b)は接着剤単体が硬化する状態を示す図である。
【図19】(a)(b)は被着体の間に介装された接着剤が硬化する状態を示す図である。
【図20】(a)(b)は被着体の対称な面と被着体の間に介装された接着剤が硬化する状態を示す図である。
【符号の説明】
11a〜11d、31〜34、51 インクジェットヘッド
12 吐出孔
13a〜13d、39、40、53、61、62 中間保持部材
14、35〜38、52 ヘッド保持部材
15、54 接着剤
81 ヘッド保持部材
82 インクジェットヘッド
85a、85b、86a、86b 接着剤
81a、81b、82a、82b、83a、83b、84a、84b 接着面
Claims (5)
- インク液滴を吐出孔から吐出するインクジェットヘッドがヘッド保持部材に取付けられるインクジェットヘッドの取付け構造において、
前記インクジェットヘッドとヘッド保持部材の間に中間保持部材が介装され、該中間保持部材が接着剤によってインクジェットヘッドに固定されるとともに接着剤を介してヘッド保持部材に固定されることを特徴とするインクジェットヘッドの取付け構造。 - 前記接着剤を紫外線硬化型接着剤から構成するとともに、中間保持部材を紫外線が透過する材料から構成したことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの取付け構造。
- 前記中間保持部材は、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面、または、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向と直交する方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面を挟んで対称な位置に同数配設されていることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェットヘッドの取付け構造。
- 前記インクジェットヘッド、ヘッド保持部材、中間部材および接着剤を構成する材料の線膨張係数が同一または、同一に近いものを用いたことを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のインクジェットヘッドの取付け構造。
- 少なくとも1つ以上のインクジェットヘッドを中間保持部材を介して接着剤によってヘッド保持部材に固定するようにしたインクジェットヘッドの取付け方法であって、
前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面、または、前記インクジェットヘッドの吐出孔の配列方向と直交する方向の前記インクジェットヘッドの中心線を通る面を挟んで対称な位置に中間保持部材の接着面を設定し、中間保持部材の一方の接着面に同じ膜厚の接着剤を介してインクジェットヘッドを取付けるとともに、該中間保持部材の他方の接着面に前記接着剤の膜厚と同じ膜厚の接着剤を介してヘッド保持部材を取付けた後、インクジェットヘッドが中間保持部材を介してヘッド保持部材の所定位置に位置決めされるように調整し、次いで、前記対称な接着面に塗布された接着剤に対して、同一条件で、かつ同一方向から紫外線を同時に照射するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッドの取付け方法。
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